JPH10113167A - 付着性動物細胞のマイクロキャリア培養方法 - Google Patents

付着性動物細胞のマイクロキャリア培養方法

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JPH10113167A
JPH10113167A JP26962896A JP26962896A JPH10113167A JP H10113167 A JPH10113167 A JP H10113167A JP 26962896 A JP26962896 A JP 26962896A JP 26962896 A JP26962896 A JP 26962896A JP H10113167 A JPH10113167 A JP H10113167A
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culture
cells
absorbance
concentration
microcarrier
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JP26962896A
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Michiyo Nitsuta
三知代 新田
Ryoichi Haga
良一 芳賀
Masaru Nanba
勝 難波
Takamori Nakano
隆盛 中野
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】マイクロキャリアを用いた浮遊撹拌培養におい
て、細胞の付着及びまたは剥離を最適な状態に制御し、
最適条件で継代培養及びまたはスケールアップ培養を実
施する。 【解決手段】培養槽1内の培養液の吸光度を特定の波長
範囲で精度よく測定し、この吸光度の変化量から、細胞
の付着,剥離状態を監視し、最適な状態に制御する。剥
離した細胞数を算出し、その細胞数に応じて、最適な接
種濃度,培養量,マイクロキャリア濃度で、継代培養ま
たはスケールアップ培養を実施する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はマイクロキャリアを
用いた付着性動物細胞の培養方法に関する。
【0002】
【従来の技術】付着性動物細胞の大量培養方法として、
培養液中に付着性細胞の付着基盤となるマイクロキャリ
アと呼ばれる微少粒子を浮遊させて、マイクロキャリア
に細胞を付着させ、浮遊性動物細胞と同様に浮遊撹拌培
養する、マイクロキャリア浮遊撹拌培養方法が提案さ
れ、既に実用化されている。その一般的な培養方法及び
実施例はPharmacia 社から同社のマイクロキャリアの詳
細な取扱い説明書として、1987年に発行された「Mic
rocarrier cell culture −principles&methods−」に掲
載されている。
【0003】マイクロキャリア培養法では、細胞の増殖
はマイクロキャリアの表面に細胞が飽和した時点で終了
する。よって、培養における計算上の最高細胞濃度は、
マイクロキャリアの総表面積と細胞の大きさで決まるこ
とになる。しかし、マイクロキャリア培養では、マイク
ロキャリアの濃度が高すぎると、細胞がマイクロキャリ
アの表面に飽和するまで増殖しなくなったり、細胞が付
着していないマイクロキャリアの割合が増えたりして、
マイクロキャリアの表面積の有効利用率が低下したり、
マイクロキャリア同士の衝突や摩擦が無視できなくなり
細胞の増殖に悪影響があることが知られている。
【0004】また、マイクロキャリア培養で、継代培養
やスケールアップ培養を実施する時は、トリプシンなど
のタンパク質分解酵素を用いて細胞をマイクロキャリア
から剥離させ、マイクロキャリアと浮遊細胞とが混合し
た細胞懸濁液、すなわち、種培養液として次の培養に用
いる。この時、種培養で増殖させた細胞を生存率の高い
