JPH093097A - ピキア属酵母由来の糖鎖伸長タンパク、該蛋白質をコードするdna、修飾該dnaおよび形質転換体 - Google Patents

ピキア属酵母由来の糖鎖伸長タンパク、該蛋白質をコードするdna、修飾該dnaおよび形質転換体

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JPH093097A
JPH093097A JP7150778A JP15077895A JPH093097A JP H093097 A JPH093097 A JP H093097A JP 7150778 A JP7150778 A JP 7150778A JP 15077895 A JP15077895 A JP 15077895A JP H093097 A JPH093097 A JP H093097A
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yeast
dna
sugar chain
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Koji Murakami
弘次 村上
Narutoshi Sugio
成俊 杉尾
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 ピキア属酵母に由来する、糖蛋白質の糖鎖伸
長に携わるタンパクおよびその該タンパクをコードする
塩基配列を有するDNA。該DNAの塩基配列の一部
が、該DNAによってコードされる機能産物の産生が少
なくとも抑制されてなるように修飾されてなるDNA、
該修飾DNAを有することにより、天然型ピキア属酵母
株に比して糖鎖伸長能が抑制されてなる修飾ピキア属酵
母。 【効果】 本発明によれば、医薬上有用な生理活性蛋白
質と同一もしくは類似の構造の糖鎖を有する糖蛋白質を
ピキア属酵母を宿主として産生させるために、遺伝子レ
ベルで該酵母が本来もつ糖鎖伸長能が抑制されてなる修
飾ピキア酵母を提供することができる。本発明の修飾ピ
キア酵母株は、酵母と哺乳類細胞とで共通するERコア
糖鎖と同一もしくは類似の糖鎖構造を有する糖蛋白質を
生産する産生株を作成するための宿主として有用であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、組換え産物生産のため
の有効な発現系の宿主として利用され得るピキア属酵母
に由来する、糖蛋白質の糖鎖伸長に携わるタンパクおよ
び該タンパクをコードする遺伝子に関する。当該タンパ
クは、ピキア属酵母を宿主とする糖蛋白質発現系におい
て産生される糖蛋白質における糖鎖の伸長、好ましくは
α−1,6結合マンノースの伸長に関与するものであ
る。また本発明は、ピキア属酵母に由来する、糖蛋白質
の糖鎖伸長に携わるタンパクの遺伝子を修飾してなるD
NAおよび該DNAを有する修飾ピキア属酵母株に関す
る。医学上有用な生理活性蛋白質のほとんどは糖蛋白質
であるが、本発明の修飾ピキア属酵母株を宿主とする蛋
白質発現系によれば、酵母と哺乳類細胞とで共通するE
Rコア糖鎖と同一構造のMan8 GlcNAc2 糖鎖の
みを有する糖蛋白質を調製し得る。従って、本発明の修
飾ピキア属酵母株は、医薬上有用な糖蛋白質を産生する
産生株またはそのような産生株を作成するための宿主と
して有用である。
【0002】
【従来の技術・発明が解決しようとする課題】生体内で
機能する蛋白質の殆どは、糖鎖による修飾を受けた糖蛋
白質である。近年、糖鎖の構造については、レクチンを
用いた解析等の従来の方法に加え、HPLCやNMR、
FAB−MASを用いた新しい分析法等が開発され、次
々と新しい糖蛋白質の糖鎖構造が解明されてきている。
一方、多くの研究者によって糖鎖の機能解析の研究も盛
んとなり、糖鎖は細胞間認識、分子識別、蛋白質の構造
維持や活性への寄与、生体内でのクリアランス、分泌、
局在化など多くの生体内機構に重要な役割を担っている
ことがわかってきた。
【0003】例えば、糖鎖構造とその機能がよく研究さ
れているヒト・エリスロポエチン〔竹内、蛋白質・核酸
・酵素、増刊「複合糖質」37, 1713 (1992) 参照〕にお
いては、エリスロポエチンに付加されているアスパラギ
ン結合型糖鎖は(図1にその機能分担モデルを示す)、
その先端部分のNeu5Ac(シアル酸)が血中クリア
ランス、分岐部分のGal/GalNAc基(ガラクト
ース/N−アセチルガラクトサミン)は受容体との結合
に関する立体的な寄与、そしてコア部分はペプチドの活
性発現維持の関与と多岐にわたる機能に関与しているこ
とが報告されている。このように糖蛋白質の糖鎖は、そ
の構造が複雑であるだけでなく機能も多岐に渡っている
ことから、特に医薬品として糖蛋白質を開発する場合に
はその構造および機能解析が重要である。
【0004】ところで、微生物を用いた物質生産は、そ
の生産コストの低さや、これまで醗酵工学として培って
きた培養技術など、動物細胞を用いた物質生産に比べる
と、いくつかの点で有利である。しかしながら、微生物
においてはヒト糖蛋白質と同一構造の糖鎖(例えば上述
したエリスロポエチンにおいて機能している上記糖鎖)
を付加することができないという問題がある。つまり、
ヒトを含め動物細胞由来の糖蛋白質は、図1で示したよ
うな複合型、さらに混成型およびハイマンノース型の3
種類のアスパラギン結合型糖鎖に加え、多種多様のムチ
ン型糖鎖を有しているが、大腸菌等の原核微生物では糖
鎖付加自体が起こらず、また真核微生物であるパン酵母
( Saccharomyces cerevisiae )でも付加されるアスパ
ラギン結合型糖鎖はハイマンノース型のみで、ムチン型
はマンノースのみを主成分とする糖鎖しか付加されな
い。従って、上述したエリスロポエチン等のように糖鎖
が重要な機能を持っている糖蛋白質の遺伝子組換え生産
には、微生物は適しておらず、実際にエリスロポエチン
の生産にはチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO
細胞)が用いられている。
【0005】これに対しパン酵母等の真核微生物の遺伝
子工学的な分子育種を行い、パン酵母細胞内で動物細胞
と同一あるいは類似の構造の糖鎖を付加させようとする
研究も行われ始めている。1994年、Schwientekらはパン
酵母でヒト由来β-1,4-galactosyltransferase遺伝子の
活性発現の成功を報告している〔Schwientek,T. andErn
st, J.F., Gene, 145, 299 (1994)〕。また、Krezdrn
らも同様の研究を進めており、同じくパン酵母でヒト由
来β-1,4-galactosyltransferase及びα-2,6-sialyltra
nsferaseの活性発現を行っている〔Krezdrn,C.H., et a
l., Eur.J.Biochem.220, 809 (1994) 〕。
【0006】また、一方でパン酵母由来の糖蛋白質の糖
鎖自体の改変を目的とする試みが行われている。パン酵
母由来の糖蛋白質に付加されるハイマンノース型糖鎖は
動物細胞のハイマンノース型糖鎖よりもさらにマンノー
スを多量に含む、いわゆるHyper mannosylation された
糖鎖が多数を占めており、この過剰に付加されたマンノ
ースのうち、β結合したマンノースにα-1,3結合したマ
ンノース残基を出発点として伸長するα-1,6結合マンノ
ースや外糖鎖に付加されるα-1,3結合マンノース等はパ
ン酵母特有の構造である(図2)。
【0007】1992年、地神らはこのα-1,6結合マンノー
スの伸長の鍵酵素であると考えられているパン酵母のO
CH1遺伝子(α-1,6-mannosyltransferaseを発現す
る) のクローニングに成功した(Nakayama, K., EMBO J.
