JPH09246613A - 電磁波検出素子 - Google Patents

電磁波検出素子

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JPH09246613A
JPH09246613A JP8055216A JP5521696A JPH09246613A JP H09246613 A JPH09246613 A JP H09246613A JP 8055216 A JP8055216 A JP 8055216A JP 5521696 A JP5521696 A JP 5521696A JP H09246613 A JPH09246613 A JP H09246613A
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JP
Japan
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electromagnetic wave
thin film
wave detecting
superconducting
magnetic flux
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Pending
Application number
JP8055216A
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English (en)
Inventor
Taketomi Kamikawa
武富 上川
Tatsuya Shimoda
達也 下田
Eiji Natori
栄治 名取
Setsuya Iwashita
節也 岩下
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Seiko Epson Corp
Original Assignee
Seiko Epson Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡便な構造からなり製造が容易な電磁波検出
素子を提供する。 【解決手段】 超伝導体中あるいは近傍における磁束量
子の運動の電磁波照射による変化を電圧変化として検出
する電磁波検出素子を構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光センサ、マイク
ロ波検出器およびミキサなどに応用される、電磁波検出
部に超伝導体を利用した電磁波検出素子に関する。
【0002】
【従来の技術】電磁波検出部に超伝導体を利用した電磁
波検出素子はボロメトリック型と非ボロメトリック型に
大別できる。
【0003】ボロメトリック型電磁波検出素子は、電磁
波あるいは光の照射によって発生する熱による温度変化
を電気抵抗の変化として捉えるものである。したがっ
て、一般に動作温度は電気抵抗の変化が温度に対して敏
感な超伝導臨界温度近傍に設定される。
【0004】非ボロメトリック型電磁波検出素子にはS
IS素子とSNS素子があり、これらは量子効果を利用
した電磁波検出素子である。SIS素子は、薄い絶縁膜
を2つの超伝導体で挟んだ構造からなり、トンネル型ジ
ョセフソン接合を利用した電磁波検出素子である。一
方、SNS素子は、半導体あるいは常伝導体を2つの超
伝導体で挟んだ構造からなり、超伝導弱結合を利用した
電磁波検出素子である。超伝導弱結合は、SNS構造の
他に、超伝導体の一部をコヒーレンス長程度あるいはそ
れ以下にまで微細化する構造によっても得ることができ
る。
【0005】非ボロメトリック型電磁波検出素子に関す
る従来の技術は、酸化物高温超伝導体の発見以前から金
属超伝導体を用いて地道に研究が進められてきた。そし
て、酸化物高温超伝導体の発見以降その勢いは爆発的な
ものとなり、トンネル型ジョセフソン接合あるいは超伝
導弱結合を実現する新しい構造がいくつか提案されてき
た。以下、トンネル型ジョセフソン接合あるいは超伝導
弱結合を実現する具体的な構造あるいは製造方法につい
て少し詳しく述べる。
【0006】SIS素子の形成にもっともよく用いられ
る方法は、基板上に、第1の超伝導薄膜、絶縁膜、そし
て第2の超伝導薄膜をこの順番に積層する製造工程から
