JPH09242507A - 蒸気タービンの起動制御装置 - Google Patents

蒸気タービンの起動制御装置

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JPH09242507A
JPH09242507A JP4631496A JP4631496A JPH09242507A JP H09242507 A JPH09242507 A JP H09242507A JP 4631496 A JP4631496 A JP 4631496A JP 4631496 A JP4631496 A JP 4631496A JP H09242507 A JPH09242507 A JP H09242507A
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thermal stress
optimum
rotor
state quantity
steam turbine
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JP4631496A
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English (en)
Inventor
Shoyu Nakai
井 昭 祐 中
Masashi Nakamoto
本 政 志 中
Shinji Hayashi
真 司 林
Atsuyuki Kakehi
敦 行 筧
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 蒸気条件を考慮しながらタービンロータの熱
応力を所定値以下に抑えつつ、起動時間を可及的に短縮
すること。 【解決手段】 プラント状態量に基づき起動過程中にタ
ービンロータに発生する熱応力を予測する予測手段(1
2)と、得られた予測熱応力を規制値以下に抑え、かつ
起動時間が最短になるようなプラント状態量の最適推移
パターンを演算する最適パターン演算手段(13)と、
プラント状態量の測定値が最適推移パターンに追従する
ようにタービン制御の操作量を所定の制御周期ごとに調
節する操作量調節手段(14,15)と、得られた操作
量に従って蒸気タービンを起動制御するタービン制御装
置(11)とを備えた蒸気タービンの起動制御装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、蒸気タービンの起
動制御装置、特に起動・停止を頻繁に繰返すことが要求
されるような蒸気タービンの起動制御装置に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】一般に蒸気タービンにおいては、その起
動時、蒸気温度の上昇および蒸気流量増大による蒸気・
ロータ間の熱伝達率の向上に従ってタービンロータの表
面メタル温度が上昇する。
【0003】一方、タービンロータの内部はロータ表面
からの熱伝導によって表面温度よりも遅れて温度上昇す
るため、タービンロータ内部での温度分布に偏りが生
じ、それに基づいて熱応力が発生する。また、1回の起
動に対する寿命消費量はその時の熱応力のピーク値と回
数により定量的に把握し得ることが知られている。
【0004】近年、発電用プラントでは、急速な起動・
停止を頻繁に繰返すような運用が要求されている。した
がって、蒸気タービンの起動時には上記熱応力を制限値
以内に抑制し、かつ1回の起動に対するロータ寿命消費
量をできるだけ少なくするような起動方法が要求され
る。
【0005】この問題に対する従来技術の一例について
説明する。
【0006】蒸気タービンの起動時に熱応力的に最も厳
しい状況下にあるのは、高圧タービン第1段後、および
再熱部第1段後の各ロータ表面部分である。この部分の
熱応力を計算するためにはロータの表面温度を測定する
必要があるが、タービン運転中にロータ表面温度を測定
するのは非常に困難である。しかしながら、ロータ表面
温度はケーシング内面メタル温度にほぼ等しく、実用的
に代替可能であることが知られている。そこで、ロータ
表面温度はケーシング内面メタル温度の測定値で代替で
きるものとし、測定可能な量であるとして取扱うことに
する。
【0007】従来技術においては、図6に示すように、
蒸気タービンは起動スケジュール、すなわち制御量、例
えばタービンの回転速度Nや負荷Pの起動開始後の時間
的推移を示す設定パターンすなわち起動スケジュールに
従って起動制御される。図に示すように、起動開始から
タービン回転速度Nが定格回転速度Nr に達するまで
