JPH10110245A - 鉄損の低いacsr用鋼線 - Google Patents

鉄損の低いacsr用鋼線

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JPH10110245A
JPH10110245A JP26448696A JP26448696A JPH10110245A JP H10110245 A JPH10110245 A JP H10110245A JP 26448696 A JP26448696 A JP 26448696A JP 26448696 A JP26448696 A JP 26448696A JP H10110245 A JPH10110245 A JP H10110245A
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浩 大羽
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 送電線用ケーブルのAl導線を補強するため
に使用される鋼撚線の素線の成分と製造条件を定めるこ
とにより鉄損による送電時の電力ロスを低減することを
目的とする。 【解決手段】 C,Siおよびその他の合金元素の含有
量を限定した鋼を線材とする。さらに冷間伸線により高
強度化する。さらにZnメッキあるいは所定のAlとS
i量を含有する合金メッキを施すことにより耐食性を向
上させる。さらに総減面率で20%〜80%の冷間伸線
を施すことによりメッキにより低下した強度を補償す
る。さらに300℃〜370℃の範囲で加熱することに
より伸びを回復させる。必要に応じて、加熱中に常温で
の引張応力の20%〜50%の応力を負荷することによ
り強度を上昇させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は送電線用ケーブルの
Al導線を補強するために使用される鋼撚線の素線(A
CSR(Aluminium Conductor Steel Reinforced)鋼
線)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ACSRは米国ALCOA社が考案し、
Alの軽量により送電線として多く用いられている。し
かしAlは強度が低いため、補強用にACSRの中心部
にZnやAlをメッキした鋼線と組み合わせて用いる。
通常、当該鋼線にはJIS SWRH62〜77Aを素
線として用い、冷間伸線後の鋼線を3〜19本に縒りあ
わせて用いる。このような心線は強度、伸び、捻回値、
巻き付き試験時の折損などに関する規定があるが、AC
SRとして用いた場合の鉄損に関する規定は特に定めら
れていない。しかるに現実のACSR用鋼心線には、鋼
より線の周囲によりあわせた硬Al線に電流が流れるた
め、誘導電流による鉄損が生ずるという欠点があった。
この鉄損は大きな送電ロスの原因となるにもかかわら
ず、現状ではこの鉄損を防止する手段は何もとられてい
ない。
【0003】一般にトランスやモーターの鉄損を低減さ
せるために電磁鋼板が使用されており、圧延方向に対し
て結晶方位をそろえた方向性電磁鋼板、結晶方位をラン
ダムに配列した無方向性電磁鋼板が知られている。これ
らの電磁鋼板では結晶方位を制御するために製造工程で
はCを含む鋼を用い、最終製品では脱炭焼鈍等によりC
を30ppm 以下に抑える。この方法は多大な製造コスト
を要する。またこれらはいずれも薄板に関するものであ
り、より線を周囲の硬Al線とより合わせた場合に鉄損
を低減させる方法については報告はない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、鋼素線の成
分系と製造条件を特定することにより、送電時の鉄損を
低減しうるACSR用鋼心線とその製造法に関するもの
である。
【0005】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するた
めに、本発明は鋼材の成分を限定し、さらに鋼材の製造
条件を選定することにより送電時の電力ロスを低減する
ことを可能とするACSR用鋼心線とその製造法を提供
するものである。即ち要旨とするところは以下のとおり
である。 (1)重量%で、C :0.01%以下、Si:0.6
%〜6.5%、Mn:0.10%〜1.5%、残部がF
eおよび不可避的不純物からなることを特徴とする鉄損
の低いACSR用鋼線。 (2)重量%で、Al:0.002%〜0.050%を
含有することを特徴とする(1)に記載の鉄損の低いA
CSR用鋼線。 (3)重量%で、Nb:0.002%〜0.10%、T
i:0.002%〜0.10%の1種または2種以上を
含有することを特徴とする(1)乃至(2)のいずれか
1つに記載の鉄損の低いACSR用鋼線。 (4)重量%で、Cu:0.02%〜0.5%、 N
i:0.02%〜0.5%、Cr:0.02%〜0.5
