JPH09294463A - 植物の植え込み材料および植物栽培方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 自然環境を破壊せず、植え替え作業効率が高
く、取り扱う人間への健康上の問題も無く、植物の生育
も良い植物の植え込み材料および植物栽培方法。 【解決手段】 植物の植え込み材料１０は、イネ科植物
の植物体を主原料とするので、地中で腐食しても、何等
有害な物質を放出しないばかりか、イネ科植物の植物体
自体が、土壌を改良したり、堆肥になったりするので、
植物にとっても環境にとっても一層好ましい状態とな
る。したがって、苗１４，１６を植え込み材料のまま植
え付けることにより、植え付け作業の効率が高く、また
植え込んだ場所の土壌を改良することにもなり、更に堆
肥として養分を供給することになり、自然環境を一層良
好なものとする。また、取り扱う人間への健康上の問題
も存在しない等の優れた効果がある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、植物の植え込み材
料およびこの植物の植え込み材料を用いた植物栽培方法
に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、苗床で別途育苗した植物の苗を、
畑、庭あるいは鑑賞用の鉢に植え替える場合、苗の植え
傷みを軽減するために、育苗を、ポリエチレン等の柔軟
な育苗ポットや合成樹脂のスポンジ、ロックウール、ヘ
ゴ材あるいはピート製コンポストを用いて行い、植え替
え時には育苗ポットから根鉢を崩さないように取り出し
て植え付けたり、あるいはスポンジ等からなるコンポス
トの場合には、そのまま植え付けていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、前記育苗ポッ
トでは育苗ポットから根鉢（根と土との塊）を抜かなく
てはならないので、根の極めて弱いものではやはり植え
傷みが有る。また育苗するためには育苗ポットに培養土
を入れてそこに植物あるいはその種子を植え込まなくて
はならず、この作業が大変である。また育苗後の植え替
え時には根鉢の抜き取り作業が必要なので植え込み作業
効率が悪い。また、使えなくなった育苗ポットは産業廃
棄物となり、自然環境の破壊につながるおそれがある。

【０００４】前記コンポストの内、ヘゴ材やピート製の
ものは、そのまま植え込めて、かつ土壌に還元されるの
で、植え込み作業性も良く、また産業廃棄物ともならな
い。しかし、ピートは地中から掘り出す天然物であって
生産することができないことと、ピートには栄養分が無
く高い酸性なので、そのままで用いることはできず、栄
養分を添加したりｐＨ調整が必要となるために、コスト
的に問題がある。また自然環境の保護上もピートの採掘
は好ましくない。ヘゴ材も天然のヘゴを切り出すことに
なり自然破壊につながり、その使用は問題がある。

【０００５】また、合成樹脂製のスポンジやロックウー
ルのような腐食しないものは、最後には土中から取り除
いて産業廃棄物とならざるを得ない。またこのようなも
のは植物の生育上、他の材料に比較して好ましいものと
は言えなかった。更にロックウールなどは取り扱う人間
の健康上の問題を生じた。

【０００６】本発明は、自然環境を破壊せず、植え替え
作業効率が高く、取り扱う人間への健康上の問題も無
く、植物の生育も良い植物の植え込み材料および植物栽
培方法を目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段及び発明の効果】本発明の
植物の植え込み材料は、イネ科植物の植物体を主原料と
することを特徴とする。イネ科植物の植物体は、それ自
体を植え込み材料に採用した場合、植物の根の発育に有
害な成分を含まないばかりか、根の発育を促進する現象
も見られる。

【０００８】また、特に茎、根、果実序、果実序の軸、
葉柄等には多孔質組織が多く存在する。このように、多
孔質組織が存在すると植え込んだ植物の生育が、一層良
好となる。これは多孔質組織が水分の維持、空気中の酸
素の供給、あるいは根が老廃物として放出する有機酸等
を吸収しているためではないかと考えられる。しかも、
有害な成分や組織を有さないので、植え込まれた植物に
とって生育の障害とならないと考えられる。