11, 2511 (1992)、図2参照〕。このOCH1遺伝子の
破壊株(△och1)の糖蛋白質には、Man8 Glc
NAc2 、Man9 GlcNAc2 、Man10GlcN
Ac2 の3種の糖鎖が付加されており、このうちMan
8 GlcNAc2 糖鎖は、パン酵母と哺乳類細胞とで共
通するERコア糖鎖と同一の構造(図2中、「Ma」 で
記載した構造)で、Man9 GlcNAc2 、Man10
GlcNAc2 の糖鎖は、このERコア糖鎖にα-1,3結
合マンノースが付加された構造〔Nakanishi-Shindo,Y.,
Nakayama,K.,Tanaka,A.,Toda,Y. and Jigami,Y., (199
4), J.Biol.Chem.〕であった。さらに、△och1,m
nn1二重変異株(図2参照)を作製して末端のα-1,3
結合マンノース転移を阻害することにより、パン酵母と
哺乳類細胞で共通するERコア糖鎖と同一構造のMan
8 GlcNAc2 糖鎖のみを付加するパン酵母宿主を作
製できた。この△och1,mnn1二重変異株は、ハ
イマンノース型糖鎖を有する哺乳類由来の糖蛋白質を遺
伝子組換え技術により生産する際に有用な宿主となると
考えられている〔地神芳文(1994)蛋白質・核酸・酵素,
39,657〕。
【0008】ところで、近年、メタノール資化性酵母で
あるピキア属酵母(Pichia pastoris 等)が異種蛋白発
現系の有効な宿主として注目を浴びている。ピキア属酵
母は、特にその分泌発現量がパン酵母を大きく上回って
おり、また培養技術が確立しているので工業生産に用い
られる酵母として大変好適に用いられる。しかしなが
ら、ピキア属酵母が有する糖蛋白質の糖鎖伸長機構やピ
キア属酵母によって産生される糖蛋白質の糖鎖構造等に
ついての研究はほとんど行われていないのが現状であ
る。
【0009】従って、本発明の目的は、ピキア属酵母に
由来する糖鎖伸長に携わるタンパク及びその遺伝子を提
供することである。ピキア属酵母に由来する糖鎖伸長に
携わるタンパク及びその遺伝子は、本発明によって初め
て提供されるものである。また本発明は、当該タンパク
の遺伝子の解明に基づいて、糖鎖伸長に携わるタンパク
の遺伝子によってコードされる機能産物の産生が少なく
とも抑制されるように修飾されてなるDNA、該DNA
を有することにより天然型ピキア属酵母株に比して糖鎖
伸長能が抑制されてなる修飾ピキア属酵母株を提供する
ことを目的とする。当該修飾ピキア属酵母株は、哺乳類
由来の糖蛋白質と同一もしくは類似の糖鎖構造を有する
糖蛋白質を遺伝子組換え技術により生産する産生株また
はそのような産生株を作成するための宿主となり得る点
で有用である。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ピキア属
酵母を宿主として種々の生理活性蛋白質の産生を行って
いるが、上述のように生理活性蛋白質の殆どは糖蛋白質
であることから、ピキア属酵母を組換え生産の宿主とす
る場合、糖蛋白質の糖鎖の問題は避けられない問題であ
る。そこで、かかる問題を解決すべく種々研究を重ねた
ところ、ピキア属酵母に由来する糖鎖伸長に携わるタン
パクをコードする遺伝子のクローニングに成功し、当該
タンパクがピキア属酵母を宿主とする発現系において、
糖蛋白質の糖鎖の伸長に関与していることを確認して本
発明を完成した。
【0011】すなわち本発明は、ピキア属酵母に由来す
る、糖蛋白質の糖鎖伸長に携わるタンパクおよびその該
タンパクをコードする塩基配列を有するDNAに関す
る。また本発明は、当該糖蛋白質の糖鎖伸長に携わるタ
ンパクをコードするDNAの塩基配列の一部が、該DN
Aによってコードされる機能産物の産生が少なくとも抑
制されてなるように修飾されてなるDNA、好ましくは
糖蛋白質の糖鎖伸長に携わるタンパクをコードするDN
Aに形質転換マーカー遺伝子が挿入されてなるDNAに
関する。さらに本発明は、当該修飾DNAを有すること
により、天然型ピキア属酵母株に比して糖鎖伸長能が抑
制されてなる修飾ピキア属酵母株に関する。
【0012】以下、本発明について詳細に説明する。 (1)糖蛋白質の糖鎖伸長に携わるタンパク 本発明のタンパクは、原始的にはピキア属酵母によって
産生されるタンパクであり、糖蛋白質の糖鎖の伸長の最
初の段階をつかさどっており、糖鎖の伸長を制御する機
能を有することを特徴とする。
【0013】本発明のタンパクの由来となるピキア属酵
母としては、特に制限はないが、具体的には Pichia pa
storis, Pichia finlandica, Pichia trehalophila, Pi
chiakoclamae, Pichia membranaefaciens, Pichia opun
tiae, Pichia thermotolerans, Pishia salictaria, Pi
chia guercuum Pichia pijperi等が例示される。好ま
しくは Pichia pastoris( 以下、P.pastorisという) で
ある。
【0014】本発明のタンパクは原始的にピキア属酵母
に由来するものであり、かつ上記機能を有するものであ
れば特に制限されないが、好ましくはN末端領域に式I
で示されるアミノ酸配列を有するタンパクであり、より
好ましくは実質的に式IIで示されるアミノ酸配列を有す
るタンパクである。
【0015】
【化4】
【0016】
【化5】
【0017】なお、かかるアミノ酸配列は、上述の特性
を変更しない範囲で、一部が修飾(例えば、アミノ酸残
基またはペプチド鎖の置換、欠失、挿入または付加等)
されていてもよい。
【0018】本発明のタンパクは、その一次構造として
例示される式II記載のアミノ酸配列が、パン酵母に由来
するα-1,6結合マンノース伸長の鍵酵素、α-1,6-manno
syltransferaseのアミノ酸配列と高い相同性(約40
%)を有し、また後述するようにそのDNAもパン酵母
に由来する該酵素をコードするOCH1遺伝子と高い相
同性(約55%)を有すること等から、ピキア属酵母に
由来するα-1,6結合マンノース伸長の鍵酵素である可能
性が高い。
【0019】本発明のタンパクは、ピキア属酵母を常法
に従って、好ましくは該酵母の増殖に適した条件下で培
養し、培養菌体から常法により抽出、精製することによ
り製造することができる。また、本発明で例示するアミ
ノ酸配列に基づいてポリペプチド合成したり、また本発
明で例示する塩基配列に基づいて慣用の組換えDNA技
術によっても製造することができる。なお、以下説明を
簡便にするため、本発明のタンパクを糖鎖伸長タンパク
ともいう。
【0020】(2)糖鎖伸長タンパクをコードする塩基
配列を有するDNA 本発明のDNAは、前述の本発明のピキア属酵母に由来
する糖鎖伸長タンパクをコードする塩基配列を有するこ
とを特徴とするものである。かかる塩基配列は、本発明
の糖鎖伸長タンパクをコードし得る塩基配列であれば特
に制限されないが、好適には式Iで示されるアミノ酸配
列をコードする塩基配列、より好ましくは実質的に下記
式III で示される塩基配列が例示される。
【0021】
【化6】
【0022】当該DNAは、従来公知の手法により製造
することができる。例えば、本発明で例示する塩基配列
をもとにDNA合成機を用いてその一部または全てのD
NAを合成したり、ピキア属酵母(例えばP.pastoris)
の染色体DNAを用いてPCR法で増幅させることによ
り製造することも可能である。
【0023】本発明のDNAは、ピキア属酵母によって
産生される、糖蛋白質の糖鎖伸長に携わるタンパクをコ
ードする遺伝子として、本発明により初めて提供される
ものである。従って、本発明のDNAはピキア属酵母を
宿主とする糖蛋白質発現系における糖蛋白質の糖鎖の構
造・機能等の機序を解明する上で極めて有用である。
【0024】本発明の糖鎖伸長タンパクは、ピキア属酵
母を宿主として産生される蛋白質のコア糖鎖にさらにα
−1,6結合マンノースを転移する働きを有し、動物細
胞由来の糖蛋白質に比べて過剰にマンノースを付加させ
てしまう。従って、本発明による糖鎖伸長タンパクの遺
伝子の解明は、ピキア属酵母を宿主として、医薬上有用
な生理活性蛋白質と同一もしくは類似の糖鎖構造を有す
る糖蛋白質を発現・産生させるために、遺伝子レベルで
ピキア属酵母が本来有する糖鎖伸長能を減弱または除去
する方法の提供にもつながる。すなわち、本発明の糖鎖
伸長タンパクが本来的に有する糖鎖伸長活性の減弱また
は除去は、本発明の糖鎖伸長タンパクをコードする塩基