状態で効率よく回収することができるかというのが、継
代培養及びスケールアップ培養を成功させるための一つ
の重要なポイントである。この点に関し、発明者らは鋭
意研究した結果、この細胞の剥離状態及び細胞の付着状
態をも、培養液中の吸光度を測定することによって、監
視・制御できることを見いだした。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、発明者らの研
究により、マイクロキャリア浮遊撹拌培養では、細胞の
剥離・付着の制御以外に、さらに、重要なポイントがあ
ることが明らかになった。そのポイントとは、スケール
アップ培養及び継代培養時で、培養に有効に利用される
細胞数の正確な把握と、培養に混入してくる酵素処理を
経た古いマイクロキャリアの混入量の制御である。
【0006】マイクロキャリア培養では、細胞濃度は次
のような方法で測定する。培養槽内で均一に混合されて
いる培養液をサンプリングし、常法により細胞核を液中
に放出させ、この核数を血球計算盤と顕微鏡を用いて数
を数えて細胞濃度を算出する。しかし、この核放出法の
測定結果から算出した細胞数と、酵素処理で実際に得ら
れる細胞数は一致しない。これは、たとえ酵素処理が最
適条件で行われた場合も同様であり、普通、核放出法の
結果から求められる細胞数の50〜70%となる。
【0007】マイクロキャリア培養で、培養開始時の細
胞濃度、すなわち、接種濃度は重要である。特に、接種
濃度が低すぎると、細胞の増殖に悪影響を与え、最悪の
場合は細胞は存在できなくなってしまう。よって、酵素
処理して得られる細胞数、すなわち、次の培養に用いら
る種培養液中の細胞数をなるべく正確に知る必要があ
る。しかし、従来法のように、培養液をサンプリングし
て、血球計算盤と光学顕微鏡を用いて細胞数を数えて細
胞濃度算出する方法では、酵素処理の最適時間を超過し
てしまう可能性がある。過度の酵素処理は、細胞を損傷
させ、細胞の生存率の増殖活性の低下を招く。よって、
培養液をサンプリングすることなく、簡便かつ迅速に酵
素処理で得られた細胞数を知る方法が求められている。
【0008】さらにもう一つの課題は、スケールアップ
培養での培養量と古いマイクロキャリアの混入量の決定
方法である。上記でも触れたように、マイクロキャリア
濃度には、至適濃度が存在し、特に、使用濃度が高すぎ
た場合、良い培養結果は得られない。これは、マイクロ
キャリア同士の摩擦や衝突の影響が無視できない力とし
て作用し、細胞を損傷させてしまうからである。よっ
て、当然、各スケールでの培養は、マイクロキャリアの
至適濃度で用いるように計画される。
【0009】しかし、スケールアップ時には次のような
問題が生じる。あるスケールでの培養が当初の計画の細
胞濃度に達することができなかったり、酵素処理がうま
くいかず得られた細胞数が少なかった場合、計画通りの
培養量にスケールアップしたのでは、接種濃度が低くな
ってしまい。その後の培養がうまくいかない可能性があ
る。このような場合の対応としては、(1)次スケール
の培養量を低下させる、または、(2)種培養液の量を
増やす、がある。(1)では、得られた細胞数を正確に
把握したうえで、それに適した培養量及びマイクロキャ
リア量を算出しなければならない。(2)では、まず、
予備の培養液が存在していなければならない。これは、
培養コストを増大させることになる。また、予備の培養
液が存在した場合は、新規の培養に混入してくる酵素処
理を経たマイクロキャリアの量は増加する。酵素処理を
経たマイクロキャリアは、変形したり、物理的な力に対
する強度が落ちており、撹拌によって破壊されたりする
うえ、細胞の再付着率は低い。古いマイクロキャリアの
破片が培養液中にある量以上混入すると、マイクロキャ
リアに付着している細胞を損傷させてしまうことが、発
明者らの研究によって確認されている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明になる培養方法で
