JPH09229920A - グラジェント液体クロマトグラフィー溶離液の処理方法 - Google Patents

グラジェント液体クロマトグラフィー溶離液の処理方法

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JPH09229920A
JPH09229920A JP6529996A JP6529996A JPH09229920A JP H09229920 A JPH09229920 A JP H09229920A JP 6529996 A JP6529996 A JP 6529996A JP 6529996 A JP6529996 A JP 6529996A JP H09229920 A JPH09229920 A JP H09229920A
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eluant
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JP6529996A
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Matsuhiro Hori
松浩 堀
Naohiro Oya
尚洋 大屋
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Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】グラジェント液体クロマトグラフィーによ
りカラムから連続的に流出する溶離液を検出器に導入す
る前に処理する方法であって、該溶離液に追加溶離液を
その組成を変化させながら混合して、溶離物質を除く溶
離液成分の組成が検出中に実質的に変化しないようにし
たことを特徴とする溶離液の処理方法。 【効果】本発明の溶離液の処理方法によると、いかなる
グラジェント分離に対してもキャピラリー管での線速度
や溶離液組成を一定に保つことができ、各種検出器によ
る溶離液の安定かつ正確な測定が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、グラジェント液体
クロマトグラフィー溶離液の処理方法に関し、より詳細
には、追加溶離液の混合により溶離液成分の組成が検出
中に実質的に変化しないようにした、グラジェント液体
クロマトグラフィー溶離液の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、質量分析法に関しては、FAB
(高速中性原子衝撃イオン化法),FD(電界脱離イオ
ン化法),TSP(サーモスプレーイオン化法),AP
CI(大気圧下化学的イオン化法),ESI(エレクト
ロスプレーイオン化法)と呼ばれる種々のソフトイオン
化法、構造解析に非常に有効な方法であるMS/MS
法、超高分子領域まで質量分析できるFT−MS(フ−
リエ変換式質量分析装置),TOF/MS(飛行時間型
質量装置)が開発されたことにより、この分野における
測定技術や解析理論が急速に進歩している。
【0003】そのようなMS新技術開発の中、高速液体
クロマトグラフィー(HPLC,LC)の検出器に質量
分析装置(MS)をオンライン接続したLC/MSが、
新規複合化構造解析技術あるいは新規複合化分離技術と
して急速に発達しており、合成研究から環境衛生研究や
薬物動態研究に至るまで幅広い分野の分析研究に応用さ
れている。
【0004】従来より未知化合物の構造解析を行なう場
合、未知成分をカラムクロマトやHPLCにより分取精
製し、NMR,IR,UV,MS等で得られるスペクト
ルにより構造解析を行なっている。この方法は現在のと
ころ最も確実な構造解析が行える方法であるが、解析に
時間や手間がかかり非効率であることが最大の難点であ
る。一方、LC/MSを構造解析の手段として使用した
場合、HPLC分離後、直接オンラインで質量分析がで
きるため、HPLCの極性分離的解析、MSスペクトル
やMSクロマトグラム解析、合成あるいは反応経路の推
定等を加味することにより、未知成分を迅速にある程度
まで構造解析ができる。つまり、LC/MSは、確実に
全ての未知成分の構造解析ができる方法ではないが、未
知成分構造解析の一次スクリーニング的な分析には非常
に迅速かつ有効な方法であるといえる。
【0005】また、混合物の定量分析は、通常HPLC
により極性分離を行ない得られるクロマトグラムのピー
ク面積から算出して行なう。この定量方法は汎用的に行
なわれているが、現在検出器として用いられているU
V,RI,ELSDは未知化合物に対し選択的検出がで
きないことや、混合物中の極微量成分の定量分析ができ
ないことに難点がある。これに対しLC/MSを混合物
の定量分析の手段として使用した場合、HPLCだけで
は分離が不十分なピークであっても質量分離によりピー
ク分離ができるため正確に混合物の選択的検出ができ
る。また、ノイズに埋もれている極微量成分ピークであ
っても、MSの高感度かつ選択的な質量分離によりピー
ク抽出をし正確な定量分析ができる。つまり、LC/M
Sは、MSの高感度に質量分離ができる選択的検出器の
特徴を活かすことにより、より正確に混合成分の定量分
