【発明の詳細な説明】
バランスのとれたフレーバーを有する高収量ローストコーヒー
発明の分野
本発明は、バランスのとれたフレーバーを有する高収量ローストコーヒーと、
その製造方法に関する。
発明の背景
高い浸出コーヒー収量(ローストコーヒー重量当たりのコーヒー浸出液容量)
及び許容される浸出フレーバーを双方とも有するローストコーヒーを作る多くの
試みが、過去に行われてきた。
ローストコーヒーの抽出能(コーヒー浸出が行われるコーヒーの所定重量から
抽出できる浸出固形分の量)はローストコーヒーを細かな粒度に粉砕することに
より増加させうることが知られている。しかしながら、これらの細粒は浸出する
ことが物理的に困難である。細粒は浸出中にプーリング(pooling)、チャネリ
ング(channeling)及び圧縮を受ける。しかも、細粒は望ましくないバランスの
フレーバー及びストレングス(strength)を有している。
抽出能はロースト及び粉砕コーヒーをフレーク化することで高めうることも知
られている。フレーク化ではロースト及び粉砕コーヒーをロールミル化する。更
に多くのコーヒーが抽出能増加のおかげでフレーク化コーヒーから浸出できる。
しかしながら、フレーク化コーヒーは低レベルの容器芳香を有する。しかも、そ
れは望ましいバランスのフレーバー及びストレングスに欠けている。
コーヒー豆の速いロースト化も浸出コーヒー収量を増加させうることが知られ
ている。ロースト時間は製品密度及び抽出能に影響を与える。速くローストされ
たコーヒー、即ち約5.5分間以内のロースト時間は、長くローストされたコー
ヒーよりも疎密である。しかも、速くローストされたコーヒーは抽出能増加を示
す。しかしながら、速くローストされたコーヒーは望ましいバランスのフレーバ
ー及びストレングスに欠けることもある。
抽出能及び浸出コーヒー収量の増加は達成できるが、しばしばコーヒー浸出液
のバランスのとれたフレーバーを犠牲にしていることがわかっている。
したがって、高い浸出コーヒー収量(本明細書では高収量と称される)及びバ
ランスのとれたフレーバーを双方とも有するローストコーヒーを提供する必要性
がある。
発明の要旨
本発明は、バランスのとれたフレーバーを有する高収量ローストコーヒーと、
その製造方法である。グリーンコーヒー豆はローストする前に約0.5〜約7%
の水分含有率まで乾燥される。乾燥は約70〜約325°F(約21〜約163
℃)の温度で約1分間〜約24時間行われる。乾燥されたコーヒー豆は、約10
〜約16の極限ハンター(Hunter)L‐カラーまで急速ローストされる。乾燥され
た暗ローストコーヒー豆は、約7%より大きなロースト前水分含有率を有する非
乾燥ローストコーヒー豆とブレンドされる。ブレンドは約1〜約50%の乾燥暗
ロースト豆と約50〜約99%の非乾燥ロースト豆からなる。
乾燥された暗ロースト豆は、焼けゴムフレーバー臭が最少のストレングスを出
す。非乾燥豆はフレーバー及び酸味を出す。得られたブレンドは、高収量ロース
トコーヒーで、望ましいバランスのストレングス、フレーバー及び酸味を有して
いる。
図面の簡単な説明
図1及び2はエチルグアヤコールを含めたストレングス化合物のガスクロマト
グラムを示している。図3及び4は焼けゴム臭化合物のガスクロマトグラムを示
している。図5は良フレーバー化合物のガスクロマトグラムを示している。クロ
マトグラムを作成するために用いられる分析法は、以下で記載されている。
発明の具体的な説明
本発明のプロセスには3つのキーステップ(key steps)を含む。第一ステッ
プでは、グリーンコーヒー豆を乾燥させる。第二ステップでは、乾燥された豆を