なる。この方法ではトンネル型ジョセフソン接合は基板
表面に垂直な方向に形成される。トンネル型ジョセフソ
ン接合の本質は超伝導電子対のトンネル接合であるか
ら、この構造で良好なトンネル型ジョセフソン接合を得
るためには絶縁膜を均一でピンホールなどの欠陥がない
数10Åの極めて薄い薄膜にする必要があり、第1の超
伝導薄膜と絶縁膜のそれぞれの表面を絶縁膜の膜厚と同
等あるいはそれ以下の精度で平坦にすることが重要であ
る。
【0007】また、第1の超伝導薄膜をパターニングし
て得られる段差部を利用して、基板表面と平行方向にト
ンネル型ジョセフソン接合を形成する方法もある。この
方法についても、良好なトンネル型ジョセフソン接合を
得るためには、絶縁膜を均一でピンホールなどの欠陥が
ない数10Åの極めて薄い薄膜にする必要があり、第1
の超伝導薄膜の段差表面とその上に形成される絶縁膜の
表面を絶縁膜の膜厚と同等あるいはそれ以下の精度で平
坦にすることが重要である。
【0008】SNS素子の構造および製造方法には以下
に述べるものがある。
【0009】第1の方法は、前述のSIS素子の製造方
法と、絶縁膜のかわりに半導体あるいは常伝導体の薄膜
を用いる点を除いて、基本的に同じ方法である。
【0010】第2の方法は、半導体基板上に超伝導薄膜
を形成し、該超伝導薄膜を2つの部分に分割するように
パターニングする方法である。分割された超伝導薄膜は
数100nm以下の間隙で相対する構造をとり、この部
分が超伝導弱結合になる。これは、金属超伝導体を利用
した超伝導トランジスタの製造において用いられる方法
であり、数100nm以下の間隙を得るためにパターニ
ングは電子線リソグラフィーを用いて行われる。なお、
基板としては、半導体基板のかわりに絶縁基板上に半導
体膜を形成したものを用いてもよい。
【0011】第3の方法は、基板の表面に集束イオンビ
ーム(FIB)などを用いて細線状のダメージを与え、
該基板上に超伝導薄膜を形成する方法である。この方法
では、ダメージを与えられた基板部分の上に形成された
超伝導薄膜の超伝導特性が劣化することを利用して超伝
導弱結合を得る。
【0012】第4の方法は、結晶方位の異なる2枚の基
板を張り合わせて、いわゆるバイクリスタル基板を形成
し、その上に超伝導薄膜を形成する方法である。この方
法では、バイクリスタル接合面上に形成された超伝導薄
膜の超伝導特性が劣化することを利用して超伝導弱結合
を得る。
【0013】第5の方法は、基板にあらかじめ段差を形
成し、その上に超伝導薄膜を形成する方法である。この
方法では、段差上に形成された超伝導薄膜の超伝導特性
が劣化することを利用して超伝導弱結合を得る。
【0014】以上述べた第3から第5の方法は、酸化物
高温超伝導体の出現以降に発展した技術である。
【0015】また、超伝導体の一部をコヒーレンス長程
度あるいはそれ以下にまで微細化することによって弱結
合を得る方法については、例えば酸化物超伝導体の場合
にはそのコヒーレンス長である数nmに対応できる微細
加工技術が必要である。
【0016】以上述べたSIS素子とSNS素子の構造
および製造方法はトンネル型ジョセフソン接合あるいは
超伝導弱結合を人工的に形成するものであるが、この他
に、酸化物超伝導体を作製するときにその内部に自然に
形成される粒界部をトンネル型ジョセフソン接合あるい
は超伝導弱結合として利用する方法もある。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】ボロメトリック型電磁
波検出素子には以下に述べる欠点がある。
【0018】一つは動作温度を超伝導臨界温度近傍に設
定することに起因するものであり、動作温度範囲のマー
ジンが小さいことである。もう一つは温度変化を捉える
という動作原理に起因するものであり、応答性が遅いと
いうことである。この理由により、ボロメトリック型電
磁波検出素子の応用範囲は電磁波の有無およびその強度
を検出する分野に限られ、高周波情報信号処理の分野に
応用することは困難である。
【0019】従来の非ボロメトリック型電磁波検出素子
には以下に述べる欠点がある。
【0020】人工的に形成したトンネル型ジョセフソン
接合あるいは超伝導弱結合を用いる方法はどれもトンネ
