【発明の詳細な説明】
ドップラー角の自動測定方法及びこれを実施するための装置
本発明は、超音波エコーグラフによるグレーレベル画像のエコーグラフ励振方
向と血管軸とによって囲まれるドップラー角DAを、前記血管軸付近に位置する
初期点を前もって指定することにより自動的に測定する方法に関するものである
。
本発明は前記方法を実施するための装置にも関するものである。
動脈内の血液の速度を定量的に測定するために、カラーエンコーディングによ
って血液速度を超音波撮像する方法は、入射超音波ビームと、血管の局部的な軸
との間の角度を求めることを基礎としている。このことは、市販されている任意
のエコーグラフに血液をカラーエンコードして表現させるのに近年行われている
あらゆる超音波処理方法について言えることである。さらに、ドップラー角と称
される前記角を正確に求めることは、パラメータの測定が多少複雑なエコーグラ
フデータを抽出し、動脈の挙動についてさらに研究を進めるのに必要なことであ
る。
上述したことに鑑みて、医療超音波像からドップラー角の値を、例えば1度程
度の高精度で抽出するための自動的な方法を想定し、実施することは価値のある
ことである。
ドップラー角は市販のあらゆる装置にとって依然として困難な要件であり、放
射線技師は、分析する血管の軸に対する超音波像内でトレースされる短いライン
セグメントの整合度を判断することにより、幾分近似的な方法でドップラー角を
求める必要がある。
エコーグラフビームの方向に対する血液の方向が成す角度を自動的に検出する
ことは日本の特開平5−31110号公報から既知である。数個のトランスジュ
ーサを具えているエコーグラフプローブを用いて超音波ビームを送信してから、
プローブの2つの受信区分にて受信された反射ビームの位相及び周波数について
別々の分析をして、所定のドップラー偏移を求め、これからプローブを作用させ
た個所における速度ベクトルを推論することができ、これがドップラー角の決定
に相当する。しかし、中間のエコーグラフ像なしで直接測定を行なうことは極め
て困難であり、その理由は、探触される血管の軸が実際には、ドップラー角を速
度するのに必要とされるような動脈像の平面内に存在するとは限らないからであ
る。
エコーグラフ励振の軸と血管の軸とが同じ平面内に位置していない場合、ドッ
プラー角の検出は依然可能であるも、かなりの誤差により悪影響を受けることと
なり、これは1度程度の精度を必要とする場合には容認できない。
本発明の目的はエコーグラフ像における血管のトレースのドップラー角を、こ
のトレースの直ぐ近くの指定点から出発して自動的に測定する方法を提供するこ
とにある。
本発明の他の目的は、正確且つ高速に前記ドップラー角を自動的に測定する方
法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は上述した方法を実施するための装置を提供すること
にある。
上述した目的を達成し、且つ従来の諸欠点を軽減するために、本発明は冒頭に
て述べた種類のドップラー角度自動測定方法において、当該方法が、
a) エコーグラフ画像に亘って伝播する光線を用い、前記初期点から第1の等
方性の光線追跡を行ない、前記光線に沿って規則的に分布する選択された点のグ
レーレベルのヒストグラムを形成する工程と、
b) 前記ヒストグラムに適用される画像処理アルゴリズムを実行し、前記選択
された点のグレーレベルを、2個の互いに隣接するクラスかグレーレベルで表わ
される閾値T1,T2---により分離され、より低い閾値Ti-1によって境界される
一方のクラスCLiがエコー画像中の血管の壁部を表わす少なくとも2個のクラ
スCL1,CL2に分類する工程と、
c) 前記初期点から第2の光線追跡を行ない、各光線の各点のグレーレベルを
前記閾値Ti-1と比較し、各光線についてグレーレベルが前記閾値Ti-1に等しい
か又はこれより高い第1の端部点P1を規定し、前記血管を、前記初期点を共通
点として有する複数の三角形のセクタから成る第1の局部マークの形態として表
わす工程と、
d) 前記第1局部マークの座標x(n)及びy(n)を有するN画素に対する