析ができる非常に有効な方法であるといえる。
【0006】従って、このような高度解析用のMSは、
数々の合成物質や配合組成物の成分の構造解析に広く利
用することができると考えられる。しかし、実際にはこ
のシステムでは、以下で述べる問題のため、混合微量成
分の詳細な構造解析や特定成分の微量定量分析など、M
Sの特徴を活かした分析はできていなかった。
【0007】例えば、FRIT−FAB−LC/MSシ
ステム(多孔板上連続高速中性原子衝撃イオン化LC/
MSシステム)について言えば、測定そのものが難しい
状態で、得られるLC/MSのトータルイオンクロマト
グラムもS/N(シグナルノイズ比)が悪く解析できな
いという大きな問題を抱えていたため、LC/MSを微
量混合成分の構造解析などの分析手段として活用するこ
とができなかった。従って、このような問題により、正
確で詳細なMSスペクトルやMSクロマトグラムが得ら
れず、微量混合成分の構造解析を行なうことは不可能で
あった。
【0008】FRIT−FAB−LC/MSは、LC/
MSシステムとしては初期に開発された装置で、高度構
造解析用であるがLC/MS専用機として開発された装
置ではない。従ってこのシステムは、溶媒除去用の予備
差動排気室を持っておらず、MSの高真空度を維持する
必要があるため、溶離液の流速に関しては大きな制限が
ある。具体的には、溶離液の流速は最大でも数μl/m
inという制限があるため、コンベンショナルなHPL
Cとオンライン接続するためには、溶離液の99.5%
以上をスプリットアウトしなくてはいけない。つまり、
FRIT−FAB−LC/MSシステムは、溶離液の流
速をml/minオーダーから数μl/minオーダー
まで流量コントロールできる空気圧スプリッター装置を
システムに組み込むことでオンライン分析を可能として
いる。
【0009】図1にかかる空気圧スプリッター装置の例
を示す。アイソクラティックHPLC、即ち溶離液組成
の変化しない一液系のHPLCから送液された溶離液1
は、汎用的もしくは一般的に使用されているLC分離用
カラム2での分離後、空気圧スプリッター7によりスプ
リット(分配)され、Tバー3を通じてキャピラリー4
に導入される。溶離液のスプリット比あるいはMS導入
量は、プレッシャーレギュレーター8やガスフローバル
ブ11によりコントロールされる。
【0010】MS導入部に用いられるキャピラリーは、
溶液の流動性に対して高い抵抗力を持つため、MSの高
真空を維持するためには絶対必要な物である。しかし、
キャピラリー管での溶液の流動性に対する高い抵抗力に
より、LCポンプの圧力だけでは充分な量の溶離液がキ
ャピラリー内に侵入しないので、廃液側の配管に背圧を
かける必要がある。つまり、背圧をかけられる空気圧ス
プリッターを用いることで、溶離液をキャピラリー内に
侵入させている。この装置は、アイソクラティック(一
液系)の溶離液であれば、背圧コントロールすることで
キャピラリー管内の溶離液の流速がコントロールできる
装置である。
【0011】この様に、空気圧スプリッター装置は、F
RIT−FAB−LC/MSシステム上どうしても必要
な装置であるが、溶離液のグラジェントによる溶液の粘
性や流動性や組成比の変化に対し、キャピラリー管内で
の線速度や溶媒組成が変化し、イオン化条件が変化した
りクロマトグラムのピーク変動が起こり、得られるクロ
マトグラムのS/Nが悪く、安定したMS測定ができな
い、という大きな問題がある。また、上記システムに限
らず、他のシステムにおいても溶離液の線速度や溶媒組
成が変化すると、スペクトルやクロマトグラムのベース
ライン悪化やピーク消失など種々の問題が生じる場合が
ある。
【0012】一般的にHPLCの分離分析では、グラジ
ェント分析はより幅広い極性物質を短時間に正確に分離
分析できる手法として用いられている。従ってFRIT
−FAB−LC/MSにおいてもグラジェント分析は幅
広い極性物質の詳細な構造解析をするのに有効な方法で
あるが、空気圧スプリッター装置はこのLC分離時のグ
ラジェント変化に対し一定のスプリット比でスプリット
することができない。すなわち、空気圧スプリッター
は、グラジェント分析時にMSへの溶離液導入量を完全
にコントロールできない。
【0013】例えば、流動性の高い溶離液や粘性の低い
溶離液が空気圧スプリッター装置に導入されると、廃液
側にどんどん排出され、スプリッター背圧が減少するこ
とによりキャピラリーでの溶離液の線速度は減少する。
逆に流動性の悪い溶離液や粘性の高い溶離液が空気圧ス
プリッター装置に導入されると、廃液側の排出量は減少
し、スプリッター背圧が増加することによりキャピラリ
ーでの溶離液の線速度は増加する。このような線速度の
変化は、得られるクロマトグラムのサンプルピークの保
持時間変動を起こすだけでなく、サンプル導入量変化に
よるピーク強度変動を引き起こし、同時に測定されるU
VやRIやELSD検出器により得られたHPLCクロ
マトグラムとの比較が困難になってしまう。つまり、微
量混合成分由来ピークの位置関係が分らなくなってしま
う。また、MS内部へ導入される溶離液の組成変化は、
溶離液の揮発性や熱容量の変化を伴うため、イオン源温
度やMS真空度などのMSイオン化環境に影響を与え、
最適なイオン化条件を維持できなくなる。