ル型ジョセフソン接合あるいは超伝導弱結合を形成する
ための特別なプロセスを必要とする。しかも、そのプロ
セスは簡単ではなく、加工精度や安定した品質を得るこ
とが難しいプロセスである。SIS素子については、特
に酸化物高温超伝導体を用いる場合、平坦な表面を持つ
良質な超伝導薄膜の作製とピンホールがなく平坦な表面
を持つ絶縁膜の作製が難しく、良好なトンネル型ジョセ
フソン接合特性を得たという報告は未だなされていな
い。また、SNS素子については、超伝導弱結合特性が
得られたという報告はあるものの、何れも実験室レベル
であり、量産化に耐えられるような安定かつ再現性のあ
るレベルには到底到達していない。
【0021】さらにまた、粒界部に自然形成されたトン
ネル型ジョセフソン接合あるいは超伝導弱結合を用いる
方法では、その形成を人工的に制御することが難しいの
で特性バラツキを押えることは困難である。
【0022】以上述べたように、超伝導体を用いた従来
の非ボロメトリック型電磁波検出素子の構造とその作製
技術には、素子作製の歩留まりが低いこと、そして素子
特性の安定性と再現性が得にくいことという欠点があ
る。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる欠点を
取り除き、歩留まりが高くて特性バラツキの少ない電磁
波検出素子の構造と製造工程を提供するものであり、電
磁波検出部に超伝導体を利用した電磁波検出素子におい
て、磁束量子が電磁波検出部における超伝導状態の部分
に取り囲まれる場所に存在すること、超伝導体に照射さ
れる電磁波が該磁束量子の運動に影響を与えること、そ
して該磁束量子の運動によって発生する電圧を検出する
ことを特徴とする。また、電磁波検出部は第2種超伝導
体であり、該電磁波検出部を貫く磁束量子が存在するこ
と、該電磁波検出部に照射される電磁波が該磁束量子の
運動に影響を与えること、そして該磁束量子の運動によ
って発生する電圧を検出することを特徴とする。あるい
はまた、電磁波検出部は内部に非超伝導部分が設けられ
た超伝導薄膜であり、該非超伝導部分を貫く磁束量子が
存在すること、該電磁波検出部に照射される電磁波が該
磁束量子の運動に影響を与えること、そして該磁束量子
の運動によって発生する電圧を検出すること、必要に応
じて、電磁波検出部の内部に設けられた非超伝導部分は
超伝導薄膜をエッチングして形成したことを特徴とす
る。さらにまた、電磁波検出部は基板上に形成された超
伝導薄膜からなり、該電磁波検出部は直線ラインより長
い距離をもつ形状であること、必要に応じて、電磁波検
出部はジグザグ形状ラインにパターニングされた一層の
超伝導薄膜であることを特徴とする。さらに必要に応じ
て、電磁波検出部が酸化物高温種超伝導体であることを
特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を用いて説明する。
【0025】(実施例1)図1は、本発明の実施例1に
おける電磁波検出素子の構造を示す図である。図1にお
いて、1は基板、2は超伝導薄膜、3は電流電極、そし
て4は電圧電極である。
【0026】この構造を得るための製造工程は以下のと
おりである。最初に、基板1の全面に超伝導薄膜と電極
用薄膜をこの順番で成膜する。基板はチタン酸ストロン
チウムからなる単結晶基板である。超伝導薄膜は酸化物
高温超伝導体であるYBCO系超伝導材料からなり、ま
た電極用薄膜の材料は金である。基板は、表面を清浄化
するためにあらかじめ洗浄工程を通しているが、それ以
外に特別な加工処理を施していない。超伝導薄膜の成膜
は分子線エピタキシー(MBE)法を用いて行ってい
る。本実施例における超伝導薄膜の膜厚は1000Åで
ある。この超伝導薄膜をX線極点図形法によって評価し
たところ、優れた単結晶性が示された。したがって、ト
ンネル型ジョセフソン接合あるいは超伝導弱結合を自然
形成する粒界部は皆無である。YBCO系超伝導材料
は、このように比較的容易に高品質な薄膜が得られるの
で、本発明の電磁波検出素子の材料として都合がよい。
次に、電極用薄膜をパターニングして電流電極3と電圧
電極4を同時形成し、続いて超伝導薄膜2をパターニン
グ形成する。以上の工程によって図1の構造を得る。本
実施例の最小パターン巾は超伝導薄膜2のライン巾であ