線形回帰法を用いることにより、前記第1局部マークの回帰線の傾斜aを、
として決定し、この場合、
e) ドップラー角DAを、DA=アークタンジェントaとして計算する工程と
を含むことを特徴とするものである。
よくあるように、エコーグラフ像には幾つもの血管のトレースが含まれている
。このために、角度測定を望む放射線技師は、先ず例えばエコーグラフ像を表示
させるワークステーションのスクリーン上にてマウスによって関心のある血管を
指定する。従って、本発明によるドップラー角度測定法は、前記初期点を指定し
た後に正確に、しかも極めて迅速な方法にて自動的に行なうことができる。
本発明の好適な実施に当っては、
前記第1の局部マークの画素の補正係数rを、
とした場合に、この補正係数rが、0と1との間の予め定めた値の閾値Rmを超
える場合にだけドップラー角DAの値を有効であるとする追加の工程を含む。
Rmに対する選定値は0.5よりも大きな値として、実施する角度測定に課す
品質基準を最小とするのが好適である。
式(1)に基づく傾斜及び式(2)に基づく係数γの計算に当り、本発明の他の好適
例では、補正係数r及び回帰線の傾斜を計算する項を、以下の分析式:
に基づいて、端部が座標xm,y(xm)及びXm,y(xM)を有する二つの
光線によって形成された各三角形のセクタに対して計算し、関数f(x,y)を
所定の以下の連続的な値1;x;xy;xx;yyとし、終端に対して用いられ
る係数a0,a1,a2,b2,a3,b3を、前記二つの光線の端点の座標にのみ依
存するとともに相違する三角形のセクタの6個の相違するクラスに関連する6組
のあり得る値を有する所定の値の組とする。
他のドップラー角の自動測定方法では、前記血管軸の傾斜を表す前記傾斜aを
決定する前記工程d)を、
として獲得し、aを、前記第1の局部マークの慣性軸の傾斜とする。
他の変形として、回帰線(又は慣性軸)に対する前記局部マークの対称が十分
であると考えられる場合のみ前記ドップラー角DAの値が有効であるとする追加
の有効ステップを具え、前記対称を、3次の中心モーメントの計算から導き出し
、sk(f)を、
とし、この場合、
とし、fを関数
y(n)=f(x(n))
とし、この場合nを[1,…,N]の範囲内とし、
3次の中心モーメントを、横座標の軸として取り出された回帰線(又は慣性軸)
より上(y>0)に位置した前記局部マークの光線の先端により形成された曲線
に対してsk1とし、前記ライン(y<0)よりしたに位置した光線の先端によ
り形成された曲線に対してsk2とし、これらsk1及びsk2の値を後に比較
する関数fを表す二つの曲線に対して計算することも考えることができる。
比較を行うために、予め規定され、勾配aによって決定された軸のマークから
開始し、第1sk1及びsk2を、既に説明したようにして計算する。次いで、
信頼係数を得るために以下の検査を連続的に実行する。
1−sk1の絶対値及びsk2の絶対値が1より小さい場合、マークは理想的に
対称である:
信頼性=100%
2−そうでない場合、sk1及びsk2が同一符号(二つの曲線の比較しうる非
対称)を有する場合、以下の評価が行われる:
信頼性=100.0*(1- |sk1-sk2|/|sk1+sk2|)%
3−そうでない場合、マークはこの軸に対して十分対称でない:
信頼性=0%
ドップラー角の自動測定を正しく行なうために、放射線技師はドップラー角を
測定すべき血管内の初期点を選択するようにし、たとえその初期点が血管内に位
置していても、この選定初期点が血管壁に極めて接近して位置する場合があり、
このような位置は最適位置とは言えない。そこで、本発明の他の好適な実施に当
っては、前記第1の局部マークの重心Gを計算した位置決めする追加の工程を含
み、この重心を、測定方法によりドップラー角DAの最適な決定を行なうように
最適化された新しい初期点として選択する測定方法である。初期点を以前に得た
局所マークの重心によって形成される新規の初期点にシフトさせる斯様な操作は
数回繰り返すのが有利である。
本発明による方法を実施するために、次のような要素、即ち
− エコーグラフ像のグレーレベル値を画素値のマトリックス形態に記憶するメ
モリと、
