JPH0998495A - ステレオスピーカ装置 - Google Patents

ステレオスピーカ装置

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JPH0998495A
JPH0998495A JP7254232A JP25423295A JPH0998495A JP H0998495 A JPH0998495 A JP H0998495A JP 7254232 A JP7254232 A JP 7254232A JP 25423295 A JP25423295 A JP 25423295A JP H0998495 A JPH0998495 A JP H0998495A
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Akio Mizoguchi
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Abstract

(57)【要約】 【課題】良好なステレオ感が得られる聴取範囲を拡大す
る。 【解決手段】スピーカ装置11L,11Rのスピーカ1
4L,14Rを、夫々その主軸がボックス12L,12
Rの正面方向に対して反時計方向、時計方向に所定角度
だけ傾斜するように取り付ける。ボックス12L,12
Rの上面に、夫々音響抵抗材料15L,15Rで覆われ
た音波放射口16L,16Rを設ける。ボックス内の空
気の呈する音響容量と音波放射口の音響抵抗及び音響質
量とで音響的な低域フィルタを構成し、その低域フィル
タを通じて音波放射口から放射される音波の通過帯域内
での群遅延時間を利用し、スピーカ装置11L,11R
の夫々に全指向性と両指向性の組み合わせで得られる指
向性を付与する。スピーカ装置11L,11Rの中心線
上から外れた聴取位置においては左右両チャネルの距離
減衰の違いに基づく音圧レベル差が補正され、良好なス
テレオ感が得られる聴取範囲が拡大される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、2チャネルステ
レオ信号を再生するステレオスピーカ装置に関する。詳
しくは、左チャネル用および右チャネル用のスピーカ装
置に両指向性と全指向性の組み合わせで得られる指向性
を持たせると共に、この左チャネル用および右チャネル
用のスピーカ装置の音声再生用スピーカをそれぞれその
主軸が内方に向くようにスピーカボックスに取り付ける
ことによって、比較的小型なシステム構成で良好なステ
レオ感が得られる聴取範囲を拡大できるようにしたステ
レオスピーカ装置に係るものである。
【0002】
【従来の技術】図15は、従来のステレオスピーカ装置
が試聴室100内に配置された状態を示している。この
スピーカ装置は、左チャネル音声信号を再生する音声信
号再生用スピーカを有する左チャネル用スピーカ装置1
Lと、右チャネル音声信号を再生する音声信号再生用ス
ピーカを有する右チャネル用スピーカ装置1Rとから構
成されている。
【0003】このようなスピーカ装置によれば、基本的
には、スピーカ装置1L,1Rの中心線M上の聴取位
置、例えばa点において、スピーカ装置1L,1Rの間
に正しい音像定位が得られ、これにより2チャネルステ
レオ本来のサウンドステージが再現される。しかし、中
心線M上から外れた聴取位置、例えばb点では、音波の
距離減衰の違い等によってスピーカ装置1Rの方向に片
寄った音像定位となり、2チャネルステレオとしての本
来のサウンドステージが再現されなくなる。
【0004】すなわち、図15において、スピーカ装置
1L,1Rの音声信号再生用スピーカを同じ信号で駆動
すると、スピーカ装置1L,1Rの中心線M上の聴取位
置、例えばa点での音像は、矢印で示すように中央前方
に定位する。したがって、通常のステレオ信号を再生す
ると、スピーカ装置1L,1Rの間に連続したサウンド
ステージが再現される(一点鎖線Laで図示)。
【0005】ここで、2チャネルステレオ音響の音像定
位については、聴感上、次の性質が知られている。スピ
ーカ装置1L,1Rの中心線M上の聴取位置、例えばa
点における音像は、スピーカ装置1L,1Rからの音波
の音圧にレベル差があると、音圧レベルの高いスピーカ
装置の方向に移動する。また、スピーカ装置1L,1R
の音声信号再生用スピーカを駆動する信号の何れかに、
1〜30msの遅延時間を与えると、スピーカ装置1
L,1Rの中心線M上の聴取位置、例えばa点における
音像は、音波が時間的に早く到達するスピーカの方向に
移動する。この現象は、先行効果と呼ばれ、良く知られ
ている。
【0006】このような聴感上の性質をふまえて、スピ
ーカ装置1L,1Rの中心線M上から外れた聴取位置、
例えばb点での音像定位を考えてみる。このb点では、
受音点とスピーカ装置1L,1Rの距離が異なるため、
スピーカ装置1L,1Rの指向性が全指向性の場合、ス
ピーカ装置1L,1Rからの音波に到達時間差が生じる
と共に音圧レベル差が生じる。すなわち、到達時間はス
ピーカ装置1Rからの音波の方が早く、音圧レベルはス
ピーカ装置1Rからの音波の方が高くなる。
【0007】したがって、スピーカ装置1L,1Rの中
心線M上から外れた聴取位置、例えばb点での音像は、
上述の音圧レベル差と、時間差による先行効果とが加わ
って、図15に矢印で示すようにスピーカ装置1Rの方
向に著しく片寄って定位する。このため、通常のステレ
オ信号を再生した場合のサウンドステージは、スピーカ
装置1R側に片寄ったものとなる(二点鎖線Lbで図
示)。
【0008】上述したサウンドステージの片寄りの問題
の改善、つまり良好なステレオ感が得られる聴取位置の
拡大を意図した2チャネルステレオ音響の再生方法につ
いては、従来スピーカの指向性を利用する方法が提案さ
れている。図16は、スピーカ装置1L,1Rの音声信
号再生用スピーカ2L,2Rをそれぞれその主軸(基準
軸)が中央聴取位置から見て45°程度内方に向くよう
に密閉形キャビネット3L,3Rに取り付けたものであ
って、スピーカ2L,2Rの振動板が有限な面積を持っ
