JPH09293915A - レーザ用曲率可変鏡及びその製造方法 - Google Patents

レーザ用曲率可変鏡及びその製造方法

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JPH09293915A
JPH09293915A JP10272296A JP10272296A JPH09293915A JP H09293915 A JPH09293915 A JP H09293915A JP 10272296 A JP10272296 A JP 10272296A JP 10272296 A JP10272296 A JP 10272296A JP H09293915 A JPH09293915 A JP H09293915A
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reflecting mirror
mirror
actuator
variable curvature
pressure
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JP10272296A
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English (en)
Inventor
Takeshi Okada
岡田  健
Tatsuya Kyotani
達也 京谷
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 レーザ光のビーム径、焦点距離、ビームモー
ドなどの調整に用いる曲率可変鏡の反射面の形状精度向
上を、安価かつ簡単な構造によって実現することであ
る。 【解決手段】 反射鏡1、筐体5、PTZ素子によって
駆動されるアクチュエータ9の3者間に非圧縮性液体1
5を充填してアクチュエータ9の体積変動で液体15の
充填部に静圧を発生させ、その静圧で反射鏡1を変形さ
せる。この反射鏡1は、裏面を球状にして厚みを中央側
ほど厚くし、径方向各部に働く曲げモーメントの差を厚
み差で吸収するようにしてあり、また、外周部の表裏を
Oリング13で保持して変形が起こり易くしてあるの
で、表面形状の理想球面からのずれが小さくなる。ま
た、アクチュエータ9の伸長で表面が凹球面から平面、
平面から凸球面に変わるようにしているので制御範囲も
広がる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、反射面の形状が
可変である反射鏡の中でも、特に、球面の曲率を凹凸双
方向に変化させて制御し得るレーザ用曲率可変鏡の構造
及び製造方法に関するものである。このレーザ用曲率可
変鏡は、主としてレーザ加工機のビーム伝送用反射鏡ま
たは発信器内部用反射鏡として用いることができ、曲率
制御によって最終集光点でのビーム径、焦点距離の調整
やビームモードの調整を行う。
【0002】
【従来の技術】曲率可変鏡の従来技術としては、例え
ば、SPIE、vol1543、P36に紹介されてい
るものがある。これは天体望遠鏡の反射鏡に関する技術
であって、入射するビームの波面の乱れを、形状可変反
射鏡を用いて補償しようとするものである。この場合、
反射鏡の曲率制御は、任意形状の反射面の創成が狙いで
ある。このため、多数の変形駆動素子を必要とし、シス
テムが非常に複雑化、大型化し、かつ高価なものにな
る。
【0003】これに対し、近年、レーザ加工機のビーム
伝送用反射鏡や発信器内部用反射鏡としての用途が注目
されている曲率可変鏡は、任意形状の創成ではなく、単
に球面鏡の曲率制御を行う。この曲率制御により前者の
反射鏡は最終集光点でのビーム径、焦点距離を調整し、
また、後者の反射鏡はビームモードを調整する。
【0004】この用途の曲率可変鏡の従来技術として、
DE3900467(日本出願、特開平2−23177
9号)は、反射鏡の裏面に作用させる循環冷却水圧をレ
ギュレータで制御して表面変形を行うものを開示してい
る。また、DE4137832は、反射面の形状精度に
ついての改善案を示している。さらに、GB22541
64は反射鏡の裏面中央をアクチュエータで加圧して凸
球面の反射鏡の曲率を変化させるものを、また、GE4