配列を有するDNA(以下、糖鎖伸長DNA、もしくは
後述の修飾糖鎖伸長DNAと区別するため天然型糖鎖伸
長DNAともいう)を、該DNAによってコードされる
機能産物の産生を少なくとも抑制するように修飾するこ
とによって達成することができる。
【0025】(3)天然型糖鎖伸長DNAが修飾されて
なるDNA 本発明は、糖蛋白質の糖鎖伸長に携わるタンパクをコー
ドするDNA(天然型糖鎖伸長DNA)の修飾物、すな
わちピキア属酵母に由来する、糖蛋白質の糖鎖伸長に携
わるタンパクをコードするDNAの塩基配列の一部が、
該DNAによってコードされる機能産物の産生を少なく
とも抑制されるように修飾されてなるDNAに関する。
【0026】ここで「DNAによってコードされる機能
産物」とは、ピキア属酵母に由来する天然型糖鎖伸長D
NAによってコードされるタンパク、すなわち本発明の
糖蛋白質の糖鎖伸長に携わるタンパクをいうが、前述す
る当該タンパクと同一の機能を有している限り、ここで
いう機能産物に包含される。ここで「機能」とは、本発
明の糖鎖伸長タンパクが有する糖鎖合成・伸長に関する
機能(活性)、具体的には、「少なくともコア糖鎖にα
−1,6結合マンノースを転移する」活性(本明細書に
おいて、「糖鎖伸長活性」という。)を意味する。また
「機能産物の産生が少なくとも抑制」とは、発現せず本
発明の天然型糖鎖伸長DNAがコードするタンパクを全
く産生しない場合のみならず、発現しても得られる産物
が本発明の天然型糖鎖伸長DNAによってコードされる
機能産物と同一でなくその機能が減弱される場合(即
ち、産物が、天然型糖鎖伸長DNAによってコードされ
る機能産物が有する糖鎖伸長活性を全く有しない場合お
よび天然型糖鎖伸長DNAによってコードされる機能産
物が有する糖鎖伸長活性に比して低い活性を有する場
合)をも含めて意味するものである。
【0027】従って、DNAの修飾の態様は、遺伝子の
発現を不能ならしめるもの、または修飾された糖鎖伸長
DNAの発現・生成物が、天然型糖鎖伸長DNAの生成
物が本来有する糖鎖伸長活性を全く有しないか、有して
いても天然型糖鎖伸長DNAの生成物の糖鎖伸長活性に
比して減弱せしめてなるようなものであれば、特に制限
されない。具体的には、天然型糖鎖伸長DNAの塩基配
列中の少なくとも一つのヌクレオチドが欠失されている
かもしくは配列中に少なくとも一つのヌクレオチドが挿
入される態様の修飾や、天然型糖鎖伸長DNAの塩基配
列中の少なくとも一つのヌクレオチドが置換される態様
の修飾が例示される。さらに、天然型糖鎖伸長DNAの
塩基配列に少なくとも一つのヌクレオチドが付加される
ことも修飾の態様に含まれる。かかる修飾により、読み
枠がずれ、あるいは塩基配列が改変されるため、発現さ
れないか、発現されても得られる生成物の機能が、天然
型DNA由来の生成物の機能と異なるものとなる。
【0028】好適な修飾方法としては、天然型糖鎖伸長
DNAのコード領域内に形質転換のマーカー遺伝子を挿
入する方法が挙げられる。これによると、天然型糖鎖伸
長DNAを破壊することができるとともに、導入された
形質転換のマーカー遺伝子を指標として、該修飾型糖鎖
伸長DNAを有する変異体を容易にスクリーニングする
ことができるという利点がある。また、形質転換マーカ
ー遺伝子に加えて、産生しようとする糖蛋白質の遺伝子
を挿入することもできる。これによると、該糖鎖伸長D
NAの修飾と産生しようとする糖蛋白質の発現が同時に
一度の操作で行うことができる。
【0029】用いられる形質転換マーカー遺伝子として
は、P.pastorisまたはパン酵母のHIS4遺伝子、AR
G4遺伝子、URA3遺伝子、SUC2遺伝子、G41
8耐性遺伝子等が例示される。好ましくは、HIS4遺
伝子である。また、糖蛋白質の遺伝子としては、製造し
ようとする所望の糖蛋白質のDNAであれば特に制限さ
れないが、具体的には可溶性高親和性IgE受容体α鎖
(sFcεRIα、特開平6−169776号公報)、
インターフェロンα(特開昭61−185189号公
報)、ウロキナーゼ(特開昭60−180591号公
報)、キマーゼ〔Caughey,G.H., et al.,J.Biol.Chem.
266,12956(1991) 〕、尿性トリプシンインヒビター
〔Kaumeyer,J.F., et al. ,Nucleic Acids Res. 14,78
39(1986) 〕、IGF結合蛋白質(IGF1BP3、特
表平3−505397号公報)などが例示される。
【0030】(4)修飾ピキア属酵母株 本発明の修飾ピキア属酵母株は、前述の修飾糖鎖伸長D
NAを有することに基づいて、天然型ピキア属酵母株に
比して糖鎖伸長能が抑制されてなるピキア属酵母株であ
る。すなわち、天然型糖鎖伸長DNAの代わりに上述の
修飾型糖鎖伸長DNAを有するピキア属酵母であり、天
然型糖鎖伸長DNAによってコードされる機能産物の活
性が減弱されるか、または活性が発現されない。
【0031】このような修飾ピキア属酵母株は、種々の
方法により調製することができる。例えば、天然型ピキ
ア属酵母中の天然型糖鎖伸長DNAの修飾、または天然
型ピキア属酵母株に無作為的な変異を起こさせ、天然型
ピキア属酵母株に比して糖鎖伸長活性が抑制されてなる
突然変異体を選択する方法が挙げられる。天然型ピキア
属酵母中の天然型糖鎖伸長DNAの修飾による方法が好
ましく用いられる。天然型糖鎖伸長DNAの修飾によ
り、修飾ピキア属酵母株を作成する方法は、具体的には
天然型糖鎖伸長DNAの特定座位において形質導入する
DNAを部位特異的組み込み法により導入することによ
り実施される。形質導入したDNAは、宿主の内在性の
天然型DNAに置き換わることにより組み込まれる。酵
母宿主の標的座位内への形質導入DNAの導入に都合の
よい方法は、標的遺伝子DNA断片の内部を欠落、ある
いは選択マーカー遺伝子DNAや異種遺伝子発現DNA
断片を挿入した直鎖状DNA断片を作製することであ
る。これにより形質転換によって、その発現生成物が糖
鎖伸長活性に影響を与えるDNAの特定部位での相同的
組換えを起こすように方向付けられる。
【0032】天然型ピキア属酵母を形質転換する方法な
らびに当該酵母細胞の培養方法は、当該分野で採用され
る通常の方法を用いることができる。例えば、形質転換
方法としては、スフェロプラスト方法〔Creggh et al.,
Mol.Cell.Biol.,5,3376 (1985) 、米国特許第4,879,23
1 号〕、塩化リチウム法〔Ito et al., Agric.Biol.Che
m.,48,341 (1984)、欧州特許出願第312,934 号、米国特
許第4,929,535 号〕等が用いられる。
【0033】形質転換に用いられる天然型ピキア属酵母
由来の宿主細胞は、特に制限されないが、好ましくは唯
一の炭素源およびエネルギー源としてメタノールを効率
よく利用できるメタノール資化性酵母(methylotrophi
c)酵母である。適切なメタノール資化性酵母として
は、具体的には栄養要求性P.pastoris GTS115株
(NRRL Y−15851),P.pastoris GS19
0株(NRRL Y−18014),P.pastoris PP
F1株(NRRL Y−18017)、野生型P.pastor
is株(NRRL Y−11430、NRRL Y−11
431)等が例示される。
【0034】また、さらに好ましくは、少なくとも一つ
の独立栄養性マーカー遺伝子が欠失した株であり、例え
ばHIS4欠失P.pastoris GS115株(ATCC2
0864)、ARG4欠失P.pastoris GS190株,
HIS4/URA3欠失P.pastoris GS4−2株,H
IS4/URA4欠失P.pastoris PPF1株(NRR
L Y−18017:米国特許第4,812,405 号参照)等
が挙げられる。このように宿主細胞が少なくとも一つの
独立栄養性マーカー遺伝子が欠失した株である場合は、
形質導入するDNAとして、宿主細胞に欠失している独
立栄養性マーカー遺伝子を有するものを用いることが好
ましい。かかる方法によると、形質導入するDNAが取
り込まれて糖鎖伸長DNAが修飾された形質転換体(修
飾ピキア属酵母株)を迅速かつ簡便に同定、選択するこ
とができる点で有用である。
【0035】当該修飾ピキア属酵母株は、さらに天然培
地〔例えば、YPD培地(1%イーストエキストラク
ト,2%ペプトン,2%グルコース),YPM培地(1
%イーストエキストラクト,2%ペプトン,2%メタノ
ール)等〕などの栄養条件下で天然型ピキア属酵母株と
同等の増殖能力を保持しているという特徴を有する。こ