ていることに基づく中・高域周波数におけるスピーカ自
身の持つ指向性を利用した方法である。また、図17
は、スピーカ装置1L,1Rの中・高域周波数を受け持
つ音声信号再生用スピーカ4L,4Rとして両指向性
(8字形の指向性)スピーカを使用すると共に、スピー
カ4L,4Rをそれぞれその主軸が中央聴取位置から見
て45°程度内方に向くように前面が開放されたキャビ
ネット5L,5R内のバッフル板6L,6Rに取り付け
たものである。なお、実線aL,aRはそれぞれスピーカ
4L,4Rの指向性を示している。
【0009】図16および図17に示す例によれば、ス
ピーカ装置1L,1Rの放射音波に指向性を持たせるこ
とで、中心線Mより外れた聴取位置、例えばb点(図1
5参照)では、スピーカ装置1Rからの音波の音圧レベ
ルが下がり、スピーカ装置1Lからの音波の左チャネル
の音圧レベルが若干上がり、左右両チャネルの距離減衰
の違いに基づく音圧レベル差が補正される方向に働き、
良好なステレオ感が得られる聴取位置が拡大される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、図16に示す
例によれば、より低い周波数から指向性を付けようとす
ると、スピーカ2L,2Rとして口径の大きいものを用
いる必要があり、システム構成が大型となる。また、図
17に示す例によれば、再生帯域の低域限界を広げよう
とすると、スピーカ4L,4Rを取り付けるバッフル板
6L,6Rを大きくする必要があり、図16に示す例と
同様に、システム構成が大型となる。
【0011】そこで、この発明では、比較的小型なシス
テム構成で良好なステレオ感が得られる聴取範囲を拡大
できるステレオスピーカ装置を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明は、左チャネル
音声信号を再生する第1のスピーカを有する左チャネル
用スピーカ装置と、右チャネル音声信号を再生する第2
のスピーカを有する右チャネル用スピーカ装置とからな
るステレオスピーカ装置において、左チャネル用スピー
カ装置の第1のスピーカで構成される第1のスピーカ部
および右チャネル用スピーカ装置の第2のスピーカで構
成される第2のスピーカ部はそれぞれスピーカの前方主
軸上で最大感度を持つ両指向性と全指向性の組み合わせ
で得られる指向性を有し、左チャネル用スピーカ装置の
第1のスピーカおよび右チャネル用スピーカ装置の第2
のスピーカはそれぞれその主軸がスピーカボックスの正
面方向に対して反時計方向および時計方向に第1の角度
だけ傾斜するようにスピーカボックスに取り付けられる
ものである。
【0013】また、この発明は、左チャネル音声信号を
再生する第1および第2のスピーカを有する左チャネル
用スピーカ装置と、右チャネル音声信号を再生する第3
および第4のスピーカを有する右チャネル用スピーカ装
置とからなるステレオスピーカ装置において、左チャネ
ル用スピーカ装置の第2のスピーカで構成される第1の
スピーカ部および右チャネル用スピーカ装置の第4のス
ピーカで構成される第2のスピーカ部はそれぞれスピー
カの前方主軸上で最大感度を持つ両指向性と全指向性の
組み合わせで得られる指向性を有し、左チャネル用スピ
ーカ装置の第1のスピーカおよび右チャネル用スピーカ
装置の第3のスピーカはそれぞれその主軸がスピーカボ
ックスの正面方向に一致するようにスピーカボックスに
取り付けられ、左チャネル用スピーカ装置の第2のスピ
ーカおよび右チャネル用スピーカ装置の第4のスピーカ
はそれぞれその主軸がスピーカボックスの正面方向に対
して反時計方向および時計方向に第1の角度だけ傾斜す
るようにスピーカボックスに取り付けられるものであ
る。
【0014】左チャネル用および右チャネル用のスピー
カ装置の音声信号を再生する第1および第2のスピーカ
部を構成するスピーカの主軸は、両スピーカ装置の中心
線上の聴取位置から見て内方を向いている。そのため、
第1および第2のスピーカ部が有する両指向性と全指向
性の組み合わせで得られる指向性によって、両スピーカ
装置の中心線上から外れた聴取位置においては左右両チ
ャネルの距離減衰の違いに基づく音圧レベル差が補正さ
れ、良好なステレオ感が得られる聴取範囲が拡大され
る。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、この発明の第1の実施の形
態を説明する。図1は第1の実施の形態としてのステレ
オスピーカ装置10を示しており、このスピーカ装置1
0は、左チャネル用スピーカ装置11Lと右チャネル用
スピーカ装置11Rとから構成される。
【0016】スピーカ装置11Lを構成するスピーカボ
ックス12Lには前面と右側面との間にスピーカ取付面
13Lが形成され、このスピーカ取付面13Lに音声信
号再生用スピーカ14Lが取り付けられる。この場合、
スピーカ14Lは、図2に示すように、その主軸MAL
がスピーカボックス12Lの正面方向FLに対して反時
計方向に所定角度γ、例えば40゜〜50゜だけ傾斜す
るようにスピーカボックス12Lに取り付けられる。
【0017】スピーカボックス12Lのスピーカ取付面
13Lとは異なる端面(図では上面)に音響抵抗材料1
5Lで覆われた円形の音波放射口(開口部)16Lが設
けられる。この音波放射口16Lはスピーカ14Lの振
動板の背面から出る空気振動を外部に音波として放射す
るためのものであり、その中心を貫通する軸がスピーカ
14Lの主軸(基準軸)の方向に延びるように形成され
る。
【0018】この場合、スピーカボックス12L内の空
気の呈する音響容量と音波放射口16Lの音響抵抗およ
び音響質量とで音響的な低域フィルタが構成される。そ
して、この低域フィルタを通じて音波放射口16Lから
放射される音波の通過帯域内での群遅延時間が利用さ
れ、スピーカ装置11Lにはスピーカ14Lの前面と音
波放射口16Lの2つの音源から放射される音波の合成
音圧がスピーカ14Lの前方主軸上で最大感度を持つ全
指向性と両指向性の組み合わせで得られる指向性が付与
される。
【0019】また、スピーカ装置11Rを構成するスピ