極限暗ローストまで急速ローストする。第三ステップでは、乾燥された暗ロース
ト豆をローストされた非乾燥コーヒー豆とブレンドする。
本プロセスで作られた本発明の製品は、独特で微妙なバランスのストレングス
、良フレーバー化合物及び酸味を含んでいる。
本明細書で用いられるすべてのパーセンテージ及び比率は、他で指摘されない
かぎり重量に基づく。
A)ロースト前におけるグリーンコーヒーの乾燥
乾燥ステップにおいて、約10%以上、好ましくは約10〜約14%の初期水
分含有率を有するグリーンコーヒー豆が、ロースト前に乾燥される。乾燥された
豆は約7%以下、好ましくは約3〜約7%の水分含有率を有している。
乾燥は穏やかな条件下で行われるべきである。大きな熱インプット及び温度差
は、コーヒー豆のティッピング(tipping)、バーニング(burning)または早期ロー
スト関連反応を起こすことがある。グリーン豆は0〜70%の水分を含有した装
置で乾燥される。乾燥温度は約70〜約325°F(約21〜約163℃)、好
ましくは約160〜約250°F(約71〜約121℃)である。乾燥時間は約
1分間〜約24時間、好ましくは約2〜約6時間である。
乾燥ステップでは、あまりロースト関連反応を起こさずに、部分的に脱水され
たコーヒー豆を生じる。ロースト反応は、参考のため本明細書に組み込まれる、
Sivetzら,"Coffee Technology",AVI Publishing Company,Westport,Conn.,pp.25
0-262(1979)で記載されている。
乾燥ステップで有用な乾燥方法及び装置は、参考のため本明細書に組み込まれ
る、1991年7月26日付で出願された米国特許出願第07/737,576
号明細書で開示されている。
コーヒー豆が乾燥された後、それらは下記のローストステップに付される。コ
ーヒー豆は、乾燥とローストステップとの間で、水分と最少の接触、好ましくは
無接触ですませるべきである。
B)暗ロースト乾燥コーヒー豆
ローストステップにおいて、乾燥コーヒー豆は約10〜約16、好ましくは約
12〜約16、最も好ましくは約14〜約16のハンタ−L‐カラーまで暗ロー
ストされる。乾燥された暗ロースト豆は、約0.28〜約0.42g/ccのタ
ンプド(tamped)密度を有する。
慣用的な急速ロースト方法が用いられる。ロースト温度は約350〜約120
0°F(約177〜約649℃)、好ましくは約400〜約800°F(約20
4〜約427℃)である。ロースト時間は約10秒間〜約5.5分間、好ましく
は約1〜約3分間である。急速ローストは1991年7月26日付で出願された
米国特許出願第07/737,576号明細書で記載されている。急速ロースト
は、参考のため本明細書に組み込まれる、Sivetz,Coffee Technology,AVI Publi
shing Company,Westport,Conn.,pp.226-246(1979)でも記載されている。
望ましいハンターL‐カラーのとき、暗ロースト豆がロースターヒートから取
り出される。豆は典型的な環境空気及び/又は水スプレーで速やかに冷却される
。豆の冷却はロースト関連熱分解反応を止める。
極限ハンターL‐カラーまで乾燥豆をローストすると、ストレングス化合物を
発生させて、焼けゴムフレーバー化合物の発生を最少にすることがわかった。具
体的な化合物は以下で記載されている。非乾燥コーヒー豆、特にロブスタ(Robu
sta)のような低品質豆をこれらの極限まで暗ローストすると、過剰な焼けゴム
フレーバー臭を出す。
C)乾燥及び非乾燥コーヒー豆のブレンド
乾燥暗ローストコーヒー豆は、非乾燥ローストコーヒー豆とブレンドされる。