のことは、糖鎖伸長DNAの修飾の有無は、栄養条件下
ではピキア属酵母の生育に影響を与えないことを意味す
る。従って、本発明の修飾ピキア属酵母株は、医薬上有
用な糖蛋白質を産生する優れた産生株またはそのような
産生株を作成するための宿主となる。すなわち、当該酵
母は天然型ピキア属酵母株に比して宿主細胞に由来する
糖鎖伸長能が減弱もしくは消失しているため、哺乳動物
細胞、なかんずくはヒトに由来する細胞が産生する糖蛋
白質と同一または類似の糖鎖構造を有する糖蛋白質を産
生することができる。
【0036】上述の哺乳動物細胞、なかんずくはヒトに
由来する細胞が産生する糖蛋白質と同一または類似の糖
鎖構造を有する糖蛋白質としては、蛋白質分子上に糖鎖
構造を有する糖蛋白質であれば特に制限されないが、好
ましくは医薬上有用な生理活性蛋白質、具体的には、可
溶性高親和性IgE受容体α鎖(sFcεRIα)、表
皮増殖因子(EGF)、成長ホルモン放出因子(GR
F)、IGF1結合蛋白質3(IGF1BP3)、プロ
ウロキナーゼ・アネキシンV融合蛋白質、キマーゼ、尿
性トリプシンインヒビターなどが例示される。
【0037】糖蛋白質産生のために有用な発現系は、種
々の方法により作製することができる。例えば、上述し
た修飾ピキア属酵母株に糖蛋白質をコードするDNAを
導入する方法、天然型糖鎖伸長DNAの塩基配列に形質
転換マーカー遺伝子とともに糖蛋白質をコードするDN
Aを挿入したDNAを用いて天然型ピキア属酵母を形質
転換する方法、糖蛋白質をコードするDNAを有する組
換えピキア属酵母株が有する天然型糖鎖伸長DNAを後
発的に、本発明の修飾糖鎖伸長DNAの態様に変異せし
める方法、または、天然型ピキア属酵母株を上記の修飾
糖鎖伸長DNAおよび糖蛋白質をコードするDNAで同
時に形質転換する方法等が挙げられる。
【0038】組換え糖蛋白質発現系のピキア属酵母は、
転写の読み枠の方向に、少なくとも、プロモーター領
域、実質的に所望の糖蛋白質をコードするDNA及び
転写ターミネーター領域を有するものである。これら
のDNAは、所望の糖蛋白質をコードするDNAがRN
Aに転写されるように、お互いに機能するように関連し
て配列される。
【0039】プロモーターとしては、P.pastorisのAO
X1プロモーター(プライマリーアルコールオキシダー
ゼ遺伝子のためのプロモーター)、P.pastorisのAOX
2プロモーター(セカンダリー アルコールオキシダー
ゼ遺伝子のためのプロモーター)、P.pastorisのDAS
プロモーター(ジヒドロキシアセトン シンターゼ遺伝
子のためのプロモーター)、P.pastorisのP40プロモ
ーター(P40遺伝子のためのプロモーター)、P.past
orisのアルデヒド デヒドロゲナーゼ遺伝子のためのプ
ロモーターまたはP.pastorisの葉酸デヒドロゲナーゼ遺
伝子のためのプロモーターなどが挙げられる。好ましく
は、P.pastorisのAOX1プロモーター(Ellis et a
l., Mol.Cell.Biol.,5,111(1985)、米国特許第4,855,23
1 号など) であり、より好ましくは、発現効率が向上す
るように修飾された変異型AOX2プロモーター(Ohi,
H et al., Mol.Gen.Genet., 243, 489-499, 1994年、特
開平4−299984号公報)である。
【0040】なお、実質的に所望の糖蛋白質をコードす
るDNAの前に分泌シグナル配列をコードするDNAを
有していてよい。かかるDNAを有する組換え糖蛋白質
発現系によれば、糖蛋白質が宿主細胞外に分泌産生され
るため、所望の糖蛋白質を容易に単離精製することがで
きる。分泌シグナル配列をコードしているDNAとして
は、糖蛋白質に関連した天然の分泌シグナル配列をコー
ドするDNA、パン酵母α−接合因子(αMF)シグナ
ル配列をコードしているDNA(プロセッシング部位を
コードしているDNA配列を含む、Lys−Arg)、
ウシリゾチームCシグナル配列のようなメタノール資化
性酵母細胞で機能するシグナル配列をコードするDNA
等が挙げられる。
【0041】本発明で用いられる転写ターミネーター
は、プロモーターからの転写に対して転写終結信号を提
供するサブセグメントを有するものであればよく、プロ
モーター源の遺伝子と同じもしくは異なるものであって
もよく、また糖蛋白質をコードする遺伝子から取得され
るものであってもよい。
【0042】本発明の発現系は、上記のDNA配列に加
えてさらに選択マーカー遺伝子を含んでいてもよい。用
いられる選択マーカー遺伝子としては、HIS4,AR
G4,URA3,パン酵母SUC2,G418耐性遺伝
子等が挙げられる。
【0043】所望の表現型に形質転換された修飾ピキア
属酵母株は、当該分野で通常用いられる方法で培養する
ことにより、糖蛋白質を産生することができる。用いら
れる培地には特に制限はなく、通常の天然培地(YPD
培地,YPM培地)等が挙げられる。培養温度は、ピキ
ア属酵母宿主細胞の増殖および所望の糖蛋白質の産生に
適した温度であることが好ましく、約20〜30℃、好
ましくは約23〜25℃である。培地のpHも、宿主細
胞の増殖および所望の糖蛋白質の産生に適したpHを適
宜採用することができる。さらに、必要により通気や攪
拌を加えることができる。培養後、培養上清を回収し、
当該上清から自体公知の方法、例えば分画法、イオン交
換,ゲル濾過,疎水相互作用クロマトグラフィーまたは
アフィニティカラムクロマトグラフィー等により所望の
異種蛋白質を精製取得することできる。
【0044】
【発明の効果】本発明は、ピキア属酵母に由来する糖蛋
白質の糖鎖伸長に携わるタンパクおよびその遺伝子を初
めて提供するものである。当該糖鎖伸長に携わるタンパ
クおよびその遺伝子の提供は、ピキア属酵母における糖
蛋白質の糖鎖の結合・伸長の機序を解明するための基礎
となり得る点で有用である。また当該遺伝子の解明は、
ピキア属酵母を宿主として、医薬上有用な生理活性蛋白
質と同一もしくは類似の糖蛋白質を発現・産生させるた
めに、遺伝子レベルでピキア属酵母が本来有する糖鎖伸
長能を改変する方法の提供にもつながる。また、本発明
の修飾ピキア酵母株は、天然型ピキア酵母株と同等の増
殖能力を有し、かつ天然型ピキア酵母株に比して糖鎖伸
長能が減弱もしくは消失してなるものである。よって、
本発明の修飾ピキア酵母株を宿主とする発現系によれ
ば、酵母と哺乳類細胞とで共通するERコア糖鎖と同一
もしくは類似の糖鎖構造を有する医薬上有用な糖蛋白質
を調製することができる。従って、本発明の修飾ピキア
属酵母株は、糖蛋白質産生用の産生株またはそのような
産生株を作成するための宿主として有用である。
【0045】
【実施例】以下、実施例および参考例に基づいて本発明
をより詳細に説明する。しかし、本発明はこれによって
なんら限定されるものではない。本発明の実施例で用い
るプラスミド,制限酵素等の酵素,T4DNAリガーゼ
及び他の物質は市販のものであり、常法に従って使用す
ることできる。DNAのクローニング,塩基配列の決
定,宿主細胞の形質転換,形質転換細胞の培養,得られ
る培養物からの酵素の採取,精製等に用いられた操作に
ついても当業者によく知られているものであるか、文献
により知ることのできるものである。
【0046】実施例1 ピキア属酵母由来の糖鎖伸長タ
ンパクの遺伝子の取得 パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来糖鎖伸長遺
伝子OCH1をPCR法で増幅してプローブとなし、ピ
キア属酵母の染色体遺伝子をサザン解析して、ピキア属
酵母由来の糖鎖伸長に関わるタンパクをコードするDN
Aを探索した。
【0047】(1)PCR法によるパン酵母のOCH1
遺伝子の増幅、取得 パン酵母由来糖鎖伸長遺伝子OCH1をクローニングす
るため、文献〔The EMBO Journal vol.11 no.7 p2511-2
519 (1992): p2513, Fig.2〕に開示のDNA配列を基
に、その蛋白翻訳領域の両末端DNAに相補的な配列に
HindIII認識部位を付与したN末端プライマー:
5’−CGAAGCTTATGTCTAGGAAGTT
GTCCCACCTG−3’、及びC末側プライマー:
5’−CGAAGCTTATTTATGACCTGCA
TTTTTATCAG−3’(PCR増幅用プライマ
ー)をDNA合成装置(ABI社製、モデル392DN
A/RNAシンセサイザー)を用いて化学合成した。当
該プライマーを用いて、常法(Sherman, F., Fink,G.R.