は、その設定値に等しくなるように速度制御を行い、そ
の後は、発電機を介して負荷を取り始めると、定格回転
速度Nr (すなわち、系統周波数)に保持した状態で負
荷Pを定格負荷Pr に向けて設定値に等しくするように
負荷制御が行われる。このように、図6中に折れ線で示
したような回転速度Nおよび負荷Pの設定パターンに従
って蒸気タービンの起動制御を行う。この起動スケジュ
ールを決定するパラメータは昇速率(タービン回転速度
の時間変化率)、負荷上昇率(タービン負荷の時間変化
率)、およびヒートソーク時間(起動過程において負荷
Pや回転速度Nを暫時一定値に保持する運転を行う時
間)である。
【0008】これらのパラメータはミスマッチチャート
により決定される。ミスマッチチャートでは、起動時の
主蒸気温度から求められる高圧第1段蒸気温度の推定値
と、高圧第1段後のケーシング内面メタル温度測定値と
の差として求められるミスマッチ温度から、昇速率およ
び負荷上昇率等のパラメータを幾つかのパターンの中か
ら選択する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述の起動制御は、タ
ービン起動時に、有限個のパターンの中から特定の起動
スケジュールを選択する方法によっている。このため、
最大熱応力が規制されている場合、必ずしも起動時間が
最短になるような起動スケジュールを選択できるとは限
らず、この意味で必ずしも最適な制御と言えるものでは
なかった。以下、熱応力が規制値以下に制限されるとい
う条件を満たしつつ、起動時間が最短になるような起動
方式を「最適な起動」と表現することにする。
【0010】タービン起動に際してはタービン起動直前
に全ての起動スケジュールを決定してしまうため、従来
はボイラ条件等の変化により蒸気条件が変化した場合、
その変化に対応してスケジュールを再調整することがで
きなかった。このため、ロータに発生する熱応力は、起
動時に予測した値とは大きく異なる値をとることがあ
り、場合によっては過大な熱応力が発生するおそれがあ
った。この過大熱応力はタービン寿命を短縮させるので
好ましくない。
【0011】また従来の起動制御では、起動中のボイラ
条件の変化を予め正確に予測することが困難であること
から、ボイラ条件の予測値と実際値の不確定性を考慮
し、多少の余裕をもった起動スケジュールを作成する必
要があった。このような理由からも、従来はタービンの
起動に必要以上に長い時間を要していた。
【0012】したがって本発明は、蒸気条件を考慮しな
がらタービンロータの熱応力を所定値以下に抑えつつ、
起動時間を短縮し得る蒸気タービンの起動制御装置を提
供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため
に請求項1の発明は、プラント状態量に基づき起動過程
中に蒸気タービンのロータに発生する熱応力を予測する
熱応力予測手段と、この熱応力予測手段によって得られ
た予測熱応力を規制値以下に抑え、かつ起動時間が最短
になるようなプラント状態量の最適推移パターンを演算
する最適パターン演算手段と、プラント状態量の測定値
が最適パターン演算手段によって算出された最適推移パ
ターンに追従するようにタービン制御の操作量を所定の
制御周期ごとに調節する操作量調節手段と、この操作量
調節手段によって調節された操作量に従って蒸気タービ
ンを起動制御するタービン制御装置とを備えた蒸気ター
ビンの起動制御装置を要旨とするものである。
【0014】請求項2の発明は、プラント状態量に基づ
き起動過程中に蒸気タービンのロータに発生する熱応力
を予測する熱応力予測手段と、この熱応力予測手段によ
って得られた予測熱応力を規制値以下に抑え、かつ起動
時間が最短になるようなプラント状態量の最適推移パタ
ーンを演算する最適パターン演算手段と、プラント状態
量の測定値の変化率が最適パターン演算手段によって算
出された最適推移パターンによるプラント状態量の変化
率に追従するようにタービン制御の操作量を所定の制御
周期ごとに調節する操作量調節手段と、この操作量調節
手段によって調節された操作量に従って蒸気タービンを
起動制御するタービン制御装置とを備えた蒸気タービン
の起動制御装置を要旨とするものである。
【0015】請求項3の発明は、請求項1または2に記
載の起動制御装置において、プラント状態量がタービン
ロータの表面温度であることを特徴とする。
【0016】請求項4の発明は、プラント状態量に基づ
き起動過程中に蒸気タービンのロータに発生する熱応力
を予測する熱応力予測手段と、この熱応力予測手段によ
って得られた予測熱応力を規制値以下に抑え、かつ起動