乾燥豆は焼けゴムフレーバー臭が最少のストレングスを出す。非乾燥豆はフレー
バー及び酸味を出す。そのブレンドは約1〜約50%、好ましくは約1〜約20
%、最も好ましくは約5〜約15%の乾燥豆と、約50〜約99%、好ましくは
約80〜約99%、最も好ましくは約85〜約95%の非乾燥豆からなる。
非乾燥豆は、約7%より大きな、好ましくは約10〜約14%のロースト前水
分含有率を有するグリーンコーヒー豆から得られる。これらのグリーン豆はロー
スト前に乾燥ステップに付されない。非乾燥グリーンコーヒー豆は、約17〜約
24のハンターL‐カラーまでロースト、好ましくは急速ローストされる。非乾
燥ロースト豆は、約0.28〜約0.42g/ccのタンプド密度を有する。
乾燥及び非乾燥双方の豆は低、中又は高品質コーヒー豆、あるいはそれらの混
合物から得ることができる。好ましくは、乾燥豆は中又は低品質豆、あるいはそ
れらの混合物、更に好ましくは低品質コーヒー豆、最も好ましくはロブスタから
得られる。非乾燥豆は、好ましくは中又は高品質豆、あるいはそれらの混合物か
ら得られる。
本発明で用いられる高品質コーヒー豆の非制限例には、“マイルド”(高グレ
ードアラビカ)、例えばコロンビア、メキシコ及び洗浄マイルド、例えば極度に
硬い豆コスタリカ、ケニアA及びBと、極度に硬い豆グアテマラがある。本発明
で用いられる中品質コーヒー豆の非制限例には、ブラジル及びアフリカナチュラ
ルがある。本発明で用いられる低品質コーヒー豆の非制限例には、ロブスタ、低
グレードナチュラル、低グレードブラジル及び低グレード非洗浄アラビカがある
。
コーヒーブレンドのフレーバーストレングスは比較的少ないコーヒー豆から得
られることがわかった。ブレンドコーヒーにおいて、高ストレングス豆(乾燥暗
ロースト豆)は、好ましくはブレンド豆の約5〜約15%だけである。豆のこの
小さなフラクションは、高f(1)値(ストレングス化合物対焼けゴム臭化合物
の比率)及び低f(2)値(良フレーバー化合物の量)を有する。これらの値は
表1に掲載され、後で記載されている。
非常に少量のこれら乾燥暗ロースト豆が、弱いけれどもフレーバーに富むコー
ヒー(即ち、コロンビアのような高品質コーヒー)に加えることができる。その
結果は、過剰な焼けゴムフレーバー臭が混じっていない、フレーバーに富むフル
ストレングスコーヒーである。
D)フレーク及びロースト及び粉砕コーヒーの混合物
場合により、ロースト乾燥及び非乾燥コーヒー豆のブレンドは、約102〜約
1016μm(約0.004〜約0.04インチ)、好ましくは約102〜約5
08μm(約0.004〜約0.002インチ)、最も好ましくは約102〜約
254μm(約0.004〜約0.01インチ)の平均フレーク厚まで粉砕、標
準化及びミル化される。フレーク化コーヒーは米国特許第5,064,676号
、米国特許第4,331,696号、米国特許第4,267,200号、米国特
許第4,110,485号、米国特許第3,660,106号、米国特許第3,
652,293号及び米国特許第3,615,667号明細書で記載されており
、それらすべてが参考のため本明細書に組み込まれる。
加えて、フレーク化ブレンドはロースト及び粉砕コーヒーと混合できる。混合
物は約10〜約50%、好ましくは約25〜約50%のフレーク化ブレンドと、
約50〜約90%、好ましくは約50〜約75%のロースト及び粉砕コーヒーか
らなる。ロースト及び粉砕コーヒーは、非乾燥ロースト豆、乾燥ロースト豆又は
それらの混合物、好ましくは非乾燥ロースト豆からなる。
乾燥暗ローストコーヒー豆又は乾燥豆含有ブレンドを薄くフレーク化すると、
