JPH0953237A - ピットおよびそれを利用した地下室の構築方法 - Google Patents

ピットおよびそれを利用した地下室の構築方法

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JPH0953237A
JPH0953237A JP7205789A JP20578995A JPH0953237A JP H0953237 A JPH0953237 A JP H0953237A JP 7205789 A JP7205789 A JP 7205789A JP 20578995 A JP20578995 A JP 20578995A JP H0953237 A JPH0953237 A JP H0953237A
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wall
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信二 北垣
Ikuo Maruoka
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 建築密度の高い狭い地域を最大限に活用した
地下建造物を構築するのに特に適した安定構造のピット
を安全かつ能率的に形成すること。 【解決手段】 ジェットグラウト工法によりピットの設
計深度の1/2以下の根入れ深さでソイルセメント柱状
体連続地中壁と、根入れ部分を差し渡した地中梁とを形
成し、上記の壁体を腹起こしと好ましくは火打ちにより
形態を安定化させ、ソイルセメント硬化後に地中壁に囲
繞された地山を根堀りしてピットを形成する。好ましく
は、壁体とピット底面に防水処理を施す。また、ピット
の壁の内側に所定間隔を置いて内側型枠のみを仮設し、
壁体と内側型枠の間にコンクリートを打設して、地下室
周壁を作ることにより、敷地を最大限有効活用した地下
室を建設する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、地下室等の地下構
造物の建築用ピットを、特に比較的建築密度の大きい地
域において構築する方法、及びそのピットを利用した地
下構造物の構築方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近時、市街地や住宅地等、特に比較的建
築密度の大きい地域においては、個々の建築用敷地面積
の狭隘化に伴い、地下室構築により、居住空間または利
用空間を拡張する要求が急速に増大しつつある。地下室
等の構造物を構築する際は予め所定深さに地盤を掘削し
て相応した容積のオープンカット即ちピットを形成する
必要がある。ところが、地盤、地山等が軟弱な場合には
掘削時に地盤の崩壊等の側方流動現象を生じるのが通例
で、作業能率はもとより安全上問題があり、従って予め
掘削壁面に相当する部分を何らかの方法で補強して土留
めを施しておかなくてはならない。
【0003】そのための旧来の矢板打込み方式に代え
て、近時は効果的な方法として、例えばセメント、石
灰、ベントナイト等を混合した水性グラウトの注入によ
り地下掘削深度以上に柱状に深層改良を行い、所謂、場
所打ちされたソイルセメント柱状体よりなる連続地中壁
を形成し、この深層連続地中壁が養生硬化し十分な土留
め効果を奏すべき頃合いを見計らって、地中壁に囲繞さ
れた地盤を掘削しピットを形成する方法が開発され一般
に採用されている。このような柱状連続地中壁を形成す
る場合、掘削によって露出した壁体の内側への転倒防止
を配慮して、ピットの設計深度を越えて根入れする必要
があるが、根入れ深さはその地点の土質及び地下水の伏
在状況等の周囲の環境によっては、かなりの大きさが必
要となり、例えば掘削深度の1/2以上を要することが
多い。
【0004】然るところ、施工現場が前記の如く住宅地
或いは建物密集地域である場合は、施工用重機の進入道
幅が狭いとか、または施工敷地の狭隘・閉塞箇所が多
く、或いは上部に配設された多くの電線、電話線等の障
害物のため、所要の大深度に柱状穿孔するための長リー
チ大型機の進入が不可能な場合が多い。従って、柱状体
自立に計算上必要な根入れ深さの確保が至難であるとい
う不都合が生じる。壁体の頭頂部から傾いて転倒するこ
とを防止するには、従来から杭芯材を利用しそれにビー
ムを水平に架け渡し固定する所謂「腹起こし」、及び隅