る。本実施例ではライン巾が10μm、20μm、およ
び30μmの3種類の試料を試作した。そのパターニン
グにはフォトリソグラフィー法を用いた。これらのライ
ン巾のパターニングは通常のフォトリソグラフィー法に
よって容易に行えるサイズである。なお、超伝導薄膜2
の超伝導転移温度Tcは88Kであった。
【0027】図2は、電磁波検出素子のI/V特性を示
す図である。I/V特性は、ライン両端の電流電極間に
電流電源から電流を流し、該ラインに発生する電圧を電
圧電極を用いて測定することにより得られる。I/V特
性の測定は、電磁波検出素子に電磁波を照射しない場合
と照射する場合の2つの場合について行った。測定温度
は、Tcより充分低くボロメトリック効果が生じない温
度である55Kに設定した。図2において、5は電磁波
を照射しない場合のI/V特性であり、また6は電磁波
を照射した場合のI/V特性である。Icは電磁波を照
射しない場合の臨界電流である。本実施例では、超伝導
薄膜からなるラインが電磁波検出として機能する。
【0028】図3は、電磁波の強度と臨界電流の関係を
示す図である。電磁波の強度は電磁波源の出力パワーを
用いて定義した。図3は、臨界電流は電磁波の照射強度
が強いほど小さくなることを示している。
【0029】実際の電磁波検出は、電磁波検出素子のI
/V特性の変化を見ることによって行う。すなわち、適
当な定電流バイアスを印加しておき、その時に発生する
電圧を測定して、電磁波の検出を行う。定電流バイアス
の大きさは、電磁波を照射しない場合の臨界電流Icと
同程度かあるいはそれより少し高い値が適当である。と
いうのは、バイアスがIcよりあまり小さいと微弱電磁
波に対しては電圧が発生しないために電磁波検出を行う
ことができず、また、バイアスがIcよりあまり大きい
と電磁波が存在しないときにも電圧が発生するため、本
来不必要な電力消費が発生して消費電力が大きくなるか
らである。
【0030】ここで、本発明の電磁波検出素子の動作原
理を述べると、それは以下のとおりである。
【0031】最初に、電磁波を照射しない場合の電磁波
検出素子のI/V特性について述べる。この場合にはゼ
ロ電流から臨界電流Icまでの範囲では、電圧を発生す
ることなく、超伝導電流が流れる。電流がIcを越える
と電圧が発生する。一般には臨界電流は超伝導状態を破
壊する電流の大きさとして定義される。しかし、ここで
示される臨界電流Icは、その定義とは異なり、磁束量
子がピン止め状態から解放されて超伝導薄膜中を動き始
める電流の大きさとして定義される。YBCO系超伝導
薄膜は第2種超伝導体であるので、磁束は超伝導薄膜を
貫くことができる。すなわち、磁束量子は超伝導状態の
部分に取り囲まれる場所に存在できる。その磁束量子は
超伝導薄膜自身に流れる電流によって発生する。超伝導
薄膜を貫く磁束量子には電流が流れることによるローレ
ンツ力が働く。電流が小さいうちは超伝導薄膜自身のピ
ン止め力がローレンツ力より大きいので磁束量子は超伝
導薄膜中にピン止めされる。一方、電流が大きくなって
ローレンツ力がピン止め力より大きくなると、磁束量子
が超伝導薄膜中を動き回るようになり、その結果電圧が
発生する。その分岐点になる電流の大きさがIcであ
る。この考えに従ってI/V特性を定量的に導くモデル
は、T.Van Duzer,C.W.Turner:
超伝導デバイスおよび回路の原理(原,菅原訳,コロナ
社,1983)pp.287〜291およびK.MAT
SUI,T.AWAJI,T.HIRANO,T.FU
JII,K.SAKUTA and T.KOBAYA
SHI:Jpn.J.Appl.Phys.31(19
92)L1342に示されている。
【0032】次に、電磁波を照射した場合の電磁波検出
素子のI/V特性について述べる。電磁波を照射する
と、それによって発生する電流が電流電源から流す電流
に重畳される。その結果、磁束量子の挙動は電磁波がな
い場合と差異を生じ、発生する電圧も異なってくる。す
なわち、電磁波を照射すると電圧が発生しやすくなり、
臨界電流は小さくなる。この場合のI/V特性は、前述
のモデルを拡張することによって定量的に取り扱うこと
ができる。その結果、I0sinωtの電磁波を照射し