時間が最短になるようなプラント状態量の最適推移パタ
ーンを演算する最適パターン演算手段と、タービンロー
タ内の現在の温度分布を求めるロータ内温度分布演算手
段と、このロータ内温度分布演算手段によって得られた
ロータ内温度分布に基づいて現在のプラント状態量の推
定値を求め、この推定値が最適パターン演算手段によっ
て算出された最適推移パターンに追従するようにタービ
ン制御の操作量を所定の制御周期ごとに調節する操作量
調節手段と、この操作量調節手段によって調節された操
作量に従って蒸気タービンを起動制御するタービン制御
装置とを備えた蒸気タービンの起動制御装置を要旨とす
るものである。
【0017】請求項5の発明は、請求項4記載の起動制
御装置において、プラント状態量が、(蒸気温度−ター
ビンロータ表面温度)×(蒸気・ロータ間熱伝達率)で
表される状態量であることを特徴とする。
【0018】請求項6の発明は、請求項1ないし5のい
ずれかに記載の起動制御装置において、最適パターン演
算手段において熱応力が規制値以下であるという条件の
代わりかそれと併用して、タービンロータの寿命消費量
が規制値以下であるという条件を用いることを特徴とす
る。
【0019】請求項7の発明は、請求項1ないし6のい
ずれかに記載の起動制御装置において、最適パターン演
算手段における最適推移パターンの計算周期と操作量調
節手段における操作量の調整周期が異なることを特徴と
する。
【0020】請求項8の発明は、請求項1ないし7のい
ずれかに記載の起動制御装置において、熱応力予測手段
における熱応力またはロータの寿命消費量の予測を、ロ
ータの半径方向の温度分布を考慮した熱方程式を差分法
により解くことにより実現することを特徴とする。
【0021】請求項9の発明は、請求項1ないし8のい
ずれかに記載の起動制御装置において、最適推移パター
ンを計算する制御ループと、実際の状態量を最適値に一
致させるための制御ループを合わせ持ち、両制御ループ
がカスケードに接続されていることを特徴とする。
【0022】請求項10の発明は、請求項1ないし5の
いずれかに記載の起動制御装置において、操作量がター
ビンの昇速率または負荷上昇率を制御するための操作量
であることを特徴とする。
【0023】請求項11の発明は、請求項1ないし5の
いずれかに記載の起動制御装置において、操作量がター
ビンの蒸気流量を制御するための操作量であることを特
徴とする。
【0024】請求項12の発明は、請求項1または2に
記載の起動制御装置において、最適推移パターンを数理
計画法により求めることを特徴とする。
【0025】請求項13の発明は、請求項1または2に
記載の起動制御装置において、熱応力予測に非線形数学
モデルを用い、最適状態量推移パターンを非線形最適化
手法で解くことを特徴とする。
【0026】請求項14の発明は、請求項1または2に
記載の起動制御装置において、熱応力予測手段が複数の
タービンロータに対応する複数の熱応力を予測するもの
であり、最適パターン演算手段が複数の熱応力のそれぞ
れに対応する複数の最適推移パターンを演算するもので
あり、操作量調節手段が複数の最適推移パターンに対応
する複数の操作量を算出した後、その複数の操作量のう
ち、熱応力またはロータの寿命消費量が最も小さくなる
ような操作量を選択して出力するものであることを特徴
とする。
【0027】請求項15の発明は、請求項14記載の起
動制御装置において、複数のタービンロータに対し、そ
れぞれ最適な熱応力または寿命消費量の規制値が設定さ
れていることを特徴とする。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態を説明する。 <発明の実施の形態>図1に示すように、本発明による
蒸気タービンの起動制御装置は、蒸気タービン10を制
御するタービン制御装置11に付加される熱応力予測モ
デル12、最適パターン演算器13、比較部14、およ
び操作量調節器15を備えている。熱応力予測モデル1
2および最適パターン演算器13は比較部14を介して
操作量調節器15に入力するためのプラント状態量推移
パターンすなわちプラント状態量設定値パターンを演算
するようにカスケード接続構成をとっている。また熱応
力予測モデル12および最適パターン演算器13にはそ
れぞれ熱応力およびプラント状態量の測定値が入力され
る。
【0029】熱応力予測モデル12は、最適パターン演
算器13から与えられるプラント状態量、例えばロータ
表面温度等を入力とし、将来のある期間にわたってター
ビンロータに発生する熱応力を予測する。最適パターン
