JPH09257740A - コーティング物の付着性試験方法 - Google Patents

コーティング物の付着性試験方法

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JPH09257740A
JPH09257740A JP6323396A JP6323396A JPH09257740A JP H09257740 A JPH09257740 A JP H09257740A JP 6323396 A JP6323396 A JP 6323396A JP 6323396 A JP6323396 A JP 6323396A JP H09257740 A JPH09257740 A JP H09257740A
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coating
base material
metal base
adhesion
cathode
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JP6323396A
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Koji Honda
浩二 本田
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Kinki Sharyo Co Ltd
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Kinki Sharyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面に犠牲防食関係にある金属層を有する金
属製素地での、非導電性コーティング物の付着性につい
て、単一金属製素地の場合同様に、簡易にかつ短時間
で、しかも多段階に正確に定量評価ができるようにす
る。 【解決手段】 表面に犠牲防食関係にある金属層を有す
る金属製の素地上に施された非導電性のコーティング物
に、これの表面から素地に達する傷を人工的に付け、こ
の人工傷を通じて、コーティング物の表面側の対極と、
金属素地表面とを電解溶液を介し電気的に短絡させ、金
属素地側を電解溶液中で電気的に一旦アノード側に分極
し、次いでカソード側に分極することを所定回数繰り返
すことにより、強制的にアノード反応およびカソード反
応させて、犠牲防食性金属層の影響なしにコーティング
物の付着劣化を十分に促進させながら、このときのカソ
ード電流密度ピークの変動比によってコーティング物の
付着性を判定することによって、上記目的を達成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はコーティング物の付
着性試験方法およびその装置に関し、詳しくは金属製素
地の表面にコーティングされた非導電性のコーティング
物の付着性を判定するコーティング物の付着性試験方法
およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、メンテナンスフリー化の要求があ
り、金属製品に高耐蝕性が求められている。この目的で
ステンレス鋼板やアルミニウム合金、チタン合金などの
高耐蝕性材料の使用が多くなっている。しかし、これら
の材料はコストが高い上に、加工上の問題点も少なくな
い。従って、通常の金属製品に耐蝕性を求める場合に
は、コスト、加工性などを考慮して、メッキ鋼板を使用
するのが一般的である。その代表的なものに亜鉛メッキ
鋼板がある。
【0003】亜鉛メッキ鋼板は、鋼板表面に亜鉛層をメ
ッキすることにより、鋼板表面を被覆して鉄の腐食を防
止する。しかも、例え傷が入ったとしても、鉄に比べて
亜鉛が溶解し易いため、鉄がカソード、亜鉛がアノード
となる鉄の腐食を抑える犠牲防食作用がある。
【0004】このような亜鉛メッキ鋼板でも、さらなる
高耐蝕性、高耐候性、防水性などの保護と云った各種の
機能を持たせる目的で塗料、シール材、接着剤などが塗
