JPH09217704A - 機械の制御方法及びその制御方法を用いた機械 - Google Patents

機械の制御方法及びその制御方法を用いた機械

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JPH09217704A
JPH09217704A JP2715796A JP2715796A JPH09217704A JP H09217704 A JPH09217704 A JP H09217704A JP 2715796 A JP2715796 A JP 2715796A JP 2715796 A JP2715796 A JP 2715796A JP H09217704 A JPH09217704 A JP H09217704A
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JP
Japan
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braking
movable part
machine
control
load
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JP2715796A
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English (en)
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Akira Sugimoto
旭 杉本
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RODOSHO SANGYO ANZEN KENKYUSHO
ROUDOUSHIYOU SANGYO ANZEN KENKYUSHO
Original Assignee
RODOSHO SANGYO ANZEN KENKYUSHO
ROUDOUSHIYOU SANGYO ANZEN KENKYUSHO
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ロボット等の可動部の駆動源として空気圧シリ
ンダを採用できるようにすること。 【解決手段】バランサ機構1は、空気圧シリンダ2を駆
動源とし、容器2A,2B内の空気圧を、制御装置10により
制御される三方弁9を介して調整することでロッド3を
上下方向に動作させる。一方、ロッド3を停止させると
きには、電磁ブレーキ5A,5Bに電流を印加し、摩擦板7
との間で制動力を発生させる。なお、ロードセル8によ
り、空気圧シリンダ2の出力と負荷(フック11に吊るさ
れる重り)との間のアンバランス分を検出し、制御装置
10では、その検出値が0になるように、空気圧シリンダ
2の出力を三方弁9を介して調整する。これにより、制
御が困難で従来採用できなかった空気圧シリンダを用い
ても、ロッド3を任意の位置に高精度に停止させつつ良
好なバランス制御が行えるので、ロボット等の可動部の
駆動源として空気圧シリンダを採用することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ロボット等の機械
の可動部を任意の位置に制御するための制御方法、及び
その制御方法を利用して制御されるロボット等の機械に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ロボット等を含む機械の可動部の
動作を制御する場合の制御理論は、可動部の駆動のみを
制御して可動部に任意の動作(停止も含む)をさせるも
のであり、図12に示すように、例えば、フィードバッ
ク制御により、所望の動作(目標値)が得られるよう
に、可動部を駆動するための駆動装置(アクチュエータ
等の制御対象)の操作量(出力)を制御するものとされ
ていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような従
来の制御理論では、例えば、フィードバック制御により
目標停止位置でロボット可動部の動作を停止させようと
した場合、制御遅れ等によってロボット可動部が目標停
止位置に収束するまでには、目標停止位置を中心として
ロボット可動部が変動する等の惧れがある。なお、流体
(空気や油等)圧を駆動源とする流体圧アクチュエータ
を駆動装置として用いた場合には、一旦停止できてもそ
の後に外乱等により流体圧アクチュエータ出力と負荷と
のバランスが崩れたりすると、アクチュエータを構成す
るシリンダとピストンとの間の摩擦状態が微妙に変化し
て静摩擦状態と動摩擦状態との間を行ったり来たりして
摩擦係数が大きく変化することになり、可動部を目標停
止位置に一定に保持することが困難となり、所謂ステッ
ク・スリップを発生させる等の惧れがある。
【0004】更に、停止している間においても、常にフ
ィードバック制御を継続し続けなければ、その状態を維
持することができず、また外乱等に対して応答性よく対
応できない。従って、従来の制御理論に基づく制御方法
では、例えば空気圧アクチュエータを駆動装置としてバ
ランサ機構等に用いようとした場合、空気の圧縮性や非
線形性などの影響で安定した位置決めの制御がより一層
困難となるため、ある任意の位置における力のバランス
動作を容易には行うことができず、これまで空気圧アク
チュエータを用いたバランサ機構(ロボット可動部)と
いうものは実現されていない。
【0005】このため、例えばロボット可動部(例えば
バランサ機構等)のアクチュエータとしては、電気式や
油圧式によるものが採用されて来たが、電気式のもので
は出力が小さく、油圧式のものは油洩れ等の際に周囲を
汚染する等の惧れがあり、繊維,食品,精密機械製造,
医療用等のロボット可動部のアクチュエータとしては適
さないため、大きな負荷に適用でき、かつ、周囲の汚染
等の心配の無いクリーンなアクチュエータを持つロボッ
トの実現は、広く産業界において依然強く切望されてい
るのが実情である。
【0006】なお、従来から、人間の腕や脚等の動作
は、従来の制御理論と同様、引張側の筋肉(アクチュエ
ータ)と、伸び側の筋肉(アクチュエータ)と、の力の
バランスにより制御されているとされ、このため人間同
様の動作を行わせるロボット可動部(バランサ機構等)
の各アクチュエータの制御理論も、アクチュエータ(駆
動装置)の出力を制御するという従来の制御理論をその
まま踏襲して来ており、この従来の制御理論をそのまま
に、空気圧アクチュエータの採用の実現化ための各種改
良がなされて来ている。
【0007】即ち、空気圧アクチュエータの採用の実現
化のための種々の改良は、何れも制御装置の制御精度・
応答性の改良,アクチュエータの構造自体の改良や製品
精度の向上,或いは各種センサの改良・検出精度の向上
等に力を注いでいるものであり、これらにより幾分の改
良は望めるとしても自ずと限界があるものであり、未だ
空気圧アクチュエータをバランサ機構に実際に採用でき
るには至っていないと言うのが実情なのである。
【0008】一方、本願の発明者等は、人間の腕・脚等
の動作の研究を重ねるうちに、例えば人間の腕や脚の動
作は、引張側の筋肉と、伸び側の筋肉と、の力の調整に
よりなされるという従来の制御理論からでは説明できな
いものであることに想到するに至った。具体的には、例
えば、腕で重りを水平に支持させた状態で急速落下を試
みると、腕は必ず一期に落下方向とは逆の上方へ伸ばさ
れるという研究結果が得られたのである。この結果を詳
細に解析してみると、人間の腕の動作は、引張側の筋肉
と、伸び側の筋肉と、の力の調整によりなされているだ
けではなく、腕をある位置に固定しているような場合に
は、ある許容値(不感帯)を持って筋肉に“動くな”と
いう停止指令を送っている(力のバランスで固定してい
るのではない)のであると判断するに至ったのである。