236355はリング状ナイフエッジで反射面を支え、
その支持点よりも外側の裏面を圧電素子で駆動するリン
グ状ナイフエッジで加圧して凹面鏡の曲率を変化させる
ものを各々示している。
【0005】外周部が拘束された反射鏡の裏面に流体圧
を加え、この圧力で反射鏡を変形させて表面曲率を制御
する場合、外周部の変形が理想球面からかけ離れたもの
になる。そこで、DE4137832は、反射鏡の外周
を固定せずに遊びをもって弾性的に保持することを提案
しており、これによって、より外周まで球面に近づける
ことができるとされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】今、均一厚みの反射鏡
の全域に均一な圧力を加えたとする。このとき、支点が
最外周にあると反射鏡は球面状に変形するが、支点に近
い外周側と支点から離れた中央部に働く曲げモーメント
は支点からの距離差により同一にはならない。このた
め、反射鏡の変形が理想球面からずれたものになる。加
圧が局部的になされる場合も同様の状況が起こる。
【0007】このように、支点の位置、圧力の印加形
態、印加点等によって反射鏡の径方向各部の変形量に差
が出るが、上記の従来技術はこの点に関して何ら考慮す
るところがなく、曲率可変球面の形状精度について不満
が残る。従って、高形状精度が要求されるレーザ用光学
部品として実用に供するには更に具体的な改善が必要と
考えられる。
【0008】この曲率可変鏡の理想的な形状精度は、通
常のレーザ用光学部品に匹敵する精度をもつこと、即
ち、理想球面からのずれが0.53μm以下に抑えられ
ていることである。
【0009】また、従来技術では、凹又は凸のどちらか
一方の曲率制御であるのでビーム径、焦点距離、ビーム
モードについての調整範囲も狭い。
【0010】そこで、この発明は、レーザ用曲率可変鏡
の反射面の形状精度向上を安価かつ簡単な構造によって
実現し、凹凸双方向の制御も可能ならしめることを課題
としている。
【0011】また、長期使用に対する耐久性、分解、再
組立時の精度再現の容易さなども重要であり、この要求
に応えることも課題である。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、この発明においては、板状の反射鏡と、その反射鏡
の外周部を保持する手段と、反射鏡の裏面に圧力を加え
て前記保持手段による支持点を支点に反射鏡を変形させ
る加圧機構とを有し、この加圧機構による裏面からの加
圧を圧力と反射鏡曲率との関係式に基づいて行って反射
鏡の表面曲率を制御するレーザ用曲率可変鏡において、
前記反射鏡の厚みを裏面側で変化させて前記圧力による
曲げモーメントが強く働く部位ほど厚みを大きくし、そ
の厚み差を利用して径方向各部の変形量のずれを補正す
る。
【0013】かかるレーザ用曲率可変鏡に採用する加圧
機構は、簡素で制御の容易なものが望ましい。そこで、
その要求に応え得る加圧機構を三つ発明した。以下にそ
れを列挙する。これ等はいずれも反射鏡を変形させるの
に必要な力を単一のアクチュエータで発生させるもので
ある。
【0014】(1) 伸縮式アクチュエータで発生させた力
を反射鏡の裏面の限定域に加えて反射鏡を変形させ、表
面(反射面)の曲率を変化させる。
【0015】(2) 反射鏡の裏側に筐体を設け、この筐体
と反射鏡裏面との間に密閉空間を作ってその空間内に非
圧縮性液体を充填し、さらに、前記密閉空間内にアクチ
ュエータを挿入し、そのアクチュエータの体積変動で前
記密閉空間内に静圧を発生させてこの静圧で反射鏡を変
形させ、表面の曲率を変化させる。
【0016】(3) 反射鏡の裏側に裏板を設け、その裏板
と反射鏡裏面との間に密閉空間を作ってその空間内に非
圧縮性液体を充填し、さらに、伸縮式アクチュエータで
発生させた力を前記裏板の裏面の限定域に加えて裏板を
変形させ、この変形で密閉空間内に静圧を発生させ、そ
の静圧で反射鏡を変形させ、表面の曲率を変化させる。
【0017】上記(1) の形態の加圧機構は、反射鏡の裏
側を囲う筐体を設けてその筐体と反射鏡との間の空間
に、また、(3) の形態の加圧機構は裏板の裏側を囲う筐
体を設けてその筐体と裏板との間の空間に、それぞれ水
や油などの熱交換材を充填すると望ましい。
