JPH09291395A - めっき残留応力の制御方法 - Google Patents

めっき残留応力の制御方法

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JPH09291395A
JPH09291395A JP10721096A JP10721096A JPH09291395A JP H09291395 A JPH09291395 A JP H09291395A JP 10721096 A JP10721096 A JP 10721096A JP 10721096 A JP10721096 A JP 10721096A JP H09291395 A JPH09291395 A JP H09291395A
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JP
Japan
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plating
strain
plating layer
stress
residual
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Application number
JP10721096A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Makino
浩 牧野
Satoshi Okochi
智 大河内
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】めっき残留応力の大きさを制御するのに有利な
めっき残留応力の制御方法を提供すること。 【解決手段】対象物4の被めっき面4hにめっき処理を
施してめっき層を形成する方法である。対象物4に歪を
付加した状態でめっき処理を行い、めっき処理後に歪を
解放し、これによりめっき層におけるめっき残留応力を
制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はめっき層で発生する
めっき残留応力の制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】産業界では、対象物の被めっき面にめっ
き処理を施してめっき層を積層することが行われてい
る。めっき層は、対象物の表面性状の改善に貢献でき
る。めっき層の内部にはめっき残留応力が発生すること
がある。代表的なめっき処理である電気めっき処理によ
れば、電着応力とも呼ばれるめっき残留応力がめっき層
の内部に現れるとされている。即ち、文献によれば、図
10に示すように片面に絶縁層101を被覆した板状の
対象物100のめっき面にめっき層200を形成する
と、図10(A)に示すようにめっき層200が収縮せ
んとする場合には、対象物100による拘束の影響で、
引張残留応力Fa がめっき層200の内部に発生する。
また、図10(B)に示すようにめっき層200が膨張
せんとする場合には、対象物100による拘束の影響
で、圧縮残留応力Fb がめっき層200の内部に発生す
る。
【0003】めっき条件の如何によって、圧縮残留応力
が現れたり、引張残留応力が現われたりする。ところで
従来より、めっき層の内部に発生するめっき残留応力の
大きさを軽減する方法として、応力減少剤をめっき液に
含ませてめっき処理する方法が知られている。
【0004】まためっき層の内部のめっき残留応力の大
きさ自体を制御するための技術ではないものの、次の公
報技術が従来より開示されている。すなわち、特開昭5
4−136538号公報には、金属網体や箔体を電鋳加
工で形成する工程と、金属網体や箔体を張出加工してド
ーム状に塑性変形させる工程と、ドーム状の金属網体や
箔体にめっき処理を施し、ドーム状の金属網体や箔体に
めっき残留応力を付与する工程とを順に実施する方法が
開示されている。この方法は、めっき残留応力により、
ドーム状の金属網体や箔体の形状を維持することを意図
している。
【0005】また特開昭61−143591号公報に
は、溶接構造物の溶接残留応力がめっき液の温度で開放
されて応力バランスが崩れることに対処すべく、めっき
処理に先立って、溶接構造物に繰返し歪を与え、溶接構
造物における溶接残留応力そのものを、めっき処理の前
に軽減する方法が開示されている。上記公報技術は、め
っき層の内部のめっき残留応力の大きさ自体を制御する
ものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記した実情
に鑑みなされたものであり、その課題は、対象物に積極
的に歪を付加した状態でめっき処理することにより、め