意外なほど暗いカップカラーを生じることがわかった。フレーク化は浸出固形分
を約20%増加させるが、カップカラーも約40%増加させる。カップカラーは
消費者の知覚にとり重要である。カップカラー自体はコーヒーフレーバー又はス
トレングスに寄与しないが、暗いカラーの浸出コーヒーほどより豊富で強いフレ
ーバーを有すると知覚される。
E)コーヒー製品の特徴
本発明のコーヒー製品は独特な化学プロフィルを有する。独特な化学性が、バ
ランスのとれたフレーバーと、意外に高い収量を与える。
1)化学プロフィル
コーヒー製品の化学プロフィルはf(1)、f(2)及びf(3)値により規
定され、ここでf(1)は約900以上、f(2)は約1200以上、及びf(
3)は約125以上である。これらの値は下記のように決められる。
f(1)=10,000×〔ストレングス化合物〕/〔焼きゴム臭化合物〕
f(2)=100×〔エチルグアヤコール〕
f(3)=100×〔良フレーバー化合物〕/〔フレーバーストレングス化合物
〕
ストレングス化合物=〔ピラジン+ピリジン+ピロール+グアヤコール+エチル
グアヤコール〕
焼きゴム臭化合物=〔3‐チアゾール+4‐メチルチアゾール+ピーク13+ピ
ーク14+ピーク15+テトラヒドロチオフェン+ピーク17+2‐チオフェン
カルボキサルデヒド+ピーク19+3‐アセチルチオフェン+2‐アセチルチオ
フェン+ピーク22〕
良フレーバー化合物=〔エタノール+プロパノール+2‐ペンタノン+3‐ペン
タノン+2,3‐ペンタンジオン〕
個々の化合物は全GCカウントに関して測定される。3化合物群(ストレング
ス、良フレーバー、焼きゴム臭)の各々についてGCカウントを測定する方法は
以下で記載されている。未知の“ピーク”化合物は後で規定される。
コーヒー製品の化学性は、従来の及び/又は暗ローストコーヒーと比較して独
特である。表1で示されたように、本発明のコーヒー製品だけはf(1)、f(
2)及びf(3)値の必須の組合せを有している。
表1のコーヒーは次のように規定される。Vacuum Folgersはプロクター&ギャ
ンブル社(The Procter & Gamble Company)製造の13オンス自動ドリップグライ
ンド(ADC)コーヒー、コードデート2133Nである。Maxwell House Mast
er Blendがゼネラル・フーズ(General Foods)製造の11.5オンスADCコー
ヒー、コードデート2054である。Folgers French Roastはプロクター&ギャ
ンブル社製造の12オンス暗ローストADCコーヒー、コードデート2106で
ある。Nuts Ultra RoastのChock Fullはチョック・フル・オブ・ナッツ社(Chock
Full of Nuts Corp.)製造のFAC(全コーヒーメーカー用)コーヒー、
コードデート1N20である。Splendid Italian Expressoはプロクター&ギャ
ンブル社製造の17.6オンス細粒コーヒー、コードデートMar90である。
乾燥及び非乾燥コーヒーは10:90ブレンドの成分である。そのブレンドは本
発明の高収量でバランスのとれたフレーバーコーヒーである。
2)バランスのとれたフレーバー効果
コーヒー製品の化学プロフィルはバランスのとれたフレーバーをコーヒー浸出
液に与える。他のコーヒー製品は、本明細書で列挙された範囲内のf(1)、f
(2)又はf(3)値のうち0〜2つを有する。しかしながら、重要なのは列挙
されたレベルにある全部で3つの値の組合せである。
f(1)はフレーバーストレングス対焼きゴムフレーバーに関する。特に高収
量コーヒー(即ち、低密度、急速ローストコーヒー)では高いf(1)値に達す
