JPH09221498A - マラセチア由来の抗原性蛋白質 - Google Patents

マラセチア由来の抗原性蛋白質

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JPH09221498A
JPH09221498A JP8257612A JP25761296A JPH09221498A JP H09221498 A JPH09221498 A JP H09221498A JP 8257612 A JP8257612 A JP 8257612A JP 25761296 A JP25761296 A JP 25761296A JP H09221498 A JPH09221498 A JP H09221498A
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malassezia
antigenic
antigenic protein
column chromatography
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Hiroshi Yasueda
浩 安枝
Kazuo Akiyama
一男 秋山
Hideyo Yamaguchi
英世 山口
Kazutada Takesako
一任 竹迫
Yoshimi Onishi
佳美 大西
Tomoko Yagihara
朋子 八木原
Ikunoshin Katou
郁之進 加藤
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Takara Shuzo Co Ltd
Original Assignee
Takara Shuzo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】アレルギー疾患患者由来のIgE抗体に対
して結合能を有することを特徴とする、マラセチア属の
真菌由来の実質的に純粋な、単離された抗原性蛋白質、
該抗原性蛋白質由来の抗原性断片、並びに該抗原性蛋白
質あるいは該抗原性断片に対する抗体。 【効果】本発明により、単離されたマラセチア由来の高
純度の抗原性蛋白質、これらに由来する抗原性断片、お
よびこれらの抗原性蛋白質又は抗原性断片に対する特異
的抗体を提供することができる。また、これらの抗原性
蛋白質、抗原性断片を有効成分とするマラセチアアレル
ギー疾患の診断薬、治療薬、予防薬を提供することがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マラセチアを原因
菌とするアレルギー疾患及び感染症の診断、治療、予防
に利用可能な、マラセチア菌より単離精製された新規な
抗原性蛋白質、及びその抗原性断片に関する。更に、該
抗原性蛋白質又は抗原性断片に対する抗体に関する。ま
た、これに関連する一連の発明に関する。
【0002】
【従来の技術】アレルギー疾患の多くは、その疾患の原
因抗原に感作されることにより、血清および組織で抗原
(アレルゲン)に特異的なIgE抗体(レアギン抗体)
が産生され、再びその抗原に暴露されることにより、肥
満細胞又は好塩基球と結合したIgEと特異的なアレル
ゲンが組み合わさると、IgEが細胞表面上で架橋し、
IgE−抗原相互作用の生理学的効果を生ずる。これら
の生理学的効果としては、ヒスタミン、セロトニン、ヘ
パリン、好酸球遊走因子又は各種ロイコトリエン等の放
出が挙げられる。そして、それにより長期間の気管支平
滑筋の収縮を起こす。放出されたこれらの物質は、ケミ
カルメディエーターであり、IgEと特定のアレルゲン
の組み合わせにより起こるアレルギー症状を惹起する。
アレルゲンの効果はそれらを通じて現れる。これらの効
果は抗原が体内に入る経路及び肥満細胞又は好塩基球上
にIgEが沈着するパターンに依存して全身的又は局所
的に起こり得る。局所的症状は一般にアレルゲンが体内
に入った位置の上皮表面に起こる。全身的効果は、血管
内の抗原へのIgE−好塩基球応答の結果であり、アナ
フィラキシーショックがその典型である。これらの一連
の反応において重要な働きをしているのが、ヘルパーT
(Th)細胞である。抗原刺激により活性化されたTh
細胞の産生する種々のサイトカインのうち、IL4はI
gE産生を促進する。
【0003】ヒトにアレルギー症状を惹起させる物質は
多岐にわたっており、これまでアレルゲンは、花粉ある
いは室内塵に代表される、多くの物質の集合体として扱
われていた。近年になって、分離精製技術及びアレルゲ
ン活性評価法が進展した結果、アレルゲンは単独あるい
は数種の主要な物質がその本体であることが明らかとな
った。特に、スギ花粉、ダニ、ネコアレルゲン等におい
て急速な進歩を遂げ、スギ花粉よりCry j 1、Cry j
2、ダニよりDer f 1, Der f 2, Der f 3、ネコより
Fel d 1といった主要アレルゲンが単離されている。更
に、それらのアレルゲン蛋白質をコードする遺伝子も単
離され、遺伝子工学的手法により純粋なアレルゲン蛋白
質を大量に調製することが可能になっている。
【0004】アレルギー疾患の診断においては、まず原
因となっている抗原を同定する必要があり、そのために
まず100 種を超える市販の抗原エキス、時には自製のも
のについて、疑わしい抗原エキスを用いて皮内テストに
より試験を行っている。原因抗原としての可能性の高い
抗原が見つかると、RAST法等による血清中のIgE
抗体価の測定、誘発テスト、又は全血やリンパ球を用い
たヒスタミン遊離試験により抗原を特定することができ
る。しかし、これらの抗原エキスには明確な力価が規定
されていないため、使用の際にはアナフィラキシー誘発
の危険性を伴うため注意が必要である。アレルギー疾患
の治療法としては、抗ヒスタミン薬、ステロイド性抗炎
症薬、メディエーター遊離抑制薬などが使用されている
が、診断により特定された抗原を用いた減感作療法が優
れた治療法である。しかし、現在の減感作療法は抗原液
を週1〜2回、小量ずつ皮内に投与し3〜4ケ月かけて
増量し、維持量に上げ、更に1〜3年投与し続ける必要
がある。増量が容易であれば、優れた治療効果をより容
易に得られることが期待できる。しかし、前記のように
使用する抗原の力価がはっきりしないため、更にその抗
原が多くの不純物を伴っているため、重篤な副作用が起
こることがあり、使用に大きな制限がある。
【0005】マラセチア(Malassezia、以下、M.と略
す)属に属する菌としては、M. furfur (Pityrosporum
ovale やPityrosporum orbiculare とも呼ばれている
), M. pachydermatis, M. sympodialis等が知られてい
る。マラセチアは各種動物やヒトの体表に常在している
といわれており、その病原性及びアレルギー疾患におけ
る役割については、古くから研究されてきた。病原性に
ついては、皮膚炎、癜風、毛包炎、フケなどの原因菌と
して疑われている。また、アトピー性皮膚炎などのアレ
ルギー性疾患との関連も疑われており、原因菌として関
わっている可能性が高い。現在、マラセチア由来の抗原
エキスが市販されているが、これらはM. furfurの培養
物より得られた未精製または部分精製物であり、当然、
蛋白質、糖、脂質を始めとする複雑な混合物であると考
えられる。
【0006】従来、このようにして得られた抗原エキス
中に含有されるマラセチア由来のアレルゲン性蛋白質と
しては、マラセチア菌由来の粗抽出物をSDS-ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動(PAGE)により分離後、アレルギ
ー患者の血清中IgE抗体を用いたイムノブロッティン
グにより検出される、87, 76, 67, 45, 37, 28, 25,14,
13 kDa等の多くのIgE結合性蛋白質がアレルゲン性
蛋白質として報告されている(Siv Johansson ら, Acta
Derm Venereol, 71巻, 11-16 頁, 1991年; E.Jensen-J
arolim ら, J. Allergy Clin Immunol, 89 巻, 44-51
頁, 1992年; Zargari ら, Allergy, 49 巻, 50-56 頁,
1994年)。しかし、それらのIgE結合性蛋白質の単離
精製には誰も成功していない。従って、単離された蛋白
質としてアレルギー患者血清を用いた抗原性の確認は行
われていない。さらに、その蛋白化学的性質、アミノ酸
配列に関しては全く報告されていない。そのため、上記
の報告に見られるIgE結合性蛋白質相互の異同、関連
性(一方が他方のプロテアーゼによる分解物である等)
等については全く不明である。
【0007】更に、マラセチア菌の生産する蛋白質は、
非常に多岐にわたるため、SDS-PAGEによる分離だけでは
不十分であり、従来報告されているSDS-PAGEにおける単
一の蛋白バンドが、均一の蛋白質であるとは到底考えら
れない。すなわち、SDS-PAGE上、同一の蛋白バンドを示
す蛋白質は通常複数個存在するため、IgE結合性蛋白
質が単一の蛋白バンドを示したとしても、そのバンド中
に含まれる他の多くの蛋白質と分離する必要があり、そ
のためには他の効果的な分離方法を組み合わせる必要が
ある。更に、診断、治療の目的で利用されるためには、
抗原性蛋白質を単離し、蛋白化学的に品質を明確にした
抗原性蛋白質を供給する必要がある。そのため、各種ク
ロマトグラフィーによる分離、抗原活性の測定を繰り返
し、均一かつ単一の抗原性蛋白質を単離する必要があ
り、最終的に得られた蛋白質については、SDS-PAGEの単
一性のほかに、イオン交換クロマトグラフィーによる単
一性、等電点電気泳動的な単一性を確認する必要があ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】原因菌の可能性を診断
するためには、微生物学的培養試験の他、上記のような
マラセチア菌体抽出物である粗抗原を用いた皮膚試験、
誘発試験、RAST法やヒスタミン遊離測定などによる各種
IgE抗体の定量試験、等により診断が行われている。
しかし、この粗抗原は多種類の不純物を含んでいるた
め、正確な診断ができない。また、皮膚試験、誘発試験
に用いる際、副作用等が生ずる危険性がある。さらに、
アレルギー疾患の有用な治療法である減感作療法に使用
するためには、アナフィラキシー誘発の危険性を伴うた
め、この粗抗原の投与量が極度に制限され、治療効果を
期待できず、また、感染防御のためにワクチンとして利
用することも難しい。現在までのところ、このマラセチ
ア由来の精製された、純粋な抗原の単離に成功した例は
なく、マラセチアによる感染やアレルギー疾患の診断、
治療に非常に大きな困難が生じている。
【0009】従って、かかる現状を考慮し、本発明は次
の目的を達成するものである。 (1)本発明の第1の目的は、マラセチア属の真菌由来
の実質的に純粋な、単離された抗原性蛋白質、すなわち
精製されたマラセチアアレルゲンを提供し、それらの蛋
白化学的な性質を明らかにすることにある。さらに、該
抗原性蛋白質と免疫学的に同等の性質を有する機能的同
等物をも提供することにある。 (2)本発明の第2の目的は、これらの抗原性蛋白質由
来の抗原エピトープを少なくとも1個有する抗原性断片
を提供することにある。 (3)本発明の第3の目的は、前記の抗原性蛋白質又は
抗原性断片に対する抗体を提供することにある。 (4)本発明の第4の目的は、前記の抗原性蛋白質又は
抗原性断片を有効成分とする、マラセチアを原因菌とす
るアレルギー疾患等の疾病の診断薬を提供することにあ
る。 (5)本発明の第5の目的は、前記の抗原性蛋白質又は
抗原性断片を有効成分とする、マラセチアを原因菌とす
るアレルギー疾患等の疾病の治療薬を提供することにあ
る。 (6)本発明の第6の目的は、マラセチアアレルゲンの
免疫学的定量方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の要旨は、
(1) アレルギー疾患患者由来のIgE抗体に対して
結合能を有することを特徴とする、マラセチア属の真菌
由来の実質的に純粋な、単離された抗原性蛋白質、
(2) マラセチア粗抗原に対して皮膚反応陽性のアレ
ルギー疾患患者が反応する、マラセチア由来の主要アレ
ルゲンであることを特徴とする前記(1)記載の抗原性
蛋白質、(3) 分子量が10000〜100000
(SDS−PAGE、還元条件下または非還元条件下)
で、等電点が4〜7(未変性下または8M尿素変性下)
であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の抗
原性蛋白質、(4) マラセチア属の真菌細胞内に存在
する抗原性蛋白質であることを特徴とする前記(3)記
載の抗原性蛋白質、(5) 配列表の配列番号:1に示
す部分アミノ酸配列を有する蛋白質であって、分子量約
21000(SDS-PAGE、還元条件下) および約4000
0(SDS-PAGE、非還元条件下) 並びに未変性下の等電点
約 4.7および8M尿素変性下の等電点約 5.3を有するこ
とを特徴とする前記(1)記載のマラセチア由来の抗原
性蛋白質、(6) 配列表の配列番号:2、配列番号:
3、または配列番号:4に示す部分アミノ酸配列を有す
る蛋白質であって、分子量約20000(SDS-PAGE、還
元条件下) および約40000(SDS-PAGE、非還元条件
下) 並びに未変性下の等電点約 4.7および8M尿素変性
