JPH095285A - 有機系塗膜の評価方法及び評価用装置 - Google Patents

有機系塗膜の評価方法及び評価用装置

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JPH095285A
JPH095285A JP15001795A JP15001795A JPH095285A JP H095285 A JPH095285 A JP H095285A JP 15001795 A JP15001795 A JP 15001795A JP 15001795 A JP15001795 A JP 15001795A JP H095285 A JPH095285 A JP H095285A
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coating film
organic coating
aqueous solution
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JP15001795A
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Takeshi Hamada
健 濱田
Hiromasa Nomura
広正 野村
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 有機系塗膜の下地金属の腐食抑制効果を評価
する上で重要な因子である、有機塗膜の欠陥の大きさ及
び塗膜単位面積当たりの個数密度を簡便にかつ定量的に
評価する方法及び装置を提供することを目的とする。 【構成】 有機系塗膜表面に複数個の領域を定め各領域
に二種類の異なった比電導率を有する水溶液を接触さ
せ、各領域毎各水溶液毎に電気抵抗を測定し、これらの
測定値から欠陥の大きさと個数密度を評価する方法およ
び装置。 【効果】 有機系塗膜に存在する欠陥の大きさと個数密
度を簡便に、かつ定量的に評価可能であり、塗膜の設計
開発や劣化程度の評価等において大きな寄与をする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、有機系塗膜に存在する
欠陥の大きさ及び有機系塗膜表面の単位面積当たりの個
数密度を簡便にかつ定量的に評価するための新規な測定
方法及び装置に係り、更に詳しくは、本発明は、評価す
べき有機系塗膜表面に複数個の領域を定め、二種類の異
なる電気電導性を有する水溶液を該領域に接触させ、二
種類の水溶液毎、各領域毎に電気電導度を測定すること
によって、有機系塗膜に存在する欠陥1個の大きさ及び
有機系塗膜表面の単位面積当たりの個数密度を簡便にか
つ定量的に評価するための新規な評価方法及び評価用装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】有機系塗膜は、家電製品や自動車等に用
いられる鋼板等の金属を被覆し、その耐食性を向上させ
ることを重要な目的として用いられる。一般に、有機系
塗膜による下地金属の腐食抑制効果のかなりの部分は、
有機系塗膜がイオン移動を阻害することによって得られ
ている。即ち、使用している有機系塗膜がイオンの移動
を困難にすればするほど下地金属に対する腐食抑制効果
が大きくなる。従って、有機系塗膜を通したイオンの移
動がどれくらい起こるのかを定量的に評価することは、
有機塗膜の性能を確認する上で、有機系塗膜の劣化の程
度を評価する上で、また新たな有機系塗膜を開発してい
く上で重要な課題である。
【0003】この様な観点から「コーティング領域の界
面制御」(理工出版社、大藪權昭著、昭和63年5月2
5日発行)に述べられているように、従来から種々の有
機系塗膜に導電性水溶液を接触させた状態での有機系塗
膜の電気電導度が測定されている。更に、高岡、中沢、
松岡「高速道路と自動車」第36巻、第12号、26
(1993)に記されているように、Rfインピーダン
ス法によって塗膜劣化度が測定されている。また、茨城