【0018】これ等は、前記空間を密閉室とし、この密
閉室に流動性のある熱交換材と共に圧縮性の良い圧力吸
収体を封入するとなお望ましい。圧力吸収体は、エアー
バックなどの袋や単なる気泡などでよい。また、熱交換
材は防錆剤を含む液体が好ましい。上記(2) 、(3) の形
態の加圧機構に採用する非圧縮性流体も防錆剤を含むも
のがよい。
【0019】(1) 、(3) の形態の加圧機構は、押すだけ
でなく、引く力も加えることが要求され、この場合に
は、アクチュエータ先端をネジ止めするなどして反射鏡
や裏板に連結しておく。
【0020】各加圧機構のアクチュエータは、PZT
(PZTは、Pb(Zr、Ti)O3圧電体につけられ
たクレバイト社商標)素子によって駆動するものを用い
る。他に、磁歪素子によって駆動するアクチュエータを
用いてもよい。
【0021】反射鏡の保持は、反射鏡外周部の表面と裏
面をそれ等の面に略線接触して支持する部材、例えばO
リング等を用いて行うのがよい。反射鏡の保持手段が反
射鏡の外周を取巻く拘束面を有し、この拘束面に反射鏡
の外周面が線接触状態に内接する構造にしておくのもよ
い。この線接触での内接は、反射鏡の外周にOリング等
の部材を巻き付け、この部材を拘束面に接触させること
によっても実現できる。さらに、拘束面に接する反射鏡
外周面に潤滑剤を塗布、もしくは拘束面と反射鏡外周面
との間の隙間に潤滑剤を充填するのも好ましいことであ
る。潤滑剤にはシリコングリース等を用いる。
【0022】このほか、前述の筐体の中に水路を設ける
もの好ましい。
【0023】また、前記反射鏡及び裏板を、ビッカース
硬度60以下の軟質材料で形成したり、保持手段として
用いる反射鏡押え、前述の筐体、アクチュエータを筐体
に固定するためのアクチュエータ押えの3者をビッカー
ス硬度60以上の硬質材料で形成したり、反射鏡の表面
に、レーザビームの反射率を高める光学膜を設けたりす
るのも好ましい。
【0024】次に、この発明のレーザ用曲率可変鏡の製
造法について述べる。この発明では、厚み分布を付加す
るための反射鏡裏面の加工をNC制御の超精密旋盤を用
いたダイヤモンド切削法にて行う。ダイヤモンド切削法
とは、切れ刃にダイヤモンドを用いた工具で切削を行う
方法である。
【0025】また、厚み分布は、コンピュータシミュレ
ーション法を用いて最適化を図る。そして、最適化後の
厚み分布が実現される形に裏面を加工する。裏面が所望
の形状に仕上ったか否かについての品質検査は、雌型同
一形状のマスターの表面に着色し、前記マスターと反射
鏡裏面を合わせて擦り付け、マスター表面に着色料の残
留が無いことで反射鏡裏面の形状が設計値と合致してい
ると判断する方法で行うのがよい。
【0026】また、上記(2) 又は(3) の形態の加圧機構
を用いて静圧で反射鏡を変形させる曲率可変鏡について
は、密閉空間を作り出す部品の組立てを非圧縮性液体中
で行って前記密閉空間に非圧縮性液体を自然流入させて
充填する方法を採る。この場合、非圧縮性液体に超音波
振動を印加しながらその液体中で前記密閉空間を作る部
品の組立てを行うとなお良い。
【0027】また、アクチュエータとしてPZT素子駆
動のものを用いる場合には、アクチュエータを組付けた
後、このアクチュエータを駆動してアクチュエータ先端
位置を駆動範囲の途中に止め、この停止位置を保持して
反射鏡表面の鏡面加工を行う。
【0028】このほか、この発明の曲率可変鏡の取扱い
に関しては、複数本のボルトで反射鏡の厚み方向に締込
んで固定するリング状の反射鏡押えを保持手段として使
用し、取外した反射鏡の再組立て時に、前記ボルトの各
々について、締込みトルク値を反射鏡取外し前の数値が
再現されるように管理するとよい。
【0029】
【作用】反射鏡の径方向各部の厚みに差を付けることに
より、反射鏡に作用する曲げモーメントの場所毎の大き
さの違いによる変形量の差を厚みで補正して各部の変形
量を均一化することができる。例えば、裏面の全域に均
一な圧力が加えられる場合、反射鏡厚みを支点に近い外
周側で小さく、支点から離れた中央部に向かって次第に
大きくする(この場合、裏面形状は、球面式で現される
ものに最適化できる)と、半径方向各部の変形量が均一
化され、表面の理想球面からのずれを要求値内に止める