【0014】従来、これら2つの影響により、MSイオ
ン化条件が不安定となり、正確で詳細な再現性のあるM
SスペクトルやMSクロマトグラムが得られなくなって
いた。装置メーカーでもグラジェントモードでのMSイ
オン化の不安定性に関する問題点は認識され、イオン化
条件が安定するようなシステムの改良検討が行なわれて
いる。
【0015】例えば空気圧スプリッターを改良するもの
として、特開平5−299053号公報には抵抗管つき
排出流路を用いて溶離液の粘性変化の影響を少なくし
て、イオン源に導入される溶離液の流量をグラジェント
に対して一定化する方法が開示されている。また、グラ
ジェントに対して溶離液の霧化温度やMS内部の温度を
コントロールしイオン化条件を一定に維持できる測定シ
ステムの開発(特開平3−194466号公報、特開平
5−99911号公報、特開平6−308086号公
報)、及びグラジェントに対して排出弁を調整してMS
内部の真空度をコントロールしイオン化条件を一定に維
持できる測定システムの開発(特開昭64−77855
号公報)、等が行なわれている。
【0016】しかしながら、これらの装置自体にもそれ
ぞれ問題点があり、例えば抵抗管つき排出流路を用いる
方法では、溶離液導入量を変更したい場合は抵抗管を取
り替える必要があること、導入量は一定にできるが溶離
液組成は変化するためMSイオン化条件に影響を与える
ことが挙げられる。また、溶離液の霧化温度やMS内部
の温度をコントロールする方法では、装置が大がかりで
個人では開発できないこと、測定条件検討に相当時間が
かかること、システム導入のためのコストがかかること
が挙げられる。更に排出弁を調整してMS内部の真空度
をコントロールする方法では精度よく調整することが困
難で、グラジェント分離に対してMS内部への導入量や
溶離液組成が変化することが挙げられる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、かか
る課題を解決すべく、いかなるグラジェント分離に対し
てもキャピラリー管での線速度や溶離液組成を一定に保
つことができ、各種検出器による溶離液の安定かつ正確
な測定が可能となる溶離液の処理方法を提供することに
ある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、検出器に
導入する前の溶離液に追加溶離液をその組成を変化させ
ながら混合して、溶離物質を除く溶離液成分の組成が検
出中に実質的に変化しないようにすることにより、上記
目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至
った。
【0019】即ち、本発明の要旨は、(1) グラジェ
ント液体クロマトグラフィーによりカラムから連続的に
流出する溶離液を検出器に導入する前に処理する方法で
あって、該溶離液に追加溶離液をその組成を変化させな
がら混合して、溶離物質を除く溶離液成分の組成が検出
中に実質的に変化しないようにしたことを特徴とする溶
離液の処理方法、(2) 追加溶離液の組成を変化させ
る方法が、グラジェント液体クロマトグラフィー用ポン
プを用いて、カラムに導入する溶離液のグラジェントの
変化に対応してそれを相殺する組成の追加溶離液を混合
する方法である上記(1)記載の溶離液の処理方法、
(3) 検出中における溶離液成分の組成の変化が、各
成分でそれぞれ±5%の範囲内である上記(1)又は
(2)記載の溶離液の処理方法、(4) 検出器が、質
量分析検出器(MS)、核磁気共鳴検出器(NMR)、
赤外線吸収検出器(IR)、示差屈折検出器(RI)、
又は光散乱レーザー検出器(ELSD)である上記
(1)〜(3)いずれか記載の溶離液の処理方法、
(5) 検出器が質量分析検出器(MS)であり、追加
溶離液がイオン化促進剤とともに供給される上記(1)
〜(3)いずれか記載の溶離液の処理方法、に関する。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の溶離液の処理方法は、グ
ラジェント液体クロマトグラフィーによりカラムから連
続的に流出する溶離液を検出器に導入する前に処理する
方法であって、該溶離液に追加溶離液をその組成を変化
させながら混合して、溶離物質を除く溶離液成分の組成
が検出中に実質的に変化しないようにしたことを特徴と
するものである。ここで、「溶離液成分の組成が検出中
に実質的に変化しない」とは、検出中における溶離液成
分の組成の変化により、検出に悪影響を与えない程度に
組成変化が少ないことをいい、好ましくは検出中におけ
る溶離液成分の組成の変化が、各成分でそれぞれ±5%
の範囲内、より好ましくは±3%の範囲内である。
【0021】本発明では、上記のように追加溶離液の組
成を変化させて溶離物質を除く溶離液成分の組成が検出
中に実質的に変化しないようにして、検出器に導入され
る溶離液混合物の流量が検出中に実質的に変化しないよ
うにすることができる。
【0022】即ち、一般的にグラジェントモードによる
HPLC分析では、溶離液成分の組成が実質的に変化し
なければその流動性も変化しないため、キャピラリーと
空気圧スプリッター装置等の組み合わせにより、キャピ
ラリー中の線速度を一定にすることが可能である。な
