JPH0923880A - 高度に弱毒化された組換え日本脳炎ウイルスを産生する感染性日本脳炎ウイルスcDNAクローンおよびそのワクチン - Google Patents

高度に弱毒化された組換え日本脳炎ウイルスを産生する感染性日本脳炎ウイルスcDNAクローンおよびそのワクチン

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JPH0923880A
JPH0923880A JP8116062A JP11606296A JPH0923880A JP H0923880 A JPH0923880 A JP H0923880A JP 8116062 A JP8116062 A JP 8116062A JP 11606296 A JP11606296 A JP 11606296A JP H0923880 A JPH0923880 A JP H0923880A
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ヒデオ スミヨシ
Jr Charles H Hoke
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 動物においてJEVに対する免疫反応を刺激
するのに適切な弱毒化日本脳炎ウイルスを提供するこ
と。 【解決手段】 エンベロープタンパクの138位での酸
性アミノ酸の塩基性アミノ酸への置換によって、対応す
る野生型日本脳炎ウイルス(JEV)と区別される単離
された突然変異日本脳炎ウイルスであって、該酸性アミ
ノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸であり、該塩
基性アミノ酸がリシンまたはアルギニンである突然変異
日本脳炎ウイルス。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンベロープタン
パクにおいて1個のアミノ酸突然変異を含有する組換え
弱毒化日本脳炎ウイルスに関する。特に、本発明は、か
かる突然変異日本脳炎ウイルスのゲノムをコードする単
離されたDNA分子に関する。本発明は、また、培養動
物細胞からの突然変異日本脳炎ウイルスの産生方法に関
する。さらにまた、本発明は、ビルレント日本脳炎ウイ
ルスからの保護を与えるための医薬組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】日本脳炎ウイルス(JEV)は、重篤な
脳炎性疾患および神経性疾患発現を誘発し、アジアで
は、毎年の急性の致命的な脳炎の多くのケースの原因で
ある、蚊媒介性(mosquito-borne)フラビウイルスであ
る。典型的には、JEV感染の症候は、4〜20日の潜
伏期間の後に出現する。患者は、高熱、麻痺および昏睡
を含む重篤な中枢神経系感染の証拠を持って病院に到着
することもある。有効な治療はない。ホウク(Hoke)
ら、ジャーナル・オブ・インフェクシャス・ディジージ
ズ(J.Infect.Dis.)165:631(1992)。
入院患者の約3分の1は、10日以内に死亡するであろ
うし、残りの3分の1は、重篤な永久神経精神病的欠損
(permanent neuropsychiatric deficit)を有したまま
回復するであろう。毎年10,000件以上のJEV誘
発性死亡が公式に報告されているが、実数は、それより
も非常に高いと推定される。例えば、バーク(Burke)
らの「ジャパニーズ・エンセファライティス」(Japan
ese encephalitis)[ジ・アルボバイラシズ:エピディ
ーミオロジー・アンド・エコロジー(THE ARBOVIRUSES:
EPIDEMIOLOGY AND ECOLOGY)、第3巻、(モナス・ティ
・ピー(Monath TP)編、第63〜92頁(CRCプ
レス1988)]を参照。
【0003】JEVゲノムは、3個の構造タンパク(キ
ャプシドタンパク、膜タンパクおよびエンベロープタン
パク)ならびに7個の非構造タンパク(NS1、NS2
A、NS2B、NS3、NS4A、NS4BおよびNS
5)を含む10個のタンパクをコードする約11kbの
一本鎖RNA分子である。スミヨシ(Sumiyoshi)ら、
バイロロジー(Virology)、161:479(198
7)。ビルレントJEV菌株JaOArS982、ナカ
ヤマ(Nakayama)、ベイジング(Beijing)およびS
14、ならびに弱毒化菌株SA14−14−2のゲノム
は、分子レベルで分析され、類似の構造機構が明らかに
された。マカダ(McAda)ら、バイロロジー(Virolo
gy)158:348(1987);ハシモト(Hashimot
o)ら、バイラス・ジーンズ(Virus Genes)1:30
5(1990);ニタヤファン(Nitayaphan)ら、バ
イロロジー(Virology)177:541(199
0)。しかも、個々のJEVタンパク間のビルレンスお
よび疾患との関係は、まだ、あまり理解されていない。
【0004】現在、3つのタイプのJEVワクチンがあ
る:(1)ウイルスがホルマリン処理によって非感染性
にされるマウス脳または組織培養物中で増殖したウイル
スから得られるワクチン、(2)動物における一連の継
代接種によって弱毒化されたウイルスからなるワクチ
ン、および(3)フラビウイルスタンパクを発現する組
換えワクシニアベクターなどのベクターからなるワクチ
ン。しかしながら、JEVの公衆衛生学的な重要さにも
かかわらず、現在入手可能なワクチンは、種々の理由の
ために無効にされている。
【0005】ホルマリン不活化されたマウス脳由来のJ
EVワクチンは、第2次世界大戦の間に発明され、該ワ
クチンは、日本では20年以上もの間使用されていた。
該ワクチンの使用は、日本におけるJEVによる罹病率
および死亡率の両方の減少に関連していた。ホウク(H
oke)ら、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・
メディシン(N.Engl.J.Med.)319:608(1
988)。しかしながら、生活水準の改善がJEV病の
発病率の若干の減少の原因となっているかもしれない。
【0006】不活化ワクチンに関連する問題は、ウイル
スを生きているマウス中で産生し、面倒な手法でマウス
から収穫し、精製し、ホルマリン処理により殺さなけれ
ばないという事実から生じる。ホルマリン処理したウイ
ルスは、受容者中では複製しないので、免疫化を成功さ
せるためには、多量のウイルス抗原およびワクチンの反
復投与が必要である。さらに、死菌ワクチンによる免疫
の効果が生ワクチンによって与えられる免疫性と同じく
らい長く永続することはめったにない。最後に、ネズミ
の抗原を除去するのに必要なものおよび不活化プロセス
の注意深いモニターリングに必要なものは、ワクチンの
生産コストを増加させる。したがって、不活化ワクチン
は、生産に費用がかかり、JEVが重要な問題であるほ
とんどの発展途上国には適していない。
【0007】弱毒化生ワクチンを開発するための実質的
な試みが行われてきた。そのうえ、これらの試みは、マ
ウスにおけるJEVの一連の継代接種がヒトにおいて弱
毒化されたウイルスを生じるという期待によって動機づ
けられた。以下に説明するほとんどの将来有望なワクチ
ンは、ウイルスが多くの突然変異体を含むことが判明し
ており、これらの変化の影響が知られていないので、理
想的な候補ではない。
【0008】生の弱毒化JEV菌株SA14−14−2
は、細胞培養物および実験動物における一連の継代接種
によって経験的に産生された。弱毒化ウイルスSA14
14−2およびその親ウイルス(SA14)のヌクレオチ
ド配列の比較により、弱毒化ウイルスが57個のヌクレ
オチド置換を有しており、24個のアミノ酸置換を生じ
ることが判明した。アイハラ(Aihara)ら、バイラス
・ジーンズ(Virus Genes)5:95(1991)。
しかしながら、親ウイルス自体のゲノムは、他の野生型
JEVのゲノムから非常に異なる。この観察により、親
から誘導されたいずれの菌株も種々のJEV菌株に暴露
された人を保護するのに適しているかについて疑問が生
じる。
【0009】中国ではヒトにおける実地試験でSA14
14−2ワクチンウイルスが使用された。ヒトにおける
血清変換(中和抗体)率は、60%から90%まで変わ
る。アオ(Ao)ら、Chinese J. Microbiol. and I
mmunol. 3:245(1981)。しかしながら、多重
ワクチン投与は、血清変換を誘発することを必要とし、
各投与は、高力価(約106PFU)でなければならな
い。この方法では、SA14−14−2ワクチンは、前記