っき残留応力の大きさを制御するのに有利なめっき残留
応力の制御方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に係るめっき残
留応力の制御方法は、対象物の被めっき面にめっき処理
を施してめっき層を形成する方法において、対象物に歪
を付加した状態でめっき処理を行い、めっき処理後に歪
を解放し、めっき層におけるめっき残留応力を制御する
ことを特徴とするものである。
【0008】請求項2に係るめっき残留応力の制御方法
は、対象物の被めっき面にめっき処理を施してめっき層
を形成する方法において、めっき層に発生せんとするめ
っき残留応力と逆向きの歪を対象物に付加した状態でめ
っき処理を行い、めっき処理後に歪を解放し、解放に伴
いめっき層におけるめっき残留応力を軽減することを特
徴とするものである。
【0009】請求項3に係るめっき残留応力の制御方法
によれば、請求項2において、対象物は円筒形状をな
し、被めっき面は、対象物の内周面及び外周面の少なく
とも一方を含み、めっき層に発生せんとするめっき残留
応力は、周方向にめっき層が収縮する方向の応力であ
り、歪は、円筒形状をなす対象物の内径が拡径する向き
の歪であることを特徴とするものである。
【0010】請求項4に係る残留応力の制御方法によれ
ば、対象物の被めっき面にめっき処理を施してめっき層
を形成する方法において、対象物の被めっき面に引張歪
または圧縮歪を付加した状態でめっき処理を行ない、引
張歪または圧縮歪をめっき処理後に解放し、解放に伴い
めっき層に応力を付与することを特徴とするものであ
る。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明方法に係るめっき処理は、
湿式めっき処理でも乾式めっき処理でも良い。代表的な
湿式めっき処理としては電気めっき処理、無電解めっき
処理、溶融めっき処理が挙げられる。代表的な乾式めっ
き処理としては気相めっき処理が挙げられる。気相めっ
き処理としては蒸着、スパッタリング、イオンプレーテ
ィング、CVDが挙げられる。
【0012】本発明方法で用いる対象物としては、円筒
形状品、コップ形状品、板状品、盤状品、軸状品、棒状
品等が挙げられる。具体的にはシリンダブロックのボア
面、ピストン、バルブリフタが挙げられる。対象物の材
質は適宜選択できる。めっき層の材質としては、鉄系、
クロム系、ニッケル系、亜鉛系等の公知のものを選択で
きる。
【0013】請求項1に係る方法によれば、対象物に歪
を付加した状態でめっき処理を行う。 歪の形態として
は、対象物に引張歪を付加する形態、あるいは、対象物
に圧縮歪を付加する形態を採用できる。めっき処理後に
歪は解放される。これによりめっき層におけるめっき残
留応力は制御される。請求項2に係る方法によれば、め
っき層に発生せんとするめっき残留応力と逆向きの歪を
対象物に付加した状態で、めっき処理を行う。めっき処
理後に逆向きの歪を解放する。付加される歪は、めっき
層に発生せんとするめっき残留応力と向きが逆であるた
め、相殺され易くなる。従ってめっき層におけるめっき
残留応力は、軽減また回避される。
【0014】請求項3に係る方法は、円筒形状をなす対
象物に形成されためっき層に発生するめっき残留応力の
向きが、対象物の周方向に収縮する方向である場合を対
象とする。請求項3に係る方法によれば、円筒形状をな
す対象物の内径が拡径する向きの歪が対象物に付与され
た状態で、めっき処理が行われる。めっき処理後に歪が
解放される。付加される歪は、めっき残留応力と向きが
逆であるため、相殺され易くなる。従ってめっき層にお
けるめっき残留応力は、軽減また回避される。
【0015】請求項4に係る方法によれば、対象物に引
張歪または圧縮歪を付加した状態でめっき処理を行な
う。この歪はめっき処理後に解放されるため、対象物は
元の形状またはそれに近い形状に回復する。これにより
めっき層に残留応力が付与される。対象物に引張歪が付
加された状態でめっき処理された場合には、めっき処理
後に引張歪が解放されるため、めっき層には圧縮残留応
力が付与される。また対象物に圧縮歪が付加された状態
でめっき処理された場合には、めっき処理後に圧縮歪が
解放されるため、めっき層には引張応力が付与される。
【0016】
【実施例】
(第1実施例)以下、本発明を電気めっき処理に適用し
た実施例を図1〜図4を参照して説明する。この例は、
対象物4の外周面である被めっき面4hにめっき層が形
成される場合である。
【0017】説明の便宜上、図1を参照してめっき装置
1から説明する。めっき装置1は、めっき液Rが収容さ
れた液室10をもつ槽11と、めっき液Rに浸漬された