お、本発明ではカラムに導入する溶離液の流量が変化す
る場合でも、追加溶離液の供給量を変化させることによ
り、混合後の溶離液混合物の流量を実質的に変化しない
ようにすることも可能である。
【0023】グラジェント液体クロマトグラフィーにつ
いては、溶離液がグラジェントされる形式のものであれ
ばクロマトグラフィーの種類は特に限定されることはな
い。例えば吸着クロマトグラフィー、順相系クロマトグ
ラフィー、逆相系クロマトグラフィー、サイズ排除クロ
マトグラフィー等が挙げられる。また、グラジェントの
形式も、勾配式と段階式のいずれでもよい。
【0024】また、用いられる溶離液としては、通常の
グラジェント液体クロマトグラフィーに用いられるもの
であれば特に限定されることなく、例えばメタノール、
エタノール、プロパノール、アセトニトリル、ヘキサ
ン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、水、クロロホル
ム、ジクロルメタン、トルエン等が挙げられる。
【0025】本発明は、検出器に導入前の溶離液に追加
溶離液をその組成を変化させながら混合して、溶離物質
を除く溶離液成分の組成が検出中に実質的に変化しない
ようにするものであるが、当該追加溶離液の組成を変化
させる方法としては次の方法が挙げられる。
【0026】例えば、グラジェント液体クロマトグラ
フィー用ポンプを用いて、カラムに導入する溶離液のグ
ラジェントの変化に対応してそれを相殺する組成の追加
溶離液を連続的に混合する方法(これには分離用と調製
用のポンプの流量は最初から同じで、組成のみを両者が
相殺されるように変化させるものも含まれる)、複数
の送液ポンプと溶離液タンク、及び流量制御手段の組み
合わせにより、溶離液のカラム導入と追加溶離液の混合
をトータルで制御する方法、カラムに導入される溶離
液の組成を検出してオンラインで追加溶離液の組成を制
御する方法等が挙げられるが、装置の簡便さ、コスト、
汎用性等の観点より上記の方法が好ましい。
【0027】上記において、追加溶離液はそれ単独で供
給してもよいが、検出器の方式に応じて適宜添加される
添加剤と共に供給してもよい。例えば、検出器が質量分
析検出器(MS)でありイオン化促進剤の供給が必要な
場合には、追加溶離液をイオン化促進剤とともに供給す
ることができる。
【0028】例えばFRIT−FAB−LC/MSと呼
ばれるシステムでは、そのイオン化方法として高速原子
衝突法(FAB:FAST ATOM BOMBARD
MENT)を採用しており、このようなシステムでは、
試料それだけではイオン化が困難であるため、イオン化
効率を向上させるためイオン化の際グリセリン等のイオ
ン化促進剤と呼ばれる添加剤を必要とする。このため追
加溶離液をイオン化促進剤とともに供給することが装置
構成を簡略化する上で好ましい。
【0029】以上の本発明の処理方法により正確で再現
性があり、S/Nの良いスペクトルやクロマトグラムが
得られるようになった。即ち、グラジェントのLC/M
S時の安定したMSイオン化を目的に、装置メーカーで
はシステム本体の改造や改良を行っているのに対し、本
発明の処理方法を利用すれば、グラジェントポンプを1
台追加しただけでよい。本発明の処理方法によれば、簡
単かつ安価なシステム変更でありながらグラジェントモ
ードのLC/MS時でも安定したMSイオン化が可能
で、正確で再現性がありS/Nの良いスペクトルやクロ
マトグラムが得られるようになったため、汎用的なLC
/MS技術として確立することができる。
【0030】LC/MS法は、HPLCの検出器にMS
を用いた測定方法であり、MSの高感度・質量選択的検
出ができる特徴から超微量分析や分析業務効率化を可能
にしたり、MSスペクトルやMS/MSスペクトルやマ
スクロマトグラムの解析により有機化合物(および一部
の無機化合物)の同定や構造解析を可能にする等、分離
分析や構造解析手法としては非常に有効な分析方法であ
る。特に、本発明は、HPLCと、質量分析検出器(M
S)、核磁気共鳴検出器(NMR)、赤外線吸収検出器
(IR)、示差屈折検出器(RI)、又は光散乱レーザ
ー検出器(ELSD)等の検出器とのオンラインシステ
ムの最適化の際には効果的な方法として使用できるた
め、非常に応用範囲の広い技術と言える。
【0031】近年、新しいHPLC検出器としてMS,
NMR,IRが検出器として応用されてきている。これ
らの検出器は、サンプルに対して選択的、高感度、定性
的検出が可能である。グラジェントHPLCは幅広い極
性を持つ混合物を短時間に分離できる非常に有効な方法
であるが、これらの検出器はグラジェント分離による溶
離液組成比変化に影響を受け易いため、スペクトルやク
ロマトグラムのベースライン悪化やピーク消失など種々
の問題が発生している。また、従来からのRI,ELS
D検出器も溶離液組成比変化に影響を受け易く、特にR
I検出器はグラジェントHPLC時には使用できない。
【0032】本発明の処理方法は、グラジェントHPL
C分離による溶離液組成比変化をアイソクラティックな
溶離液組成比にすることが可能なため、MS,NMR,
IR,RI,ELSDなどの検出器のHPLCとのオン
ライン化における種々の問題を解決し、これらの機器を