ーカボックス12Rには前面と左側面との間にスピーカ
取付面13Rが形成され、このスピーカ取付面13Rに
音声信号再生用スピーカ14Rが取り付けられる。この
場合、スピーカ14Rは、図2に示すように、その主軸
MARがスピーカボックス12Rの正面方向FRに対して
時計方向に所定角度γ、例えば40゜〜50゜だけ傾斜
するようにスピーカボックス12Rに取り付けられる。
【0020】スピーカボックス12Rのスピーカ取付面
13Rとは異なる端面(図では上面)に音響抵抗材料1
5Rで覆われた円形の音波放射口(開口部)16Rが設
けられる。この音波放射口16Rはスピーカ14Rの振
動板の背面から出る空気振動を外部に音波として放射す
るためのものであり、その中心を貫通する軸がスピーカ
14Rの主軸(基準軸)の方向に延びるように形成され
る。これにより、上述したスピーカ装置11Lと同様
に、スピーカ装置11Rにはスピーカ14Rの前面と音
波放射口16Rの2つの音源から放射される音波の合成
音圧がスピーカ14Rの前方主軸上で最大感度を持つ全
指向性と両指向性の組み合わせで得られる指向性が付与
される。
【0021】ここで、スピーカ装置11L,11Rに、
上述したように全指向性と両指向性の組み合わせで得ら
れる指向性が付与される原理について説明する。スピー
カ装置11L,11Rは同様に構成されるので、スピー
カ装置11Lについてのみ説明し、スピーカ装置11R
についての説明は省略する。
【0022】スピーカ装置11Lの電気系および音響系
を機械系に等価変換した機械系の等価回路は、中・低域
周波数において、図3のように表される。図において、
Fは振動板を動かす起振力であり、定電圧駆動では、
(1)式のように表される。
【0023】
【数1】
【0024】s0は振動板の支持弾性体の等価スチフネ
ス、r0は電磁制動抵抗を含めた等価機械抵抗、m0は振
動板の実効質量である。s1はスピーカボックス内空気
の弾性を振動板の面積に換算した等価スチフネスで、ス
ピーカボックス内空気の体積をV、振動板の有効面積を
Aとして、(2)式で表される。
【0025】
【数2】
【0026】r1は音波放射口16Lの音響抵抗材料1
5Lの音響抵抗を振動板の面積に換算した等価機械抵
抗、m1は音波放射口16Lの構造と音波放射に依存す
る音響質量を振動板の面積に換算した等価質量である。
1は振動板の振動速度、V2は音波放射口16Lの空気
の振動速度を振動板の面積に換算した等価な振動速度で
ある。
【0027】なお、上述したスピーカ装置11Lにおい
て、スピーカ14Lの振動板側と音波放射口16L側に
それぞれ放射抵抗が存在し、この放射抵抗に供給される
パワーが音響パワーとして空気中に放射される。しか
し、放射抵抗はr0,r1に比べて極めて小さな値であ
り、V1,V2には影響を与えないので、図3の等価回路
上では省略している。
【0028】次に、図4を使用して、スピーカ14Lの
前面(スピーカ振動板の前面)と音波放射口16Lの2
つの音源から放射される音波の合成音圧について理論解
析する。ここでは、スピーカ14Lの前面と音波放射口
16Lの2つの音源のスピーカ14Lの主軸方向の空間
距離をdとする。また、スピーカ14Lの前面と音波放
射口16Lの2つの音源から放射される音波の水平面内
での一方向成分に着目し、主軸のスピーカ前面方向を0
°として、主軸と着目する方向(受音位置の方向)との
なす角を反時計方向にθとする。
【0029】図において、dが8〜10cmであり、受
音位置とスピーカ14Lの間の距離rが1m以上ある場
合には、スピーカ14Lの前面と音波放射口16Lの2
つの音源は、中・低域周波数においては、点音源とみな
すことができる。また、受音位置での音波は、ほぼ平面
波とみなして差し支えない。
【0030】このように取り扱うと、スピーカ14Lの
前面から放射される音波の受音位置での音圧P1は、振
動板の振動速度がV1であるから、(3)式で表され
る。
【0031】
【数3】
【0032】次に、音波放射口16Lから放射される音
波の受音位置での音圧P2は、P1に対して、dcosθな
る距離に該当する時間遅れを生じ、かつ、振動板背面の
空気振動に基づいているので負極性となり、(4)式で
表される。ただし、d<<rである。
【0033】
【数4】
【0034】したがって、合成音圧P(θ)は、P1
2であるから、(5)式で表わされる。
【0035】
【数5】
【0036】ここで、振動速度V2は、図3の等価回路
から明らかなように、(6)式で表わされる。
【0037】
【数6】
【0038】(6)式は2次の低域フィルタ特性を示
し、通過帯域内で、s1,r1,m1で決まる一定値の群
遅延時間を生ずる。この時間遅れと、空間で得られるd
cosθ/cなるθで変化する時間遅れとが、両指向性と
全指向性を組み合わせた指向性をもたらすこととなる。
そこで、(6)式を(5)式に代入して整理すると、ω
/c=kとおいて、(7)式のようになる。
【0039】
【数7】
【0040】(7)式において、{}内の第1項を級数
展開すると、(8)式のようになる。
【0041】
【数8】
【0042】(8)式から明らかなように、kd<<1の
周波数においては、jkdの1次以上の高次項を省略す
ると、(8)式はcosθとなる。よって、(7)式の
{}内の第1項は、両指向性成分を表わすものとなる。
これに対して、(7)式の{}内の第2項と第3項はθ
に依存しないので、全指向性成分を表すものとなる。
【0043】そこで、(9)式のようにおき、P(θ)
を正面方向(θ=0゜)の音圧P(0゜)で基準化して
示すと、kd<<1の周波数では、(10)式のように表
される。
【0044】
【数9】
【0045】
【数10】
【0046】(10)式より明らかなように、合成音圧
P(θ)は、両指向性成分と全指向性成分を組み合わせ
た指向性をもつ。両成分の配分は、全指向性成分を表わ
すαの値により変えることができる。このαは、(9)
式から明らかなように、r1/s1とd/cの比を表わし
ている。r1/s1は、図3において、r1,s1,m1
構成される低域フィルタの通過帯域内での群遅延時間を