【0009】つまり、この停止指令のかかった状態では
引張側の筋肉と伸び側の筋肉との力の調整が常に継続的
に実行されているわけではないので、急速落下させたこ
とで腕への負荷が急増し前記許容値(不感帯)を越えて
停止指令が解かれた状態となってしまうと、一期に腕が
落下方向と逆の上方へ伸ばされてしまうものと考えられ
る。これに対し、従来の制御理論によれば、引張側の筋
肉と伸び側の筋肉との力がバランスするような調整が常
に継続的に実行されているはずであり、このため急速落
下させても、人間の応答能力をもってすれば重力変化に
応じて引張側の筋肉と伸び側の筋肉との力の調整がある
程度良好に行われるはずであるので、一期に腕が上方へ
伸ばされてしまうということは考え難いのである。な
お、当該落下に慣れると、人間は学習するので、前記許
容値(不感帯)の幅を大きく設定するようになり、一期
に腕が上方へ伸ばされることは抑制されるようになるも
のと考えられる。
【0010】また、他の例としては、ボールを蹴る際に
は、蹴る瞬間の反力を吸収しうる許容値(不感帯)で脚
の形を維持するように筋肉に“動くな”という停止指令
が送られ、これにより良好にボールを蹴ることが可能と
なるものと考えられる。即ち、従来の制御理論からすれ
ば、如何に制御応答性を高くしても、蹴る瞬間にはその
反力により筋肉のバランスが崩れ必ず脚の形が崩れるこ
とになるが、このようなことが発生しないのは、蹴る瞬
間の反力を吸収し得る許容値(不感帯)で脚の形を維持
するように筋肉に“動くな”という停止指令が送られて
いることに他ならないと考えられるのである。
【0011】つまり、本願の発明者等は、人間の動作に
は、従来の制御工学上の理論からだけでは説明できない
現象があることを確認し、その現象を解析した結果、ロ
ボット等の機械の可動部の動作を制御するための新たな
制御理論として、従来の制御理論(所望の動作の実現に
当たり、駆動装置の出力を制御するという制御理論)
に、駆動装置とは別の手段により可動部の動作を停止
(制動)させる制動理論を取り入れる必要があるという
ことに想到したのである。
【0012】本発明は、かかる新たな知見を取り入れた
機械の制御方法を提供すること、及びこの制御方法によ
って制御される機械を提供すること、例えば従来ロボッ
ト等の駆動源として採用できなかった空気圧アクチュエ
ータを簡単かつ安価な構成で採用できるようにすること
を目的とする。また、より一層制御の高精度化を図るこ
と、更に本発明に係る機械の適用領域を拡げること、作
業者に対する安全性を向上させること等も目的とするも
のである。
【0013】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1に記
載の発明に係る機械の制御方法は、機械の可動部を任意
の位置に制御する制御方法であって、前記可動部の駆動
と、前記可動部の制動と、を別経路で制御して、前記可
動部を任意の位置に制御するようにした。
【0014】このようにして、従来のように可動部の駆
動のみを制御して可動部の動作を制御していた従来の制
御方法に比べ、極めて簡単な構成で、かつ、応答性良く
高精度に、可動部を任意の位置に安定して制動(延いて
は停止)させることができるようにすると共に、これと
は別の経路で制御される可動部の駆動状態を任意の状態
に制御させておくことができるようにする。
【0015】そして、請求項2に記載の発明に係る機械
では、図1に示すように、機械の可動部を駆動するため
の駆動手段と、前記駆動手段とは別経路で前記可動部の
動作を制動する制動手段と、を備え、前記駆動手段と前
記制動手段とを介して、前記可動部を任意の位置に制御
するようにした。
【0016】このようにして、従来のように可動部の駆
動のみを制御して可動部の動作を制御していた従来の制
御方法を利用した機械に比べ、極めて簡単な構成で、か
つ、応答性良く高精度に、制動手段を介して可動部を任
意の位置に安定して制動(延いては停止)させることが
できるようにすると共に、これとは別の経路で設けた駆
動手段により可動部の駆動状態を任意の状態に制御させ
ておくことができるようにする。
【0017】請求項3に記載の発明では、図1に破線で
示す部分を加えて、機械の可動部に作用する負荷と、当
該負荷に抗する前記駆動手段の出力と、の偏差が無くな
るように、前記駆動手段の出力を制御する制御手段を含
んで構成するようにした。このようにして、機械の可動
部に作用する負荷と、当該負荷に抗する前記駆動手段の
出力と、の偏差(アンバランス力)を無くすようにすれ
ば、制動手段の制動力で前記偏差(アンバランス力)を
吸収する必要性が減少されることになるので、例えば、
前記制動手段と相俟って制動性能(制動速度や制動力
等)を高めることができるようになり、以って任意の位
置に制動,停止させる際の制動精度の向上や制動維持能
力の向上、延いては前記制動手段の容量を小容量化する
ことが可能となる。また、前記制動手段による制動を解
除したときに、前記偏差(アンバランス力)あると、急
激に可動部が動き出すような惧れがあるが、これを確実
に抑制することができるようになる。
【0018】請求項4に記載の発明では、機械の可動部
に作用する負荷と、当該負荷に抗する前記駆動手段の出
力と、の偏差を、前記可動部と、前記可動部を制動する
前記制動手段の制動部と、の間に介装した偏差検出手段
により検出するようにした。このようにすれば、簡単か
つ安価な構成により、高い信頼性で実際の前記偏差(ア
ンバランス力)を検出することができるので、前記制御
手段による制御の信頼性や制御精度の向上が図れるよう
になる。
【0019】請求項5に記載の発明では、前記制動手段
の制動力を、可変に設定できるようにした。このように
すれば、所望の(例えば可動部に作用する負荷に見合っ
た)制動力が得られるようになり、例えば、制動性能
(制動速度や制動力等)を高めることができるようにな
り、以って任意の位置に制動,停止させる際の制動精度
の向上や制動維持能力の向上が図れ、また、請求項6に
記載の発明のように、前記制動手段の制動力を、要求す
る機構のこわさに応じて変更するようにすれば、容易に
コンプライアンス制御を行わせることができるようにな
る。
【0020】請求項7に記載の発明では、前記制動手段
に機械の可動部に対する制動力を発生させて、機械の可
動部に作用する負荷振動を制振させる制振装置として機
能させるようにした。このようにすれば、本発明の適用
範囲をより一層拡張させることができることになる。
【0021】請求項8に記載の発明では、前記駆動手段
を、空気圧アクチュエータとした。即ち、産業界等にお
いて、空気圧アクチュエータを産業用ロボット等の可動
部の駆動手段として採用できるようにすることが強く望
まれてきたが、これに応えることができ、大きな負荷に
適用でき、かつ、周囲の汚染等の心配の無いクリーンな
アクチュエータを持つロボット等の機械を提供すること
が可能となる。
【0022】請求項9に記載の発明では、所定の安全条
件が確認できないときに、機械の可動部の動作を強制停
止させる安全装置として前記制動手段を機能させるよう
にした。即ち、安全でない条件が成立したときに、前記
制動手段を安全装置として機能させるようにすれば、別
個独立した安全装置を設けなくて済むので、構成の簡略
化、低コスト化等を図ることができることとなる。
【0023】請求項10に記載の発明では、前記制動手段
を、入力される制御信号が低エネルギ状態のときに前記
可動部の動作を制動するように構成した。即ち、入力さ
れる制御信号が、高エネルギ状態のときに可動部に対し
制動力が作用するような構成とすると、制動手段(電磁
ブレーキ等)が故障等していると制動できなくなり作業
者に対する安全性を確保できなくなる惧れがあるが、低
エネルギ状態で制動力を発生させるようにしておけば、
制動手段(電磁ブレーキ等)が故障等している場合に