「防錆管理」1980−1、30(1980)に記され
ているように、交流電気抵抗測定によって塗膜の電導度
を評価している。
【0004】一方、有機系塗膜によって覆われた金属の
腐食は、一般に金属表面で均一に起こるのではなく局所
的に起こることが知られている。このことは一般に有機
系塗膜には欠陥が存在しておりそこを起点として下地金
属の腐食が進行することを示唆している。即ち、欠陥を
有する有機系塗膜においては、塗膜自体がイオンの透過
を強く抑制していても欠陥を通じてイオンが容易に透過
することになり、その部分から下地金属の腐食が進行す
る。従って、実際の有機系塗膜の評価を行うに際して
は、塗膜自体の導電性と共に欠陥1個の大きさや有機系
塗膜単位面積当たりの個数密度を評価することが重要に
なる。
【0005】ところが、先述の従来の測定方法は、有機
系塗膜全体の測定であり、評価した塗膜の電導度が塗膜
自体の電導度に由来するものなのか、塗膜に存在する欠
陥に由来するものなのかを区別することが困難である。
更に、有機系塗膜に存在する欠陥一つが有機系塗膜表面
で占める面積や有機系塗膜表面単位面積当たりの個数密
度を定量的に評価することは不可能であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、有機系塗膜
の下地金属の腐食抑制効果を評価する上で重要な因子で
ある、有機塗膜の欠陥の大きさ及び塗膜単位面積当たり
の個数密度を簡便にかつ定量的に評価する方法及び装置
を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、有機系塗膜の
評価方法において、有機系塗膜表面に一定の面積を有す
る複数個の領域を定め、各領域に導電性水溶液を接触さ
せ、定常状態に達した後に各領域毎に電圧を印加して各
領域毎に各領域を経由して流れた電流を測定し、しかる
後に、各領域に接触する水溶液を先の水溶液より100
倍以上導電性の高い水溶液に置換し、定常状態に達した
後に再び各領域毎に電圧を印加して各領域毎に各領域を
経由して流れた電流を測定し、これらの測定値より有機
系塗膜に存在する欠陥1個の大きさ及び有機系塗膜単位
面積当たりの個数密度を定量的に評価することを特徴と
する、有機系塗膜の評価方法である。
【0008】更に本発明は、有機系塗膜評価装置におい
て、一定の比電導率を有する水溶液を含有する複数個の
電極を一組にした電極システムと、高抵抗測定用の電圧
源と微小電流測定器またはこれら二つが一体となった高
抵抗測定システムと、該高抵抗測定システムからの一本
のリード線と該電極システムの各電極からの複数本のリ
ード線との電気的接触を、順次切り替え可能なスイッチ
ングシステムとを含包する事を特徴とする有機系塗膜評
価装置である。
【0009】
【作用】本発明者は、有機系塗膜表面に一定の面積を有
する複数個の領域を定め、各領域に導電性水溶液を接触
させ、定常状態に達した後に各領域毎に電圧を印加して
各領域毎に各領域を経由して流れた電流を測定し、しか
る後に、各領域に接触する水溶液を先の水溶液より10
0倍以上導電性の高い水溶液に置換し、定常状態に達し
た後に再び各領域毎に電圧を印加して各領域毎に各領域
を経由して流れた電流を測定し、これらの測定値を解析
することによって有機系塗膜に存在する欠陥1個の大き
さ及び有機系塗膜単位面積当たりの個数密度を簡便にか
つ定量的に評価することが可能であることを見い出して
本発明を完成した。
【0010】以下に、図面を用いて本発明の測定方法及
び装置を詳細に説明する。図1に模式的に示したよう
に、まず高抵抗測定システム6からのOV側のリード線
(アース線)をアース8に接続すると共に下地金属1に
接続する。次いで下地金属1上に塗布された測定すべき
有機系塗膜2表面に一定の面積を有する複数の領域(n
個の領域)を設定し、導電性水溶液を含有する複数の電
極4(n個の電極)を保持する電極システム3を駆動し
て、導電性水溶液を含有したn個の電極4をこれらn個