表わしている。d/cは、スピーカ14Lの前面と音波
放射口16Lの2つの音源の主軸方向の空間距離dを音
波が伝播するために要する時間である。
【0047】図5は、αの値が0.5,1.0,2.0
の場合について、(10)式から指向性パターンを計算
したものである。
【0048】(10)式において、α≦1の場合には、
ある角度でP(θ)が零になる。しかし、α>1では如
何なる角度でもP(θ)が零になることはない。α≦1
の場合に、P(θ)が零になる角度θをθ1とおくと、
図5に示すように、α=1ではθ1は180°、α=
0.5ではθ1は120°と240°の2方向になる。
このように、θ=θ1においてP(θ)が零になるの
は、(8)式で表わされる両指向性成分に存在するjk
dの1次以上の高次項を省略したからである。しかし、
実際にはその高次項が存在するので、周波数が高くなる
につれて両指向性成分の指向性パターンが真円の8字形
とはならなくなる。その結果、合成指向性パターンも
(10)式で示される基本的な指向性パターンとは異な
ってくる。つまり、指向性の劣化をもたらすこととな
る。
【0049】この指向性劣化の程度を、より高い周波数
まで少なくするには、(8)式で表される両指向性成分
に存在するjkdの1次以上の高次項を、ある角度にお
いて、全指向性成分を用いて、より高い次数まで打ち消
すようにすればよい。(7)式と(8)式をみると、
(7)式の{}内の第3項により、(8)式のjkdの
1次の項を、ある角度において打ち消すことができる。
【0050】そこで、(7)式の{}内の第3項につい
て、(11)式のようにおき、相殺する角度θをθ2
おくと、相殺の条件は、(12)式で表される。(1
2)式において、cos2θ2は、θ2=0°〜360°
の範囲で、cos2θ2≦1である。したがって、(1
2)式を満足するβの値はβ≦0.5となる。
【0051】
【数11】
【0052】
【数12】
【0053】図6は、α=1(単一指向性)の場合につ
いて、βの値を0〜1まで5段階に変えて、θが90°
と180°の角度におけるP(θ)/P(0°)の周波
数による変化を、(7)式に基づいて求めた結果であ
る。ここで、β=0の条件はm 1=0を意味する。しか
し、実際にはm1を零にすることはできないので、β=
0の条件は実現不可能である。
【0054】図6から明らかなように、kd≦0.4の
低い周波数では、スピーカ14Lの背面方向(θ=18
0°)の合成音圧レベルが正面方向(θ=0°)に比べ
て20dB以上低下し、横方向(θ=90°)の合成音
圧レベルが正面方向に比べて6dB低下する単一指向性
パターンとなる。しかし、周波数が高くなるにつれて指
向性が劣化し、kd≒πの周波数で、ほとんど指向性を
もたなくなる。この指向性の劣化程度は、βの値により
異なっている。
【0055】図7は、kd=1.5(d=7cmでは、
f=1.2KHz)の周波数における指向性パターンが
βの値により変化する様子を示したものである。図から
明らかなように、βの値は零にはできないが、なるべく
小さな値に設定することが、より高い周波数まで良好な
指向性を得るうえで必要である。βの値を0.5以下に
設定するとき、kd=1.5の周波数が指向性の実質的
な高域限界とみられる。
【0056】以上の理論的な検討は、スピーカ14Lの
前面と音波放射口16Lが理想的な点音源とみなすこと
ができる中・低域周波数についてである。しかし、実際
には、スピーカ14Lの振動板および音波放射口16L
が有限な面積を持っているので、中・高域周波数ではそ
れぞれの放射音波そのものが指向性を持つようになる。
したがって、上述したように群遅延時間を利用した指向
性の付与は、スピーカ自身の放射音波が指向性をもたな
い中・低域周波数に適用するのが妥当である。
【0057】こうしたスピーカ自身の指向性について
は、スピーカを取り付けるスピーカボックスの寸法、形
状およびスピーカの口径などで異なる。しかし、指向性
が付き始める限界の周波数はスピーカの口径と逆比例の
関係にあり、既に知られている理論解析および実測結果
などを検討すると、次のようになる。すなわち、スピー
カ振動板の有効直径をDとすると、指向性が付き始める
限界の周波数は、(13)式を満足する周波数とみなす
ことができる。
【0058】
【数13】
【0059】(13)式を放射音波の波長λで表わす
と、ω/c=2π/λの関係から、4D=λであり、放
射音波の波長λが振動板有効直径Dの4倍の周波数とみ
てよい。そこで、上述したように群遅延時間を利用した
指向性の付与を指向性が付き始める限界の周波数以下の
周波数範囲に適用するには、以下に示すような設定条件
が妥当である。
【0060】スピーカ装置11Lにおいて、指向性の実
質的な高域限界は、先に述べたように、(14)式を満
足する周波数とみてよい。
【0061】
【数14】
【0062】そこで、この周波数を、スピーカ14L自
身の放射音波に指向性が付き始める周波数、すなわち
(13)式を満足する周波数に設定するのが順当と考え
る。したがって、設定条件は(13)、(14)式よ
り、(15)式のようになる。
【0063】
【数15】
【0064】つまり、スピーカ14Lの前面と音波放射
口16Lの2つの音源の主軸方向の空間距離dを、スピ
ーカ振動板の有効直径Dに等しく設定するのが妥当であ
る。なお、この設定条件は指向性がα=1の単一指向性
を中心に、α=0.5〜2.0の範囲の指向性について
も成り立つ。
【0065】以上の説明から明かなように、スピーカ装
置11L,11Rには、全指向性と両指向性の組み合わ
せで得られる任意の指向性を付与することが可能であ
る。
【0066】図1に示すステレオスピーカ装置10にお
いては、音声信号再生用スピーカ14L,14Rの主軸
MAL,MARがそれぞれスピーカボックス12L,12
Rの正面方向にFL,FR対して反時計方向、時計方向に
所定角度γだけ傾斜しており、スピーカ14L,14R
の主軸MAL,MARは、スピーカ装置11L,11Rの
中心線M上の聴取位置(図2参照)から見て内方を向い