HPLC検出器として応用できる可能性がある。また、
今回は低圧グラジェント方法で検討したが、溶離液のミ
キシング能力の高い高圧グラジェント方法を採用すれ
ば、さらに溶離液環境を一定にすることが可能であろ
う。以下、種々の検出方式に対応する本発明の応用につ
いて述べる。
【0033】(1)スプレー式LC/MSへの応用 LC/MS専用機は、APCI(ATMOSPHERI
C PRESSURECHEMICAL IONIZA
TION),TSP(THERMO SPRAY),E
SI(ELECTRO SPRAY IONIZATI
ON),ISP(ION SPRAY),TIS(TU
RBO ION SPRAY)と呼ばれるスプレー式イ
オン化方法が一般的となっている。前述のようにFRI
T−FAB−LC/MSシステムは、HPLC溶離液を
液体のままMSに導入しなくてはいけないため、溶離液
流量は最大でも数μl/minであるが、上記のスプレ
ー式LC/MSシステムは、HPLC溶離液を予備差動
排気室で溶媒除去することができるため、溶離液流量は
最大2ml/minが可能である。
【0034】この様に大量導入が可能であるスプレー式
LC/MSシステムであるが、グラジェントHPLC時
にスプレーノズル先端(スプレーMSイオン化部)やス
キマーコーン部(MS導入孔)での塩類の析出による目
詰まり問題が起こっている。このような塩の析出の結
果、MSイオン化環境が変化し安定したMS測定ができ
なくなる。グラジェントHPLC分析は、短時間に幅広
い極性物質を分離できる非常に有効な方法であるが、分
離向上のため各種の塩の添加が行なわれており、塩は緩
衝液,イオンペア試薬,シラノール基吸着抑制剤として
使用され欠くことができない。この目詰まり問題の原因
としては、グラジェントの溶離液組成比変化により溶媒
の揮発性や熱容量が変化し、溶離液中の塩類の蒸発環境
が変化するためノズル先端やスキマーコーン部に析出す
ると考えられる。従って、このようなグラジェントHP
LC/MS時の塩の析出による目詰まり問題に対して、
本発明の処理方法によりグラジェントHPLCによる溶
離液組成比変化をアイソクラティックな溶離液組成比に
することで、塩類の蒸発環境を一定にし塩の析出を防止
し目詰まりを防ぐことができることから、本発明は非常
に有効であるといえる。
【0035】装置メーカーでもこの析出問題を解決する
方法として、スプレーノズルの形状改良、MSイオン化
室温度と真空度のコンピュータコントロール化、および
ガスカーテンによるスキマーコーンの大径化など、が検
討されているが、MS装置そのものの改良が必要とな
り、コストもかかるため汎用的な方法とは言えない。こ
れに対し、本発明を利用したスプレー式LC/MSシス
テムは、従来のシステムにグラジェントポンプを1台追
加しただけで塩類の析出問題を解決し、安定したMS測
定を可能にする非常に有効なシステムと言える。
【0036】(2)HPLC/NMRへの応用 近年のNMRの高性能化が進み、NMR測定に必要なサ
ンプル量は極微量になり、測定時間として秒単位での分
析が可能になってきた。そして、この高性能NMRをH
PLCの検出器として用いるHPLC/NMRの開発が
行なわれている。LC/NMRは、NMRの構造解析機
器としての特徴を活かした検出方法により、定性分析を
目的とする連続フロー測定、詳細な構造解析を目的とす
るストップフロー測定など、種々の測定方法を行うこと
ができる。
【0037】今後、分析分野においてLC/NMRの有
効性が期待されるが、グラジェントHPLC時に溶媒ロ
ックがかかりにくくなり、NMR測定ができなくなって
しまう可能性がある。つまり、アイソクラティックHP
LCの場合は溶離液組成比が一定であるため溶媒ロック
がずれることはないが、グラジェントHPLCの場合は
溶離液組成比が変化により溶媒ロックがずれ、溶媒ロッ
クがかかりにくくなる。その結果NMR測定ができなく
なり、NMRスペクトル情報が得られなくなるのに加
え、LC/NMRとしてのクロマトグラムも得られない
ため非常に大きな問題となる。
【0038】このグラジェントHPLC/NMR時の溶
媒ロックずれ問題に対して、本発明の処理法は、グラジ
ェントHPLCによる溶離液組成比変化をアイソクラテ
ィックな溶離液組成比にすることができ溶媒ロックずれ
を防止できることから、非常に有効な方法であるといえ
る。
【0039】(3)HPLC/IRへの応用 FT−IRなど装置の高性能化がすすみ、測定に必要な
サンプル量は微量になり、測定時間としてミリ秒単位で
の分析が可能となってきている。近年、このFT−IR
を利用しHPLCの検出器として用いるHPLC/FT
−IRの開発が行なわれている。LC/IRは、IRの
構造解析機器としての特徴を活かした検出方法により、
官能基や構造選択的な定性的検出を行なうことができ
る。IRは溶離液の影響を非常に受け易いので、HPL
Cとのオンライン化においてはスポットスキャン方式
(IRセル上で溶媒蒸発させ目的物を乾固し連続スポッ
ト測定する方法)やスプレースキャン方式(真空中に溶
離液を噴霧し溶媒除去した後、気化した目的物を測定す
る方法)などが検討されている。
【0040】今後分析分野においてLC/IRの有効性
が期待されるが、グラジェントモードでのLC/IR時