の不活化ワクチンと同様である。さらにまた、2回の高
力価ワクチン投与による免疫化にもかかわらずワクチン
接種を受けた人における日本脳炎の発生が報告された。
【0010】さらに、SA14−14−2は、一次イヌ腎
臓細胞(PCK)において継代接種された。エッケルズ
(Eckels)ら、ヴァクシーン(Vaccine)6:513
(1988)。得られたウイルス、SA−14−14−
2−PCKは、配列決定され、そのビルレンスマーカー
は、細胞培養物および実験動物において特徴付けられ
た。ニタヤファン(Nitayaphan)ら、バイロロジー
(Virology)177:541(1990);ハセ(Ha
se)ら、アーカイブス・オブ・バイロロジー(Arch.V
irol.)130:131(1993)。実験マウスにお
いて、種々の投与量および投与方針を用いたSA14−
14−2−PCKによる免疫化は、血清中和抗体の存在
によって測定すると、低率の血清交換を誘発した。さら
にまた、ほとんど全ての免疫化された実験マウスは、免
疫用ワクチン投与量に関係なく、親ウイルスの大脳内攻
撃後に死亡した。
【0011】1980年代の中国では、ワクチン実験の
ためにSA14−14−2−PCKウイルスも使用され
た。しかしながら、この実験は、ワクチン接種を受けた
人がJEV抗体を生じなかったので、失敗に終わった。
JEV SA14−14−2およびPCK誘導体による累
積結果は、弱毒化ウイルスが生ワクチンよりも不活化ワ
クチンのようにふるまうことを示した。
【0012】JEVタンパクがキャリヤーによってまた
は組換えベクターによって宿主に投与されるいくつかの
候補JEVワクチンが生産された。今日まで、ほとんど
の将来有望なワクチンは、NYVACと称されるワクシ
ニアウイルスから誘導された組換えウイルスを使用す
る。中和抗体は、JEVエンベロープタンパクをコード
するワクシニア−JEV組換えウイルスを接種した実験
マウスにおいて検出された。接種マウスは、ビルレント
ウイルスによる腹腔内攻撃に対して保護されたが、中和
抗体力価および血清交換率は、死菌ワクチンによる免疫
化の後に観察されたものよりも低かった。さらにまた、
JEVに対する保護は、一部のみであった。ヤスダ(Y
asuda)ら、ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Vir
ology)64:2788(1990);メイソン(Maso
n)ら、バイロロジー(Virology)180:294(1
991);ジャン(Jan)ら、アメリカン・ジャーナル
・オブ・トロピカル・メディシン・アンド・ハイジーン
(Am.J. of Trop.Med.& Hyg.)48:412(1
993)。したがって、組換えベクターによる多重免疫
化は、致命的な攻撃から実験マウスを保護することを必
要とする。さらにまた、JEVエンベロープタンパクの
みを発現するベクターによる免疫化は、JEV感染細胞
において活性的に発現されるJEVタンパクの全てに応
答するために体液および細胞免疫系を刺激することはで
きない。
【0013】要約すれば、弱毒化生ワクチンは、しばし
ば、弱毒化ワクチンが、(1)体液および細胞の両方の
応答に基づいて長い持続性免疫性を誘発し、(2)生産
にあまり費用がかからず、(3)通常、単回免疫化投与
のみを必要とするので、他の形態のワクチンよりも好ま
しい。他方、ビルレンスへのワクチン逆転の危険性は、
経験的に誘導される弱毒化生ワクチンによる不変的な問
題である。
【0014】したがって、神経系では複製せず、種々の
JEVタンパクに対する免疫応答を誘発する弱毒化JE
Vワクチンが必要とされている。さらにまた、弱毒化J
EVのゲノムは、弱毒化表現型の分子決定子の存在を同
定することができ、最終ワクチン調製物において証明す
ることができるように完全に特徴付けられるべきであ
る。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、動物
においてJEVに対する免疫反応を刺激するのに適切な
弱毒化日本脳炎ウイルスを提供することである。また、
本発明の目的は、かかる突然変異ウイルスをコードする
既知のヌクレオチド配列を有するDNA分子を提供する
ことである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、エンベロープ
タンパクの138位での酸性アミノ酸の、塩基性アミノ
酸への置換によって、対応する野生型日本脳炎ウイルス
(JEV)と区別される単離された突然変異日本脳炎ウ
イルスであって、該酸性アミノ酸がグルタミン酸または
アスパラギン酸であり、該塩基性アミノ酸がリシンまた
はアルギニンである突然変異日本脳炎ウイルスを提供す
るものである。
【0017】好ましい具体例では、野生型JEVは、J
EV菌株JaOArS982であり、突然変異JEVの
塩基性アミノ酸は、リシンである。さらに好ましい具体
例では、野生型JEVは、JEV菌株JaOArS98
2であり、突然変異JEVの塩基性アミノ酸は、アルギ
ニンである。
【0018】本発明は、突然変異JEVのゲノムをコー
ドする単離されたDNA分子であって、突然変異JEV
が、エンベロープタンパクをコードする遺伝子における
1または2個のヌクレオチド置換からなる突然変異によ
って、対応する野生型JEVと区別される単離されたD
NA分子を提供するものでもある。特に、本発明は、突
然変異により、野生型JEVのエンベロープタンパクの
138位の酸性アミノ酸の、突然変異JEVのエンベロ
ープタンパクにおける138位の塩基性アミノ酸への置
換を生じ、該酸性アミノ酸がグルタミン酸またはアスパ
ラギン酸であり、塩基性アミノ酸がリシンまたはアルギ
ニンであるかかるDNA分子を提供するものである。
【0019】本発明は、さらに、 (a)鋳型として突然変異JEVをコードするDNA分
子を用いてイン・ビトロで全長ウイルスゲノムRNAを
合成し; (b)培養動物細胞にウイルスゲノムRNAをトランス
フェクトさせて、ウイルスを産生させ;次いで、 (c)培養動物細胞からウイルスを単離すること からなることを特徴とする、培養動物細胞からの突然変
異JEVの産生方法を提供するものである。
【0020】本発明は、また、(a)突然変異JEV、
および(b)医薬的に許容される賦形剤からなる医薬組
成物の治療有効量を投与することからなり、該突然変異
JEVがエンベロープタンパクの138位で酸性アミノ
酸の塩基性アミノ酸への置換によって対応する野生型J
EVと区別されることを特徴とする動物におけるJEV
に対する中和抗体の産生方法を提供するものである。
【0021】本発明は、また、かかる突然変異JEVお
よび医薬的に許容される賦形剤からなる医薬組成物を提
供するものでもある。かかる医薬組成物は、粘膜に投与
されるか、または、皮下注射、皮内注射および筋肉内注
射からなる群から選択される注射の形態によって投与さ
れてもよい。
【0022】本発明は、さらに、 (a)pM343(ATCC No. 75490)のcD
NA挿入からなるDNA鋳型を用いてイン・ビトロで全
長ウイルスゲノムRNAを合成し; (b)動物細胞の単層培養物に該ウイルスゲノムRNA
をトランスフェクトさせ(ここで、トランスフェクショ
ンにより、単層培養物内で種々の大きさのウイルス含有
プラークが形成される);次いで、 (c)単層培養物内の小さなプラークからウイルスを単
離すること からなることを特徴とする突然変異JEVの産生方法を
提供するものである。
【0023】本発明は、また、野生型フラビウイルスの
エンベロープタンパクにおける酸性アミノ酸の、突然変
異フラビウイルスのエンベロープタンパクにおける塩基
性アミノ酸への置換によって、対応する野生型フラビウ
イルスと区別される単離された突然変異フラビウイルス
であって、該フラビウイルスが、マリーバレー脳炎ウイ
ルス、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイ
ルスおよび中央ヨーロッパダニ媒介性脳炎ウイルスから
なる群から選択され、酸性アミノ酸がグルタミン酸また
はアスパラギン酸であり、塩基性アミノ酸がリシンまた
はアルギニンである単離された突然変異フラビウイルス
を提供するものでもある。
【0024】以下に、図面について説明する。
【0025】図1は、JEVゲノムの線図および組換え
JEVウイルスの構造を示す図である。図2は、cDN
Aから組換え野生型JEVの回収ストラテジーを示す図
である。5'−ハーフJEV cDNA(pM343)お
よび3'−ハーフcDNA(pH756)は、それらの