は、常に制動力が与えられることになるので、作業者の
安全性等を一層向上させることができ、フェールセーフ
機能を格段に向上させることができる。
【0024】
【発明の効果】請求項1に記載の発明に係る機械の制御
方法によれば、従来のように可動部の駆動のみを制御し
て可動部の動作を制御していた従来の制御方法に比べ、
極めて簡単な構成で、かつ、応答性良く高精度に、可動
部を任意の位置に安定して制動(延いては停止)させる
ことができると共に、これとは別の経路で制御される可
動部の駆動状態を任意の状態に制御させることができ
る。従って、例えば、作業者への安全性を向上できた
り、一旦停止後の再動作開始時に所望の駆動状態に制御
しておくことができるので可動部の円滑かつ応答性の良
い動作等を実現すること等も可能である。また、可動部
の駆動とは別経路で可動部を制動させるので、例えば、
可動部の駆動側の制御を極言して暴走状態等としておい
ても、良好に可動部を任意の位置に高精度に制御するこ
とができ、制御ロジックの簡略化を図れる等の各種の効
果を奏することができるものである。
【0025】請求項2に記載の発明に係る機械によれ
ば、請求項1に記載の発明と同様の効果を奏することが
できる。請求項3に記載の発明によれば、機械の可動部
に作用する負荷と、当該負荷に抗する前記駆動手段の出
力と、の偏差を無くすようにしたので、制動手段の制動
力で前記偏差を吸収する必要性が減少されることになる
ので、制動性能(制動速度や制動力等)を高めることが
できるようになり、以って任意の位置に制動,停止させ
る際の制動精度の向上や制動維持能力の向上、延いては
前記制動手段の容量を小容量化することもできる。ま
た、前記制動手段による制動を解除したときに、急激に
可動部が動き出すような惧れも確実に抑制することがで
き、以って安全性等を向上させることができる。
【0026】請求項4に記載の発明によれば、簡単かつ
安価な構成により、高い信頼性で実際の前記偏差を検出
することができ、前記制御手段による制御の信頼性や制
御精度の向上が図れる。請求項5に記載の発明によれ
ば、所望の制動力が適宜得られるので、例えば、前記可
動部に作用する負荷に見合った制動性能(制動速度や制
動力等)を無駄なく容易に達成させることができる。
【0027】請求項6に記載の発明によれば、簡単な制
御ロジックでコンプライアンス制御を行わせることがで
きる。請求項7に記載の発明によれば、本発明の適用範
囲をより一層拡張させることができる。請求項8に記載
の発明によれば、産業界等において、空気圧アクチュエ
ータを産業用ロボット等の可動部の駆動手段として採用
できるようにすることが強く望まれてきたが、これに応
えることができ、大きな負荷に適用でき、かつ、周囲の
汚染等の心配の無いクリーンなロボット等の機械を提供
することができる。
【0028】請求項9に記載の発明によれば、前記制動
手段を安全装置としても機能させることができるので、
別個独立に安全装置を設けなくて済むので、以って構成
の簡略化、低コスト化等を図ることができる。請求項10
に記載の発明によれば、作業者の安全性等を一層向上さ
せることができ、フェールセーフ機能を格段に向上させ
ることができる。
【0029】
【実施形態】以下に、本発明の一実施形態を図面に基づ
いて説明する。図2(A),図2(B)は、本実施形態
におけるバランサ機構1を示している。このバランサ機
構1は、一例として複動型空気圧シリンダ2をアクチュ
エータ(本発明で言う駆動手段)としたものである。空
気圧シリンダ2内をロッド3に取り付けられた摺動自由
なピストン4により2つの容器2A,2Bに画成し、こ
れら容器2A,2B内の空気圧を、三方弁9を介して調
整することで、固定された空気圧シリンダ2に対してロ
ッド3(延いてはフック11)等を、図2(A)〔図2
(B)〕中上下方向に動作させるようになっている。な
お、前記三方弁9は、マイクロコンピュータ等からなる
制御装置10により制御信号が送られて駆動制御される
ようになっている。
【0030】ところで、前記空気圧シリンダ2には、本
発明に係る制動手段としての2つの電磁ブレーキ5A,
5B(これに限らず、所定の制動能力が得られれば1つ
でも良いし3つ以上であっても良い)が、図2(A)
〔図2(B)〕中上下方向に並んで取り付けられている
(勿論、これに限らず例えば左右方向でも良い)。ま
た、前記ロッド3と略平行に、かつ、前記電磁ブレーキ
5A,5Bと対面して、摩擦板7が配設されている。こ
の摩擦板7は、支持部材6A,6Bを介してロッド3と
略一体的に取付けられている。なお、前記ロッド3,支
持部材6A,6B,摩擦板7等が、本発明に係る“機械
の可動部”に相当することになる。
【0031】そして、前記電磁ブレーキ5A,5B内の
コイルに電流を印加すると、摩擦板7と電磁ブレーキ5
A,5Bとの間に制動力が発生し、摩擦板7(延いては
ロッド3)と空気圧シリンダ2とが接続されるようにな
っている。この電磁ブレーキ5A,5Bは、前記制御装
置10からの制御信号により駆動制御されるようになっ
ている。
【0032】ところで、本実施形態では、前記摩擦板7
の端部と支持部材6Aとの間には、ロードセル8が介装
されており、このロードセル8では、摩擦板7(延いて
はロッド3)が前記電磁ブレーキ5A,5Bにより制動
(延いては停止)された場合に摩擦板7に対して作用す
る荷重を検出することができるようになっている。な
お、ロードセル8が、本発明に係る偏差検出手段として
機能することになる。
【0033】ここで、このロードセル8の利用方法につ
いて説明する。前記ロッド3を、図2(A)〔図2
(B)〕中上下方向に移動させる際には、電磁ブレーキ
5A,5Bに電流は印加されず摩擦板7と空気圧シリン
ダ2との接続は開放され、摩擦板7には荷重が掛からな
い。従って、ロードセル8では荷重0が検出される。
【0034】一方、前記ロッド3を所定位置で停止させ
たいときには(例えば、制御装置10に設けたレバー1
0Aの操作により停止指示することができる。なお、制
御装置10とレバー10Aとは、後述する第2の実施形
態に係る図7の如く、例えば支持板6Bの下方に取り付
けるようにしても良い)、制御装置10を介して摩擦ブ
レーキ5A,5Bに電流を印加させて摩擦板7を空気圧
シリンダ2と接続させるが、このとき空気圧シリンダ2
の出力(容器2A内圧力と容器2B内圧力との差)と負
荷(例えば、フック11に吊るされる重り)との間で力
のバランスが取れていないと、そのアンバランス力が、
摩擦板7と空気圧シリンダ2との間に発生する。そし
て、このアンバランス力(荷重)がロードセル8によっ
て検出されることになる。
【0035】なお、制御装置10では、このロードセル
8の検出荷重が0になるように、空気圧シリンダ2の各
容器2A,2B内の圧力を、前記三方弁9を介して調整
することができるようになっている(以下、単にバラン
ス制御とも言う)。従って、当該制御装置10や前記三
方弁9等が、本発明に係る制御手段として機能すること
になる。
【0036】また、ロードセル8は、摩擦板7を介して
ロッド3と略一体的に連結されており、ロッド3と伴に
移動を行うため、ロッド3が任意の位置に移動してもそ
の位置でのバランス制御が可能である。ところで、本実
施形態では、前述したように制御装置10によりバラン
ス制御を行なわせるようになっているので、電磁ブレー
キ5A,5Bで空気圧シリンダ2に対してロッド3を停
止保持している間にも、アクチュエータ(空気圧シリン
ダ2)の出力と負荷(重り)との間の力がバランスされ
ることになるので、電磁ブレーキ5A,5Bが制動力を
失ったとき(作業者の意思で制動力を解除したときや何
らかの原因で電磁ブレーキが故障したとき等)でも、空
気圧シリンダ2に対してロッド3延いては負荷(重り)
が急激に移動するようなことを回避できるようになって
いる。
【0037】なお、ロッド3は、摩擦板7を介して電磁