下の等電点約 5.8を有することを特徴とする前記(1)
記載のマラセチア由来の抗原性蛋白質、(7) 配列表
の配列番号:5、配列番号:6、または配列番号:7に
示す部分アミノ酸配列を有する蛋白質であって、分子量
約27000(SDS-PAGE、還元条件下) および約270
00(SDS-PAGE、非還元条件下) 並びに未変性下の等電
点約 5.2および8M尿素変性下の等電点約 6.5を有する
ことを特徴とする前記(1)記載のマラセチア由来の抗
原性蛋白質、(8) 配列表の配列番号:8に示す部分
アミノ酸配列を有する蛋白質であって、分子量約260
00(SDS-PAGE、還元条件下) および約26000(SD
S-PAGE、非還元条件下) 並びに未変性下の等電点約 5.2
および8M尿素変性下の等電点約 6.3を有することを特
徴とする前記(1)記載のマラセチア由来の抗原性蛋白
質、(9) 配列表の配列番号:9に示す部分アミノ酸
配列を有する蛋白質であって、分子量約66000(SD
S-PAGE、還元条件下) および8M尿素変性下の等電点約
6.1を有することを特徴とする前記(1)記載のマラセ
チア由来の抗原性蛋白質、(10) 配列表の配列番
号:10に示す部分アミノ酸配列を有する蛋白質であっ
て、分子量約43000(SDS-PAGE、還元条件下) およ
び8M尿素変性下の等電点約 6.2を有することを特徴と
する前記(1)記載のマラセチア由来の抗原性蛋白質、
(11) M. furfur(マラセチア ファーファ)TIMM27
82の培養菌体破砕抽出液を遠心分離にかけその上清を凍
結乾燥した後、DEAE−セルロースカラムクロマトグラフ
ィーにかけ0.1MのNaClによる溶出画分を取得し、限外ろ
過膜(MW 10,000)で濃縮した後、セファクリルS-200HR
カラムクロマトグラフィーにかけ分子量3〜5 万の溶出
画分を取得し、得られる溶出画分を限外ろ過膜(MW 10,
000)で濃縮した後、セファデックスG−75スーパーフ
ァインカラムクロマトグラフィーにかけ分子量約4万に
溶出される画分を取得し、ついで亜鉛キレーティングセ
ファロースファーストカラムクロマトグラフィーにかけ
素通り画分を銅キレートクロマトグラフィーにかけpH
約4で溶出される画分を取得し、濃縮後セファデックス
G-75スーパーファインカラムクロマトグラフィーで精製
し分子量約4万の溶出画分を取得して得られる、前記
(5)記載の抗原性蛋白質、(12) M. furfur(マラ
セチア ファーファ)TIMM2782の培養菌体破砕抽出液を
遠心分離にかけその上清を凍結乾燥した後、DEAE−セル
ロースカラムクロマトグラフィーにかけ0.1MのNaClによ
る溶出画分を取得し、限外ろ過膜(MW 10,000)で濃縮し
た後、セファクリルS-200HR カラムクロマトグラフィー
にかけ分子量3〜5 万の溶出画分を取得し、得られる溶
出画分を限外ろ過膜(MW 10,000)で濃縮した後、セファ
デックスG−75スーパーファインカラムクロマトグラ
フィーにかけ分子量約4万に溶出される画分を取得し、
ついで亜鉛キレーティングセファロースファーストカラ
ムクロマトグラフィーにかけ、pH約5で溶出される画
分を取得し、濃縮後セファデックスG-75スーパーファイ
ンカラムクロマトグラフィーで精製して得られる、前記
(6)記載の抗原性蛋白質、(13) M. furfur(マラ
セチア ファーファ)TIMM2782の培養菌体破砕抽出液を
遠心分離にかけその上清を凍結乾燥した後、DEAE−セル
ロースカラムクロマトグラフィーにかけ0.1MのNaClによ
る溶出画分を取得し、限外ろ過膜(MW 10,000)で濃縮し
た後、セファクリルS-200HR カラムクロマトグラフィー
にかけ分子量3〜5 万の溶出画分を取得し、得られる溶
出画分を限外ろ過膜(MW 10,000)で濃縮した後、セファ
デックスG−75スーパーファインカラムクロマトグラ
フィーにかけ分子量約4万に溶出される画分を取得し、
ついで亜鉛キレーティングセファロースファーストカラ
ムクロマトグラフィーにかけ素通り画分を取得し、銅キ
レートクロマトグラフィーにかけ、素通り画分を濃縮し
た後セファデックスG-75スーパーファインカラムクロマ
トグラフィーで精製し分子量約4万の溶出画分を取得
し、さらにMono Q陰イオン交換クロマトグラフィーで精
製して得られる、前記(7)記載の抗原性蛋白質、(1
4) M. furfur(マラセチア ファーファ)TIMM2782の
培養菌体破砕抽出液を遠心分離にかけその上清を凍結乾
燥した後、DEAE−セルロースカラムクロマトグラフィー
にかけ0.1MのNaClによる溶出画分を取得し、限外ろ過膜
(MW 10,000)で濃縮した後、セファクリルS-200HR カラ
ムクロマトグラフィーにかけ分子量3〜5 万の溶出画分
を取得し、得られる溶出画分を限外ろ過膜(MW 10,000)
で濃縮した後、セファデックスG−75スーパーファイ
ンカラムクロマトグラフィーにかけ分子量約4万に溶出
される画分を取得し、ついで亜鉛キレーティングセファ
ロースファーストカラムクロマトグラフィーにかけ素通
り画分を取得し、銅キレートクロマトグラフィーにか
け、素通り画分を濃縮した後セファデックスG-75スーパ
ーファインカラムクロマトグラフィーで精製し分子量約
4万の溶出画分を取得し、さらにMono Q陰イオン交換ク
ロマトグラフィーで精製して得られる、前記(8)記載
の抗原性蛋白質、(15) 前記(5)〜(14)いず
れか記載の抗原性蛋白質と免疫学的に同等の性質を有す
ることを特徴とする機能的同等物、(16) 前記
(1)〜(15)いずれか記載の抗原性蛋白質に含まれ
る抗原エピトープを有することを特徴とする該抗原性蛋
白質由来の抗原性断片、(17) 該抗原性断片が、マ
ラセチアに特異的なIgE抗体に対して結合能を有しな
いか、IgE抗体への結合が起こる場合でも、そのよう
な結合は肥満細胞又は好塩基球からヒスタミンを放出さ
せない程度であることを特徴とする前記(16)記載の
抗原性断片、(18) 該抗原性断片が、マラセチア由
来の抗原性蛋白質より実質的に低い程度でIgEに結合
することを特徴とする前記(17)記載の抗原性断片、
(19) 該抗原性断片が、少なくとも1個のT細胞エ
ピトープを含むことを特徴とする前記(16)〜(1
8)いずれか記載の抗原性断片、(20) 該抗原性断
片が、抗原性蛋白質より少ないIgE賦活活性を有する
ことを特徴とする前記(16)〜(19)いずれか記載
の抗原性断片、(21) マラセチアアレルギー患者に
投与した場合、投与された患者のマラセチアに対するア
レルギー応答を軽減させることができるものであること
を特徴とする前記(1)〜(15)いずれか記載の抗原
性蛋白質、(22) マラセチアアレルギー患者に投与
した場合、投与された患者のマラセチアに対するアレル
ギー応答を軽減させることができるものであることを特
徴とする前記(16)〜(20)いずれか記載の抗原性
断片、(23) 前記(1)〜(15)いずれか記載の
抗原性蛋白質、あるいは前記(16)〜(20)いずれ
か記載の抗原性断片に対する抗体、(24) 前記
(1)〜(15)いずれか記載の抗原性蛋白質、あるい
は前記(16)〜(20)いずれか記載の抗原性断片を
有効成分とすることを特徴とするマラセチアアレルギー
疾患又はマラセチア感染症の診断薬、(25) 前記
(1)〜(15)いずれか記載の抗原性蛋白質、あるい
は前記(16)〜(20)いずれか記載の抗原性断片を
有効成分とすることを特徴とするマラセチアアレルギー
疾患又はマラセチア感染症の治療薬、(26) 前記
(1)〜(15)いずれか記載の抗原性蛋白質をマラセ
チアアレルゲンの標準品とし、該抗原性蛋白質に対する
抗体を用いてマラセチアアレルゲンの免疫学的定量を行
うことを特徴とする、マラセチアアレルゲンの定量方
法、に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。 (1)本発明の抗原性蛋白質及びその機能的同等物 本発明の抗原性蛋白質は、マラセチア属の真菌由来の実
質的に純粋な、単離された抗原性蛋白質(以下、単に
「マラセチア由来の単離された抗原性蛋白質」と略す場
合がある。)であり、ここで「実質的に純粋な、単離さ
れた」とは、蛋白質として実質的に均一であり、他の不
純な蛋白質を実質的に含まず、SDS−PAGEにおい
ても等電点電気泳動においても単一な物質として認識さ
れる単離された蛋白質であることをいう。本発明の抗原
性蛋白質は、アレルギー疾患患者由来のIgE抗体、特
にマラセチアアレルギー疾患患者由来のIgE抗体に認
識されるエピトープを有することを特徴とする蛋白質で
ある。
【0012】また本発明の抗原性蛋白質を得るのに用い
られる菌株としてはマラセチア属に属する菌株であれば
いかなる菌株でもよく、その具体例としては、例えばM.
furfur(マラセチア ファーファ)TIMM2782株が挙げら
れる。該菌株はMalassezia furfur TIMM2782と表示さ
れ、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所〔あ
て名;日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番
号305)〕にFERMBP−5611(原寄託日;平
成7年9月12日、国際寄託への移管請求日;平成8年
7月29日)として寄託されている。
【0013】本明細書でいうマラセチア由来の主要アレ
ルゲンとは、マラセチアアレルギー患者(市販のマラセ
チア粗抗原である抗原エキスに対して皮膚反応陽性のア
レルギー疾患患者)の50%以上に反応する、IgE抗
体に認識される抗原性蛋白質である。本明細書でいうア
レルギー疾患患者由来のIgE抗体に対する結合能は、
125I標識抗IgE血清を用いたRAST法、酵素標識
抗IgE血清を用いたDirect−RAST RIA法やE
LISA法により測定して、標準血清との比較等により
有意な結合が得られることをいう。
【0014】本発明のマラセチア由来の単離された抗原
性蛋白質は、分子量が10000〜100000(SD
S−PAGE、還元条件下または非還元条件下)で、等
電点(未変性下または8M尿素変性下)が4〜7のもの
であり、マラセチア属の真菌細胞内に存在するものであ
る。具体的には、以下のMF−1、MF−2、MF−3、MF−
4、MF−5、MF−6等が挙げられる。以下、これらにつ
いての分子量、等電点、部分アミノ酸配列について述べ
る。 (i) MF−1は、SDS−PAGEにより、還元条件下で
約21kDa、非還元条件下で約40kDaの分子量を
示し、未変性下の等電点は約4.7および8M尿素変性
下の等電点は約5.3であり、配列表の配列番号:1で
示されるアミノ酸配列を含んでいる。 (ii) MF −2は、SDS−PAGEにより、還元条件下
で約20kDa、非還元条件下で約40kDaの分子量
を示し、未変性下の等電点は約4.7および8M尿素変
性下の等電点は約5.8であり、配列番号:2、配列番
号:3、および配列番号:4で示されるアミノ酸配列を
含んでおり、N末端はブロックされている。 (iii) MF−3は、SDS−PAGEにより、還元条件下
27kDa、非還元条件下でも約27kDaの分子
量を示し、未変性下の等電点は約5.2および8M尿素
変性下の等電点は約6.5であり、配列番号:5、配列
番号:6、および配列番号:7で示されるアミノ酸配列
を含んでおり、N末端はブロックされている。 (iv) MF −4は、SDS−PAGEにより、還元条件下
で約26kDa、非還元条件下でも約26kDaの分子
量を示し、未変性下の等電点は約5.2および8M尿素
変性下の等電点は約6.3であり、配列番号:8で示さ
れるアミノ酸配列を含んでいる。 (v) MF−5は、SDS−PAGEにより、還元条件下で
約66kDaの分子量を示し、8M尿素変性下の等電点
は約6.1であり、配列番号:9で示されるアミノ酸配
列を含んでいる。 (vi)MF−6は、SDS−PAGEにより、還元条件下で
約43kDaの分子量を示し、8M尿素変性下の等電点
は約6.2であり、配列番号:10で示されるアミノ酸
配列を含んでいる。
【0015】本発明のマラセチア由来の単離された抗原
性蛋白質としては、マラセチア由来のヒトを始めとする
哺乳類の抗原として認識される蛋白質であればよく、上
記に例示した6種類の抗原性蛋白質に制限されるもので
はない。
【0016】更に、これらの抗原性蛋白質を用いた診断
は、従来のマラセチア粗抗原である抗原エキスを用いた
皮膚試験やRAST法による診断の結果と相関してい
る。即ち、粗抗原を用いた皮膚試験で陽性の患者の多く
がマラセチア粗抗原に対するIgE抗体価陽性である。
そして、これらの粗抗原に対するIgE抗体価陽性の患
者の50%以上が、上記の単離精製された本発明の抗原
性蛋白質に対して高いIgE抗体価を有している(後述
の実施例における表2及び表3を参照)。また、本発明
の抗原性蛋白質は、マラセチアアレルギー患者に投与し
た場合、投与された患者のマラセチアに対するアレルギ
ー応答を軽減させることができるものである。
【0017】さらに、本発明においては、前記のような
抗原性蛋白質と免疫学的に同等の性質を有する機能的同
等物をも提供する。例えば、上記6種類の抗原性蛋白質
と免疫学的に同等の性質を有する機能的同等物として、
例えば、各種M. furfur 、更にM. furfur 以外のマラセ
チア属真菌の機能的同等物も本発明に含まれる。即ち、
MF−2は、ペルオキシゾーム膜蛋白質であるPMP-20(L.