複数個の可溶性の陽極体12と、整流装置13と、可溶
性の陽極体12と整流装置13の陽極とをつなぐ第1ケ
ーブル14と、対象物4を保持する対象物保持手段15
と、対象物4と整流装置13の陰極とをつなぐ第2ケー
ブル17とを備えている。
【0018】陽極体12はめっき層を構成する材料で形
成されている。対象物保持装置15に保持された対象物
4は、めっき液Rに浸漬されている。対象物保持装置1
5は、支柱20と、歪付与手段22と、歪付与手段22
の嵌合孔22aに嵌合されたくさび体23と、くさび体
23の螺子軸24に螺合してくさび体23を支柱20に
保持するナット状の締付部材25とを備えている。
【0019】図2に示すように歪付与手段22は、厚肉
円筒形状をなしており、横断面で放射方向にのびる複数
個のスリット22kをもつ。スリット22kは、歪付与
手段22の内周側及び外周側から互い違いに形成されて
いる。スリット22kは歪付与手段22の軸長方向にも
延びている。スリット22kにより、歪付与手段22は
拡径及び縮径可能とされている。
【0020】歪付与手段22は非導電材料例えば硬質樹
脂で形成できる。図3に示すように、歪付与手段22の
外周面である加圧面22rは、歪付与手段22の軸芯P
c と実質的に平行とされている。歪付与手段22の内周
側には円錐面状の第1傾斜面22sが形成されている。
第1傾斜面22sは、上方に向かうにつれて歪付与手段
22の内径が小さくなる傾斜を備えている。
【0021】くさび体23の外周側には第2傾斜面23
uが形成されている。第2傾斜面23uは、歪付与手段
22の第1傾斜面22sの傾きとほぼ相応する円錐面状
をなしている。従って第2傾斜面23uは、上方に向か
うにつれてくさび体23の外径が小さくなる傾斜を備え
ている。本実施例では用いられる対象物4は、導電性を
もつ材料、一般的には金属(例えばアルミ合金)で形成
されている。対象物4は、前述したように円筒形状であ
り、内周面及び外周面をもつ。
【0022】対象物4の嵌合孔40に歪付与手段22が
嵌合している状態で、締付部材25が螺子軸24に締付
けられると、締付けに伴い、くさび体23が上方つまり
図3に示す矢印Y1方向に変位し、くさび体23の第2
傾斜面23uが歪付与手段22の第1傾斜面22sを押
圧する。これにより図3に示すように、半径方向の外方
に向かう力、つまり矢印X1方向の力が歪付与手段22
の周壁に作用し、歪付与手段22が拡径する。
【0023】この結果、歪付与手段22の加圧面22r
が対象物4の周壁の内周面を半径方向外方に加圧する。
故に、対象物4が拡径する方向の歪が対象物4の周壁に
付加される。即ち、対象物4の周壁にはこれの周方向に
引張歪が付加される。このように対象物4の周壁に引張
歪が付加された状態で、陰極である対象物4と陽極体1
2との間に電圧が印加され、めっき処理が実行される。
めっき処理では、陽極体12からめっき成分が電子を放
出しつつイオンとして溶解し、イオンがめっき液R中を
対象物4の側に泳動する。陰極である対象物4ではイオ
ンが電子を受取ってめっき金属として析出する。これに
より対象物4の外周面である被めっき面4hに、めっき
層43が形成される。
【0024】本実施例によれば、めっき処理後のめっき
層43の内部には、対象物4の周方向において縮径する
方向の電着応力としてのめっき残留応力が残留する形態
である。そこで本実施例によれば、上記のようにめっき
処理が終了したら、締付部材25が緩められる。故に、
対象物4の周壁に付加されていた引張歪は解放される。
解放に伴い、対象物4は縮径する方向に回復する。即
ち、めっき層43の内部に発生していためっき残留応力
を相殺する方向に、対象物4は回復する。故に、めっき
層43の内部におけるめっき残留応力は、軽減または回
避される。
【0025】図4を参照して説明を加える。図4(I)
(A)〜(C)は円筒形状の対象物4を用いた場合にお
いて、従来法による一般的なめっき処理を実行した形態
を模式的に示す。図4(II)(A)〜(D)は円筒形
状の対象物4を用いた場合において、本実施例法による
めっき処理を実行した形態を模式的に示す。従来法によ
る一般的なめっき処理を実行すれば、めっき処理後のめ
っき層43には、図4(I)(C)に示すように、対象
物4の周長がMa (例えば500μm)相当ぶん収縮す
る方向のめっき残留応力が発生する形態である。
【0026】これに対して本実施例方法によれば、めっ
き処理に先立ち、図4(II)(B)に示すように歪付
与手段22を矢印X1方向に拡径し、対象物4の周壁が
伸びる向きの引張歪が付加され、対象物4の周長がMb
(=Ma =500μm)ぶん増す。この状態で、対象物