の領域に各々対応させて接触させる。定常状態に達した
後に、高抵抗測定システム6からスイッチングシステム
5を経由して1番目の電極に電圧を印加し、1番目の領
域を通じて流れる電流を高抵抗測定システム6を用いて
測定し、コンピューターシステム7によって測定値を記
憶させる。
【0011】次いで、スイッチングシステム5によって
高抵抗測定システム6と1番目の電極との電気的接触を
切り、2番目の電極と電気的に接触させ、電圧を2番目
の電極に印加して、2番目の領域を通じて流れる電流を
測定し、コンピューターシステム7によって測定値を記
憶させる。以下同様の操作を行い、最後の電極に関する
測定が終了し測定値をコンピューターシステム7に記憶
させた後に、印加電圧をOVに落とす。
【0012】次いで、電極システム7を、上の測定で用
いた導電性水溶液より100倍以上の導電性を有する導
電性水溶液を含有するn個の電極4を保持する電極シス
テム3に交換し、n個の導電性水溶液を含有した電極4
を再び有機系塗膜2表面のn個の領域に各々接触させ
る。定常状態に達した後に、先の測定と同様にして、電
圧印加時の1番目の領域を通じて流れる、2番目の領域
を通じて流れる、・・・・・、電流を測定し各々の測定
値をコンピューターシステム7に記憶させて印加電圧を
OVに落とす。
【0013】本発明の方法で評価する有機系塗膜2は、
複数種類の有機物を含有していても、また多層膜の構造
を有していても良く、更に有機物のみで構成されている
必要はなくその中にいわゆる顔料等の無機物を含有して
いても良い。但し本発明の方法で評価する有機系塗膜2
は、いわゆる絶縁性の被膜であることが必要であり、比
抵抗率ρが107 Ωcm程度以上であることが望まし
い。また、塗膜の膜厚に関しては原理的には特に制限が
ないが、1mm程度以下であることが、印加する電圧を
低く抑えて高電圧での測定に伴う危険を回避する上で望
ましい。膜厚の均一性に関しては、10%程度以下の変
動であることが望ましい。本発明の評価方法では有機系
塗膜2表面に導電性水溶液を接触させる。従って、本発
明の評価方法では、この水溶液と反応して不可逆的な変
質を起こすような反応性の高い有機系塗膜の評価は不可
能である。
【0014】下地金属1は、通常の鉄鋼、銅、アルミや
各種の合金や金属間化合物、もしくはそれらの金属にZ
n、Zn−Cr、Zn−Ni−Cr、Zn−Fe合金、
Al、Al−Fe合金他の導電性のメッキを施してあっ
ても良い。更に下地金属表面には、いわゆるクロメート
処理やりん酸塩処理等の化成処理が施してあっても良
い。但し、本発明の方法で評価すべき有機系塗膜2との
接着は、有機系塗膜2との完全な電気的接触が確保され
る程度には良好である必要がある。また、有機系塗膜2
に存在する欠陥を通じて下地金属1に到達した導電性水
溶液と接触しただけで、水溶液の導電性を大きく(例え
ば2倍等)変化させる程激しく反応するような高反応性
のまたは非常に卑な金属は下地金属の材質としては避け
るべきである。
【0015】本発明でいう欠陥とは、有機系塗膜2にあ
いたピンホールや顔料と有機物との界面が剥離した部分
等、有機系塗膜表面2に導電性水溶液を接触させた場合
に、その欠陥を通じて導電性水溶液が下地金属まで到達
し、従って、その欠陥部分の導電性が接触させた導電性
水溶液の導電性と同程度になるものである。また、本発
明で言う有機系塗膜2の欠陥1個の大きさs(欠陥1
個)は、欠陥が1個存在し導電性水溶液が欠陥を通じて
下地金属にまで到達した場合にその欠陥が1個存在する
ことによって増加する電導度がΔ(1/R)であるとす
ると、 Δ(1/R)=σ(導電性水溶液)×s(欠陥1個)/d ・・・(1) によって定義される。ここで、σ(導電性水溶液)は有
機系塗膜表面2に接触させた導電性水溶液の比電導率、
dは有機系塗膜2の膜厚である。
【0016】また、本発明で言う欠陥の有機系塗膜2の
表面単位面積当たりの個数密度とは、有機系塗膜2に存
在する欠陥の大きさが均一であると仮定した場合に、本
発明の方法で評価された有機系塗膜2表面単位面積に平