ることが望ましい。高収量コーヒーでは、しばしば増加したフレーバーストレン
グス及び増加した焼きゴムフレーバーを有する。本発明のコーヒー製品は増加し
たフレーバーストレングスを有するが、焼きゴムフレーバーの増加は最少で済む
。乾燥された暗ロースト豆はこの効果をコーヒー製品に与える。
f(2)はエチルグアヤコールレベルに関する。エチルグアヤコールはフレー
バーストレングスを与える。高いf(2)値は、乾燥ローストコーヒー豆から選
択的に発生するストレングス成分を示す。
f(3)は良フレーバー対フレーバーストレングスに関する。f(3)を増加
させてフレーバーストレングス増加と共に良フレーバーのバランスを図ることが
望ましい。良フレーバーは非乾燥ローストコーヒー豆から生じる。フレーバース
トレングスは乾燥暗ローストコーヒー豆から生じる。
3)高収量効果
本発明のコーヒー製品は意外に高い収量を有することがわかった。本明細書で
用いられる“収量”とは、1カップのコーヒーを浸出するために要するロースト
コーヒーのグラム重量を意味する。様々なコーヒーに関する収量が表2で掲載さ
れている。
本発明のローストコーヒー製品は約30〜約100%多く浸出コーヒーを出す
。しかも、それは他の低密度急速ローストコーヒーよりも約30〜約63%多く
浸出コーヒーを出す。表2中での“カップの浸出コーヒー”という語句は、従来
の浸出ロースト及び粉砕コーヒーの場合と官能的に類似しているか、又はそれよ
りも良いコーヒー浸出液を意味する。
この高収量コーヒーは可溶性コーヒーと組み合わせても、又は非コーヒー物質
と混合してもよい。それはカフェイン添加しても、又は脱カフェインしてもよい
。それはフィルターパックに加えても、又は可溶性コーヒーを製造するために用
いてもよい。
4)酸味
コーヒー製品から浸出されたコーヒーは約2200以上の浸出酸味指数を有す
る。以下で記載される浸出酸味指数は、本発明で用いられるコーヒー酸味の表示
である。約2200未満の浸出酸味指数の浸出コーヒーは、許容されるコーヒー
フレーバーにとり必要である酸味を欠く。
分析方法
A)エチルグアヤコールを含めたストレングス化合物の分析
1)分析方法
Schultzら,J.Agric.Food Chem,25,446-449(1977)で開示された同時スチーム蒸
留及び抽出(SDE)方法と、その後にSDE抽出物のキャピラリーガスクロマ
トグラフィー(CGC)が、エチルグアヤコールを含めたフレーバーストレング
ス化合物を分析するために用いられる。組合せSDE‐CGC法は、参考のため
本明細書に組み込まれる、1989年8月15日付で出願されたNeilsonらの米
国特許第4,857,351号明細書で開示されている。
SDE抽出物(0.3ml)は、米国特許第4,857,351号明細書に記
載されたSDE法によりロースト及び粉砕コーヒーから得られる。抽出物はヒュ
ーレット‐パッカード(Hewlett-Packard)5880Aキャピラリーガスクロマト
グラフ(HP‐CGC)で分析される。HP‐CGCは、溶融シリカカラム(D
B5カラム、60メートル長、0.32mm内部カラム直径、Cardova,Californ
iaのJ&Wサイエンティフィック社(J&W Scientific,Inc.)製)と、SDE抽出物
中にある揮発性化合物の炭素及び水素を検出するフレームイオン化検出器(FI
D)を有している。カラムは架橋ポリエチレングリコール1.0μmのフィルム
を含有している。ヒューレット‐パッカード レベルフォー データターミナル
が保持時間、ピーク面積及び面積%に関するデータを処理するために用いられる
。
2)分析方法の適用