布され、これらの塗布材も高耐久性が求められている。
【0005】一方、これらの要求のもとに、建設現場等
でクレームがつき、仕様変更など対策に急を要する事態
の発生もある。このため、精度よく、かつ迅速に性能を
評価して、設計にフィードバックする必要も生じる。
【0006】特に、塗料、シール材、接着剤等の付着性
は、耐食性、耐候性等と密接な関係があり、水密目的の
シール材などは、これに剥がれが生じると即時に機能を
失うことにもなる。したがって、付着性は耐久性を判断
する上で非常に重要な評価項目となる。
【0007】従来、これらの評価を行う簡易な方法とし
ては、JISK5400の塗料一般試験方法として、
8.5の付着性試験の1つである碁盤目法があり、これ
が多用されている。また、衝撃を与えたときの剥がれの
状態を見る8.3の耐衝撃性試験法や、屈曲変形を与え
たときの剥がれの状態を見る8.1の耐屈曲性試験法な
どもある。また、定量的な評価を行う方法として、引っ
張り試験機を利用した8.7の付着強さ試験方法もあ
る。
【0008】しかし、上記いずれの方法も満足なもので
はない。例えば、碁盤目法は、塗膜に碁盤目状の傷を所
定間隔にて所定数入れ、この傷を入れたときにできる各
枡目での塗膜の剥がれの有無等によって付着性を判別す
るもので、6段階程度しか評価できない。また、耐衝撃
性試験法は、素地の衝撃による変形度合いに応じて、落
球による直接の衝撃を与えるか、互いに整合する丸みの
ある凸部と凹部とを持った撃ち型および受台を介して重
りの落下による衝撃を間接的に与えるかし、衝撃を与え
たときにできる塗膜の割れや剥がれを見るもので、付着
性の違いについては大まかにしか判断できない。さら
に、耐屈曲性試験方法は、塗膜を外にして試験片を折り
曲げたときの塗膜の割れ、剥がれを見るもので、これも
大まかな判断しかできない。
【0009】一方、引っ張り試験機を用いる方法は、ま
ず特定の試験機を選択した上で、試験片の塗膜の表面に
接着剤を塗った後、上から上部引っ張り用の鋼製治具を
載せ、この治具を塗膜に軽くすり付けるようにして塗膜
に治具を接着する。次いで治具の上に重りを載せて治具
からはみ出している接着剤を取り除いて24時間静置す
る。24時間静置すると、治具の四角形な外周に沿って
塗膜に素地に達する切り傷を付け、試験片の外周部の上
面を当て板と下部引っ張り用の鋼製治具により下方に押
え付けながら、上部引っ張り用の治具に上方への引っ張
り力を加え、このときの最大引っ張り力を測定する。
【0010】したがって、このような引っ張り試験機に
よる方法では、試験機に試験片を掛けるまでの前処理
や、試験機の設定、雰囲気条件の設定等に時間と手間が
掛かる。
【0011】しかも、近時では高耐久性の塗膜やシール
材、および接着剤が増加していて、これらの試験を前記
方法で実施しても差異がない場合があり、比較試験でも
差が出ないことが多々ある。
【0012】一方、これらの問題を解消するため、劣化
試験後の密着性を測定する方法がある。例えば、屋外暴
露試験、促進耐候性試験、耐水性試験等により劣化を促
進した後に、付着性を測定して評価する。
【0013】しかし、屋外暴露試験では数カ月から数
年、促進耐候性試験でも数百時間から数千時間を要し、
多大な時間とコストが掛かる。また耐水性試験を経る場
合も同様な問題がある。さらに、これら方法によって
も、優劣がつかない場合もありこうした折角の試験操作
が結局無駄になってしまうこともときとしてある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】ところで本発明者は、
上記試験方法の問題を解消するコーティング物の付着性
試験方法および装置を先に提案している。このものは、
冷間圧延鋼板等の単一材料よりなる金属製素地の表面に
コーティングされた非導電性のコーティング物を検査対
象とし、このコーティング物にこれの表面から素地に達
する傷を人工的に付け、この人工傷を付けた状態でコー
ティング物の表面側の対極と、金属製素地の表面とを、
人工傷部分を通じて電解溶液を介し電気的に短絡させ、