4の外周面である被めっき面4hにめっき処理が実行さ
れ、めっき層43が積層される。めっき層43が積層さ
れた後に、図4(II)(D)に示すように歪付与手段
22の引張歪が解放され、これにより歪付与手段22は
縮径し、その周長はMb 相当ぶん短縮される。このよう
にすれば、計算上では、めっき層43の内部のめっき残
留応力は相殺されて、めっき層43の内部の残留応力は
計算上では0となる。
【0027】以上説明したように本実施例によれば、め
っき層43の内部のめっき残留応力を軽減または回避で
きるため、めっき層43における剥離や膨れ等を軽減、
回避するのに有利である。第1実施例によれば、対象物
4の材質、めっき層43の材質は適宜選択できるもの
の、対象物4の材質はアルミ合金系を採用でき、めっき
層43の材質は鉄系を採用できる。この場合には、陽極
体12の材質は鉄系、めっき液Rは硫酸第1鉄水溶液を
採用できる。
【0028】また他の形態としては、対象物4の材質は
マグネシウム合金系を採用でき、めっき層43の材質は
クロムを採用できる。この場合には、陽極体12の材質
はクロム系、めっき液Rはクロム酸水溶液を採用でき
る。ところで、めっき処理の条件の如何によっては、対
象物4の外周面である被めっき面4hに積層されためっ
き層43には、周方向に縮まる向きのめっき残留応力が
実質的に発生しない形態もある。この場合には、前述の
ように対象物4の周壁が周方向にのびる方向に引張歪が
付与された状態で、対象物4にめっき層43が積層さ
れ、その後に引張歪が解放されて対象物4が縮径すれ
ば、対象物4の周壁に積層されためっき層43に圧縮残
留応力を積極的に付与することができる。この場合に
は、圧縮残留応力に基づき、めっき層43の耐疲労性の
改善に貢献できる。
【0029】(第2実施例)図5は本発明を電気めっき
処理に適用した第2実施例を説明する。この例は、対象
物4の内周面である被めっき面4hにめっき層43が形
成される場合である。図5を参照してめっき装置5から
説明する。めっき装置5は、主柱状をなす可溶性の陽極
体12と、第1通孔60xを備えた上蓋60と、第2通
孔62xを備えた下蓋62と、上蓋60に装備されたリ
ング状の上シール材63と、下蓋62に装備されたリン
グ状の下シール材64と、陽極体12の外周面と上蓋6
0との境界域をシールするリング状のシール材65と、
陽極体12の外周面と下蓋62との境界域をシールする
リング状のシール材66と、整流装置13と、陽極体1
2と整流装置13の陽極とをつなぐ第1ケーブル14
と、第2ケーブル17とを備えている。陽極体12は、
めっき層43を構成する材料で形成されている。陽極体
12は第1通孔60x及び第2通孔62xに挿通されて
いる。
【0030】対象物4は円筒形状をなし、軸長方向にお
いて上蓋60と下蓋62とで挟持されている。対象物4
は、第2ケーブル17により整流装置13の陰極につな
がれている。上蓋60と対象物4との間は上シール材6
3でシールされている。下蓋62と対象物4との間は下
シール材64でシールされている。本実施例では対象物
4の周壁で液室10が区画されており、この液室10に
めっき液Rが封入されている。めっき液Rは加圧手段6
9により加圧可能とされている。加圧手段69としては
周知の液加圧装置を用いればよく、例えばポンプ装置、
プランジャピストン装置、コンプレッサ装置等を採用で
きる。
【0031】対象物4にめっき処理した後においては、
めっき層43の内部に、これの周長が収縮(Ma 相当ぶ
ん)する方向のめっき残留応力が発生する形態である。
そこで本実施例方法によれば、めっき処理に先立ち、液
室10のめっき液Rが加圧手段69により加圧され、対
象物4が拡径する向きの引張歪が対象物4の周壁に付加
される。この場合、対象物4の周長はMb (=Ma )相
当ぶん増加される。
【0032】この状態で前述同様に、陰極である対象物
4と陽極体12との間に電圧が印加され、めっき処理が
実行される。すると、対象物4の内周面である被めっき
面4hにめっき層43が形成される。めっき処理が終了
した後に、めっき液Rの加圧が解放され、対象物4の引
張歪は解放され、対象物4は縮径する。この場合、対象
物4の周長はMb 相当ぶん短縮される。このようにすれ
ば、めっき層43のめっき残留応力は相殺されて、計算
上ではめっき層43の内部のめっき残留応力は0とな
る。
【0033】なお液室10のめっき液Rを加圧する場合
の加圧力は、Mb =Ma =500μmである場合には、
次のように設定できる。対象物4の内周面の半径をr
(mm)、対象物4の周壁の肉厚をt(mm)、対象物
4のヤング率をE(kgf/mm2 )とすると、加圧力