は、以上述べてきた課題を解決するために、次のような
手段を用いる。
【0011】既に、発明者らは特開平3−335270 号公報
で、培養槽内の培養液の吸光度を特定の範囲の波長で精
度よく測定し、これを指標として、細胞のマイクロキャ
リアへの付着や剥離状態を最適な状態に制御できる方法
を発明している。
【0012】本発明ではこれに加えて、吸光度の測定結
果から、培養液中に浮遊している細胞数及びマイクロキ
ャリア濃度を算出することを特徴とする。
【0013】まず、細胞の剥離と細胞濃度の算出につい
て説明する。酵素処理を開始すると、時間の経過ととも
に、細胞が剥離して培養液中に浮遊する。この細胞の剥
離は、培養液の吸光度の増加としてとらえられる。細胞
の剥離の進行とともに吸光度は増加し、総ての細胞が剥
離したところで最高値を示し、その後一定となる。発明
者らの既特開平3−335270 号公報では、この吸光度の単
位時間当たりの変化量を一定時間ごとに算出し、この値
の増減から、酵素処理の終点を判定する。これにより、
生存率の高い細胞を効率よく得ることができる。さら
に、本発明では、酵素処理開始から終点までの吸光度変
化の絶対量に着目する。マイクロキャリア培養で、溶液
に浮遊した細胞数(細胞濃度)と吸光度には、一次式で
示される関係がある。よって、予め細胞濃度と吸光度の
関係式を作成しておくことにより、吸光度の変化の絶対
量と培養液量から、剥離した細胞数を算出することがで
きる。このように本発明によれば、培養液をサンプリン
グすることなく、剥離した細胞数を迅速かつ簡便に精度
よく算出することができる。
【0014】次いで、算出した細胞数から、最適なスケ
ールアップ倍率、または、継代希釈率を求める。マイク
ロキャリア培養では上述したように、最適な接種濃度で
培養を開始することが重要である。最適な接種濃度は明
らかなので、算出した細胞数から、最適な接種濃度にな
る培養量を算出する。算出した培養量に応じて、種培養
液を次の培養槽に注入し、最適な接種条件で培養を開始
する。
【0015】さらに、本発明になる培養方法では、種培
養液に含まれるトリプシン処理を経たマイクロキャリア
の混入量を監視する。トリプシン処理を経たマイクロキ
ャリアは物理的強度が減少しているため、培養中に破壊
されて、破片が培養液中に浮遊することがある。この破
片は、細胞を損傷させる。発明者らは研究の結果、混入
する古いマイクロキャリアが細胞の増殖に影響を与えな
い混入量を見いだした。すなわち、種培養液量が、新し
い培養スケールの20%を超えなければ、細胞の増殖に
は影響しないことがわかった。よって、本発明では、種
培養液の使用量を算出したときに、その中に含まれるマ
イクロキャリア量が設定値を超えているか、いないかを
監視し、培養に悪影響が出ないように制御する。古いマ
イクロキャリアを全く次の培養に混入させないために
は、古いマイクロキャリアを含まない上澄み液だけを用
いる方法が考えられる。しかし、酵素処理により剥離し
た細胞は、マイクロキャリアの周囲に凝集して存在する
傾向があるため、少なくとも3回はマイクロキャリアを
洗浄して、細胞を回収しなければならない。洗浄により
上澄み液の量が増大するので、そのまま次スケールの培
養に用いることができず、遠心分離により濃縮しなけれ
ばならないので、操作が煩雑になり、装置コストが増大
し、さらに、雑菌汚染の可能性も増大してしまう。
【0016】本発明では、細胞の接種濃度と古いマイク
ロキャリアの混入許容値の両方を制御指標とすることに
より、次のように培養条件を決定する。酵素処理により
十分な細胞が得られた場合は、通常、スケールアップ倍
率または継代希釈率は10倍以上となり、古いマイクロ
キャリアの混入量は新しいマイクロキャリアの10%以
下となる。よって、古いマイクロキャリアの混入量は設
定値以下となり、問題はない。得られた細胞数が少な