この短絡状態にて前記素地側を電解溶液中で電気的にカ
ソード側に分極することを所定回数繰り返して、強制的
にカソード反応させ、このときのカソード電流密度ピー
クの変動比によってコーティング物の付着性を判定す
る。これによると、金属製素地とコーティング物との間
に人工傷を起点とした、付着劣化を人工的に促進して、
これによるコーティング剥がれの度合いに応じた特異な
カソード電流密度ピークを前記反応操作中に得て、この
カソード電流密度ピークの変動比の違いから、簡易にか
つ短時間で、しかも、高耐久性のコーティング物から低
耐久性のコーティング物に至る幅広いコーティング物の
付着性試験を多段階に正確に定量して判定することがで
きる。
【0015】しかし、前記亜鉛メッキ鋼板を素地とした
コーティング物にこの検査方法を適用すると、コーティ
ング物の剥離幅は余り大きくならず、下記に示した比較
例で明らかであるが、冷間圧延鋼板のようにカソード分
極幅に比例した塗膜剥離は生じない。
【0016】●比較例 冷間圧延鋼板および溶融亜鉛メッキ鋼板よりなる素地の
それぞれに、燐酸亜鉛処理後コーティング物としてカチ
オンタイプの電着塗装を15μm施したものを試料とし
た。
【0017】試料のコーティング表面にカッターナイフ
にて金属素地まで達する図3に示すような長さ30mm
のクロスカット状の傷を入れ、図4に示す装置の装着し
た。
【0018】図4の装置の囲い部材6内に3%塩化ナト
リウム水溶液を入れ、対極に白金、参照極15に飽和カ
ロメル電極を用い、図5に示す装置に構成した。
【0019】この装置にて自然電位から所定のカソード
分極側までカソード分極することを5回繰り返した。
【0020】評価は試験後の試料のクロスカットした人
工傷部にテープを貼ってこれを剥がしたときの人工傷部
の剥離幅を測定して行った。結果を下記の表1に示す
が、冷間圧延鋼板はカソード分極幅が大きいほど塗膜剥
離幅が拡がる。これに対して、溶融亜鉛メッキ鋼板は剥
離幅が余り広がらない。
【0021】
【表1】
【0022】このように、亜鉛メッキ鋼板の塗膜剥離幅
が小さいと、当然得られるカソード電流ピーク比も小さ
くなり、比較定量化が困難となる場合がある。
【0023】これは、亜鉛メッキ層の鋼板に対する犠牲
防食作用が影響することによるものと思われる。
【0024】本発明は、このような問題を解消すること
を課題とし、表面に犠牲防食関係にある金属層を有する
金属製素地である場合の、非導電性コーティング物につ
いて、冷間圧延鋼板単体である場合と同様に、簡易にか
つ短時間で、しかも多段階に正確に定量評価ができるコ
ーティング物の付着性試験方法およびその装置を提供す
ることを目的とするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明のコーティング物
の付着性試験方法は、上記のような目的を達成するため
に、表面に犠牲防食関係にある金属層を有する金属製素
地の上にコーティングされた非導電性のコーティング物
を検査対象とし、このコーティング物にこれの表面から
金属製素地に達する傷を人工的に付け、この人工傷を付
けた状態でコーティング物の表面側の対極と、金属製素
地表面とを、人工傷部分を通じて電解溶液を介し電気的
に短絡させ、この短絡状態にて金属製素地側を電解溶液
中で電気的に一旦アノード側に分極し、次いでカソード
側に分極することを所定回数繰り返して、強制的にアノ
ード反応およびカソード反応させ、このときのカソード
電流密度ピークの変動比によってコーティング物の付着
性を判定することを特徴とする。
【0026】このような構成では、金属製素地が導電性
を有し、金属製素地の表面にコーティングされたコーテ
ィング物が非導電性であるのを利用して、このコーティ
ング物にこれの表面から素地に達する傷を人工的に付け
ることにより、コーティング物の表面側に配した対極
と、金属製素地表面とを、人工傷部を通じて電解溶液を
介し電気的に短絡させることができ、この短絡状態で前
記素地側を電解溶液中で電気的に一旦アノード側に分極
し、次いでカソード側に分極することを所定回数繰り返