− エコーグラフ像を二次元の画素マトリックス形態に表示するスクリーンと、
− エコーグラフ像における前記初期点用のポインタと、
− 前記メモリにアクセスすると共に前記初期点を表わす画素にアクセスし、ド
ップラ角度の測定方法を実施するのに必要なアルゴリズム及び計算を実行するよ
うに特別にプログラムした計算手段と、
を含む装置(好ましくは専用ワークステーション)を用いることを提案する。
本発明によって許容されるようにドップラー角の自動的かつ正確に供給するこ
とにより、エコーグラフ装置すなわちそれに接続されたワークステーションのス
クリーン上の超音波源の所定の情報の表示が容易となり、かつ、オペレータにと
って相互作用がさらに活発になる。
今日利用される全ての超音波エコーグラフシステムは、ドップラー効果に基づ
く一つの同一技術による血液流の速度の測定に利用される。システム間の差は、
従来のドップラーのいわゆる「周波数的な」アプローチとフィリップス社によっ
て特に開発された「時間的な」アプローチの二つの技術が同時に存在する注入の
レベルで発生する。後者に関しては、欧州特許明細書第0225667 号(PHF85
/593)を参照すればよい。
全ての実際の場合には、超音波パルスが、血管を含むと仮定される分析すべき
媒体に、周期T(パルス繰り返し周波数すなわちPRF)で注入され、各パルス
に応答して媒体から戻ってきた超音波信号は、エコーグラフ(ラインRF)によ
って記録される。したがって、ラインRFの各サンプルは、所定の深さzにおけ
る媒体の反射を表し、すなわちパルスの飛び出しの所定の時間に相当する。戻っ
てきた信号はプローブから散乱中心及び後方まで伝わる。cを、分析された媒体
の音速とする場合、
z=ct/2
となる。
ラインRF(例えば、血管中)の所定の深さに位置する窓において、信号スラ
イスは、分析された媒体と超音波ビームとの間の相互作用分量(分析細胞)中の
分散中心(血液細胞)の瞬時の空間分布に属する「サイン」に相当する。このサ
インは、分析細胞中の分散中心の特定の性質に属する。その理由は、これら分散
中心をを構成する全ての第2ソース間の干渉の結果だからである。統計的に言え
ば、それをほとんど真似できない。
その結果、PRFが十分に低く、分散中心が、連続的な二つのRFライン取得
間で空間的な性質が目立つように変化する時間を有しない場合、分散中心の同一
群は、ライン間で非常に類似したサインを与え、深さ方向のシフトを検出するこ
とができ、かつ、時間の経過に従わせることができる。所定の深さで続くこの位
相中、(CVIすなわちカラー速度イメージングと称する)時間的な技術及び周
波数的な(すなわちドップラー)技術は相違する。ドップラー技術は連続的なラ
インRFの局所周波数の展開の分析中サインのシフトをマークし、それに対して
CVI技術はラインRFの時間的な信号を直接分析する。
二つの連続的なライン間の所定のサインがシフトすると、リソースを、CVI
(dt=2vT/c)によって評価された時間シフトdt又はドップラー技術(
df=2πfdt、ここでfをパルスの超音波周波数とする。)によって評価さ
れるデフェージングにより、関連の分散中心の群の速度vとなる。したがって、
これら二つの方法は理論的には同等である。
超音波ビームの軸及び分散中心の流れ方向によって囲まれた角DAをドップラ
ー角と称する。パルスの伝播軸上で観察される、考察中の分散中心の群の速度は
、その実際の速度vの投射v cos(DA)となる。これから、
v=c dt/(2T cos(DA))
を容易に導き出すことができる。
その結果、ドップラー角は、この評価に用いられる方法に関係なく、超音波エ
コーグラフの血液の流速の評価に対して基本パラメータを構成する。
今日では、医療分野で用いるのに適切な方法で血液の流速情報を符号化すなわ
ち処理することができる(ここではA,B,C,Dと称する)四つの主な用途が
ある。
A 画像の形態の速度情報の表示すなわちカラー速度マップ
B 速度のダイナミックの展開時間の経過の表示すなわち速度分布(ドップラー
スペクトル)のヒストグラム
C 血液の流速の決定(フィリップスCVI−Q)
D 心臓サイクルの間の血管の拡張の研究にリンクした動脈パラメータの抽出