Garrard ら、J. Biol.Chem. 23 巻、13929-13937 頁、1
989年)とホモロジーがあり、同様の免疫学的性質を有
するマラセチア由来の蛋白質は本発明に含まれる。ま
た、MF−3及びMF−4は異なる蛋白質であるが、いずれ
も鉄/マンガン−スーパーオキシドジスムターゼとホモ
ロジーがあり(T. Matsumotoら、Biochemistry、30巻、
3210-3216頁、1991年;M. L. Ludwigら、J. Mol. Biol.
、219 巻、335-358 頁、1991年)、同様の免疫学的性
質を有するマラセチア由来の蛋白質も本発明に含まれ
る。
【0018】なお、安定性の強化及び/又は所望の反応
性の強化、すなわち診断目的からすれば、抗原と抗体の
特異的結合を強化し、治療目的からすればアレルギー反
応を減弱化または酵素活性を消失させるために、本発明
の抗原性蛋白質を改変し、誘導体化したり、ポリエチレ
ングリコール(PEG)法(Wie ら, Int. Arch. AllergyAp
pl. Immunol., 64 巻, 84-99 頁, 1981年)を用いてP
EGと結合させることができる。蛋白質の改変には、ピ
リジルエチル化、還元、アルキル化、アシル化、適当な
担体への化学的カップリング、温和なホルマリン処理、
又は塩酸グアニジン処理も含まれる。
【0019】(2)本発明の抗原性断片 本発明の抗原性断片は、前記の抗原性蛋白質に含まれる
抗原エピトープを有することを特徴とする抗原性蛋白質
由来の抗原性断片である。例えば、MF−1、MF−2、MF
−3、MF−4、MF−5、MF−6等に含まれる抗原エピト
ープを少なくとも1個含む抗原性蛋白質由来の抗原性断
片が例示される。なかでも、少なくとも1個のT細胞エ
ピトープを含むものが好適なものとして挙げられる。本
発明の抗原性断片に、哺乳類、特にヒトにおける免疫応
答、例えば最小量のIgEの刺激、IgEの結合、Ig
G及びIgM抗体の生産の誘起、又は増殖などのT細胞
応答及び/又はリンホカイン分泌及び/又はT細胞アナ
ージー誘導などを引き起こす、マラセチア由来の抗原性
蛋白質の断片が含まれる。
【0020】本発明の抗原性断片を治療目的で用いる場
合には、T細胞応答性活性化作用が小さいか、又はT細
胞アナージー作用を誘起するものが望ましい。また、本
発明の抗原性断片は、マラセチアに特異的なIgE抗体
に対して実質的に結合能を有しないか、IgE抗体への
結合が起こる場合でも、肥満細胞又は好塩基球からヒス
タミン等のメディエーターを遊離しないような程度の結
合能であるのが好ましい。即ち、IgE抗体への結合が
起こる場合でも、該抗原性断片は、マラセチア由来の抗
原性蛋白質より実質的に低い程度でIgEに結合するも
のが好ましい。このように本発明の抗原性断片は、治療
目的で用いる場合には、抗原性蛋白質より少ないIgE
賦活活性を有するものが好ましい。従って、マラセチア
アレルギー患者に投与した場合、投与された患者のマラ
セチアに対するアレルギー応答を軽減させることができ
るものである。
【0021】本発明の抗原性断片の抗原性は、ヒトのボ
ランティアへの皮膚試験、皮内試験の他、RAST、E
LISA、又はヒスタミン遊離などの試験管内試験にお
いても評価することができる。
【0022】エピトープとは、レセプター、特に抗体
(免疫グロブリン)、組織適合性抗原及びT細胞レセプ
ターにより認識される基本的要素又は最小単位であり、
エピトープはレセプター認識に必須のアミノ酸配列を含
む。エピトープのアミノ酸配列を模してあり、マラセチ
アアレルゲンに対するアレルギー応答を下げることがで
きるアミノ酸配列もエピトープとして用いることができ
る。現在利用できる蛋白質の構造に関する情報を用い、
マラセチアアレルギー患者に十分な量で投与すると、マ
ラセチアに対する患者のアレルギー応答を変えるであろ
うマラセチアアレルゲンペプチドを設計することができ
る。また、マラセチアアレルゲンの患者にアレルギー反
応を誘起する作用を阻害することができる試薬又は薬剤
を設計することもできる。そのような薬剤は、例えばマ
ラセチアアレルゲンに対するIgE抗体に結合し、それ
によりIgE−アレルゲン結合及びその後の肥満細胞か
らの脱顆粒を妨げるように設計することができる。
【0023】また、T細胞エピトープを含むペプチドの
選択は、マラセチアアレルゲンに対して感受性の個体
(IgE仲介免疫応答を有する個体)から得られたT細
胞を含むリンパ球をアレルゲン由来のペプチドと共に培
養し、例えばトリチウム化チミジンの細胞への取り込み
促進作用を測定し、ペプチドに応答してT細胞の増殖が
起こるかどうかを決定することによって、ヒトT細胞の
刺激活性(幼若化活性)を測定することができる。B及
びT細胞のエピトープペプチド、又はその改変物も同様
に利用できる。
【0024】本発明の抗原性断片の範囲内には、マラセ
チアアレルゲンを始めとするマラセチア由来の抗原性蛋
白質の断片と免疫学的に関連する、例えばその断片に対
する特異的な抗体や特異的なT細胞に認識される、交差
反応性を有するペプチドも含まれる。
【0025】本発明の抗原性断片を調製するには、単離
された抗原性蛋白質を原料として、リジルエンドペプチ
ダーゼ、トリプシン等のプロテアーゼによる酵素消化、
臭化シアン等による化学的処理による切断後、目的の抗
原性を有する断片を蛋白質の精製において既知の方法に
より単離精製することにより得ることができる。また、
マラセチア由来の抗原性蛋白質をコードする遺伝子の一
部を用いて、目的の抗原性断片を発現、調製することも
できる。更に、抗原性断片の化学構造に関する情報を基
に、ペプチド合成技術を利用して化学合成による製造も
可能である。
【0026】また、遺伝子工学的手法、化学合成的手法
を用いることにより、アミノ酸の置換、挿入及び欠失も
可能である。例えば、安定性の強化及び/又は所望の反
応性の強化のために、本発明の抗原性断片を改変し、誘
導体化したり、少なくとも1個のアミノ酸を欠失、挿
入、置換、付加させることもできる。更にD-アミノ酸、
非天然アミノ酸、又は非天然アミノ酸類似体に置換した
り又はこれらを付加して本発明の範囲内の改変蛋白質又
はペプチドを製造することができる。更に、本発明の抗
原性断片をポリエチレングリコールと結合させ、化学的
に修飾することができる。該抗原性断片の改変には、還
元、アルキル化、アシル化、又は適した担体への化学的
カップリングも含まれる。
【0027】このようにして得られた抗原性断片につい
て免疫応答活性(T細胞応答性活性化作用、T細胞アナ
ージー作用、抗体との結合作用等)を測定することによ
り、抗原性断片を決定、単離することができる。
【0028】次に、本発明の抗原性蛋白質の製造法につ
いて述べる。従来使用されていた粗抗原は、培養物の培
養ろ液の凍結乾燥物であったり、又は、培養菌体を適当
な方法で破砕し、抽出物を得、これを硫安沈殿、凍結乾
燥するといった、極めて限られた方法で精製されたもの
であった。本発明者らも、これらの粗抗原を原料として
蛋白質の精製法として一般的に用いられている方法、例
えばゲル濾過、イオン交換等のクロマトグラフィーによ
る精製を試みたが、これらの手法のみでは単一の純粋な
抗原性蛋白質の単離に成功しなかった。
【0029】本発明のマラセチア由来の単離された抗原
性蛋白質は、マラセチア菌体より調製した粗抗原を原料
として、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、キレ
ート樹脂クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィ
ー、ゲル濾過クロマトグラフィー等を用いた効果的な分
離方法を組み合わせて分画した後、各画分について患者
血清IgE抗体との結合をRAST法やイムノブロッテ
ィング等で測定することにより、アレルギー患者血清中
のIgE抗体と結合する蛋白質を探索する、又は患者の
リンパ球を用いて免疫応答活性(T細胞応答性活性化作
用、T細胞アナージー作用等)を誘起する蛋白質を種々
の方法で探索することにより単離することができる。
【0030】即ち、まず、M. furfur 等のマラセチア属
菌をディクソン(Dixon )培地等のオリーブオイル又は
ツィーン40、60を添加した、マラセチア菌の生育に適し
た栄養分を含む培地を用い、適当な温度、通気等の条件
下で培養し、得られた菌体を適当な方法で破砕し、抽出
物を得る。この抽出物よりイオン交換クロマトグラフィ
ー、キレート樹脂クロマトグラフィー、疎水クロマトグ
ラフィーを含む分離手段を用いて抗原性蛋白質を精製す
ることができる。即ち、イオン交換クロマトグラフィ
ー、疎水クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフ
ィー、キレート樹脂クロマトグラフィー、電気泳動、も
しくはマラセチア由来の抗原性蛋白質又はその抗原性断
片に特異的な抗体を結合させた樹脂を用いたアフィニテ
ィークロマトグラフィー等の、ペプチド及び蛋白質の精
製に関して既知の方法を各種組み合わせることにより高
純度な蛋白質として単離することができる。培養ろ液中
に含まれる抗原性蛋白質も同様の方法により単離するこ
とができる。
【0031】具体的には、実施例で示すように、分子量
的に分離不可能な蛋白質を、等電点の違いを利用したイ
オン交換クロマトグラフィーや疎水性の違いを利用した
疎水クロマトグラフィー、金属とのキレート能の違いを
利用したキレート樹脂クロマトグラフィー、および分子
量の違いを利用したゲル濾過クロマトグラフィー等を組
合せることにより、よく似た多数の蛋白質の集合を相互
に分離することができる。これらのことは、従来のSD
S−PAGEのイムノブロッティングによる分子量的な
抗原性蛋白質に関する知見からは予想されなかったこと
であり、例えば、MF−1とMF−2は分子量的にはほとん
ど同じであり、従来のSDS−PAGEでは分離不可能
なものである。また、MF−3とMF−4も分子量的には分
離することが不可能である。
【0032】更に各種分離手段の組み合わせについて具
体的に述べれば、下記の工程により本発明の抗原性蛋白
質MF−1〜MF−4を製造することができる。 工程a:マラセチア菌の培養菌体破砕抽出液を遠心分離
にかけその上清を凍結乾燥した後、DEAE−セルロースカ
ラムクロマトグラフィーにかけ0.1MのNaClによる溶出画
分を取得する工程、 工程b:工程aで得られる溶出画分を限外ろ過膜(MW 1
0,000)で濃縮した後、セファクリルS-200HR カラムクロ
マトグラフィーにかけ分子量3〜5万の溶出画分を取得
する工程、 工程c:工程bで得られる溶出画分を限外ろ過膜(MW 1
0,000)で濃縮した後、セファデックスG−75スーパー
ファインカラムクロマトグラフィーにかけ分子量約4万
に溶出される画分を取得する工程、 工程d:工程cで得られる溶出画分を亜鉛キレーティン
グセファロースファーストカラムクロマトグラフィーに
かけ、素通り画分をさらに銅キレートクロマトグラフィ
ーにかけて素通り画分又はpH約4で溶出される画分を
取得する工程、 工程e:工程dで得られる素通り画分又はpH約4で溶
出される画分を濃縮後、セファデックスG-75スーパーフ
ァインカラムクロマトグラフィーで精製し分子量約4万
の溶出画分を取得する工程、および 工程f:工程eで得られる溶出画分をさらに Mono Q イ
オン交換クロマトグラフィーにかけて精製する工程。
【0033】あるいは、下記の工程により本発明の抗原
性蛋白質を製造することができる。 工程a:マラセチア菌の培養菌体破砕抽出液を遠心分離
にかけその上清を凍結乾燥した後、DEAE−セルロースカ
ラムクロマトグラフィーにかけ0.1MのNaClによる溶出画
分を取得する工程、 工程b:工程aで得られる溶出画分を限外ろ過膜(MW 1
0,000)で濃縮した後、セファクリルS-200HR カラムクロ
マトグラフィーにかけ分子量3〜5万の溶出画分を取得
する工程、 工程c:工程bで得られる溶出画分を限外ろ過膜(MW 1
0,000)で濃縮した後、セファデックスG−75スーパー
ファインカラムクロマトグラフィーにかけ分子量約4万
に溶出される画分を取得する工程、 工程d:工程cで得られる溶出画分を亜鉛キレーティン
グセファロースファーストカラムクロマトグラフィーに
かけ、pH約5で溶出される画分を取得する工程、およ