ブレーキ5A,5Bにより空気圧シリンダ2に対する制
動力を受けているので、空気圧制御系の偏差(各容器2
A,2B内の圧力偏差)により生じる空気圧シリンダ2
の出力や負荷(重り)の変動が、前記制動力よりも小さ
ければ、ロッド3は動き出すことはない。このため、空
気圧制御系の偏差により生じる空気圧シリンダ2の出力
や、負荷(重り)の変動分より大きな制動能力を、電磁
ブレーキ5A,5Bは有していれさえすれば、停止位置
を維持しようとする制御を極めて簡単に行わせることが
できるものである。
【0038】従って、従来の制御理論により停止位置を
維持しようとした場合のように、空気圧制御系の偏差と
負荷(重り)とのバランスの変化に追従して空気圧を微
妙かつ高精度に制御し続けなくても良くなるので、例え
ばON・OFF動作の三方弁を用いた簡単かつ安価な構
成で、極めて確実に停止位置を維持することができ、以
って振動や不安定な動作のない良好なバランス動作が可
能となる。言い換えれば、空気圧制御系の偏差が小さ
く、かつ負荷の変動も小さければ、電磁ブレーキ5A,
5Bにより発生される静摩擦力(制動力)は、これを抑
えるだけの大きさがあれば十分であるとも言える。
【0039】このように、本実施形態によれば、空気圧
シリンダ2の出力を制御することでロッド3(延いては
フック11)を任意位置に移動させる(重りを吊り上げ
たり吊り下げる)ことができると共に、電磁ブレーキ5
A,5Bの制動力を介して任意の位置でロッド3(延い
てはフック11)を極めて高精度(実験結果によれば、
数〜数十μmオーダーの精度が得られることが確認され
ている)かつ確実に停止維持できるようにしたので、大
きな負荷に対して強くクリーンな駆動源である空気圧を
用いたアクチュエータでのバランス動作を著しく安定し
たものとすることができ、以って従来採用が困難であっ
た空気圧アクチュエータのバランサ機構(延いてはロボ
ット可動部)への採用を極めて簡単な構成で実現するこ
とができる。
【0040】更に、ロードセル8の検出値が0となるよ
うに、空気圧シリンダ2の出力を制御するようにしてい
るので、電磁ブレーキ5A,5Bが制動力を失ったとき
(作業者の意思で制動力を解除したときや何らかの原因
で電磁ブレーキが故障したとき等)でも、ロッド3延い
ては負荷(重り)が急激に移動するようなことを回避す
ることができる。
【0041】なお、本実施形態のような制動理論を取り
入れていなった従来の制御理論においては、コンプライ
アンス制御(機構のこわさ制御)を行わせる場合には、
空気圧制御系に供給する空気圧をフィードバック制御す
る際の制御ゲインを変化させることで行わせるという複
雑な制御ロジックが必要であったが、本実施形態によれ
ば、電磁ブレーキ5A,5Bの制動力を変化させるとい
う極めて簡単な構成により、容易にコンプライアンス制
御を行わせることができるという利点もある。即ち、要
求されるコンプライアンス(機構のこわさ)に応じて電
磁ブレーキ5A,5Bのうち何れか一方のみを停止時に
作動させたり、或いは電磁ブレーキ5A,5Bに印加す
る電流を変化させるようにすれば、容易にコンプライア
ンス制御を可能とすることができるものである。なお、
各電磁ブレーキ5A,5Bの制動力の大きさを各々異な
らせておくことも可能で、これにより簡単な構成でコン
プライアンス(機構のこわさ)の設定自由度を一層拡大
させることができるものである。
【0042】なお、アクチュエータの出力のみを制御し
て可動部の動作を制御するという従来の制御理論に基づ
いて、空気圧アクチュエータをバランサ機構のアクチュ
エータに用いると、重りを簡単かつ良好に停止維持させ
ることができず、また、例え一旦停止できたとしても、
外乱等によって容器2A,2Bの圧力偏差が生じる等し
てピストン4とシリンダ2との間の摩擦状態が静摩擦・
動摩擦を繰り返すこととなり摩擦係数が大きく変化する
こととなって、所謂スティック・スリップ等によりハン
チング等が発生することになるので、簡単でかつ良好な
バランサ機構が実現できないことは既述した通りであ
る。
【0043】ところで、本実施形態では、往復動させる
アクチュエータについて説明したが、図3に示すよう
に、容器2A,2B内の空気圧を制御することで、支点
2Cを中心にアーム3Aを回動させるアクチュエータ等
においても同様に、本発明を適用、換言すれば電磁ブレ
ーキ5A,5Bを用いてアーム3Aを任意の位置に制御
する制御理論を適用することができるものである。
【0044】ここで、本発明の制御方法について、適
宜、図2を参照しつつ、図4,図5に示す制御ブロック
図に従って、以下により詳細に説明することにする。図
4は、加減速過程(換言すれば、フック11等の上昇・
下降過程)における制御システムを示している。今、フ
ック11に質量Wの荷重(重量Wg)が吊り下げられて
おり、初期状態として力(空気圧シリンダ2の出力と荷
重Wgと)がバランスし、位置X0 で停止しているもの
とする。この時の力のバランスは次式で示される。
【0045】 Wg=(Pd1−Pd2)A (;at X0 ) … ここに、gは重力加速度,P1 は上昇側(容器2B側)
圧力,P2 は下降側(容器2A側)圧力であり、初期バ
ランス状態では、P1 =Pd1、P2 =Pd2となる。ま
た、Aはシリンダ内径で、ロッド側とシリンダ側では実
際には多少異なるが、ここでは理解し易いように同じ断
面積として説明することにする。
【0046】レバー10Aには、操作スイッチ(図示せ
ず)が取り付けられており、レバー10Aを上昇位置に
セットすると、レバー10Aの上昇スイッチがONとな
るようになっている。ここで、実際にレバー10Aを上
昇位置にセットして上昇スイッチをONにすると、図4
に示すように、上昇速度+V0 として上昇速度の目標を
設定して制御を開始したことになる。但し、信号+V0
は、上昇方向を+とし速度をV0 で表している。
【0047】更に、この信号+V0 は、三方弁9に入力
され、その結果、弁が開いて元圧(例えば、エアコンプ
レッサ)から上昇側シリンダ(容器2B)に空気が供給
される一方で、下降側シリンダ(容器2A)の空気は大
気に開放されて圧力が減少される。図4の制御ブロック
図中の空気圧力制御部のC1(S)、C2(S)はそれぞれ上昇
側、下降側の弁を開くための電気信号の処理回路を示
し、また、P1(S)、P2(S)はそれぞれ上昇側、下降側の
弁の動作を示す三方弁9の伝達関数である。
【0048】実際の三方弁9は、図6の模式図に示すよ
うに、2つの信号入力部があり、S 1 の側のソレノイド
に通電すると、プランジャ(図示せず)が移動し、ポー
トAと元圧Pとが接続され、同時にポートBは自動的に
排気(大気連通)ポートR2に接続されるように機械的
に連動されるようになっている。一方、S2 の側のソレ
ノイドに通電すると、ポートBが元圧Pに接続され、ポ
ートAが排気(大気連通)ポートR1 に接続されるよう
になっている。また、何れのソレノイドにも通電しない
と、各ポート間の接続は断たれ、三方弁9は閉弁状態と
なり、ポートA,ポートBの圧力が維持されるようにな
っている。
【0049】なお、図4の制御ブロック図では、2つの
弁として独立に表しているが、実際には図6で説明した
ような三方弁9を用いることができるものである。つま
り、三方弁9に信号+V0 が印加されると、上昇側(容
器2B)の圧力が増加し、同時に下降側(容器2A)の
圧力が減少して、荷重(重量Wg)が上昇方向に動き出
すことになる。
【0050】更に、図4の目標値+V0 の信号は、三方
弁9へ向かうラインの他に、更に他のラインXにも送ら
れるようになっている。かかるラインXは、本発明の特
徴部分であり、+V0 →0に変化(即ち停止)させる際
に有効となるフィードフォワード制御部分を構成するも
のである。即ち、ラインX上のEF は、+V0 が0に変
化するときに、電磁ブレーキ5A,5Bに電流を供給す