角に筋かいを入れる所謂「火打ち」等の施工処理が行わ
れているが、根入れ部分の深度不足による連続壁下方裾
部の側方滑りに対する処置をピット掘削前の地中に施す
ことは極めて難しく、適切確実な対策がないのが現状で
ある。このような処置の一例として、柱状杭の根入れ部
分を固定するために薬液注入等の方法が従来試みられて
いるが、地中での注入作業のため、必要箇所への注入効
果については確度が低く信頼性に乏しく、また不経済且
つ安全上不安定なものであった。
【0005】更に又、このようにして形成したピット内
に地下室を構築するには、ピットの大きさに見合った外
形寸法のプレハブ構造物を潜函工法等に準じてピット内
に据え付ける方法もあるが、既述の通り、建築密度の大
きい地域や住宅地等の作業空間の制約された環境では、
大型のプレハブ構造物をクレーンやホイストを駆使して
運搬移動することは実質的に不可能な場合が多い。その
ため、通常はピット壁面から必要な作業用スペース例え
ば1.0〜1.5mの間隔を保って仮設した所定の外側
型枠及び内側型枠の間にコンクリートを打設して地下室
の周壁を形成し、順次立ち上げて行く方式が採用されて
いる。従って、ピットの容量に比して、地下室の大きさ
は作業用スペース分だけ減少することとなり、頗る制約
されざるを得ないという不都合があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述の問題点に鑑み、
本発明の第1の目的は、深度に対して比較的小さい根入
れ深さの壁を以て形成されているにも拘わらず、地山の
側方流動圧に対抗して十分な土留め効果を奏し、壁体の
転倒・傾斜が防止された安定構造のピットを構築するに
ある。
【0007】本発明の第2の目的は、比較的建築密度の
高い地域においても地下室等の地下建造物の構築を可能
とする能率的且つ安全なピットの施工法を提供するにあ
る。
【0008】本発明の第3の目的は、軟弱な地盤、特に
被圧地下水の伏在する地盤においてすらも構築作業並び
に耐久保全面に支障のない、遮水・防水効果を備えたピ
ットを構築するにある。
【0009】また、本発明の別の目的は、ピットの空間
を最大限有効に活用した大きい建築面積の地下室を構築
することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の上記の目的を達
成するピットの構築方法は、設計されたピットの平面輪
郭に沿って地盤面からピット設計深度の1/2以下の根
入れ深さまでグラウト注入により場所打ちしてソイルセ
メント柱状体連続地中壁を形成する工程、該柱状体の適
宜な本数の長軸に沿って鋼芯材を延設し補強すると共に
該鋼芯材の上端近傍にビームを順次架け渡すことからな
る腹起こしを含む連続地中壁固定処理を施す工程、上記
連続地中壁の互いに対向した根入れ部分の間を差し渡し
た少なくとも1本の直線に沿ってピット設計底面以下の
水準でグラウト注入する場所打ちによりソイルセメント
柱状体連続地中梁を形成する工程、および上記ソイルセ
メントの硬化後において連続地中壁に囲繞された地山を
所定深度まで掘削してピットを形成する工程を含むこと
を特徴とする。
【0011】上記の方法において、連続地中壁固定処理
を更に確実とするには、腹起こしに加え必要に応じて隅
角に架け渡した2本のビームに筋かいを施すことからな
る火打ちを施すことが好ましい。
【0012】上記の方法におけるソイルセメント柱状体
連続地中壁の根入れ深さは、状況に応じて更にピット設
計深度の1/4以下とすることができる。
【0013】また、グラウト注入によりソイルセメント
柱状体を場所打ちするに際して、上記グラウトにカチオ
ン性ビニル系重合体水性エマルジョンをそれぞれの固形
分換算で20〜2500重量%、好ましくは50〜50
0重量%の量、配合混和することは、グラウトの流動特
性を向上させ、形成された柱状体の強度特性、耐水性を
改良し透水係数を低下させる効果があるので特に好適で
ある。
【0014】更に、上記グラウトに、上記カチオン性ビ
ニル系重合体水性エマルジョンと共にセメント固化剤を
それぞれの固形分換算で10〜50重量%、好ましくは
13〜20重量%の量、配合混和することにより、ソイ
ルセメントの固化を著しく促進すると共に、形成された
柱状体の物理的諸特性を向上させるのに頗る有効であ
る。
【0015】本発明方法においては、ピット形成後にお