して、金属製素地の表面金属層にはアノード反応を、金
属製素地の母材にはカソード反応を、それぞれ強制的に
反応させることにより、金属製素地が犠牲防食関係にあ
る表面金属層を有していることの影響なしに、金属素地
とコーティング物との間にコーティング剥がれが生じる
付着劣化を、前記人工傷を起点として短時間で確実に、
しかもコーティング物の付着性に逆比例した速度で促進
させることができる。その上、前記付着劣化はコーティ
ング剥がれ度合いに応じた特異なカソード電流密度ピー
クを忠実に示すので、短い時間の間の前記電気的な付着
劣化操作中に得られる電気データとしてのカソード電流
密度ピークの変動比の違いから、簡易にかつ短時間で、
しかも、高耐久性のコーティング物から低耐久性のコー
ティング物に至る幅広いコーティング物の付着性試験を
多段階に正確に定量して判定することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明のコーティング物の
付着性試験方法の実施の形態につき実施例を示しながら
説明する。
【0028】まず、本実施の形態の説明に先立ち、一般
的な金属上塗膜、具体的には塗装鋼での、塗膜の付着劣
化について説明する。例えば、関根功編著 防食塗膜の
最新評価法( 書店)によると、一般的な環境下で塗装
された鋼の腐食反応は、図1に示す状況で進行する。な
お図1のiは電流、eは電子を示している。この腐食は
湿食であり、水、酸素の共存下で局部電池を形成して進
行し、その反応は次のようなものであると考えられてい
る。
【0029】アノード反応: Fe→Fe2++2e カソード反応: O2 +2H2 O+4e→4OH- 塗膜破壊部cでの腐食の進行とともに、腐食生成物であ
るさびが塗膜破壊部cに沈積し、塗膜破壊部cでのカソ
ード分極が増大する。このため、カソード部分は塗膜破
壊部の周辺の塗膜aの下の塗膜剥がれ部d(付着結合が
破壊し、水が溜まっている部分)に転移する。カソード
反応により生成する水酸イオンの作用および水の浸透圧
作用により塗膜aの付着結合が破壊され、塗膜剥離が進
行する。
【0030】水酸イオンによる付着破壊は水酸イオンに
よる塗膜aの加水分解、素地bの表面皮膜の溶解等によ
り行われる。
【0031】また、カソード部の塗膜aの剥がれ部dの
発生は、アノード部に比べ数十倍になり、これはカソー
ド部で濃いNaOH溶液が形成され、これを希釈するた
めに塗膜内に多量の水が進入することが主な原因と考え
られている。
【0032】このように、塗装鋼板の塗膜剥がれはカソ
ード反応に多く支配されていることが報告されている。
【0033】本発明は、本発明者が先に提案した試験方
法と同様に、このような知見を利用したもので、図1に
示すようなコーティング物の剥がれ部を、コーティング
物に施した人工傷を通じて金属製素地の犠牲防食関係に
ある表面金属層とのアノード反応と、金属製素地の母体
とのカソード反応とによって、強制的に生じさせ、つま
り付着劣化を電気的に強制的に短時間に生じさせること
により必要時間の短縮を図りながら、この付着劣化の操
作段階で、付着劣化の度合いに応じて生じる特異な電気
的データに注目してこれを計測することにより、付着性
を多段階に定量して高精度に評価できるようにするもの
である。
【0034】図2を参照して本実施の形態について述べ
ると、母材1の表面に犠牲防食関係にある金属層1aを
有した金属製素地Aの上にコーティングされた非導電性
のコーティング物2を検査対象とする。本実施の形態で
は、金属製素地Aとして前掲の溶融亜鉛メッキ鋼板を採
用した。従って、母材1は冷間圧延鋼板であり、表面金
属層1aは溶融亜鉛メッキ層である。非導電性のコーテ
ィング物2は、カチオンタイプの電着塗装を採用し、金
属製素地Aを燐酸亜鉛処理した後にコーティング物2を
電着塗装して施した。
【0035】次いで、このコーティング物2にこれの表
面から金属製素地Aに達する例えば図2、図3に示すよ
うなクロスカット状の傷3を人工的に付け、この人工傷
を付けた状態で図4に示す装置に装着した。図4の装置
