JP4031284B2 - 地下構造物の構築工法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、地下に道路、水路、トンネル等の所謂長尺地下構造物又は非長尺の地下タンク等を構築する工法の技術分野に属し、更に云えば、深層混合処理工法により地盤改良した改良地盤を構造主体に利用する地下構造物の構築工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トンネルに用いられるボックスカルバート等の地下構造物を構築する場合には、図5に例示したように、先ず山留めbを構築し、地盤の掘削と共に切梁cを仮設して掘削を進め、掘削完了後に掘削底部dに地下構造物aを構築する山留め切梁工法が一般的に実施されている。
【0003】
特殊な例として、地下階を先行して構築し切梁に利用しながら地盤の掘削を進める逆打ち工法も実施されている。
【0004】
また、地盤の液状化や沈下対策、地下水対策などの必要がある場合には、地盤を予め広く地盤改良した上で、その改良地盤について、構造物の地下部分に必要な掘削を行い、構造物の建築を進めるオープンカット工法(特開平6−73722号公報)も実施されている。
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記山留め切梁工法は、山留めbや切梁c等の仮設部材を多く必要とする上に、地下構造物aを独立して構築するのでコストが嵩み工期が長びく欠点がある。
【0006】
上記した逆打ち工法は、仮設部材の使用を軽減できる利点はあるものの、居住空間を有する建物の構築を主目的として実施するものであり、道路や水路、トンネル等の所謂長尺地下構造物の構築には適さない。
【0007】
更に、上記オープンカット工法も、仮設部材の使用を軽減できる利点はあるものの、改良地盤は山留めあるいは止水壁として利用するものでしかなく、構造物は改良地盤上へ独立して構築するから、無駄が多い。
【0008】
本発明の目的は、深層混合処理工法により地盤改良した改良地盤をそっくり構造主体に利用することで、地下構造物の構築に要する資材や労力の無駄を省き、コストを軽減でき、地下道路、水路、トンネル等の所謂長尺地下構造物或いは非長尺の地下タンク等の構築に好適な構築工法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る地下構造物の構築工法は、
地下タンク、道路、水路、或いはトンネル等の地下構造物を、深層混合処理工法により地盤改良した改良地盤を構造主体に利用して構築する工法であって、
構築予定の地下構造物の側壁及び底壁へ働く内外力を負担可能な平面領域及び深度領域まで深層混合処理工法により地盤改良する段階と、
前記の改良地盤を掘削して地面レベルに、スラブコンクリートを、切梁としての役割を失わない程度の間隔をあけて構築する段階と、
前記スラブコンクリートが所要の強度を発現した後に、これを切梁に利用して、当該スラブコンクリートより下方の改良地盤を、構築予定の地下構造物の内部空間に相当する大きさ、形状に掘削更に同空間の内壁、床などに側壁、底壁等の仕上げを行って地下構造物を完成する段階と、
から成ることを特徴とする。
請求項2に記載した発明に係る地下構造物の構築工法は、
地下タンク、道路、水路、或いはトンネル等の地下構造物を、深層混合処理工法により地盤改良した改良地盤を構造主体に利用して構築する工法であって、
構築予定の地下構造物の側壁及び底壁へ働く内外力を負担可能な平面領域及び深度領域まで深層混合処理工法により地盤改良する段階と、
前記の改良地盤を、構築予定の前記地下構造物の天井レベルまで掘削し、その掘削底部に、スラブコンクリートを、地下構造物の構築作業に必要な開口部を形成して構築する段階と、
前記スラブコンクリートが所要の強度を発現した後に、これを切梁に利用して、前記開口部を利用して当該スラブコンクリートより下方の改良地盤を、構築予定の地下構造物の内部空間に相当する大きさ、形状に掘削し、更に同空間の内壁、床などに側壁、底壁等の仕上げを行う段階と、