ことが可能になる。なお、反射鏡の裏面中央を局部加圧
する場合の裏面形状は多項式で現されるものに最適化で
きる。
【0030】このように、この発明では、反射鏡の厚み
分布に差を付けて理想的な変形を起こさせる。そのた
め、局部加圧でも正確な曲率制御が行える。上記(1) の
形態の加圧機構(請求項2)はその局部加圧を行うもの
である。また、(2) 、(3) の形態の加圧機構(請求項
3、4)は、反射鏡裏面のほぼ全域に均一な静圧を加え
る。この(1) 〜(3) の形態の加圧機構は、反射面の曲率
制御を、圧力をコントロールするのではなく、アクチュ
エータの伸縮量や体積変動量をコントロールして行うの
で、構造の簡素化、低コスト化が図れ、制御の緻密化等
も実現できる。
【0031】また、熱交換材を設けたもの(請求項5、
6)は、レーザビームの吸収で反射鏡に発生した熱の筐
体側への伝導(放熱)を促進する。さらに、流動性のあ
る熱交換材と共に圧力吸収体を密閉室に封入したもの
(請求項7)は、アクチュエータ駆動で密閉室が体積変
動して生じる圧力が圧力吸収体に吸収されるので、筐体
に変形の原因となる無理な力が加わることがない。な
お、液体の熱交換材や非圧縮性液体に防錆剤を含めてお
くと、各部品の経時的な錆発生を防止できる。
【0032】さらに、PZT素子の特長は、発生する力
が大きいのと位置決め精度の高さである。加えて出力面
(先端)の位置決めを電気的制御によって行うので制御
もし易い。磁歪素子についても同様であり、従って、こ
れ等の素子で駆動するアクチュエータを用いるもの(請
求項8、9)は、素子の特長を生かして制御の高度化、
信頼性向上が図れる。また、反射鏡の反射面を凹面、凸
面のどちらにも変えられるので、調整範囲も広がる。
【0033】ここで、反射鏡の外周部の表面と裏面をO
リング等の部材で線接触状態に保持することは、反射鏡
外周部が変形し易くなり、球面の創成が反射鏡の外周に
まで及ぶため、この発明においても好ましいことであ
る。また、反射鏡の外周面やその外周面に巻付けた部材
が外側の拘束面に線当りで内接する構造になっていれ
ば、内接部の接触抵抗が低く抑えられ、反射鏡の変形が
よりスムーズに起こる。従って、これも好ましい。な
お、拘束面に対する反射鏡外周面の内接は、面間に隙間
を生じさせておいて反射鏡が横ずれしたときにのみ起こ
るようにしておいてもよい。また、この内接が起こる部
分に潤滑剤を塗布或いは充填しておくと、接触抵抗低減
の効果がより高まる。
【0034】このほか、筐体の中に水路を設ければ、強
制冷却を行って反射鏡の温度上昇を抑えることができ
る。
【0035】また、反射鏡や裏板をビッカース高度60
以下の軟質材料で作れば、それ等の変形が容易になる。
反射鏡押えや筐体、アクチュエータ押えは、変形すると
制御精度に悪影響が及ぶので、ビッカース高度60以上
の硬質材料で作って変形を抑えることを奨める。
【0036】また、反射鏡の表面に反射率を高める光学
膜を設けると、レーザビームの吸収が少なくなってより
好ましいものになる。
【0037】次に、この発明の製造方法の作用について
述べる。反射鏡の裏面の加工は、NC制御の超精密旋盤
を用いたダイヤモンド切削法で行う。この方法によれ
ば、設計と殆ど誤差の無い厚み分布をもたせることがで
きる。
【0038】また、反射鏡の厚み分布は、コンピュータ
シミュレーション法で反射鏡の各部の厚みと変形量の関
係を調べて最適化を図る。
【0039】加工後の製品は、上述した品質検査法で検
査するとよい。この検査法によれば、加工プログラムミ
スなどによって設計通りの裏面形状が得られていないと
きにはマスター表面の着色料が擦り取られずに残るの
で、加工不良であることが簡単に判る。マスターは反復
使用が可能であり、同一マスターを用いることで量産品
の品質のばらつきも抑制できる。
【0040】次に、部品の組立てに移るが、上記(2) 、
(3) の形態の加圧機構を有するものは、密閉空間を形成
する部品の組立てを非圧縮性液体中で行うと(請求項
9)、静圧発生用非圧縮性液体の密閉空間に対する充填
が自然流入によりなされる。この方法は、一般に行われ
る空気抜きしながらの液体充填に比べて作業が楽であ
り、空気残留も確実に防止できる。このとき、部品を浸