び工程g:工程dで得られる溶出画分を濃縮後、セファ
デックスG-75スーパーファインカラムクロマトグラフィ
ーで精製する工程。
【0034】次に、本発明の抗原性蛋白質(MF−1、MF
−2、MF−3、およびMF−4)の製造方法の例について
より詳細に説明する。しかし、以下の工程は、単なる例
示であってこれに限定されるものではない。 1.MF−1の製造例について M.furfur(マラセチア ファーファ)TIMM2782の培養菌
体破砕抽出液を遠心分離にかけその上清を凍結乾燥した
後、DEAE−セルロースカラムクロマトグラフィーにかけ
0.1MのNaClによる溶出画分を取得し、限外ろ過膜(MW 1
0,000)で濃縮した後、セファクリルS-200HR カラムクロ
マトグラフィーにかけ分子量3 〜5 万の溶出画分を取得
し、得られる溶出画分を限外ろ過膜(MW 10,000)で濃縮
した後、セファデックスG−75スーパーファインカラ
ムクロマトグラフィーにかけ分子量約4万に溶出される
画分を取得し、ついで亜鉛キレーティングセファロース
ファーストカラムクロマトグラフィーにかけ素通り画分
を銅キレートクロマトグラフィーにかけpH約4で溶出
される画分を取得し、濃縮後セファデックスG-75スーパ
ーファインカラムクロマトグラフィーで精製し分子量約
4万の溶出画分を取得して得られる。
【0035】2.MF−2の製造例について M.furfur(マラセチア ファーファ)TIMM2782の培養菌
体破砕抽出液を遠心分離にかけその上清を凍結乾燥した
後、DEAE−セルロースカラムクロマトグラフィーにかけ
0.1MのNaClによる溶出画分を取得し、限外ろ過膜(MW 1
0,000)で濃縮した後、セファクリルS-200HR カラムクロ
マトグラフィーにかけ分子量3 〜5 万の溶出画分を取得
し、得られる溶出画分を限外ろ過膜(MW 10,000)で濃縮
した後、セファデックスG−75スーパーファインカラ
ムクロマトグラフィーにかけ分子量約4万に溶出される
画分を取得し、ついで亜鉛キレーティングセファロース
ファーストカラムクロマトグラフィーにかけ、pH約5
で溶出される画分を取得し、濃縮後セファデックスG-75
スーパーファインカラムクロマトグラフィーで精製して
得られる。
【0036】3.MF−3の製造例について M.furfur(マラセチア ファーファ)TIMM2782の培養菌
体破砕抽出液を遠心分離にかけその上清を凍結乾燥した
後、DEAE−セルロースカラムクロマトグラフィーにかけ
0.1MのNaClによる溶出画分を取得し、限外ろ過膜(MW 1
0,000)で濃縮した後、セファクリルS-200HR カラムクロ
マトグラフィーにかけ分子量3 〜5 万の溶出画分を取得
し、得られる溶出画分を限外ろ過膜(MW 10,000)で濃縮
した後、セファデックスG−75スーパーファインカラ
ムクロマトグラフィーにかけ分子量約4万に溶出される
画分を取得し、ついで亜鉛キレーティングセファロース
ファーストカラムクロマトグラフィーにかけ素通り画分
を取得し、銅キレートクロマトグラフィーにかけ、素通
り画分を濃縮した後セファデックスG-75スーパーファイ
ンカラムクロマトグラフィーで精製し分子量約4万の溶
出画分を取得し、さらにMono Q陰イオン交換クロマトグ
ラフィーで精製して得られる。
【0037】4.MF−4の製造例について M.furfur(マラセチア ファーファ)TIMM2782の培養菌
体破砕抽出液を遠心分離にかけその上清を凍結乾燥した
後、DEAE−セルロースカラムクロマトグラフィーにかけ
0.1MのNaClによる溶出画分を取得し、限外ろ過膜(MW 1
0,000)で濃縮した後、セファクリルS-200HR カラムクロ
マトグラフィーにかけ分子量3 〜5 万の溶出画分を取得
し、得られる溶出画分を限外ろ過膜(MW 10,000)で濃縮
した後、セファデックスG−75スーパーファインカラ
ムクロマトグラフィーにかけ分子量約4万に溶出される
画分を取得し、ついで亜鉛キレーティングセファロース
ファーストカラムクロマトグラフィーにかけ素通り画分
を取得し、銅キレートクロマトグラフィーにかけ、素通
り画分を濃縮した後セファデックスG-75スーパーファイ
ンカラムクロマトグラフィーで精製し分子量約4万の溶
出画分を取得し、さらにMono Q陰イオン交換クロマトグ
ラフィーで精製して得られる。
【0038】また、本発明のマラセチア由来の抗原性蛋
白質は、前記のアミノ酸配列の情報をもとに、PCR等
により該蛋白質をコードする遺伝子を単離し、これらを
利用して遺伝子工学的手法により大腸菌、酵母、カビ、
哺乳類細胞等において発現されるようにベクターに組み
込み、組換え蛋白質として調製することもできる。
【0039】(3)本発明の抗原性蛋白質又はその抗原
性断片に対する抗体の調製 マラセチア由来の単離された抗原性蛋白質又はその抗原
性断片に対する本発明の抗体は、本発明のマラセチア由
来の抗原性蛋白質、該蛋白質の酵素的又は化学的方法に
よる処理により得られる抗原性断片、又は化学合成的に
得られる抗原性ペプチドを抗原として使用することによ
り調製することができる。抗体の作製は常法により行う
ことができるが、例えば上記の蛋白質又はその断片をア
ジュバントと共にウサギ等の動物に免疫することによっ
て、抗血清として得ることができる。また、モノクロー
ナル抗体は、抗原を免疫して得られた抗体産生B細胞と
ミエローマ細胞を融合し、目的の抗体を産生するハイブ
リドーマを選択し、この細胞を培養することによって調
製することができる。これらの抗体は、後述のように、
抗原性蛋白質の製造やマラセチアアレルゲン抗原エキス
の力価測定等において使用することができる。前記のハ
イブリドーマとして、抗原性蛋白質MF−1に対するM−
40モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは5
B4、抗原性蛋白質MF−2に対するM−3モノクローナ
ル抗体を産生するハイブリドーマは8G11、また抗原
性蛋白質MF−3に対するM−1モノクローナル抗体を産
生するハイブリドーマは10C1とそれぞれ命名、表示
され、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所
〔あて名;日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵
便番号305)〕にそれぞれFERM BP−560
8、FERM BP−5609、FERM BP−56
10(原寄託日;平成7年9月12日、国際寄託への移
管請求日;平成8年7月29日)として寄託されてい
る。
【0040】(4)本発明の抗原性蛋白質又はその抗原
性断片を有効成分とする診断薬 本発明は、マラセチア由来の単離された抗原性蛋白質又
はそれに由来する少なくとも1個の抗原エピトープを有
する抗原性断片を用いる、マラセチア菌を原因菌とした
アレルギー性疾患又は感染症の診断薬を提供する。ここ
で述べるマラセチアによるアレルギー疾患とは、アトピ
ー性気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜
炎、アトピー性皮膚炎等、マラセチア菌が原因となるあ
らゆるアレルギー性疾患を言う。また、マラセチアによ
る感染症とは、癜風、マラセチア毛包炎、フケ等のマラ
セチア菌が原因となるあらゆる感染症をいう。
【0041】本発明のアレルギー疾患診断薬は、マラセ
チアによるアレルギー疾患に対する皮内反応診断試薬及
びアレルギー診断用滴定試薬として用いられる。皮内反
応診断試薬として用いる場合は、本発明の単離された抗
原性蛋白質又は本発明の抗原性断片をフェノールを含む
生理食塩水で溶解し、希釈し常法に従って用いられる。
また、アレルギー診断用滴定試薬として用いる場合も同
様に常法により調製されるが、例えば本発明の単離され
た抗原性蛋白質又は本発明の抗原性断片をハンクス緩衝
液で適当に溶解し、希釈してヒスタミン遊離滴定用試薬
として用いる。使用方法は、通常、以下の操作手順によ
る、即ち、アレルギー疾患患者の血液及びこの血液から
遠心分離により得られた血球画分を緩衝液に懸濁した血
球浮遊液の一定量に対し、該抗原性蛋白質の溶液を滴定
試薬として滴定し、アレルゲン刺激により好塩基球から
遊離するヒスタミン量をHPLCを用いて測定する。
【0042】本発明の単離された抗原性蛋白質又は本発
明の抗原性断片は、マラセチアアレルギー疾患の検出及
び診断に用いることもできる。例えば、これはマラセチ
アに対する感受性を評価しなければならない患者から得
た血液又は血液成分を、本発明の単離された抗原性蛋白
質等と適当な条件下でインキュベートし、抗原性蛋白質
と血液中の成分(例えば抗体、T細胞、B細胞)との結
合の程度を決定することにより診断を行うことができ
る。
【0043】(5)本発明の抗原性蛋白質又はその抗原
性断片を有効成分とする治療薬 本発明は、マラセチア由来の単離された抗原性蛋白質又
は少なくとも1個の抗原エピトープを有する抗原性断片
を有効成分とする、マラセチア菌を原因菌としたアレル
ギー性疾患の治療薬を提供する。本発明のアレルギー疾
患治療剤は、通常の投与経路例えば経口、皮内、皮下、
筋肉内、腹腔内等の投与経路により行うことができる。
更に、例えば、トローチ、舌下剤、点眼剤、鼻腔内噴霧
剤、パップ剤、クリーム剤、ローション剤等の経皮、経
粘膜薬として使用することができる。本発明のアレルギ
ー疾患治療剤の投与量及び投与回数は、投与経路、症状
などに応じて成人1回あたり約20mg以下の範囲となるよ
うに適宜選択し、毎週1回程度投与される。また、本発
明のアレルギー疾患治療剤は、マラセチアによるアレル
ギー疾患に対する治療剤のみならず予防剤としても有用
である。アナフィラキシー誘発作用は少ないか又はな
く、人体に対して安全に用いることができるからであ
る。
【0044】本発明のマラセチアアレルギー疾患治療剤
は、前記の精製された抗原性蛋白質、その抗原性断片を
有効成分とするものであり、各種のマラセチアによるア
レルギー疾患の治療剤および予防剤として用いられる。
本発明のアレルギー疾患治療剤の調製方法は、特に制限
はない。例えば、本発明の抗原性蛋白質またはエピトー
プを有する抗原性断片を乾燥して粉末状とし、マラセチ
アによるアレルギー疾患に対する減感作治療剤として用
いることができる。その場合、そのままで、または必要
に応じて一般的に用いられるアジュバントや各種の添加
剤、例えば安定剤、賦形剤、溶解補助剤、乳濁化剤、緩
衝剤、無痛化剤、保存剤、着色剤等を常法により添加し
た配合剤として用いることができる。例えば、粉末状の
精製された抗原性蛋白質をフェノールを添加した生理食
塩水に溶解し、減感作治療用抗原の原液として用いる。
減感作治療剤として用いるためには、エピトープを有
し、かつマラセチアに特異的なIgEに結合しないかま
たは結合しても肥満細胞もしくは好塩基球からヒスタミ
ンを放出させないものが特に有利である。
【0045】(6)マラセチアアレルゲンの定量方法 本発明はマラセチアアレルゲンの定量方法をも提供す
る。マラセチア由来の抗原性蛋白質に対する抗体は、マ
ラセチア菌を原因菌としたアレルギー性疾患又は感染症
の診断に使用されるマラセチアアレルゲンの免疫学的定
量に用いることができる。本発明の単離された抗原性蛋
白質をマラセチアアレルゲンの標準品として、それに対
する抗体を用いた、ELISA等の定量方法を確立する
ことが容易である。マラセチア抗原エキスとしては、前
記のように市販のものがいくつかある、また、マラセチ
アがヒトの頭皮を始めとする皮膚の常在菌であることか
ら、市販のハウスダスト中にもマラセチアアレルゲンが
含有されていると考えられる。これらの市販の抗原エキ
スについてマラセチアアレルゲンの含量を明らかにする
ことは、診断、治療上非常に有用である。
【0046】
【実施例】以下、実施例および比較例により本発明をさ
らに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によ
りなんら限定されるものではない。
【0047】実施例1マラセチア由来の抗原性蛋白質の単離及びその物理化学
的性質 1−1)マラセチア部分精製粗抗原2782の調製 M. furfur TIMM2782株(FERM BP−5611)を
ディクソン培地(バクトマルトエキストラクトブロス6.