ロースト及び粉砕コーヒー(5.0g)を500cc丸底フラスコに入れる。
蒸留水(200g)をフラスコに加える。内部標準(3ml)及び沸石をフラス
コに加える。好ましい内部標準は、100mlにするため塩化メチレンに溶解さ
れた酢酸イソアミル(5mcl)である。次いでフラスコの内容物がSDE抽出物
に処理される。抽出物(3mcl)がカラムに注入される。GCオーブンは25℃
(77°F)で2.6分間維持される。オーブン温度は20℃/minで45℃(1
13°F)まで上昇させて、その後7分間保ち、3.0℃/minで65℃(149
°F)まで再び上昇させて、その後6分間保ち、2.0℃/minで125℃(25
7°F)まで再び上昇させて、1分間保ち、3.0℃/minで220℃(428°
F)まで再び上昇させて、6分間保ち、最後に230℃(446°F)まで上昇
させて、30分間保つ。
HP‐CGCの条件:
セプタムパージフロー 1cc/min
入口圧 26psig
ベントフロー 30cc/min
メーキャップキャリアフロー 30cc/min
フレームイオン化検出器:
水素流速 30cc/min
空気流速 400cc/min
カラムフロー 3cc/min
分離比 10/1
図1及び2は、本発明のローストコーヒーから得られるSDE抽出物を用いた
、SDE‐CGC分析方法からのガスクロマトグラムである。ピークは6〜10
と表示され、それらはピラジン(6)、ピリジン(7)、ピロール(8)、グア
ヤ
コール(9)及びエチルグアヤコール(10)に相当する。
クロマトグラムは各記録ピークの面積を調べるために分析される。ピークはG
Cカウント(GCピーク面積と比例したデジタル化電気インパルス)と比例して
いる。
本発明で用いられる全GCカウントは補正GCカウントである。サンプル抽出
物の各ピークのGCカウントは、同ベースですべてのサンプル抽出物を比較する
ために、各ピークのGCカウント対内部標準のGCカウントをレシオ化すること
により標準化(補正)される。
所定化合物に関する補正GCカウントは下記式を用いて計算される:
特定化合物に関する応答ファクターには、ピラジン(1.200)、ピリジン
(0.660)、ピロール(0.950)、グアヤコール(0.740)及びエ
チルグアヤコール(1.000)がある。
B)焼きゴム臭化合物の分析
この方法は焼きゴム臭化合物を分析するために用いられる。それはフレーバー
ストレングス化合物を分析する上で用いられるものと類似している。2方法の差
異は以下で記載されている。
SDE抽出物はHP‐CGC及びスペルコワックス(Supelcowax)‐10溶融シ
リカカラム〔Bellefontaine,Pennsylvaniaのスペロ社(Supelo,Inc.)〕により分
析される。カラムは、SDE抽出物で揮発性イオウ化合物(即ち、焼きゴム臭化
合物)を検出するためにフレーム光度型検出器(FPD)と共に用いられる。
SDE抽出物を作るとき、好ましい内部標準は、塩化メチレンに溶解された2
,5‐ジメチルチオフェンである(10mclが第一希釈で25mlに希釈され、そ
の後6mlが第二希釈で200mlに希釈される)。
SDE抽出物はカラムに注入される。GCオーブンは50℃で3.00分間維
持される。オーブン温度は2.0℃/minで100℃まで上昇させて、その後15
分間保ち、1.00℃/minで130℃まで再び上昇させて、その後1分間保ち、
次いで201℃まで上昇させて、5分間保つ。
図3及び4は、本発明のローストコーヒーから得られるSDE抽出物を用いた
、この方法からのガスクロマトグラムである。ピークは11〜22と表示され、
それらは3‐チアゾール(11)、4‐メチルチアゾール(12)、ピーク13