の囲い部材6内には例えば3%の塩化ナトリウム水溶液
を電解溶液5として入れ、コーティング物2側の対極4
に白金、参照対極15に飽和カロメル電極を用い、図5
に示す装置に構成した。
【0036】これにより、コーティング物2の表面側の
対極4と、金属製素地Aの表面とを、人工傷3の部分を
通じて電解溶液5を介し電気的に短絡させ、この短絡状
態にて前記金属製素地A側を電解溶液5中で電気的に、
一旦アノード側に分極し、次いでカソード側に分極する
ことを所定回数繰り返して、強制的にアノード反応およ
びカソード反応させる。
【0037】そして、このときのカソード電流密度ピー
クの変動比によってコーティング物2の付着性を判定す
る。この判定のために、試料のクロスカットした人工傷
3の部分をテープ剥離して剥離幅を測定し、この測定し
た剥離幅と、前記カソード反応中のカソード電流密度ピ
ークの初期値および最終値の比との相関性を検討する。
【0038】さらに、具体的には、囲い部材6は塩化ビ
ニル製の筒体で、直径が30mmである。囲い部材6の
下端には外向きのフランジ6aが形成され、これの下面
にシリコンゴム製のパッキング12を貼り合わせて広い
シール面を形成してあることにより、このパッキング1
2を介して囲い部材6を被検面に当てがうだけで、電解
溶液5を入れてもこれが漏れでないようにすることがで
きる。
【0039】また、フランジ6aはクリップ13によっ
て被検面上に密着するようにクランプされ、これによっ
て囲い部材6は試験中被検面上で移動することはない
し、前記シール状態が確固に保持されるようになってい
る。したがって、人がこれを押え続けるような作業なし
に、付着性試験を安定して遂行できる。
【0040】なお、人工傷3は囲い部材6の径内の長さ
であればよく、人工傷3の面積が大きくても判定結果に
影響はない。また囲い部材6の径は必要に応じて種々に
設定できる。
【0041】さらに、図5に示す装置では、給電手段7
および電流検出手段8は、手動で必要電位を設定する市
販のポテンシオスタット21を利用しており、電位の立
ち上げおよび立ち下がりの勾配を別装置としての関数発
生器22によって与えられるようになっている。しか
し、これの機能を持ったポテンシオスタットを用いるこ
ともできる。ポテンシオスタット21は参照極15を持
ち、対極4との間の電位を一定に保つ制御を行う。ポテ
ンシオスタット21は前記アノード分極とカソード分極
との交互の切換えを関数発生器22の機能を利用して、
自動的に、あるいは手操作で自由に行える。
【0042】また付着性判定手段9はポテンシオスタッ
ト21に接続したコンピュータであって、ポテンシオス
タット21による給電操作を制御部20で制御するのに
加え、ポテンシオスタット21が持つ電流検出手段8に
よってカソード分極する都度検出されるカソード電流を
記憶手段23により記憶していき、この記憶手段23に
記憶されている各回のカソード分極時のカソード電流の
データから、演算手段24により各回のカソード分極時
のカソード密度およびこれのピーク値と、1つの試料に
ついての各回のカソード分極時のカソード電流密度のピ
ーク値の変動比とを演算し、この変動比から判定手段2
5によりコーティング物2の付着性を定量化し判定す
る。
【0043】定量化は、ピーク値の変動比に対応して必
要に応じてどのような多段階にも設定することができる
し、これを外部に表示したり、プリントアウトすること
ができる。したがって、試料の外観を観察して評価する
作業も不要である。
【0044】もっとも、前記給電手段7、電流検出手段
8、および付着性判定手段9のそれぞれは、必要な機能
が得られる限りどのような具体的な機器を用いてもよ
く、場合によっては全体を専用の装置に作り上げること
もできる。また、関数発生器22の機能をコンピュータ
の機能で達成することもできる。
【0045】このような試験方法では、金属製素地Aが
導電性を有し、金属製素地Aの表面にコーティングされ
たコーティング物2が非導電性であるので、このコーテ
ィング物2にこれの表面から金属製素地Aに達する傷を
