JPH09291419A - 改質ポリエステル繊維前駆体及び改質ポリエステル繊維並びにその製造方法 - Google Patents

改質ポリエステル繊維前駆体及び改質ポリエステル繊維並びにその製造方法

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JPH09291419A
JPH09291419A JP12082896A JP12082896A JPH09291419A JP H09291419 A JPH09291419 A JP H09291419A JP 12082896 A JP12082896 A JP 12082896A JP 12082896 A JP12082896 A JP 12082896A JP H09291419 A JPH09291419 A JP H09291419A
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JP
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fiber
polyester fiber
modified polyester
precursor
carbon atoms
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JP12082896A
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Takashi Akita
隆 秋田
Masaaki Yamamoto
正昭 山本
Kaori Kuroda
香織 黒田
Hideo Sakakura
秀夫 坂倉
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 手触りが柔らかく、ぬめり感がなく、また、
吸水性、吸汗性に優れた改質ポリエステル繊維を得る前
駆体及び前駆体からの改質ポリエステル繊維を提供す
る。 【解決手段】 芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分
からなり有機スルホン酸金属塩を含有するポリエステル
繊維であって、偏平率が1:4以上の偏平繊維断面を有
し、かつ繊維表面にアルカリ減量による繊維軸方向に配
向する筋状溝の形成能を有する改質ポリエステル繊維前
駆体、該前駆体からの偏平率が1:4以上の偏平繊維断
面を有し、かつ繊維表面に幅が0.1〜3μm、長さが
10μm以上の繊維軸方向に配向した筋状溝を5μm以
下の溝間隔で有する或いは少なくとも繊維表面に直径が
0.05〜5μm、長さが10μm以上のフィブリル状
極細繊維を有する改質ポリエステル繊維を、前記前駆体
のアルカリ減量処理によって得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、風合い、吸水性の
改良された改質ポリエステル繊維前駆体及び改質ポリエ
ステル繊維並びにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル繊維は、多くの優れた特性
を有し、衣料用途を初めとして各種用途に広く用いられ
ているが、溶融紡糸法により製造されるため、繊維表面
が平滑で、手触りが硬く独特のぬめり感があるという風
合い面での欠点を有している。かかる風合い面での欠点
を改良した繊維の製造方法として、例えば特開昭55−
16906号公報等にて、ポリエステルにポリエステル
と非相溶なポリマーをブレンドして溶融紡糸する方法が
提案され、また、特公昭61−9427号公報等にて、
ポリエステルとポリアミドとを複合紡糸し、ポリアミド
の膨潤剤で処理する方法が提案されている。
【0003】しかしながら、従来の方法では、ポリエス
テル以外のポリマーを多量に用いるもので、ポリエステ
ル本来の他の優れた特性が損なわれ、少量では十分な風
合い向上効果が得られず、また、膨潤剤で処理する等の
煩雑な工程を要するという製造工程上の欠点もある。
【0004】また、ポリエステル繊維は、綿、絹、羊毛
等の天然繊維や、レーヨン、アセテート等の半合成繊維
に比べて、吸水性、吸汗性に劣るという機能面での欠点
も有している。かかる吸水性等の機能面での欠点を改良
した繊維として、例えば特公昭61−60188号公
報、特公昭62−44065号公報等にて、有機スルホ
ン酸金属塩等を添加したポリエステルからなる中空繊維
をアルカリ水溶液で処理し、一部が中空部まで連通する
微細孔を有する中空ポリエステル繊維が提案されている
が、このような中空ポリエステル繊維は、吸水性の点で
は改良されるものの、風合いの点では不十分な改良にと
どまるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、手触