た場合のI/V特性は、I≧Icのとき、 である。ただし、係数Aは で与えられる。ここで、Lはライン長、Sはライン断面
積、Φ0は磁束量子、αは自己磁気係数、そしてηは磁
束量子が超伝導薄膜中を運動するときの粘性係数であ
る。自己磁気係数αは、超伝導薄膜を流れる電流Iとそ
れ自身によって発生する磁場Bとを関係付ける係数であ
り、B=αIによって導入される。
【0033】式(1)によれば、電磁波の電流振幅I0
が大きくなるほど発生する電圧が大きくなる。これは実
験と合致する。また、電流振幅I0を一定とするとき、
係数Aが大きいほど電磁波の照射によって発生する電圧
は大きくなる。これは電磁波に対する検出感度が向上す
ることを意味する。
【0034】図4は、電磁波による発生電圧のライン巾
依存性を示す図である。測定は、ライン巾が10μm、
20μm、および30μmの3つの試料について行い、
臨界電流Icをバイアス電流として一定強度の電磁波を
照射したときに発生する電圧を読みとることによって行
った。超伝導薄膜の膜厚は一定であるので、ライン巾を
変えることはライン断面積Sを変えることに対応する。
図4によれば、電磁波により発生する電圧はライン巾に
ほぼ反比例している。これは式(2)と合致している。
なお、臨界電界電流Icはライン巾の変化にほぼ比例し
て変化した。これは、臨界電流Icは臨界電流密度と断
面積Sの積として表されること、そして臨界電流密度は
材料が同じであるとき一定であることを考えれば、きわ
めて合理的な結果である。
【0035】(実施例2)図5は、本発明の実施例2に
おける電磁波検出素子の構造を示す図である。製造方法
と材料は実施例1とまったく同じである。本実施例の電
磁波検出素子では超伝導薄膜からなるラインがジグザグ
形状にパターニングされている。この構造を用いるとラ
イン長Lが長くなるので、式(2)で示される係数Aが
大きくなり、その結果として電磁波の検出感度が向上す
る。
【0036】図6は、電磁波による発生電圧のライン長
依存性を示す図である。測定は、ライン長が50μm、
100μm、および150μmの電磁波検出素子に対し
て行い、臨界電流Icをバイアス電流として一定強度の
電磁波を照射したときに発生する電圧を読みとることに
よって行った。ライン巾はすべて20μmである。測定
条件は実施例1とまったく同じである。図6によれば、
電磁波により発生する電圧はライン長にほぼ比例してい
る。これは式(2)と合致している。
【0037】臨界電流はライン長Lが長くなるに従って
若干減少する。これは、式(1)、(2)からは説明で
きないが、ライン長が長いほど超伝導薄膜中の膜欠陥で
ある非超伝導状態部分を拾う確率が高くなるためと考え
られる。ただし、この減少はわずかであり、無視して差
し支えない程度である。一方、実施例1で述べたよう
に、臨界電流はライン巾には比例する。したがって、ラ
イン長Lとライン巾を適当に組み合わせれば、広い範囲
に渡って所望の臨界電流値と検出感度を選択できること
になり、特性設計の自由度が広がるという利点がある。
【0038】ラインをジグザグ形状にする目的はライン
長を長くすることである。したがって、ライン長を直線
形状より長くする形状であれば、その形状はジグザグ形
状だけに限られるものではない。
【0039】(実施例3)図7は、本発明の実施例3に
おける電磁波検出素子の構造を示す図である。製造方法
と材料は実施例1とまったく同じである。本実施例の電
磁波検出素子では超伝導薄膜からなるラインの中に超伝
導薄膜のない非超伝導部分の溝が形成されている。この
溝は超伝導薄膜ラインを形成するフォトエッチングにお
いてラインと同時にエッチング形成される。ラインはこ
の溝によって2本のラインに分割されていて、2本のラ
インの巾はそれぞれ10μmであり、したがってライン
全体の実効巾は20μmである。
【0040】本実施例の電磁波検出素子の電磁波の検出
感度を、電磁波を照射したときに発生する電圧を用いて
評価した。測定条件は実施例1とまったく同じである。
その結果、ライン長が同じでライン巾が20μmの実施
例1の構造からなる電磁波検出素子の感度の約1.2倍
であった。これは、磁束量子が非超伝導部分である溝を
貫くことが容易にできるので、自己磁気係数αが大きく
なることとして説明できる。また、臨界電流値は約1.