人工的に付けることにより、コーティング物2の表面側
に配した対極4と、金属製素地Aの表面とを、人工傷3
の部分を通じて電解溶液5を介し電気的に短絡させるこ
とができる。
【0046】このような短絡状態で金属製素地A側を電
解溶液5中で電気的に一旦アノード側に分極し、次いで
カソード側に分極することを所定回数繰り返して、金属
製素地Aの表面金属層1aにアノード反応を、金属製素
地Aの母材1にカソード反応をそれぞれ強制的に発生さ
せる。
【0047】これによって、金属素地Aが表面に犠牲防
食関係にある金属層1aを有していることの影響なし
に、金属素地Aとコーティング物2との間にコーティン
グ剥がれが生じる付着劣化を、前記人工傷を起点として
短時間で確実に、しかもコーティング物2の付着性に逆
比例した速度で促進させることができる。その上、前記
付着劣化はコーティング剥がれ度合いに応じた特異なカ
ソード電流密度ピークを忠実に示すので、短い時間の間
の前記電気的な付着劣化操作中に得られる電気データと
してのカソード電流密度ピークの変動比の違いから、図
6に示す実験データのような特異なカソード電流密度ピ
ークを忠実に示すので、簡易にかつ短時間で、しかも、
高耐久性のコーティング物から低耐久性のコーティング
物に至る幅広いコーティング物の付着性試験を多段階に
性格に定量して判定することができる。
【0048】つまり、コーティング物2の剥離はコーテ
ィング物2とその直下にある金属との界面の付着力が低
下することで生じている。
【0049】従って、本発明者の先の提案のように冷間
圧延鋼板のような単一金属で構成されている金属製素地
の場合には強制的にカソード反応を起こすことでコーテ
ィング物界面に水酸イオンを生じさせ、そのアルカリ化
によりコーティング物の付着劣化を生じさせることがで
きる。しかも、そのカソード分極幅が大きいほど剥離は
広がる。
【0050】これに対して、本実施の形態のような亜鉛
メッキ鋼板はカソード反応が亜鉛の犠牲腐食作用により
比較的鉄素地に偏るため、カソード反応により生成する
水酸イオンによるアルカリ化がコーティング物と亜鉛メ
ッキとの界面に与える影響は冷間圧延鋼板に比べて少な
い。
【0051】そこで、亜鉛メッキ鋼板の場合には、アノ
ード分極を組み合わせる方法を採ると、以下のような反
応が起こる。
【0052】まず、亜鉛メッキ鋼板をアノード分極する
と、アノード反応によって鉄および亜鉛の溶解が起こ
る。この際、前記犠牲防食作用により、鉄より亜鉛の溶
解が促進される。亜鉛の溶解に伴う腐食生成物が鉄表面
を覆うようになり、その部位の抵抗が増加する。この状
態から、カソード方向に分極するとカソード反応は鉄部
より亜鉛部で起こり易くなり、亜鉛メッキとコーティン
グ物との界面のアルカリ化が進みコーティング物の付着
劣化が促進される。
【0053】この作用は、鉄素地の場合には最初のアノ
ード反応により鉄の溶解が深さ方向に進み、次のカソー
ド反応による塗膜付着劣化を促進させる効果は得られな
い。
【0054】以上の作用は亜鉛メッキ鋼板だけでなく、
犠牲防食関係にある各種の金属基材と金属表面処理層と
を持った金属素地に共通しており、これに施すコーティ
ング膜全般の付着性試験に本発明は同様に適用できる。
【0055】また、アノード反応とカソード反応の繰り
返し回数やそのときの電位の設定は、母材1および表面
金属層1aの材料、あるいはコーティング物2の材料や
厚み、多層構造等の違いによって種々に選択できる。
【0056】次に本実施の形態の実施例を示す。
【0057】●実施例 電着塗装膜は15μmの厚みに施した。
【0058】人工傷はカッターナイフによって長さ30
mmのクロスカット状の傷とした。
【0059】電解溶液5としての塩化ナトリウム水溶液
は濃度3%とした。
【0060】アノード分極およびカソード分極を繰り返
す電位の掃引は、自然電位から所定のアノード電位にア
ノード分極した後、−4000mVまでカソード分極す
ることを5回繰り返した。
【0061】このときの、カソード電流密度ピークの変
動比と、試料のクロスカットした人工傷部のテープ剥離
