JPH0921768A - 基材表面の有機化合物の分析方法 - Google Patents

基材表面の有機化合物の分析方法

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JPH0921768A
JPH0921768A JP7170757A JP17075795A JPH0921768A JP H0921768 A JPH0921768 A JP H0921768A JP 7170757 A JP7170757 A JP 7170757A JP 17075795 A JP17075795 A JP 17075795A JP H0921768 A JPH0921768 A JP H0921768A
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deuterated
base material
organic compound
compound
analysis
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JP7170757A
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Masayuki Okamoto
昌幸 岡本
Akira Mamada
明 儘田
Masanobu Wakasa
正信 若狭
Tatsuji Wakizaka
達司 脇阪
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Kao Corp
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Kao Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 基材表面の性能発現機構解明のためのより高
度な情報の要求を満たすような基材の表面有機化合物の
定量方法を提供する。 【構成】 基材表面にある重水素化した有機化合物を、
その重水素フラグメントを用いて2次イオン質量分析法
により定量分析することを特徴とする基材表面の有機化
合物の分析方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は基材表面にある有機化合
物の分析方法に関し、詳しくは2次イオン質量分析法を
利用して基材表面の有機化合物を定量的に分析する方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】基材
に要求される性能は様々であるが、これらの中で基材表
面での現象がその基材の性能発現に重要なものも多く存
在する。このような基材の表面を解析する手法として多
く用いられているものとして、XPS(X-ray Photoer
ectron Spectroscopy)が知られている。この方法による
と表面から数十オングストロームの深さ範囲内に存在す
る元素の定性や定量、化学状態に関する知見などが得ら
れる。しかし、この手法では、測定感度は元素濃度で1
atom%前後までが限界であるという欠点がある。
【0003】また、より高感度に表面原子の組成や量を
検出する表面解析手法として2次イオン質量分析法(Se
condary Ion Mass Spectroscopy 、以下SIMS法と略
記する)が知られている。例えば、特開平6−27057 号
公報には、表面に官能基を有する有機化合物と金属を化
学反応させて、官能基と金属の結合に由来するマスフラ
グメントをSIMS法により検出して表面官能基を検出
する方法が開示されている。しかしながら、この方法で
は、検出される有機化合物は、金属元素と反応性のある
官能基を有するものに限られ、また操作性や定量分析精
度において未だ充分満足できるものではない。
【0004】一方、洗浄剤、脱墨剤、漂白剤等の性能を
評価するために、布、紙、皮膚、毛髪等の表面の汚れを
定量分析することが必要である。従来、このような汚れ
の定量分析には、適当な溶媒を用いて抽出を行い、それ
をガスクロマトグラフィー等で定量する方法が広く行わ
れていた。しかしながら、溶媒抽出が困難である場合
や、また漂白処理による汚れの構造変化が生じた場合に
は分析が困難になるといった問題点があった。また、高
分子材料などに、帯電防止剤等として添加される界面活
性剤のブリード挙動や分散状態を解析することによっ