and Hicks, J.B. (1986) Laboratory course manual f
or methods in yeast genetics, Cold Spring Harbor L
aboratory, Cold Spring Harbor, New York)に従って調
製したパン酵母 AH22株 (a, len2, his4, can1)(Hinn
en, A. et al(1978) Proc. Natl. SciUSA 75, p.1929
)由来染色体DNAを鋳型として、PCR反応(94
℃で1分間、50℃で2分間、72℃で2分間/25サ
イクル)〔DNA Thermal Cycler Model PJ2000 、Perkin
-Elmer社〕を行った。増幅されたDNA断片についてア
ガロースゲル電気泳動した結果、ゲル上で明瞭な単一バ
ンドが観察された。また、増幅されたDNA断片は設定
したプライマーから予想される大きさ(1458 bp)を示し
た。
【0048】(2)パン酵母由来OCH1遺伝子のサブ
クローニング (1)で得られたPCR増幅断片をHindIII で消化
後、pUC19のHindIII 部位にサブクローニング
した。作製されたプラスミド(pKM049、図3)を
数種類の制限酵素(BamHI,EcoRI,Kpn
I)で消化し、その切断パターンを発表されているOC
H1遺伝子の切断部位〔EMBO J. 11, 7 p2511-2519 (19
92): p2512, Fig.1 及び p2513, Fig.2 〕と比較したと
ころ、完全に一致していた。
【0049】(3)OCH1遺伝子をプローブとするピ
キア属酵母の染色体遺伝子のサザンハイブリダイゼーシ
ョン ピキア属酵母(Pichia pastoris GTS115株)をY
PD培地(1% イーストエキストラクト, 2% ペプト
ン, 2% グルコース) で、30℃、3日間培養し、Sher
man らの方法(Sherman, F., Fink,G.R. and Hicks, J.
B. (1986) Laboratory course manual for methods in
yeast genetics, Cold Spring Harbor Laboratory, Col
d Spring Harbor, New York)に従って染色体DNAを調
製した。得られた染色体DNAを様々な態様の制限酵素
処理を行った後アガロースゲル電気泳動し、DNA断片
をナイロンメンブレン(Hybond-N、アマシャム社製) に
トランスファーした。(1)で得られたパン酵母由来O
CH1遺伝子HindIII 断片を「DIG−ELISA
標識キット」(ベーリンガーマンハイム社製)を用いて
標識してプローブとし、常法によりサザンハイブリダイ
ゼーションを行い(Sambrook, J., Fritsh, e.f. and M
aniatis, T. (1989) Molecular cloning: A laboratory
manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Sprin
g Harbor, New15) 、パン酵母由来OCH1遺伝子と
相同性のある遺伝子が存在するかどうかの検討を行っ
た。
【0050】パン酵母由来OCH1遺伝子とピキア属酵
母の染色体DNAとの相同性については不明であるた
め、ハイブリダイゼーションの温度(65℃,55℃,
45℃)及び洗浄条件(塩濃度:0.2〜0.5×SS
C、温度:室温〜42℃)について様々検討した。その
結果、ハイブリダイゼーションを55℃で一夜行い、2
×SSC,室温,30分,2回洗浄後、さらに0.5×
SSC,42℃,30分,2回洗浄した場合に、EcoRI
消化物に対し約5kb の明瞭なバンドが観察された。ハイ
ブリダイゼーションの温度及び洗浄条件を上記の如く緩
やかにすることにより、パン酵母由来のOCH1遺伝子
と相同性のある遺伝子がピキア属酵母の染色体上に存在
することが示唆された。
【0051】(4)λgt10ライブラリーの作製 (3)の結果に基づいて、ピキア属酵母の染色体DNA
のEcoRI断片(約5kb)のクローニングを行っ
た。まず、約150μgのP.pastoris GTS115株
由来染色体DNA(NRRL寄託番号Y−15851)
を200酵素単位のEcoRIで一夜消化した後、0.
8%のアガロースゲル電気泳動により約4.5〜6kb
のDNAを分離回収した。回収したDNAの一部を1μ
gのλgt10arm(「lambda gt10 vector digeste
d with EcoRI and dephosphorylated 」、ストラタジー
ン社製)とリゲーションし、GigapackII Gold Packag
ing Extract (ストラタジーン社製)を用いてパッケー
ジングを行った。その結果、スクリーニングに必要な数
のプラークが得られた。
【0052】(5)プラークハイブリダイゼーション (4)で作製した組換λファージライブラリーを80mm径
の1プレートあたり200 〜300 プラークになるようにタ
イトレーションを行い、ナイロンメンブレンフィルター
(Hybond-N、アマシャム社製) にトランスファーした。
これらのフィルターを10枚作製し(全スクリーニング
数;約3000プラーク)、前記のパン酵母由来OCH1遺
伝子断片をプローブにしてハイブリダイゼーションを行
った。その結果、鮮明な14個のポジティブプラークが
検出された。
【0053】(6)λDNAの精製 (5)で検出されたポジティブプラークのうち、任意に
10プラークを選び、single plaque isolation の後、
Sephaglas TM PhagePrep Kit(ファルマシア社製)を用
いてλDNAを抽出、精製した。精製した各DNAを数
種の制限酵素(EcoRI,BglII,HindIII,
XhoI)の消化パターンをアガロースゲル電気泳動で
比較したところ、10クローン中8クローンまでが同一
の挿入DNA(約5kb)を有していることが分かっ
た。
【0054】(7)サブクローニング そのうちの1クローンについて、挿入されたEcoRI
断片をpUC19のEcoRI部位にサブクローニング
して、pKM50(図4 )を作製した。
【0055】(8)pKM50に挿入されたDNA断片
の塩基配列およびアミノ酸配列の決定 pKM50に挿入されているピキア属酵母由来のEco
RI断片の塩基配列を決定した。pKM50を用いてク
ローニングした染色体DNA断片の制限酵素地図を作製
し、さらにいくつかの制限酵素を用いてより詳細にサザ
ーン解析した結果、約2.5kb のBglII断片中にパン酵
母OCH1遺伝子との相同領域が存在することが示され
た。そこで、この約2.5kbのBglII断片のDNA
塩基配列を決定した。具体的には、挿入断片を数種の制
限酵素を用いて部分断片にしてpUC19にサブクロー
ニングし、それらのDNA塩基配列をM13〜40プラ
イマーおよび Reverse primer(ファルマシアLKBバイ
テクノロジー)を用いて、DNAシークエンサー(A.