により測定した剥離幅との相関の検討結果は以下の表2
の通りである。
【0062】
【表2】
【0063】この表2から分かるように、アノード分極
幅が大きいほど塗膜剥離幅が広がり、電流密度ピークの
比も大きくなっている。
【0064】
【発明の効果】本発明のコーティング物の付着性試験方
法によれば、非導電性のコーティング物にこれの表面か
ら素地に達するように付けた傷を通じた、コーティング
物の表面側に配した対極と、導電性の金属素地表面と
の、電解溶液を介した電気的な短絡状態で、前記金属素
地側に強制的なアノード反応およびカソード反応を繰り
返し及ぼすことにより、金属素地が表面に犠牲防食関係
にある金属層を有していることの影響なしに、金属素地
とコーティング物との間にコーティング剥がれが生じる
付着劣化を、前記人工傷を起点として短時間で確実に、
しかもコーティング物の付着性に逆比例した速度で促進
させることができる。その上、前記付着劣化はコーティ
ング剥がれ度合いに応じた特異なカソード電流密度ピー
クを忠実に示すので、短い時間の間の前記電気的な付着
劣化操作中に得られる電気データとしてのカソード電流
密度ピークの変動比の違いから、簡易にかつ短時間で、
しかも、高耐久性のコーティング物から低耐久性のコー
ティング物に至る幅広いコーティング物の付着性試験を
多段階に正確に定量して判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用する一般の塗膜付着劣化の機構を
説明する模式図である。
【図2】本発明の付着性試験方法に適用する装置の一具
体例を示す基本構成図である。
【図3】図2の装置での試験対象物のコーティング物表
面の人工傷例を示す平面図である。
【図4】図2の基本構成を持った付着性試験装置の要部
を示す断面図である。
【図5】図2の基本構成を持った付着性試験装置の全体
を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態で得られたカソード電流密
度のピーク状態を示すグラフである。
【符号の説明】
A 金属製素地 1 母材 1a 表面金属層 2 コーティング物 3 人工傷 4 対極 5 電解溶液 6 囲い部材 7 給電手段 8 電流検出手段 9 付着性判定手段

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に犠牲防食関係にある金属層を有す
    る金属製素地の上にコーティングされた非導電性のコー
    ティング物を検査対象とし、このコーティング物にこれ
    の表面から金属製素地に達する傷を人工的に付け、この
    人工傷を付けた状態でコーティング物の表面側の対極
    と、金属製素地の表面とを、人工傷部分を通じて電解溶
    液を介し電気的に短絡させ、この短絡状態にて金属製素
    地側を電解溶液中で電気的に一旦アノード側に分極し、
    次いでカソード側に分極することを所定回数繰り返し
    て、強制的にアノード反応およびカソード反応させ、こ
    のときのカソード電流密度ピークの変動比を基にコーテ
    ィング物の付着性を判定することを特徴とするコーティ
    ング物の付着性試験方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012078209A (ja) * 2010-10-01 2012-04-19 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> 被膜劣化評価方法および装置
JP2017211217A (ja) * 2016-05-24 2017-11-30 国立大学法人広島大学 耐食性の評価方法およびめっき製品の修復方法
CN113899680A (zh) * 2020-06-22 2022-01-07 马自达汽车株式会社 伤痕的处理方法及装置、以及耐腐蚀性试验方法及装置

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