いて、更にその内面、即ち、壁面および/または底面に
公知慣用の防水加工を施す工程を含むことが好ましい。
【0016】また、本発明方法のソイルセメント柱状体
連続地中梁を形成する工程においては、該柱状体連続地
中梁を配置すべき上記の互いに対向した根入れ部分の間
を差し渡した直線が、互いに交叉する少なくとも2本の
直線を含むことが連続壁の下方裾部分の傾斜を防ぐため
には更に好ましい。
【0017】更にまた、上記の方法により構築されたピ
ット面積を最大限に利用して、十分に広い地下室を構築
する方法は、ピットの連続壁の内側に該連続壁面と所定
間隔を隔てて内側型枠を対設し、連続壁自体を外側枠と
して、該連続壁と内側型枠との間にコンクリートを打設
することにより地下室のコンクリート周壁をピットの壁
面に膚接して築くことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の構成をその作用と共に、
以下添付図面に基づき実施例について説明する。図1お
よび図2において、土とグラウトの混合物(以下「ソイ
ルセメント」という)よりなる柱状体が幅方向に連続し
て形成された柱状体連続地中壁1、1′、2、2′と、
互いに対向する該地中壁1、1′の底部に差し渡して径
方向に連続して形成されたソイルセメント柱状体連続地
中梁3は、本発明方法によって構築されるピットの基本
的外殻をなす。柱状体連続地中梁は更に別に対向する地
中壁2、2′の底部に差し渡して径方向に連続した連続
地中梁3′を連続地中梁3と交叉して設けることが好ま
しい。
【0019】即ち、まず設計されたピットの平面輪郭に
沿っていわゆるジェットグラウト工法等により、地盤を
垂直に穿孔しつつセメント、石灰、ベントナイト、及び
好ましくはセメント固化剤等を混合した水性グラウトを
注入してソイルセメントよりなる柱状体を場所打ちす
る。場所打ちを上記ピットの平面輪郭に沿って隣接して
相次いで行うことにより、ソイルセメント柱状体が幅方
向に数珠繋ぎ状に重接連続した壁1、1′、2、2′が
地中に形成される。かかる連続地中壁の根入れ深さR、
即ちピット設計底面以下の深さは、ピット設計深度Pの
1/2以下、場合によっては1/4以下とするが、少な
くとも約50cmは根入れすることが好ましい。
【0020】ジェットグラウト工法による場所打ちは、
公知慣用の機械装置、例えば先端に、螺旋状掘削ビット
を備え且つグラウト噴射用軸内導管が開口する少なくと
も1本の回転軸を有する地盤改良掘削機を用いて行う。
多軸になる程作業効率は上がるが、同時に機械装置が大
型化するため、手狭な環境で小回りを利かし本発明の本
来の目的に沿うためには2軸または3軸式のものが好適
に用いられる。かかる掘削機により軸内導管を通じて注
入される水性グラウトをプロペラントとして地盤をビッ
トにより穿孔掘削すると同時に、注入されたグラウトは
土壌(ソイル)と混合して柱状のソイルセメントが地中
に形成される。ソイルセメント柱状体の直径は主として
上記掘削ビットの寸法によって決まり、通常直径約30
cm〜50cm程度である。また、その全長は通常4〜
6m程度迄が適当であり、それ以上の長さのものを打ち
込むには長リーチの大型掘削機を必要とするので好まし
くない。
【0021】次いで、ソイルセメント柱状体連続地中梁
3は、対向した連続地中壁1、1′の根入れ部分を差し
渡して直線状に且つピット設計深度以下の深さにおいて
地中に数珠繋ぎ状に形成される。連続地中梁は少なくと
も1本、好ましくは上述のように互いに交叉した2本以
上を設けることが良い。その本数や交叉角度は、地下室
平面形状に応じて適宜に決定すべきであるが、例えば、
図示のように方形の場合には互いに90度で交叉する連
続地中梁3、3′を設ける。更に、軟弱な地盤の時或い
は複雑なピット形状の時は当然設置本数を増やすことが
望ましい。かかる柱状体連続地中梁は、上記の地盤改良
掘削機を用いて地表からピット設計深度迄はグラウトを
注入せずに空打ちをなし、それ以下の深さにおいてのみ
グラウト注入を行うことによって形成することができ
る。このようにして連続地中壁の対向する根入れ部分を
支承する柱状体連続地中梁は、地山の側方流動圧に対抗
して連続地中壁の下方裾部分の変位傾倒を防止する。
【0022】図3は地中に形成されたピットの基本的外
殻の別の1例を示す平面図である。同図において、ソイ