るスイッチング電源であり、これは要求する制動力に応
じて電流を調整できる構成とすることができる。そし
て、ロッド3(フック11延いては荷重Wg)が上昇移
動中、つまりレバー10Aの上昇スイッチがON(+V
0 ≠0)のときは、EF は0となって電磁ブレーキ5
A,5Bに電流が供給されないので制動係数ef は0で
あり、ロードセル8の出力VL は0となるので、フィー
ドバックがないまま、ロッド3(フック11延いては荷
重)は上昇し続けることになる。但し、ここに制動係数
f とは、制動力fD の速度の影響を示す関数で、ダン
パのように粘性負荷の場合は、制動力が速度に比例する
関係を示す関数であるが、本実施形態のような摩擦ブレ
ーキを用いる場合には、速度が0でない(dx/dt>
0)ときは、速度の大きさに無関係に一定の制動力fDS
を生ずるという特性を示すことになる。つまり、制動力
D は次式で表される。
【0051】 fD =fDS ;dx/dt>0(但し、EF >0) fD =0 ;dx/dt=0 … ここで、上昇動作を停止させるために、例えば人間が、
レバー10Aを停止位置(例えば水平位置)に戻すと、
制御システムの目標値は+V0 →0にセットされるよう
になっている。なお、人間に依らず、自動制御を行わせ
る場合には、ポテンショメータの検出信号を受け所定位
置まで上昇したことを検出し、その検出結果に基づき自
動的に目標値を0にセットさせるように構成することも
可能である。
【0052】この目標値0が三方弁9に入力されると、
ポートA,ポートB等はすべて閉弁されることになる
が、このままでは空気圧シリンダ2の出力と荷重(W
g)とのアンバランス分で、ロッド3は上昇し続け、前
記アンバランス分がなくなったところで初めてロッド3
は停止することになる。しかし、これでは、所定位置に
高精度に停止させることができない。実際に、従来の空
気圧シリンダを用いたバランサ機構では、ロッド等の可
動部を上方に動かすために、上昇側容器(例えば2B)
の内圧を最大にし、下降側容器(例えば2A)の内圧を
最小にするので、止めたいところで三方弁を閉弁させて
もそこで可動部を停止させることができず、例えば、予
め所定位置で停止きるようなタイミングを学習しておい
て、このタイミングで上昇側容器(例えば2B)の内圧
を低下させ、下降側容器(例えば2A)の内圧を増加さ
せるように、レバー10Aを微妙に操作するという熟練
した技能が必要となっていた。しかも、この様な高度な
技能により一旦ロッドを所定位置に停止できたとして
も、その後の外乱等によって僅かでも圧力バランスが崩
れると容易に動き出してしまうので、常に停止状態を監
視して圧力のバランス調整をしていなければならなかっ
た。なお、かかる操作(位置制御と圧力のバランス制御
とを両立させること)を自動制御により行わせてもそれ
は極めて困難なことであり、何れにしても所定位置に高
精度に停止させることやハンチング等発生させることな
く所定位置に高精度に停止維持させることができず、従
って空気圧アクチュエータをバランサ機構に従来採用で
きなかったのである。
【0053】しかし、本発明では、既述した研究結果に
基づいて根本となる制御理論から見直すこととし、これ
によって得られた新たな制御理論に基づき、簡単な構成
で容易かつ極めて高精度に、位置制御(摩擦ブレーキに
より高精度かつ安定して制動させる制御)とバランス制
御(ロードセル8の検出結果に基づいてアンバランス分
を無くす制御)との両立を図れるようにしたのである。
【0054】つまり、具体的には、停止操作のために、
レバー10Aを停止位置に移動させると、目標値+V0
→0となり、EF にスイッチが入って、電磁ブレーキ5
A,5Bに電流が供給され、これによって制動係数ef
>0となって制動力fD (=fDS)が発生されることに
なる(つまり、ロッド3にブレーキがかかることにな
る)。
【0055】この制動力fD は、直接ロッド3(延いて
は荷重Wg)の動きを止めようとする側に働くが、本実
施形態では、それだけではなく、更に、制動力fD をロ
ードセル8によって電気信号で検出するようにしてあ
り、この信号に基づいて三方弁9をフィードバックする
ようになっている。その結果、上昇側の圧力は低下し、
下降側の圧力が上昇するようにバランス制御されるよう
になるので、単に電磁ブレーキ5A,5Bのみで減速・
停止させる場合に比べて、減速・停止性能を一層強化で
きることになるから、極めて高い応答性でロッド3を減
速・停止させることが可能となるものである。勿論、電
磁ブレーキ5A,5Bのみで減速・停止させるだけで
も、従来の空気圧アクチュエータを用いたバランサ機構
に比べれば、格段に減速・停止性能を向上できるもので
ある。
【0056】なお、図4の加減速過程の制御システム
は、制動力を検出して三方弁9を連動させる減速過程を
示しているが、この過程は停止して制動力が消失するま
で継続されるものである。ところで、図4の加減速過程
は、停止(dx/dt=0)によって、制動力f D =0
になるが、このときの停止状態は、位置XSTにおいて次
式で表される。
【0057】 Wg−(Pd1−Pd2)A+ΔWU −WUB=0 (;at XST) … ここにおいて、ΔWU はバランス状態からの偏差を示
す。本来、停止状態は上式で示したように『Wg−
(Pd1−Pd2)A=0』であって、アンバランスΔW U
は圧力の偏差として、ほぼ次式で与えられる。 ΔWU ={(P1 −Pd1)−(P2 −Pd2)}A … 即ち、上式は、アンバランスにも拘わらず、摩擦ブレ
ーキによって強制的にバランス状態が取られていること
を示しており、アンバランス分ΔWU に対して摩擦ブレ
ーキに生じる反力を示していることになる。
【0058】つまり、電磁ブレーキの静止摩擦WUBは、
最大静止摩擦ΔWmax を越えない限り、次式で示される
ように、強制的に停止状態を実現することになる。 ΔWU =WUB<ΔWmax 〔静止摩擦を利用するバランス状態fB =0〕… そして、図4において、+V0 →0に対して、ブレーキ
電流が供給され、更に各容器2A,2B内の圧力が減速
側にそれぞれ制御されて、減速され停止に至ることにな
るのである。なお、この図4の制御ブロック図(減速過
程)は、電磁ブレーキの最大静止摩擦の範囲内のアンバ
ランス状態でロッド3(荷重Wg)が停止するまでの状
況を示すものである。ところで、本実施形態では、更
に、停止状態に至った後も、より好ましいバランス状態
を生成するための制御が継続されるようになっている。
【0059】つまり、電磁ブレーキの静止摩擦は、有限
の速度(相対的滑り状態)に対して一定の制動力を伝達
する特性を有するだけでなく、相対的滑りがないときは
入力する力をそのまま伝達するという特性を持つもので
あり、この粘性摩擦等と根本的に相違する特有の特性を
有効に活かすような制御が本実施形態では行われること
となる。
【0060】即ち、図5の制御ブロック図は、停止状態
へ移行した後のバランシングの過程を示しているが、上
記のように、移行中の電磁ブレーキによる制動力の特性
と、停止状態移行後の電磁ブレーキの制動力の特性と、
が異なるので、これを考慮した制御ブロック図として表
してある。
【0061】なお、図4に示した制御状態から、この図
5に示した制御状態への移行は、ロッド3が停止するこ
とによって、即ち前述した摩擦ブレーキ特有の特性によ
って、自動的になされるものであって、故意に制御シス
テムを切り換えるようにしてなされるものではない。ロ
ッド3(荷重Wg)は、図4の制御システムにより停止
状態とされるが、このときのバランス状態は、静止摩擦
を利用して強制的に行っているので、電磁ブレーキを解
除したら、容易に(不用意に)ロッド3は動きだすこと
になり、作業者等の安全性が害されることにもなり兼ね
ない。
【0062】そこで、本実施形態では、例え電磁ブレー