これら技術のうちの最初の三つは、このパラメータの速度に依存することによ
りドップラー角の測定にリンクした関数であることがわかる。時間シフトdt(
CVI)又は周波数シフトdf(ドップラー)に基づく分散中心の群速度を評価
する基本的な表現は、
CVI :=cdt/(2T cos(DA))
ドップラー:=cdt/(4πfT cos(DA))
に従う。
この方法に対する技術Dはsin(DA)の依存関係を利用する。カラー速度マッピングの原理(用途A)
エコーグラフ表示、デフォールトによる、エンベロープが取り出されるととも
に興味ある区域(モードBるをカバーするために並んで記録されたラインRFの
併置により形成されるグレーレベルの反射画像。これらラインは、速度の評価に
用いられるラインに関するものではない。速度分布のマップは、(心臓サイクル
の経過中)前記反射画像上に動画を重ね合わせることにより形成され、そのカラ
ースケールは、所定の対応する規則(速度に比例する色強度、速度の符号の色関
数,…)に適合して観察される瞬時速度のスケールに対応する。
実際には、(「カラー」と称される)追加のパルスが、従来の画像走査中プロ
ーブから放出され、情報処理動作がそれに適用されて、(血管があると仮定され
る)興味ある画像領域のシフトを検出する。パラメータdt(又はdf)は、興
味ある領域の画素に対応するラインRF「カラー」の全てのロケーションで評価
され、速度カラー対応規則(すなわち同等のdtカラー又はdfカラー)を適用
することにより、動画中の前記画素に色が割り当てられる。
これらの状況では、CVI(時間的又は周波数的)に適用された本発明の方法
の変形は、前記スケールの二つの終端のこれら速度の最大の正及び負の値を自動
的に表示することにより、前記血管の軸に沿って観察される速度のダイナミック
を含むように前記速度色スケールを自動的に補正することからなる追加の工程を
具える。速度分布ヒストグラムの原理(用途B)
(グルーレベル又はカラー)エコーグラフ画像は、媒体の興味ある区域を走査
するために互いに関連して空間的にシフトしたパルスの放出に相当する。代案は
、媒体の同一ロケーション中に連続的なパルスを注入することからなり、その結
果時間経過中のラインRFの展開(モードM)を観察することができる。「カラ
ー」励振がこの放出に混合され、既に説明した方法と同様にして、すなわち血液
流のロケーションでパラメータdt(又はdf)の評価中に処理された場合、時
間経過中の速度分布の展開を、血管の関連のセグメント中で観察することができ
る。
この展開の表示は、時間の関数(時間の関数としてのdt又はdf)として速
度のダイナミックを示すヒストグラムの形態をとる。周波数分析から生じる実ス
ペクトルに相当する当該ヒストグラムは、ドップラースペクトルと称される。そ
の構成の原理は非常に簡単である。対応するカラーライン上で観察されるパラメ
ータのダイナミックの先端は、それらが表される前の瞬時tにおいて考察され、
dt最小<dt<dt最大で獲得される。それらから、ドップラー角DAの値は
既知となり、この瞬時tで表現すべき速度ダイナミックが、
c dt min/(2Tcos(DA))<v<cdtmax/(2Tcos(DA))
が導き出される。
したがって、この速度ダイナミックは、観察される極限速度の値によって制限
され及び支配される、ヒストグラムの横座標に対してラインを垂直にプロットす
ることにより表される。
これらの状況において、モードMにおける血管の関連のセグメントの時間経過
の速度分布の展開が、このために設けられたスクリーン上に、ドップラースペク
トルと称される時間関数として速度のダイナミックを示すヒストグラムの形態で
表される、本発明による自動測定の好適な変形は、前記血管の軸に沿って観察さ
れる速度のダイナミックを含むようにするために前記ドップラーすぺとくるで表
される速度のスケールを自動的に補正することからなる追加の工程を具える。
考察される本発明の全ての用途に対して、自動的に測定されたドップラー角D
Aの値を、エコーグラフデータを含むスクリーンの領域中に自動的に表示する際
に有利である。