て、帯電防止剤等の界面活性剤の性能発現のメカニズム
を解析するために、従来、IRや電子顕微鏡による分析
が行われていたが、これらの従来法では検出感度が低
い、類似構造を有する化合物ではそれぞれの成分を区別
できない、定量性がない等の問題点があり、実試料に近
い系でブリード挙動や分散状態を解析するのは非常に困
難であった。
【0005】このように、基材に要求される性能の高度
化・高機能化に伴い、より高度な情報が性能発現機構解
明のために要求されており、このような要求を満たす基
材表面付近の有機化合物の高精度な定量方法が要望され
ている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記課題を
解決すべく鋭意研究の結果、本発明を完成するに到っ
た。即ち、本発明は、基材表面にある重水素化した有機
化合物を、その重水素フラグメントを用いて2次イオン
質量分析法(SIMS法)により定量分析することを特
徴とする基材表面の有機化合物の分析方法を提供するも
のである。
【0007】本発明において分析の対象となる基材とし
ては、特に限定されるものではないが、例えば、高分子
材料、繊維、毛髪、皮膚、紙、有機粉体、爪等が挙げら
れ、好ましくは高分子材料、繊維、紙である。また、本
発明の分析の対象となる基材表面にある有機化合物とし
ては、重水素化されうる水素原子を有するものであれば
特に限定されないが、例えば油脂、不飽和脂肪酸重合体
に代表される汚れ成分、各種アニオン、ノニオン、カチ
オンあるいは両性界面活性剤、高級アルコール等が挙げ
られる。特に、本発明の方法によると、布上に残存した
汚れの分散状態や、高分子材料上の界面活性剤(帯電防
止剤)、高級アルコールの分散状態等を、精度良く定量
的に分析することができる。
【0008】本発明の方法においては、まず、分析対象
となる基材表面の有機化合物は重水素化されている必要
がある。重水素化の方法は特に限定されず、より多くの
水素原子が重水素化されているものが好ましいが、有機
化合物の水素原子の少なくとも1個が重水素化されてい
ればよい。また、市販の重水素化された有機化合物を使
用することもできる。次に、このように重水素化した有
機化合物を、その重水素フラグメントを用いてSIMS
法により定量分析する。本発明のSIMS法に用いられ
る装置としては、通常のSIMS法に用いられるもので
あれば特に限定されるものではない。
【0009】本発明の方法では、分析目的とする基材表
面にある有機化合物を重水素でラベル化したものを用い
て試料調製し、検出イオンとして重水素由来の同位体イ
オンをSIMS法により検出する。これによると、基材
表面上の特定成分を選択的に分析でき、重水素化率の高
いものを用いれば検出感度をさらに向上させることが可
能である。
【0010】また、本発明においては、単なる表面の2
次元的な分析だけでなく、基材の深さ方向の分析を行う
ことにより、定量分析精度を向上させ、3次元的な分布
をも測定できる。深さ方向の分析は、重水素のフラグメ
ント強度の測定時間を適宜選ぶことによって、目的とす
る深さでの情報を得ることができ、例えば1分〜1時
間、好ましくは10分〜30分間測定し、この測定値を積分
することにより、数Å〜10μm の深さ方向の定量分析を
精度良く行うことができる。
【0011】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。
【0012】実施例1(ポリエチレン上の分岐状ステア
リルアルコールの定量分析) 下記方法により、重水素化した分岐状ステアリルアルコ
ールをポリエチレン標準試験パネルに種々の量塗布し
て、標準試料を作成し、ポリエチレン上の分岐状ステア
リルアルコールの定量分析を行った。 (1) 試料及び測定 ポリエチレン:日本テストパネル社製標準試験パネル 重水素化分岐状ステアリルアルコール:重水素化カルコ
ール(CDN/ISOTOPES社製(98atom-d%)) 重水素化カルコールをエタノールを溶媒として、濃度5.
12×10-4g/cm3 の溶液を調製し、ポリエチレンテスト
ピース(10×10×3mm) 上に40, 80, 200,300ml塗布
後、乾燥したものを標準試料とした。SIMS測定は、
一次イオン源の加速電圧を3及び5keVで行い、m/e
=2,12のフラグメントを検出した。
【0013】(2) 結果と考察 図1にカルコール量(C18D37OH量)とSIMSで得られ