0%、バクトオックスゴール 2.0% 、ツィーン40 1.0%
、グリセロールα−モノオレイン酸 0.25%)150m
lを入れた500ml容三角フラスコ50本中で27℃、5
日間振とう培養して得た培養物から、遠心分離によって
集めた菌体をリン酸緩衝食塩水(PBS)で5回洗浄し
た後、菌体湿重量の2倍量のPBSに浮遊させ、等量の
0.5mm径のガラスビーズを加え、MSKセルホモゲ
ナイザー(B.ブラウン社製)により菌体を破砕抽出し
た。得られた菌体破砕抽出液を遠心分離(18,000 rpm,
30 min)にかけ、上清を得た。この上清を精製水に対し
て透析、0.45μm のメンブレンフィルターでろ過滅菌
後、凍結乾燥することによりマラセチア粗抗原2782
約 900mgを得た。前記マラセチア粗抗原2782約80
0 mgを0.05M トリス塩酸緩衝液(pH 8.0)に溶解し
て、硫安塩析を行った。硫安50%から90%飽和で沈殿す
る画分を遠心で集め、0.05M トリス塩酸緩衝液(pH 8.
0)に溶解し、続いて同緩衝液に透析し、マラセチア部
分精製粗抗原2782とした。
【0048】1−2)マラセチア由来の抗原性蛋白質の
探索 マラセチア部分精製粗抗原2782を凍結乾燥後、4m
g/mlとなるように2M硫酸アンモニウムを含有する
0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)で溶解後、そ
のうち100μlを2M硫酸アンモニウムを含有する同
緩衝液(pH 7.0)で予め平衡化した Phenyl Superose P
C1.6/5(カラム容積0.1 ml、ファルマシア社製)にか
け、0.1 M同緩衝液で硫酸アンモニウム2Mから0Mま
での直線的グラジエント溶出を行った。得られた抗原性
蛋白質含有画分をビストリス緩衝液(pH 6.5)に対して
透析した後、MonoQ PC 1.6/5(カラム容積0.1 ml、ファ
ルマシア社製)にかけ、同緩衝液で食塩0 M から0.3 M
までの直線的グラジエント溶出を行った(図1、流速:
100 μl /分、検出:280 nm)。50μl ずつ26本に分画
後、分画1〜20について患者血清を用いたDirect RAS
T(EIA)法によるIgE抗体結合性を調べた。
【0049】即ち、各分画を0.01% ツィーン20入り0.1
M ほう酸緩衝液(pH8.0 )で10、100 、1000倍希釈し、
その45μl を臭化シアンで活性化したペーパーディスク
にカップリングし、ついでエタノールアミンでブロッキ
ングした。その後、各ディスクに5倍希釈したプール血
清(RAST法で高値を示した患者血清10名分をまと
めたもの)50μl ずつを加えて、その後、希釈したβ−
ガラクトシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgE抗血清を反応さ
せ、酵素基質を加え、415nm の吸光度を測定した。その
結果を図2に示した。図2より複数のアレルゲン蛋白質
が存在することが明らかであるが、例えばフラクション
6及びフラクション12、13付近に患者IgEと結合
する蛋白質が存在する。
【0050】また、各分画をSDS−PAGE後、クー
マシーブリリアントブルー(CBB)染色により蛋白質
の検出(図3)を行うと共に、代表的画分について下記
のようにイムノブロッティングを行った。即ち、それぞ
れの画分をSDS−PAGE後、ニトロセルロース膜へ
トランスファーし、3%ウシ血清アルブミン(BSA)
でブロッキングし、そして患者プール血清で処理した。
その後、希釈したアルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗
ヒトIgE抗血清を反応させ、酵素基質を加え、アレル
ゲン蛋白質を検出した。その結果、図4のように、複数
のアレルゲン蛋白質の存在が明らかとなった。例えば、
フラクション12に、SDS−PAGE上の20 kDa付近に
検出される蛋白質(アレルゲンMF−1として単離した)
等がアレルゲン蛋白質として含まれていることが明らか
である。フラクション6には、フラクション12の20 kDa
とほぼ同じ分子量のアレルゲン蛋白質(アレルゲンMF−
2として単離した)および80 kDa付近に検出される蛋白
質等が含まれていることが明らかである。
【0051】1−3)抗原性蛋白質MF−1、MF−2、MF
−3、MF−4の単離 前記のマラセチア部分精製粗抗原2782の凍結乾燥物
0.25mgをビストリス緩衝液(pH 6.5)溶液1ml
に溶解後、1−2)に示したMono Qによるクロマトグラ
フィーと同様の方法で、Mono Q HR 5/5 (カラム容積1
ml、ファルマシア社製)にかけ、ピーク1(図1のフラ
クション 5, 6 対応分画) 、ピーク2(図1のフラクシ
ョン10, 11, 12対応分画) 、ピーク3(図1のフラクシ
ョン15,16対応分画) 、ピーク4(図1のフラクション1
8, 19, 20対応分画)を集めた。それぞれのピークにつ
いて、ゲルろ過、疎水クロマトグラフィー、最後にMono
Qによるイオン交換クロマトグラフィーを行い、ピーク
1よりMF−2、ピーク2よりMF−1、ピーク3よりMF−
3、ピーク4よりMF−4と命名した、純粋な抗原性蛋白
質を単離した。単離された4種類の蛋白質については、
上記の患者プール血清を用いたEIA 法によるIgE抗体
結合性を調べることにより、マラセチアアレルゲン蛋白
質であることを確認した。
【0052】精製方法について詳しく説明すると、Mono
Qにより分離されたピーク1〜4をそれぞれ4M 硫酸ア
ンモニウムを含有する0.1 M リン酸カリウム緩衝液(pH
7.0)で2倍に希釈後、 2M 硫酸アンモニウムを含有す
る0.1 M リン酸カリウム緩衝液(pH7.0 )で予め平衡化
した Phenyl Superose PC1.6/5 (カラム容積 0.1ml、フ
ァルマシア社製)にかけ、0.1 M 同緩衝液で硫酸アンモ
ニウム2M から0M までの直線的グラジエント溶出を行
った。得られた抗原性蛋白質含有画分を限外濾過膜(MW
10,000 )で濃縮後、セファデックスG-75スーパーファ
インカラム(1.5 x 100 cm)によるゲルろ過クロマトグ
ラフィーを行い、分子量4万付近に溶出される画分を得
た。さらに、得られたゲルろ過物を再度Mono Q PC 1.6/
5 によるイオン交換クロマトグラフィーを行い、前記と
同様の溶出を行い、抗原性蛋白質を単離した。即ち、ピ
ーク2よりMF−1(図5)、ピーク1よりMF−2を(図
6)、ピーク3よりMF−3を(図7)、ピーク4よりMF
−4を(図8)を単離した。
【0053】さらに、前記のマラセチア部分精製粗抗原
2782の150μgを8M尿素、0.5%NP−4
0、2%β−メルカプトエタノール、0.8%Pharmaly
te(ファルマシア製)、0.01%ブロモフェノールブ
ルーを含む溶液に溶解した。一次元目の等電点電気泳動
は、Immobiline DryStrip ゲル(pH4〜7、ファルマ
シア製)を用いて常法により行った。二次元目のSDS
−PAGEは、ExelGelSDS-Homogeneous(12.5%、
ファルマシア社製)を用いて行った後、CBB染色によ
り蛋白質の検出(図9)を行うと共に、PVDF膜(ミ
リポア社製)に転写後、アレルギー患者IgE抗体およ
び健常者IgE抗体を用いてイムノブロットを行い、陽
性スポットを検出した(図10)。陽性スポットのう
ち、分子量約21kDaで等電点約5.3、分子量約2
0kDaで等電点約5.8、分子量約27kDaで等電
点約6.5、分子量約26kDaで等電点6.3のスポ
ットについて、N末端配列の結果などをもとに、各々M
F−1、MF−2、MF−3、およびMF−4であると
同定した。また、新たに分子量約66kDa、等電点約
6.1(MF−5と命名)、及び分子量約43kDa、
等電点約6.2(MF−6と命名)の蛋白質がアレルギ
ー患者IgE抗体に結合する蛋白質であることを見出
し、これらの蛋白質をゲルより抽出し、単離した。
【0054】1−4)抗原性蛋白質MF−1、MF−2、MF
−3、MF−4、MF−5、MF−6の物理化学的性質 MF−1、MF−2、MF−3、MF−4、MF−5、MF−6のSD
S-PAGE(図11)、等電点電気泳動による分析の結果を
表1に示した。未変性下での等電点電気泳動は、IsoGel
Plate pH3〜10(FMC社製)を用いて常法により行っ
た。MF−5、MF−6のSDS−PAGE、等電点電
気泳動による分析結果は図9の二次元電気泳動の結果よ
り算出した。
【0055】
【表1】
【0056】次に、N末端アミノ酸配列分析を行った。
その結果、MF−1は Pro Gly Asp Pro Thr Ala Thr Ala Lys Gly Asn Glu Il
e Pro Asp Thr Leu MetGly Tyr Ile Pro Trp Thr Pro G
lu Leu Asp(配列番号:1) のアミノ酸配列を有することが明らかとなった。MF−2
については、N末端がブロックされていたため、ピリジ
ルエチル化後、リジルエンドペプチダーゼで消化し、得
られたペプチド断片をC18 逆相HPLCにより分析した。得
られた種々のピークを分取し、いくつかについてアミノ
酸配列決定を行い、27.07 、28.20 、31.15 分に溶出さ
れた3種類のペプチド断片のN末端アミノ酸配列をそれ
ぞれ、 Val Glu Tyr Phe Gly Ile Asp Glu Gly Glu Pro Lys
(配列番号2)、 Asp Asn Leu Thr Phe Ala Gln Asp Val Asn Cys Glu Ph
e(配列番号:3)、 Val Val Ile Val Ala Val Pro Gly Xaa Phe Thr Pro Th
r Cys Thr Ala Asn HisVal Pro Xaa Tyr Xaa Glu(配列
番号:4)(Xaa は未決定のアミノ酸である)、 と決定した。
【0057】MF−3についても、N末端がブロックされ
ていたため、ピリジルエチル化後、リジルエンドペプチ
ダーゼで消化し、得られたペプチド断片をC18 逆相HPLC
により分析した。得られた種々のピークを分取し、いく
つかについてアミノ酸配列決定を行い、35.68 、36.68
、29.15 分に溶出された3種類のペプチド断片のN末
端アミノ酸配列をそれぞれ Asp Gln Asp Pro Leu Thr Thr His His Pro Val Ile Gl
y Trp Asp Xaa Xaa GluHis Ala(配列番号:5)(Xaa
は未決定のアミノ酸である)、 Ala Trp Trp Asn Val Val Asn Trp Ala Glu Ala Glu Ly
s(配列番号:6)、 Phe Xaa Gly Gly Gly His Ile Asn Xaa Ser Leu Phe
(配列番号:7)(Xaa は未決定のアミノ酸である)、 と決定した。
【0058】また、MF−4は Lys Tyr Thr Leu Pro Pro Leu Pro Tyr Asp Tyr Gly Al
a Leu Glu Pro Ala IleSer Gly Glu Ile Met Glu Thr H
is Tyr Glu Lys His(配列番号:8) のアミノ酸配列を有することが明らかとなった。
【0059】また、MF−5は Glu Pro Tyr Asp Val Ile Xaa Ile Gly Gly Gly Pro Gl
y Gly Tyr Val Ala AlaIle Lys Ala Ala Gln (配列番
号:9) のアミノ酸配列を有することが明らかとなった。
【0060】また、MF−6は Arg Lys Val Ala Val Leu Gly Ala Ser Gly Gly Ile Gl
y Gln Pro Leu Ser LeuLeu Met Lys Leu Asn Pro Lys V
al Thr Glu Leu Arg (配列番号:10) のアミノ酸配列を有することが明らかとなった。
【0061】既知蛋白質とのホモロジー検索の結果、MF
−2は、配列番号:4の部分アミノ酸配列がカンジダ・
ボイジニ(Candida boidinii)由来のペルオキシゾーム
膜蛋白質(PMP−20)と、MF−3は上記の部分アミノ酸
配列が鉄/マンガン−スーパーオキシドジスムターゼと
ホモロジーのある蛋白質であることが明らかとなった。
また、MF−4は、上記のN末端アミノ酸配列が、MF−3
と同じく鉄/マンガン−スーパーオキシドジスムターゼ
とホモロジーのある蛋白質であることが明らかとなっ