均として存在する欠陥の数である。本発明の方法で評価
する有機系塗膜2表面上に設定する複数個の領域の面積
は、各領域について1cm2 程度であれば良い。但し、
有機系塗膜2の膜厚が非常に厚い場合には、正確な測定
を行うために、領域の面積は膜厚の自乗の100倍程度
以上に設定する必要がある。そして、本発明の評価の結
果、欠陥の個数密度が1個/cm2 より小さい場合には
領域の面積を10倍程度にし、再度測定すればよい。ま
た、欠陥の個数密度が100個/cm2 より大きい場合
には、領域の面積を1/10倍程度にして再度測定すれ
ばよい。本発明の方法で評価する有機系塗膜2表面上に
設定する複数個の領域の個数は、10個〜100個程度
を選択すればよい。
【0017】また、有機系塗膜2表面上に設定する複数
個の領域の形は単連結であればよく、正方形、円形、長
方形、ひし形等の通常の形状を選択すればよい。有機系
塗膜2上に設定する複数個の領域間の距離は、領域間で
有機系塗膜2表面を流れる表面電流が領域と下地金属1
との間で流れる電流に比べて無視できる様になる距離以
上に大きくとる必要がある。通常は、任意の二つの領域
を選択し、各々から任意に1点づつをとったときのこれ
ら2点間の距離の最小値が有機系塗膜2の膜厚の100
倍程度以上であれば表面電流が問題になることはない。
【0018】導電性水溶液を含有した電極4の、測定す
べき有機系塗膜2に接触する断面積及びその形状は正確
に、有機系塗膜2上に設定した複数個の領域の面積及び
形状に一致している必要がある。また、導電性水溶液を
含有した電極4の個数は有機系塗膜2上に設定した複数
個の領域の個数と一致している必要がある。導電性水溶
液を含有した電極4の内、導電性水溶液を保持する担体
を覆う外側の材質は、導電性水溶液によって腐食せず、
導電性の高いもの、例えば炭素材料、プラチナ等が望ま
しい。尚、導電性水溶液を含有した電極4各々はリード
線によってスイッチングシステム5に連結されている。
導電性水溶液を保持する担体としては、導電性水溶液を
保持しうる多孔質の材質や寒天等が用いられる。但し、
これらの担体は実質上導電性水溶液と反応しないことが
必要である。
【0019】電極システムは複数個の導電性水溶液を含
有した電極4が、予め有機系塗膜2上に設定した複数個
の領域に各々正確に接触可能になるように、複数個の導
電性水溶液を含有した電極4を保持しており、かつ正確
に上下に駆動可能であることが必要である。複数個の導
電性水溶液を含有した電極4を保持する材料は有機物等
の絶縁物質を用い、電極間の抵抗が1015Ω以上、好ま
しくは1017以上であることが必要である。
【0020】導電性水溶液を含有した電極4に含有され
る導電性水溶液の溶質は、NaCl、KCl、Na2
4 等の通常の電解質等を選択すればよい。但し、水溶
液のpHが7から大きくはずれているために評価する有
機系塗膜2が変質したり、水溶液が強い酸化性または還
元性等の強い反応性を有するために有機系塗膜と反応を
起こしたりするようなものは避けなければならない。更
に、導電性水溶液の導電性が溶液作成後の経過時間によ
って大きく変動するようなものは、評価の定量性を確保
するためにその使用を避けなければならない。導電性水
溶液の濃度は10-6N程度から10N程度の範囲のもの
から選択すればよい。但し、本発明の評価方法で用いる
2水準の導電性水溶液の比電導率は各々予め測定してお
き、それらの比電導率の比が100倍以上異なる事を確
認しておかなければならない。
【0021】スイッチングシステム5は、高抵抗測定シ
ステム6からのリード線と複数の導電性水溶液を含有し
た電極4からの複数のリード線との電気的接触を随時切
り替えることが可能である通常の装置であればよい。高
抵抗測定システム6は、1015Ω程度以上の高抵抗が測
定可能であるような、定電圧源と微小電流測定器からな
るシステムであっても良く、または、これら二つが一つ
の装置に組み込まれて一体となったものであっても良