た二次イオン強度の関係を示した。縦軸には 2+12
+相対強度比、横軸にはカルコール量をとっている。
図1から明らかなように、一次イオンの加速電圧が3ke
V及び5keVでは2+12+相対強度比とカルコール
量に良い相関が得られ、検量線法などを用いることによ
り、3〜5keVの比較的マイルドな条件で定量分析可能
であることがわかった。
【0014】実施例2(布上に残留した汚れの定量分
析) 重水素でラベル化したモデル汚れを用い、様々な漂白処
理を行った場合の汚れの除去率を下記の方法で調べた。
【0015】(1) 実験 汚れのモデルとして、黄ばみ汚れの原因として可能性が
高いと考えられているリノール酸重合物を用いた。カル
ボン酸のα位を重水素化した、下記式(I)で表される
構造を有する、リノール酸を合成した。
【0016】
【化1】
【0017】この重水素化したリノール酸を布上に既知
量塗布後、14日間エージングを行い黄ばみ汚れとした。
リノール酸の重水素化率についてGC−MSを用いて詳
細な解析を行った結果、1分子あたりの平均重水素原子
の個数は 1.3個であった。得られた布を下記1)〜4)に示
した方法で各種漂白処理し、測定試料とした。 <漂白処理> 漂白条件:下記溶液に20℃/20分間浸漬 1) Buffer処理(炭酸ナトリウム10mmol/リットル溶
液) 2) 過酸化水素処理(炭酸ナトリウム10mmol/リット
ル、過酸化水素48mmol/リットル溶液) 3) テトラアセチルエチレンジアミン(以下TAEDと
略記)処理 (炭酸ナトリウム10mmol/リットル、過酸化水素48mmol
/リットル、TAED1mmol/リットル溶液) 4) 式(II)で表される化合物(以下化合物Aと略記)
処理 (炭酸ナトリウム10mmol/リットル、過酸化水素48mmol
/リットル、化合物A2mmol/リットル溶液)
【0018】
【化2】
【0019】(式中、R は炭素数7〜11のアルキル基を
示す。) また、測定試料として布をそのまま用いたが、布のよう
な実試料では表面の凹凸が大きいため測定感度・定量性
の低下などが生じる可能性がある。そこで、布上に重水
素化したリノール酸を10〜200mg(1.3 〜21重量%) 塗布
したものを標準試料として、布上でも定量分析可能かど
うかの検討も行った。
【0020】SIMS測定条件:一次イオン源 O2 + 5keV 100nA, 1000×1000μm 電子銃 1keV 2000nA,2000×2000μm (2) 結果と考察 標準試料測定結果を図2に示した。リノール酸塗布量と
2+12+相対強度比によい相関が得られており、検
量線による定量分析が可能である。実試料のSIMS測
定から得られた、汚れの除去率を図3に示した。汚れの
除去率の算出は、試料表層の測定結果から検量線を用い
て残存リノール酸黄変物質量を求め、未漂白処理のもの
をブランクとして計算した。結果、汚れは殆ど除去され
ておらず、化合物Aでやや汚れが除去されている程度で
あった。このような結果が得られた理由としては、ここ
では表層のみを検出しているため、汚れがある程度の厚
みを持っている場合は、内部の汚れが検出されないため
であると考えられる。従って、これらの汚れを定量する
ために、表面からある程度の深さまでの測定を行うこと
が重要であると考え、次に深さ方向の分析について検討
した。
【0021】図4に深さ方向分析の結果を示した。縦軸
2+12+相対強度比、横軸は測定時間で、表面か
らの深さを示している。すべての試料で初期には強度が
高いが、測定時間が長くなるほど強度は低下してゆき、
汚れが削れてゆく様子がわかる。ここで特徴的なのは、
未漂白とBuffer処理では初期の強度に差がなく、このこ
とは表層のリノール酸黄変物質の量は両者で差がないこ
とを示している。 2+12+相対強度比は、表層のみ
の検出であれば汚れの広がっている面積を反映し、これ
にほぼ比例する。よって、汚れの量が異なっても広がり
が同じであれば、先ほどの評価法では差が見られないこ
とが考えられる。一方、深さ方向分析を行うと、Buffer
処理では強度の低下が早く、このことは汚れの厚みが小
さいことを反映していると推察される(モデル図参
照)。化合物A処理は初期強度も低く、強度低下も早い
ことから、汚れの広がり、厚みともに小さいと思われ
る。以上の考察から、深さ方向の分析が汚れ量の定量に
重要であると考えられ、今回は15分の測定における深さ
までの強度を積算することによってリノール酸黄変物質