く、最適接種濃度をもとに算出されたスケールアップ倍
率が5倍以下となった場合に、古いマイクロキャリアの
混入量が問題となってくる。
【0017】古いマイクロキャリアの混入量を培養に悪
影響を与えない設定値以下の量にするために、本発明で
は、まず、接種濃度を低下させる方法を検討する。これ
は、最適接種濃度よりも低く、最適接種濃度よりも細胞
の増殖が多少遅れるが、最終的な細胞濃度や細胞の活性
に問題がない接種濃度、すなわち、許容下限接種濃度で
の培養を検討するということである。最適接種濃度か
ら、許容下限接種濃度の範囲で、古いマイクロキャリア
の混入率が設定値以下となる値を検索する。あてはまる
接種濃度が存在する場合は、その接種濃度で培養を開始
する。
【0018】最適接種濃度から許容接種濃度まで接種濃
度を下げる方法を検討しても、古いマイクロキャリアの
混入量が設定値以下にならない場合は、次のような手段
を用いる。種培養液として、主に上澄み液を用いるか、
または、他のシードの種培養から種培養液を補充する。
上澄み液のみを用いる場合は、最適接種濃度、または許
容接種濃度を得られるように、スケールアップ後の培養
量を低減させる。もちろん、混入許容値以下の値まで
は、上澄み液とともに古いマイクロキャリアを混入させ
てもよい。最適接種濃度より接種濃度を下げた場合は、
細胞付着時の撹拌速度を通常の設定種より低減させる。
間歇撹拌に切り替えるなどの対応をするのがより望まし
い。
【0019】さらに、光学的に透明でないマイクロキャ
リアを用いる場合は、本発明でもマイクロキャリア自体
の吸光度が無視できなくなる。この場合は、マイクロキ
ャリアを沈降させて上澄み液の吸光度を測定するのが望
ましい。または、マイクロキャリア自体の吸光度をバッ
クグラウンドの吸光度の値として予め制御部に記憶させ
ておき、吸光度の測定結果から差し引いても良い。
【0020】また、さらに、本発明の培養方法では、培
養液の吸光度の測定結果から、算出された細胞数,接種
濃度,培養量,マイクロキャリア濃度等の値を表示及び
または記録するのが望ましい。
【0021】以上述べてきた手段により、本発明の培養
方法では、培養液をサンプリングすることなく、簡便か
つオンタイムで、マイクロキャリアの培養状態、特に、
マイクロキャリア培養のスケールアップまたは継代培養
を最適な条件に制御することができる。
【0022】本発明では、培養液の吸光度を600〜9
00nmの範囲の波長で測定する。この波長は、細胞以
外の培養液成分(培地,緩衝液,マイクロキャリア)の
吸光がほとんどない波長である。この波長範囲で吸光度
を測定することにより、培養槽内に、直接吸光度センサ
を挿入するだけで吸光度を測定できる。
【0023】また、マイクロキャリア培養では、撹拌を
停止すると、マイクロキャリアは、培養槽の底部に沈降
する。よって、吸光度センサの挿入位置を、マイクロキ
ャリアの沈降する高さ付近に設置すれば、培養液の吸光
度変化により、マイクロキャリアの沈降状態を監視でき
る。
【0024】さらに、細胞を付着させたり、剥離させた
りするとき以外の培養工程でも、本発明の方法により、
培養液の吸光度をモニタリングすることで、細胞の培養
状態を監視できる。マイクロキャリアに細胞が付着して
増殖する過程では、培養液の吸光度は余り変化しない。
よって、細胞が順調に増殖している場合は吸光度はある
一定の値を示す。一方、何らかの影響で細胞の状態が悪
くなると、細胞は、マイクロキャリアから剥離して培養
液中に浮遊する。この現象は即座に、培養液の吸光度の
増加としてとらえられる。この場合は、撹拌速度を低下
させたり、培地の交換率を上昇させる等の対策をする。
【0025】セルロース等を原料とする光学的に透明で
ない多孔質マイクロキャリアを用いる場合は、マイクロ
キャリアを沈降させて上澄み液の吸光度を測定するか、
または、マイクロキャリア自体の吸光度をバックグラウ
ントの吸光度の値として予め制御部に記憶させておき、