【０００９】更に、本発明の植物の植え込み材料は、イ
ネ科植物の植物体を主原料とするので、地中で腐食して
も、何等有害な物質を放出しないばかりか、イネ科植物
の植物体自体が、土壌を改良したり、堆肥になったりす
るので、植物にとっても環境にとっても一層好ましい状
態となる。したがって、植え込み材料のまま植え付ける
ことにより、植え付け作業の効率が高くなり、また植え
込んだ場所の土壌を改良することになり、更に堆肥とし
て養分を供給することにもなり、自然環境を一層良好な
ものとする。また、取り扱う人間への健康上の問題も存
在しない。

【００１０】特に、イネ科植物が栽培植物であれば、自
然界から採取しなくても、栽培植物として廃棄される植
物体を利用することになり、一層自然保護につながる。
特に、イネ科の栽培植物としては、トウモロコシ、キビ
およびサトウキビを挙げることができ、これらのいずれ
か一つまたは複数を用いることができる。これらの植物
は、大量に栽培されており、その植物体は大量に安価に
利用でき、更に、それらの植物体はそのままでも比較的
大きなサイズをなしており、適当な形状に切削して植え
込み材料として用いることができる。

【００１１】所定形状としては、例えば円筒形や四角筒
形・六角筒形等の角筒形あるいは直方体や立方体が挙げ
られる。その大きさも、例えば直径あるいは幅が０．５
〜３０ｃｍ、高さ０．５〜３０ｃｍの形状にされる。特
に通常の菊等の草花の挿し木には、直径あるいは幅が１
〜３ｃｍ、高さ１〜３ｃｍの形状にされる。

【００１２】なお、所定形状に形成する場合、種子、挿
し穂あるいは苗の植え込み用孔部が形成されていれば、
植え込み材料への種播き、挿し木、植え付け作業が一層
容易となる。この植え込み用孔部は底のある凹状でも良
く、また貫通孔でも良いし、底に行くほど幅や直径が小
さくなる錐形の孔部でも良い。

【００１３】植え込み用孔部の直径としては、挿し木、
種子あるいは苗の大きさに適合させて、適宜形成される
が、例えば、通常の菊等の草花の挿し木には直径１〜３
ｍｍの植え込み用孔部が形成される。特に、植物体の
内、茎を所定の長さに切断するとともに、表皮を一部ま
たは全部削除すれば、簡単に植え込み材料を製造するこ
とができる。

【００１４】また、これらの植物体を繊維状化、チップ
化または粉体化した後、所定形状に固めて、植え込み材
料としても良い。この他、植物体の内で、茎、根、葉
柄、果実序、果実序の軸または果皮を利用することがで
きる。

【００１５】上述した植え込み材料を用いた植物栽培
は、上述したいずれかの植え込み材料に挿し穂を挿入
し、該挿し穂から発根した後、あるいは発根する前に、
該植え込み材料を土中に植え込むことにより可能であ
る。また種子の場合は、いずれかの植え込み材料に種子
を播き、該種子から発芽した後、あるいは発芽する前
に、該植え込み材料を土中に植え込むことことにより可
能である。また挿し穂や種子の代りに、苗でも良い。苗
の場合は、いずれかの植物の植え込み材料に苗の根部を
挿入し、その直後あるいは育苗した後に、該植え込み材
料を土中に植え込むことにより可能となる。

【００１６】なお、上述した植え込み材料に植え込む植
物の例としては、種子植物やシダ植物等のいわゆる高等
植物を挙げることができる。

【００１７】

【発明の実施の形態】図１は、本発明の一実施の形態と
しての植物の植え込み材料の製造方法および植物栽培方
法の一例を示している。まず、トウモロコシ、キビまた
はサトウキビの直径Ｄが約１ｃｍの生の茎を長さＬを約
１ｃｍに切断して、図１（ａ）に示すごとく円筒体２を
形成する。次にこの表皮４を取り去り、図１（ｂ）に示
すごとく内部のスポンジ状の軸６のみとする。

【００１８】次に、図１（ｃ）に示すごとく、軸６に上
面から適度な深さの直径１〜３ｍｍの孔部８を形成して
植え込み材料１０とする。例えば、挿し木床として使用
する場合は図１（ｄ）に示すごとく挿し木の太さに適合
させた比較的深い孔部８ａを設け、種蒔き床として使用
する場合は図１（ｇ）に示すごとく種子の大きさに適合
させた比較的浅い孔部８ｂを設ける。