キを解除しても、ロッド3が容易に動きださないよう
に、電磁ブレーキが掛かっている間に良好なバランス状
態を生成しておくようにしているのである。つまり、図
4の減速過程を経て、ロッド3(荷重Wg)が一旦停止
されると、自動的に図5の制御へ移行し、その結果、自
動的に良好なバランス状態が生成されることとなり、上
式が、次式のようなバランス状態とされるのである。
【0063】 ΔWU =WUB=0 〔制御によるバランス状態fB =0〕 … 即ち、+V0 =0である位置XSTに停止している状態
は、バランスfB =0であるが、静止摩擦WUBのおかげ
で停止のためのバランスが維持されている(上式)と
いう状態が、図5の制御システムの初期条件ということ
になる。そして、静止摩擦WUBは物理的に(自動的に)
アンバランス分ΔWU =WUBを実行するので、図5の制
御システムでは、ロードセル8でアンバランス分ΔWU
を検出してこれを無くする方向に、即ちΔWU =WUB
0となるまで空気圧P1 ,P2 を調整するフィードバッ
ク制御がなされるのである。
【0064】なお、以上説明してきたような制御によ
り、実際の実験では、作業者の希望する任意の位置で自
由に、かつ安定して速やかにロッド3(荷重Wg)を停
止させることができ、従来の空気圧アクチュエータを用
いたバランサ機構のような“ぎこちない動き”やハンチ
ング等と言った問題は全く発生しないことが確認され
た。
【0065】また、停止位置の精度としては、荷重(20
kgf)を高速度で上昇下降させた場合には、略3mm以下の
オーバーシュートで停止させることができ、また繰り返
し精度は略1mm以下であった。勿論、移動速度を抑制す
れば、オーバーシュートは縮小できるものであり、簡単
な装置構成であっても、容易に20μmの精度を達成でき
ることも確認できている。
【0066】なお、電磁ブレーキ5A,5Bによってロ
ッド3を停止させるだけでなく、本実施形態のようにバ
ランス制御と組み合わせて位置制御を行わせるようにす
れば、電磁ブレーキ5A,5Bの制動力としては、アン
バランスを検出するためにロードセル8を結合するだけ
の能力があれば良いことも確認されている。次に、本発
明に係る第2の実施形態について説明する。
【0067】第2の実施形態は、図7に示すように、オ
ートバランサ機構に関する実施形態である。オートバラ
ンサ機構は、過負荷労働の補助機械として作業現場等に
おいて重量物の運搬,組み付け等に多く用いられるもの
である。しかし、前述したように、従来は空気圧シリン
ダをアクチュエータとすると、その制御の困難さから採
用し難いものとされ、当該オートバランサ機構にあって
も電気式,油圧式のアクチュエータが採用されてきた。
しかし、これらのものでは大きな負荷に対応することが
でき、かつ、周囲を汚染しないという要求に応えること
ができず、以って例えば、繊維,食品,精密機械部品製
造等の現場では採用することが困難となる。
【0068】そこで、本実施形態では、制動理論を取り
入れた制御理論を採用することで、駆動源として、大き
な負荷に対応することができ、かつ、周囲を汚染しない
という要求に応えることができる空気圧アクチュエータ
を採用できるようにしている。以下に、図7に示すオー
トバランサ機構について説明するが、第1の実施形態と
同様の要素には、同一の符号(或いは同一の名称)を付
すこととし、それについての詳細な説明は省略すること
とする。また、制御方法についても、第1の実施形態で
説明したと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0069】図7においては、支点20Aを中心とする
アーム20の動き(回動)を規制する(ブレーキを効か
せる)ためのブレーキ機構21(制動手段)と、支点3
0Aを中心とする先端アーム30の動き(回動)を規制
するブレーキ機構31(制動手段)と、が設けられてい
る。前記ブレーキ機構21は、第1の実施形態で説明し
たと同様に、空気圧シリンダ2に固定された電磁ブレー
キ5A,5Bと摩擦板7とから構成されている。
【0070】一方、ブレーキ機構31は、アーム20に
支点32Aを介して回動自由に接続された支持板32に
固定された電磁ブレーキ35A,35Bと、この電磁ブ
レーキ35A,35Bに対向して摺動自在に構成され且
つ先端アーム30に支点33Aを介して回動自由に接続
された摩擦板33と、により構成されるようになってい
る。
【0071】従って、アーム20の動きは空気圧シリン
ダ2により制御される一方で、アーム20の停止維持
は、ブレーキ機構21によりなされる。そして、先端ア
ーム30の動きは空気圧シリンダ34により制御される
一方で、先端アーム30の停止維持は、ブレーキ機構3
1によってなされることになる。また、ブレーキ機構2
1側にはロードセル8が、ブレーキ機構31側にはロー
ドセル36が設けられており、これらの検出信号に基づ
いて、第1の実施形態と同様に、制御装置10では、空
気圧シリンダ2,空気圧シリンダ34の出力を制御する
ようになっている。
【0072】なお、当該オートバランサ機構は、作業者
が操作レバー37を適宜操作することによって、アーム
20や先端アーム30の移動指令や、ブレーキ機構21
やブレーキ機構31に停止指令が発生されるようになっ
ており、これら指令が制御装置10に送られ、制御装置
10ではこれらの指令に従って、空気圧シリンダ2,空
気圧シリンダ34や電磁ブレーキ5A,5B,電磁ブレ
ーキ35A,35Bを制御するものである。
【0073】このように、第2の実施形態によれば、本
発明に係る制御理論に基づいて、アクチュエータの出力
制御に加えて、制動理論を取り入れるようにしたので、
大きな負荷に対して強くクリーンな駆動源である空気圧
を用いたアクチュエータでのバランス動作を著しく安定
したものとすることができ、以って従来採用が困難であ
った空気圧アクチュエータのオートバランサ機構(延い
てはロボット可動部)への採用を実現することができ
る。
【0074】なお、第1の実施形態と同様に、電磁ブレ
ーキ5A,5B等で空気圧シリンダ2に対してロッド3
を停止維持している間にも、各空気圧シリンダ(アクチ
ュエータ)の出力をロードセルの検出値が0となるよう
にバランス制御を行うようにしているので、一旦停止さ
せた後に再動作を行わせる場合に再動作開始初期から円
滑な作動が実現できるという利点もある。また、電磁ブ
レーキ5A,5B等が制動力を失ったとき(作業者の意
思で制動力を解除したときや何らかの原因で電磁ブレー
キが故障したとき等)でも、可動部が急激に移動するよ
うなことを回避できるので、安全性を向上させることが
できる。
【0075】つづけて、本発明の第3の実施形態につい
て説明する。ここでは、図8(A),図8(B)に示す
ようなロール巻き込まれ防止用ハンド40に、第1の実
施形態で説明したバランサ機構1を用いた場合の例であ
る。なお、第1の実施形態と同様の要素には、同一の符
号(或いは同一の名称)を付すこととし、それについて
の詳細な説明は省略することとする。また、制御方法に
ついても、第1の実施形態で説明したと同様であるの
で、詳細な説明は省略する。
【0076】ところで、ロール巻き込まれ防止用ハンド
40は、製紙,印刷等の機械のローラ部での作業を行う
際に、作業者の手,衣服等が当該ローラ部50に巻き込
まれて事故等が発生するのを防止するためのものであ
る。本実施形態に係るロール巻き込まれ防止用ハンド4
0は、支持部41を介して図8(B)に示す揺動方向に
揺動自由に支持されると共に、支持部42により図8
(A)中左右方向に摺動自在に支持されている。そし
て、人間が操作レバー43を握ってハンド40を動かす
ことによって、触手44等を介して作業(例えば、ロー
ラ部50の拭き取り清掃作業等)を行えるようになって
いる。
【0077】ここで、ローラ部50に対して危険とされ
る領域にまでハンド40(延いては触手44)を近づけ