各々のcDNAクローンから精製され、イン・ビトロで
連結して、T7 RNAポリメラーゼに対する全長DN
A鋳型を産生する。JEV RNAをcDNA鋳型から
転写し、RNAを単層BHK−21細胞にトランスフェ
クトした。2−5日間のインキュベーションの後、JE
Vプラークは、ニュートラルレッドまたはクリスタルバ
イオレットで染色することによって視覚化された。
【0026】図3は、BHK細胞における親JEV、組
換え野生型(IC37)および組換え突然変異JEV
(IC47)の増殖率を示すグラフである。図4は、N
18細胞における組換え野生型(IC37)および組換
え突然変異JEV(IC47)の増殖率を示すグラフで
ある。図5は、培養培地における親JEVまたは突然変
異JEV(IC47)の安定性を示すグラフである。
【0027】図6は、親JEV、組換え野生型JEV
(IC37)または組換え突然変異JEV(IC47)
で攻撃されたSwiss ICR異系交配マウスの生存率を
示すグラフである。A:腹腔内(ip)経路によって接
種した2週齢のマウス。B:ip経路によって接種した
3週齢のマウス。C:大脳内(ic)経路によって接種
した3週齢のマウス。D:親およびIC47ウイルスを
ic経路によって接種した5週齢マウス。
【0028】図7は、親JEVまたは組換え突然変異J
EV(IC47)のいずれかを接種した3週齢マウスに
おけるウイルス血症および中和抗体産生の存在を示すグ
ラフである。図8は、ICRマウスの脳における親JE
Vまたは組換え突然変異JEV(IC47)の力価を示
すグラフである。A:ip経路による親ウイルスを接種
したマウスのウイルス力価は、瀕死のマウス(黒塗りの
三角形、ip−1)および健康なマウス(白抜きの三角
形、ip−2)から測定した。B:組換え突然変異ウイ
ルスを接種した。
【0029】図9は、ic経路によって親ウイルスで攻
撃されたIC47免疫化マウスの脳におけるウイルス力
価を示すグラフである。図10は、3週齢のマウスにお
ける組換え野生型IC37ウイルス、IC47ウイルス
または138Argウイルスによるニューロビルレンス(neu
rovirulence)の誘発を示すグラフである。図11は、
5週齢のマウスにおける組換え野生型IC37ウイル
ス、IC47ウイルスまたは138Argウイルスによるニ
ューロビルレンスの誘発を示すグラフである。
【0030】前記のとおり、ヒト用の安全かつ有効で経
済的なJEV生ワクチンが必要とされている。弱毒化生
ワクチンを研究する従来の試みは、ネズミ宿主における
野生型ウイルスの一連の継代接種の経験的方法を利用し
た。このアプローチでは、多くの突然変異がランダムに
導入され、かかる突然変異が弱毒化表現型を引き起こす
ことを期待することができるだけである。
【0031】これらの制限を克服するために、本発明者
らは、感染性cDNAクローンからJEVを産生するた
めのシステムを開発した。予想外に、この方法は、高度
に弱毒化されたウイルスを産生した。これらの突然変異
ウイルスの構造および機能を特徴付け、イン・ビトロで
突然変異誘発を用いて、さらなる弱毒化ウイルスを産生
した。これらの研究結果により、エンベロープタンパク
におけるアミノ酸位置138でJEVについてのニュー
ロビルレンス位置を発見した。
【0032】本明細書に記載する方法は、JEVについ
ての非常に改良された弱毒化生ワクチンの産生を可能に
する。さらに、ニューロビルレンス位置の解明は、他の
ニューロビルレントフラビウイルスに対するワクチンを
生じさせるために用いられる。
【0033】感染性JEV cDNAクローンの構築 感染性JEV cDNAクローンの構築方法は、スミヨ
シ(Sumiyoshi)ら[ジャーナル・オブ・バイロロジー
(J.Virol.)66:5425(1992)]によって
開示されている。すなわち、JEV菌株JaOArS9
82(「親JEV」)のゲノムの3'および5'末端を表
すオリゴヌクレオチドプライマーを合成した。親JEV
のヌクレオチド配列は、スミヨシ(Sumiyoshi)ら[バ
イロロジー(Virology)161:497(1987)]
に開示されている。3'末端プライマー、および逆転写
酵素鋳型としての親JEVゲノムRNAを用いて、第一
鎖合成を行った。5'末端プライマー、および鋳型とし
てのcDNAの第一鎖を用いて、二本鎖cDNAを合成
した。次いで、cDNA分子をBamHIおよびSalIで
消化し、該フラグメントをpBR322中に挿入した。
コンピテントなイー・コリ(E.coli)HB101細胞
を組換えpBR322で形質転換させることによってc
DNAライブラリーを構築した。
【0034】各々ウイルスゲノムのほぼ半分をコードし
ている2つのcDNA分子のイン・ビトロ連結によっ
て、JEVゲノムの全長DNAコピーを構築した。説明
するように、ヌクレオチド1からヌクレオチド5576
までのJEV配列を含有する5'−ハーフcDNAクロ
ーンpM343を用いて、「IC37」と称される全長
JEV cDNAを産生した。図2を参照。cDNAク
ローンpH756から5,400塩基対フラグメントを
単離することによって、JEVゲノムの3'−ハーフを
含有するcDNA分子を得た;このフラグメントは、ヌ
クレオチド5577から3'−末端までのJEVゲノム
の一部を含有する。最後に、3'−末端クローンおよび
5'−末端クローンを連結して、全長JEV cDNAク
ローンIC37を産生した。
【0035】実施例1に記載するとおり、および、スミ
ヨシ(Sumiyoshi)ら(1992)によって開示されて
いるとおり、RNA転写用鋳型としてIC37を用い
て、感染性JEVを得た。転写産物を、培養哺乳動物細
胞中にトランスフェクトし、トランスフェクト細胞から
感染性日本脳炎ウイルスを回収した。下記のとおり、I
C37から産生されたウイルスは、親JEVと機能的に
同一であると思われる。したがって、IC37 cDN
Aから得られた感染性ウイルスは、「組換え野生型JE
V」と称される。
【0036】突然変異JEVをコードするcDNA分子
の構築 前記アプローチを用いて、突然変異ゲノムを有する日本
脳炎ウイルスを得ることができる。イン・ビトロ突然変
異誘発の最終目的は、有効な弱毒化ワクチンを産生する
ことである。テストケースのように、1つの特に有用な
突然変異を、JEVゲノムの3'−末端をコードするp
H756と称されるcDNA分子中に導入した。
【0037】実施例2に記載するように、部位特異的突
然変異誘発を用いて、XbaI制限部位を除去したサイ
レント(silent)突然変異を導入した。突然変異cDN
A「pH756X」およびpM343を一緒に連結し、
連結されたDNAをT7ポリメラーゼ反応に付して、R
NA転写体を産生した。培養細胞をRNAとトランスフ
ェクトさせ、トランスフェクト細胞から感染性JEVを
回収した。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応によって、ウイ
ルスゲノムDNA分子を調製した。続く配列決定分析に
より、回収されたウイルスのゲノム中に特異的なサイレ
ント突然変異が存在することが明らかになった。これら
の結果により、本明細書に記載する方法を用いて、特定
の突然変異をJEVゲノム中に導入することができたこ
と、および、該突然変異が安定であることが判明した。
【0038】組換え弱毒化JEVの調製 「図1」に示すように、5'および3' cDNAクロー
ンの混合物を連結することによって、種々の感染性JE
V cDNAクローンを構築した。詳細には、pM34
3およびpM433からの5'フラグメントをpH75
6、pH313、pH173およびpH756Xからの
3'フラグメントと連結させた。cDNAクローンpM
343、pM433およびpH756は、1993年6
月17日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクシ
ョン(ATCC;ミズーリ州ロックヴィル)に寄託され
ており、該プラスミドは、各々、ATCC No. 754
90、75491および75492と割り当てられた。
日本脳炎ウイルスJaoArS982菌株IC47は、
1993年6月17日にATCCに寄託されており、A
TCC No. VR 2412と割り当てられた。
【0039】ハムスター腎臓細胞において培養させた
後、全ての組換えウイルスは、同様の速度で増殖すると
思われる。しかしながら、5'cDNA、pM433を
含有するウイルスは、ビルレント親JEVによって産生
されるプラークよりも明確に小さなプラークを産生し
た。かかる小さなプラークは、ウイルスが弱毒化されて