漬する非圧縮性液体に超音波振動を加えながら組立てを
行えば、部品に付着している微小気泡も除去され、より
好ましい結果が得られる。非圧縮性液体中に気泡が混入
していると、アクチュエータの出力が気泡の圧縮に消費
され、出力の反射鏡変形への寄与効率が悪くなる。液中
での部品組立は、この不具合の解消策となる。
【0041】また、PZT素子は、伸長方向への駆動の
みを行う素子であるので、この素子を用いたアクチュエ
ータで反射鏡を変形させるものについては、アクチュエ
ータを組付けた後、このアクチュエータを駆動してアク
チュエータ先端位置を駆動範囲の途中に止め、この停止
位置を保持して反射鏡表面の鏡面加工を行う方法を採る
(請求項10)。これであれば、鏡面加工して得られた
面形状(平面)を原点にしてそこから表面曲率を凹凸双
方に制御することができる。即ち、アクチュエータドラ
イバの駆動電圧がゼロのときに反射鏡表面が凹球面を呈
するようにしておけば、アクチュエータの伸長途中に表
面が平面になり、そこから先は凸球面になるので、伸長
方向の駆動のみで凹凸双方向の曲率制御を行える。ま
た、組立前に鏡面加工を行うと鏡面を凹球面に加工しな
ければならないが、上記の方法ならば加工する鏡面は平
面でよく加工がし易い。さらに、組立後に鏡面加工を行
うことで組立誤差が制御精度に影響を及ぼすことも防止
できる。
【0042】磁歪素子駆動のアクチュエータは、それ自
体が凹凸双方向に駆動できるので、上記の方法による加
工は必要でない。
【0043】さらに、押えリング固定ボルトの締付けト
ルクを管理すれば、何らかの理由で反射鏡を取外して
も、再組立時に取外し前の固定状態が再現され、反射鏡
の意図しない変形を誘起する変形条件の変動が起こらな
い。
【0044】
【発明の実施の形態】図3〜図5に、この発明のレーザ
用曲率可変鏡の実施形態を示す。
【0045】図3は、前述の(1) の形態の加圧機構を、
また、図4は(2) の形態の加圧機構を、図5は(3) の形
態の加圧機構をそれぞれ採用した曲率可変鏡である。こ
れ等は、いずれも、反射鏡の表面曲率が曲げ半径20m
の凸球面、曲げ半径20mの凹球面の間で変化するよう
に設計した。
【0046】そして、この反射鏡の製作を開始する前
に、図1(モデル1:中心の点加圧)、図2(モデル
2:静圧によるほぼ全域の均一加圧)に示すような簡単
化した2つのモデルについて、コンピュータシミュレー
ションにより反射鏡を曲げ半径20mに弯曲させたとき
に表面の理想球面からのずれが最小となる厚み分布を求
めた。その結果、裏面が多項式又は球面式で表現される
形になるときに厚み分布が最適化され、最適化後の厚み
分布により、理想球面からのずれをモデル1では6.8
7×10-3μm以下、モデル2では1.29×10-3μ
m以下に抑制できることが判明した。
【0047】そこで、NC制御の超精密旋盤によるダイ
ヤモンド切削法で、銅製反射鏡の裏面を最適化後の厚み
分布が実現されるように加工した。この加工法により、
設計と殆ど誤差の無い(最大誤差0.2μm)厚み分布
をもたせることができた。
【0048】次に、SUS304ステンレス鋼を材料に
して図2〜図5に示すリング状の反射鏡押え2、アクチ
ュエータ押え4及び筐体5を一般的な機械加工法で製作
した。これ等は、ビッカース高度60以上の硬質材料で
あれば他の材料で作ってもよい。
【0049】また、図5の裏板12は、反射鏡1と同じ
銅で作製した。この反射鏡1及び裏板12も、ビッカー
ス高度60以下の材料であれば他の材料、例えば銅合
金、アルミニウム、アルミニウム合金などでもよい。
【0050】図3〜図5の曲率可変鏡に採用した加圧機
構は、いずれも単一のアクチュエータ9を用いるもので
ある。アクチュエータ9は、ストロークが200μmの
もの(これは十分に余裕のあるストローク)を選んだ。
また、このアクチュエータ9はコスト面で有利な市販品
を用いた。
【0051】次に、図3の曲率可変鏡は、反射鏡1、筐
体5、アクチュエータ9の3者間に密閉室を作り、そこ
に、防錆剤を含有する水、油等の熱交換材14を圧力吸
収体6と共に封入した。圧力吸収体6は、空気を封じ込
めた樹脂バッグを用いたが、単なる気泡などでもよい。
【0052】さらに、アクチュエータ9の先端は、反射