【００１９】次に、挿し木床の場合には、図１（ｄ）に
示すごとく、挿し穂１２（菊、草花、観葉植物等）を孔
部８ａに挿し入れ、このようにして挿し木した植え込み
材料１０を栽培コンテナ（平らな配列用容器）に配列す
る。栽培コンテナ内には燻炭等の保水性の粒状体が敷き
詰められており植え込み材料１０を安定して立てておく
ことができる。この栽培コンテナを栽培場に配置して、
植え込み材料１０が乾かないように散水、腰水等により
水を与えることにより、図１（ｅ）に示すごとく挿し穂
１２は発根し、軸６内に根１２ａが伸長して成長し始め
る。

【００２０】このように挿し穂１２が発根し成長した苗
１４を、図１（ｆ）に示すごとく、植え込み材料１０と
ともに、そのまま、畑、庭、鉢等の土２０の中に埋め込
む。この作業は、植え込み場所の土２０に穴を開けて植
え込み材料１０を挿入し、土２０を寄せることで終了す
る。あるいは土２０が軟らかければ、土２０に孔を開け
ずに植え込み材料１０を土２０の中に押し込んでも良
い。したがって、極めて簡単に植え付け作業が進み、非
常に効率的である。また、植え込み材料１０は健康上の
問題を生じないので、取り扱いが容易で、一層効率的に
作業ができる。しかも苗１４を傷つけることがなく植え
傷みしない。

【００２１】また植え付け後も、植物体としての植え込
み材料１０は１〜３ヶ月で腐食してそのまま土２０に戻
り堆肥となり、また土２０の成分の一つとして土２０の
改良ともなるので、植え込み材料１０とともに植え付け
た苗１４の成長促進となり、また公害や自然環境の破壊
を招かない。

【００２２】また、図１（ｇ）に示すごとく種子１５を
播いた場合も同じであり、種子１５を播いた植え込み材
料１０を栽培コンテナに配列して栽培場に配置し、植え
込み材料１０が乾かないように散水、腰水等により水を
与える。このことにより、図１（ｈ）に示すごとく種子
１５が発芽して植え込み材料１０中に根１６ａが張り、
苗１６がある程度成長すれば、図１（ｆ）に示すように
目的の場所に植え込む。この場合の効果も上述したごと
くである。

【００２３】尚、本実施の形態の植え込み材料１０を用
いた場合には、挿し穂１２や種子１５からの発根、根１
２ａ，１６ａの伸長あるいは芽の伸張は、従来の植え込
み材料に比較して促進されていることが認められた。こ
れはおそらく、植え込み材料１０が適当量の水分を長時
間保つことができることと、植え込み材料１０となって
いる植物体の内部に適当量の栄養を最初から含んでいる
とともに、根１２ａ，１６ａの成長を阻害する有害な成
分や組織が存在しないためではないかと考えられる。

【００２４】また、植え込み材料１０自体は、壊れにく
く、軽く、そのため運搬費がかからないと言う効果もあ
る。更に、植え込み材料１０は苗１４，１６とともに土
２０の中に埋め込んだ後は、植え込んだ場所の土壌を改
良することにもなり、更に腐食して、堆肥として作用す
るという効果もある。

【００２５】［その他］上述した実施の形態では、表皮
４を全て取り除いたが、ある程度、軸６が外部に露出さ
れれば良いので、表皮４は部分的な削除でも良い。ある
程度表皮４を残すと植え込み材料１０を補強することが
できる。

【００２６】上述した実施の形態では、トウモロコシ、
キビまたはサトウキビを用いたが、これ以外のイネ科植
物でも良い。特に、植物体を切削して形成して使用する
場合には太くて、軸に大量のスポンジ状の組織が存在す
ることが好ましい。また、植物体は、そのまま利用する
以外に、繊維状化、チップ化または粉体化した後、所定
形状（例えば前述の実施の形態の植え込み材料１０の形
状）に固めて植え込み材料として使用しても良い。この
場合には、植物体をそのまま用いるよりも、直径の大き
なものが得られる。例えば、数ｃｍ〜３０ｃｍ以上の植
え込み材料が得られる。