%、 Mo:0.02%〜0.5%、Co:0.02%
〜0.5%、 W :0.02%〜0.5%の1種また
は2種以上を含有することを特徴とする(1)乃至
(3)のいずれか1つに記載の鉄損の低いACSR用鋼
線。 (5)重量%で、V:0.002%〜0.10%を含有
することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか1つ
に記載の鉄損の低いACSR用鋼線。 (6)重量%で、B:0.0002%〜0.0025%
を含有することを特徴とする(1)乃至(5)のいずれ
か1つに記載の鉄損の低いACSR用鋼線。 (7)重量%で、Rem:0.002%〜0.10%、
Ca:0.0003%〜0.0030%、Mg:0.0
003〜0.01%の1種または2種以上を含有するこ
とを特徴とする(1)乃至(6)のいずれか1つに記載
の鉄損の低いACSR用鋼線。 (8)鋼線をZnメッキ、または重量比で、Al:2〜
12%、Si:0.01〜0.12%、残余をZnおよ
び不可避的不純物からなる合金浴を用いて溶融メッキす
ることを特徴とする(1)乃至(7)のいずれか1つに
記載の鉄損の低いACSR用メッキ鋼線。 (9)メッキ後の鋼線を総減面率20〜80%で伸線す
ることを特徴とする(8)に記載の鉄損の低いACSR
用メッキ鋼線。 (10)伸線後の鋼線を300度以上370度以下の温
度でブルーイング処理を施すことを特徴とする(9)に
記載の鉄損の低いACSR用鋼線。 (11)伸線後の鋼線を300度以上370度以下の温
度で加熱し且つ加熱中に鋼線の引張強度の20%〜50
%の範囲の応力を加えることを特徴とする(9)に記載
の鉄損の低いACSR用メッキ鋼線。
【0006】
【発明の実施の形態】以下本発明について詳細に説明す
る。本発明の根幹をなす技術思想は以下のとおりであ
る。一般に、鉄損はヒステリシス損と渦電流損に分離す
ることができる。前者は結晶方位と鋼の純度の影響を受
けることが知られている。板の場合は圧延面に(11
0)〔001〕方位(いわゆるGoss方位)が集積す
ることが望ましく、また純度が高いほど良い。しかるに
高強度の鋼線は多量のCを含むことにより高強度化して
いるため、Cを低減する場合はそれに代替する高強度化
の手段をとる必要がある。さらに伸線加工は強烈な繊維
状集合組織を発達させるため、伸線材特有の集合組織以
外の結晶方位を得ることは不可能に近い。一方、後者の
渦電流損は固有抵抗が大きいほど小さくなるため、Si
添加が有効であることが知られている。しかるに高Si
鋼は延性が低く、実際に伸線加工する場合に容易に破断
する。このような問題点を総合的に解決するために本発
明者らは種々検討を加え下記の解決策を見出だした。
【0007】ヒステリシス損を低減するためにはC含有
量の低減が必須である。そのためCの低減に伴う強度の
低下を別の手法で補う必要がある。一般にC含有量が大
きいほど伸線加工による強度上昇は大きくなるため、C
量を低減すると伸線加工による高強度化もあまり期待で
きない。しかるに、Cの代わりにSiを高めることによ
り伸線加工による強度上昇量を大きくとることが可能で
ある。単にSiを高めると伸線加工性を阻害して伸線中
に容易に破断してしまうが、C量を低くすることにより
伸線加工性を阻害せずに強度を高めることができ且つヒ
ステリシス損も低減することが可能となる。良好な伸線
加工性を保つためにはCとSiの含有量を所定の範囲に
おさめる必要がある。
【0008】以下に化学成分および金属組織の限定理由
を詳細に説明する。まず本発明の成分の限定理由につい
て述べる。Cは、線材を強化するのに有効な元素である
が、鉄損を著しく増大させるためにその含有量を厳しく
制限する必要がある。0.01%を超えると鉄損の劣化
が顕著であるため含有量を0.01%以下とする。一
方、Cの下限は特に規制するものでなく少なければ少な
い程良い。
【0009】Siは脱酸元素として有効であるとともに
固有抵抗を増して渦電流損を低減させる。0.6%未満
の含有量ではその効果が小さい。一方、6.5%を越え
ると伸線性が劣化するために含有量の範囲を0.6%以
上6.5%以下とする。Mnは金属の強靱化に有効な元
素であり、0.10%未満の添加では十分な効果が得ら
れない。一方、その含有量が1.5%を越えると溶着金
属の靱性が劣化する。
【0010】TiおよびNbはいずれも微量の添加で結
晶粒の微細化と析出硬化の面で有効に機能するが、添加
量が少ないとその効果が得られず、また過度の量の添加
は鉄損の増加をもたらすため、Nb,Tiともその添加
量をTi:0.002%〜0.10%、Nb:0.00
2%〜0.10%の範囲に限定する。Cu,Ni,C
r,Mo,Wはいずれも鋼の強度を高めることができる
が、添加量が少ないと固溶強化による強度上昇の効果が
得られず、また過度の量の添加は延性を劣化させるた
め、添加量をCu:0.02%〜0.5%、Ni:0.