た。
【0062】1−5)抗原性蛋白質MF−1、MF−2、MF
−3、MF−4の大量調製 上記のマラセチア部分精製粗抗原2782の0.05M トリ
ス塩酸緩衝液(pH 8.0)溶液を予め同緩衝液で平衡化し
ておいたDEAE−セルロースカラムに吸着させた。同緩衝
液で洗浄後、0.1M、0.2M、0.5Mの食塩を含む同緩衝液で
段階的に溶出させた。0.1M食塩入り緩衝液溶出画分を限
外濾過膜(MW 10,000 )で濃縮後、セファクリルS-200H
R カラムクロマトグラフィー(1.5 x 90cm)にかけた。
見掛け上の分子量3〜5万の溶出画分を集め、限外濾過
膜(MW 10,000 )で濃縮後、セファデックスG-75スーパ
ーファインカラム(1.5 x 100 cm)でクロマトグラフィ
ーを行い、分子量約4万に溶出される画分F2を得た。
このF2画分を0.5M食塩入り0.05M トリス塩酸緩衝液
(pH 8.0)に対して透析後、予め亜鉛イオンをキレート
させ、同緩衝液で平衡化したキレーティングセファロー
スファーストカラム(1 x 15 cm )クロマトグラフィー
にかけた。同緩衝液で洗浄後、緩衝液のpHを7.0 、6.0
、5.0 、4.0 と低下させて溶出した。pH 5.0の緩衝液
で溶出される画分を集め濃縮後、セファデックスG-75ス
ーパーファインカラム(1.5 x 100 cm)クロマトグラフ
ィーで更に精製することにより、MF−2を単離した。
【0063】亜鉛キレートクロマトグラフィーにおける
素通り画分は、次に銅キレートクロマトグラフィーで精
製した。即ち、予め銅イオンをキレートさせ、0.5M食塩
入り0.05M トリス塩酸緩衝液(pH 8.0)で平衡化したキ
レーティングセファロースファーストカラム(1 x 15 c
m )クロマトグラフィーを行った。同緩衝液で洗浄後、
緩衝液のpHを7.0 、6.0 、5.0 、4.0 と低下させて溶出
した。pH 4.0溶出画分を限外濾過膜(MW 10,000 )で濃
縮後、前記セファデックスG-75スーパーファインカラム
クロマトグラフィーで更に精製し、分子量約4万の溶出
画分MF−1を得た。また、素通り画分は限外濾過膜(MW
10,000 )で濃縮後、前記セファデックスG-75スーパー
ファインカラムクロマトグラフィーで精製し、分子量約
4万の溶出画分を取得後、更にMono Q陰イオン交換カラ
ムクロマトグラフィーにより精製し、MF−3及びMF−4
を単離した。最終的に、約 0.5gのマラセチア部分精製
粗抗原2782を出発材料として用い、MF−1、MF−
2、MF−3、MF−4を各々10 mg 、2 mg、3 mg、2 mgず
つ得た。このように大量調製された抗原性蛋白質は、S
DS電気泳動、等電点電気泳動、N末端アミノ酸配列分
析において、前記1−4)で述べた結果と同様であっ
た。
【0064】実施例2モノクローナル抗体の作製 2−1)マウスの免疫、細胞融合及びハイブリドーマの
クローニング 実施例1のようにして得られた、抗原性蛋白質MF−1、
MF−2及びMF−3を、それぞれ10μg ずつフロイント完
全アジュバントに懸濁させ、5週令の雄のBALB/cマウス
の腹腔内に投与した。4週後に、フロイント完全アジュ
バントに懸濁させたアレルゲン20μg で腹腔内に追加免
疫後、更にその4週後に生理食塩水に溶解した同じアレ
ルゲン20μg を静脈内に投与した。最終免疫から3日後
に脾臓細胞を取り出し、4:1の割合でミエローマ細胞
(P3X63-Ag8.653 )と混合し、43% ポリエチレングリコ
ール2000を加えて細胞融合を実施した。これを96穴マイ
クロプレートのウェルに脾臓細胞2x 105 個/ウェル
の割合でまき込み、HAT 培地中でハイブリドーマを選択
的に増殖させた。培養上清を用いて目的の抗体産生の有
無をELISA により測定し、抗体産生細胞を選択した。そ
の結果、抗原性蛋白質MF−1に対するM−40モノクロ
ーナル抗体を産生するハイブリドーマのクローンとして
5B4株(FERM BP−5608)を取得した。抗
原性蛋白質MF−2に対するM−3モノクローナル抗体を
産生するハイブリドーマのクローンとして8G11株
(FERM BP−5609)を取得した。抗原性蛋白
質MF−3に対するM−1モノクローナル抗体を産生する
ハイブリドーマのクローンとして10C1株(FERM
BP−5610)を取得した。
【0065】2−2)腹水の調製及びモノクローナル抗
体の精製 予めプリスタンで前処理したヌードマウスの腹腔内に10
7 個のハイブリドーマを注射して増殖させ、1〜2週後
に腹水を採取した。得られた腹水からプロテインAカラ
ムのキット(アマーシャム社製)によりモノクローナル
抗体を精製した。MF−1に対するM−40モノクローナ
ル抗体、MF−2に対するM−3モノクローナル抗体、MF
−3に対するM−1モノクローナル抗体を得た。これら
のモノクローナル抗体のアイソタイプは、すべてIgG
1であった。
【0066】2−3)モノクローナル抗体の固定化カラ
ムの調製及び同カラムを用いた抗原性蛋白質MF−3の精
製 上記のM−1モノクローナル抗体15mgをカップリング
緩衝液(0.1M NaHCO3,0.5 M NaCl, pH 8.3 )で透析
後、1gの臭化シアン活性化セファロース4B(ファル
マシア社製)に常法に従ってカップリングさせ、抗体の
固定化樹脂を調製した。得られた樹脂を5mlの小カラム
に移し、マラセチア部分精製粗抗原2782を40mgと
り、これを0.05M トリス塩酸緩衝液(pH 8.0)に溶解
後、カラムにかけた。0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH 8.0)
で充分に洗浄後、抗体に結合した抗原性蛋白質を0.1Mグ
リシン−塩酸緩衝液(pH 2.5 )で溶出した。溶出液は直
ちに1M トリス塩酸緩衝液(pH 8.0)を加えて中性に戻
した後、限外ろ過膜(MW 10,000)で濃縮後、上記と同様
にセファデックスG-75スーパーファインカラム(1.5 x
100cm)によるゲルろ過クロマトグラフィーを行い、純
度の高いMF−3を約300 μg単離した。
【0067】実施例3抗原性蛋白質の診断への応用 3−1)RAST法による特異的IgE抗体の測定方法 臭化シアンによるペーパーディスクの活性化、及び精製
アレルゲンのペーパーディスクへのカップリングは宮本
らの方法(アレルギー、22巻、584−594頁、1
973年)に準じて行った。ポリスチレンチューブにア
レルゲンをカップリングさせたペーパーディスク1枚と
患者血清50μl を加えて、室温で3時間インキュベー
トした。0.2%のツィーン20を含む生理食塩水でペーパー
ディスクを3回洗浄後、ファルマシア製RAST-RIAキット
125I標識抗ヒトIgE抗体50μl を加えて室温で
一晩インキュベートした。再度3回洗浄後、ガンマカウ
ンターで放射能を測定した。同時に測定したキットのリ
ファレンス試薬で作成した標準曲線からIgE抗体価を
算出した。標準曲線の上限(>17.5 PRU/ml )より高い
値が得られた検体は、ウマ血清で10倍、又は100 倍に希
釈してから再測定を行い、抗体価を算出した。
【0068】3−2)抗原性蛋白質MF−1、MF−2、MF
−4による診断 アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis:以下ADと略
す。)、アレルギー性喘息(Bronchial Asthma:以下B
Aと略す。)及び両方の合併(AD+BA)の患者に対
して、マラセチア粗抗原による皮膚試験を実施したとこ
ろ、AD患者が57名中43名(75%)、BA患者が
919名中108名(12%)、AD+BA患者が10
2名中47名が陽性であり、AD患者で非常に高い陽性
率を示した。また、皮膚テスト陽性のAD、BA、及び
AD+BA患者中、各々100%、59%、及び85%
の患者がRAST法によるIgE抗体測定において陽性
であった。
【0069】マラセチア粗抗原を用いた皮膚試験で陽
性、更にRAST陽性(スコア1以上)の患者76例(AD:
30名,BA:20名,AD+BA:26名)を対象にして、
3種類の抗原性蛋白質MF−1、MF−2、MF−4に対する
IgE抗体価をRAST法(RIA法)で測定した。皮膚試験陰
性者(健常人)12名についても同様に抗原性蛋白質に対
するIgE抗体価を測定した。その結果、表2に示すよ
うに非常に高率に患者血清中に抗原性蛋白質に対するI
gE抗体が存在することが明確になった。特に、MF−
1、MF−2に対する陽性率が高かった。更に、驚くべき
ことにIgE抗体価が非常に高く(表3)、特にADの
患者ではMF−1、MF−2に対して平均100 PRU、最高
1000PRUを超える患者もあった。また、マラセチア粗
抗原に対するRAST陽性の患者全員の血清中に抗原性蛋白
質MF−1、MF−2、MF−4のいずれかに対するIgE抗
体が存在していた。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】3−3)抗原性蛋白質MF−1、MF−2、MF
−3、MF−4の免疫学的性質 患者プール血清を用いたRASTcross-inhibitionテス
トで、3種の抗原性蛋白質(MF−1、MF−2、MF−4)
の交差反応性を見たところ(表4)、互いに交差しなか
った。即ち、それぞれに対して特異的IgE抗体が患者
血清中に存在することが明らかとなった。
【0073】
【表4】
【0074】次に、抗原性蛋白質MF−1、MF−2、MF−
4を段階的に希釈し、抗原としての強さをDirect RAST
EIA 法により測定した。すなわち、抗原性蛋白質MF−
1、MF−2、MF−4の希釈液を臭化シアンで活性化した
ペーパーディスクにカップリングし、ついでエタノール
アミンでブロッキングした。その後、各ディスクに5倍
希釈したプール血清50μlずつを加えて、その後、希
釈したβ−ガラクトシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgE抗血
清を反応させ、酵素基質を加え、415nmの吸光度を
測定した。その結果を図12に示したが、MF−1が最も
低濃度で患者血清IgEに結合することが明らかとなっ
た。
【0075】また、抗原性蛋白質MF−3を段階的に希釈
し、抗原としての強さをELISA 法により測定した。すな
わち、抗原性蛋白質MF−3の希釈液をマイクロプレート
にコーティングした後、0.01%ツィーン20を含む
生理食塩水で洗浄し、3%BSAを含むPBSでブロッ
キングし、0.01%ツィーン20を含む生理食塩水で
洗浄した後、プール血清を加えた。37℃、2時間放置
後、二次抗体であるペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトI
gE抗血清を加え、次に基質溶液を加え、発色後、45
0nmの吸光度を測定した。その結果を図13に示し
た。
【0076】実施例4抗原性蛋白質MF−2のシステイン残基のピリジルエチル
化物の調製 精製抗原性蛋白質MF−2(0.04mg)をホウ酸緩衝食塩水
(pH 8.0)200 μl に溶解し、これに800 μl の5M塩
酸グアニジン、1 μl の4−ビニルピリジン、2μl の
トリブチルホスフィンを加えた。窒素ガス置換後、37℃
で一晩反応、そしてHPLC(カラム:μ-Bondasphere
C4-300 、2×150mm 、ウォーターズ(Waters) 社製;
溶媒:0.05% TFA /水で15分洗浄、60分後0.05% TFA/ア
セトニトリル80%となるように直線的グラジエント溶
出;流速:220 μl /分;検出:220nm ;カラム温度:
40℃、図14)により単離精製した。得られたものは、
非還元条件(メルカプトエタノール非存在)下でのSD
S電気泳動において20kDa付近に泳動されること、
また、リジルエンドペプチダーゼ消化後得られたペプチ
ド断片(図15)のうち、配列番号3及び4のN末端ア
ミノ酸配列を有するペプチド断片(各々28.20、3
1.15に溶出)がピリジルエチルシステイン基を有す
ることから、MF−2のピリジルエチル化物であることが
明らかとなった。得られたMF−2のピリジルエチル化物
は、MF−2と同様にマラセチアアレルギー患者血清Ig
Eへ結合することが、SDS電気泳動後のイムノブロッ
ティングにより確認された。
【0077】実施例5抗原性蛋白質MF−3由来の抗原性断片ペプチドの単離 精製抗原性蛋白質MF−3(0.04 mg )をホウ酸緩衝食塩
水(pH 8.0)100 μlに溶解し、これに900 μl の5M