P(kgf/mm2 )は次のようにできる。 P=500×106 ×E×(t/r) ところで前述したように、めっき処理の条件の如何によ
っては、対象物4の内周面である被めっき面4hに積層
されためっき層43には、周長が縮まる向きのめっき残
留応力が実質的に発生しない形態もある。この場合に
は、前述のようにめっき処理の後に、対象物4の周長が
伸びる方向に引張歪が付与された状態で、対象物4にめ
っき層43が積層され、その後に引張歪が解放されて対
象物4の周壁が縮径すれば、対象物4の周壁のめっき層
43の内部に圧縮残留応力を積極的に付与することがで
きる。この場合には、めっき層43の耐疲労性の改善に
有利である。
【0034】(第3実施例)第3実施例を図6に示す。
この例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、同
様の作用効果を奏する。但しこの例の場合には円筒形状
の対象物4の周壁で区画された液室10にめっき液Rの
代わりに、粉粒体80が収容されている。対象物4が当
接部材82に当接された状態で、歪付与手段として機能
する加圧盤83により粉粒体80が矢印Y2方向に加圧
されると、対象物4の周壁にはこれを拡径する方向の引
張歪が付加される。
【0035】このように対象物4の周壁に引張歪が付加
された状態で、対象物4の周壁の外周面である被めっき
面4hにめっき処理によりめっき層43が積層される。
めっき処理後に、引張歪が解放され、対象物4の周壁が
縮径する方向に回復する。これにより対象物4の周壁に
積層されためっき層43のめっき残留応力を軽減、緩和
できる。
【0036】(第4実施例)この例は、めっき層43に
圧縮残留応力を積極的に付与する例である。図7(A)
に示すように、背面に絶縁膜4tが形成された板状の対
象物4を用いる。図7(B)に示すように、歪付与手段
22が矢印S1方向に前進し、歪付与手段22で対象物
4は反る。この状態では、対象物4の中立線Pk を境と
して、絶縁膜4tの側には圧縮歪が付加されるととも
に、対象物4の被めっき面4hには引張歪が付加され
る。
【0037】このように対象物4の被めっき面4hに引
張歪が付加された状態で、めっき処理が実行され、被め
っき面4hにめっき層43が積層される。めっき処理
後、歪付与手段22が矢印S2方向に退避すれば、対象
物4の反りは解放され、図7(C)に示すように対象物
4は元の形状に回復する。従って被めっき面4hの引張
歪は解放される。このようにすれば、対象物4の被めっ
き面4hに積層されためっき層43に、矢印N1方向の
圧縮残留応力が積極的に付与される。圧縮残留応力が付
与されためっき層43は、耐疲労性の改善に有利であ
る。
【0038】(第5実施例)この例は、めっき層43に
引張応力を積極的に付与する例である。図8(A)に示
すように、背面に絶縁膜4tが形成された対象物4を用
いる。図8(B)に示すように、歪付与手段22が矢印
S2方向に移動し、歪付与手段22で対象物4は反る。
この状態では、対象物4の中立線Pk を境として、絶縁
膜4tの側には引張歪が付加されるとともに、対象物4
の被めっき面4hには圧縮歪が付加される。
【0039】このように対象物4の被めっき面4hに圧
縮歪が付加された状態で、めっき処理が実行され、被め
っき面4hにめっき層43が積層される。めっき処理
後、歪付与手段22が矢印S1方向に退避すれば、対象
物4の反りは解放され、図8(C)に示すように対象物
4は元の形状に回復する。従って被めっき面4hの圧縮
歪は解放される。このようにすれば、対象物4に積層さ
れためっき層43に、矢印N2方向の引張応力を積極的
に付与できる。従って引張応力が大きければ、油等の潤
滑剤を保持する機能を奏するクラックをめっき層43に
機械的に形成することができる。いわゆるポーラスめっ
きを形成することができる。
【0040】(第6実施例)図9は第6実施例に係る形
態を示す構成図である。この例では、板状の対象物4を
引張力により対象物4の面方向に引張って引張歪を付与
した状態で、対象物4にめっき処理を実行する。めっき
処理後には引張歪は解放される。
【0041】
【発明の効果】請求項1に係る方法によれば、対象物に
歪を付加しつつ、めっき処理を行う。めっき処理後に歪
は解放される。これによりめっき層におけるめっき残留
応力は制御される。めっき層におけるめっき残留応力
は、めっき層の剥離や膨れ等の要因となることがある。
この点請求項2に係る方法によれば、対象物に付加され
る歪は、めっき層に発生せんとするめっき残留応力と向
きが逆であるため、歪が解放されれば、めっき層に発生
していためっき残留応力は、相殺され易くなる。従って
めっき層におけるめっき残留応力は、軽減または回避さ