いることを示す。本明細書に記載するとおり、本発明者
らは、pM433から誘導された全長JEV cDNA
クローンが無毒性(avirulent)であり、一方、pM3
43から誘導されたJEV cDNAクローンがビルレ
ントであることを見いだした。実施例1、2および4を
参照。
【0040】ヌクレオチド配列分析は、pM343と比
較して、pM433が1つのヌクレオチド置換を含むこ
とを明らかにした。pM343のエンベロープタンパク
において、138番目のアミノ酸は、GAAによってコ
ードされるグルタミン酸であるが、pM433のエンベ
ロープタンパクにおける138位は、AAAによってコ
ードされるリシンである。これらの結果は、向神経性フ
ラビウイルスのゲノムにおけるニューロビルレンスにつ
いての位置の最初で唯一の疑わしくない定義を示す。
【0041】これらの研究は、野生型コドンGAAを、
リシンをコードするAAGに突然変異させることによっ
て産生することができることも示す。突然変異は、オリ
ゴヌクレオチド特異的突然変異誘発、リンカースキャニ
ング突然変異誘発、ポリメラーゼ連鎖反応を用いる突然
変異誘発などの良く知られている技術を用いてJEVゲ
ノムの5'−末端をコードするcDNA分子中に導入す
ることができる。実施例1、およびオーズベル(Ausub
el)ら編のカレント・プロトコールズ・イン・モレキュ
ラー・バイオロジー(CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR
BIOLOGY)、第8.0.3−8.5.9頁[ジョーン・ウィ
リー・アンド・サンズ(John Wiley& Sons)199
0]を参照。また、一般的には、マクファーソン(Mc
Pherson)編、ディレクテッド・ミュータジェネシス:
ア・プラクティカル・アプローチ(DIRECTED MUTAGENES
IS : A PRACTICAL APPROACH)(IRLプレス199
1)も参照。
【0042】さらに一般的には、ニューロビルレンス位
置の発見は、エンベロープタンパクの138位の酸性ア
ミノ酸がビルレンスに関連しており、一方、この位置の
塩基性アミノ酸が弱毒化表現型を引き起こすことを示
す。したがって、138Gluを138Aspに突然変異させるこ
とによってビルレント表現型を維持することが可能であ
る。対照的に、エンベロープタンパクの138位の酸性
アミノ酸を塩基性アミノ酸アルギニンに突然変異させる
ことによって弱毒化JEVを産生することができる。か
かる弱毒化突然変異体は、野生型コドンGAAをCG
T、CGC、CGA、CGG、AGAまたはAGGに変
えることによって得ることができる。
【0043】実施例7に示す研究は、この仮説を確認す
る。すなわち、本発明者らは、エンベロープタンパクに
おいて138Aspを含有する組換えJEVがマウスにおい
て致命的であるが、一方、138位にAGA(Arg)コ
ドンを有する組換えJEVが弱毒化表現型を表すことを
見いだした。
【0044】エンベロープタンパクの138位のニュー
ロビルレンス位置の発見は、マリー・バレー脳炎ウイル
ス、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイル
スおよび中央ヨーロッパ脳炎ウイルスなどの他のニュー
ロビルレントフラビウイルスについての弱毒化ワクチン
を産生するために適用される。該ウイルスは、アメリカ
ン・タイプ・カルチャー・コレクションなどの公共の受
託所から入手することができる[マリー・バレー脳炎ウ
イルス:ATTC No. VR−77;セントルイス脳炎
ウイルス:ATCC VR−80およびVR−126
5]。
【0045】別法として、公表されているヌクレオチド
配列を用いて化学合成法によって、フラビウイルスゲノ
ムをコードするDNA分子を得ることができる。かかる
DNA分子は、例えば、相互にプライミングする長いオ
リゴヌクオレチドを用いて遺伝子を合成することによっ
て得られる。例えば、オーズベル(Ausubel)ら、第
8.2.8−8.2.13頁を参照。また、ウォスニック
(Wosnick)ら、ジーン(Gene)60:115(19
87)も参照。さらにまた、これらの技術を、ポリメラ
ーゼ連鎖反応を用いることによって増強させて、長さ
1.8キロベースほどの大きな遺伝子を合成することが
できる。アダン(Adang)ら、Plant Molec.Biol.2
1:1131(1993);バンボット(Bambot)
ら、PCR Methods and Applications 2:266
(1993)。マンドル(Mandl)ら、バイロロジー
(Virology)194:173(1993)には、ダニ
媒介性フラビウイルス・ポワサン(Powassan)のヌク
レオチド配列が開示されており、ウエスタンサブタイプ
ダニ媒介性脳炎ウイルスのヌクレオチド配列は、マンド
ル(Mandl)ら、バイロロジー(Virology)166:
197(1988)およびマンドル(Mandl)ら、バイ
ロロジー(Virology)173:291(1989)に
開示されている。
【0046】概要的には、エンベロープタンパクの13
8位の酸性アミノ酸残基を塩基性アミノ酸残基に突然変
異させることによって弱毒化JEVを構築することが可
能である。実施例7は、1つのヌクレオチド置換を有す
る無毒性JEVが、ネズミ宿主を介する10回の継代接
種の後、弱毒化表現型を保持したことを示す。それにも
かかわらず、好ましい弱毒化日本脳炎ウイルスは、2つ
のヌクレオチド置換を含んでおり、確実に、野生型への
逆転を非常に見込みのないものにする。したがって、2
つのヌクレオチド置換は、アルギニンをコードするコド
ンを、グルタミン酸またはアスパラギン酸のいずれかを
コードするコドンに転換することを必要とするので、好
ましい弱毒化JEVは、エンベロープタンパクの138
位にアルギニン残基を含有する。
【0047】ワクチンにおける組換え弱毒化JEVの使
用 前記のとおり、突然変異JEV菌株SA14−14−2
は、マウスなどの実験動物における弱毒化表現型を示
し、該菌株をヒトに接種すると、中和抗体産生を刺激す
る。エッケルズ(Eckels)ら、バクシーン(Vaccin
e)6:513(1988)を参照。他方、SA14−
14−2−PCKウイルスは、マウスにおいて低率の血
清交換を誘発し、該ウイルスは、ヒトにおいては中和抗
体を刺激しない。したがって、弱毒化JEVを用いる研
究は、弱毒化JEV菌株の、ワクチン接種を受けたマウ
スおよびヒトにおける血清交換誘発能間の相互関係を示
す。したがって、本明細書に記載されたイン・ビボ研究
の結果は、本発明の突然変異日本脳炎ウイルスがワクチ
ン接種を受けたヒトにおいて免疫応答を刺激する際に特
に有効であることを示す。
【0048】ウイルスは、無生物培地で増殖することが
できない細胞内偏性寄生生物であるので、弱毒化JEV
は、培養哺乳動物細胞およびヒナ胚子細胞(chick embr
yo cell)培養物などの生物培地(animate media)培地
において増殖させなければならない。弱毒化ウイルスの
宿主細胞からの精製方法は、当業者によく知られいる。
例えば、感染組織培養細胞からSA14−14−2ワクチ
ンを調製する方法を開示しているウォン(Wang)ら、
Chin.J.Virol.6:38(1990)を参照。また、
一般的に、レミントンズ・ファーマシューティカル・サ
イエンシズ(REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE
S)、第18版[マック・パブリッシング・カンパニー
(Mack Publishing Co.)1990]。
【0049】弱毒化ウイルスワクチンの投与モードおよ
びかかるワクチンの好適な投与量は、当業者によく知ら
れている。例えば、レミントンズ・ファーマシューティ
カル・サイエンシズ、第18版[マック・パブリッシン
グ・カンパニー、1990]を参照。例えば、弱毒化J
EVワクチンは、筋肉内注射、皮下注射、または、皮内
注射によってヒト受容体に投与することができる。一般
に、ワクチンの投与は、受容者の年齢、体重、身長、性
別、一般的な健康状態および過去の病歴などの因子に依
存して変わるであろう。一般に、102−106PFU/
mLを含有する製剤として、ワクチン0.5〜1mLを投
与する。JEV弱毒化ワクチン、SA14−14−2によ
る実験は、本明細書に記載した組換え弱毒化JEVの適
切な投与量についての一般的なガイドラインを提供す
る。例えば、ユ(Yu)ら、Chin.J.Microbiol.Immu
nol.1:77(1981)、アオ(Ao)ら、Chin.J.