ルセメント柱状体連続地中壁1、1′・・・には、例え
ば2本跳び或は3本跳び程度の適宜な間隔を置いた柱状
体毎にその長軸に沿って例えばH型鋼、T型鋼、チャン
ネル、アングル等適宜断面形状の補強用鉄鋼芯材4、
4′、4″・・・を垂直に挿通する。次いで、このよう
にして挿通配設された補強用芯材の上端又はその近傍に
おいて、該芯材の間をT型鋼、チャンネル、アングル等
の長尺の固定用鋼材5、5′・・・によって順次に水平
に架け渡し、溶接、螺着等の適宜な手段によって両者を
結合固定することからなる、所謂「腹起こし」による連
続地中壁固定処理を施す。更に、腹起こしを行った壁体
の隅角においては、両辺、例えば固定用鋼材5、5′を
結合する斜め材6を以て筋かいするか、或いはアングル
ブレースを組み付けて補強する手段、所謂「火打ち」を
施すことが好ましい。かかる連続地中壁固定処理工程と
上記のソイルセメント連続地中梁形成工程とはいずれを
先に行っても良く、その実施順序は問わない。
【0023】上記連続地中壁および連続地中梁を構成す
るソイルセメントは打設後、地中で通常約3〜7日の養
生期間を経て固化する。固化した頃合いを見計らって、
連続地中壁に囲繞された地山部分を所定の深度まで根掘
りして連続地中壁面を露出させることにより全体形状の
安定したピットを形成する。
【0024】前記のソイルセメントが固化して形成され
た柱状体はそのままでは、殆ど満足すべき遮水・耐水性
を期待することができないことに加えて、形成されたピ
ットは、周囲の地山の側方流動圧および伏在する地下水
により常時被圧されているため、壁体の強度特性並びに
壁体と床面の遮水・耐水性を更に向上させて十分な土留
め効果および遮水・防水効果を付与することが、耐久
性、保全面、作業並びに居住の安全面等の見地から特に
望まれる。そのためには、前記ジェットグラウト工法に
よりソイルセメント柱状体を場所打ちするに際して、グ
ラウトにカチオン性ビニル系重合体水性エマルジョンを
配合混和することが好ましい。配合量は、ソイルセメン
トと重合体水性エマルジョンそれぞれの固形分換算でグ
ラウトに対し20〜2500重量%、更に好ましくは5
0〜500重量%の量が適当である。20重量%未満で
は強度特性並びに遮水・耐水性の実質的な向上は望め
ず、又、2500重量%超では、コスト高となるばかり
か、ソイルセメント硬化体の強度特性、特に圧縮強度、
耐衝撃強度等の低下傾向が現れるので好ましくない。
【0025】このようなセメント混和剤は、例えば、特
開昭56−129654号、同58−185464号、
同61−275150号、その他の公報によって提案さ
れた公知のものをいずれも適用することができる。就
中、商品名「オートゾル」(株式会社オートセット製)
として市販されているカチオン性アルカリ硬化型アクリ
ル共重合樹脂水性エマルジョンをセメント固化剤と共に
用いれば、正負電荷による電気的吸着に加えて、更にポ
リマー粒子表面のアルカリ硬化反応基がグラウト中のセ
メントやセメント固化剤等のアルカリにより粒子間で化
学的架橋反応を起こして強靭で弾性に富む硬化体を与え
るので、従来市販のカチオン性SBR混和剤、EVA系
混和剤、アクリル系混和剤等が正負電荷の電気的吸着の
みにより接着を補強しているのに比して、頗る優れた接
着性、耐久性、耐アルカリ性、低い温度依存性を示し、
ソイルセメント硬化体に優れた曲げ強度、圧縮強度、引
張強度、耐衝撃強度、靭性、遮水・耐水性等を与える。
従って、上記「オートゾル」とセメント固化剤との併用
系は格別好適である。
【0026】水性グラウトに対し、上記の「オートゾ
ル」によって代表されるカチオン性アルカリ硬化型アク
リル共重合樹脂水性エマルジョンと併用添加して特に好
適な効果を奏するセメント固化剤としては、例えば商品
名「オートセット#3300」(株式会社オートセット
製)が挙げられる。このものは下記表1からも明らかな
通り、普通ポルトランドセメントに比して、3石灰アル
ミナ(3CaO・Al23 )および石膏(CaSO4
・2H2 O)の比率が格段に高い鉱物組成を有し、水和
量の大きいエトリンガイト(3CaO・Al2 3 ・3
CaSO4 ・32H2 O)を全量の79.5重量%にも
及ぶ驚くべき多量生成する。これは普通ポルトランドセ
メントの約8倍の生成量に相当する。
【0027】
【表1】
【0028】即ち、セメント固化剤「オートセット#3