演算器13は熱応力予測モデル12から与えられる予測
熱応力に基づいて、最適な起動が行われるときのプラン
ト状態量推移パターンを各制御周期ごとに計算する。カ
スケード接続の熱応力予測モデル12および最適パター
ン演算器13の相互作用であるが、図2に概念的に示す
ように、例えば最適パターン演算器13が破線で示す特
性線b1 のようなプラント状態量最適推移パターンを出
力したとすれば熱応力予測モデル12はそれに基づいて
破線で示す特性線a1 のような熱応力推移を予測し、そ
の逆に熱応力予測モデル12が実線で示す特性線a2
ような熱応力推移を予測すると最適パターン演算器13
はその熱応力推移に基づいて実線で示す特性線b2 のよ
うなプラント状態量最適推移パターンを算出する。
【0030】ここで熱応力に鎖線で示す規制値が設定さ
れているとすると、特性線b1 で示す最適推移パターン
では熱応力推移がその規制値を満足しないので、それを
満たすべく実線で示す特性線a2 のような熱応力推移と
なすべく最適パターン演算器13によりその熱応力推移
に基づいて実線で示す特性線b2 のようなプラント状態
量最適推移パターンを算出する。熱応力予測モデル12
は、改めて最適パターン演算器13により算出されたプ
ラント状態量に基づいて熱応力推移が規制値を超えない
ぎりぎりのものであることを確認して、この演算過程は
一応収束する。かくして結果的に、最適パターン演算器
13は、熱応力予測モデル12による予測熱応力が規制
値以下に収まるという条件を満たしながら(図2におけ
る特性線a2 のように)、最短の起動時間を達成し得る
プラント状態量最適推移パターン(図2における特性線
2 のような)を算出し、それを比較部14に操作量調
節器15のための設定値データとして送出する。
【0031】比較部14は、制御の結果得られた蒸気タ
ービン10の実際の状態量を最適パターン演算器13に
よって得られたプラント状態量最適推移パターンと比較
し、その偏差を求めて操作量調節器15に入力する。操
作量調節器15は比較部14によって得られた状態量偏
差をゼロにするための操作量を演算し、それをタービン
制御装置11に送出する。タービン制御装置11は与え
られた操作量に基づいてタービン10の状態量、例えば
昇速率や負荷上昇率等をフィードバック制御する。
【0032】タービンロータに発生する熱応力はロータ
内部の温度分布に基づいて計算できることが知られてい
る。また、タービンロータ内部の温度分布は熱伝達微分
方程式を解くことによって計算することができるので、
タービン運転中でもロータに発生する熱応力の値を推定
することは可能である。蒸気タービンプラントでは一般
に起動・停止時および負荷変動過程を含む常時、タービ
ンロータに発生する熱応力監視を行っており、そのた
め、上述の考え方による熱応力演算手段を備えているも
のが多い。ここで用いられる熱応力監視のための演算式
を多少変形することにより、熱応力予測モデル12を構
成することができる。
【0033】熱応力予測モデル12はロータ表面温度等
のプラント状態量を入力とする数学モデルで表現され
る。この熱応力予測モデル12を用いると、現在から将
来までのある期間にわたるモデル入力(プラント状態
量)を仮定することにより、その期間内に発生する熱応
力を計算することができる。逆に、熱応力予測モデル1
2の出力である予測熱応力に対して、それが規制値を超
えないという制限を設定したとき、蒸気タービン10の
起動時間が最短になるようなプラント状態量の最適パタ
ーンを最適化手法により計算することができる(図2参
照)。そしてプラント状態量が最適推移パターン通りに
変化したとき、熱応力が規制値以下で、かつ起動時間が
最短になるような、最適な起動制御が実現されることに
なる。
【0034】最適パターン演算器13では一般的に数理
計画法の手法を応用し、熱応力予測モデル12による予
測熱応力計算を繰返し行うことにより、最適な推移パタ
ーンを探索する手法が用いられる。しかし、他の手法に
よって最適推移パターンを計算してもよいことはもちろ
んである。最適パターン演算器13は、熱応力予測モデ
ル12の予測結果(予測熱応力)を用いて、所定の制御
周期ごとに上述の最適化計算を繰返し、常に最適な状態
量推移パターンを算出する。このため、ボイラの蒸気条
件等が急変した場合でも、その条件変化に応じた最適な
推移パターンを算出することができる。操作量調節器1
5は、算出された最適状態量推移パターンのうち、現在
時刻での値をプラント状態量の現在の設定値とし、実際
のプラント状態量測定値の、その設定値からの偏差をゼ
ロにするように起動パラメータである操作量を調節す