L.F.DNAシークエンサー、ファルマシアLKBバ
イテクノロジー)により決定した。
【0056】pKM50に挿入されたパン酵母OCH1
遺伝子と相同性を示す領域を含む遺伝子断片〔BglII
〜SalI断片(約3.0kb)〕の塩基配列を決定し
たところ、404アミノ酸からなる Open Reading Fram
e (ORF) (図4、斜線領域)が存在していた。BglII
〜SalI部位までの塩基配列(2858bp)及びOp
en Reading Frame 領域をアミノ酸に翻訳した配列を配
列表配列番号1に示す。なお、かかる領域にはアスパラ
ギン結合型糖鎖付加が生じる可能性部位(Asn−Xa
a−Ser/Thr)が2ヶ所存在していた。
【0057】次いで、ピキア属酵母由来の上記ORF領
域のアミノ酸配列とパン酵母由来OCH1遺伝子由来の
タンパクのアミノ酸配列とを比較した。その結果、上記
で決定したピキア属酵母由来のEcoRI断片(約5k
b)によってコードされるアミノ酸配列はパン酵母由来
OCH1遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と約
40%の相同性を有していた(図5)。また、該アミノ
酸配列をコードするDNAレベルでの相同性は、約55
%であった。図5中□で囲んで示したアスパラギン結合
型糖鎖付加部位については、1ヶ所のみ相同的な領域で
一致が見られた(本発明のピキア属酵母由来の糖鎖伸長
タンパクのAsn199 及びパン酵母OCH1蛋白のAs
203 )。アミノ酸配列から予想される分子量は、パン
酵母OCH1蛋白が55kDaであるのに対し、ピキア
属酵母由来の糖鎖伸長タンパクは46kDaであった。
【0058】次に、両タンパクの Hydrophobicity を比
較した。その結果、図6に示すように両者は非常によく
似たパターンを示した。このことから、ピキア属酵母か
ら得られたEcoRI断片は、ピキア属酵母由来のOC
H1遺伝子であることが示唆された。また、パン酵母O
CH1蛋白は、N末端付近に膜貫通領域(membrane spa
nning domain) と思われる疎水性領域が存在しているが
(Thr16〜Phe30)、ピキア属酵母由来の糖鎖伸長
タンパクではさらに長い疎水性領域が存在していた。
【0059】実施例2 糖鎖伸長DNA破壊株の作製 (1)ピキア属酵母由来の糖鎖伸長DNAの Genomic S
outhern Hybridization解析 実施例1でクローニングしたピキア属酵母由来の糖鎖伸
長DNAを破壊した菌株を作製する目的で、まず該DN
Aが染色体上で単一遺伝子であることを確認するための
Genomic Southern Hybridization 解析を行った。宿主
として用いたP.pastoris GTS115株の染色体をB
glII, EcoRI,SphI,XbaIの各制限酵素
で切断、アガロースゲル電気泳動後、ナイロンメンブラ
ンにブロットした。次にピキア属酵母由来の糖鎖伸長D
NAの蛋白翻訳領域をコードするDNA配列を含むDN
A断片(図4,pK50のHnidIII −HincII断
片約900bp,塩基配列表配列番号1記載の塩基番号
1488〜塩基番号2385の領域)をプローブとして、ハイブ
リダイゼーションを行った。結果を図7に示す。これか
ら分かるように、ピキア属酵母由来の糖鎖伸長DNAプ
ローブはいずれの制限酵素を用いた場合でも単一のバン
ドにしかハイブリダイズしなかった。以上の結果から、
ピキア属酵母由来の糖鎖伸長DNAは単一遺伝子である
ことがわかった。
【0060】(2)HIS4を選択マーカーとしたピキ
ア属酵母由来の糖鎖伸長DNA破壊株の作製 ピキア属酵母由来の糖鎖伸長DNAとその周辺の染色体
断片を含むプラスミドpKM50(図4参照)のAsu
IIおよびBalI部位を消化して平滑末端にし、その
間にHIS4遺伝子および可溶性高親和性IgE受容体
α鎖遺伝子(sFcεRIα)発現ユニットを挿入し
て、プラスミドpKM74(図8)を作成した。可溶性
高親和性IgE受容体α鎖遺伝子(sFcεRIα)発
現ユニットは、パン酵母SUC2遺伝子のシグナル配列
をsFcεRIα遺伝子〔Nucleic Acids Research, Vo
lume 16 Number 8, 3584 (1988) 参照〕の成熟型N末端
に付加し、P.pastoris AOX2遺伝子のプロモーター
領域およびP.pastoris AOX1遺伝子ターミネーター
領域を連結したDNA断片で、P.pastorisでヒト由来高
親和性IgE受容体の細胞外領域(172アミノ酸)を
分泌発現することができるものである。
【0061】該pKM74をSphI及びPstIで消
化し、P.pastoris GTS115株(his4) (NRRL
寄託番号Y−15851)を形質転換したところ、45
株の形質転換体(HIS4)が取得できた。そこで、こ
れらの形質転換株のうちいくつかを選び、以下の解析を
行った。
【0062】(3)GTS115/pKM74形質転換
株の解析 パン酵母OCH1遺伝子破壊株について、該株は高温耐
性を失っており、37℃で成育できないことが報告され
ている〔Nakayama,K., et al. EMBO J. 11, 2511 (199
2) 〕。そこで、(2)で得られた形質転換体について
温度感受性を調べた。YPDプレートを用いて45株に
ついて、25℃、30℃及び37℃での成育をそれぞれ
観察したところ、うち10株が37℃で成育できなかっ
た。一方で、形質転換株のうち任意に10株を選び、Ge
nomic Southern Hybridization解析を行ったところ、こ
のうちの2株(KM74−2及びKM74−5株)の糖
鎖伸長DNAが破壊されていた。この2株はいずれも3
7℃で成育ができず、温度感受性とGenomic Southern H
ybridization解析は一致していることが示された。
【0063】さらに形質転換株(KM74−2株)につ
いて、より詳細なGenomic SouthernHybridization解析
を行った(図9)。図9に示すKM45株は、pKM7
4のHIS4遺伝子および可溶性高親和性IgE受容体
α鎖遺伝子(sFcεRIα)発現ユニットDNA断片
を、P.pastoris GTS115his4株のhis4遺伝子座に
組み込ませた形質転換株で、sFcεRIα鎖蛋白を分
泌発現できるものである。GTS115株、OCH1遺
伝子野生株KM45株、OCH1遺伝子破壊株KM74
−2株について、染色体DNAをEcoRI及びBgl
IIで消化後、糖鎖伸長DNAの上流域(図9中、プロ
ーブ1:図4に示すpKM50 BglII−AsuII断
片 1256bp,塩基配列表配列番号1記載の塩基番
号2〜塩基番号1258)及び糖鎖伸長DNAの領域(図9
中、プローブ2:図4に示すpKM50,HindIII
−EcoT14I 断片 468bp,塩基配列表配列番
号1記載の塩基番号1488〜塩基番号1948)をプローブと
してGenomic Southern Hybridization解析を行い、KM
74−2株の糖鎖伸長DNAが、導入したpKM74遺
伝子断片により破壊されていることを確認した(図1
0、図11参照)。
【0064】実験例 ピキア属酵母の糖鎖伸長DNA破
壊株の産生するsFcεRIα鎖蛋白の解析 ピキア属酵母糖鎖伸長DNA破壊株の糖鎖付加を調べる
ため、糖鎖伸長DNA破壊株KM74−2およびKM7
4−5株と野生型株としてKM45株を3×YP+2%
のメタノール培地(3% イーストエキストラクト, 6%
バクトペプトン, 2% メタノール) で、25℃、4日間
培養後、培養上清よりIgEアフィニティーカラムによ
り、sFcεRIα鎖蛋白を精製した。精製した各sF
cεRIα鎖蛋白およびPNGaseF(Genzyme 社
製)でアスパラギン結合型糖鎖を除去したサンプルをS
DS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析した(図
12)。この結果、糖鎖伸長DNAが破壊されていない
KM45株では高分子量のsFcεRIα鎖蛋白が観察
される(図12、レーン1)のに対し、糖鎖伸長DNA
破壊株であるKM74−2及びKM74−5株由来のs
FcεRIα鎖蛋白では、糖鎖の伸長が抑制されたた
め、高分子量を示す蛋白分子種が消失していた(図1
2、レーン2,3)。さらに、これらの蛋白の糖をPN
GaseF(Genzyme 社製)で除去したところ、同じ分
子量を示すことから(図12、レーン4,5,6)、こ
の分子量分布の差は、糖鎖に起因することが確認され
た。以上の結果から、P.pastoris糖鎖伸長DNA破壊株
では糖鎖の伸長が抑制されていることが示唆された。