に、溶離液自身の揮発性の変化やIR強度変化により、
IRスペクトルやLC/IRクロマトグラムに影響を与
える問題がある。この問題は、アイソクラティックHP
LCの場合は溶離液組成比が一定であるため溶媒の揮発
性や熱容量に変化はなく溶媒除去条件は一定であるが、
グラジェントHPLCの場合は溶離液組成比が変化する
ことで、溶媒の揮発性や熱容量が変化し溶媒除去条件が
変化することでおこる。その結果、IRスペクトルやL
C/IRクロマトグラムは、溶媒のIR強度の変化によ
る影響を受け、ベースライン変動が起こってしまう。こ
のグラジェントHPLC/IR時の溶媒によるIR強度
変化の問題に対して、本発明の処理方法は、グラジェン
トによる溶離液組成比変化をアイソクラティックな溶離
液組成比にすることで溶媒除去条件を一定にし、溶離液
のIR強度変化の影響を最小にすることができることか
ら、非常に有効な方法であるといえる。
【0041】(4)HPLC/ELSDへの応用 94年より素材研においてELSD(光散乱レーザー検
出器)がHPLCの検出器として検討され、現在では各
種分離分析に応用されている。このELSD検出器は、
大気圧下の高温空気に溶離液をスプレーすることで噴霧
状態となった液滴にレーザー光を当て散乱強度変化を検
出する装置である。ELSDの特徴は、光学的吸収の無
い化合物を検出できるだけでなく、グラジェントHPL
Cの溶離液組成比変化に対しても影響を受けにくいこと
から、HPLC分離分析には有効な検出器である。
【0042】現在分析分野においてLC/ELSDを有
効に活用しているが、グラジェントHPLC時にスプレ
ーノズル先端での塩類の析出による目詰まり問題が起こ
っている。塩の析出の結果、スプレーによる噴霧状態が
変化し安定したELSD検出ができなくなり、特にピー
ク強度の安定性や再現性に影響を与える。(グラジェン
トHPLC分析は、短時間に幅広い極性物質を分離でき
る非常に有効な方法である。分離向上のため各種の塩の
添加が行なわれているが、塩は緩衝液,イオンペア試
薬,シラノール基吸着抑制剤として使用されており、欠
くことができない。)この塩析出問題の原因としては、
グラジェントの溶離液組成比変化により溶媒の揮発性や
熱容量が変化し溶離液中の塩類の蒸発環境が変化するた
め、スプレーノズル先端に塩が析出すると考えられる。
このグラジェントHPLC/ELSD時のスプレー先端
での塩析出問題に対して、本発明の処理方法は、グラジ
ェントによる溶離液組成比変化をアイソクラティックな
溶離液組成比にすることで、塩類の蒸発条件を一定にし
塩の析出を防止することができることから、非常に有効
な方法であるといえる。今後、定量分析などクロマトグ
ラムの高度な再現性を要求する測定に対し、この方法を
応用していきたい。
【0043】(5)HPLC/RIへの応用 従来より、HPLCの検出器としてRI(示差屈折検出
器)が幅広く分離分析に利用されている。このRI検出
器は、対象溶媒に対する溶離液の屈折率の変化を検出す
る装置であり、光学的吸収の無い化合物でも検出できる
ことが特徴である。しかし、対象溶媒に対する示差屈折
検出のため、グラジェントHPLCの溶離液組成比変化
に対して大きな影響を受けることから、アイソクラティ
ックモードのHPLC分析しか使用できない検出器であ
る。今後、本発明を利用したLC/IRは、ポンプコン
トロール性向上・高圧グラジェントの採用・ミキシング
チャンバーの改良・デッドボリュームの最小化・装置の
一体化などHPLC周辺装置の最適条件化ができれば、
グラジェントモードLCによる溶離液組成比変化を完全
にアイソクラティックな溶離液組成比にすることができ
るため、グラジェントHPLCの検出器としてRIを使
用できる可能性がある。
【0044】
【実施例】以下、実施例および参考例により本発明をさ
らに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によ
りなんら限定されるものではない。
【0045】参考例 図2に、混合物サンプル(アルキルサルフェートソーダ
(R:C12〜18、C18F1 )の、従来法によるグ
ラジェントモードでの(A)FRIT−FAB−LC/
MSと、(B)LC/ELSDによるクロマトグラムの
例を示す。LC/MSクロマトグラムは、LC/ELS
Dクロマトグラムと比較すると、再現性が悪いためクロ
マトグラム間のピーク比較が困難で、S/Nが悪いため
ベースラインノイズが大きくなりほとんどの微量混合成
分がピークとして現れていないため、同定や構造解析は
非常に困難であった。
【0046】実施例 FRIT−FAB−LC/MSシステムにおける本発明
の有効性を検討した。図3に、従来法によるグラジェン
トモードでのFRIT−FAB−LC/MSシステムを
示す。分離用カラム28より流出したグラジェントHP
LC溶離液は、ポストカラム方式でイオン化促進剤溶液
26とミキシングチャンバー21で混合される。従来法
では、ポストカラムにより添加されるイオン化促進剤溶
液はアイソクラティックな溶液であるため、ミキシング
チャンバーでの混合後も溶離液はグラジェント状態のま
ま空気圧スプリッターへ導入され、空気圧スプリッター
背圧に影響を与える問題があった。その結果、キャピラ