02%〜0.5%、Cr:0.02%〜0.5%、M
o:0.02%〜0.5%、W:0.02%〜0.5%
の範囲に限定する。
【0011】Vは、鋼の強度を高めるのに有効である
が、添加量が少ないとその効果が得られず、また過度の
量の添加は鉄損の増加をもたらすため、その添加量を
0.002%〜0.10%の範囲に限定する。Bは鋼の
焼入れ性を向上させる元素である。本発明における場
合、その添加により鋼の強度を高めることができるが、
添加量が少ないと焼き入れ性が向上せず、また過度の添
加はBの析出物を増加させて延性を損なうためその含有
量を0.0002%〜0.0025%の範囲とする。
【0012】Rem,CaおよびMgはSまたは酸素と
結び付いて金属組織を微細化するのに有効である。少量
の添加ではSがそのまま残り、また過度の添加は鉄損の
増加をもたらすため、Rem:0.002%〜0.10
%、Ca:0.0003%〜0.0030%、Mg:
0.0003%〜0.01%の範囲で添加する。Alは
脱酸元素として有効である。0.002%未満の含有量
ではその効果がなく、0.05%を越えると表面疵がで
やすくなるため、その含有量を0.002%〜0.05
0%の範囲とする。
【0013】次に本発明における製造条件の限定条件に
ついて述べる。本発明の鋼線はその製造工程をとくに定
める必要はない。すなわち、通常の製鋼工程で精錬およ
び鋳造された鋼塊または鋳片を出発点として必要に応じ
て分塊圧延を施し、通常の線材圧延工程で鋼線としたも
のを対象としている。各工程での操業条件は多岐にわた
るがそのいずれを用いても有効である。
【0014】通常ACSRに用いられる鋼線は耐食性を
付与するためにZnメッキまたはAl−Zn等の合金メ
ッキを施す必要がある。通常のZnメッキでも耐食性は
向上するが、Alを添加するとより良好な耐食性を示す
ため、使用環境の過酷度合に応じてAl量を選択すれば
良い。ただし、Al量が2%未満では耐食性の向上効果
は不十分であり、12%を越えると融点上昇によりメッ
キ温度が高くなるため鋼線強度の低下をもたらす。よっ
てメッキ浴中のAlの量は、重量%で2%以上12%以
下に限定する。一方、メッキ浴中にSiを添加する理由
はメッキ槽などの鋼製の設備・機器からFeが溶け出る
のを抑制し、メッキ浴中のドロスの発生を抑えることに
ある。Si添加量が0.01%未満ではドロスが発生
し、0.12%を越えるとSiがメッキ浴中に溶解しな
いため、その添加量を0.01%以上0.12%未満に
限定する。
【0015】通常メッキ工程を経ることにより強度が低
下するため、メッキ後伸線加工(アフタードロー)を施
し強度を補償する。その際の総減面率が20%未満では
強度が十分に回復せず、80%を越えると延性が著しく
劣化するので、総減面率の範囲を20%以上80%未満
に限定する。このような伸線加工をすると製品としての
伸びが劣化するため、再度加熱して伸びを確保する必要
がある。その際の加熱温度が300℃未満では伸びが十
分に回復せず、370℃を越えるとメッキ層が軟化して
しまうため、加熱温度の範囲を300℃以上370℃未
満に限定する。さらにメッキにより低下した強度を高め
るには、加熱中に応力を負荷することが有効である。そ
の際の負荷応力が鋼線の常温での引張り強度の20%未
満では強度上昇が不十分であり、50%を越えると局部
的に塑性変形が生じて延性を劣化させるため、負荷応力
の範囲を鋼線の常温での引張り強度の20%以上50%
以下に限定する。
【0016】
【実施例】次に本発明を実施例にもとづいて詳細に説明
する。まず表1に示す成分の鋼線を通常の転炉法による
精錬(一部真空溶解)、連続鋳造(一部鋼塊法+分塊圧
延)、線材圧延(熱間圧延)により製造した。さらに冷
間伸線により所定の直径まで引いて強度を調整した。冷
間伸線後、一部のものについては表2に示す条件でメッ
キ、アフタードロー、ブルーイング、温間ストレッチン
グの各処理を施した。これらの鋼線の機械的性質および
耐食性倍率を表2に合わせて示す。ここで耐食性倍率は
下記の式で計算した。
【0017】
【数1】
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】これらの鋼線を直径270mmのリング状に
約6巻し、さらにその周囲に1次側で700巻、2次側
で20巻の銅線を巻いて鉄損の測定に供した。鉄損の測
定のためには交流での磁束密度と磁界強さの関係を測定
した。周波数は50Hzとした。磁界強さ(Hm)は10
00〜4000(A/m)の範囲で、また磁束密度(B
m)は0.2〜1.5(T)の範囲で変化させて鉄損を