吸光度の測定結果から差し引く。このような多孔質マイ
クロキャリアでは、光学的に透明な表面型マイクロキャ
リアとは異なり、通常、細胞を剥離・回収して次の培養
に用いるという工程はない。これは、多孔質マイクロキ
ャリアでは、細胞がマイクロキャリアの内部で増殖する
ので細胞を剥離させにくく、結局、高い回収率を得るた
めには、過度の酵素処理をすることになり、細胞が損傷
してしまうためである。また、細胞濃度が表面型マイク
ロキャリアの10倍以上となるので、実際の医薬品の生
産スケールでも、大規模培養を必要としない。よって、
多孔質マイクロキャリアを用いる場合は、細胞の付着工
程と、通常の培養工程の監視,制御が目的となる。この
場合は、撹拌を止めてマイクロキャリアを沈降させ、マ
イクロキャリアを含まない上清の吸光度を測定すればよ
い。吸光度センサを液面の上部に設置することにより、
撹拌の停止時間を短縮でき、ほとんど時間遅れなく、吸
光度を測定することができる。
【0026】本発明では、最適な接種濃度,接種濃度の
許容下限値,最適なマイクロキャリア濃度,古いマイク
ロキャリアの混入許容量を、予め、培養制御部に記憶さ
せておくことで、迅速に最適な培養条件を設定する。こ
れらの値は、生産スケールの前に必ず実施する、ラボス
ケールの実験で決定する。これにより、大容量の生産ス
ケールでの培養で、培養に失敗するという最悪の事態が
生じる可能性を大幅に低減することができる。最適なマ
イクロキャリア濃度,古いマイクロキャリアの混入許容
量は、細胞によらずほぼ同じであるので、繰り返し設定
値を変更する必要はない。
【0027】さらに、吸光度の経時変化や、制御部が設
定した培養条件を適時ディスプレイに表示したり、記録
として印字することで、培養装置を操作する上での、安
心感や信頼性が向上する。
【0028】このように、本発明の培養方法では、培養
状態をより適切に監視・制御することが可能である。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、実施例により本発明の培養
方法を詳細に説明する。
【0030】図1は本発明の培養方法のフローチャート
を(a)〜(c)に分けて示した図である。図2は図1の
フローチャートに従って、付着性動物細胞のマイクロキ
ャリア浮遊撹拌培養を実現することのできる培養装置の
一実施例を示す図である。図1のフローチャートに基づ
いた、図2の培養装置を用いた本発明の付着性動物細胞
のマイクロキャリア浮遊撹拌培養、特にスケールアップ
培養の操作について具体的に説明する。
【0031】まず、図2の培養装置の構成について説明
する。培養装置は、吸光度センサ2cを具備する培養槽
1、同じく吸光度センサ2a,2bをそれぞれ有する種
培養槽3a及び3b、酵素溶液貯槽4,酵素活性停止液
貯槽5,マイクロキャリア洗浄液貯槽6,マイクロキャ
リア調製槽7,使用済み培地貯槽8,新鮮培地貯槽9,
培地調製槽10、及び、これらの貯槽を接続する付属の
配管,バルブ,ポンプ及び図示していないが培養装置制
御部からなる。
【0032】スケールアップ培養では、まず、種培養液
の調製を、図1(c)に従って、次のように行う。種培
養槽3a,3bの撹拌を停止し、マイクロキャリアを沈
降させ、上澄み液を取り除く。洗浄液をマイクロキャリ
ア洗浄液貯槽6を注入して撹拌し、マイクロキャリアを
洗浄する。再び、撹拌を停止してマイクロキャリアを沈
降させ、上澄み液を取り除く。この洗浄操作は2回以上
行うのが望ましい。次いで、所定量の酵素溶液を挿入し
撹拌して、細胞を剥離させる。この時点から、吸光度セ
ンサ2a,2bで種培養槽内の液の吸光度を測定する。
測定結果は、図示していないが培養装置制御部(以下に
制御部と略記する)に送られ、吸光度の単位時間当たり
の変化量が算出される。細胞の剥離とともに吸光度は直
線に増加するので、変化量は正の値を示す。算出した変
化量を、一つ前の算出結果と比較し、変化量が小さい値