ている。また、スピーカ装置11L,11Rは、それぞ
れスピーカ14L,14Rの前方主軸上で最大感度を持
つ両指向性と全指向性の組み合わせで得られる指向性を
有している。
【0067】そのため、スピーカ装置11L,11Rの
中心線M上を外れた聴取位置、例えばb点(図15参
照)では、右チャネルの音圧レベルが下がると共に、左
チャネルの音圧レベルが若干上がり、左右両チャネルの
距離減衰の違いに基づく音圧レベル差が補正される。よ
って、図1に示すステレオスピーカ装置10によれば、
良好なステレオ感が得られる聴取範囲を拡大できる。
【0068】本出願人は、図1に示すステレオスピーカ
装置10において上述したように良好なステレオ感が得
られる聴取範囲が拡大することを確認するために、聴感
試験を行った。図8は、この聴感試験において、左チャ
ネル用スピーカ装置および右チャネル用スピーカ装置と
して使用したスピーカ装置21を示している。このスピ
ーカ装置21には、単一指向性を付与している。
【0069】スピーカボックス22は直方体形状で、ス
ピーカ取付面の寸法が縦、横8.6cm、奥行きは14
cm、スピーカボックス内空気の体積は600cm3
ある。音声信号再生用スピーカ23としてダイナミック
スピーカを使用し、口径は8cm、振動板の有効直径は
7cm、有効面積は38.5cm2である。音波放射口
24は円形で、スピーカボックス22の上面に設けら
れ、その実効面積は26cm2である。また、スピーカ
23の前面と音波放射口24の2つの音源の主軸方向の
空間距離dは、(15)式の条件から7cmに設定され
ている。
【0070】音波放射口24の音響抵抗材料25の音響
抵抗は、(2)、(9)式よりスピーカ振動板の面積に
換算した等価機械抵抗で表わすと、MKS単位でr1
0.745(kg/sec)である。したがって、音波
放射口24の実効面積で表わした等価機械抵抗r1
は、音波放射口24の実効面積をA1とすると、(1
6)式となる。また、音波放射口24の音響抵抗材料2
5の音響抵抗密度(単位面積当りの等価機械抵抗)は、
(16)式をA1で除して、130.8(kg/sec
・m2)となる。
【0071】
【数16】
【0072】図9の実線a、一点鎖線b、破線cは、ス
ピーカ装置21の出力音圧指向周波数特性を示してお
り、中・低域周波数で単一指向性を持つことがわかる。
また、正面方向(0゜方向)の再生周波数帯域(3dB
低下)は、300Hz〜20KHzである。スピーカ自
身の指向性が付き始める限界の周波数は、振動板の有効
直径が7cmの場合、(13)式から、約1.2KHz
となる。よって、d=D=7cmに設定したことによ
り、約1.5KHz以下の周波数では、0゜方向の音圧
レベルに対して90゜方向の音圧レベルは約6dB低下
し、180゜方向の音圧レベルは15dB〜20dB低
下し、実用上十分とみられる単一指向性が得られてい
る。図9の実線d、一点鎖線e、破線fは、音波放射口
24を設けなかった場合の出力音圧指向周波数特性を示
しており、中・低域周波数では全指向性となる。
【0073】図8に示すスピーカ装置21を左チャネル
用スピーカ装置および右チャネル用スピーカ装置として
使用し、図10に示す状態で残響時間が0.2秒程度の
試聴室100に配置して聴感試験を行った。聴感試験で
は、良好なステレオ感が得られる聴取範囲を、以下のよ
うな方法で求めた。
【0074】すなわち、両スピーカ装置21,21の中
心線M上の聴取位置、例えばa点において中央前方に定
位する信号音(例えばボーカルなど)が、中心線M上か
ら外れた聴取位置においても、その聴取位置から見た両
スピーカ装置21,21の中間位置(c点)の方向に定
位すれば、その聴取位置では両スピーカ装置21,21
の間に連続したサウンドステージが再現され、良好なス
テレオ感が得られることになる。そこで、聴感試験で
は、両スピーカ装置21,21の中心線M上の聴取位
置、例えばa点において中央前方に定位する信号音に着
目し、中心線M上から外れた聴取位置においてその信号
音が両スピーカ装置21,21の中間位置の方向に定位
する範囲を求めた。
【0075】図10において、破線L-1は、スピーカ装
置21の音波放射口24を閉じて密閉形とすると共に、
スピーカ23の主軸を正面方向(試聴室100の側壁に
平行)に向けた条件で、良好なステレオ感が得られる
聴取範囲の境界を示しており、この破線L-1より中心線
M側の範囲では良好なステレオ感が得られた。この条件
では、良好なステレオ感が得られる聴取範囲は狭い範
囲に限定される。
【0076】また、一点鎖線L-2は、スピーカ装置21
の音波放射口24を閉じて密閉形とすると共に、スピー
カ23の主軸を45゜だけ内方に向けた条件で、良好
なステレオ感が得られる聴取範囲の境界を示しており、
この一点鎖線L-2より中心線M側の範囲では良好なステ
レオ感が得られた。この条件では、条件の場合と比
べて、良好なステレオ感が得られる聴取範囲がかなり拡
大される。
【0077】これに対して、実線L-3は、スピーカ装置
21の音波放射口24を開いて約1.5KHz以下の周
波数範囲を単一指向性にすると共に、スピーカ23の主
軸を45゜だけ内方に向けた条件で、良好なステレオ
感が得られる聴取範囲の境界を示しており、この実線L
-3より中心線M側の範囲では良好なステレオ感が得られ
た。この条件では、条件の場合に比べて、良好なス
テレオ感が得られる聴取範囲がさらに拡大される。この
ことは、低域周波数の指向性が、両スピーカ装置21,
21の中心線M上から外れた聴取位置での音像定位に大
きく影響することを示している。
【0078】このような単一指向性による良好なステレ
オ感が得られる聴取範囲の拡大効果は、次のように考え
ることができる。例えば、図10において、両スピーカ
装置21,21の中心線M上からかなり外れた聴取位
置、例えばd点においては、左チャネル用のスピーカ装
置21のd点の方向はスピーカ23の主軸から約10°
ずれた方向(θ≒10゜)であるが、この程度のずれで
はほぼスピーカ装置21の最大感度の方向と見て良い。
【0079】これに対して、右チャネル用のスピーカ装