本発明のこれら及び他の態様を、後に説明する実施の形態を参照して詳細に説
明する。
図面中、
図1は、本発明を実施するために特別に配置されたワークステーションの図を
示す。
図2は、初期点が選択されるエコーグラフ像を示す。
図3は、初期点からの光線の第1軌跡を表す。
図4は、第1局部マークを発生させる構成の第2軌跡を示す。
図5は、第1局部マークから導き出された回帰線を示す。
図6は、本発明の全方法の実行を要約するアルゴリズムを示す。
図7は、局部マークの矩形区分の種々の実現可能な形態を示す。
明瞭のために、図2,3,4,5においてコントラストを逆にしている。
図1に示すワークステーションは、双方向データバス2及びアドレスバス3を
介してメモリ4に接続されるマイクロプロセッサ1を既知の態様にて具えており
、さらにメモリ4に格納されているデータをスクリーン6に表示するためのモニ
タ5と、スクリーン上に印をつけて、複数の点をトレースすることができるマウ
ス7との2つの周辺装置も具えている。データがグレーレベルを表わす画素形態
でメモリ4に格納されているエコーグラフ画像を、スクリーン6上に表示させる
と、放射線技師は、この画像(この画像のエコーグラフ励振方向をベクトル10
にて示してある)における所定の血管に由来する9の如きトレースの方位を決定
することに関する通例の問題に直面する。従って、通常は、関連するトレースの
想定した最も大きな直径にほぼ沿う直線の小さなセグメントを、マウスによって
このトレース上に重ね合せている。いわゆるドップラー角であるサーチされる角
度はプロセッサ1により容易に計算することができ、この角度はエコーグラフの
励振方向(ベクトル10)に等しい縦方向(図1)に対する(図示しない)直線
の微小セグメントのなす角度となる。この方法は、操作に長時間かかり、複雑で
あり、しかも正確でない。この問題を改良するため、マイクロプロセッサ1を配
置し、使用者(放射線技師、操作者)によって選択された血管のトレースにおい
て初期点と称する単一点の指示に基き高速で正確な方法によりドップラー角を計
算する。このために、マイクロプロセッサ1を有する特別な目的のプロセッサ1
1も本発明を実施するのに必要な計算手段12を含む。尚、本発明については、
本発明の方法の原理及び実施の細部を順次述べるセクション及び所定の計算を詳
細に特定した添付書類において後述する。
一般的に、本発明の方法は軸の方向を確立するため、2ステップ、すなわち画
像8中の血管の局部的な軸跡9のセグメント化ステップ及び局部マークと称する
得られた点全体に亘る線形回帰ステップを含む。
エコー画像は放射線技師にとって重要な複数個の血管の軸跡を含む場合がある
ため、図2に図示したようなシステムのマウスにより、処理を行なう前に画像中
の注目する血管をオペレータが指示する必要があり、血管の局部的な軸跡9中に
おいて初期点Piを選択する。
次に、選択した血管の形状に関する整列性を特定するため、最初に局部マーク
を画像中の周囲のグレーレベルから抽出する。この血管のセグメントは、実際に
は使用者(実験者、医者)によって指示された初期点のまわりの血管の壁部の方
向となる。
従って、使用者は血管の均一な暗い部分の中で指示操作を行なう必要があり、
また壁部11の反射レベルと血液の反射レベル(軸跡9)とを分離する有用な閾
値(Ti-1と称する)を有する必要もあり、従って、操作者はほとんど目で見え
ず血管の内部に存在する微小な組織を回避して所定のへりに沿ってトレースする
ことができる。
この閾値を決定する場合、ISODATAと称されている通常のアルゴリズム
を用いるのが好ましい。このアルゴリズムは少なくとも2個のクラスを有する画
素のグレーレベルのヒストグラムに基いている。好ましくは、3個のクラスCL1
=VESSEL(低反射率)、CL1=INTERMEDIATE及びCL3=
WALL(高反射率)を有するヒストグラムを用いる。クラスINTERMED
IATEとクラスWALLとの間の閾値T2を用いて望ましく信頼性のある壁部
検出を達成する。
これらの閾値により、スタート点がクラスVESSELに好適に属するか否か
を決定することができる。これにより、初期位置が誤っている場合操作者はスタ