Microbiol.Immunol.3:245(1983)、ユら、
Am.J.Trop.Med.Hyg.39:214(1988)、
およびツァイ(Tsai)ら、バクシーンズ(VACCINE
S)、第2版、プロトキン(Plotkin)ら編、第671
−713頁における「ジャパニーズ・エンセファリティ
ス・バクシーンズ」(Japanese Encephalitis Vacci
nes)[ダブリュ・ビー・ソーンダーズ・カンパニー
(W.B.Saunders Co.)1994]を参照。
【0050】本発明のワクチンは、公知の、医薬的な有
用な組成物の調製方法に従って製剤化することができ、
これにより、弱毒化ウイルスを医薬的に許容される賦形
剤と混合して混合物にする。組成物は、その投与が受容
者によって許容され得る場合、「医薬的に許容される賦
形剤」であると言われる。無菌リン酸緩衝生理食塩水
は、医薬的に許容される賦形剤の一例である。他の適切
な賦形剤は、当業者によく知られている。例えば、レミ
ントンズ・ファーマシューティカル・サイエンシズ、第
18版[マック・パブリッシング・カンパニー、199
0]を参照。
【0051】治療目的のために、弱毒化JEVおよび医
薬的に許容される賦形剤は、治療有効量でヒト受容者に
投与される。ウイルスと医薬的に許容される賦形剤との
混合物は、投与量が生理学的に有意である場合、「治療
有効量」で投与されると言われる。薬剤は、その存在が
受容者の生理機能において検出可能な変化を生じる場
合、生理学的に有意である。これに関連して、薬剤は、
その存在が日本脳炎ウイルスに対する中和抗体の産生を
刺激する場合、生理学的に有意である。
【0052】前記に一般的に記載した本発明は、以下の
実施例を参照して容易に理解されるであろう。該実施例
は、本発明を単に説明するだけであり、本発明の範囲を
限定するものではない。
【0053】
【実施例】
実施例1 野生型JEVまたは突然変異JEVをコードする感染性
cDNAクローンの増殖 A.JEV cDNAクローンの構築 スミヨシ(Sumiyoshi)ら[ジャーナル・オブ・バイロ
ロジー(J.Virol.)66:5425(1992)]の
開示に従って、菌株JaOArS982をコードする感
染性野生型JEV cDNAクローンを構築した。すな
わち、JEVゲノムの5'−ハーフをコードする2つの
cDNAクローン(pM343またはpM433)およ
び該ゲノムの3'−ハーフに相当するcDNA(pH7
56)をイン・ビトロで連結して、T7 RNAポリメ
ラーゼに対する2つの全長鋳型を作製した。「図2」を
参照。RNA合成反応混合物50μLは、1μgのcD
NA鋳型、40mM トリス−HCl(pH8.0)、25
mM NaCl、8mM MgCl2、2mMスペルミジン、5m
Mジチオトレイトール、各1mM CTP、UTPおよび
GTP、0.1mM ATP、1mM m7G(5')ppp
(5')A、5UのRNase阻害剤、および0.2μLのT
7 RNAポリメララーゼを含有した。
【0054】cDNA鋳型により転写されたRNA分子
をBHK−21細胞にトランスフェクトさせ、後代ウイ
ルスを回収した。チョウ(Chou)ら、Adv.Enzym.Re
lat.Areas Mol.Biol.47:45(1978)。これ
らの研究では、10%ウシ胎児血清(FCS)、2mM
L−グルタミン、0.1mM MEM非必須アミノ酸、0.