りが柔らかく、ぬめり感がなく、また、吸水性、吸汗性
に優れた改質ポリエステル繊維を得る前駆体及び前駆体
からの改質ポリエステル繊維を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、芳香族ジカル
ボン酸成分とジオール成分からなり、下記一般式[1]
で表される有機スルホン酸金属塩を0.5重量%以上含
有するポリエステル繊維であって、偏平率が1:4以上
の偏平繊維断面を有し、かつ少なくとも繊維表面にアル
カリ減量による繊維軸方向に配向する筋状溝の形成能を
有することを特徴とする改質ポリエステル繊維前駆体、 R−SO3M [1] (式中、Rは炭素数3〜30のアルキル基または炭素数
7〜40のアリール基若しくはアルキルアリール基、M
はアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す)
【0007】及び、芳香族ジカルボン酸成分とジオール
成分とからなり、下記一般式[1]で表される有機スル
ホン酸金属塩を含有するポリエステル繊維であって、偏
平率が1:4以上の偏平繊維断面を有し、かつ繊維表面
に幅が0.1〜3μm、長さが10μm以上の繊維軸方
向に配向した筋状溝を5μm以下の溝間隔で有すること
を特徴とする改質ポリエステル繊維、 R−SO3M [1] (式中、Rは炭素数3〜30のアルキル基または炭素数
7〜40のアリール基若しくはアルキルアリール基、M
はアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す)
【0008】芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分と
からなり、下記一般式[1]で表される有機スルホン酸
金属塩を含有するポリエステル繊維であって、偏平率が
1:4以上の偏平繊維断面を有し、かつ少なくとも繊維
表面に直径が0.05〜5μm、長さが10μm以上の
フィブリル状極細繊維を有することを特徴とする改質ポ
リエステル繊維、 R−SO3M [1] (式中、Rは炭素数3〜30のアルキル基または炭素数
7〜40のアリール基若しくはアルキルアリール基、M
はアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す)
【0009】並びに、芳香族ジカルボン酸成分とジオー
ル成分とからなり、無機物含有量が1,500ppm以
下の下記一般式[1]で表される有機スルホン酸金属塩
を0.5重量%以上含有するポリエステルを、偏平率
1:5以上の偏平紡糸口金を用いて溶融紡糸した後、ア
ルカリ性化合物の水溶液で繊維重量の5%以上の減量処
理を行うか、または溶融紡糸した後、120℃以上の温
度で10秒以上乾熱処理した後に、アルカリ性化合物の
水溶液で繊維重量の15%以上の減量処理を行うことを
特徴とする改質ポリエステル繊維の製造方法、にある。 R−SO3M [1] (式中、Rは炭素数3〜30のアルキル基または炭素数
7〜40のアリール基若しくはアルキルアリール基、M
はアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す)
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の改質ポリエステル繊維前
駆体は、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分からな
り、前記一般式[1]で表される有機スルホン酸金属塩
を含有し、かつ有機スルホン酸金属塩を含有するポリエ
ステル繊維であって、その繊維断面が偏平率1:4以
上、好ましくは1:6以上の偏平繊維断面であり、少な
くとも繊維表面にはアルカリ減量による繊維軸方向に配
向する筋状溝の形成能を有し、アルカリ減量されたとき
に、含有する有機スルホン酸金属塩に基づく筋状溝形成
能が発現して、繊維表面に筋状溝が形成される。十分な
筋状溝形成能を有するためには、ポリエステル繊維中の
有機スルホン酸金属塩の含有量は、0.5重量%以上で
あることが必要である。また、繊維断面の偏平率が高い
程、より良好な筋状溝形成能が付与される。
【0011】また、本発明の改質ポリエステル繊維は、
前記前駆体がアルカリ減量されたものであり、芳香族ジ
カルボン酸成分とジオール成分からなり、前記一般式
[1]で表される有機スルホン酸金属塩を含有するポリ
エステル繊維であって、その繊維断面が偏平率1:4以
上、好ましくは1:6以上の偏平繊維断面であり、かつ
繊維表面に筋状溝を有する。繊維表面の筋状溝は、幅が
0.1〜3μm、長さが10μm以上の繊維軸方向に配
向した筋状溝であって、筋状溝は、5μm以下の溝間隔
で有する。筋状溝の幅が0.1μm未満または3μmを