る。起動パラメータというのは、例えば速度制御過程に
あるときは昇速率であり、負荷制御過程にあるときは負
荷上昇率であって、それらの制御量を逐次調節すること
によりプラント状態量を、タービン制御装置11を介し
て設定値すなわち最適推移パターンに一致させるように
制御する。
【0035】上記ルーチンによりプラント状態量は最適
パターン演算器13で算出されたパターンに従って推移
し、熱応力が規制値以下という制約下での最短時間起動
という意味で最適な蒸気タービンの起動制御を遂行する
ことができる。 <実施例1>本発明の第1の実施例を図3に示す。ター
ビンロータの温度分布に基づくロータ熱応力計算は、一
般的にタービンロータの形状を無限円筒に近似させ、次
の式で表し得ることが知られている。すなわち、ロータ
表面熱応力σs およびロータボア熱応力σb はそれぞ
れ、 σs =E・β(TM −Ts )/(1−ν) …(1) σb =E・β(TM −Tb )/(1−ν) …(2) ここで、E :ヤング率 β :線膨張係数 TM :ロータ体積平均温度 Ts :ロータ表面側蒸気温度 Tb :ロータ内側蒸気温度 ν :ポアソン比 一方、タービンロータ内部の温度分布は、ロータ軸方向
の分布を無視し、半径方向のみの一次元熱伝達問題で近
似することができる。この熱伝達微分方程式を解くため
に種々の手法が提案されているが、差分法による計算方
法を用いるのが一般的である。すなわち、ロータの表面
温度を入力とする、差分法による熱応力演算は次の線形
数学モデルで表現することができる。
【0036】
【数1】 ここで、Ti :差分法による中心からi番目の要素の温
度 Ad ,Bd :係数行列 Tn (k):ロータ表面温度 この線形数学モデルを変形することにより、熱応力予測
モデル12を下式のように導出することができる。
【0037】
【数2】 熱応力予測モデル s(k)=Ga ΔTn (k)+Gb x(k)+Gc n (k) …(5) ただし、
【0038】
【数3】 s(k):予測期間に発生する熱応力を表すベクトル Ga ,Gb ,Gc :係数行列 熱応力予測モデル12は、すでに述べたように将来のあ
る期間のロータ表面温度変化を仮定し、その期間に発生
する熱応力の値を計算する。最適パターン演算器13
は、この熱応力予測モデル12の計算結果を用いること
により熱応力の値を規制値以下に抑えつつ、起動時間が
最短になるような、将来の最適なロータ表面温度の推移
パターンを算出する。この算出にあたっては線形計画法
を利用することができる。そのときの制約条件は、「予
測期間内の熱応力の値が規制値を超えない」ことであ
り、評価関数は起動時間である。
【0039】起動時間を直接評価することが困難である
ときは起動時間の最短化を、「ある時間期間内の表面温
度の最高化」という条件に置き換えて計算を行う。この
計算に際して、蒸気温度は刻々と変化するので、常に最
適なロータ表面温度推移パターンを求めるために、最適
化計算は例えば分オーダーの制御周期ごとに行う。
【0040】最適パターン演算器13で算出された表面
温度の推移パターンのうち、現在時刻の値をロータ表面
温度設定値31とする。一方、すでに述べたように蒸気
タービン10のロータ表面の温度とケーシング内面メタ
ル温度とがほぼ等しいという関係から、測定困難なロー
タの表面温度の代わりに測定容易な第1段後のケーシン
グ内面メタル温度を温度センサ17によって測定し、そ
れによって得られた温度を直接または必要に応じ多少の
補正を加えた上でロータ表面温度の測定値として用いる
こととし、ここではそれをロータ表面温度測定値32と
して最適パターン演算器13および比較部14に導く。
比較部14はロータ表面温度設定値31とロータ表面温
度測定値32とを比較し、その偏差すなわちロータ表面
温度偏差を出力する。操作量調節器15はその温度偏差
をゼロにするような操作量40を演算し、それをタービ
ン制御装置11に入力する。タービン制御装置11は、
操作量40に従い蒸気流量調節弁16を介してタービン
10の状態量を制御する。ここで状態量はタービン昇速
中は昇速率であり、タービン速度Nが定格値Nr に達し
た後は負荷上昇率である。タービン制御装置11には、
タービンの速度制御または負荷制御のため、速度および
負荷を検出する状態量センサ18の出力信号がフィード
バック量として入力される。なお、破線で囲んだ部分5
0は既存の装置部分であることを示すものである。
【0041】以上により、状態量(速度または負荷)を
最適パターン演算器13で算出された最適推移パターン
31に従って変化させ、それにより熱応力が規制値以下