その後、スラブコンクリートの上方へ埋め戻しを行って地下構造物を完成する段階と、
から成ることを特徴とする。
【0010】
請求項に記載した発明は、請求項1又は2に記載した地下構造物の構築工法において、
深層混合処理工法により地盤改良した改良地盤を、構築するスラブコンクリートの深さ位置まで掘削する工程に先行して、構築予定のスラブコンクリートを支持するのに適切な部位にH鋼等の柱心材を建て込み、しかる後に前記スラブコンクリートを構築して前記柱心材によって支持させ、次いで前記スラブコンクリートより下方の改良地盤を、構築予定の地下構造物の内部空間に相当する大きさ、形状に掘削更に同空間の内壁、床などに側壁、底壁等の仕上げ及び柱心材7の仕上げ等を行うことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施形態、及び実施例】
図1は、請求項に記載した発明に係る地下構造物の構築工法の実施形態を示している。この構築工法は、図1の紙面と垂直方向に長いトンネルや地下道路、水路などの所謂長尺地下構造物又は非長尺の地下タンクなどを構築する場合に好適に実施される。
【0012】
この構築工法の実施要領は、先ず図1Aに示したように、地下構造物Aを構築する地盤1を、同地下構造物Aの側壁及び底壁へ働く内外力(土圧、地下水圧及び鉛直荷重など)を負担可能な平面領域及び深度領域(水平方向及び深さ方向の範囲)まで深層混合処理工法により地盤改良する。
【0013】
ここでいう深層混合処理工法は既に公知、周知の技術なので、具体的に図示して説明することは省略するが、要するに、プラントで硬化材(安定材)をスラリー状に作り、これをスラリーポンプで処理機に圧送し、上述した改良範囲の軟弱地盤の全面にわたり、処理機で掘削土と硬化材スラリーとを均一に撹拌混合させ、軟弱土を所定の強度が得られるように大深度まで地盤改良を行う工法である。但し、前記の内容に限定されるものではない。
【0014】
上記内外力を負担可能な地盤改良の範囲を言い換えると、力学的に地下構造物として成り立つ範囲をいう。例えば平面領域は、少なくとも構築予定の地下構造物Aの外周に、内外力を負担するのに必要な壁厚Hを加えた領域である。深度領域は、少なくとも構築予定の地下構造物Aの深度に、同地下構造物Aを支持するのに必要な底厚さDを加えた深度とする。
【0015】
前記深層混合処理工法によって地盤改良を所定範囲まで施工すると、次には、図1Bに示したように、その改良地盤1を、構築するスラブコンクリートの深さ位置D1、即ち構築予定の地下構造物Aの天井レベルまでを掘削する。つづいて、図1Cに示したように、掘削底部に、スラブコンクリート2を打設して構築する。但し、後に続く改良地盤1の更なる掘削その他の作業の準備として、前記スラブコンクリート2に開口部を形成しておくことに留意する。
【0016】
前記スラブコンクリート2は、それより下方の改良地盤1の掘削を進める際に切梁に利用するので、構築予定の地下構造物Aを平面的に見て十分に覆う程度の広さで、且つ掘削部の側壁4に作用する土圧、地下水圧などに対して十分な強度を発揮するように構築する。
【0017】
前記スラブコンクリート2が前記強度を発現した後に、これを切梁に利用して、前記開口部を利用して、図1D、Eに示したように、当該スラブコンクリート2より下方の改良地盤1を構築予定の地下構造物Aの内部空間に相当する大きさ、形状に掘削する。そして、図1Fに示したように、完成した空間の側壁(内壁)3と底壁(床)5にショットクリート(吹付け)等の仕上げ6を行い、更にスラブコンクリート2の上方の掘削部8を埋め戻して地下構造物Aの構築を完了する。
【0018】
上記したように、本発明に係る地下構造物の構築工法は、深層混合処理工法により地盤改良した改良地盤1をそっくり構造主体に利用するので、改めて地下構造物Aを構築する資材や労力の無駄を省き、コストを軽減できるのである。
【0019】
図2と図3は、請求項1に記載した発明に係る地下構造物の構築工法の実施形態を示している。この実施形態は、所謂露天式の地下道路(高速道路等)や水路等の長尺地下構造物を構築する場合に好適に実施される。