置21のd点の方向は、スピーカ23の主軸から約85
°ずれた方向(θ≒85°)である。このため、右チャ
ネル用のスピーカ装置21の感度は、図5の単一指向性
(カージオイド)の指向性パターンから見て、最大感度
(=1)より5.2dB低下した0.55となる。この
指向性による音圧レベルの低下が、d点においても良好
な音像定位をもたらす働きをするものと考えられる。
【0080】このように考えると、ハイパーカージオイ
ドではθ=85°における感度が最大感度より8.4d
B低下した0.38となり(図5参照)、単一指向性
(カージオイド)よりもハイパーカージオイドの方が聴
取範囲の拡大に効果があると見てよいことになる。
【0081】単一指向性(カージオイド)は両指向性と
全指向性の成分比が1:1であるが、ハイパーカージオ
イドは上記成分比が1:0.5であり、両指向性成分が
全指向性成分の2倍である。しかし、両指向性成分の成
分比率がこれ以上高い指向性になると、再生帯域の低域
限界が狭くなるので、実用的な面からは、単一指向性
(カージオイド)からハイパーカージオイドまでの範囲
の指向性パターンをもつ指向性が適当である。
【0082】また、スピーカ23の主軸を両スピーカ装
置21,21の内方に向ける角度については、内方を向
け過ぎると、例えば図10のd点で聴取した場合、右チ
ャネル用のスピーカ装置21の音圧レベルが、スピーカ
振動板の直径に依存する指向性のために、高音域で著し
く低下してしまうので、高音不足の音質になる。したが
って、聴取範囲の拡大効果と音質の両面から見て、上記
内方に向ける角度は、40°〜50°の範囲が適当であ
る。
【0083】次に、この発明の第2の実施の形態を説明
する。図11は第2の実施の形態としてのステレオスピ
ーカ装置30を示しており、このスピーカ装置30は、
左チャネル用スピーカ装置31Lと右チャネル用スピー
カ装置31Rとから構成される。
【0084】スピーカ装置31Lは、ほぼ直方体状のス
ピーカボックス32Lの前面に音声信号再生用スピーカ
を構成するウーハー33Lおよびツイーター34Lが取
り付けられた2ウェイ方式のものである。ウーハー33
Lおよびツイーター34Lは、その主軸がスピーカボッ
クス32Lの正面方向を向くようにスピーカボックス3
2Lの前面側に取り付けられる。また、スピーカボック
ス32Lにはその前面と右側面とで構成される角の上部
が切り取られてスピーカ取付面35Lが形成され、この
取付面35Lに音声信号再生用スピーカ36Lが取り付
けられる。この場合、スピーカ36Lは、図12に示す
ように、その主軸MALがスピーカボックス32Lの正
面方向FLに対して反時計方向に所定角度γ、例えば4
0゜〜50゜だけ傾斜するようにスピーカボックス32
Lに取り付けられる。
【0085】また、スピーカボックス32Lのスピーカ
取付面35Lとは異なる端面(図では上面)に音響抵抗
材料37Lで覆われた円形の音波放射口(開口部)38
Lが設けられる。この音波放射口38Lはスピーカ36
Lの振動板の背面から出る空気振動を外部に音波として
放射するためのものであり、その中心を貫通する軸がス
ピーカ36Lの主軸の方向に延びるように形成される。
上述せずも、スピーカボックス32Lの内部において、
スピーカ36Lが取り付けられるボックス部はその他の
ボックス部と仕切られている。
【0086】この場合、スピーカボックス32Lのスピ
ーカ36Lが取り付けられるボックス部内の空気の呈す
る音響容量と音波放射口38Lの音響抵抗および音響質
量とで音響的な低域フィルタが構成される。そして、こ
の低域フィルタを通じて音波放射口38Lから放射され
る音波の通過帯域内での群遅延時間が利用され、スピー
カ装置31Lのスピーカ36Lで構成されるスピーカ部
にはスピーカ36Lの前面と音波放射口38Lの2つの
音源から放射される音波の合成音圧がスピーカ36Lの
前方主軸上で最大感度を持つ全指向性と両指向性の組み
合わせで得られる指向性が付与される。
【0087】スピーカ装置31Rは、ほぼ直方体状のス
ピーカボックス32Rの前面に音声信号再生用スピーカ
を構成するウーハー33Rおよびツイーター34Rが取
り付けられた2ウェイ方式のものである。ウーハー33
Rおよびツイーター34Rは、その主軸がスピーカボッ
クス32Rの正面方向を向くようにスピーカボックス3
2Rの前面側に取り付けられる。また、スピーカボック
ス32Rにはその前面と左側面とで構成される角の上部
が切り取られてスピーカ取付面35Rが形成され、この
取付面35Rに音声信号再生用スピーカ36Rが取り付
けられる。この場合、スピーカ36Rは、図12に示す
ように、その主軸MARがスピーカボックス32Rの正
面方向FRに対して時計方向に所定角度γ、例えば40
゜〜50゜だけ傾斜するようにスピーカボックス32R
に取り付けられる。
【0088】また、スピーカボックス32Rのスピーカ
取付面35Rとは異なる端面(図では上面)に音響抵抗
材料37Rで覆われた円形の音波放射口(開口部)38
Rが設けられる。この音波放射口38Rはスピーカ36
Rの振動板の背面から出る空気振動を外部に音波として
放射するためのものであり、その中心を貫通する軸がス
ピーカ36Rの主軸の方向に延びるように形成される。
上述せずも、スピーカボックス32Rの内部において、
スピーカ36Rが取り付けられるボックス部はその他の
ボックス部と仕切られている。
【0089】この場合、スピーカボックス32Rのスピ
ーカ36Rが取り付けられるボックス部内の空気の呈す
る音響容量と音波放射口38Rの音響抵抗および音響質
量とで音響的な低域フィルタが構成される。そして、こ
の低域フィルタを通じて音波放射口38Rから放射され
る音波の通過帯域内での群遅延時間が利用され、スピー
カ装置31Rのスピーカ36Rで構成されるスピーカ部
にはスピーカ36Rの前面と音波放射口38Rの2つの
音源から放射される音波の合成音圧がスピーカ36Rの
前方主軸上で最大感度を持つ全指向性と両指向性の組み
合わせで得られる指向性が付与される。
【0090】図11に示すステレオスピーカ装置30に
おいては、音声信号再生用スピーカ36L,36Rの主