で、起動時間の最短な起動制御を遂行することができ
る。またボイラ条件の変化等によって蒸気条件が変化し
た場合でも、最適パターン演算器13によってその時々
で最適な推移パターンを逐一算出するので、条件の変化
があってもそれに柔軟に対応させることができる。 <実施例2>図4は本発明の第2の実施例を示すもので
ある。ここでは、最適パターン演算器13Aの最終出力
段に微分演算器130を内蔵しており、図3で説明した
最適パターン演算器13に相当する演算部分で最適なロ
ータ表面温度の推移パターンを算出した後、その推移パ
ターンから現在時刻での表面温度変化率を微分演算器1
30によって算出し、それをロータ表面温度変化率設定
値33として比較部14に入力する。それに対応して、
実際の表面温度測定値32から微分演算器20によりロ
ータ表面温度変化率34を計算し、これを比較部14に
おいてロータ表面温度変化率設定値33と比較し、その
偏差を操作量調節器15に入力する。操作量調節器15
には温度センサ19によって測定される蒸気温度も導入
される。操作量調節器15は入力された偏差量をゼロに
するための操作量40を演算し、タービン制御装置11
に送出する。
【0042】操作量調節器15における操作量40の演
算アルゴリズムは、操作量としてタービン昇速率または
負荷上昇率の操作量を考慮する場合、例えば次の演算式
に従うものとすることができる。
【0043】 昇速率=K1 ×(表面温度変化率設定値−表面温度変化率) ÷(蒸気温度−ロータ表面温度) …(7) 負荷上昇率=K2 ×(表面温度変化率設定値−表面温度変化率) ÷(蒸気温度−ロータ表面温度) …(8) ただし、K1 ,K2 は比例係数である。
【0044】この実施例によれば、各操作量に(蒸気温
度−ロータ表面温度)という分母項を付加し、この温度
差に応じた適切な操作量を与えることができる。 <実施例3>図5は本発明の第3の実施例を示すもので
ある。ここでは、ロータ表面温度の代わりに、新しい変
数として、 「u=(蒸気温度−ロータ表面温度)×(蒸気・ロータ
間熱伝達率)」 を導入し、これをプラントの状態量として用いる。この
場合も、熱応力予測モデル12は線形数学モデルで表す
ことができる。また、変数uの最適推移パターンを最適
パターン演算器13Bで演算した後、その中の現在時刻
の値を変数uの設定値35とする。変数uは直接測定で
きる状態量ではないが、ロータ温度分布の変化から求め
ることができる。ロータの温度分布は常時、プラントの
監視装置で算出しているので、これを流用して温度分布
演算装置21とし、その出力をロータ温度分布測定値3
5として用い、さらに温度センサ19により求めた蒸気
温度測定値36を入力して状態量推定器22により上述
の演算を行い、変数uの値を正確に求めることができ
る。このようにして求めた推定値を変数uの測定値37
とし、これを最適パターン演算器13Bにより蒸気温度
測定値36およびロータ温度分布演算装置21の出力測
定値35を基にして算出した変数uの最適推移パターン
による設定値38と比較部14において比較する。以下
の処理はすでに述べた実施の形態に準じて行われる。
【0045】この実施の形態における操作量調節器15
の動作アルゴリズムは例えば次のようなものでよい。 昇速率=K3 ×(uの設定値−uの推定値) ÷(蒸気温度−ロータ表面温度) …(9) 負荷上昇率=K4 ×(uの設定値−uの推定値) ÷(蒸気温度−ロータ表面温度) …(10) ただし、K3 ,K4 は比例係数である。
【0046】この実施の形態によってもロータの熱応力
を規制値以下に制限しながら最短の起動制御を合理的に
遂行することができる。 <実施例の補足>実施例1〜3においてはともに、状態
量の設定値と実際の状態量の測定値とを等しくする部分
にフィードバック制御を用いることによって、種々の不
確定要素やモデル化誤差の影響を低減することを可能と
している。また、ボイラ条件等の急変が起こった場合で
も、その条件変化に応じた推移パターンを各周期ごとに
再計算し更新するので、常に最適な起動を達成すること
ができる。
【0047】起動時に複数のタービンロータに発生する
熱応力が問題になる場合がある。一般の火力発電所にお
いても、高圧タービンと中圧タービンの両方のロータに
発生する熱応力が問題になり得る。このような場合、問
題になるタービンロータそれぞれに対して熱応力予測モ
デルを構築し、状態量の最適推移パターンの計算も双方
の予測モデルに従って行う。そして同じ現在時刻におい
て、それぞれに対して状態量の設定値を算出し、それに
応じた昇速率・負荷上昇率を計算する。実際に起動時に