超えると、或いは長さが10μm未満、または隣接する
溝間隔が5μmを超えると、ぬめり感の解消、柔らかな
風合いが得られないだけでなく、吸水性が不満足なもの
となる。
【0012】本発明の改質ポリエステル繊維前駆体は、
より高い減量度にアルカリ減量されたときには、繊維表
面でフィブリル状極細繊維に分割し、少なくとも繊維表
面にフィブリル状極細繊維を有する改質ポリエステル繊
維となる。従って、本発明の改質ポリエステル繊維に
は、繊維表面に筋状溝を有する繊維のみならず、繊維表
面にフィブリル状極細繊維を有する繊維、さらには繊維
内部までフィブリル状極細繊維化された繊維をも含むも
のである。
【0013】本発明の少なくとも繊維表面にフィブリル
状極細繊維を有する改質ポリエステル繊維は、芳香族ジ
カルボン酸成分とジオール成分からなり、前記一般式
[1]で表される有機スルホン酸金属塩を含有するポリ
エステル繊維であって、その繊維断面が偏平率1:4以
上、好ましくは1:6以上の偏平繊維断面であり、繊維
表面にフィブリル状極細繊維を有する。繊維表面のフィ
ブリル状極細繊維は、直径が0.05〜5μm、好まし
くは0.1〜3μm、長さが10μm以上、好ましくは
20μm以上のフィブリル状極細繊維であり、かかる繊
維表面のフィブリル状極細繊維は、産毛調の表面感触と
柔軟な風合いを与え、かつ基体の繊維断面が偏平状であ
ることと相俟って高い吸水性を与える。
【0014】改質ポリエステル繊維前駆体及び改質ポリ
エステル繊維を構成するポリエステルは、芳香族ジカル
ボン酸成分とジオール成分からなり、前記一般式[1]
で表される有機スルホン酸金属塩を含有するポリエステ
ルである。芳香族ジカルボン酸成分としては、代表的に
はテレフタル酸またはそのジメチルエステルの如きエス
テル形成性誘導体が、また、ジオール成分として、代表
的にはエチレングリコール或いは1,4−ブタンジオー
ルが挙げられるが、芳香族ジカルボン酸成分が他の芳香
族ジカルボン酸成分、ジオール成分が他のジオール成分
であってもよい。また、芳香族ジカルボン酸成分の一部
を他のカルボン酸成分及びまたはジオール成分の一部を
他のジオール成分で置き換えてもよい。
【0015】他の芳香族ジカルボン酸成分或いはカルボ
ン酸成分としては、イソフタル酸、5−スルホイソフタ
ル酸または2−スルホイソフタル酸或いは1,8−ジカ
ルボキシナフタレン−3−スルホン酸等のアルカリ金属
塩、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン
酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セ
バシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のジ
カルボン酸、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ
安息香酸等のオキシカルボン酸、5−テトラブチルホス
ホニウムスルホイソフタル酸、5−テトラフェニルホス
ホニウムスルホイソフタル酸、5−フェニルトリブチル
ホスホニウムスルホイソフタル酸、5−ブチルトリフェ
ニルホスホニウムスルホイソフタル酸等のスルホン酸ホ
スホニウム塩含有ジカルボン酸、またはこれらのエステ
ル形成性誘導体等が挙げられる。
【0016】また、他のジオール成分としては、炭素数
3〜10のアルキレングリコール、1,4−シクロヘキ
サンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,4−
ビス(β−オキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノール
Aのビスグリコールエーテル等が挙げられる。
【0017】さらに、ポリエステルの合成に際して、ポ
リエステルが実質的に線状である範囲内でトリメリット
酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸、トリメチロー
ルプロパンまたはそのエチレンオキサイド付加誘導体、
ペンタエリスリトール、グリセリンまたはそのエチレン
オキサイド付加誘導体等のポリオール、フェニル酢酸等
の重合停止剤を用いてもよい。
【0018】本発明でのポリエステルの合成に際して
は、公知のポリエステル合成方法が採用できる。例えば
ポリエチレンテレフタレートの合成について説明すれ
ば、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステ
ル化反応させる、テレフタル酸のアルキルエステルとエ
チレングリコールとをエステル交換反応させる、或いは
テレフタル酸にエチレンオキサイドを付加反応させる等
によりテレフタル酸のグリコールエステル及びまたはそ