5倍であり、これは磁束量子が溝にピン止めされること
として説明できる。
【0041】本実施例の電磁波検出素子の構造を用いれ
ば、特性設計の自由度を広げることができる。さらに、
本実施例の構造を実施例2の構造と組み合わせて、本実
施例の構造からなる超伝導薄膜ラインを直線ではない形
状、たとえばジグザグ形状にすれば、特性設計の自由度
をより広い範囲にまで広げることができる。
【0042】なお、超伝導薄膜の内部に形成される非超
伝導部分の形状は図7に示されるような1本の溝に限定
されるものではなく、例えば、複数本の溝からなる構
造、あるいは複数個の穴からなる構造であってもよい。
【0043】
【発明の効果】以上述べてきたように、本発明によれ
ば、電磁波検出部に超伝導体を利用した電磁波検出素子
において、磁束量子が電磁波検出部の超伝導状態の部分
に取り囲まれる場所に存在すること、超伝導体に照射さ
れる電磁波が該磁束量子の運動に影響を与えること、そ
して該磁束量子の運動によって発生する電圧を検出する
ことによって、または、電磁波検出部は第2種超伝導体
であり、該電磁波検出部を貫く磁束量子が存在するこ
と、該電磁波検出部に照射される電磁波が該磁束量子の
運動に影響を与えること、そして該磁束量子の運動によ
って発生する電圧を検出することによって、あるいはま
た、電磁波検出部は内部に非超伝導部分が設けられた超
伝導薄膜であり、該非超伝導部分を貫く磁束量子が存在
すること、該電磁波検出部に照射される電磁波が該磁束
量子の運動に影響を与えること、そして該磁束量子の運
動によって発生する電圧を検出することによって、さら
にまた、電磁波検出部を基板上に形成された超伝導薄膜
から形成して該電磁波検出部を直線ラインより長い距離
をもつ形状にすることによって、簡便な構造からなり、
感度の高い電磁波検出素子を提供することができる。
【0044】さらに本発明によれば、その構造簡便性か
ら、製造における高歩留まり化と特性バラツキの低減化
に効果がある。また、電磁波検出素子の特性設計の自由
度が大きいという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1における電磁波検出素子の構
造を示す図。
【図2】電磁波検出素子のI/V特性を示す図。
【図3】電磁波の強度と臨界電流の関係を示す図。
【図4】電磁波による発生電圧のライン巾依存性を示す
図。
【図5】本発明の実施例2における電磁波検出素子の構
造を示す図。
【図6】電磁波による発生電圧のライン長依存性を示す
図。
【図7】本発明の実施例3における電磁波検出素子の構
造を示す図。
【符号の説明】
1 基板 2 超伝導薄膜 3 電流電極 4 電圧電極 5 電磁波を照射しない場合のI/V特性 6 電磁波を照射した場合のI/V特性
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩下 節也 長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコ ーエプソン株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電磁波検出部に超伝導体を利用した電磁
    波検出素子において、磁束量子が電磁波検出部における
    超伝導状態の部分に取り囲まれる場所に存在すること、
    超伝導体に照射される電磁波が該磁束量子の運動に影響
    を与えること、そして該磁束量子の運動によって発生す
    る電圧を検出することを特徴とする電磁波検出素子。
  2. 【請求項2】 電磁波検出部に超伝導体を利用した電磁
    波検出素子において、電磁波検出部は第2種超伝導体で
    あり、該電磁波検出検出部を貫く磁束量子が存在するこ
    と、該電磁波検出部に照射される電磁波が該磁束量子の
    運動に影響を与えること、そして該磁束量子の運動によ
    って発生する電圧を検出することを特徴とする電磁波検
    出素子。
  3. 【請求項3】 電磁波検出部に超伝導体を利用した電磁
    波検出素子において、電磁波検出部は内部に非超伝導部
    分が設けられた超伝導薄膜であり、該非超伝導部分を貫
    く磁束量子が存在すること、該電磁波検出部に照射され
    る電磁波が該磁束量子の運動に影響を与えること、そし
    て該磁束量子の運動によって発生する電圧を検出するこ
    とを特徴とする電磁波検出素子。
  4. 【請求項4】 電磁波検出部の内部に設けられた非超伝
    導部分は超伝導薄膜をエッチングして形成したことを特
    徴とする請求項3記載の電磁波検出素子。
  5. 【請求項5】 電磁波検出部は基板上に形成された超伝
    導薄膜からなり、該電磁波検出部は直線ラインより長い
    距離をもつ形状であることを特徴とする請求項1、2、
    あるいは3記載の電磁波検出素子。
  6. 【請求項6】 電磁波検出部はジグザグ形状ラインにパ
    ターニングされた一層の超伝導薄膜であることを特徴と
    する請求項5記載の電磁波検出素子。
  7. 【請求項7】 電磁波検出部が酸化物高温種超伝導体で
    あることを特徴とする請求項1、2、あるいは3記載の
    電磁波検出素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002094133A (ja) * 2000-07-28 2002-03-29 Schlumberger Technol Inc 超伝導単光子検出器

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