【００２７】繊維状化、チップ化または粉体化した植物
体は、そのままで圧縮すれば固まるが、のり等を使用し
て固めても良い。なお、繊維状化、チップ化または粉体
化した後に乾燥して固めたものは、挿し木や種播きに際
しては、一旦水を植え込み材料に吸収させてから行う。
このように乾燥した状態の繊維状化、チップ化または粉
体化の植物体あるいは所定形状に固めた植え込み材料
は、極めて軽量であり運搬費が低コストとなる効果があ
る。

【００２８】また、植物体から切削して形成して使用す
る場合にも、植物体をそのまま一旦乾燥させてから搬送
し、使用する際に植え込み材料を切削して形成した後、
水を吸収させてから挿し木、種播きあるいは苗の植え付
けをしても良い。または植物体から植え込み材料を切削
して形成し乾燥してから搬送し、使用する際に、水を吸
収させてから挿し木、種播きあるいは苗の植え付けをし
ても良い。同様に、搬送費が低コストとなる。

【００２９】前記実施の形態における孔部８，８ａ，８
ｂは底が存在した凹状の孔であったが、軸６の底まで貫
通する貫通孔であっても良い。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の一実施の形態としての植物の植え込
み材料の製造方法および植物栽培方法の説明図である。

【符号の説明】

２…円筒体 ４…表皮 ６…軸 ８，８
ａ，８ｂ…孔部 １０…植え込み材料 １２…挿し穂 １２ａ，１６
ａ…根 １４，１６…苗 １５…種子 ２０…土

Claims (17)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】イネ科植物の植物体を主原料とすることを
   特徴とする植物の植え込み材料。
2. 【請求項２】前記イネ科植物が栽培植物であることを特
   徴とする請求項１記載の植物の植え込み材料。
3. 【請求項３】前記栽培植物が、トウモロコシ、キビおよ
   びサトウキビから選ばれた一つまたは複数であることを
   特徴とする請求項２記載の植物の植え込み材料。
4. 【請求項４】前記植物体が、茎、根、葉柄、果実序、果
   実序の軸または果皮であることを特徴とする請求項１〜
   ３のいずれか記載の植物の植え込み材料。
5. 【請求項５】所定形状に成形してなることを特徴とする
   請求項１〜４のいずれか記載の植物の植え込み材料。
6. 【請求項６】前記植物体を繊維状化、チップ化または粉
   体化した後、所定形状に固めてなることを特徴とする請
   求項５記載の植物の植え込み材料。
7. 【請求項７】前記植物体を所定形状に切削してなること
   を特徴とする請求項５記載の植物の植え込み材料。
8. 【請求項８】前記植物体として茎を用い、該茎を所定の
   長さに切断するとともに、表皮を一部または全部削除し
   てなることを特徴とする請求項７記載の植物の植え込み
   材料。
9. 【請求項９】種子、挿し穂あるいは苗の植え込み用孔部
   が形成されている請求項５〜８のいずれか記載の植物の
   植え込み材料。
10. 【請求項１０】直径または幅が０．５〜３０ｃｍである
    請求項５〜９のいずれか記載の植物の植え込み材料。
11. 【請求項１１】高さが０．５〜３０ｃｍである請求項５
    〜１０のいずれか記載の植物の植え込み材料。
12. 【請求項１２】直径または幅が１〜３ｃｍである請求項
    ５〜１１のいずれか記載の植物の植え込み材料。
13. 【請求項１３】高さが１〜３ｃｍである請求項５〜１２
    のいずれか記載の植物の植え込み材料。
14. 【請求項１４】前記植え込み用孔部が１〜３ｍｍである
    請求項９〜１３のいずれか記載の植物の植え込み材料。
15. 【請求項１５】請求項１〜１４のいずれかに記載の植物
    の植え込み材料に挿し穂を挿入し、該挿し穂から発根し
    た後、あるいは発根する前に、該植え込み材料を土中に
    植え込むことを特徴とする植物栽培方法。
16. 【請求項１６】請求項１〜１４のいずれかに記載の植物
    の植え込み材料に苗の根部を挿入し、その直後あるいは
    育苗した後に、該植え込み材料を土中に植え込むことを
    特徴とする植物栽培方法。
17. 【請求項１７】請求項１〜１４のいずれかに記載の植物
    の植え込み材料に種子を播き、該種子から発芽した後、
    あるいは発芽する前に、該植え込み材料を土中に植え込
    むことを特徴とする植物栽培方法。