JPH093963A - 掘削機のカッター - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 カッターポストの抱き込み現象が生じた場合
にカッターポストの横移動が可能な状態に容易に復旧さ
せる。 【構成】 ウォータージェット用高圧ホース２４に接続
されるウォータージェットパイプ１７を、カッターポス
ト１１の上下両端部間に設け、同パイプ１７の下端部に
腹側空間に向けて高圧水を噴射する噴射ノズル１９…を
設けた。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は地中に止水用、基礎用等
の連続壁を造成するための溝を掘削する掘削機のカッタ
ーに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、連続壁造成用の溝を掘削する掘削
機として、特開平５−２８００４３号、特開平５−２８
００４４号両公報等に示されているように、走行台車
（たとえばクローラ式クレーンのベースマシン）にチェ
ーン式カッターを垂直に取付け、このカッターを回転さ
せながら水平方向に移動させることにより、一定幅の溝
を連続して掘削するものが公知である。

【０００３】この掘削機に使用されるカッターは、図
７，８に示すように、上部が地上に露出する状態で地中
に建て込まれる上下に長い箱形フレームであるカッター
ポスト１の上下両端部間にエンドレスチェーン２をポス
ト左右両側を巡回する状態で掛け渡し、このチェーン２
の外周側にビットプレート３を介して外向きに設けた多
数の掘削刃４…によって地盤を掘削し、溝Ｇを造成する
ように構成されている。

【０００４】図７中、５はカッターポスト１の上端部に
設けられたモータ駆動式のチェーン駆動用スプロケット
（駆動輪）、６は同ポスト１の下端部に設けられた遊動
輪である。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】従来、このような掘削
機において、とくに、カッターを地中に建て込んだまま
作業を休止した場合に、掘削された礫や土砂（以下、土
砂等という）がカッターポスト１の腹面（前後の面）１
ａ，１ａと掘削溝Ｇの前後面Ｇ１，Ｇ１との間（以下、
腹側空間という）Ｓで沈殿・固化してポスト腹面１ａ
（とくに下部）に大きな土圧がかかり、作業再開時に、
カッターが横移動できなくなったり、掘削刃４…の回転
さえも不能となったりする所謂抱き込み現象が生じてい
た。

【０００６】そこで本発明は、抱き込み現象が生じた場
合にカッターポストの横移動、掘削刃の回転が可能な状
態に容易に復旧させることができる掘削機のカッターを
提供するものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】請求項１の発明は、上部
が地上に露出する状態で地中に建て込まれるカッターポ
ストの上下両端部間にエンドレスチェーンが、カッター
ポストの左右両側を巡回する状態で掛け渡され、このエ
ンドレスチェーンに地盤を掘削する多数の掘削刃が左右
両側外方に向けて突設された掘削機のカッターにおい
て、上記カッターポストにウォータージェットパイプが
上記地上露出部分と地中建て込み部分とに亘って設けら
れ、このウォータージェットパイプの上端に、ウォータ
ージェット用高圧水ホースに接続される給水口が設けら
れるとともに、同パイプにおける上記カッターポストの
地中建て込み部分に位置する部分に、噴射ノズルが、カ
ッターポストの前後両側に向けて設けられたものであ
る。

【０００８】請求項２の発明は、請求項１の構成におい
て、ウォータージェットパイプがカッターポストの地上
露出部分と同ポスト下端部とに亘って設けられ、このウ
ォータージェットパイプの下端部に噴射ノズルが設けら
れたものである。

【０００９】請求項３の発明は、請求項１または２の構
成において、噴射ノズルが斜め下向きに設けられたもの
である。

【００１０】請求項４の発明は、請求項１または２の構
成において、噴射ノズルが斜め上向きに設けられたもの
である。

【００１１】請求項５の発明は、請求項１または２の構
成において、噴射ノズルがカッターポストの左右両側に
おいて、カッターポスト中央側を向く斜め横向きに設け
られたものである。

【００１２】請求項６の発明は、請求項１乃至５のいず
れかの構成において、ウォータージェットパイプおよび
噴射ノズルがカッターポスト内に設けられ、カッターポ
ストに、噴射ノズルを外部に臨ませる噴射口が設けられ
たものである。