ート点を新たに設定することができ、これにより初期点の確認が構成される。
できるだけ高速の処理を行なう場合、光線追跡法を利用した部分的なヒストグ
ラムを用いる。すなわち、選択した初期点Piを中心にして等角度で分布する放
射状の予め定めた数の光線により縁部に達成するまで画像をトレースし、光線に
沿う画素だけがヒストグラムの形成に関与させる。この光線追跡法を図3に図示
する。
ISODATAアルゴリズムが必要な閾値(Ti-1)を発生する場合、上述し
た光線追跡法を用いて各光線に沿う壁部と関連する最初の画素P1を見い出す(
使用者による前の処理により血管中でスタートすることを確実にする)。瞬時の
画素のグレーレベルの値が閾値Ti-1を超えると直ちに各光線の追跡を停止する
(壁部の反射率が血液の反射率を超える)。表示画像の端部において血管の識別
が中断した場合、この方向において評価された血管の端部は真の壁部を構成しな
いが、角度的に隣接する2個の光線間の画素は血管の局部的なマークの一部を構
成する。後者の工程により、画像中の血管の限界部を形成するセグメントのサン
プリングが行なわれ、順次の光線の各対の末端を結合することにより図4に示す
三角形のセクタ12から成る血管の表示が得られる。
これらのセクタは外部の頂点P1j,P1j+1からなる座標系により特徴付けら
れ、第2の点は共通の原点Piとなる。各セクタについて、2個の外部頂点の座
標系に対して6個の分析式が適用され、血管の局部マーク全体に亘って実行され
るべき線形回帰を行なうのに必要な局部的情報を発生させる。
ドップラー角DA(図5)の値は回帰線13の傾き、既知の(ベクトル10)
超音波伝播軸(すなわち励振軸)、及び並行して計算し得る補正係数rから直接
取り出され、得られた結果の関連性についての指示を発生する。
図6のアルゴリズムにおいてプロセス全体の工程を要約する。ステップ15の
第1の工程において、初期点(又は画素)Piの座標をメモリ4に記憶する。ス
テップ16において、初期点からスタートする第1の光線追跡を実行する。ステ
ップ17において、選択した点のヒストグラムに基いて閾値Ti-1を決定する。
ステップ18において、閾値Ti-1と関連する第2の光線追跡を行ない、組み合
わされた三角形のセクタ12により構成される第1の局部的マークを形成する。
ステップ19において、セクタについての計算及び記憶を行なう。ステップ20
において、上述したステップ中に得られた結果を用いて線形回帰処理(rの計算
)を行ない、ステップ21において角度DAとしての結果が得られる。
次に、上述したプロセスを実行する一例について説明する。まず始めに、上記
プロセスは水平軸及び垂直軸について同一のサンプリング処理を必要とすること
を明記する。従って、ディジタル走査変換(DSC)処理を受けた画像について
適用すべきである。DSCは処理について従来から必要なものであるから、画像
はいかなる型式のトランスジューサ回路からも獲得される。実際には、基準とし
て用いる画像は、システムのスクリーンに通常表示されるグレーレベルの反射像
とする。
光線追跡及びヒストグラムの形成
はじめに、操作者は血管中の位置を指定することにより画像について位置決め
操作を行なう。したがって、光線追跡操作は、この位置のx座標及びy座標のシ
フト対(各対は光線を特徴付ける)について画像の端部に到達するまで循環付加
(当業者にとって明らかなサンプルプログラミングにより)を行なうことからな
る。各中間の位置について、画像の画素を光線に沿ってアドレス指定する(図3
参照)。
明らかなように、光線の数が多くなればなるほど、血管の区域についてのサン
プルが良好になる。実際には、32本未満の光線を用いたのでは場合によっては
不十分であり、実験的に得たデータによれば32本の光線を選択した場合良好な
結果が得られた。従って、32本の光線を用いることが好ましい。
画像中のグレースケールの数をNGLで表示する場合、この処理工程によりN
GL整数の組が発生し、q(q=0.1,---,NGL)が添付された各値は光線
の経路に沿ってqが添えられた各画素値毎に1だけ増分する。
ISODATAの合体アルゴリズム