の低重合物を生成し、次いでこの生成物を重縮合させる
方法が一般に用いられる。また、ポリエステルの合成に
際し、公知の触媒、エーテル結合副生抑制剤等を用いて
もよい。
【0019】ポリエステルに含有される前記一般式
[1]で表される有機スルホン酸金属塩としは、例えば
炭素数3〜30のアルキルスルホン酸のナトリウム塩、
カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム
塩、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸
等のアルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、カリ
ウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、
またはこれらの混合物等が挙げられ、特にアルキルスル
ホン酸ナトリウム塩が好ましいものとして挙げられる。
【0020】次に、本発明の改質ポリエステル繊維前駆
体及び改質ポリエステル繊維の製造方法について説明す
る。本発明方法においては、芳香族ジカルボン酸成分と
ジオール成分とからなり、(無機物含有量が1,500
ppm以下の)前記一般式[1]で表される有機スルホ
ン酸金属塩を含有するポリエステルを、偏平紡糸口金を
用いて溶融紡糸する工程、或いは紡糸後アルカリ減量処
理に先立ち乾熱処理する工程、及びアルカリ減量処理す
る工程が採用される。
【0021】ポリエステルとしては、前記のような芳香
族ジカルボン酸成分とジオール成分とからなり、有機ス
ルホン酸金属塩を0.5重量%以上、好ましくは1.0
重量%以上含有するポリエステルを用いる。有機スルホ
ン酸金属塩の含有量が0.5重量%未満では、繊維表面
への筋状溝の形成能が付与されず、得られる前駆体にお
ける繊維表面の筋状溝或いはさらにフィブリル状極細繊
維の形成が不可能である。
【0022】有機スルホン酸金属塩としては、前記のよ
うな化合物が用いられるが、ポリエステルに含有させて
溶融紡糸する際、有機スルホン酸金属塩に不純物として
無機物が多く含有されていると、紡糸口金でのフィルタ
ーの背圧上昇を起こし、また糸切れ等の原因となること
から、無機物含有量が1,500ppm以下、好ましく
は800ppm以下の有機スルホン酸金属塩を用いる。
特にアルキルスルホン酸ナトリウム塩を用いる場合、無
機物の塩化ナトリウム含有量が500ppm以下、好ま
しくは250ppm以下、硫酸ナトリウム含有量が1,
000ppm以下、好ましくは500ppm以下のアル
キルスルホン酸ナトリウム塩を用いることが好ましい。
【0023】ポリエステルへの有機スルホン酸金属塩の
配合は、有機スルホン酸金属塩とポリエステルが溶融状
態で十分に混合されるならば、その配合方法に特に制限
はなく、ポリエステルの溶融紡糸が終了するまでの任意
の段階で行われ、例えばポリエステルの合成中の反応系
に添加する、ポリエステルの押出機中において添加す
る、溶融紡糸の際に添加する等の方法が採用される。
【0024】ポリエステルへの有機スルホン酸金属塩の
配合の際は、熱安定性を向上させる目的で、公知の安定
剤、抗酸化剤等を少量添加することは好ましいことであ
る。好ましく用いられる安定剤としては、例えばヒンダ
ードフェノール系化合物、チオエーテル系化合物等が用
いられる。
【0025】有機スルホン酸金属塩含有のポリエステル
の溶融紡糸は、得られる前駆体の繊維断面が偏平率1:
4以上であるためには、偏平率1:5以上、好ましくは
1:10以上の偏平紡糸口金を用いて溶融紡糸する。溶
融紡糸条件としては、偏平紡糸口金を用いる以外、特に
制限はない。溶融紡糸した後、必要に応じ、公知の一般
的に適用される方法により延伸熱処理、仮撚加工等を施
すことにより、有機スルホン酸金属塩が多数の筋状に繊
維軸方向に配向された本発明の改質ポリエステル繊維前
駆体を得ることができる。
【0026】本発明の改質ポリエステル繊維は、前駆体
をアルカリ性化合物の水溶液でアルカリ減量処理を行う
ことにより得られる。即ち、本発明における偏平率が
1:4以上の偏平繊維断面を有する繊維の繊維表面に幅
が0.1〜3μm、長さが10μm以上の繊維軸方向に
配向した筋状溝を5μm以下の溝間隔で有する改質ポリ
エステル繊維の製造においては、前駆体にアルカリ性化
合物の水溶液で繊維重量の5%以上、好ましくは10%
以上のアリカリ減量処理を施す。このアリカリ減量処理
により、繊維表面に繊維軸方向に配向した筋状溝が形成
され、減量率が5%未満では、繊維表面の筋状溝の形成
が不十分であるか或いは全く形成されない。
【0027】アリカリ減量処理に用いるアルカリ性化合
物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸
ナトリウム、炭酸カリウム、テトラメチルアンモニウム
ハイドロオキサイド等が挙げられ、特に水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウムが好ましく用いられる。
【0028】また、本発明における偏平率が1:4以上
の偏平繊維断面を有する繊維の繊維表面に直径が0.0
5〜5μm、長さが10μm以上のフィブリル状極細繊
維を有する改質ポリエステル繊維の製造においては、前
駆体を、アルカリ減量処理に先立ち、120℃以上、好
ましくは140℃以上の温度で、10秒以上、好ましく
は20秒以上乾熱処理し、しかる後、この前駆体にアル
カリ性化合物の水溶液で繊維重量の15%以上、好まし
くは20%以上のアリカリ減量処理を施す。
【0029】この乾熱処理及びアリカリ減量処理によ
り、繊維表面にフィブリル状極細繊維が形成され、特に
乾熱処理は、フィブリル状極細繊維の形成にとって必須
の工程であり、温度が120℃未満或いは10秒未満の
乾熱処理では、アリカリ減量処理による繊維表面のフィ
ブリル状極細繊維の形成が不十分であるか或いは全く形
成されない。また、減量率が15%未満では、繊維表面
のフィブリル状極細繊維の形成が不十分となる。減量度
をより高めた場合には、フィブリル状極細繊維の形成が
繊維内部にまで及びフィブリル状極細繊維が束状となっ
た改質ポリエステル繊維が得られる。
【0030】本発明の改質ポリエステル繊維は、その前
駆体を製織または製編した後の織編物の形態で得ること
ができ、また、アルカリ減量処理、或いはアルカリ減量
処理に先立つ乾熱処理を織編物の形態の前駆体に施すこ
とが、工程上有利である。従って、繊維表面に筋状溝が
形成された改質ポリエステル繊維を得る場合は、ポリエ
ステル繊維織編物に減量加工として一般に用いられるア
ルカリ減量処理方法が適用され、また、繊維表面にフィ
ブリル状極細繊維が形成された改質ポリエステル繊維を
得る場合は、フィブリル化のための揉み作用が加わるア
ルカリ減量処理方法が適用される。また、アルカリ減量
処理後、さらに機械的外力を加える処理、例えば擦過、
叩解、或いは起毛処理等を施して、フィブリル状極細繊
維を分離すこともできる。
【0031】本発明の改質ポリエステル繊維を織編物の
形態で得る際には、織編物を本発明の前駆体のみで構成
してもよいし、他の繊維を混用して構成してもよく、特
に繊維表面にフィブリル状極細繊維が形成された改質ポ
リエステル繊維を織編物の形態で得る際には、他の繊維
の混用は好ましいことである。他の繊維を混用する場合
は、その混用率、混用方法については、特に制限はない
が、アルカリ減量処理に耐える或いはアルカリ減量処理
を適用し得る繊維を用いることが好ましい。
【0032】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。なお、実施例中の部は重量部を、%は重量%を意味
する。また、実施例中の各特性値の測定、判定は、下記
の方法に拠った。
【0033】〈極限粘度〉試料をフェノール/テトラク
ロルエタン(50/50)の混合溶媒に溶解し、ウベロ
ーデ粘度計で25℃で測定。
【0034】〈筋状溝形成状態〉繊維表面の走査型電子
顕微鏡写真により下記基準で目視判定。 ◎:繊維軸方向に配向した筋状溝が良好に深く形成され
ている。 ○:繊維軸方向に配向した筋状溝が形成されている。 ×:筋状溝の形成が認められない。
【0035】〈フィブリル状極細繊維形成状態〉繊維表
面の走査型電子顕微鏡写真により下記基準で目視判定。 ◎:殆どがフィブリル状極細繊維に良好に分割されてい
る。 ○:フィブリル状極細繊維に良好に分割されている。 △:若干のフィブリル状極細繊維に分割されている。 ×:若干のフィブリル状極細繊維の形成が認められな
い。
【0036】〈水滴消失時間〉以下の条件、 経糸:通常ポリエステルフィラメント糸(50デニール
/18フィラメント) 緯糸:本発明の前駆体フィラメント糸、或いは比較フィ
ラメント糸(50デニール/10フィラメント或いは2
4フィラメント) 経糸密度:40本/cm 緯糸密度:41.2本/cm で製織した後、常法に従って、精練、プリセットし、水
酸化ナトリウム水溶液中で沸騰下でアルカリ減量処理を
行った。得られた織物を、直径15cmの刺しゅう用丸
枠に取り付け、室温25℃、相対湿度24%の条件下
で、水滴滴下法により、水滴に蒸留水を用い、水滴滴下
用ビューレット先端と織物面との距離を1cmとし、織
物面に水滴を1滴滴下し、その消失時間を測定した。測
定は5〜7回繰り返し、水滴消失時間の平均値を求め
た。なお、水滴1滴の平均量は0.077ccであっ
た。
【0037】〈吸水性能〉下記基準で判定。 ◎:水滴消失時間が20秒以内。 ○:水滴消失時間が20秒を超え1分以内。 △:水滴消失時間が1分を超え2分以内。 ×:水滴消失時間が2分を超える。