【００１３】

【作用】上記構成によると、抱き込み現象が生じた場合
に、ウォータージェット用高圧ホースをウォータージェ
ットパイプの給水口に接続し、高圧水を噴射ノズルから
カッターポストの前後両側に向かって噴射させるウォー
タージェット作用を行わせることにより、腹側空間内に
沈殿・固化した土砂等が掘削されて土圧が緩められるた
め、カッター全体の横移動、掘削刃の回転が可能な状態
に容易に復旧させることができる。

【００１４】とくに、請求項２の構成によると、ウォー
タージェット作用がポスト下端部で行われるため、抱き
込み現象の主因となる腹側空間の下部に沈殿・固化した
土砂等を効率良く掘削することができる。

【００１５】また、噴射ノズルが斜め下向きに設けられ
た請求項３の構成によると、土砂等による同ノズルの詰
まりが生じ難く、ウォータージェット作用が常に確実に
行われる。

【００１６】一方、噴射ノズルが斜め上向きに設けられ
た請求項４の構成によると、沈殿・固化した土砂等を掘
削すると同時に押し上げるため、土圧を緩める効果が高
いものとなる。

【００１７】また、噴射ノズルがポスト左右両側におい
て中央側を向く斜め横向きに設けられた請求項５の構成
によると、掘削方向のノズルから反対側（既掘削側）に
高圧水を噴射させることにより、土砂等を既掘削側に押
しやって腹側空間から除去し、土圧を効果的に緩めるこ
とができる。

【００１８】一方、掘削方向と反対側のノズルから高圧
水を噴射させれば、通常掘削時に前後の掘削面および未
掘削側地盤に対する掘削作用が行われるため、本来の掘
削効率が高められるとともに、横移動の抵抗を小さくす
ることができる。

【００１９】また、請求項６の構成によると、ウォータ
ージェットパイプおよび噴射ノズルがカッターポスト内
に設けられているため、これらが掘削抵抗とならず、か
つ地盤との接触によって摩耗するおそれがない。

【００２０】

【実施例】本発明の実施例を図によって説明する。

【００２１】基本実施例（図１〜図３参照） １１はカッターポスト、１２はこのカッターポスト１１
の上端部に設けられた駆動輪、１３は同ポスト１１の下
端部に設けられた遊動輪、１４はこの駆動輪１２と遊動
輪１３との間に掛け渡されたエンドレスチェーンで、こ
のチェーン１４の外周に多数の掘削刃１５…がビットプ
レート１６を介して外向きに取付けられ、この掘削刃１
５…の回転によって溝Ｇが掘削される。

【００２２】このカッターにおいては、カッターポスト
１１内にウォータージェットパイプ１７が同ポスト地上
露出部分（上部）と下端部とに亘って設けられている。

【００２３】このウォータージェットパイプ１７には、
上端部に給水口１８、下端部に噴射ノズル１９がそれぞ
れ設けられている。

【００２４】噴射ノズル１９は、カッターポスト１１の
前後両側において左右一対ずつ（計４個）、斜め下向き
に、かつ、同ポスト１１の前後両腹面壁に設けられた噴
射口２０，２０を介して外部に臨む状態で設けられてい
る。

【００２５】図２，３中、１１ａ，１１ａはカッターポ
スト１１の前後の腹面、２１…は各噴射ノズル１９…を
カッターポスト１１内で支持するノズル支持板、２２は
ウォータージェットの地上設備としての貯水タンク、２
３は同ジェットポンプ、２４はこのジェットポンプ２３
に接続された高圧水ホースである。

【００２６】この構成において、抱き込み現象が発生し
た場合に、高圧水ホース２４を給水口１８に接続し、ジ
ェットポンプ２３を駆動することにより、高圧水（たと
えば圧力が１５０Ｋｇ／ｃｍ²）がウォータージェット
パイプ１７に導入され、噴射ノズル１９…から腹側空間
Ｓに向かって斜め下向きに噴射される。

【００２７】このウォータージェット作用により、抱き
込み現象の原因である腹側空間Ｓに沈殿・固化した土砂
等が掘削され、ポスト腹面１１ａ，１１ａに作用する土
圧が緩められるため、カッター全体の横移動および掘削
回転が可能な状態に簡単かつ速やかに復旧させることが
できる。

【００２８】この場合、ウォータージェット作用がポス
ト下端部で行われるため、抱き込み現象の主因となる腹
側空間Ｓの下部に沈殿・固化した土砂等を効率良く掘削
することができる。