軸MAL,MARがそれぞれスピーカボックス32L,3
2Rの正面方向FL,FRに対して反時計方向、時計方向
に所定角度γだけ傾斜しており、スピーカ36L,36
Rの主軸MAL,MARは、スピーカ装置31L,31R
の中心線M上の聴取位置(図12参照)から見て内方を
向いている。また、スピーカ装置31L,31Rのスピ
ーカ36L,36Rで構成されるスピーカ部は、それぞ
れスピーカ36L,36Rの前方主軸上で最大感度を持
つ両指向性と全指向性の組み合わせで得られる指向性を
有している。
【0091】そのため、スピーカ装置31L,31Rの
中心線M上を外れた聴取位置、例えばb点(図15参
照)では、右チャネルの音圧レベルが下げると共に、左
チャネルの音圧レベルが若干上がり、左右両チャネルの
距離減衰の違いに基づく音圧レベル差が補正される。よ
って、図11に示すステレオスピーカ装置30によれ
ば、図1に示すステレオスピーカ装置10と同様に、良
好なステレオ感が得られる聴取範囲を拡大できる。
【0092】本出願人は、図11に示すステレオスピー
カ装置30において上述したように良好なステレオ感が
得られる聴取範囲が拡大することを確認するために、聴
感試験を行った。図13は、この聴感試験において、左
チャネルスピーカ装置および右チャネル用スピーカ装置
として使用したスピーカ装置40を示している。このス
ピーカ装置40は、スピーカ装置41の上部に、図8に
示すスピーカ装置21が配されたものである。スピーカ
装置41は、横幅=20cm、奥行き=22cm、高さ
=30cmのスピーカボックス42に音声信号再生用の
口径14cmのウーハー43および口径8cmのツイー
ター44が取り付けられた2ウェイ方式のものである。
【0093】図13に示すスピーカ装置40を左チャネ
ル用スピーカ装置および右チャネル用スピーカ装置とし
て使用し、図14に示す状態で残響時間が0.2秒程度
の試聴室100に配置して聴感試験を行った。この場
合、図10の場合と同様の方法によって、良好なステレ
オ感が得られる聴取範囲を求めた。なお、2ウェイ方式
のスピーカ装置41はそのウーハー43およびツイータ
ー44の主軸が正面方向(試聴室100の側壁に平行)
を向くように配設される。また、スピーカ装置21のス
ピーカ23の主軸を正面方向に向けた状態で、このスピ
ーカ装置21の両スピーカ装置40,40の中心線M上
の聴取位置、例えばa点における音圧レベルが、2ウェ
イ方式のスピーカ装置41の音圧レベルに比べて3dB
だけ低くなるように設定される。
【0094】図14において、破線L-4は、スピーカ装
置21の音波放射口24を閉じて密閉形とすると共に、
スピーカ23の主軸を正面方向に向けた条件で、良好
なステレオ感が得られる聴取範囲の境界を示しており、
この破線L-4より中心線M側の範囲では良好なステレオ
感が得られた。この条件では、図10の条件の場合
と同様に、良好なステレオ感が得られる聴取範囲は狭い
範囲に限定される。
【0095】また、一点鎖線L-5は、スピーカ装置21
の音波放射口24を閉じて密閉形とすると共に、スピー
カ23の主軸を45゜だけ内方に向けた条件で、良好
なステレオ感が得られる聴取範囲の境界を示しており、
この一点鎖線L-5より中心線M側の範囲では良好なステ
レオ感が得られた。この条件では、条件の場合と比
べて良好なステレオ感が得られる聴取範囲がかなり拡大
されるが、図10の条件の場合に比べて若干狭くな
る。
【0096】これに対して、実線L-6は、スピーカ装置
21の音波放射口24を開いて約1.5KHz以下の周
波数範囲を単一指向性にすると共に、スピーカ23の主
軸を45゜だけ内方に向けた条件で、良好なステレオ
感が得られる聴取範囲の境界を示しており、この実線L
-6より中心線M側の範囲では良好なステレオ感が得られ
た。
【0097】この条件では、条件の場合に比べて、
良好なステレオ感が得られる聴取範囲がさらに拡大され
る。図10の条件の場合に比べて若干狭くなるが、正
面方向を向いた2ウェイ方式のスピーカ装置41による
放射音波に、小形な単一指向性のスピーカ装置21から
の放射音波を上述した音圧レベル条件で付加することに
より、好ましいステレオ感が得られる聴取範囲の拡大に
著しい効果があるといえる。
【0098】この場合、付加するスピーカ装置21の指
向性については、上述したようにカージオイドからハイ
パーカージオイドの範囲の指向性パターンをもつ指向性
が適当である。また、指向性スピーカの主軸の設定角度
については、40°〜50°の範囲で内方に向けるのが
適当である。
【0099】
【発明の効果】この発明によれば、左チャネル用および
右チャネル用のスピーカ装置の音声信号再生用スピーカ
の主軸が両スピーカ装置の中心線上の聴取位置から見て
内方を向くと共に、この両スピーカ装置の音声信号再生
用スピーカで構成されるスピーカ部が両指向性と全指向
性の組み合わせで得られる指向性を有するため、両スピ
ーカ装置の中心線上から外れた聴取位置では左右両チャ
ネルの距離減衰の違いに基づく音圧レベル差が補正さ
れ、良好なステレオ感が得られる聴取範囲を拡大でき
る。また、両スピーカ装置の音声信号再生用スピーカで
構成されるスピーカ部が両指向性と全指向性の組み合わ
せで得られる指向性を有するものであり、例えば音波放
射口から放射される音波の群遅延時間を利用して指向性
を得ることができ、従来のようにスピーカ自身の持つ指
向性を利用したり、両指向性スピーカを利用するものと
比較して、システム構成を小型にできる利益がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態としてのステレオスピーカ装
置を示す斜視図である。
【図2】音声信号を再生するスピーカの主軸の向きを示
す図である。
【図3】機械系の等価回路を示す回路接続図である。
【図4】合成音圧の理論解析のための図である。
【図5】αを変化させた場合の指向性パターンを示す図
である。
【図6】βの値による指向周波数特性の変化を示す図で
ある。
【図7】βを変化させた場合の指向性パターンを示す図
である。