このアルゴリズムの目的は、閾値を決定して画像の内容に関して物理的意義を
有するncグループにセグメント化された画素に分類することである。
この場合、3個のクラス(nc=3)(VESSEL,INTERMEDIA
TE,WALL)が選択され、各クラスの応答(反射率)は知られており、クラ
スINTERMEDIATEとWALLとの間の閾値T2が必要である。このグ
ループ化アルゴリズムにより、画像のグレーレベルのヒストグラムから取り出し
た閾値を決定することにより画像全体についてセグメント化され、従って、セグ
メント化されるべき物体の位置に依存しないこのアルゴリズムは各クラスについ
ての平均グレーレベル値の初期選択だけが必要であり、これらの値の更新は各ク
ラス間の閾値を決定することにより終了する。
第1の初期化工程:
h(j)をオリジナル画像のグレーレベル値jの取り得る強度とする。
〔最小,最大〕を、零でないh(j)の値をはさむ最小グレーレベル値間隔と
する。
i∈{1,...,nc}を、全てのクラスについての平均初期値とする。この初期
評価は、グレーレベルの軸をnc個の等間隔のものに分割すると共に各間隔につ
いて取り得る強度が最大値と最小値との間で均一であるとして数字的な平均値を
計算する。
第2の工程:
次の関係式(ここで、〔x〕はxの整数部を表わす)を用いて(nc−1)の
閾値Tiを評価する。
Ti=[(m i mi+1)/2],i∈{1,...,nc-1}
グレーレベル値が上記間隔内に位置する全ての画素:
Ai=[(Ti-1.Ti],i∈{1,...,nc-1}
にクラスiを割り当てる(ここで、To=最小値−1、Tnc=最大値)。
第3工程:
以下の関係式(ここで、〔x〕はxの整数部を表わす)を用いて各クラスの平
均値を更新する。
第4の最後の(反復)工程:
少なくとも1個のmi値が第3工程中に変更された場合、第2の工程に戻る必
要があり、従ってアルゴリズムが収束するまでループ処理を行なう。変更されな
い場合、最終の閾値が得られる。この処理工程により、画像について血液を動脈
の壁部から分離する整数の閾値Ti-1が発生する。
壁部検出及びセクタの血管表示
所望の閾値Ti-1を得た後、前述したのと同一の光線追跡法を実行して、画素
値を閾値と比較することにより、走査した各光線に沿って血管の壁部が現われる
区域を検出する。各光線に沿う壁部の存在をマークする最後の画像の座標をメモ
リ(図1のメモリ4)に記憶する。
このようにして、画像中の血管の境界のサンプリングが得られ、等角度で互い
に隣接する光線の端部の各対を結合することにより三角形の放射状のセクタ(図
4参照)からなる血管の表示が得られる。
nrを光線の数とする。この処理工程において整数nrの2組のものが発生し
、添字sが付された値は添字sが付された光線の最後の点P1sの座標に対応す
る。
セクタ表示の評価
全体の操作の実際の目的は、以下の2個のパラメータを発生させることにある
。
通常の最小2乗法により得られた回帰線の傾きaはドップラー角DA(DA=
アークタンジェントa)のタンジェントを与える。
ここで、{x(n),y(n)},n∈{1,...,N}は三角形のセクタとしての
血管表示に含まれる画素、すなわち血管の局部マークに関連する画素の座標であ
る。
絶対値がセクタ表示に際して1に近い補正係数r、所定の軸に沿う規則的な整
列性を与える点の集合により近くなる(0<|r|<1)。
実際的な観点より、これら2個の値(a及びr)を決定するには、含まれている
各画素の座標と関連する6個の異なる量(6個の項)から成る局部マーク全体に
ついて測定及び記憶する必要がある。
血管の局部マークを三角形のセクタに分解することの正しさがここで見い出され
る。すなわち、所定のセクタ中に含まれる全ての点を特徴付ける上記パラメータ
の値は、このセクタについての2個の外部頂点の座標からだけ取り出すことがで
きる。これは、セクタの評価は、6個の分析式を後述する4個の整数値に適用す
ることにより達成される。
〔xm,y(xm)〕及び〔xM,y(xM)〕は2個の外部頂点(P1i,
P1i+1)の座標とする。ここで、xM>xmをし、今注目しているセクタを対