い。また、特に評価すべき有機系塗膜の電気抵抗が10
12Ω程度以下と小さく、交流での測定が可能である場合
には、周波数可変の交流電圧源と交流電流測定器からな
るシステムであっても良く、または、これら二つの装置
が一つに組み込まれているものであり複素インピーダン
スが測定可能ないわゆるインピーダンス測定装置であっ
ても良い。
【0022】コンピューターシステム7は、高抵抗測定
システム6やスイッチングシステム5を自動で制御可能
な通常のシステムであれば良い。アース8は通常用いら
れるアースであればよい。導電性水溶液を含有した電極
4を有機系塗膜2表面に接触させた後に定常状態に達し
たことを判断する方法は、以下の通りである。 接触後、導電性水溶液を含有した電極4各々に電圧を
印加し、流れる電流を測定し、測定時刻と測定値をコン
ピューターシステム7に記憶させて、印加電圧をOVに
落とす。 10分もしくは30分等の一定の時間後、再び導電性
水溶液を含有した電極4各々に電圧を印加し、流れる電
流を測定し、測定時刻と測定値をコンピューターシステ
ム7に記憶させて、印加電圧をOVに落とす。 の操作を繰り返して、流れる電流量が全ての導電性
水溶液を含有した電極4に関して各々一定に達すれば、
定常状態に達している。
【0023】本発明の評価方法では、有機系塗膜および
欠陥を通じて電流が流れた場合に下地金属1表面で起こ
る電極反応に由来する分極が小さいことと、交流電圧を
印加した場合の静電容量に由来する電流が小さいことが
必要である。これらの条件は、印加電圧が一定である場
合にはその絶対値が10V程度以上であることを、ま
た、印加電圧が交流である場合には1×10-1〜1×1
0Hz程度の低周波であることを要求する。
【0024】但し、有機系塗膜2に一定の電圧を印加す
る場合、有機系塗膜2の欠陥部分の下地金属1表面での
電極反応によるガス発生等の影響を最小限に抑制するた
めに、印加電圧を電流測定が可能である範囲に低く抑
え、一つの電流測定に要する時間を再小限に抑え、かつ
電流測定終了毎に印加電圧をOVに落とすことが望まし
い。有機系塗膜2に一定の電圧を印加した場合に、上述
の測定によって得られたデータより、評価すべき有機系
塗膜2に存在する欠陥1個の大きさと、存在する欠陥個
数密度を計算する方法を以下に示す。
【0025】膜厚がdである有機系塗膜2上に設定した
領域の面積をS、設定した領域の個数をNとする。評価
した有機系塗膜2に欠陥が存在しない場合の塗膜の比電
導率をσ(0)とする。欠陥1個が有機系塗膜2表面に
占める面積とSとの比は欠陥各々に依存せず、試料毎に
一定であるとしこれをγとする。すると欠陥1個の面積
はγSである。即ち、欠陥の大きさは試料が決まれば一
つの値しかとらないとする。
【0026】次いで、設定したN個の領域に番号を付
け、j(j=1,2,・・・、N)とする。領域jに存
在する欠陥の個数をn(j)とする。すると、領域jに
おいて欠陥の占める面積は全部でn(j)γSである。
そして、このn(j)γSをS p (j)とし、S
p (j)とSとの比をα(j)とする。通常、n(j)
γSはSよりもずっと小さい値なので、領域jの面積S
の内、欠陥の存在しない部分の面積(S−n(j)γ
S)をSに等しいとして良い。
【0027】始めに用いた比電導率の小さい導電性水溶
液の比電導率をσ(A)、この導電性水溶液を用いて定
常状態後に測定した領域jに関する電流をI(A;
j)、印加した電圧をVとする。同様に、二番目に用い
た比電導率の大きい導電性水溶液の比電導率をσ
(B)、この導電性水溶液を用いて定常状態後に測定し
た領域jに関する電流をI(A;j)とする。印加した
電圧はVで同じである。本発明の評価方法の条件によ
り、 σ(B)>102 σ(A) ・・・・・・・・・・(2) が成立している。また、σ(A)を有する導電性水溶液
を用いた本発明の評価の前半部分を測定A、σ(B)を
有する導電性水溶液を用いた本発明の評価の後半部分を
測定Bとして以後引用する。
【0028】先述したように、領域jの面積Sの内、欠