【0020】
この地下構造物の構築工法もやはり、先ずは深層混合処理工法により、地下構造物Bを構築する地盤11を、同地下構造物Bの側壁及び底壁へ働く内外力(土圧、地下水圧及び鉛直荷重など)を平面領域及び深度領域(水平方向及び深さ方向の範囲)まで地盤改良する(図3A)。
【0021】
次に、前記改良地盤11をスラブ底盤の深さ位置D、即ち構築予定の地下構造物Bの天井レベルまで掘削し、同掘削底部にスラブコンクリート12を構築する(図3B)。
【0022】
本実施形態の特徴は、スラブコンクリート12を地面レベル(G.L)に構築することである。よってスラブコンクリート12は、地下構造物Bが地下道路の場合には、その道路上を横断する橋としての役割を期待することもできる。よって、スラブコンクリート12は、地下構造物Bの上面の全面に構築する場合のほか、後の切梁としての役割を失わない程度の間隔をあけて構築することもできる(図2)。したがって、前記の間隔部分は、改良地盤を掘削する場合の開口として利用することができる。
【0023】
前記スラブコンクリート12が強度を発現した後に、これを切梁に利用して、図3C、Dに示したように、当該スラブコンクリート12より下方の改良地盤11を地下構造物Bの内部空間に相当する大きさ、形状に掘削し、改良地盤11をそのまま側壁13と底壁15に利用した地下構造物Bを構築する。そして、図3Eに示したように、完成した空間の側壁13と底壁15にショットクリート(吹付け)等の仕上げ16を行って地下構造物Aの構築を完成する。
【0024】
したがって、本発明に係る地下構造物の構築工法によると、上記図1に基づいて説明した地下構造物Aの構築工法の作用効果と略同様の作用効果を奏する。即ち、深層混合処理工法により地盤改良した改良地盤11をそっくり構造主体に利用するので、改めて地下構造物Bを構築する資材や労力の無駄を省き、コストを軽減できるのである。
【0025】
図4A〜Dは、請求項に記載した発明に係る地下構造物の構築工法の実施形態を示している。これは地下構造物Cが大規模でスラブコンクリートを支持する支柱が必要な場合に好適な構築工法である。
【0026】
本発明の場合は、深層混合処理工法により地盤改良した改良地盤21を、構築するスラブコンクリートの深さ位置まで掘削する工程に先行して、スラブコンクリート22を支持するのに適切な部位(図示例では、平面的に見て断面の略中央位置)にH鋼等の柱心材7を建て込む。しかる後にスラブコンクリート22を構築し、これを前記柱心材7によって支持させる。次いで前記スラブコンクリート22より下方の改良地盤21を構築予定の地下構造物の内部空間に相当する大きさ、形状に掘削更に同空間の内壁23、床25などに側壁、底壁等の仕上げ及び柱心材7の仕上げ等を行うことを特徴とする(請求項記載の発明)。
【0027】
この地下構造物Cの構築工法は、構築するスラブコンクリート22の支点間が長く、柱心材7を設けなくてはならない場合などに好適に実施される。柱心材7を設けたことにより、スラブコンクリート22の支持力を確保できるので、下方の改良地盤21を安定して掘削することができ、地下構造物自体の安定性も得られるのである。
【0028】
以上に実施形態を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の実施形態の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【0029】
【本発明の奏する効果】
請求項1、2に記載した発明に係る地下構造物の構築工法によれば、下記する効果を奏する。
1)深層混合処理工法により地盤改良した改良地盤をそっくり構造主体に利用するので、改めて地下構造物を構築する資材や労力の無駄を省き、コスト削減に寄与することは勿論、耐震性能に優れた所謂長尺地下構造物の構築を可能にする。
2)地下構造物を構築する地盤を先行して地盤改良するため、液状化対策、軟弱地盤対策が不要である。
3)スラブコンクリートが切梁的な役割を果たすので、支保工、山留め工を必要とせず、改良地盤の壁厚は自立山留めとして用いる場合より薄くでき、経済的である。