3%重炭酸ナトリウム、10U/mLのペニシリン、お
よび10μgのストレプトマイシンを補足した最小必須
培地(MEM)中でBHK−21細胞を増殖させた。3
5mmの皿中のBHK−21細胞の単層をリン酸緩衝生理
食塩水(PBS)で洗浄し、該細胞を、室温で10分
間、RNA転写物および10%リポフェクチン(Lipof
ectinR)[ベセスダ・リサーチ・ラボラトリーズ,イン
コーポレイテッド(Bethesda Research Laboratorie
s,Inc.);ミズーリ州ゲイザースバーグ]を含有する
PBS 400μLと一緒にインキュベートした。次い
で、該細胞をPBSで洗浄し、MEM中2%FCSを含
有する1%アガロースで覆った。2〜3日のインキュベ
ーションの後、細胞をニュートラルレッドで染色して、
ウイルスプラークを視覚化した。
【0055】5'−ハーフpM343および3'−ハーフ
pH756から誘導された全長cDNAから回収された
ウイルスをIC37と称した。この組換えウイルスは、
親JEVの特性とは区別することができる特性を示し
た。pM433およびpH756から調製されたcDN
A鋳型から回収されたウイルスをIC47と称した。驚
くべきことに、IC47の特徴は、親ウイルスおよびI
C37の特徴とは異なる。
【0056】B.野生型JEVクローンの部位特異的突
然変異誘発 cDNAクローンpH756は、ヌクレオチドの913
1位で固有のXbaI制限部位を含有する。部位特異的
イン・ビトロ突然変異誘発を用いて、アミノ酸配列を変
えずに、XbaI部位を除去するヌクレオチド置換を導
入した(すなわち、サイレント突然変異)。スタッジャ
ー(Studier)ら、J.Mol.Biol.189:113(1
986)。突然変異cDNAをT7 RNAポリメラー
ゼ反応のための鋳型として用い、前記の方法を用いて、
ウイルスを回収した。
【0057】回収したウイルス粒子からゲノムRNAを
精製し、該RNAをcDNA合成およびポリメラーゼ連
鎖反応(PCR)増幅法のための鋳型として用いた。得
られたcDNAの制限分析により、該クローンがヌクレ
オチドの9131位でXbaI部位を欠いていることが
判明した。この結果は、(1)回収したウイルスが変性
cDNAから誘導され、汚染菌ではなかったこと、およ
び(2)部位特異的突然変異誘発がこれらの技術によっ
て日本脳炎ウイルス中に導入され得ることを示した。
【0058】C.JEV cDNAクローンの構造分析
およびイン・ビトロ機能性分析 細胞当たり10PFUの多重度で感染したBHK−21
細胞中で、親、IC37およびIC47ウイルスの増殖
率を比較した。「図3」を参照。該ウイルスは、増殖率
に基づいて識別することができなかったが、IC47の
プラークサイズは、親およびIC37のプラークサイズ
よりも非常に小さかった。
【0059】まず、腎臓組織からBHK−21細胞を単
離した。神経組織から誘導された細胞中でのIC37お
よびIC47の増殖を試験するために、N18細胞を、
細胞当たり10PFUの多重度でいずれのウイルスとも
一緒にインキュベートした。「図4」に示すように、I
C37は、IC47と比較して大きな割合で増殖した。
この観察結果は、以下に説明するとおり、ネズミ脳組織
における低いIC47増殖率およびIC47の弱毒化表
現型に関連している。
【0060】親およびIC47ウイルスの安定性を比較
するために、10%FCSおよび1000PFU/mL
の親またはIC47を含有する培養培地の溶液をCO2
インキュベーター中で37℃でインキュベートした。ウ
イルスを、プラークアッセイにより各時点で力価測定し
た。「図5」において示されるように、ウイルス安定性
において明白な差異はなかった。
【0061】cDNAのヌクレオチド配列分析により、
pM343(すなわち、IC37の5'−ハーフ)およ
びpM433(すなわち、IC47の5'−ハーフ)が
エンベロープタンパクにおける138位の単一のコドン
によって異なることが判明した。pM343のエンベロ
ープタンパクにおいて、138番目のアミノ酸は、GA
Aによってコードされるグルタミン酸であるが、pM4
33のエンベロープタンパクにおける138位は、AA
Aによってコードされるリシンである。IC37および
IC47の3'−ハーフが同一のcDNAクローンから
誘導されたので、これらの結果は、138位でのエンベ
ロープタンパクの単一のアミノ酸変化により変わったプ
ラークサイズを生じることを示す。該突然変異は、以下
に説明するとおり、ニューロビルレンスの大きな変化も
生じる。
【0062】実施例2 マウスにおける野生型JEV、IC37およびIC47
ウイルスのニューロビルレンス Swiss ICRマウスを用いて、組換えウイルスIC3
7およびIC47ならびに親JEVをニューロビルレン
スについて比較した。予備実験において、大脳内(i
c)または腹腔内(ip)のいずれかの投与を用いて、
3週齢のマウスに10〜106PFUを接種した。親ウ
イルスまたはIC37をic接種したマウスは全てが死
亡したが、ウイルスをip接種したマウスの死亡率は、
約50%であった。対照的に、IC47をic経路また
はip経路のいずれかによって接種したマウスは、全て
が当該処置にもかかわらず生き残った。これらの研究に
より、IC37および親ウイルスは、それらのマウスを
殺す能力において区別がつかなかったが、IC47は、
有毒ではなかったことが判明した。
【0063】第2の研究において、8匹のSwiss IC
R異系交配マウスのグループを親ウイルス、IC37ま
たはIC47で攻撃した。100 PFUのic接種の
ために3週齢および5週齢のマウスを用い、一方、10
0 PFUのip接種のために2週齢および3週齢のマ
ウスを用いた。親ウイルスまたはIC37のいずれかを
ip接種した後、死亡率は、2週齢マウスについては1
00%であり、3週齢マウスについては50%であっ
た。「図6」のAおよびBを参照。親ウイルスまたはI
C37による大脳内接種の結果、3週齢および5週齢マ
ウスについては100%の死亡率を生じた。「図6」の
CおよびDを参照。全てのマウスは、IC47の接種に
もかかわらず疾患の徴候を伴わずに生き残った。
【0064】実施例3 親またはIC47ウイルスに感染したマウスにおける中
和抗体産生およびウイルス血症 これらの研究のために、3週齢Swiss ICRマウスに
100PFUの親ウイルスまたはIC47ウイルスをi
p接種した。種々の時点で血清試料を採取し、以下のと
おり、中和抗体およびウイルス血症を測定した。中和抗
体力価を測定するために、血清試料の10〜160倍希
釈物を調製し、50PFUの親ウイルスと一緒に4℃で
一晩インキュベートした。35mmまたは60mmの皿中の
BHK−21細胞の単層にウイルスを接種し、PBSで
洗浄し、MEM中2%ウシ胎児血清を含有する1%アガ
ロースで覆ったプラークアッセイによって、該反応のウ
イルス力価を測定した。2〜3日後、細胞をニュートラ
ルレッドまたはクリスタルバイオレットで染色して、プ
ラークを視覚化した。プラークの70%減少は、中和抗
体力価の存在を示した。
【0065】両方の処置グループにおいて接種の3〜4
日後に中和抗体を検出した。「図7」を参照。中和抗体
産生における差異は、比較的小さかった。
【0066】ウイルス血症の存在を測定するために、B
HK−21単層に血清試料を添加し、プラークアッセイ
によって、ウイルス力価を測定した。3日目に最大力価
約103PFU/mlを有する親ウイルスを接種したマウ
スにおいてウイルス血症を検出した。「図7」を参照。
抗体力価が上昇し始めると、検出可能なウイルス血症が
減少し初めた;4日目には、ウイルスは、全く検出され
なかった。ウイルス血症は、IC47を接種したマウス
からの血清中には検出されなかったが、該マウスは、親
ウイルスに対する抗体反応と類似した抗体反応を増した
ので、ウイルスは、おそらくこれらのマウスにおいて複
製されたのであろう。
【0067】実施例4 脳におけるウイルス増殖 脳組織におけるウイルスの増殖を試験するために、ic
またはip投与を用いて、マウスを100 PFUの親
JEV、組換え野生型JEV IC37またはIC47
に感染させた。接種後の種々の時点で脳を採取し、ME
M(4:1;w/v)中50%FCSにおいて、組織試
料をホモジナイズした。前記のとおり、プラークアッセ
イによって、脳ホモジナートのウイルス力価を測定し
た。
【0068】親ウイルスをic経路によって接種する
と、脳内のウイルス力価は、すぐに増加し、5日目に1
7PFU/gmを超えるレベルに達した。「図8」のA
を参照。7日目までに、全てのマウスは、該感染により
死亡した。親ウイルスをip接種した後、5日目にウイ
ルスが脳内に出現した。107PFU/gmを超える脳ウ
イルス力価を有するマウスは、麻痺し、死亡したが
(「図8」のA、黒塗りの三角形)、106PFU/g未
満の脳ウイルス力価を有するグループのマウスは、健康
なままであった(白抜きの三角形)。14日目までに
は、生存マウスの脳からウイルスが浄化された。
【0069】IC47をic接種したマウスにおいて、
ウイルスは、脳組織中ですぐに増殖し始めるが、IC4
7は、親ウイルスと比較してより遅く脳中に蓄積され、
IC47は、親ウイルスについて観察された力価よりも
低い力価を達成した。「図8」のBを参照。最大脳力価
は、5日目で約104.7PFU/gmであった。IC47
は、8日目までに脳から浄化される。ip投与によって
IC47を接種したマウスの脳組織においてウイルス
は、全く検出されなかった。
【0070】実施例5 免疫化−攻撃研究 IC47を用いて親ウイルスに対する保護免疫性を与え
ることができるかを測定するために、8匹のマウスの3
つのグループに100 PFUのIC47を接種した。
2週齢マウスにはip接種し、一方、3週齢マウスには
ip経路またはic経路のいずれかによって接種した。
IC47接種から2週間後、マウスを100 PFUの
親ウイルスでic経路によって攻撃した。
【0071】全ての非免疫化マウスは、7日目までに死
亡したが、IC47で処置した全てのマウスは、該攻撃
にもかかわらず疾患の徴候を伴わずに生き残った。攻撃
されたマウスの最大ウイルス力価は、脳組織gm当たり1
7PFU以下であり、これは、非免疫化マウスの脳に
おいて観察された力価よりも10倍低かった。「図9」
を参照。親ウイルスは、14日目までに脳組織から浄化
された。
【0072】実施例6 エンベロープタンパク構造のコンピューターシミュレー
ション アミノ酸配列データに基づくタンパク構造の予想のため
に数種類のシミュレーションプログラムが利用可能であ
る。これらのプログラムを用いて、組換え野生型IC3
7および138Lys突然変異を有する組換え弱毒化IC4
7の予想されたエンベロープタンパク構造を比較した。
チョウ−ファスマン(Chou-Fasman)・プログラムお
よびガーニャー−オスグトープ−ロビンソン(Garnier
−Osguthorpe−Robinson)・プログラムを用いて、α
螺旋、βシートおよび回転を含む二次元構造を予想し
た。チョウ(Chou)ら、Adv.Enz.Relat.Areas Mo
l.Biol.47:45(1978);ガーニャー(Garni
er)ら、J.Mol.Biol.120:97(1978)。他
のプログラムを用いて、親水性、表面確率、フレキシビ
リティ、および抗原性などのさらなるパラメーターを予
想した。ホップ(Hopp)ら、プロシーディングズ・オ
ブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・ユ
ー・エス・エイ(Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA)7
8:3824(1981);エミニ(Emini)ら、J.