リーでの線速度が変化かつ溶媒組成が変動するため、M
Sイオン化が不安定になり正確なMS測定ができなかっ
た。
【0047】図4に、本発明の処理方法を利用したグラ
ジェントモードでのFRIT−FAB−LC/MSシス
テムを示す。分離用カラム28より流出したグラジェン
トHPLC溶離液は、ポストカラム方式によりイオン化
促進剤を含む溶離液とミキシングチャンバー21で混合
されるが、本発明の最大の特徴は、グラジェントポンプ
31を用いることにより、ポストカラムにより添加され
るイオン化促進剤溶液の溶媒もグラジェントモードで溶
媒組成を変化させられることである。そのため、HPL
Cのグラジェントによる溶離液組成変化を、ミキシング
チャンバーでの混合により一定の溶媒組成にすることが
可能である。つまり、グラジェントHPLCの溶離液組
成変化を追加溶離液の溶媒組成比変化で打ち消すような
設定をすることにより、ミキシングチャンバーでの溶離
液をアイソクラティックな環境にすることができる。そ
の結果、どんなグラジェントHPLC測定を行なって
も、空気圧スプリッターでの溶離液組成は一定となるた
め、キャピラリーでの線速度と溶離液組成は一定にな
り、安定したMSイオン化が可能になる。
【0048】図5に、HPLCグラジェントモードプロ
グラム(A)と、従来のグラジェントLC/MS法
(B)および本発明を利用したグラジェントLC/MS
法(C)によるミキサー位置でのメタノール比の変化を
示す。HPLCグラジェントモードの影響で、従来法の
グラジェントLC/MS法ではメタノール比が変化して
いるのに対し、本発明によるグラジェントLC/MS法
ではメタノール比が一定になっている。
【0049】図6に、HPLCグラジェント条件により
影響を受ける従来のグラジェントLC/MS法(A)
と、本発明を利用したグラジェントLC/MS法(B)
における、空気圧スプリッター背圧(kg/cm2 )と
キャピラリー線速度(μl/min)の変化を表わすグ
ラフを示す。従来のグラジェント法では、HPLCグラ
ジェントにより溶離液組成が変化すると空気圧スプリッ
ター背圧が変化するため、キャピラリー線速度にも影響
を与えていた。それに対し、本発明によるグラジェント
法では、HPLCグラジェントでカラムに導入される溶
離液の組成が変化しても、ポストカラム方式によりミキ
シングチャンバー位置で溶離液を一定の溶媒組成にする
ことができるため、空気圧スプリッター背圧はほとんど
変化せず、キャピラリー線速度にもほとんど影響を与え
ていない。
【0050】図7に、従来法であるグラジェント法
(A)と本発明を利用したグラジェント法(B)による
混合物サンプルのLC/MSクロマトグラムの例を示
す。測定条件は次の通りである。
【0051】HPLC用ポンプ:日立655A−11型
LCポンプ、日立655A−71型プロポーショニング
バルブポストカラム用ポンプ :日立655A−11型LCポン
プ、日立655A−71型プロポーショニングバルブ分離用カラム :TSK−gel 80TS,4.6×1
50mm,25℃(東ソー製)溶離液 :MeOH(関東化学)HPLC用 H2 O(Millipore によるLC用イオン交換水)イオンペア試薬 :CH3 COONH4 (片山化学)特級イオン化促進剤 :グリセリン(和光純薬)特級ミキシングチャンバー :THE LEE COMPANY 製スプリッター :日本電子製、純正品、スプリット比1/
800キャピラリー :日本電子製、純正品、60μmI.D.×1
00cmフリット板 :日本電子製、純正品
【0052】MS:日本電子製、JMS−SX102 /S
X102 ,タンデム型質量分析装置 <条件> IONIZING VOLT 70V CHAMBER TEMP 60℃ ACCEL 8.0KV POST ACCELL -10.0KV ION MULTI -1.4 EMISSION CURRENT 10mA POLARITY − MAGNETIC FIELD HS DETECTOR GAIN 1 SCAN RANGE 300-500 CYCLE TIME 2S
【0053】<グラジエント、ポストカラムグラジエン
ト(溶液パターン)>A法:通常のグラジエント法 A液(グラジエント分離用溶離液、30mM酢酸アンモニ
ウム/メタノール溶液) B液(グラジエント分離用溶離液、30mM酢酸アンモニ
ウム/水溶液) C液(ポストカラム用イオン化促進剤溶液、3%グリセ
ロール/メタノール溶液)
【0054】
【表1】
【0055】B法:ポストカラムグラジエント法 A液(グラジエント分離用溶離液、30mM酢酸アンモニ
ウム/メタノール溶液) B液(グラジエント分離用溶離液、30mM酢酸アンモニ
ウム/水溶液) C液(ポストカラム用イオン化促進剤溶液、3%グリセ
ロール/メタノール溶液) D液(ポストカラム用イオン化促進剤溶液、3%グリセ
ロール/水溶液)
【0056】
【表2】
【0057】図8は、図7の各LC/MSクロマトグラ
ムのベースライン部(保持時間R.T.=6分38秒〜
19分58秒)の拡大図を示すものであり、(A)は従
来のグラジェント法の場合であり、(B)は本発明によ
るグラジェント法の場合である。図9は、図7の各LC
/MSクロマトグラムの主ピーク存在部(保持時間R.