用いる昇速率または負荷上昇率は、それらの値のうちの
最小値を用いることにする。このような選択処理を行う
ことにより複数のタービンに発生する熱応力を全て規制
値以下に抑えることができる。
【0048】また複数のタービンの熱応力予測モデルに
対してそれぞれ異なる値の熱応力規制値を設定し最適化
演算を行うこともできる。これによって、異なる箇所の
熱応力規制値をタービン部材や形状の違い等から決定さ
れる適性値に設定することが可能になる。 <実施例の変形例>既存の制御装置への融合を容易にす
るために、上述の実施例では操作対象の制御量として昇
速率および負荷上昇率を調節したが、蒸気流量を直接制
御したり、回転速度や負荷の設定値を変更することにし
ても上述と同様の作用・効果を奏することができる。ロ
ータの寿命消費率は熱応力の最大値から即座に計算可能
である。したがって、熱応力予測モデルの代わりにロー
タ寿命消費に対する予測モデルを構築し、その規制値を
設定することもできる。
【0049】実施の形態1〜3では、熱応力予測モデル
として線形数学モデルを用い、線形計画法によって最適
状態量推移パターンを算出したが、熱応力予測モデルと
しては非線形な数学モデルを用いることも可能である。
その場合、最適状態量推移パターンを算出するための最
適化手法としては、公知の種々の非線形最適化手法を用
いることができる。
【0050】また、最適状態量推移パターンの計算周期
と操作量調整の制御周期とを異なる値に設定することも
できる。例えば、後者を10秒のオーダーとしたとき、
前者は分のオーダーに設定することができる。
【0051】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
蒸気タービンプラントの起動過程において、ロータに発
生する熱応力を規制値以下に抑えつつ、最短の起動時間
制御を達成することができる。また、起動過程におい
て、ボイラ蒸気条件等の環境が急変した場合でも、その
変化に柔軟に対応した制御を遂行し得る蒸気タービンの
起動制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による蒸気タービンの起動制御装置にお
ける実施の形態の一例を概念的に示すブロック図。
【図2】本発明による最適状態量推移パターンを求める
アルゴリズムを説明するための説明図。
【図3】本発明の第1の実施例を示す制御ブロック図。
【図4】本発明の第2の実施例を示す制御ブロック図。
【図5】本発明の第3の実施例を示す制御ブロック図。
【図6】従来技術によるタービン起動スケジュールの一
例を示す線図。
【符号の説明】
10 蒸気タービン 11 タービン制御装置 12 熱応力予測モデル 13,13A,13B 最適パターン演算器 14 比較部 15 操作量調節器 16 蒸気流量調節弁 17,19 温度センサ 18 状態量センサ 19 蒸気流量センサ 20,130 微分演算器 21 ロータ温度分布演算装置 22 状態量推定器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 筧 敦 行 東京都府中市東芝町1番地 株式会社東芝 府中工場内

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プラント状態量に基づき起動過程中に蒸気
    タービンのロータに発生する熱応力を予測する熱応力予
    測手段と、 この熱応力予測手段によって得られた予測熱応力を規制
    値以下に抑え、かつ起動時間が最短になるようなプラン
    ト状態量の最適推移パターンを演算する最適パターン演
    算手段と、 プラント状態量の測定値が前記最適パターン演算手段に
    よって算出された最適推移パターンに追従するようにタ
    ービン制御の操作量を所定の制御周期ごとに調節する操
    作量調節手段と、 この操作量調節手段によって調節された操作量に従って
    前記蒸気タービンを起動制御するタービン制御装置とを
    備えた蒸気タービンの起動制御装置。
  2. 【請求項2】プラント状態量に基づき起動過程中に蒸気
    タービンのロータに発生する熱応力を予測する熱応力予
    測手段と、 この熱応力予測手段によって得られた予測熱応力を規制
    値以下に抑え、かつ起動時間が最短になるようなプラン
    ト状態量の最適推移パターンを演算する最適パターン演
    算手段と、 プラント状態量の測定値の変化率が前記最適パターン演
    算手段によって算出された最適推移パターンによるプラ