陥の存在しない部分の面積(S−n(j)γS)をSに
等しいとして良いので、各領域jに対して、測定A、測
定Bの測定結果I(A;j)、I(B;j)は、 I(A;j)=[Sσ(O)+Sp (j)σ(A)]V/d ・・・(3) I(B;j)=[Sσ(O)+Sp (j)σ(B)]V/d ・・・(4) で与えられる。
【0029】(4)−(3)を計算すると、Sp (j)
=n(j)γSは、 Sp (j)={I(B;j)−I(A;j)}/{σ(B)−σ(A)} ×d/V ・・・(5) と求められる。従って、α(j)=Sp (j)/S=n
(j)γは、 α(j)={I(B;j)−I(A;j)}/{σ(B)−σ(A)} ×d/VS ・・・(6) で与えられる。ここで、条件(2)より(6)式中のσ
(A)は無視できるので、 α(j)={I(B;j)−I(A;j)}/σ(B)×d/VS ・・・(7) は良い近似である。
【0030】一方、一般に、面積S中に存在する欠陥の
個数がnである確率P(n)は、ポアソン分布に従うの
で、 P(n)=(<n>n /n!)exp(−<n>) ・・・・・(8) で与えられる。但し、<n>は面積S中に存在する欠陥
の個数nの平均値である。そして、ポアソン分布では、
(n−<n>)2 の平均値、即ち分散<δn2 >は、 <δn2 >=<n> ・・・・・・・・・・・(9) で与えられる。
【0031】面積Sの領域中に大きさがγSの欠陥がn
個ある場合、欠陥が占める割合αはγnに等しい。従っ
て、αもまた、ポアソン分布に従い、その平均値<α>
は、 <α>=γ<n> ・・・・・・・・・・・(10) で与えられ、(α−<α>)2 の平均値、即ち分散<δ
α2 >は、(9)式より <δα2 >=γ2 <δn2 >=γ2 <n> ・・・・(11) で与えられる。
【0032】従って、(10)式、(11)式より、欠
陥1個が領域の面積Sに占める割合γは、 γ=<δn2 >/<α> ・・・・・・・・・(12) によって、従って、欠陥1個の面積γSは、 γS=S<δα2 >/<α> ・・・・・・・(13) によって、与えられる。
【0033】更に、<n>の値は、(10)式と(1
1)式からγを消去して、 <n>=<α>2 /<δα2 > ・・・・・・・・(14) で与えられ、従って、単位面積当たりに存在する欠陥個
数密度<n>/Sは、 <n>/S=<α>2 /(<δα2 >S)・・・・・(15) によって、与えられる。
【0034】<α>、<δα2 >の値は、(6)式また
は(7)式によって各領域jに関する測定データより統
計的に計算することが出来るので、有機系塗膜に存在す
る欠陥1個の大きさγSを(13)式によって、また、
単位面積当たりに存在する欠陥個数密度<n>/Sを
(15)式によって計算することができる。さらには、
この計算はコンピューターシステム7を用いて自動的に
行うことが可能である。有機系塗膜2に1×10-1〜1
×10Hz程度の正弦波低周波交流電圧を印加した場
合、印加した電圧Vと測定した電流Iは一般に、
【0035】
【数1】
【0036】tは時刻であり、ζとξはそれぞれ電圧V
と電流Iのt=0での位相である。上で述べた有機系塗
膜2に一定の電圧を印加した場合の有機系塗膜2に存在
する欠陥1個の大きさと存在する欠陥個数密度を計算す
る方法において、Vを絶対値VにIを絶対値Iに置き換
えれば、有機系塗膜2に低周波交流電圧を印加した場合
に同様の解析を行うことができる。
【0037】本発明の評価方法の測定精度は、設定して
いる領域の数Nに依存する。領域の数Nを大きくすると
その精度はN1/2 に比例して向上する。例えば、S=1
cm 2 、N=10に設定し、本発明の評価方法で欠陥1
個の大きさが0.3μm2 、個数密度が4個/cm2
評価されたとする。同一の試料を用いて再び本発明の評
価を同じ条件で行うと、評価された欠陥1個の大きさの
ばらつきは±0.1μm2 の程度であり、評価された個
数密度のばらつきは±1個/cm2 の程度である。以上
述べてきたように、本発明の評価方法は、本発明の評価