300」はその多量のエトリンガイト生成能力による高
い奪水ポテンシャルにより、泥状ソイルセメント中の固
体粒子の表面付着水や粒子間毛管重力水のみならず、粒
子内毛管水をも取り除き、固体粒子を密に締め固めるの
に最適な含水率に迄脱水すると共に、自らは大部分がエ
トリンガイト結晶に転化し、ソイルセメントの硬化を促
進するという優れた作用がある。同時にまた、共存する
上記「オートゾル」の強靭・耐水皮膜形成作用との相乗
効果によって、上述の通りソイルセメント硬化体の物理
的諸特性が著しく向上する。かかるセメント固化剤の配
合量は通常、グラウトに対してそれぞれの固形分換算で
10〜50重量%、好ましくは13〜20重量%であ
る。
【0029】上記のようにカチオン性ビニル系重合体水
性エマルジョンを、好ましくはエトリンガイト生成能の
大きいセメント固化剤と共に、グラウトに添加すること
により、ソイルセメント柱状体連続壁の強度特性並びに
遮水・耐水性を著しく改善することができるが、尚それ
らの特性、特に遮水・耐水性を強化向上するために、根
掘りによって露出した壁面に対して、上記カチオン性ビ
ニル系重合体水性エマルジョンを噴霧、塗布等により含
浸施与し、または/および公知慣用のコーキング材等に
よる防水工事を施すことが好ましい。更に、ピット底面
には同様な重合体水性エマルジョンおよび/またはコー
キング材による防水加工および/またはビニールシー
ト、アスファルトの展設等、公知慣用の防水加工を施す
工程を行うことは、特に好適である。
【0030】次いで、ピット内に地下室を構築する従来
法を示す図4においては、ピット7底部に設けた床上
に、壁から約1〜1.5m程度の幅の作業域Wを内周に
沿って残し、アンカーボルト8から立ち上げた鉄筋9を
挟んで、外側型枠10と内側型枠11とを仮設し、その
間にコンクリートを打設して地下室周壁12を築く。地
下室建設後に上記周囲の作業域を必要に応じて埋め戻
す。
【0031】一方、本発明の地下室構築法を示す図5に
おいてはピット7の連続壁1、1′・・・は既に強固な
防水性壁体であるため、そのまま外側型枠として利用す
ることができ、連続壁1、1′・・・内側に所定の間隔
を距てて、好ましくは補強鉄筋9を挟んで内側型枠11
のみを仮設し、連続壁1と内側型枠11との間にコンク
リートを打設する。かくして連続壁と密着膚設した地下
室周壁12が築かれ、この周壁から建築物を立ち上げで
いくことができる。
【0032】
【発明の効果】本発明方法において、ジェットグラウト
法による柱状体連続地中壁を以て形成されたピットは、
腹起こし、火打ち等の壁体固定処理に加えて、連続地中
梁によって、壁の下方裾部を支承したため、壁体の極め
て減少した根入れ深さにも拘わらず、地山の側方流動圧
に対して大きい抵抗力を備え、壁体の傾倒や転倒が完全
に防止され、極めて安定強固である。従って少ない根入
れ深さによっても壁体は安定するため、このような根入
れ深さの減少によってソイルセメント柱状体の全長の短
縮が可能となり、それに伴ってジェットグラウト用の地
盤改良掘削機として、比較的小リーチの小形機械を使用
することができる。従って、狭隘で各種障害物の錯綜し
た環境において、小回りの利いた円滑な作業が高能率で
可能となった。
【0033】また、カチオン性ビニル系重合体水性エマ
ルジョンを、好ましくは適宜なセメント固化剤と共に、
グラウトに添加することにより、ソイルセメント柱状体
連続壁の強度特性並びに遮水・耐水性を著しく改善する
ことができると共に、更に完全な遮水・耐水性の付与に
留意したため、土留めおよび漏水防止効果が大きく、軟
弱な地盤あるいは側方流動圧が大きく特に被圧地下水の
伏在する地山においても作業上の危険も無く、また、ピ
ットの耐久性、保全面、建設された地下室の居住性にお
いて頗る良好であるという利点がある。
【0034】更にまた、本発明による地下室構築方法に
よれば、従来法において必要とされた作業用空間を省略
して、ピットの面積を最大限に利用した大容積の地下室
を構築することができ、従って型枠の減少及び埋め戻し
作業の省略等に伴う建築資材の節減や作業能率の上昇に
よるコストダウンに加えて、地下室に積み上げる建築物
も建築面積が拡大されて、土地の有効利用が可能となる
という大きい効果がある。
【0035】尚、本発明は、主として地下室構築用に好
適なピット形成法として説明したが、地下室のみに限ら