(13)、ピーク14(14)、ピーク15(15)、テトラヒドロチオフェン
(16)、ピーク17(17)、2‐チオフェンカルボキサルデヒド(18)、
ピーク19(19)、3‐アセチルチオフェン、2‐アセチルチオフェン及びピ
ーク22に相当する。
応答ファクターは焼きゴム臭化合物の各々について1である。
C)良フレーバー化合物の分析
1)分析方法
プログラム化温度GC分析が良フレーバー化合物を分析するために用いられる
。硫酸ナトリウム及び内部標準が閉鎖系内部の浸出コーヒーに加えられ、加熱さ
れる。加熱コンビネーションからのヘッドスペースサンプルがバリアン(Varian)
モデル3400ガスクロマトグラフ(DB‐1701カラム、30メートル長、
0.32mm内部カラム直径、Folsom,CaliforniaのJ&Wサイエンティフィッ
ク製)中に注入される。カラムは架橋ポリエチレングリコール1.0μmのフィ
ルムを含有している。
2)分析方法の適用
硫酸ナトリウム(13.00±0.03g)が120ccセプタムボトルに入
れられる。ロースト及び粉砕コーヒーサンプル(13.00±1.01g)、そ
の後脱イオン水(65ml)及び内部標準(1ml)がボトルに加えられる。
内部標準は下記操作により作られる。1000ccメスフラスコに1000c
c目盛線の5〜10cm以内まで蒸留水を満たす。ピペットで、リージェント(r
egent)グレード酢酸エチル1mlがフラスコに加えられる。酢酸エチルは、酢酸
エチルが放出されるときに液滴がピペットから表面に上がるように、ピペットの
先端を水の表面のすぐ下まで下げて、フラスコ(及びピペット)を軽くたたくこ
とにより、フラスコ中に分配されるべきである。酢酸エチルが流出を止めたとき
、ピペットはフラスコ首の内部に上げられ、最後の数滴が“たたき落とされる”
。フラスコに栓を付し、反転し、それを5〜10回渦巻及び反転させて撹拌する
。撹拌が止められると、気泡が発生する。蒸留水が1000mlにするため加え
られる。液体は再び撹拌される。フラスコ内で得られた内部標準は酢酸エチル1
000ppm(v/v)を含有している。
内部標準を加えた後、ボトルはセプタムで密封される。2ccガスシリンジ及
び密封ボトルが90℃で45分間ブルーMオーブン(モデルSW‐11TA)中
に入れられる。ボトルがオーブンから取り出される。加熱シリンジに付けられた
針は、ボトルの上端とその中の液体表面との中間レベルまでセプタムから挿入さ
れる。ヘッドスペース(2ml)が取り出され、ガスクロマトグラフ中に注入さ
れる。
カラムオーブンの初期温度は100℃で5分間であり、4℃/minで115℃ま
で上昇させて、その後7分間保ち、最後に7℃/minで200℃まで上昇させて、
その後2分間保つ。
GC条件:
キャリアガス:ヘリウム‐‐2.5cc/min
注入口温度: 646°F(240℃)
フレームイオン化検出器:
温度: 482°F(250℃)
水素流速: 30cc/min
空気流速: 300cc/min
チャート速度: 0.5cm/min
ガスクロマトグラム分析は、フレーバーストレングス及び良フレーバー化合物
の分析に用いられた場合と同様である。
図5は、本発明のローストコーヒーから得られた抽出物を用いる、この方法の
ガスクロマトグラムである。ピークは1〜6と表示され、それらはエタノール(
1)、プロパノール(2)、2‐ペンタノン(3)、3‐ペンタノン(4)及び
2,3‐ペンタンジオン(5)に相当する。
補正されたGCカウントを計算するとき、応答ファクターにエタノール(71
.59801)、プロパノール(29.16200)、2‐ペンタノン(18.