塩酸グアニジン、1 μl の4−ビニルピリジン、2μl
のトリブチルホスフィンを加えた。窒素ガス置換後、37
℃で一晩反応、そしてHPLC(カラム:μ-Bondasphe
re C4-300 、2×150mm 、ウォーターズ(Waters)社製;
溶媒:0.05% TFA /水で15分洗浄、60分後0.05% TFA/ア
セトニトリル80%となるように直線的グラジエント溶
出)により単離精製した。得られた抗原性蛋白質MF−3
の塩酸グアニジン処理体に50mM N−エチルモルフィン
−酢酸(pH 9.0)100 μl 、リジルエンドペプチダーゼ
(Achromobacter proteaseI、和光純薬社製)を加え、3
7℃で一晩反応後、HPLC(カラム:μ-Bondasphere
C18-300、2×150mm 、ウォーターズ(Waters)社製;溶
媒:0.05% TFA/水から0.05% TFA/アセトニトリル60%ま
での直線的グラジエント溶出;流速:200 μl /分;検
出:214nm ;カラム温度:40℃;図16)にかけた。各
ペプチド断片を分取、凍結乾燥後、各ペプチド断片につ
いてマラセチアアレルギー患者血清IgEに対する結合
性を下記のようにELISA法により測定した。
【0078】即ち、各ペプチド断片(各約10〜100
pmol)をペプチドコーティングキット(宝酒造製)
を用いて、マイクロプレートにコーティング後、0.01%
ツィーン20を含む生理食塩水で洗浄し、3%BSAでブロ
ッキングし、そして患者血清で処理した。その後、希釈
したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgE抗血清を反
応させ、酵素基質を加え、一定時間後吸光度を測定し、
抗原性断片を検出した。その結果、20.02 、21.41 、2
4.07 分付近に溶出されるピークに患者血清IgEと結
合する抗原性断片が存在すると思われた。これらのう
ち、21.41 分のピークはHHQTYVNNLNAAXK
(配列番号:11、Xは未決定のアミノ酸である)から
なるアミノ酸配列を有するペプチドが含まれていた。
【0079】実施例6リンパ球幼若化試験 被験者[アレルギー患者8名(表5中No. 1〜8)、健
常人2名(表5中No.9、10)]より静脈血をヘパリン
採血し、フィコール比重遠心法でリンパ球を分離した。
細胞数が5×105 /mlになるように10%FCS添加
RPMI1640培地で調製後、0.2ml ずつ96ウェルマイクロプ
レートに分注し、上記のマラセチア部分精製粗抗原27
82を10、100 μg/mlとなるように、抗原性蛋白質(MF
−1、MF−2、MF−4)を1、10μg/mlとなるように添
加し、5%CO2 、37℃で高湿度条件下に5日間培養し
た。4日目に、0.5 μCiのトリチウム化( 3H)−チミジ
ンを加えた。培養終了後、リンパ球を集め、液体シンチ
レーションカウンターで 3H-チミジン取り込み量を測定
した。実験は3連で行い、その平均値を用い、抗原非添
加群と添加群の 3H-チミジン取り込み量の比をSI(st
imulation index )として表わした。結果を表5に示し
た。表5より明らかなように、患者No. 4由来のリンパ
球は、抗原性蛋白質MF−1、MF−2に反応して増殖して
いる。また、患者No. 1、No. 6由来のリンパ球は特に
MF−2に反応して増殖している。
【0080】
【表5】
【0081】実施例7マラセチアアレルギー皮内反応診断試薬および診断用滴
定試薬の調製 精製されたアレルゲン活性成分を乾燥して粉末状で採取
して、マラセチアアレルギー疾患に対する皮内反応診断
試薬及びマラセチアアレルギー診断用滴定試薬として用
いる。皮内反応診断試薬には0.5 %フェノールを添加し
た0.9 %生理食塩水を溶媒とし、アレルゲン活性成分の
20万倍希釈液を調製して用いる。また、マラセチアアレ
ルギー診断用滴定試薬には、アレルゲン活性成分を1m
g/mlの濃度でハンクス緩衝液に溶解し、これをヒス
タミン遊離滴定用試薬の原液としてその希釈液を用い
る。
【0082】実施例8減感作治療用抗原製剤の調製 精製されたアレルゲン活性成分を乾燥して粉末状で採取
して、マラセチアアレルギー疾患に対する減感作治療剤
として用いる。アレルゲン活性成分を1mg/mlの濃
度で0.5 %フェノールを添加した0.9 %生理食塩水に溶
解し、減感作治療用抗原の原液とする。
【0083】実施例9室内塵中のマラセチア抗原性蛋白質MF-1の定量とマラセ
チアの培養 気管支喘息患者住居の室内や寝具などから掃除機により
塵を一定条件で採集した。MF−1の定量は、ウサギポリ
クローナル抗体と実施例2−2)で得られたマウスモノ
クローナル抗体(M−40)を用いるサンドイッチEL
ISA法で行い、塵は1:10(w/v)で抽出した上
清をMF−1定量のための試料とした。マラセチアの培養
のためには、塵を滅菌水で1:10(w/v)となるよ
うに混濁し、平板培地上にまいた。また、寝具表面に滅
菌テープを一度貼り、剥がして平板培地上に置いた。培
地はPDA、M40YA、ディクソン寒天培地を用い
て、25℃で1週間培養後コロニー数を算定した。サン
ドイッチELISA法により、1ng/g塵以上のMF−
1の定量が可能であり、寝具由来の塵24検体中16検
体に87.1〜1.1ng/g塵のMF−1が検出され
た。テープ法による寝具表面のマラセチアの培養成績
は、24検体中10検体が陽性であった。なお、24検
体中、サンドイッチELISA法によるMF−1の検出結
果と培養成績の結果が一致していた検体は、陽性8検
体、陰性6検体の合計14検体(58%)であった。
【0084】
【発明の効果】本発明により、単離されたマラセチア由
来の高純度の抗原性蛋白質、これらに由来する抗原性断
片、およびこれらの抗原性蛋白質又は抗原性断片に対す
る特異的抗体を提供することができる。また、これらの
抗原性蛋白質、抗原性断片を有効成分とするマラセチア
アレルギー疾患の診断薬、治療薬、予防薬を提供するこ
とができる。
【0085】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:28 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Pro Gly Asp Pro Thr Ala Thr Ala Lys Gly Asn Glu Ile Pro Asp Thr 5 10 15 Leu Met Gly Tyr Ile Pro Trp Thr Pro Glu Leu Asp 20 25
【0086】配列番号:2 配列の長さ:12 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド
【0087】配列番号:3 配列の長さ:13 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Asp Asn Leu Thr Phe Ala Gln Asp Val Asn Cys Glu Phe 5 10
【0088】配列番号:4 配列の長さ:24 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Val Val Ile Val Ala Val Pro Gly Xaa Phe Thr Pro Thr Cys Thr Ala 5 10 15 Asn His Val Pro Xaa Tyr Xaa Glu 20
【0089】配列番号:5 配列の長さ:20 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Asp Gln Asp Pro Leu Thr Thr His His Pro Val Ile Gly Trp Asp Xaa 5 10 15 Xaa Glu His Ala 20
【0090】配列番号:6 配列の長さ:13 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Ala Trp Trp Asn Val Val Asn Trp Ala Glu Ala Glu Lys 5 10
【0091】配列番号:7 配列の長さ:12 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド
【0092】配列番号:8 配列の長さ:30 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Lys Tyr Thr Leu Pro Pro Leu Pro Tyr Asp Tyr Gly Ala Leu Glu Pro 5 10 15 Ala Ile Ser Gly Glu Ile Met Glu Thr His Tyr Glu Lys His 20 25 30
【0093】配列番号:9 配列の長さ:23 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Glu Pro Tyr Asp Val Ile Xaa Ile Gly Gly Gly Pro Gly Gly Tyr Val 5 10 15 Ala Ala Ile Lys Ala Ala Gln 20
【0094】配列番号:10 配列の長さ:30 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Arg Lys Val Ala Val Leu Gly Ala Ser Gly Gly Ile Gly Gln Pro Leu 5 10 15 Ser Leu Leu Met Lys Leu Asn Pro Lys Val Thr Glu Leu Arg 20 25 30
【0095】配列番号:11 配列の長さ:14 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 His His Gln Thr Tyr Val Asn Asn Leu Asn Ala Ala Xaa Lys 5 10
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、マラセチア部分精製粗抗原2782の
Mono Qによるクロマトグラフィーの結果を示す図であ
る。
【図2】図2は、マラセチア部分精製粗抗原2782の
Mono Q分画物について、患者血清中のIgE抗体との結
合性を示す図である。
【図3】図3は、マラセチア部分精製粗抗原2782の
Mono Q分画物のSDS-PAGE後にCBB染色を行った電気泳
動の写真である。
【図4】図4は、マラセチア部分精製粗抗原2782の
Mono Q分画物のSDS-PAGE後にイムノブロッティングを行
った電気泳動の写真である。
【図5】図5は、Mono Q クロマトグラフィーによるMF
−1のピークを示す図である。
【図6】図6は、Mono Q クロマトグラフィーによるMF
−2のピークを示す図である。
【図7】図7は、Mono Q クロマトグラフィーによるMF
−3のピークを示す図である。
【図8】図8は、Mono Q クロマトグラフィーによるMF
−4のピークを示す図である。
【図9】図9は、マラセチア粗抗原2782の二次元電
気泳動の写真である。クーマシーブリリアントブルー染
色により蛋白質の検出を行う。
【図10】図10は、マラセチア粗抗原2782の二次
元電気泳動の写真である。健常者IgE抗体(A)およ
びアレルギー患者IgE抗体(B)を用いてイムノブロ
ット法によりスポットを検出する。
【図11】図11は、MF−1、MF−2、MF−3、MF−4
のSDS-PAGE(還元条件下)による電気泳動の写真であ
る。
【図12】図12は、抗原性蛋白質MF−1、MF−2、MF
−4のIgE結合性の濃度依存性を示す図である。
【図13】図13は、MF−3のIgE結合性の濃度依存
性を示す図である。
【図14】図14は、MF−3のピリジルエチル化物のH
PLCによる精製を示す図である。
【図15】図15は、MF−2(ピリジルエチル化物)の
リジルエンドペプチダーゼ消化物のHPLC分析結果を
示す図である。
【図16】図16は、MF−3(ピリジルエチル化物)の
リジルエンドペプチダーゼ消化物のHPLC分析結果を