【0065】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:2858 配列の型:核酸 鎖の数:2 トポロジ─:直鎖状 配列の種類:genomic DNA 起源 生物名:P.pastoris 株名:GTS115 配列の特徴: 特徴を表す記号:CDS 存在位置:1027−2238 特徴を決定した方法:S,P 配列 AGATCTGCCT GACAGCCTTA AAGAGCCCGC TAAAAGACCC GGAAAACCGA GAGAACTCTG 60 GATTAGCAGT CTGAAAAAGA ATCTTCACTC TGTCTAGTGG AGCAATTAAT GTCTTAGCGG 120 CACTTCCTGC TACTCCGCCA GCTACTCCTG AATAGATCAC ATACTGCAAA GACTGCTTGT 180 CGATGACCTT GGGGTTATTT AGCTTCAAGG GCAATTTTTG GGACATTTTG GACACAGGAG 240 ACTCAGAAAC AGACACAGAG CGTTCTGAGT CCTGGTGCTC CTGACGTAGG CCTAGAACAG 300 GAATTATTGG CTTTATTTGT TTGTCCATTT CATAGGCTTG GGGTAATAGA TAGATGACAG 360 AGAAATAGAG AAGACCTAAT ATTTTTTGTT CATGGCAAAT CGCGGGTTCG CGGTCGGGTC 420 ACACACGGAG AAGTAATGAG AAGAGCTGGT AATCTGGGGT AAAAGGGTTC AAAAGAAGGT 480 CGCCTGGTAG GGATGCAATA CAAGGTTGTC TTGGAGTTTA CATTGACCAG ATGATTTGGC 540 TTTTTCTCTG TTCAATTCAC ATTTTTCAGC GAGAATCGGA TTGACGGAGA AATGGCGGGG 600 TGTGGGGTGG ATAGATGGCA GAAATGCTCG CAATCACCGC GAAAGAAAGA CTTTATGGAA 660 TAGAACTACT GGGTGGTGTA AGGATTACAT AGCTAGTCCA ATGGAGTCCG TTGGAAAGGT 720 AAGAAGAAGC TAAAACCGGC TAAGTAACTA GGGAAGAATG ATCAGACTTT GATTTGATGA 780 GGTCTGAAAA TACTCTGCTG CTTTTTCAGT TGCTTTTTCC CTGCAACCTA TCATTTTCCT 840 TTTCATAAGC CTGCCTTTTC TGTTTTCACT TATATGAGTT CCGCCGAGAC TTCCCCAAAT 900 TCTCTCCTGG AACATTCTCT ATCGCTCTCC TTCCAAGTTG CGCCCCCTGG CACTGCCTAG 960 TAATATTACC ACGCGACTTA TATTCAGTTC CACAATTTCC AGTGTTCGTA GCAAATATCA 1020 TCAGCC ATG GCG AAG GCA GAT GGC AGT TTG CTC TAC TAT AAT CCT CAC AAT 1071 Met Ala Lys Ala Asp Gly Ser Leu Leu Tyr Tyr Asn Pro His Asn 1 5 10 15 CCA CCC AGA AGG TAT TAC TTC TAC ATG GCT ATA TTC GCC GTT TCT GTC 1119 Pro Pro Arg Arg Tyr Tyr Phe Tyr Met Ala Ile Phe Ala Val Ser Val 20 25 30 ATT TGC GTT TTG TAC GGA CCC TCA CAA CAA TTA TCA TCT CCA AAA ATA 1167 Ile Cys Val Leu Tyr Gly Pro Ser Gln Gln Leu Ser Ser Pro Lys Ile 35 40 45 GAC TAT GAT CCA TTG ACG CTC CGA TCA CTT GAT TTG AAG ACT TTG GAA 1215 Asp Tyr Asp Pro Leu Thr Leu Arg Ser Leu Asp Leu Lys Thr Leu Glu 50 55 60 GCT CCT TCA CAG TTG AGT CCA GGC ACC GTA GAA GAT AAT CTT CGA AGA 1263 Ala Pro Ser Gln Leu Ser Pro Gly Thr Val Glu Asp Asn Leu Arg Arg 65 70 75 CAA TTG GAG TTT CAT TTT CCT TAC CGC AGT TAC GAA CCT TTT CCC CAA 1311 Gln Leu Glu Phe His Phe Pro Tyr Arg Ser Tyr Glu Pro Phe Pro Gln 80 85 90 95 CAT ATT TGG CAA ACG TGG AAA GTT TCT CCC TCT GAT AGT TCC TTT CCG 1359 His Ile Trp Gln Thr Trp Lys Val Ser Pro Ser Asp Ser Ser Phe Pro 100 105 110 AAA AAC TTC AAA GAC TTA GGT GAA AGT TGG CTG CAA AGG TCC CCA AAT 1407 Lys Asn Phe Lys Asp Leu Gly Glu Ser Trp Leu Gln Arg Ser Pro Asn 115 120 125 TAT GAT CAT TTT GTG ATA CCC GAT GAT GCA GCA TGG GAA CTT ATT CAC 1455 Tyr Asp His Phe Val Ile Pro Asp Asp Ala Ala Trp Glu Leu Ile His 130 135 140 CAT GAA TAC GAA CGT GTA CCA GAA GTC TTG GAA GCT TTC CAC CTG CTA 1503 His Glu Tyr Glu Arg Val Pro Glu Val Leu Glu Ala Phe His Leu Leu 145 150 155 CCA GAG CCC ATT CTA AAG GCC GAT TTT TTC AGG TAT TTG ATT CTT TTT 1551 Pro Glu Pro Ile Leu Lys Ala Asp Phe Phe Arg Tyr Leu Ile Leu Phe 160 165 170 175 GCC CGT GGA GGA CTG TAT GCT GAC ATG GAC ACT ATG TTA TTA AAA CCA 1599 Ala Arg Gly Gly Leu Tyr Ala Asp Met Asp Thr Met Leu Leu Lys Pro 180 185 190 ATA GAA TCG TGG CTG ACT TTC AAT GAA ACT ATT GGT GGA GTA AAA AAC 1647 Ile Glu Ser Trp Leu Thr Phe Asn Glu Thr Ile Gly Gly Val Lys Asn 195 200 205 AAT GCT GGG TTG GTC ATT GGT ATT GAG GCT GAT CCT GAT AGA CCT GAT 1695 Asn Ala Gly Leu Val Ile Gly Ile Glu Ala Asp Pro Asp Arg Pro Asp 210 215 220 TGG CAC GAC TGG TAT GCT AGA AGG ATA CAA TTT TGC CAA TGG GCA ATT 1743 Trp His Asp Trp Tyr Ala Arg Arg Ile Gln Phe Cys Gln Trp Ala Ile 225 230 235 CAG TCC AAA CGA GGA CAC CCA GCA CTG CGT GAA CTG ATT GTA AGA GTT 1791 Gln Ser Lys Arg Gly His Pro Ala Leu Arg Glu Leu Ile Val Arg Val 240 245 250 255 GTC AGC ACG ACT TTA CGG AAA GAG AAA AGC GGT TAC TTG AAC ATG GTG 1839 Val Ser Thr Thr Leu Arg Lys Glu Lys Ser Gly Tyr Leu Asn Met Val 260 265 270 GAA GGA AAG GAT CGT GGA AGT GAT GTG ATG GAC TGG ACG GGT CCA GGA 1887 Glu Gly Lys Asp Arg Gly Ser Asp Val Met Asp Trp Thr Gly Pro Gly 275 280 285 ATA TTT ACA GAC ACT CTA TTT GAT TAT ATG ACT AAT GTC AAT ACA ACA 1935 Ile Phe Thr Asp Thr Leu Phe Asp Tyr Met Thr Asn Val Asn Thr Thr 290 295 300 GGC CAC TCA GGC CAA GGA ATT GGA GCT GGC