    ント状態量の変化率に追従するようにタービン制御の操
    作量を所定の制御周期ごとに調節する操作量調節手段
    と、 この操作量調節手段によって調節された操作量に従って
    前記蒸気タービンを起動制御するタービン制御装置とを
    備えた蒸気タービンの起動制御装置。
  3. 【請求項3】前記プラント状態量がタービンロータの表
    面温度である請求項1または2に記載の蒸気タービンの
    起動制御装置。
  4. 【請求項4】プラント状態量に基づき起動過程中に蒸気
    タービンのロータに発生する熱応力を予測する熱応力予
    測手段と、 この熱応力予測手段によって得られた予測熱応力を規制
    値以下に抑え、かつ起動時間が最短になるようなプラン
    ト状態量の最適推移パターンを演算する最適パターン演
    算手段と、 タービンロータ内の現在の温度分布を求めるロータ内温
    度分布演算手段と、 このロータ内温度分布演算手段によって得られたロータ
    内温度分布に基づいて現在のプラント状態量の推定値を
    求め、この推定値が前記最適パターン演算手段によって
    算出された最適推移パターンに追従するようにタービン
    制御の操作量を所定の制御周期ごとに調節する操作量調
    節手段と、 この操作量調節手段によって調節された操作量に従って
    前記蒸気タービンを起動制御するタービン制御装置とを
    備えた蒸気タービンの起動制御装置。
  5. 【請求項5】前記プラント状態量が、(蒸気温度−ター
    ビンロータ表面温度)×(蒸気・ロータ間熱伝達率)で
    表される状態量である請求項4記載の蒸気タービンの起
    動制御装置。
  6. 【請求項6】前記最適パターン演算手段において前記熱
    応力が規制値以下であるという条件の代わりかそれと併
    用して、タービンロータの寿命消費量が規制値以下であ
    るという条件を用いる請求項1ないし5のいずれかに記
    載の蒸気タービンの起動制御装置。
  7. 【請求項7】前記最適パターン演算手段における最適推
    移パターンの計算周期と前記操作量調節手段における操
    作量の調整周期が異なっている請求項1ないし6のいず
    れかに記載の蒸気タービンの起動制御装置。
  8. 【請求項8】前記熱応力予測手段における熱応力または
    ロータの寿命消費量の予測を、ロータの半径方向の温度
    分布を考慮した熱方程式を差分法により解くことにより
    実現する請求項1ないし7のいずれかに記載の蒸気ター
    ビンの起動制御装置。
  9. 【請求項9】最適推移パターンを計算する制御ループ
    と、実際の状態量を最適値に一致させるための制御ルー
    プを合わせ持ち、両制御ループがカスケードに接続され
    ている請求項1ないし8のいずれかに記載の蒸気タービ
    ンの起動制御装置。
  10. 【請求項10】前記操作量がタービンの昇速率または負
    荷上昇率を制御するための操作量である請求項1ないし
    5のいずれかに記載の蒸気タービンの起動制御装置。
  11. 【請求項11】前記操作量がタービンの蒸気流量を制御
    するための操作量である請求項1ないし5のいずれかに
    記載の蒸気タービンの起動制御装置。
  12. 【請求項12】前記最適推移パターンを数理計画法によ
    り求める請求項1または2に記載の蒸気タービンの起動
    制御装置。
  13. 【請求項13】熱応力予測に非線形数学モデルを用い、
    最適状態量推移パターンを非線形最適化手法で求める請
    求項1または2に記載の蒸気タービンの起動制御装置。
  14. 【請求項14】前記熱応力予測手段が複数のタービンロ
    ータに対応する複数の熱応力を予測するものであり、前
    記最適パターン演算手段が前記複数の熱応力のそれぞれ
    に対応する複数の最適推移パターンを演算するものであ
    り、前記操作量調節手段が前記複数の最適推移パターン
    に対応する複数の操作量を算出した後、その複数の操作
    量のうち、熱応力またはロータの寿命消費量が最も小さ
    くなるような操作量を選択して出力するものである請求
    項1または2に記載の蒸気タービンの起動制御装置。
  15. 【請求項15】複数のタービンロータに対し、それぞれ
    最適な熱応力または寿命消費量の規制値が設定されてい
    る請求項14記載の蒸気タービンの起動制御装置。
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