ると、これを例えば光センサ(図示せず)等が検出し、
電磁ブレーキ5A,5B(上下方向停止)やハンドロッ
ク用電磁ブレーキ45(揺動方向停止)が作動してハン
ド40が危険領域に進入するのを防ぐことができるよう
になっている。
【0078】ハンド40の揺動や左右方向への移動につ
いては、本実施形態の場合、人間の力で動かすが、図8
(A)中上下方向は作業用の治具等を触手44に取り付
けること等を想定して空気圧シリンダ2によるバランサ
機構1を用いるようにしてある。従って、ハンド40の
上下方向の動きは、操作レバー43の操作による空気圧
シリンダ2の出力調整によりなされ、ハンド40の上下
方向の移動停止は、操作ノブ43の操作により電磁ブレ
ーキ5A,5Bに電流が印加されることによりなされ
る。そして、この停止中にも、第1の実施形態等と同様
に、ロードセル8の検出値が0となるように空気圧シリ
ンダ2の出力(空気圧制御系の偏差)が制御されるよう
になっている。なお、前述したように、ローラ部50に
対して危険とされる領域にまでハンド40(延いては触
手44)が近づくと、電磁ブレーキ5A,5B,電磁ブ
レーキ45を介して、ハンド40が移動するのが規制さ
れるようになっている。
【0079】ところで、揺動方向や左右方向においても
空気圧アクチュエータによるバランサ機構を用いるよう
にしても良いことは勿論である。このように第3の実施
形態によれば、本発明に係る制御理論に基づいて、アク
チュエータの出力制御に加えて、制動理論を取り入れる
ようにしたので、大きな負荷に対して強くクリーンな駆
動源である空気圧を用いたアクチュエータでのバランス
動作を著しく安定したものとすることができ、以って従
来採用が困難であった空気圧アクチュエータのバランサ
機構を用いたハンド(延いてはロボット可動部)を実現
することができる。更に、危険時等にはハンドの非常停
止も確実に行えるようにしたので、作業の安全性を格段
に向上させることができる。
【0080】なお、第1の実施形態と同様に、電磁ブレ
ーキ5A,5Bで空気圧シリンダ2に対してロッド3を
停止保持している間にも、各空気圧シリンダ(アクチュ
エータ)の出力をロードセルの検出値が0となるように
バランス制御を行うようにしているので、一旦停止させ
た後に再動作を行わせる場合に再動作開始初期から円滑
な作動が実現できるという利点もある。
【0081】次に、本発明に係る第4の実施形態につい
て説明する。第4の実施形態では、図9に示すようなク
レーン吊り荷ハンドリングマニピュレータ50に、本発
明の制御理論を取り入れた場合について説明する。な
お、第1の実施形態と同様の要素には、同一の符号(或
いは同一の名称)を付すこととし、それについての詳細
な説明は省略することとする。また、制御理論について
も、第1の実施形態で説明したと同様の部分についての
詳細な説明は省略する。
【0082】このクレーン吊り荷ハンドリングマニピュ
レータ50は、オーバークレーン51に吊るされた荷物
52の制振と位置決めを行わせるためのものである。即
ち、マニピュレータ50は、作業者の操作指令によっ
て、各関節に取付けられる空気圧アクチュエータ53や
電磁ブレーキ54A,54B〔図10(A),図10
(B)参照〕を制御することによって、マニピュレータ
50の各関節の動きを制御し、先端部に設けられたフッ
ク56を吊り荷用ワイヤに接続させるようにする。
【0083】そして、マニピュレータ50の各関節に取
付けられる電磁ブレーキ54A,54Bと摩擦板55
〔図10(A),図10(B)参照〕との間の制動力に
よって、吊り荷52とクレーン51のワイヤ51Aによ
る振子の復元力から発生する運動エネルギーを熱消散さ
せるようにして、マニピュレータ50の能動力を用いな
いで、吊り荷52の振動の停止(制振)作業を行う。
【0084】その後においては、マニピュレータ50
は、作業者の操作指令によって、各関節に取付けられる
空気圧アクチュエータ53や電磁ブレーキ54A,54
Bを制御することによって、マニピュレータ50の各関
節の動きを制御し、先端部に設けられたフック56を介
して吊り荷52を所定の位置に動かす作業(位置決め作
業)を行えるようになっている。
【0085】ところで、簡便な駆動源として空気圧アク
チュエータを用いると、空気圧駆動の特性上精密な位置
決めが従来困難であるとされていたが、本実施形態のよ
うに電磁ブレーキを用いたバランサ機構を使用すれば、
容易に空気圧アクチュエータを用いても精密な位置決め
が可能となるものである。なお、本実施形態において
も、図10(A)に示すように、各関節に取付けられる
摩擦板55にはロードセル57が介装されており、制振
作業時等に発生する反力がロードセル57で検出される
ことになるので、制御装置10では、この検出される反
力を無くす方向に空気圧アクチュエータ53の出力を制
御するようにすることも可能である。そして、反力に応
じて空気圧アクチュエータ53の出力を制御するように
すれば、電磁ブレーキ54A,54Bの容量を小さくす
ることができるという利点がある。
【0086】このように、第4の実施形態によれば、本
発明に係る制御理論に基づいて、アクチュエータの出力
制御に、制動理論を取り入れるようにしたので、大きな
負荷に対して強くクリーンな駆動源である空気圧を用い
たアクチュエータでのバランス動作を著しく安定したも
のとすることができ、以って従来採用が困難であった空
気圧アクチュエータを用いたクレーン吊り荷ハンドリン
グマニピュレータを実現することができる。
【0087】また、電磁ブレーキ54A,54Bの制動
力を利用して、制振作用も行えることになるので(即
ち、電磁ブレーキを制振装置として機能させるようにし
たので)、容易かつ効率的な制振作用を営むことが可能
となる。そして、電磁ブレーキ54A,54Bを介し
て、マニピュレータ50のフック56の位置制御をする
ことができるので、簡単な構成でも、高い精度で位置決
め作業も行えるようになる。
【0088】更に、電磁ブレーキ54A,54Bが制動
力を失ったとき(作業者の意思で制動力を解除したとき
や何らかの原因で電磁ブレーキが故障したとき等)で
も、可動部が急激に移動するようなことを回避できるの
で、安全性を向上させることができる。ところで、上述
してきた各実施形態では、制動手段として電磁ブレーキ
を用いて説明してきたが、これに限らず他のブレーキ装
置(例えば、バンドブレーキ等の摩擦ブレーキ等)を用
いることも可能である。
【0089】なお、上記各実施形態では、構成の簡略化
等を優先するために、電流を印加したときに(換言すれ
ば、入力される制御信号が高エネルギ状態で)、可動部
に対し制動力が作用するような構成で説明してきたが、
作業者等への安全性を一層高めるためには、電流が印加
されないときに(換言すれば、入力される制御信号が低
エネルギ状態で)、可動部に対し制動力が作用し、高エ
ネルギ状態のときに制動力が解放され可動部の可動が許
可されるように構成するのが好ましい。
【0090】即ち、高エネルギ状態で可動部に対し制動
力が作用するような構成の場合には、電磁ブレーキが故
障等していると制動できなくなり作業者に対する安全性
を確保できなくなる惧れがあるが、低エネルギ状態で制
動力を発生させるようにしておけば、電磁ブレーキ等が
故障等している場合には、常に制動力が与えられること
になるので、作業者の安全性等を一層向上させることが
でき、フェールセーフ機能を格段に向上させることがで
きる。
【0091】具体的には、例えば、図11に示すよう
に、低エネルギ状態の(電流が印加されない)ときに
は、機械的なスプリングブレーキ(例えばリーフ式)6
0に取付けられたブレーキパッド60Aを摩擦板61に
押付けることで確実かつ安定して可動部62を制動維持
させるようにし、高エネルギ状態(電流を印加したと
き)で、電磁ブレーキ63を作動させてスプリング力に