【0038】(実施例1)テレフタル酸100部、エチ
レングリコール52部をエステル化槽に仕込み、4kg
/cm2の加圧下、260℃でエステル化反応を行っ
た。引き続き、得られた反応生成物にトリメチルホスフ
ェイトを0.05%、三酸化アンチモンを0.04%、
二酸化チタンを0.5%、各々エチレングリコール溶液
或いは分散液として加え、重合槽に移した。徐々に重合
槽内を減圧していき、重合槽内の真空度が1トール以下
になってから30分後、重縮合反応を開始してから70
分後に、有機スルホン酸金属塩として、塩化ナトリウム
30ppm、硫酸ナトリウム100ppm含有の平均炭
素数15.5のアルキルスルホン酸ナトリウム(RSO
3Na)を2.0%溶融状態で添加した。さらにこの高
真空下、285℃で重縮合反応を進行させ、極限粘度
0.70のポリエステルポリマーを得た。
【0039】得られたポリマーを常法によりチップ化、
乾燥し、短辺が0.08mm、長辺が1.6mmの偏平
率1:20の単孔を10個有する偏平紡糸口金を用い、
紡糸温度285℃で溶融紡糸した。吐出糸条は、冷却気
流で冷却固化した後、油剤を付与し、1400m/分の
紡糸速度で巻取った。次いで得られた未延伸糸を91℃
の熱ローラを介して未延伸糸の最大延伸倍率の75%延
伸するとともに150℃の熱板に接触させて延伸、熱処
理し、600m/分の速度で巻取り、50デニール/1
0フィラメントの延伸糸を前駆体として得た。得られた
延伸糸の繊維断面の偏平率は1:7.6であった。
【0040】得られた延伸糸を用いて製織し、この織物
を常法に従って精練した後、水酸化ナトリウム2%水溶
液中で沸騰温度下でアルカリ減量処理を施し、減量率1
5%の織物を得た。得られた織物の繊維特性の評価結果
を表1に示した。また、得られた織物を構成するポリエ
ステル繊維の走査型電子顕微鏡写真を図1に示した。
【0041】(実施例2〜4)実施例1において得られ
た延伸糸を用いて製織し、この織物を180℃で60秒
間の乾熱処理を施し、常法に従って精練した後、水酸化
ナトリウム2%水溶液中で沸騰温度下でアルカリ減量処
理を施した。得られた織物の繊維特性の評価結果を表1
に示した。また、実施例3、実施例4で得られた織物を
構成するポリエステル繊維の走査型電子顕微鏡写真を図
2、図3に示した。
【0042】(比較例1)実施例1において得られた延
伸糸を用いて製織し、乾熱処理及びアルカリ減量処理を
施さない常法に従って精練しただけの織物の繊維特性の
評価結果を表1に示した。また、得られた織物を構成す
るポリエステル繊維の走査型電子顕微鏡写真を図4に示
した。
【0043】(比較例2〜4)実施例1のポリエステル
ポリマーの合成において、アルキルスルホン酸ナトリウ
ムを添加しない以外は実施例1と同様にしてポリエステ
ルポリマーを合成した。得られたポリマーを用い、実施
例1と同様に製糸して、50デニール/10フィラメン
トの延伸糸を得た。得られた延伸糸の繊維断面の偏平率
は1:7.0であった。得られた延伸糸を用いて製織
し、この織物を常法に従って精練した後、比較例2以外
はアルカリ減量処理を施した。得られた織物の繊維特性
の評価結果を表1に示した。
【0044】(比較例5〜7)実施例2〜4で用いたと
同じアルキルスルホン酸ナトリウムを含有しないポリエ
ステルポリマーを用い、直径が0.25mmの円形の単
孔を24個有する紡糸口金を用いた以外は、実施例1と
同様に製糸して、50デニール/24フィラメントの延
伸糸を得た。得られた延伸糸を用いて製織し、この織物
を常法に従って精練した後、比較例5以外はアルカリ減
量処理を施した。得られた織物の繊維特性の評価結果を
表1に示した。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】本発明の改質ポリエステル繊維前駆体
は、アルカリ減量による繊維表面への筋状溝の形成能、
さらにはフィブリル状極細繊維の形成能を有するもので
あり、また改質ポリエステル繊維前駆体のアルカリ減量
により得られる改質ポリエステル繊維は、繊維表面に筋
状溝、さらにはフィブリル状極細繊維を有するものであ
り、手触りが柔らかく、ぬめり感がなく、また、吸水
性、吸汗性に優れる。また、かかる改質ポリエステル繊
維を、織編物の形態で得ることが可能であり、工程上有
利に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1により得られたポリエステル繊維の走
査型電子顕微鏡写真(倍率500倍)である。
【図2】実施例3により得られたポリエステル繊維の走
査型電子顕微鏡写真(倍率1000倍)である。
【図3】実施例4により得られたポリエステル繊維の走