Virology 55:836(1985);ジェイムソン・
ビー・エイ(Jameson BA)ら、コンピューター・ア
プリケーションズ・イン・ザ・バイオサイエンシズ(C
omputer Applications in theBiosciences)4:18
1(1988)。
【0073】親水性、表面確率、フレキシビリティおよ
び抗原性についてのシミュレーションの結果には有意な
差異はなかった。しかしながら、チョウ−ファスマンお
よびガーニャー−オスグトープ−ロビンソンの両方のプ
ログラムは、2種類のウイルスの二次元構造における差
異を予想した。チョウ−ファスマン・プログラムによる
と、回転、α螺旋およびβシートにおいて差異はある。
ガーニャー−オスグトープ−ロビンソン・プログラム
は、2種類のウイルスのエンベロープタンパク間の回転
の差異を予想した。したがって、138Lys突然変異が、
IC47の弱毒化表現型に誘導するようにエンベロープ
タンパクのコンホーメーションを変化させることが可能
である。
【0074】実施例7 エンベロープタンパクにおける138Aspおよび138Arg突
然変異を有する組換えウイルスの特徴付け 部位特異性突然変異誘発を用いて、エンベロープタンパ
クの138位に以下の突然変異:Arg(AGA)[「
138Arg」]、Arg(AGG)およびAsp(GAC)
[「138Asp」]を有する組換えウイルスを産生した。
DNA配列分析を用いて、ヌクレオチド置換を証明し
た。
【0075】3週齢のマウスにic経路により100P
FUの組換え野生型IC37、IC47、138Argまた
138Aspを接種することによって、組換え突然変異ウ
イルスのニューロビルレンス誘発能を試験した。IC3
7または138Aspを接種したマウスの全ては、死亡し
た。対照的に、IC47または138Argを接種した全て
のマウスは、いずれの病気の徴候もなく生存した。「図
10」を参照のこと。
【0076】ニューロビルレンス分析は、また、8匹の
5日齢マウスのグループを用いて行った。これらの研究
では、IC37の接種後6日目までに全てのマウスが死
亡した。「図11」を参照のこと。IC47および138
Argは、また、これらの新生マウスにおいてニューロビ
ルレントであった。
【0077】これらの研究により、IC47および138
Argが5日齢マウスにおいてニューロビルレンスを誘発
したが、3週齢マウスにおいては誘発しなかったことが
判明した。この罹病性パターンは、ヒトを黄熱病ウイル
スから保護するために用いた確立された弱毒化ワクチン
である黄熱病17Dについて見られたものと同様であ
る。
【0078】138Argが中和抗体産生を誘発することが
できるかを判定するために、3週齢のICRマウスに1
00PFUのウイルスを接種した。接種後7日目および
14日目に採取した血液試料中で中和抗体力価を測定し
た。両方の血清試料において、1:80の力価が見られ
た。これらの結果は、138ArgがIC47と同様に免疫
原性であることを示す。
【0079】攻撃研究において、3週齢のマウスに10
0PFUの138Argを接種した。2週間後、該マウスに
100PFUのIC37をic注射した。7日目までに
全ての非免疫化マウスが死亡したが、138Argで免疫化
した全てのマウスは、いずれの病気の徴候もなく致命的
な攻撃にもかかわらず生き残った。したがって、138Ar
gおよびIC47は、同程度に防御免疫を提供すること
が明らかである。
【0080】IC47および138Argをマウスの脳中に
継代接種して、弱毒化表現型を提供する突然変異の遺伝
的安定性を測定した。これらの研究において、3週齢の
マウスに両方のウイルスをic投与し、該マウスを注射
後4日目に殺した。脳ホモジネートを前記に従って調製
し、P1と命名した。P1ホモジネートの一部を用い
て、マウスの第2グループに接種し、これらのマウスか
らの脳ホモジネートをP2と命名した。このサイクルを
10代のブラインド継代接種のために継続した。
【0081】P10ホモジネートから単離した100P
FUのIC47ウイルスまたは138Argウイルスを3週
齢のマウスにic投与して、ニューロビルレンスを測定
した。これらの研究の結果から、弱毒化表現型が10代
継代接種後に安定であったことが判明した。P10ホモ
ジネートからのウイルスのDNA配列分析により、IC
47および138Arg突然変異の安定性が証明された。1
0代継代接種後、復帰突然変異体は、観察されなかっ
た。
【0082】要約すれば、138Argウイルスは、高度に
弱毒化され、非常に免疫原性であり、防御免疫を誘発
し、遺伝的に安定であり、エンベロープタンパクのアミ
ノ酸138をコードするコドンにおいて二重突然変異を
含有する。138Argウイルスのニューロビルレンス特徴
は、黄熱病ワクチン17Dのものと同様である。IC4
7ウイルスおよび138Argウイルスの両方の弱毒化表現
型は、マウスの脳を介する10代のブラインド継代接種
後、安定である。138Argウイルスは、二重突然変異を
有し、IC47は、単一の突然変異を有するので、138
Argウイルスは、長期間にわたって、IC47よりも遺
伝的に安定であることを証明した。
【0083】本発明は、以上に挙げた好ましい具体例に
限定されるものではない。前記具体例に種々の変更を行
うことができ、この変更が特許請求の範囲で定義した本
発明の範囲内であることは、当業者には明らかなことで
ある。本明細書に記載した全ての刊行物および特許出願
は、本発明が属する技術分野の当業者のレベルを示すも
のである。全ての刊行物および特許出願は、出典明示に
より本明細書の一部とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 JEVゲノムの線図および組換えJEVウイ
ルスの構造を示す図。
【図2】 cDNAから組換え野生型JEVの回収スト
ラテジーを示す図。
【図3】 BHK細胞における親JEV、組換え野生型
(IC37)および組換え突然変異JEV(IC47)
の増殖率を示すグラフ。
【図4】 N18細胞における組換え野生型(IC3
7)および組換え突然変異JEV(IC47)の増殖率
を示すグラフ。
【図5】 培養培地における親JEVまたは突然変異J
EV(IC47)の安定性を示すグラフ。
【図6】 親JEV、組換え野生型JEV(IC37)
または組換え突然変異JEV(IC47)で攻撃された
Swiss ICR異系交配マウスの生存率を示すグラフ。
【図7】 親JEVまたは組換え突然変異JEV(IC
47)のいずれかを接種した3週齢マウスにおけるウイ
ルス血症の存在および中和抗体産生を示すグラフ。
【図8】 ICRマウスの脳における親JEVまたは組
換え突然変異JEV(IC47)の力価を示すグラフ。
【図9】 ic経路によって親ウイルスで攻撃されたI
C47免疫化マウスの脳におけるウイルス力価を示すグ
ラフ。
【図10】 3週齢のマウスにおける組換え野生型IC
37ウイルス、IC47ウイルスまたは138Argウイル
スによるニューロビルレンス(neurovirulence)の誘発
を示すグラフ。
【図11】5週齢のマウスにおける組換え野生型IC3
7ウイルス、IC47ウイルスまたは138Argウイルス