を示した時点で、酵素処理が終了したと判定し、酵素活
性停止液を注入し剥離処理を終了する。さらに、吸光度
の測定結果から、酵素処理前の吸光度と酵素処理後の吸
光度の差から、剥離細胞による吸光度の増加分を求め、
さらに、予め、制御部に記憶させてあった細胞濃度と吸
光度の関係式から剥離した細胞濃度、最終的には、細胞
数を算出する。
【0033】ついで、制御部では、図1(c)のフロー
チャートに基づき、次のようにスケールアップ培養の条
件を決定する。求めた細胞数と次のスケールの培養量か
ら、最適接種濃度でかつ古いマイクロキャリアの混入量
が設定値以下となるスケールアップが可能であるかを計
算する。可能であれば、その条件を表示し、次の培養に
移る。培養槽1に、所定量のマイクロキャリア溶液をマ
イクロキャリア調製槽7から注入し、さらに、必要なら
ば、培地を培養槽に注入して、撹拌して混合し、培養温
度まで加温しておく。ここに、種培養槽3as,3b内
の液を撹拌して均一に混合した状態で、所定量を培養槽
に注入する。注入したら撹拌を開始して、培養をスター
トする。
【0034】培養開始時、すなわち、細胞付着時は図1
(a)のフローに従う。吸光度センサ2cを用いて、培
養槽内の培養液の吸光度を測定する。測定結果は制御部
におくられ、吸光度の変化量が算出される。細胞がマイ
クロキャリアに付着すると、吸光度は減少する。よって
細胞の剥離の時とは逆に、吸光度の変化量が負の値にな
るので、変化量の絶対値を指標とする。変化量の絶対値
が、予め制御部に記憶させた設定値以上であれば、細胞
の付着は順調に進行しており、培養条件は適していると
判定される。変化量の絶対値が設定値よりも小さい場合
は、細胞の付着はうまく進行しておらず、培養条件が不
適当であると判定される。これを改善するために、制御
部は、培養槽の撹拌速度を低下させる。または、間歇撹
拌に切り替える等の対応をし、細胞の付着条件を改善す
る。吸光度の変化量が減少し、変化量がゼロ、すなわ
ち、吸光度が一定の値を示した時点で、制御部では、細
胞の付着が終了したと判定し、最終培養量まで、培地を
新鮮培地貯槽9から注入し、通常の培養に移る。
【0035】通常の培養で培養状態の制御は、図1
(b)のフローに従う。培養中に培養液の吸光度を測定
する。培養状態に変化がなければ、吸光度は一定の値と
なる。何らかの影響で細胞の状態が悪くなると、細胞が
剥離して、培養液の吸光度が上昇する。制御部は、吸光
度の上昇を、培養状態不良と判定し、撹拌速度の低下,
培地交換速度の上昇,成長因子の添加量の増加等の改善
策を実施する。以上が、最適接種濃度でスケールアップ
が実施された場合のフローである。
【0036】次に、最適接種濃度でスケールアップでき
ない場合について説明する。
【0037】図1(c)で、最適接種濃度でかつ混入マ
イクロキャリア量が設定値以下とならなかった場合、制
御部は次のようにスケールアップ条件を決定する。ま
ず、検討する接種濃度条件を、最適接種濃度から最適接
種濃度よりも低い許容接種濃度に変更した場合、混入マ
イクロキャリア量を設定値以下にすることが可能かどう
かを計算する。可能な場合は、決定した条件を表示し、
次の培養へと移る。さらに、許容接種濃度まで接種濃度
を下げても条件を満たせない場合は、別の予備の種培養
槽からの細胞の補充を検討し、スケールアップ条件を求
める。予備の種培養槽がない場合は、上清のみの細胞を
用いて、次の培養を実施する。この場合は、最適接種濃
度となる培養量を算出し、次のスケールの培養量を低下
させる。
【0038】さらに、上述の方法により、実際に、付着
性動物細胞のマイクロキャリア浮遊撹拌培養を実施した
時の培養結果の一例について、図3を用いて説明する。
【0039】培養には、付着性動物細胞としてCHO−
K1細胞を、マイクロキャリアはCytodex2(ファルマシ
ア社製)を5g/Lの濃度で用い、培地は、基本合成培