査型電子顕微鏡写真(倍率1000倍)である。
【図4】比較例1により得られたポリエステル繊維の走
査型電子顕微鏡写真(倍率500倍)である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂倉 秀夫 愛知県豊橋市牛川通四丁目1番地の2 三 菱レイヨン株式会社豊橋事業所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分
    からなり、下記一般式[1]で表される有機スルホン酸
    金属塩を0.5重量%以上含有するポリエステル繊維で
    あって、偏平率が1:4以上の偏平繊維断面を有し、か
    つ少なくとも繊維表面にアルカリ減量による繊維軸方向
    に配向する筋状溝の形成能を有することを特徴とする改
    質ポリエステル繊維前駆体。 R−SO3M [1] (式中、Rは炭素数3〜30のアルキル基または炭素数
    7〜40のアリール基若しくはアルキルアリール基、M
    はアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す)
  2. 【請求項2】 芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分
    とからなり、下記一般式[1]で表される有機スルホン
    酸金属塩を含有するポリエステル繊維であって、偏平率
    が1:4以上の偏平繊維断面を有し、かつ繊維表面に幅
    が0.1〜3μm、長さが10μm以上の繊維軸方向に
    配向した筋状溝を5μm以下の溝間隔で有することを特
    徴とする改質ポリエステル繊維。 R−SO3M [1] (式中、Rは炭素数3〜30のアルキル基または炭素数
    7〜40のアリール基若しくはアルキルアリール基、M
    はアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す)
  3. 【請求項3】 芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分
    とからなり、下記一般式[1]で表される有機スルホン
    酸金属塩を含有するポリエステル繊維であって、偏平率
    が1:4以上の偏平繊維断面を有し、かつ少なくとも繊
    維表面に直径が0.05〜5μm、長さが10μm以上
    のフィブリル状極細繊維を有することを特徴とする改質
    ポリエステル繊維。 R−SO3M [1] (式中、Rは炭素数3〜30のアルキル基または炭素数
    7〜40のアリール基若しくはアルキルアリール基、M
    はアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す)
  4. 【請求項4】 芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分
    とからなり、無機物含有量が1,500ppm以下の下
    記一般式[1]で表される有機スルホン酸金属塩を0.
    5重量%以上含有するポリエステルを、偏平率1:5以
    上の偏平紡糸口金を用いて溶融紡糸した後、アルカリ性
    化合物の水溶液で繊維重量の5%以上の減量処理を行う
    ことを特徴とする改質ポリエステル繊維の製造方法。 R−SO3M [1] (式中、Rは炭素数3〜30のアルキル基または炭素数
    7〜40のアリール基若しくはアルキルアリール基、M
    はアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す)
  5. 【請求項5】 溶融紡糸した後、120℃以上の温度で
    10秒以上乾熱処理した後に、アルカリ性化合物の水溶
    液で繊維重量の15%以上の減量処理を行う請求項4記
    載の改質ポリエステル繊維の製造方法。
JP12082896A 1996-04-19 1996-04-19 改質ポリエステル繊維前駆体及び改質ポリエステル繊維並びにその製造方法 Pending JPH09291419A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102517681A (zh) * 2011-10-28 2012-06-27 丁金标 一种抗菌防臭涤纶牵伸丝的生产方法

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CN102517681A (zh) * 2011-10-28 2012-06-27 丁金标 一种抗菌防臭涤纶牵伸丝的生产方法

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