鏡1の裏面中央にネジ11で連結し、反射鏡押え2とア
クチュエータ押え4はボルト3、7で各々筐体5に固定
し、アクチュエータ9の後部はアクチュエータ押え4に
ボルト8で固定した。
【0053】また、反射鏡1と反射鏡押え2との間及び
反射鏡1と筐体5との間には、それぞれOリング13を
介在し、そのOリング13で反射鏡1の外周部の表面と
裏面を共に線接触状態に保持した。そして更に、反射鏡
が万一横ずれして外周面が反射鏡押えの環状拘束面2a
に内接した場合、その内接が線接触で起こるように反射
鏡1の外周面に丸味をつけ(断面を山形にしてもよ
い)、なおかつ、この外周面に潤滑剤(図示せず)を塗
布して、反射鏡1の変形がスムーズに、しかもより広い
範囲で起こるようにした。
【0054】また、レーザビームの吸収による反射鏡1
の温度上昇を抑え、反射鏡温度を一定させるために、筐
体5に、アクチュエータ9の周りを一周する水路16を
設け、その水路に外部から水を循環させて強制冷却を行
う構造にした。
【0055】図4の曲率可変鏡は、部品の組立てを非圧
縮性液体中で行って反射鏡1、筐体5、アクチュエータ
9の3者間に作られる密閉空間内に非圧縮性液体15を
充填した。筐体5によるアクチュエータ9の支持、反射
鏡1の外周の保持、筐体5に対する水路16の設置につ
いては図3のものと同じにした。
【0056】図5の曲率可変鏡は、反射鏡1と水路16
を有する筐体5との間に裏板12を介在し、この裏板1
2の裏面中央にアクチュエータ9の先端をネジ11で連
結した。また、裏板12と筐体5間の密閉室に図3と同
様、防錆剤を含有した水、油等の熱交換材14と、圧力
吸収体6を封入し、その後、反射鏡1の組付けを非圧縮
性液体中で行って反射鏡1と裏板12間に作られる密閉
空間に非圧縮性液体15を充填した。反射鏡1の保持は
図4のものと同様の構造にして行っている。
【0057】非圧縮性液体15の充填は、図4、図5の
両可変鏡とも、部品を浸漬する非圧縮性液体に超音波振
動を印加し、部品に付着している微小気泡を予め除去し
た後、充填空間を封鎖する方法で行った。
【0058】また、この非圧縮性液体15は油類でもよ
いが、その圧縮率はできるだけ小さい方が望ましいの
で、ここでは圧縮率が最も小さい水(〜0.5×10-8
2 /kgf)を用いた。
【0059】図3〜図5のアクチュエータ9には、PZ
T素子、中でも積層型PZT素子によって駆動するもの
を用いた。このPZT素子は伸長方向への駆動のみを行
うものである。そこで、組付け完了後にリード線10を
ドライバ回路(図示せず)に接続してアクチュエータ9
を駆動し、アクチュエータ先端を駆動範囲の途中(ここ
では略中間点にした)に止めてその位置を保持し(これ
は、ドライバの駆動電圧を一定に保つことで可能)、こ
の状態で反射鏡1の表面を平面の鏡面に加工し、その平
面を原点にしてそこから凹凸双方向へ駆動する構成にし
た。従って、反射鏡1の表面は、アクチュエータドライ
バの駆動電圧がゼロのとき、つまり無負荷時には凹球面
を呈する。
【0060】アクチュエータ9は、磁歪素子によって駆
動するものにしてもよく、この場合には、押し引きが行
えるので、無負荷のときに反射鏡の表面が平面となるよ
うにした方がよい。
【0061】このほか、反射鏡1の表面には、レーザビ
ームの吸収量を少なくする(反射率を高める)ために、
金属膜、誘電体の多層膜、或いは金属と誘電体の組合せ
多層膜から成る光学膜を形成した。組立て後に反射鏡表
面を鏡面加工するものについては、反射鏡1のみを取外
して光学膜の成膜処理を行い、その後、図4、図5のも
のについては、非圧縮性液体中での組付けを再度行って
封入される非圧縮性液体15中に空気が混ざり込まない
ようにした。
【0062】また、反射鏡を一旦外して再組付けを行う
ものについては、反射鏡押え2を固定する複数本のボル
ト3について、各ボルトの締込みトルク値が反射鏡取外
し前の数値と同じになるようにトルク管理を行って元の
組立状態を再現し、固定強度の変動で意図しない面変形
が誘起されることを防いだ。
【0063】以上の如く構成した実施形態の曲率可変鏡
は、いずれもアクチュエータ9がPZT素子駆動方式の
ものであるので、アクチュエータ非駆動時に反射鏡1の
表面が凹球面を呈している。