測定した。鉄損の測定結果を表3に示す。
【0021】
【表3】
【0022】表2に示したように、本発明の鋼は極低C
鋼ではあるものの1000MPa を越える引張強度を有し
ている。さらに伸びも比較的良好でACSRとしての仕
様に十分耐えるものである。メッキをほどこすことによ
り、耐食性が確保できるが、特にZn−Alメッキを施
した場合の耐食性倍率が大きく、効果が顕著であること
がわかる。
【0023】また、表3に示したように、本発明の鋼は
極めて鉄損が低い。特に鉄損はC量が低くSi量が高い
ほど低くなる傾向が見られるが、本発明鋼のいずれの鉄
損も、現状使用されている0.82%C鋼に比較して半
減していることがわかる。
【0024】
【発明の効果】このように本発明は強度、伸び、耐食性
に優れさらに従来鋼よりはるかに鉄損も低い。このこと
はACSRの心線として用いた場合に電力ロスの大幅な
低減を可能とし省エネルギーに多大な効果をもたらすも
のである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C23C 2/02 C23C 2/02 (72)発明者 大羽 浩 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株式 会社君津製鐵所内 (72)発明者 薮本 政男 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.01%以下、 Si:0.6%〜6.5%、 Mn:0.10%〜1.5%、 残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴と
    する鉄損の低いACSR用鋼線。
  2. 【請求項2】 重量%で、Al:0.002%〜0.0
    50%を含有することを特徴とする請求項1に記載の鉄
    損の低いACSR用鋼線。
  3. 【請求項3】 重量%で、Nb:0.002%〜0.1
    0%、Ti:0.002%〜0.10%の1種または2
    種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項
    2のいずれか1つに記載の鉄損の低いACSR用鋼線。
  4. 【請求項4】 重量%で、 Cu:0.02%〜0.5%、 Ni:0.02%〜
    0.5%、 Cr:0.02%〜0.5%、 Mo:0.02%〜
    0.5%、 Co:0.02%〜0.5%、 W :0.02%〜
    0.5% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の鉄損の低いA
    CSR用鋼線。
  5. 【請求項5】 重量%で、V:0.002%〜0.10
    %を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の
    いずれか1つに記載の鉄損の低いACSR用鋼線。
  6. 【請求項6】 重量%で、B:0.0002%〜0.0
    025%を含有することを特徴とする請求項1乃至請求
    項5のいずれか1つに記載の鉄損の低いACSR用鋼
    線。
  7. 【請求項7】 重量%で、 Rem:0.002%〜0.10%、 Ca:0.0003%〜0.0030%、 Mg:0.0003〜0.01% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の鉄損の低いA
    CSR用鋼線。
  8. 【請求項8】 鋼線をZnメッキ、または重量比で、 Al:2〜12%、 Si:0.01〜0.12%、 残余をZnおよび不可避的不純物からなる合金浴を用い
    て溶融メッキしたことを特徴とする請求項1乃至請求項
    7のいずれか1つに記載の鉄損の低いACSR用メッキ
    鋼線。
  9. 【請求項9】 メッキ後の鋼線を総減面率20〜80%
    で伸線したことを特徴とする請求項8に記載の鉄損の低
    いACSR用メッキ鋼線。
  10. 【請求項10】 伸線後の鋼線を300℃以上370℃
    以下の温度でブルーイング処理を施すことを特徴とする
    請求項9に記載の鉄損の低いACSR用鋼線。
  11. 【請求項11】 伸線後の鋼線を300℃以上370℃
    以下の温度で加熱し且つ加熱中に鋼線の引張強度の20
    %〜50%の範囲の応力を加えたことを特徴とする請求
    項9に記載の鉄損の低いACSR用メッキ鋼線。
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