【００２９】また、噴射ノズル１９…がカッターポスト
１１内に設けられていること、および斜め下向きに設け
られていることにより、土砂等による同ノズル１９…の
詰まりが生じ難く、ウォータージェット作用が常に確実
に行われる。

【００３０】一方、ウォータージェットパイプ１７およ
び噴射ノズル１９…がカッターポスト１１内に設けられ
ているため、これらが掘削抵抗とならず、かつ地盤との
接触によって摩耗するおそれがない。

【００３１】ところで、上記ウォータージェット作用
は、掘削作用を助ける意味で通常掘削中にも随時働かせ
てもよいが、基本的には通常掘削時には不要となる。

【００３２】そこで、溝Ｇを掘削すると同時にセメント
等の改良材を投入し、圧力が１０Ｋｇ／ｃｍ²程度のエ
アを噴射して改良材と被掘削土とを撹拌・混合し、地盤
の改良を行う場合に、ウォータージェットパイプ１７の
給水口１８にエアホースを接続し、同パイプ１７および
噴射ノズル１９…を撹拌エア用の配管および噴射ノズル
として兼用することも可能である。

【００３３】他の実施例 （１）上記実施例では噴射ノズル１９…を斜め下向きに
設けたが、図４に示すように、同ノズル１９…をウォー
タージェットパイプ１７の下端部において斜め上向きに
設けてもよい。

【００３４】こうすれば、ウォータージェット作用によ
り、腹側空間Ｓの下部に沈殿・固化した土砂等が掘削さ
れると同時に押し上げ除去されるため、土圧を緩める効
果が高いものとなる。

【００３５】（２）図５に示すように、左右一対の噴射
ノズル（とくに枝符号Ｌ，Ｒを付して１９Ｌ，１９Ｒと
表示する）を、カッターポスト１１の下端部左右両側に
おいて同ポスト中央側を向く斜め横向き状態で設けても
よい。

【００３６】この構成において、掘削方向のノズル（図
例では右側ノズル）１９Ｒから反対側（既掘削側）に高
圧水を噴射させることにより、土砂等を既掘削側に押し
やって腹側空間Ｓから除去し、土圧を効果的に緩めるこ
とができる。

【００３７】一方、掘削方向と反対側（図例では左側）
のノズル１９Ｌから高圧水を噴射させれば、通常掘削時
に前後の掘削面Ｇ１，Ｇ１および未掘削側地盤に対する
掘削作用が行われるため、本来の掘削効率が高められる
とともに、横移動の抵抗を小さくすることができる。

【００３８】（３）図６に示すように、左右一対の噴射
ノズル１９，１９を上下複数段（図例では三段）に設け
てもよい。

【００３９】こうすれば、ウォータージェット作用が上
下方向の広い範囲で行われるため、ウォータージェット
作用の所謂死角が生じにくく、とくに上下に広い範囲で
土砂等による抱き込み現象が生じた場合に有利となる。

【００４０】（４）抱き込み現象は、普通、土砂等の沈
殿・固化によってカッターポスト下部に多く発生するた
め、噴射ノズル１９も上記実施例のように同ポスト下端
部に設けるのが望ましいが、抱き込み現象がたとえばセ
メントの固化等によって中間部でも生じる場合には、同
ノズル１９をポスト中間部にも設置してもよい。

【００４１】（５）ウォータージェットパイプ１７およ
び噴射ノズル１９は、これらの摩耗を防止し、掘削抵抗
を小さくする上で上記実施例のようにカッターポスト１
１内に設けるのが望ましいが、必要に応じてこれらをポ
スト外部に設けてもよい。

【００４２】

【発明の効果】上記のように本発明によるときは、ウォ
ータージェット用高圧ホースに接続されるウォータージ
ェットパイプを、カッターポストにおける地上露出部分
と地中建て込み部分とに亘って設け、同パイプに腹側空
間に向けて高圧水を噴射する噴射ノズルを設けたから、
抱き込み現象が生じた場合にウォータージェット作用を
行わせることにより、腹側空間内に沈殿・固化した土砂
等を掘削して土圧を緩めこれによってカッター全体の横
移動、掘削刃の回転が可能な状態に容易に復旧させるこ
とができる。