地ERDF培地(極東製薬製)に、成長因子として新生
子牛血清(ギブコ社)を5〜10%(W/W)添加して
用いた。
【0040】培養1は、培養量1L、接種濃度は最適接
種濃度の2×105cells/mlとした。培養2の培養量
は10L、最適接種濃度は3×105cells/mlと設定
した。培養1から培養2へのマイクロキャリア混入量
は、次のスケールの培養に用いるマイクロキャリア量の
15%以下と設定した。
【0041】図3(a)のグラフは、種培養である培養
1の培養結果を示す。培養量は細胞が付着するまで最終
培養量の4分の1の250mlとし、10rpm で連続撹
拌した。培養開始後、8時間で培養液の吸光度はほぼ一
定値となった。そのまま、細胞がマイクロキャリア上で
ある程度伸展するまで、培養条件は変えば、培養20時
間目に、培養量を1Lとし、撹拌速度を40rpm まで上
昇させた。その後、毎日一回、500mlの培地交換に
より、細胞は順調に増殖し、培養7日目に細胞濃度は5
×106cells/mlとなった。この時点で種培養を終了
させ、培養2に移行するため、酵素処理を行った。吸光
度の増加量から算出された細胞数は3×109 個であっ
た。よって、最適接種濃度で、マイクロキャリアの混入
量を設定値以下となる条件を検討した。この結果、培養
1の酵素処理済み液全量を用いると最適接種濃度で、マ
イクロキャリア混入量は10%となり、条件を満足する
ので10Lへスケールアップし、培養2を開始した。
【0042】図3(b)には、(a)をスケールアップ
した培養2の結果(1)と同様に1Lから10Lへのス
ケールアップを別の条件で実施した比較例(2)(3)
(4)を示す。
【0043】最適条件でスケールアップした(1)で
は、細胞の付着条件及び経過とともに培養1と同様であ
った。その後、細胞は順調に増殖し、培養8日目に細胞
濃度が約5×106cells/mlを示し、その後、定常期
に入り、以下、15日目までその濃度を維持した。培養
中の吸光度の上昇は認められなかった。
【0044】(2)は種培養において得られた細胞数が
少なく、制御部が最適接種濃度での培養は不可と判断
し、許容接種濃度1×105cells/mlで培養を開始し
た場合の結果を示す。(1)と比較して、接種濃度が低
いので、培養初期の細胞濃度は低いが、培養7日目で
(1)とほぼ等しくなり、その後の定常期においても、
同様に細胞濃度を維持できた。
【0045】(3)の比較のために、接種濃度を許容接
種濃度よりも低い5×104cells/mlとした時の培養
結果を示す。細胞の付着において、吸光度の変化量が小
さく、付着条件不適と判定されたので、撹拌を停止し、
その後、15分ごとに3分間10rpm で撹拌する間歇撹
拌に切り替えた。20時間後、吸光度がほぼ一定の値と
なったので、培地を10Lまでフィルアップし、連続撹
拌に切り替えて、培養を継続した。しかし、培養3日目
まで細胞濃度がほとんど変化しないラグフェイズが観察
された。その後、細胞は増殖したが、細胞濃度は2×1
6cells/mlまでしか上昇しなかった。さらに、その
後、定常期において、吸光度の上昇、すなわち、細胞の
一部剥離が観察され、細胞濃度は1〜2×106cells/
mlの間で増減した。これは、接種濃度が低すぎたため
に、細胞の状態が悪くなり、その後も回復できなかった
ためと考えられる。
【0046】(4)は、最適接種濃度を得るために、マ
イクロキャリアの混入量を25%としたときの培養結果
を示す。細胞は培養初期は、ほぼ培養(1)と同じ増殖
曲線となった。しかし、次第に培養液中の吸光度が上昇
し、培養液の吸光度は、培養(1)よりも平均的に少し
高い状態になった。さらに、細胞濃度は(3)と同様に
2×106cells/mlまでしかせず、定常期において細
胞濃度の増減が観察された。これは、マイクロキャリア
の混入量が設定値よりも高いために、古いマイクロキャ
リアの破片が細胞を損傷させたのが原因であると考えら