称に配置し、(x>0及びy>0になるまで−1を負の座標に乗じることによる
)右上からの直角三角形の第1象限において、この形態では第1象限に限定され
、図7(特に図7のライン76参照)のような回部頂点座標の値及び縁連的な連
続性に依存するので、6タイプの相違するあり得るセクタが獲得される。
図7において、全ての取り得るセクタの形状は7個のクラスのセクタに分ける
ことがてき、これらのクラスは71,72,73,74,75,76,77とし
て表わされる7個のラインとして図示され、ライン71,72及び73は共に同
一のクラスに関係する2種類のセクタ形状をそれぞれ表わす。これらのクラスは
以下のように特徴付けられる。
71:y(xm)=y(xM)
72:xm=xM
73:xm=0
74:y(xM)=0
75:y(xm)=0
76:y(xm)>y(xM)×xm/xM
77:y(m)<y(xM)×xm/xM
ライン76及び77のクラスは同じ式であるが不等号の向きが反対向きの不等式
により特徴付けられ、これらのクラスは数学的見地より同一のクラスに属するも
のと考えることができる。
計算のために用いた分析式は以下の通りである。
ここで、f(x,y)=1画素を推定しNを得るため
f(x,y)=x,sxを得るため
f(x,y)=y,syを得るため
f(x,y)=xy,sxyを得るため
f(x,y)=xx,sx2を得るため
f(x,y)=yy,sy2を得るため
積分経路の境界は補遺1(図7のクラスに関係する)に示すセクタの形状に依存
するが、各セクタのタイプについて加算するための計算を行なう最終的な式は極
めて簡単であり、補遺2(図7のクラスに関係する)に示すように複雑な計算を
必要としない。
血管を表わす各セクタについて処理されると、実際の回帰処理を行なうことが
できる。
線形回帰及び結果の有効性の評価
ドップラー角DA及び補正係数rは、前述した工程の最後において全てのセク
タの処理が終了した後得られる6個の値から直接得られる。
及び DA=Arc tg(a)
それに対して
この値rは測定についての信頼性の基準を形成するために用いることができる制
御パラメータである。この値rが例えば0.5よりも大きい場合、結果は信頼性
のあるものと考えられる。一方、rが0.5よりも大きくない場合、有効である
とする結果(特に、セクション平面の検討が不十分な位置決めに起因する円形の
局部マーク)をシステムが発生しない同題が生じ、操作者は補正後の別の試みが
必要となる。
上述した基本的な方法は、自動的に位置決めして血管内の順次の区域について
適用することにより一層高い精度を得ることができる。
一旦血管のセクタについて第1の表示を得れば、その重心Gの座標の計算は容
易である(例えば、第1の局部マークの画素の縦軸及び横軸の座標の平均値を取
り出すと共に、上述した全プロセスを繰り返し、最適値を有する第2の局部マー
ク及び最適なドップラー角を決定することによりこの重心Gを新しい初期点とし
て選択することにより)。この改良により、初期点の選択に関してへりを一層大
きなものとすることができ、従って使用者は血管の内部において自動的に位置決
めできる利点があり(例えば、ワークステーションのマウスを用いて設けること
なく壁部に接近した位置を指示することができる)、しかも得られた結果は一層
信頼性の高いものとなる(1°以下の標準偏差)。
全プロセスの第1の繰り返しは、例えば20回以上の予め定めた回数だけ繰り
返すことができる、又は特有な点が得られるまで繰り返すこともできる。繰り返
すことにより得られた点は、使用者による第1の初期点の選択から推定された第
1の局部マークの中心に対応するだけでなく、エコー画像の血管の全体のトレー
スの重心にも対応する。従って、本発明による方法は局部的な測定に関するだけ
でなく、血管の全体のトレースについても最良の結果が得られ、局部的な測定か
らドップラー角の値を取り出すことができる。
補遺1:各三角形セクタ形状についての積分の境界条件
補遺2:計算すべき式(この表において、s+=xはsにxを加算することを意
味する)
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