れる。よってめっき層の剥離や膨れ等の不具合を改善す
るのに有利である。
【0042】請求項3に係る方法は、円筒形状をなす対
象物に形成されためっき層に発生するめっき残留応力の
向きが、対象物の周方向に収縮する方向である場合を対
象とする。請求項3に係る方法によれば、円筒形状をな
す対象物の内径が拡径する向きの歪が対象物に付与され
た状態で、めっき処理が行われる。めっき処理後に歪が
解放される。対象物に付加される歪は、めっき層に発生
せんとする残留応力と向きが逆であるため、相殺され易
くなる。従ってめっき層におけるめっき残留応力は、軽
減また回避される。よってめっき層の剥離や膨れ等の不
具合を改善するのに有利である。
【0043】請求項4に係る方法によれば、対象物に引
張歪または引張歪を付加した状態でめっき処理を行な
う。この歪はめっき処理後に解放されるため、対象物
は、歪を与える前の元の形態、または、それに近い形態
に回復する。従って対象物に引張歪を付加した状態でめ
っき処理が実行され、めっき処理後に引張歪が解放され
た場合には、対象物に積層されているめっき層に圧縮応
力が付与され、めっき層の耐疲労性の改善に貢献でき
る。故に、めっき層の耐疲労性が要請される機械部品等
として使用する場合に適する。
【0044】また対象物に圧縮歪を付加した状態でめっ
き処理が実行され、めっき処理後に圧縮歪が解放された
場合には、対象物に積層されているめっき層に引張応力
が付与される。そのため、油溜等の機能を奏するクラッ
クをめっき層に形成するのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例に係る方法で用いる装置の構成図で
ある。
【図2】円筒形状の対象物が歪付与手段に装備されてい
る状態を示す平面図である。
【図3】円筒形状の対象物が歪付与手段に装備されてい
る状態を示す断面図である。
【図4】めっき残留応力を軽減する形態を示す構成図で
ある。
【図5】第2実施例に係る方法で用いる装置の構成図で
ある。
【図6】第3実施例に係る方法で用いる装置の構成図で
ある。
【図7】第4実施例に係る形態を示す構成図である。
【図8】第5実施例に係る形態を示す構成図である。
【図9】第6実施例に係る形態を示す構成図である。
【図10】従来技術に係る形態を示す構成図である。
【符号の説明】
図中、12は陽極体、22は歪付与手段、4は対象物、
4hは被めっき面、43はめっき層を示す。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】対象物の被めっき面にめっき処理を施して
    めっき層を形成する方法において、 前記対象物に歪を付加した状態で前記めっき処理を行
    い、前記めっき処理後に前記歪を解放し、前記めっき層
    におけるめっき残留応力を制御することを特徴とするめ
    っき残留応力の制御方法。
  2. 【請求項2】対象物の被めっき面にめっき処理を施して
    めっき層を形成する方法において、 前記めっき層に発生せんとするめっき残留応力と逆向き
    の歪を前記対象物に付加した状態で前記めっき処理を行
    い、前記めっき処理後に前記歪を解放し、解放に伴い前
    記めっき層におけるめっき残留応力を軽減することを特
    徴とするめっき残留応力の制御方法。
  3. 【請求項3】請求項2において、前記対象物は円筒形状
    をなし、前記被めっき面は、前記対象物の内周面及び外
    周面の少なくとも一方を含み、前記めっき層に発生せん
    とする前記めっき残留応力は、周方向に前記めっき層が
    収縮する方向の応力であり、 歪は、円筒形状をなす前記対象物の内径が拡径する向き
    の歪であることを特徴とするめっき残留応力の制御方
    法。
  4. 【請求項4】対象物の被めっき面にめっき処理を施して
    めっき層を形成する方法において、 前記対象物に引張歪または圧縮歪を付加した状態で前記
    めっき処理を行ない、前記引張歪または圧縮歪をめっき
    処理後に解放し、解放に伴い前記めっき層に応力を付与
    することを特徴とするめっき残留応力の制御方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1308664C (zh) * 2004-02-03 2007-04-04 株式会社山本镀金试验器 用于测量镀敷膜内应力的电极盒和系统
KR101360689B1 (ko) * 2011-12-28 2014-02-20 주식회사 포스코 Uoe 강관 및 그 제조방법

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