用装置を用いて、有機系塗膜に存在する欠陥1個の大き
さと個数密度を簡便にかつ定量的に評価できるものであ
る。以下に本発明の内容を更に具体的に説明するための
実施例と比較例を示す。
【0038】
【実施例】
実施例1 評価すべき有機系塗膜2として、厚さ0.8mmの鋼板
上に塗布された膜厚25μmのポリ塩化ビニル(顔料3
0%含有)で大きさが24cm×20cmの試料を用い
た。領域は1cm×1cmの正方形を10個設定した。
比電導率が1×10-4(Ωcm)-1の硫酸ナトリウム水
溶液を寒天中に含有させた断面が1cm×1cmの正方
形である10個の電極4を保持した電極システム3を下
方に駆動して、10個の領域にこの水溶液を接触させ
た。スイッチングシステム5を用いて、各々の電極に1
0Vの電圧を印加して、電流を測定し、その値が定常に
達した約2時間後に各領域jに関して10Vの電圧印加
で流れる電流I(A;j)を測定し、コンピューターシ
ステム7に記憶させた。その値は表1に示したようにな
った。
【0039】次いで、この電極システム3を取り外し、
比電導率が1×10-1(Ωcm)-1である硫酸ナトリウ
ム水溶液を寒天中に含有させた電極4を保持する電極シ
ステム3に置換し、電極システムを下方に駆動して先の
測定領域に導電性水溶液を再び接触させた。スイッチン
グシステム5を用いて、各々の電極に10Vの電圧を印
加して、電流を測定し、その値が定常に達した約1.5
時間後に各領域jに関して10Vの電圧印加で流れる電
流I(B;j)を測定し、コンピューターシステム7に
記憶させた。その値は表1に示したようになった。表1
のデータを用いて、(7)式よりα(j)を算出し、更
にこの10個のα(j)の値から、αの平均<α>と
(α−<α>)2 の平均<δα2 >を統計的に計算する
と、<α>〜1×10-9、<δα2 >〜8×10-19
なった。従って、欠陥1個の大きさγSは式(13)よ
り、γS〜8×10-10 cm2 、単位面積当たりに存在
する欠陥個数密度<n>/Sは(15)式より、<n>
/S〜1個/cm2 と定量的に評価された。
【0040】
【表1】
【0041】実施例2 評価すべき有機系塗膜2として、厚さ0.8mmの鋼板
上に塗布された膜厚50μmのポリ塩化ビニル(顔料4
0%含有)を、紫外線照射と塩水噴霧による劣化促進試
験を10000時間行い、鋼板と塗膜の間に一部錆を生
じた約20cm×17cmの大きさの試料を用いた。領
域は、錆の生じた部分を避けて、1cm×1cmの正方
形を10個設定した。比電導率が0.8×10-4(Ωc
m)-1の硫酸ナトリウム水溶液を寒天中に含有させた断
面が1cm×1cmの正方形である10個の電極4を保
持した電極システム3を下方に駆動して、10個の領域
にこの水溶液を接触させた。スイッチングシステム5を
用いて、各々の電極に20Vの電圧を印加して、電流を
測定し、その値が定常に達した約3時間後に各領域jに
関して20Vの電圧印加で流れる電流I(A;j)を測
定したところ、表2に示したようになった。各電流等の
データは全てコンピューターシステム7に記憶させた。
【0042】次いで、この電極システム3を取り外し、
比電導率が1×10-1(Ωcm)-1である硫酸ナトリウ
ム水溶液を寒天中に含有させた電極4を保持する電極シ
ステム3に置換し、電極システムを下方に駆動して先の
測定領域に導電性水溶液を再び接触させた。スイッチン
グシステム5を用いて、各々の電極に20Vの電圧を印
加して、電流を測定し、その値が定常に達した約2.5
時間後に各領域jに関して20Vの電圧印加で流れる電
流I(B;j)を測定したところ、表1に示したように
なった。各電流値はコンピューターシステム7に記憶さ
せた。表1のデータを用いて、(7)式よりα(j)を
算出し、更にこの10個のα(j)の値から、αの平均
<α>と(α−<α>)2 の平均<δα2 >を統計的に
計算すると、<α>〜9×10-9、<δα2 >〜6×1
18となった。従って、欠陥1個の大きさγSは式(1