れる。よって、古いマイクロキャリアの混入量を設定値
以下におさえることは重要である。
【0047】以上、実施例を用いて述べてきたように、
本実施例によれば、容易に最適なスケールアップ条件を
決定することができ、結果として、最適な培養状態に制
御することができる。
【0048】
【発明の効果】本発明になる培養方法によれば、培養液
をサンプリングすることなく培養状態を監視するので、
サンプリング回数を従来の培養方法よりも減らすことが
でき、コンタミネーションの可能性を大幅に低減でき
る。また、サンプリングをしないので、サンプリング,
分析というステップがないので、培養状態の判定に時間
遅れが生じず、オンタイムで監視することができる。よ
って、培養状態を、時間遅れなく、より最適な状態に維
持・制御することが可能である。
【0049】さらに、本発明では、工業スケールでの培
養において、不可欠な継代培養やスケールアップ培養に
おいて、種培養での細胞の状態に応じて、細胞の接種濃
度,培養量,マイクロキャリア濃度,古いマイクロキャ
リアの混入量を考慮した最適な培養条件を容易に設定す
ることができる。よって、細胞や培養用試薬を効率よく
使用することができるうえ、培養が失敗する可能性も低
くなる。よって、培養コストが低減でき、ひいては、効
率的な生理活性物質の生産の実施が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】培養工程のフローチャート。
【図2】本発明の培養方法を実現する装置の一例を示す
系統図。
【図3】本発明の培養方法による培養結果の一例を示す
特性図。
【符号の説明】
1…培養槽、2a〜2c…吸光度センサ、3a〜3c…
種培養槽、4…酵素液貯槽、5…酵素活性停止液貯槽、
6…マイクロキャリア洗浄液貯槽、7…マイクロキャリ
ア調製槽、8…使用済み培地貯槽、9…新鮮培地貯槽、
10…培地調製槽。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中野 隆盛 山口県下松市大字東豊井794番地 株式会 社日立製作所笠戸工場内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】マイクロキャリアを用いた付着性動物細胞
    の浮遊撹拌培養において、培養液の吸光度を600nm
    〜900nmの範囲の波長で測定し、上記測定結果から
    培養液中の細胞濃度、または、マイクロキャリア濃度を
    算出し、算出結果から細胞の付着状態、または、剥離状
    態を判定し、判定結果に基づき培養工程を制御すること
    を特徴とする付着性動物細胞の培養方法。
JP26962896A 1996-10-11 1996-10-11 付着性動物細胞のマイクロキャリア培養方法 Pending JPH10113167A (ja)

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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008515412A (ja) * 2004-10-09 2008-05-15 アイキュリス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト ウイルス物質の製造方法
JP2018050550A (ja) * 2016-09-29 2018-04-05 佐竹化学機械工業株式会社 撹拌培養装置
CN112313324A (zh) * 2018-07-05 2021-02-02 三菱电机株式会社 细胞培养装置、细胞培养方法和程序
CN116080962A (zh) * 2022-12-15 2023-05-09 中博瑞康(上海)生物技术有限公司 一种大体积细胞置换分装方法及装置

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