【００４３】とくに、請求項２の発明によると、ウォー
タージェット作用がポスト下端部で行われるため、抱き
込み現象の主因となる腹側空間の下部に沈殿・固化した
土砂等を効率良く掘削することができる。

【００４４】また、請求項３の発明によると、噴射ノズ
ルを斜め下向きに設けたから、土砂等による同ノズルの
詰まりが生じ難く、ウォータージェット作用が常に確実
に行われる。

【００４５】一方、噴射ノズルを斜め上向きに設けた請
求項４の発明によると、沈殿・固化した土砂等を掘削す
ると同時に押し上げることができるため、土圧を緩める
効果が高いものとなる。

【００４６】また、請求項５の発明によると、噴射ノズ
ルをポスト左右両側において中央側を向く斜め横向きに
設けたから、掘削方向のノズルから反対側（既掘削側）
に高圧水を噴射させることにより、土砂等を既掘削側に
押しやって腹側空間から除去する効果が期待できる。

【００４７】一方、掘削方向と反対側のノズルから高圧
水を噴射させれば、通常掘削時に前後の掘削面および未
掘削側地盤に対する掘削作用が行われるため、本来の掘
削効率が高められるとともに、横移動の抵抗を小さくす
ることができる。

【００４８】また、請求項６の発明によると、ウォータ
ージェットパイプおよび噴射ノズルをカッターポスト内
に設けているため、これらが掘削抵抗とならず、かつ地
盤との接触によって摩耗するおそれがない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の基本実施例を示すカッター全体の概略
正面図である。

【図２】図１のII−II線拡大断面図である。

【図３】図２のIII−III線拡大断面図である。

【図４】本発明の別の実施例を示す図３相当図である。

【図５】本発明のまた別の実施例を示す拡大水平断面図
である。

【図６】本発明のさらに別の実施例を示す図１相当図で
ある。

【図７】従来のカッターを示す概略正面図である。

【図８】図７のVIII−VIII線拡大断面図である。

【符号の説明】

１１ カッターポスト １４ エンドレスチェーン １５ 掘削刃 １７ ウォータージェットパイプ １８ 給水口 １９ 噴射ノズル ２０ 噴射口 ２２ ウォータージェット設備としての貯水タンク ２３ 同ジェットポンプ ２４ 同高圧水ホース

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河本 辰夫 兵庫県明石市大久保町八木740番地 株式 会社神戸製鋼所大久保建設機械工場内

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 上部が地上に露出する状態で地中に建て
   込まれるカッターポストの上下両端部間にエンドレスチ
   ェーンが、カッターポストの左右両側を巡回する状態で
   掛け渡され、このエンドレスチェーンに地盤を掘削する
   多数の掘削刃が左右両側外方に向けて突設された掘削機
   のカッターにおいて、上記カッターポストにウォーター
   ジェットパイプが上記地上露出部分と地中建て込み部分
   とに亘って設けられ、このウォータージェットパイプの
   上端に、ウォータージェット用高圧水ホースに接続され
   る給水口が設けられるとともに、同パイプにおける上記
   カッターポストの地中建て込み部分に位置する部分に、
   噴射ノズルが、カッターポストの前後両側に向けて設け
   られたことを特徴とする掘削機のカッター。
2. 【請求項２】 請求項１記載の掘削機のカッターにおい
   て、ウォータージェットパイプがカッターポストの地上
   露出部分と同ポスト下端部とに亘って設けられ、このウ
   ォータージェットパイプの下端部に噴射ノズルが設けら
   れたことを特徴とする掘削機のカッター。
3. 【請求項３】 噴射ノズルが斜め下向きに設けられたこ
   とを特徴とする請求項１または２記載の掘削機のカッタ
   ー。
4. 【請求項４】 噴射ノズルが斜め上向きに設けられたこ
   とを特徴とする請求項１または２記載の掘削機のカッタ
   ー。
5. 【請求項５】 噴射ノズルがカッターポストの左右両側
   において、カッターポスト中央側を向く斜め横向きに設
   けられたことを特徴とする請求項１または２記載の掘削
   機のカッター。
6. 【請求項６】 請求項１乃至５のいずれかに記載の掘削
   機のカッターにおいて、ウォータージェットパイプおよ
   び噴射ノズルがカッターポスト内に設けられ、カッター
   ポストに、噴射ノズルを外部に臨ませる噴射口が設けら
   れたことを特徴とする掘削機のカッター。