T.=33分17秒〜49分57秒)の拡大図を示すも
のであり、(A)は従来のグラジェント法の場合であ
り、(B)は本発明によるグラジェント法の場合であ
る。
【0058】従来法では、再現性が悪く、また図8
(A)の示すようにベースラインノイズも大きいため、
微量混合成分のピーク判別や検出が困難であった。本発
明によるグラジェント法では、再現性が向上するととも
に、図8(B)の示すようにベースラインノイズも小さ
くなり、微量混合成分由来のピークも明確になった。ま
た、図9の(A)と(B)の対比より保持時間にずれが
生じていることがわかり、HPLC/ELSD測定によ
るデータとの対比より、本発明によるグラジェント法の
場合(B)がより正確であることが判明した。
【0059】以上より、本発明の溶離液の処理方法を利
用した、グラジェント法によるFRIT−FAB−LC
/MSシステムを用いると、HPLCでどのようなグラ
ジェント分離を行なっても、ポストカラム方式で溶離液
組成変化を打ち消すようなグラジェント溶液を添加する
ことにより、ミキシングチャンバーでアイソクラティッ
クな溶離液に変換することができる。その結果、MSに
導入される溶離液の溶媒組成比や線速度は一定となり、
安定したMSイオン化が可能になるため、正確で再現性
がありS/Nの良いMSスペクトルやMSクロマトグラ
ムを得ることができるようになった。また、ベースライ
ンノイズの減少により微量混合成分のピークが明確にな
ったため、効率的に同定や構造解析が出来るようになっ
た。
【0060】
【発明の効果】本発明の溶離液の処理方法によると、い
かなるグラジェント分離に対してもキャピラリー管での
線速度や溶離液組成を一定に保つことができ、各種検出
器による溶離液の安定かつ正確な測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、空気圧スプリッター装置の原理を説明
するための図である。
【図2】図2は、FRIT−FAB−LC/MSとLC
/ELSDにより得られたクロマトグラムを対比したも
のであり、(A)がFRIT−FAB−LC/MSの場
合で、(B)がLC/ELSDの場合である。
【図3】図3は、従来法によるグラジェントモードでの
FRIT−FAB−LC/MSシステムの一例を示す図
である。
【図4】図4は、本発明の溶離液の処理方法を実施する
ための、グラジェントモードでのFRIT−FAB−L
C/MSシステムの一例を示す図である。
【図5】図5は、あるグラジェントモードプログラム下
におけるミキサー位置でのメタノール比の変化を示すも
のであり、(A)がHPLCグラジェントモードプログ
ラムを示し、(B)は従来のグラジェントLC/MS法
でのメタノール比の変化であり、(C)は本発明による
グラジェントLC/MS法でのメタノール比の変化を示
すものである。
【図6】図6は、グラジェントLC/MS法における空
気圧スプリッター背圧(kg/cm2 )とキャピラリー
線速度(μl/min)の変化を表わすグラフを示すも
のであり、(A)はHPLCグラジェント条件により影
響を受ける従来のグラジェントLC/MS法の場合であ
り、(B)は本発明によるグラジェントLC/MS法の
場合である。
【図7】図7は、混合物サンプルのLC/MSクロマト
グラムの例を示すものであり、(A)は従来のグラジェ
ント法の場合であり、(B)は本発明によるグラジェン
ト法の場合である。
【図8】図8は、図7の各LC/MSクロマトグラムの
ベースライン部の拡大図を示すものであり、(A)は従
来のグラジェント法の場合であり、(B)は本発明によ
るグラジェント法の場合である。
【図9】図9は、図7の各LC/MSクロマトグラムの
主ピーク存在部の拡大図を示すものであり、(A)は従
来のグラジェント法の場合であり、(B)は本発明によ
るグラジェント法の場合である。
【符号の説明】
1 溶離液 2 分離用カラム 3 Tバー 4 キャピラリー 5 MS 6 背圧用ガス 7 空気圧スプリッター 8 プレッシャーレギュレーター 9 ストップバルブ 10 プレッシャーゲージ 11 ガスフローバルブ 12 廃液・排ガス 21 ミキシングチャンバー 22 空気圧スプリッター 23 キャピラリー 24 溶離液 25 溶離液 26 追加溶離液 27 グラジェントLC用ポンプ 28 分離用カラム 29 廃液タンク 30 MS 31 グラジェントLC用ポンプ 32 追加溶離液
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G01N 24/08 G01N 27/62 X 27/62 30/62 E 30/62 30/72 C 30/72 30/74 E 30/74 Z 24/08 510Z

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グラジェント液体クロマトグラフィーに
    よりカラムから連続的に流出する溶離液を検出器に導入
    する前に処理する方法であって、該溶離液に追加溶離液
    をその組成を変化させながら混合して、溶離物質を除く
    溶離液成分の組成が検出中に実質的に変化しないように
    したことを特徴とする溶離液の処理方法。
  2. 【請求項2】 追加溶離液の組成を変化させる方法が、
    グラジェント液体クロマトグラフィー用ポンプを用い
    て、カラムに導入する溶離液のグラジェントの変化に対
    応してそれを相殺する組成の追加溶離液を混合する方法
    である請求項1記載の処理方法。
  3. 【請求項3】 検出中における溶離液成分の組成の変化
    が、各成分でそれぞれ±5%の範囲内である請求項1又
    は2記載の処理方法。
  4. 【請求項4】 検出器が、質量分析検出器(MS)、核
    磁気共鳴検出器(NMR)、赤外線吸収検出器(I
    R)、示差屈折検出器(RI)、又は光散乱レーザー検
    出器(ELSD)である請求項1〜3いずれか記載の処
    理方法。
  5. 【請求項5】 検出器が質量分析検出器(MS)であ
    り、追加溶離液がイオン化促進剤とともに供給される請
    求項1〜3いずれか記載の処理方法。
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