【0064】図3の曲率可変鏡は、反射鏡1の中央部に
アクチュエータ9の押し力が加えられ、アクチュエータ
の伸長途中に反射鏡表面が平面になってそれから先は凸
球面に変わる。また、図4の曲率可変鏡は、アクチュエ
ータ9の伸長(体積変動)によって非圧縮性液体15の
充填空間に静圧が生じ、その静圧が、反射鏡1の裏面の
ほぼ全域に作用してその圧力で反射鏡1が変形し、その
反射鏡の表面が凹球面から一旦平面になってその後凸球
面に変わる。図5の曲率可変鏡は、アクチュエータ9の
駆動で裏板12が押されて変形し、その変形により非圧
縮性液体が加圧されて静圧が生じ、その静圧で反射鏡1
が変形する。この方式のものは、裏板12を介在してい
るので、アクチュエータ9の体積変動を増幅して静圧を
発生させることが可能である。
【0065】反射鏡表面の曲率制御は、いずれの方式の
ものも、圧力やアクチュエータ伸長量と比例関係にある
アクチュエータドライバ(図示せず)の駆動電圧を制御
して行われる。従って、圧力を直接制御するものに比べ
て制御がし易く、制御精度も高まる。
【0066】反射鏡1の裏面は、最適化された厚み分布
を実現する形状(図3のものは多項式で、また、図4、
5のもの球面式で現される形)を呈しており、これによ
り、いずれの形態のものも反射鏡表面の理想球面からの
ずれが0.5μm以内に納まった。この結果から、この
発明は局部加圧方式のものにも有効なことが分かるが、
全域の均一加圧方式の方がずれをより小さく抑え得るこ
とは図1、2のモデルによる解析結果から明らかであ
る。図3、図4のものは、制御面で有利なアクチュエー
タを使用して静圧による均一加圧もなされるようにして
おり、より厳しい精度が要求される用途に特に適する。
【0067】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の曲率可
変鏡は、支点から圧力印加点までの距離差等によって起
こる反射鏡各部の変形量のずれを、反射鏡厚みに差を付
けて補正するので、簡単かつ安価な構造で反射鏡各部の
変形量を均一化して表面形状を理想球面に近づけること
ができ、レーザビームの径、焦点距離、ビームモードの
高度制御が可能になる。
【0068】上記(1) 、(2) の形態の加圧機構を用いる
ものは、構造が特に簡素で、低コスト化の効果が大き
い。
【0069】また、上記(2) 、(3) の形態の加圧機構を
用いるものは、制御のし易い単一のアクチュエータで静
圧を発生させて全域の均一加圧を行うので、より高精度
の制御が望める。
【0070】また、熱交換材を設けて反射鏡に生じた熱
を筐体に流すものは、放熱の促進、冷却効率の向上、温
度変動による反射鏡の形状誤差発生の防止が図れ、耐久
性向上と制御の安定化の効果をもたらす。熱交換材の充
填室に圧力吸収体を一緒に封入したものは、熱交換材の
膨張、熱交換材充填室の体積縮小が起こっても筐体に無
理な力が加わらず、アクチュエータ駆動力の損失、反射
鏡の意図しない変形の原因になる筐体変形が起こらな
い。
【0071】PZT素子や磁歪素子によって駆動される
アクチュエータを有するものは、加圧力を電気的にコン
トロールするので、より緻密で高度な制御が行え、制御
もし易い。
【0072】また、PZT素子を用いるものは伸長の途
中に、磁歪素子を用いるものは押し引きの中間位置で反
射鏡表面が平面になるようにして凹凸双方向の曲率制御
を可能ならしめたので、制御範囲も広がる。
【0073】このほか、非圧縮性液体中で部品を組立て
て静圧発生用の非圧縮性液体を密閉空間に充填したもの
は、密閉空間内に空気が残らず、残留空気の圧縮に力が
浪費されることがなくなってアクチュエータ出力の反射
鏡変形への寄与効率が良くなる。
【0074】また、アクチュエータを駆動範囲の途中に
止めて鏡面加工を行ったものは、伸長方向のみの駆動で
凹凸双方向の曲率制御が行え、制御精度が組立て精度に
左右されることも無くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンピュータシミュレーションによる厚み分布
適正化のモデルを示す図
【図2】コンピュータシミュレーションによる厚み分布
適正化の別のモデルを示す図
【図3】この発明の曲率可変鏡の第1実施形態を示す断
面図