42800)、3‐ペンタノン(15.77300)及び2,3‐ペンタンジオ
ン(41.89000)がある。
C)酸味の測定
浸出酸味指数は浸出コーヒーの酸味に関する。浸出コーヒーは、典型的には約
4〜5のpHを有する。浸出酸味指数は、対数ベースpH単位よりも詳しく区別
できる酸味スケールである。
浸出酸味指数=1000×pHを7.00に上げるためにコーヒー浸出液15
0gに加えられた0.1N水酸化ナトリウムの容量(ml)。コーヒー浸出液は
、慣用的自動ドリップコーヒーメーカーでローストコーヒー粒子31.2g及び
蒸留水1420mlから作られる。
例
高収量でバランスのとれたフレーバーコーヒーの製造及び特徴は、下記例によ
り説明される。
A)例1
バッチA(暗ロースト乾燥豆):11%水分含有率の100%グリーンロブス
タコーヒー豆を5%水分含有率まで170°F(77℃)で6時間乾燥させる。
乾燥された豆をサーマロ(Thermalo)ロースター、モデルナンバー23Rで45k
g(100 lb)バッチを用いて急速ローストする。ガスバーナーインプット
速度は1.7百万Btu/hr(498kW)である。ロースト時間は130秒間であ
る。ロースト豆は、15のハンターL‐カラーと、0.31g/ccのタンプド
密度を有する。
バッチB(ロースト非乾燥豆):11%水分含有率のグリーンコーヒー豆(5
0%洗浄アラビカ、50%天然アラビカ)のブレンドをサーマロロースターで4
5kg(100 lb)バッチを用いて急速ローストする。ガスバーナーインプ
ット速度は1.4百万Btu/hr(410kW)である。ロースト時間は165秒間
である。ロースト豆は、18のハンターL‐カラーと、0.36g/ccのタン
プド密度を有する。
20:80ブレンド(バッチA対バッチB)を割り、標準化し、粉砕して、1
27μm(0.005インチ)の平均フレーク厚にフレーク化する。バッチBか
らのロースト豆を約1000μmの平均粒度まで粉砕する。粉砕コーヒーを1:
1重量比でコーヒーフレークと混合する。浸出酸味指数は2800である。f(
1)は1046、f(2)は2100、及びf(3)は149である。
B)例2
バッチA(暗ロースト乾燥豆):11%水分含有率の100%グリーンロブス
タコーヒー豆を5%水分含有率まで170°F(77℃)で6時間乾燥させる。
乾燥された豆をサーマロロースターで45kg(100 lb)バッチを用いて
急速ローストする。ガスバーナーインプット速度は1.7百万Btu/hr(498k
W)である。ロースト時間は120秒間である。ロースト豆は、17のハンター
L‐
カラーと、0.31g/ccのタンプド密度を有する。
バッチB(ロースト非乾燥豆):11%水分含有率のグリーンコーヒー豆(6
5%洗浄アラビカ、35%天然アラビカ)のブレンドをサーマロロースターで4
5kg(100 lb)バッチを用いて急速ローストする。ガスバーナーインプ
ット速度は1.4百万Btu/hr(410kW)である。ロースト時間は165秒間
である。ロースト豆は、18のハンターL‐カラーと、0.36g/ccのタン
プド密度を有する。
29:71ブレンド(バッチA対バッチB)を割り、標準化して、500μm
の平均粒度まで粉砕する。浸出酸味指数は2650である。f(1)は1139
、f(2)は1738、及びf(3)は211である。
C)例3
バッチA(暗ロースト乾燥豆):11%水分含有率のグリーンコーヒー豆(5
0%洗浄マイルド、30%天然アラビカ、20%ロブスタ)のブレンドを5%水
分含有率まで170°F(77℃)で6時間乾燥させる。乾燥された豆をサーマ
ロロースターで45kg(100 lb)バッチを用いて急速ローストする。ガ
スバーナーインプット速度は1.7百万Btu/hr(498kW)である。ロースト
時間は120秒間である。ロースト豆は、17のハンターL‐カラーと、0.3
1g/ccのタンプド密度を有する。
バッチB(ロースト非乾燥豆):11%水分含有率のグリーンコーヒー豆(5
0%洗浄マイルド、30%天然アラビカ、20%ロブスタ)のブレンドをサーマ
ロロースターで45kg(100 lb)バッチを用いて急速ローストする。ガ
スバーナーインプット速度は1.4百万Btu/hr(410kW)である。ロースト
時間は165秒間である。ロースト豆は、18のハンターL‐カラーと、0.3
6g/ccのタンプド密度を有する。
5:95ブレンド(バッチA対バッチB)を900μmの平均粒度まで粉砕す
る。粉砕コーヒーの約25%は127μm(0.005インチ)の平均フレーク
厚までフレーク化する。フレークを残りの粉砕ブレンドコーヒーと混合する。タ
ンプド密度は0.37g/ccである。
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(72)発明者 レップラ,ジェフリー キース
アメリカ合衆国オハイオ州、シンシナチ、
ウィンドリッジ、コート、5480