3)より、γS〜7×10-10 cm2 、単位面積当たり
に存在する欠陥個数密度<n>/Sは(15)式より、
<n>/S〜10個cm2 と評価された。
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】本発明の有機系塗膜の評価方法は、有機
系塗膜に存在する欠陥1個の大きさ及びその個数密度の
定量的評価を可能にするものである。また、本発明の評
価方法は、二種類の異なる比電導率を有する導電性水溶
液に接触させたときの電気電導度を測定する方法である
ために、本質的に簡便な方法であり、かつ理論的な裏付
けが明確で定量性に優れている。更に、本発明の有機塗
膜評価用装置によって本発明の評価方法を、簡便に再現
性良く行うことが可能である。本発明の評価方法および
装置は、有機系塗膜の設計・開発および塗膜劣化程度の
評価等に大きな寄与をするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の評価用装置の模式図である。
【符号の説明】
1 下地金属 2 有機系塗膜 3 電極システム 4 導電性水溶液を含有した電極 5 スイッチングシステム 6 高抵抗測定システム 7 コンピューターシステム 8 アース

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機系塗膜の評価方法において、有機系
    塗膜表面に一定の面積を有する複数個の領域を定め、各
    領域に導電性水溶液を接触させ、定常状態に達した後に
    各領域毎に電圧を印加して各領域毎に各領域を経由して
    流れた電流を測定し、しかる後に、各領域に接触する水
    溶液を先の水溶液より100倍以上導電性の高い水溶液
    に置換し、定常状態に達した後に再び各領域毎に電圧を
    印加して各領域毎に各領域を経由して流れた電流を測定
    し、これらの測定値より有機系塗膜に存在する欠陥1個
    の大きさ及び有機系塗膜単位面積当たりの個数密度を定
    量的に評価することを特徴とする有機系塗膜の評価方
    法。
  2. 【請求項2】 有機系塗膜評価用装置において、 一定の比電導率を有する水溶液を含有する複数個の電
    極を一組にした電極システムと、 高抵抗測定用の電圧源と微小電流測定器からなる、ま
    たは、これら二つが一体となった、高抵抗測定システム
    と、 該高抵抗測定システムからの一本のリード線と該電極
    システムの各電極からの複数本のリード線との電気的接
    触を、順次切り替え可能なスイッチングシステムと、を
    含包する事を特徴とする有機系塗膜評価用装置。
JP15001795A 1995-06-16 1995-06-16 有機系塗膜の評価方法及び評価用装置 Withdrawn JPH095285A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016217822A (ja) * 2015-05-19 2016-12-22 日鉄住金防蝕株式会社 現場作業性が良好な実構造物用のイオン透過抵抗測定装置およびそれを用いたイオン透過抵抗測定方法
CN114839224A (zh) * 2022-07-04 2022-08-02 江苏时代新能源科技有限公司 涂布质量的检测方法、检测装置、检测系统及储存介质

Cited By (3)

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CN114839224A (zh) * 2022-07-04 2022-08-02 江苏时代新能源科技有限公司 涂布质量的检测方法、检测装置、检测系统及储存介质
CN114839224B (zh) * 2022-07-04 2022-11-01 江苏时代新能源科技有限公司 涂布质量的检测方法、检测装置、检测系统及储存介质

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