【図4】この発明の曲率可変鏡の第2実施形態を示す断
面図
【図5】この発明の曲率可変鏡の第3実施形態を示す断
面図
【符号の説明】
1 反射鏡 2 反射鏡押え 2a 環状拘束面 3、7、8 ボルト 4 アクチュエータ押え 5 筐体 6 圧力吸収体 9 アクチュエータ 10 リード線 11 ネジ 12 裏板 13 Oリング 14 熱交換材 15 非圧縮性液体 16 水路

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 板状の反射鏡と、その反射鏡の外周部を
    保持する手段と、反射鏡の裏面に圧力を加えて前記保持
    手段による支持点を支点に反射鏡を変形させる加圧機構
    とを有し、この加圧機構による裏面からの加圧を圧力と
    反射鏡曲率との関係式に基づいて行って反射鏡の表面曲
    率を制御するレーザ用曲率可変鏡であって、前記反射鏡
    の厚みを裏面側で変化させて前記圧力による曲げモーメ
    ントが強く働く部位ほど厚みを大きくしたことを特徴と
    するレーザ用曲率可変鏡。
  2. 【請求項2】 前記加圧機構として、伸縮式アクチュエ
    ータで発生させた力を反射鏡の裏面の限定域に加えて反
    射鏡を変形させるものを用いた請求項1記載のレーザ用
    曲率可変鏡。
  3. 【請求項3】 前記加圧機構として、反射鏡の裏側に筐
    体を設け、この筐体と反射鏡裏面との間に密閉空間を作
    ってその空間内に非圧縮性液体を充填し、さらに、前記
    密閉空間内にアクチュエータを挿入し、そのアクチュエ
    ータの体積変動で前記密閉空間内に静圧を発生させてこ
    の静圧で反射鏡を変形させるものを用いた請求項1記載
    のレーザ用曲率可変鏡。
  4. 【請求項4】 前記加圧機構として、反射鏡の裏側に裏
    板を設け、その裏板と反射鏡裏面との間に密閉空間を作
    ってその空間内に非圧縮性液体を充填し、さらに、伸縮
    式アクチュエータで発生させた力を前記裏板の裏面の限
    定域に加えて裏板を変形させ、この変形で密閉空間内に
    静圧を発生させ、その静圧で反射鏡を変形させるものを
    用いた請求項1記載のレーザ用曲率可変鏡。
  5. 【請求項5】 反射鏡の裏側を囲う筐体を設けてその筐
    体と反射鏡との間の空間に熱交換材を充填した請求項2
    記載のレーザ用曲率可変鏡。
  6. 【請求項6】 前記裏板の裏側を囲う筐体を設けてその
    筐体と裏板との間の空間に熱交換材を充填した請求項4
    記載のレーザ用曲率可変鏡。
  7. 【請求項7】 前記空間を密閉室とし、この密閉室に流
    動性のある熱交換材と共に圧縮性の良い圧力吸収体を封
    入した請求項5又は6記載のレーザ用曲率可変鏡。
  8. 【請求項8】 前記アクチュエータとしてPZT素子に
    よって駆動するものを用い、このアクチュエータの伸長
    で反射鏡の表面が凹球面から平面、更に平面から凸球面
    に変わるようにした請求項2、3又は4記載のレーザ用
    曲率可変鏡。
  9. 【請求項9】 前記アクチュエータとして磁歪素子によ
    って駆動するものを用い、このアクチュエータの押し方
    向への駆動で反射鏡の表面が平面から凸球面に、引き方
    向への駆動で前記表面が平面から凹球面に変わるように
    した請求項2、3又は4記載のレーザ用曲率可変鏡。
  10. 【請求項10】 密閉空間を作り出す部品の組立てを非
    圧縮性液体中で行って前記密閉空間に非圧縮性液体を自
    然流入させて充填することを特徴とする請求項3又は4
    記載のレーザ用曲率可変鏡の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記アクチュエータを組付けた後、こ
    のアクチュエータを駆動してアクチュエータ先端位置を
    駆動範囲の途中に止め、この停止位置を保持して反射鏡
    表面の鏡面加工を行うことを特徴とする請求項2、3又
    は4記載のレーザ用曲率可変鏡の製造方法。
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