TCA GCG TAT TAC AAT GCC 1983 Gly His Ser Gly Gln Gly Ile Gly Ala Gly Ser Ala Tyr Tyr Asn Ala 305 310 315 TTA TCG TTG GAA GAA CGT GAT GCC CTC TCT GCC CGC CCG AAC GGA GAG 2031 Leu Ser Leu Glu Glu Arg Asp Ala Leu Ser Ala Arg Pro Asn Gly Glu 320 325 330 335 ATG TTA AAA GAG AAA GTC CCA GGT AAA TAT GCA CAG CAG GTT GTT TTA 2079 Met Leu Lys Glu Lys Val Pro Gly Lys Tyr Ala Gln Gln Val Val Leu 340 345 350 TGG GAA CAA TTT ACC AAC CTG CGC TCC CCC AAA TTA ATC GAC GAT ATT 2127 Trp Glu Gln Phe Thr Asn Leu Arg Ser Pro Lys Leu Ile Asp Asp Ile 355 360 365 CTT ATT CTT CCG ATC ACC AGC TTC AGT CCA GGG ATT GGC CAC AGT GGA 2175 Leu Ile Leu Pro Ile Thr Ser Phe Ser Pro Gly Ile Gly His Ser Gly 370 375 380 GCT GGA GAT TTG AAC CAT CAC CTT GCA TAT ATT AGG CAT ACA TTT GAA 2223 Ala Gly Asp Leu Asn His His Leu Ala Tyr Ile Arg His Thr Phe Glu 385 390 395 GGA AGT TGG AAG GAC TAA AGAAAGCTAG AGTAAAATAG ATATAGCGAG 2271 Gly Ser Trp Lys Asp *** 400 ATTAGAGAAT GAATACCTTC TTCTAAGCGA TCGTCCGTCA TCATAGAATA TCATGGACTG 2331 TATAGTTTTT TTTTTGTACA TATAATGATT AAACGGTCAT CCAACATCTC GTTGACAGAT 2391 CTCTCAGTAC GCGAAATCCC TGACTATCAA AGCAAGAACC GATGAAGAAA AAAACAACAG 2451 TAACCCAAAC ACCACAACAA ACACTTTATC TTCTCCCCCC CAACACCAAT CATCAAAGAG 2511 ATGTCGGAAC ACAAACACCA AGAAGCAAAA ACTAACCCCA TATAAAAACA TCCTGGTAGA 2571 TAATGCTGGT AACCCGCTCT CCTTCCATAT TCTGGGCTAC TTCACGAAGT CTGACCGGTC 2631 TCAGTTGATC AACATGATCC TCGAAATGGG TGGCAAGCAT CGTTCCAGAC CTGCCTCCTC 2691 TGGTAGATGG AGTGTTGTTT TTGACAGGGG ATTACAAGTC TATTGATGAA GATACCCTAA 2751 AGCAACTGGG GGACGTTCCA ATATACAGAG ACTCCTTCAT CTACCAGTGT TTTGTGCACA 2811 AGACATCTCT TCCCATTGAC ACTTTCCGAA TTGACAAGAA CGTCGAC 2858
【図面の簡単な説明】
【図1】エリスロポエチンにおけるAsn結合型糖鎖の
機能分担モデルを示す図である。図中、Manはマンノ
ース、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンおよび
Fucはフコースを意味する。
【図2】パン酵母における糖蛋白質の糖鎖構造モデルを
示す図である。図中、Mはマンノース、2はα−1,2
結合、3はα−1,3結合、6はα−1,6結合および
4はβ−1,4結合を意味する。また、N−linke
d糖鎖中の「Ma」は小胞体(ER)で合成されるマン
ノース糖を意味する。
【図3】パン酵母由来OCH1遺伝子がサブクローニン
グされたプラスミドpKM049を示す図である。
【図4】pKM50に挿入された遺伝子断片(パン酵母
OCH1遺伝子と相同性を有するP.pastoris染色体DN
A断片)の制限酵素地図を示す。斜線領域は、決定した
塩基配列より予想されるOCH1遺伝子翻訳領域を示
す。
【図5】パン酵母OCH1遺伝子がコードするアミノ酸
配列(上段)とP.pastoris糖鎖伸長DNAがコードする
アミノ酸配列(下段)のホモロジーを示す図である。□
は、アスパラギン糖鎖付加部位を示す。
【図6】パン酵母由来のOCH1タンパク(A)とP.pa
storis由来の糖鎖伸長タンパク(B)の Hydrophobicit
y プロファイルを比較した図である。
【図7】ピキア属酵母の糖鎖伸長DNAをプローブとし
たGenomic Southern Hybridization解析を行った結果を
示す図面に代わる写真である。
【図8】P.pastoris糖鎖伸長DNA破壊プラスミド(p
KM74)の制限酵素地図を示す図である。
【図9】糖鎖伸長DNA破壊株KM74−2および野生
株GTS115,KM45の染色体DNAの糖鎖伸長遺
伝子座近傍の構造を示した図で、図中の下線はGenomicS
outhern Hybridization解析に用いたプローブの位置を
示した図である。なお、図中、EはEcoRIを、Bg
はBglIIを意味する。
【図10】糖鎖伸長DNA破壊株KM74−2および野
生株GTS115,KM45について図9で示したプロ
ーブ1を用いてGenomic Southern Hybridization解析を
行った結果を示す図面に代わる写真である。
【図11】糖鎖伸長DNA破壊株KM74−2および野
生株GTS115,KM45について図9で示したプロ
ーブ2を用いてGenomic Southern Hybridization解析を
行った結果を示す図面に代わる写真である。
【図12】P.pastoris糖鎖伸長DNA破壊株が産生する
sFcεRIα鎖蛋白についてSDS−PAGE解析を
行った電気泳動像を示す図面に代わる写真である。 1:sFcεRIα(KM45)、2:sFcεRIα
(KM74−2)、3:sFcεRIα(KM74−
5)、4:PNGaseF処理KM45−sFcεRI
α、5:PNGaseF処理KM74−2−sFcεR
Iα、6:PNGaseF処理KM74−5−sFcε
RIα
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:84) (C12P 21/02 C12R 1:84)

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的に下記に示されるアミノ酸配列を
    N末端領域に有することを特徴とするピキア属酵母に由
    来する、糖蛋白質の糖鎖伸長に携わるタンパク。 【化1】
  2. 【請求項2】 実質的に下記に示されるアミノ酸配列を
    有することを特徴とする請求項1記載のピキア属酵母に
    由来する、糖蛋白質の糖鎖伸長に携わるタンパク。 【化2】
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の糖蛋白質の糖
    鎖伸長に携わるタンパクをコードする塩基配列を有する
    DNA。
  4. 【請求項4】 下記に示される塩基配列を有することを
    特徴とする請求項3記載の糖蛋白質の糖鎖伸長に携わる
    タンパクをコードするDNA。 【化3】
  5. 【請求項5】 請求項3または4記載のDNAの一部
    が、該DNAによってコードされる機能産物の産生が少
    なくとも抑制されるように修飾されてなるDNA。
  6. 【請求項6】 修飾の態様が、請求項3または4記載の
    糖蛋白質の糖鎖伸長に携わるタンパクをコードするDN
    Aの塩基配列への形質転換マーカー遺伝子の挿入である
    請求項5記載のDNA。
  7. 【請求項7】 形質転換マーカー遺伝子が、パン酵母由
    来SUC2遺伝子、ピキア属酵母由来のHIS4遺伝
    子、ARG4遺伝子、URA3遺伝子およびG418耐
    性遺伝子からなる群から選択されるものであることを特
    徴とする請求項6記載のDNA。
  8. 【請求項8】 請求項5〜7のいずれかのDNAを有す
    ることにより、天然型ピキア属酵母株に比して糖蛋白質
    の糖鎖伸長能が抑制されてなる修飾ピキア属酵母株。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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