4)上部工事を行う場合には、スラブコンクリート構築後に上部工事が可能となり、よって全体工期の短縮を図ることができる。
5)埋め戻し作業を行う場合には、掘削残土をコンクリートスラブ設置が終了した箇所へ埋め戻すことができ、残土処理の簡略化を図ることができる。
6)スラブコンクリートを橋などに利用することもできる。
7)掘削幅が広く、スラブコンクリート支点間が長い場合でも柱心材を設けることにより安定して地下構造物の構築を行い得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】A〜Fは、請求項1に記載した発明に係る地下構造物の構築工法の実施形態を段階的に示した説明図である。
【図2】請求項1に記載した発明に係る地下構造物の構築工法の異なる実施形態を示した斜視図である。
【図3】A〜Eは、請求項1に記載した発明に係る地下構造物の構築工法の実施形態を段階的に示した説明図である。
【図4】A〜Dは、請求項2に記載した発明に係る地下構造物の構築工法を段階的に示した説明図である。
【図5】従来技術を示した立面図である。
【符号の説明】
A、B、C 地下構造物
1、11、21 地盤
2、12、22 スラブコンクリート
3、13 地下構造物の側壁
4、14 掘削部の側壁
5、15 地下構造物の底壁
6、16 仕上げ
7 掘削部
8 柱心材

Claims (3)

  1. 地下タンク、道路、水路、或いはトンネル等の地下構造物を、深層混合処理工法により地盤改良した改良地盤を構造主体に利用して構築する工法であって、
    構築予定の地下構造物の側壁及び底壁へ働く内外力を負担可能な平面領域及び深度領域まで深層混合処理工法により地盤改良する段階と、
    前記の改良地盤を掘削して地面レベルに、スラブコンクリートを、切梁としての役割を失わない程度の間隔をあけて構築する段階と、
    前記スラブコンクリートが所要の強度を発現した後に、これを切梁に利用して、当該スラブコンクリートより下方の改良地盤を、構築予定の地下構造物の内部空間に相当する大きさ、形状に掘削更に同空間の内壁、床などに側壁、底壁等の仕上げを行って地下構造物を完成する段階と、
    から成ることを特徴とする地下構造物の構築工法。
  2. 地下タンク、道路、水路、或いはトンネル等の地下構造物を、深層混合処理工法により地盤改良した改良地盤を構造主体に利用して構築する工法であって、
    構築予定の地下構造物の側壁及び底壁へ働く内外力を負担可能な平面領域及び深度領域まで深層混合処理工法により地盤改良する段階と、
    前記の改良地盤を、構築予定の前記地下構造物の天井レベルまで掘削し、その掘削底部に、スラブコンクリートを、地下構造物の構築作業に必要な開口部を形成して構築する段階と、
    前記スラブコンクリートが所要の強度を発現した後に、これを切梁に利用して、前記開口部を利用して当該スラブコンクリートより下方の改良地盤を、構築予定の地下構造物の内部空間に相当する大きさ、形状に掘削し、更に同空間の内壁、床などに側壁、底壁等の仕上げを行う段階と、
    その後、スラブコンクリートの上方へ埋め戻しを行って地下構造物を完成する段階と、
    から成ることを特徴とする地下構造物の構築工法。
  3. 深層混合処理工法により地盤改良した改良地盤を、構築するスラブコンクリートの深さ位置まで掘削する工程に先行して、構築予定のスラブコンクリートを支持するのに適切な部位にH鋼等の柱心材を建て込み、しかる後に前記スラブコンクリートを構築して前記柱心材によって支持させ、次いで前記スラブコンクリートより下方の改良地盤を、構築予定の地下構造物の内部空間に相当する大きさ、形状に掘削更に同空間の内壁、床などに側壁、底壁等の仕上げ及び柱心材7の仕上げ等を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載した地下構造物の構築工法。
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