【図8】聴感試験に使用したスピーカ装置を示す斜視図
である。
【図9】図8のスピーカ装置の出力音圧指向周波数特性
を示す図である。
【図10】聴感試験の結果等を説明するための図であ
る。
【図11】第2の実施の形態としてのステレオスピーカ
装置を示す斜視図である。
【図12】音声信号を再生するスピーカの主軸の向きを
示す図である。
【図13】聴感試験に使用したスピーカ装置を示す斜視
図である。
【図14】聴感試験の結果等を説明するための図であ
る。
【図15】ステレオスピーカ装置を説明するための図で
ある。
【図16】良好なステレオ感が得られる聴取範囲を拡大
するための一例を示す図である。
【図17】良好なステレオ感が得られる聴取範囲を拡大
するための他の例を示す図である。
【符号の説明】
10,30 ステレオスピーカ装置 11L,31L 左チャネル用スピーカ装置 11R,31R 右チャネル用スピーカ装置 12L,12R,32L,32R スピーカボックス 13L,13R,35L,35R スピーカ取付面 14L,14R,36L,36R 音声信号再生用スピ
ーカ 15L,15R,37L,37R 音響抵抗材料 16L,16R,38L,38R 音波放射口 33L,33R ウーハー 34L,34R ツイーター

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 左チャネル音声信号を再生する第1のス
    ピーカを有する左チャネル用スピーカ装置と、右チャネ
    ル音声信号を再生する第2のスピーカを有する右チャネ
    ル用スピーカ装置とからなるステレオスピーカ装置にお
    いて、 上記左チャネル用スピーカ装置の上記第1のスピーカで
    構成される第1のスピーカ部および上記右チャネル用ス
    ピーカ装置の上記第2のスピーカで構成される第2のス
    ピーカ部は、それぞれスピーカの前方主軸上で最大感度
    を持つ両指向性と全指向性の組み合わせで得られる指向
    性を有し、 上記左チャネル用スピーカ装置の上記第1のスピーカお
    よび上記右チャネル用スピーカ装置の上記第2のスピー
    カは、それぞれその主軸がスピーカボックスの正面方向
    に対して反時計方向および時計方向に第1の角度だけ傾
    斜するようにスピーカボックスに取り付けられることを
    特徴とするステレオスピーカ装置。
  2. 【請求項2】 上記左チャネル用スピーカ装置の第1の
    スピーカ部および上記右チャネル用スピーカ装置の上記
    第2のスピーカ部のそれぞれは、 スピーカボックスの一の端面にスピーカを取り付けると
    共に、上記スピーカボックスの上記一の端面とは異なる
    端面に音響抵抗材料で覆われた音波放射口を設けてな
    り、 上記スピーカボックス内の空気の呈する音響容量と上記
    音波放射口の音響抵抗および音響質量とで音響的な低域
    フィルタを構成し、 上記低域フィルタを通じて上記音波放射口から放射され
    る音波の通過帯域内での群遅延時間を利用して、上記ス
    ピーカの前面と音波放射口の2つの音源から放射される
    音波の合成音圧が上記スピーカの前方主軸上で最大感度
    を持つ全指向性と両指向性の組み合わせで得られる指向
    性を得ることを特徴とする請求項1に記載のステレオス
    ピーカ装置。
  3. 【請求項3】 上記第1の角度は40゜〜50゜である
    ことを特徴とする請求項1に記載のステレオスピーカ装
    置。
  4. 【請求項4】 左チャネル音声信号を再生する第1およ
    び第2のスピーカを有する左チャネル用スピーカ装置
    と、右チャネル音声信号を再生する第3および第4のス
    ピーカを有する右チャネル用スピーカ装置とからなるス
    テレオスピーカ装置において、 上記左チャネル用スピーカ装置の上記第2のスピーカで
    構成される第1のスピーカ部および上記右チャネル用ス
    ピーカ装置の上記第4のスピーカで構成される第2のス
    ピーカ部は、それぞれスピーカの前方主軸上で最大感度
    を持つ両指向性と全指向性の組み合わせで得られる指向
    性を有し、 上記左チャネル用スピーカ装置の上記第1のスピーカお
    よび上記右チャネル用スピーカ装置の上記第3のスピー
    カは、それぞれその主軸がスピーカボックスの正面方向
    に一致するようにスピーカボックスに取り付けられ、 上記左チャネル用スピーカ装置の上記第2のスピーカお
    よび上記右チャネル用スピーカ装置の上記第4のスピー
    カは、それぞれその主軸がスピーカボックスの正面方向
    に対して反時計方向および時計方向に第1の角度だけ傾
    斜するようにスピーカボックスに取り付けられることを
    特徴とするステレオスピーカ装置。
  5. 【請求項5】 上記左チャネル用スピーカ装置の第1の
    スピーカ部および上記右チャネル用スピーカ装置の上記
    第2のスピーカ部のそれぞれは、 スピーカボックスの一の端面にスピーカを取り付けると
    共に、上記スピーカボックスの上記一の端面とは異なる
    端面に音響抵抗材料で覆われた音波放射口を設けてな
    り、 上記スピーカボックス内の空気の呈する音響容量と上記
    音波放射口の音響抵抗および音響質量とで音響的な低域
    フィルタを構成し、 上記低域フィルタを通じて上記音波放射口から放射され
    る音波の通過帯域内での群遅延時間を利用して、上記第
    2のスピーカの前面と音波放射口の2つの音源から放射
    される音波の合成音圧が上記第2のスピーカの前方主軸
    上で最大感度を持つ全指向性と両指向性の組み合わせで
    得られる指向性を得ることを特徴とする請求項4に記載
    のステレオスピーカ装置。
  6. 【請求項6】 上記第1の角度は40゜〜50゜である
    ことを特徴とする請求項4に記載のステレオスピーカ装
    置。
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