示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07K 1/18 C07K 1/22 1/22 1/34 1/34 1/36 1/36 7/06 7/06 16/14 16/14 C12P 21/02 A C12P 21/02 G01N 33/53 D G01N 33/53 33/532 A 33/532 33/569 A 33/569 Z C12N 1/14 A // C12N 1/14 A61K 37/02 ABF (C12P 21/02 C12R 1:645) (C12N 1/14 C12R 1:645) (72)発明者 竹迫 一任 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 (72)発明者 大西 佳美 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 (72)発明者 八木原 朋子 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 (72)発明者 加藤 郁之進 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内

Claims (26)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アレルギー疾患患者由来のIgE抗体に
    対して結合能を有することを特徴とする、マラセチア属
    の真菌由来の実質的に純粋な、単離された抗原性蛋白
    質。
  2. 【請求項2】 マラセチア粗抗原に対して皮膚反応陽性
    のアレルギー疾患患者が反応する、マラセチア由来の主
    要アレルゲンであることを特徴とする請求項1記載の抗
    原性蛋白質。
  3. 【請求項3】 分子量が10000〜100000(S
    DS−PAGE、還元条件下または非還元条件下)で、
    等電点が4〜7(未変性下または8M尿素変性下)であ
    ることを特徴とする請求項1又は2記載の抗原性蛋白
    質。
  4. 【請求項4】 マラセチア属の真菌細胞内に存在する抗
    原性蛋白質であることを特徴とする請求項3記載の抗原
    性蛋白質。
  5. 【請求項5】 配列表の配列番号:1に示す部分アミノ
    酸配列を有する蛋白質であって、分子量約21000
    (SDS-PAGE、還元条件下) および約40000(SDS-PA
    GE、非還元条件下) 並びに未変性下の等電点約 4.7およ
    び8M尿素変性下の等電点約 5.3を有することを特徴と
    する請求項1記載のマラセチア由来の抗原性蛋白質。
  6. 【請求項6】 配列表の配列番号:2、配列番号:3、
    または配列番号:4に示す部分アミノ酸配列を有する蛋
    白質であって、分子量約20000(SDS-PAGE、還元条
    件下) および約40000(SDS-PAGE、非還元条件下)
    並びに未変性下の等電点約 4.7および8M尿素変性下の
    等電点約 5.8を有することを特徴とする請求項1記載の
    マラセチア由来の抗原性蛋白質。
  7. 【請求項7】 配列表の配列番号:5、配列番号:6、
    または配列番号:7に示す部分アミノ酸配列を有する蛋
    白質であって、分子量約27000(SDS-PAGE、還元条
    件下) および約27000(SDS-PAGE、非還元条件下)
    並びに未変性下の等電点約 5.2および8M尿素変性下の
    等電点約 6.5を有することを特徴とする請求項1記載の
    マラセチア由来の抗原性蛋白質。
  8. 【請求項8】 配列表の配列番号:8に示す部分アミノ
    酸配列を有する蛋白質であって、分子量約26000
    (SDS-PAGE、還元条件下) および約26000(SDS-PA
    GE、非還元条件下) 並びに未変性下の等電点約 5.2およ
    び8M尿素変性下の等電点約 6.3を有することを特徴と
    する請求項1記載のマラセチア由来の抗原性蛋白質。
  9. 【請求項9】 配列表の配列番号:9に示す部分アミノ
    酸配列を有する蛋白質であって、分子量約66000
    (SDS-PAGE、還元条件下) および8M尿素変性下の等電
    点約 6.1を有することを特徴とする請求項1記載のマラ
    セチア由来の抗原性蛋白質。
  10. 【請求項10】 配列表の配列番号:10に示す部分ア
    ミノ酸配列を有する蛋白質であって、分子量約4300
    0(SDS-PAGE、還元条件下) および8M尿素変性下の等
    電点約 6.2を有することを特徴とする請求項1記載のマ
    ラセチア由来の抗原性蛋白質。
  11. 【請求項11】 M. furfur(マラセチア ファーファ)
    TIMM2782の培養菌体破砕抽出液を遠心分離にかけその上
    清を凍結乾燥した後、DEAE−セルロースカラムクロマト
    グラフィーにかけ0.1MのNaClによる溶出画分を取得し、
    限外ろ過膜(MW 10,000)で濃縮した後、セファクリルS-
    200HR カラムクロマトグラフィーにかけ分子量3 〜5 万
    の溶出画分を取得し、得られる溶出画分を限外ろ過膜
    (MW 10,000)で濃縮した後、セファデックスG−75ス
    ーパーファインカラムクロマトグラフィーにかけ分子量
    約4万に溶出される画分を取得し、ついで亜鉛キレーテ
    ィングセファロースファーストカラムクロマトグラフィ
    ーにかけ素通り画分を銅キレートクロマトグラフィーに
    かけpH約4で溶出される画分を取得し、濃縮後セファ
    デックスG-75スーパーファインカラムクロマトグラフィ
    ーで精製し分子量約4万の溶出画分を取得して得られ
    る、請求項5記載の抗原性蛋白質。
  12. 【請求項12】 M. furfur(マラセチア ファーファ)
    TIMM2782の培養菌体破砕抽出液を遠心分離にかけその上
    清を凍結乾燥した後、DEAE−セルロースカラムクロマト
    グラフィーにかけ0.1MのNaClによる溶出画分を取得し、
    限外ろ過膜(MW 10,000)で濃縮した後、セファクリルS-
    200HR カラムクロマトグラフィーにかけ分子量3 〜5 万
    の溶出画分を取得し、得られる溶出画分を限外ろ過膜
    (MW 10,000)で濃縮した後、セファデックスG−75ス
    ーパーファインカラムクロマトグラフィーにかけ分子量
    約4万に溶出される画分を取得し、ついで亜鉛キレーテ
    ィングセファロースファーストカラムクロマトグラフィ
    ーにかけ、pH約5で溶出される画分を取得し、濃縮後
    セファデックスG-75スーパーファインカラムクロマトグ
    ラフィーで精製して得られる、請求項6記載の抗原性蛋
    白質。
  13. 【請求項13】 M. furfur(マラセチア ファーファ)
    TIMM2782の培養菌体破砕抽出液を遠心分離にかけその上
    清を凍結乾燥した後、DEAE−セルロースカラムクロマト
    グラフィーにかけ0.1MのNaClによる溶出画分を取得し、
    限外ろ過膜(MW 10,000)で濃縮した後、セファクリルS-
    200HR カラムクロマトグラフィーにかけ分子量3 〜5 万
    の溶出画分を取得し、得られる溶出画分を限外ろ過膜
    (MW 10,000)で濃縮した後、セファデックスG−75ス
    ーパーファインカラムクロマトグラフィーにかけ分子量
    約4万に溶出される画分を取得し、ついで亜鉛キレーテ
    ィングセファロースファーストカラムクロマトグラフィ
    ーにかけ素通り画分を取得し、銅キレートクロマトグラ
    フィーにかけ、素通り画分を濃縮した後セファデックス
    G-75スーパーファインカラムクロマトグラフィーで精製
    し分子量約4万の溶出画分を取得し、さらにMono Q陰イ
    オン交換クロマトグラフィーで精製して得られる、請求
    項7記載の抗原性蛋白質。
  14. 【請求項14】 M. furfur(マラセチア ファーファ)
    TIMM2782の培養菌体破砕抽出液を遠心分離にかけその上
    清を凍結乾燥した後、DEAE−セルロースカラムクロマト
    グラフィーにかけ0.1MのNaClによる溶出画分を取得し、
    限外ろ過膜(MW 10,000)で濃縮した後、セファクリルS-
    200HR カラムクロマトグラフィーにかけ分子量3 〜5 万
    の溶出画分を取得し、得られる溶出画分を限外ろ過膜
    (MW 10,000)で濃縮した後、セファデックスG−75ス
    ーパーファインカラムクロマトグラフィーにかけ分子量
    約4万に溶出される画分を取得し、ついで亜鉛キレーテ
    ィングセファロースファーストカラムクロマトグラフィ
    ーにかけ素通り画分を取得し、銅キレートクロマトグラ
    フィーにかけ、素通り画分を濃縮した後セファデックス
    G-75スーパーファインカラムクロマトグラフィーで精製
    し分子量約4万の溶出画分を取得し、さらにMono Q陰イ
    オン交換クロマトグラフィーで精製して得られる、請求
    項8記載の抗原性蛋白質。
  15. 【請求項15】 請求項5〜14いずれか1項記載の抗
    原性蛋白質と免疫学的に同等の性質を有することを特徴
    とする機能的同等物。
  16. 【請求項16】 請求項1〜15いずれか1項記載の抗
    原性蛋白質に含まれる抗原エピトープを有することを特
    徴とする該抗原性蛋白質由来の抗原性断片。
  17. 【請求項17】 該抗原性断片が、マラセチアに特異的
    なIgE抗体に対して結合能を有しないか、IgE抗体
    への結合が起こる場合でも、そのような結合は肥満細胞
    又は好塩基球からヒスタミンを放出させない程度である
    ことを特徴とする請求項16記載の抗原性断片。
  18. 【請求項18】 該抗原性断片が、マラセチア由来の抗
    原性蛋白質より実質的に低い程度でIgEに結合するこ
    とを特徴とする請求項17記載の抗原性断片。
  19. 【請求項19】 該抗原性断片が、少なくとも1個のT
    細胞エピトープを含むことを特徴とする請求項16〜1
    8いずれか1項記載の抗原性断片。
  20. 【請求項20】 該抗原性断片が、抗原性蛋白質より少
    ないIgE賦活活性を有することを特徴とする請求項1
    6〜19いずれか1項記載の抗原性断片。
  21. 【請求項21】 マラセチアアレルギー患者に投与した
    場合、投与された患者のマラセチアに対するアレルギー
    応答を軽減させることができるものであることを特徴と
    する請求項1〜15いずれか1項記載の抗原性蛋白質。
  22. 【請求項22】 マラセチアアレルギー患者に投与した
    場合、投与された患者のマラセチアに対するアレルギー
    応答を軽減させることができるものであることを特徴と
    する請求項16〜20いずれか1項記載の抗原性断片。
  23. 【請求項23】 請求項1〜15いずれか1項記載の抗
    原性蛋白質、あるいは請求項16〜20いずれか1項記
    載の抗原性断片に対する抗体。
  24. 【請求項24】 請求項1〜15いずれか1項記載の抗
    原性蛋白質、あるいは請求項16〜20いずれか1項記
    載の抗原性断片を有効成分とすることを特徴とするマラ
    セチアアレルギー疾患又はマラセチア感染症の診断薬。
  25. 【請求項25】 請求項1〜15いずれか1項記載の抗
    原性蛋白質、あるいは請求項16〜20いずれか1項記
    載の抗原性断片を有効成分とすることを特徴とするマラ
    セチアアレルギー疾患又はマラセチア感染症の治療薬。
  26. 【請求項26】 請求項1〜15いずれか1項記載の抗
    原性蛋白質をマラセチアアレルゲンの標準品とし、該抗
    原性蛋白質に対する抗体を用いてマラセチアアレルゲン
    の免疫学的定量を行うことを特徴とする、マラセチアア
    レルゲンの定量方法。
JP8257612A 1995-12-12 1996-09-05 マラセチア由来の抗原性蛋白質 Pending JPH09221498A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002332296A (ja) * 2001-05-11 2002-11-22 National Federation Of Dairy Cooperative Associations タンパク質の濃縮方法

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