ず、例えば、ボックスカルバート設置用オープンケーソ
ン、プール、貯水池、疏水路、地下道、地下鉄建設用
等、各種オープンカット構築土木工事に応用し得ること
は言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明方法によるピット掘削前の柱状体連続
地中壁および柱状体連続地中梁の概要を示す平面図であ
る。
【図2】 図1のA−A線矢視垂直断面図である。
【図3】 本発明方法によるピット掘削前の柱状体連続
地中壁の別の態様およびその安定処理工程を示す平面図
である。
【図4】 従来公知の地下室の構築方法を示す概要説明
図である。
【図5】 本発明による地下室の構築方法を示す概要説
明図である。
【符号の説明】
1、1′,2、2′ 柱状体連続地中壁 3、3′ 柱状体連続地中梁 4、4′,4″ 鋼芯材 5、5′ 固定用長尺鋼材 6 火打ち 7 ピット 8 アンカーボルト 9 鉄筋 10 外側型枠 11 内側型枠 12 地下室周壁 P ピット設計深度 R 根入れ深さ W 作業域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 E02D 29/045 E21D 11/10 Z E21D 13/00 13/02 11/10 E02D 29/04 Z 13/02 // C09K 103:00

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 設計されたピットの平面輪郭に沿って地
    盤面からピット設計深度の1/2以下の根入れ深さまで
    グラウト注入により場所打ちしてソイルセメント柱状体
    連続地中壁を形成する工程、該柱状体の適宜な本数の長
    軸に沿って鋼芯材を延設し補強すると共に該鋼芯材の上
    端近傍にビームを順次架け渡すことからなる腹起こしを
    含む連続地中壁固定処理を施す工程、上記連続地中壁の
    互いに対向した根入れ部分の間を差し渡した少なくとも
    1本の直線に沿ってピット設計底面以下の水準でグラウ
    ト注入する場所打ちによりソイルセメント柱状体連続地
    中梁を形成する工程、および上記ソイルセメントの硬化
    後において連続地中壁に囲繞された地山を所定深度まで
    掘削してピットを形成する工程を含むことを特徴とする
    ピットの構築方法。
  2. 【請求項2】 上記連続地中壁固定処理が連続地中壁の
    隅角に架け渡した2本のビームに筋かいを施すことから
    なる火打ちを含む請求項1の方法。
  3. 【請求項3】 上記根入れ深さがピット設計深度の1/
    4以下である請求項1または2の方法。
  4. 【請求項4】 上記グラウトが、カチオン性ビニル系重
    合体水性エマルジョンをそれぞれの固形分換算で20〜
    2500重量%配合混和されてなる請求項1乃至3の何
    れか1項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 上記カチオン性ビニル系重合体水性エマ
    ルジョンの前記配合量が50〜500重量%である請求
    項4または5の方法。
  6. 【請求項6】 上記グラウトが、更にセメント固化剤を
    それぞれの固形分換算で10〜50重量%配合混和され
    てなる請求項4の方法。
  7. 【請求項7】 上記セメント固化剤の前記配合量が13
    〜20重量%である請求項6の方法。
  8. 【請求項8】 ピット形成後に更にその内面に防水加工
    を施す工程を含む請求項1乃至7の何れか1項に記載の
    方法。
  9. 【請求項9】 上記の互いに対向した根入れ部分の間を
    差し渡した直線が、互いに交叉する少なくとも2本の直
    線を含む請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記請求項1の方法により構築された
    ピットの連続壁の内側に該連続壁面と所定間隔を隔てて
    内側型枠を対設し、連続壁と内側型枠との間にコンクリ
    ートを打設することにより地下室のコンクリート周壁を
    ピットの壁面に膚接して築くことを特徴とする構造物の
    構築方法。
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