抗してスプリングブレーキ60を矢印方向へ引き付ける
ことで、前記スプリングブレーキ60のブレーキパッド
60Aと摩擦板61との接続を断ち、可動部62の可動
を許可するように構成することができる。
【0092】このことは、本願の発明者等が、既に特開
平4−73497号公報等において提案したロボット可
動部と人間とが協働作業する際の安全理論に基づくもの
である。即ち、作業許可信号(制動解除信号)を高エネ
ルギ状態側の信号とし、この高エネルギ状態に相当する
作業許可信号(制動解除信号)が入力されているときに
のみ、電磁ブレーキの制動を解除させるようにし、それ
以外のときには、即ち低エネルギ状態の信号が入力され
ている限り、電磁ブレーキを制動解除させないようにす
ることで、確実に作業者の安全を確保するというもので
ある。
【0093】なお、前記スプリングブレーキ60として
は、コイルバネ式のもの等も使用できることは勿論であ
る。また、例えば、電磁ブレーキとして、永久磁石の磁
束で摩擦板を吸引保持させ(摩擦板と接続維持させ)、
逆に、励磁電流を印加することで前記永久磁石の磁束を
打ち消すようにして摩擦板との接続を断つようにした所
謂釈放型電磁石を用いるようにすることも可能で、この
ようにすれば前記スプリングブレーキ60等を省略する
ことができ、以って作業者の安全性を高めつつ、構成の
簡略化,小型化,軽量化等を同時に促進することができ
る。
【0094】ところで、上記各実施形態においては、駆
動手段として空気圧アクチュエータを用いた場合につい
て説明してきたが、他の流体圧(油圧等)のアクチュエ
ータを用いた場合にも本発明を適用できることは勿論で
あり、また電気式アクチュエータ等を駆動手段とした場
合にも、本発明を適用できることは勿論である。更に、
ステップモータ,サーボモータ等のモータ類を駆動手段
として用いる場合にも本発明の理論を適用することがで
きるのは勿論、本発明によれば、これらの比較的高価な
モータ類に置き換えて安価な空気圧アクチュエータ等を
採用することができるようになり、特に、減速機構等の
仲介手段を持たず直接可動部を駆動するようにした低
速,大トルクが要求され高価かつ制御が複雑なダイレク
トドライブモータ等に換えて、安価で制御が容易な空気
圧アクチュエータ等を採用することができるようになる
ので、大巾なコスト低減,小型・軽量化等を図れること
になる。
【0095】なお、上記各実施形態に限らず、他の産業
用機械や医療用機械等の制御に、延いては全ての機械
(例えば、ロボットの腕,脚,指等の各種可動部)の制
御に、本発明を適用できることは勿論である。ところ
で、上記各実施形態では、空気圧シリンダ(アクチュエ
ータ)の出力をロードセルの検出値が0となるようにバ
ランス制御を行うようにして説明したが、このようなバ
ランス制御を行えば、安全性が向上したり、一旦停止さ
せた後に再動作を行わせる場合に再動作開始初期から円
滑な作動が実現できる等の利点はあるが、かかるバラン
ス制御を行わず、空気圧シリンダの出力を方向性のみ指
定した(伸び側或いは縮み側のみ指定した)状態(極言
すれば暴走状態)としておいても、本発明の駆動装置
(アクチュエータ)とは別個独立した制動手段(例え
ば、摩擦ブレーキ等)を介して駆動装置の動作を制御す
ることができるので、任意の位置で可動部の動作を停止
させることができるものである。
【0096】つまり、駆動装置の駆動状態を極言して暴
走状態としておいても、可動部の動作を制動させる制動
手段さえ備えれば、ロボット等の機械の可動部を任意の
位置で停止させることができ、また、制動手段の制動力
の調整により可動部の移動速度も容易に調整できるの
で、可動部の動作を任意に制御することができるもので
ある。
【0097】ところで、上記各実施形態では、偏差検出
手段としてロードセルを用いてアンバランス力(偏差)
を検出するようにしたが、例えば、より安価な歪みゲー
ジ等で代用させることも可能であるし、またある一定の
アンバランス力が発生したときにスイッチが入るような
ものも採用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る機械の構成を説明するブロック
図。
【図2】本発明の第1の実施形態の全体構成図。
【図3】回動式アクチュエータに適用した例を示す図。
【図4】本発明の制御システムを説明する制御ブロック
図(加減速過程)。
【図5】本発明の制御システムを説明する制御ブロック
図(停止状態でのバランシング制御過程)。
【図6】三方弁の模式図。
【図7】本発明の第2の実施形態の全体構成図。
【図8】(A)は、本発明の第2の実施形態の全体構成
図。(B)は、(A)の側面図。
【図9】本発明の第3の実施形態の全体構成図。
【図10】(A)は、図9の装置の関節部分の拡大図。
(B)は、(A)の電磁ブレーキ54A,54B部分の
下面図。
【図11】低エネルギ状態で制動する電磁ブレーキ(負
作動型ブレーキ)の一例を示す構成図。
【図12】従来の制御理論を説明する図。
【符号の説明】
1 バランサ機構 2 空気圧シリンダ 2A 下降側容器 2B 上昇側容器 3 ロッド 4 ピストン 5 電磁ブレーキ 7 摩擦板 8 ロードセル 9 三方弁 10 制御装置

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】機械の可動部を任意の位置に制御する制御
    方法において、 前記可動部の駆動と、前記可動部の制動と、を別経路で
    制御して、前記可動部を任意の位置に制御するようにし
    たことを特徴とする機械の制御方法。
  2. 【請求項2】機械の可動部を駆動するための駆動手段
    と、 前記駆動手段とは別経路で前記可動部の動作を制動する
    制動手段と、 を備え、 前記駆駆動手段と前記制動手段とを介して、前記可動部
    を任意の位置に制御するようにしたことを特徴とする機
    械。
  3. 【請求項3】機械の可動部に作用する負荷と、当該負荷
    に抗する前記駆動手段の出力と、の偏差が無くなるよう
    に、前記駆動手段の出力を制御する制御手段を含んで構
    成したことを特徴とする請求項2に記載の機械。
  4. 【請求項4】機械の可動部に作用する負荷と、当該負荷
    に抗する前記駆動手段の出力と、の偏差を、前記可動部
    と、前記可動部を制動する前記制動手段の制動部と、の
    間に介装した偏差検出手段により検出するようにしたこ
    とを特徴とする請求項3に記載の機械。
  5. 【請求項5】前記制動手段の制動力を、可変に設定でき
    るようにしたことを特徴とする請求項2〜請求項4の何
    れか1つに記載の機械。
  6. 【請求項6】前記制動手段の制動力が、要求する機構の
    こわさに応じて可変設定されることを特徴とする請求項
    5に記載の機械。
  7. 【請求項7】前記制動手段に機械の可動部に対する制動
    力を発生させて、機械の可動部に作用する負荷振動を制
    振させる制振装置として機能させることを特徴とする請
    求項2〜請求項6の何れか1つに記載の機械。
  8. 【請求項8】前記駆動手段が、空気圧アクチュエータで
    あることを特徴とする請求項2〜請求項7の何れか1つ
    に記載の機械。
  9. 【請求項9】所定の安全条件が確認できないときに、機
    械の可動部の動作を強制停止させる安全装置として前記
    制動手段を機能させることを特徴とする請求項2〜請求
    項8の何れか1つに記載の機械。
  10. 【請求項10】前記制動手段が、入力される制御信号が低
    エネルギ状態のときに前記可動部の動作を制動するよう
    に構成されたことを特徴とする請求項2〜請求項9の何
    れか1つに記載の機械。
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