によるニューロビルレンスの誘発を示すグラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 15/01 G01N 33/53 D 15/09 33/531 A G01N 33/53 33/569 L 33/531 9162−4B C12N 15/00 E 33/569 9162−4B A //(C12N 15/01 C12R 1:92) (72)発明者 スミヨシ ヒデオ アメリカ合衆国06405コネチカット州ブラ ンフォード、オールド・ヒックリー・レイ ン35番 (72)発明者 チャールズ・エイチ・ホウク・ジュニア アメリカ合衆国21044メリーランド州コロ ンビア、カーディナル・レイン6405番

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンベロープタンパクの138位での酸
    性アミノ酸の、塩基性アミノ酸への置換によって、対応
    する野生型日本脳炎ウイルス(JEV)と区別される単
    離された突然変異日本脳炎ウイルスであって、該酸性ア
    ミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸であり、該
    塩基性アミノ酸がリシンまたはアルギニンである突然変
    異日本脳炎ウイルス(JEV)。
  2. 【請求項2】 野生型JEVがJEV菌株JaOArS
    982であり、酸性アミノ酸がグルタミン酸である請求
    項1記載の突然変異JEV。
  3. 【請求項3】 塩基性アミノ酸がリシンである請求項2
    記載の突然変異JEV。
  4. 【請求項4】 突然変異JEVがIC47(ATCC
    No. VR 2412)である請求項3記載の突然変異J
    EV。
  5. 【請求項5】 塩基性アミノ酸がアルギニンである請求
    項2記載の突然変異JEV。
  6. 【請求項6】 突然変異日本脳炎ウイルス(JEV)の
    ゲノムをコードする単離されたDNA分子であって、突
    然変異JEVが、エンベロープタンパクをコードする遺
    伝子における1または2個のヌクレオチド置換からなる
    突然変異によって、対応する野生型JEVと区別される
    単離されたDNA分子。
  7. 【請求項7】 突然変異により、野生型JEVのエンベ
    ロープタンパクの138位の酸性アミノ酸の、突然変異
    JEVのエンベロープタンパクにおける138位の塩基
    性アミノ酸への置換が生じ、該酸性アミノ酸がグルタミ
    ン酸またはアスパラギン酸であり、塩基性アミノ酸がリ
    シンまたはアルギニンである請求項6記載の単離された
    DNA分子。
  8. 【請求項8】 塩基性アミノ酸がリシンである請求項7
    記載の単離されたDNA分子。
  9. 【請求項9】 pM433(ATCC No. 7549
    1)のcDNA挿入からなる請求項8記載の単離された
    DNA分子。
  10. 【請求項10】 pM433のcDNA挿入およびpH
    756(ATCCNo. 75492)のcDNA挿入か
    らなる請求項9記載の単離されたDNA分子。
  11. 【請求項11】 (a)鋳型として請求項6記載のDN
    A分子を用いてイン・ビトロで全長ウイルスゲノムRN
    Aを合成し; (b)培養動物細胞にウイルスゲノムRNAをトランス
    フェクトさせて、ウイルスを産生させ;次いで、 (c)培養動物細胞からウイルスを単離することからな
    ることを特徴とする、培養動物細胞からの突然変異JE
    Vの産生方法。
  12. 【請求項12】 (a)請求項1記載の突然変異JEV
    および(b)医薬的に許容される賦形剤からなる医薬組
    成物の治療有効量を投与することを特徴とする動物にお
    けるJEVに対する中和抗体の産生方法。
  13. 【請求項13】 突然変異JEVがIC47(ATCC
    No. VR 2412)である請求項12記載の方法。
  14. 【請求項14】 塩基性アミノ酸がアルギニンである請
    求項12記載の方法。
  15. 【請求項15】 医薬組成物が粘膜に投与される請求項
    12記載の方法。
  16. 【請求項16】 医薬組成物が、皮下注射、皮内注射お
    よび筋肉内注射からなる群から選択される注射の形態に
    よって投与される請求項12記載の方法。
  17. 【請求項17】 (a)請求項1記載の突然変異JEV
    および(b)医薬的に許容される賦形剤からなることを
    特徴とするビルレント日本脳炎ウイルスからの保護を与
    えるための医薬組成物。
  18. 【請求項18】 塩基性アミノ酸がリシンである請求項
    17記載の医薬組成物。
  19. 【請求項19】 突然変異JEVがIC47(ATCC
    No. VR 2412)である請求項18記載の医薬組
    成物。
  20. 【請求項20】 塩基性アミノ酸がアルギニンである請
    求項17記載の医薬組成物。
  21. 【請求項21】 (a)pM343(ATCC No. 7
    5490)のcDNA挿入からなるDNA鋳型を用いて
    イン・ビトロで全長ウイルスゲノムRNAを合成し; (b)動物細胞の単層培養物に該ウイルスゲノムRNA
    をトランスフェクトさせ(ここで、トランスフェクショ
    ンにより、単層培養物内で種々の大きさのウイルス含有
    プラークを形成する);次いで、 (c)単層培養物内の小さなプラークからウイルスを単
    離することからなることを特徴とする、突然変異JEV
    の産生方法。
  22. 【請求項22】 野生型フラビウイルスのエンベロープ
    タンパクにおける酸性アミノ酸の、突然変異フラビウイ
    ルスのエンベロープタンパクにおける塩基性アミノ酸へ
    の置換によって、対応する野生型フラビウイルスと区別
    される単離された突然変異フラビウイルスであって、該
    フラビウイルスが、マリーバレー脳炎ウイルス、セント
    ルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルスおよび中
    央ヨーロッパダニ媒介性脳炎ウイルスからなる群から選
    択され、酸性アミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギ
    ン酸であり、塩基性アミノ酸がリシンまたはアルギニン
    である突然変異フラビウイルス。
JP8116062A 1995-05-11 1996-05-10 高度に弱毒化された組換え日本脳炎ウイルスを産生する感染性日本脳炎ウイルスcDNAクローンおよびそのワクチン Withdrawn JPH0923880A (ja)

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US08/438,702 US5736148A (en) 1993-06-15 1995-05-11 Infectious Japanese encephalitis virus cDNA clones that produce highly attenuated recombinant Japanese encephalitis virus, and vaccines thereof

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