の量を算出することにした。深さ方向の分析による解析
から算出した汚れの除去率を図5に示した。他の漂白処
理法と比較して化合物Aの汚れの除去率が高いことが示
された。
【0022】実施例3(高分子材料上の帯電防止剤の定
量) ポリプロピレン(以下PPと略記)の汎用帯電防止基剤
である下記式(III)で表される化合物(以下化合物Bと
略記する)の帯電防止機構について、下記方法で検討し
た。
【0023】
【化3】
【0024】(1) 実験 帯電防止基剤である化合物Bと、ブリード促進剤である
カルコールの重水素化物を帯電防止剤として用いた。カ
ルコールの重水素化物はC18D37OH のものをCDN/ISOTOP
ES社(98%atom-d) から購入し、そのまま用いた。ま
た、化合物Bの重水素化物は1−ブロモオクタデカン−
d37(CDN/ISOTOPES社製 99.6%atom-d) を用いて、ジエ
タノールアミンの3級アミン化反応により合成を行って
得られた下記式(IV)で表される化合物を用いた。
【0025】
【化4】
【0026】反応の確認は、GC、FAB−MSにより
行い、重水素を含有している分子の割合は約99%であっ
た。得られた帯電防止剤を用いて、以下に示した配合重
量比のものをプレス成形し、解析試料とした。 1) PP/重水素化カルコール/化合物B= 100/0.25
/0.25 2) PP/カルコール/重水素化化合物B= 100/0.25
/0.25 3) PP/重水素化化合物B= 100/0.5 (2) 結果と考察 図6にPP/重水素化カルコール/化合物Bの試料につ
いての深さ方向分析の結果を示した。縦軸は 2+12
+相対強度比であり、カルコール濃度を示している。
横軸は測定時間であり、表面からの深さに対応してい
る。成形直後、1日、7日と経時的に表面方向にカルコ
ールがブリードしてゆく様子がわかる。測定時間の経過
とともにm/e=2のフラグメント強度は低下し、約30
分でブランクレベルになることから、この測定時間内に
表面にブリードした帯電防止剤がほぼすべて検出されて
いると考えられる。よって、ここではそれぞれの試料に
おいて30分間の測定でのイオン強度を積算し、成形直後
の試料をブランクとして引いた値をブリード量として定
義した。なお、このときの測定深さについては不明であ
るが、オーダー的には十数〜数十nm程度と思われる。
【0027】それぞれの試料の経過日数とブリード量の
関係を図7に示した。縦軸は2+12+ 相対強度の積
算値を示している。この値は、試料の重水素化率、分子
構造などに依存することが考えられるが、カルコールと
化合物Bではアルキル鎖の重水素化率はほぼ同じであ
り、このような条件下では相対強度はそれぞれの分子の
モル量として定性的に比較できる。カルコール/化合物
Bの混合系において、カルコールを重水素化したもので
はイオン強度が高く、立ち上がりも速いことから、カル
コールは化合物Bよりもブリードが速いことがわかっ
た。また、カルコール/化合物B混合系と化合物B単独
系では、化合物Bのブリード量はほぼ同じであった。化
合物B単独系の方が化合物Bの配合量が多いことを考慮
すると、カルコールを配合することによって化合物Bの
ブリードが促進されていると考えられる。
【0028】
【発明の効果】本発明の方法によると、布のような実試
料上に存在する汚れなどの直接検出が可能である。特
に、表面凹凸が存在する場合でも、深さ方向測定による
積分から定量分析も行えることが示された。本発明の方
法は表面吸着物などの定量分析に有効であり、モデル実
験により高分子材料、布、皮膚、毛髪、紙、有機粉体、
爪などへの表面吸着種の解析に応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の試料のカルコール量(C18D37OH
量)とSIMSで得られた二次イオン強度の関係を示す
グラフである。
【図2】 実施例2の標準試料のリノール酸塗布量と 2
+12+相対強度との関係を示すグラフである。
【図3】 実施例2の実試料のSIMS測定から得られ
た、汚れの除去率を示すグラフである。
【図4】 実施例2で行った深さ方向の分析結果を示す
図である。
【図5】 深さ方向の分析による解析から算出した汚れ
の除去率を示すグラフである。
【図6】 PP/重水素化カルコール/化合物Bの試料
についての深さ方向の分析結果を示すグラフである。
【図7】 実施例3のそれぞれの試料の経過日数とブリ
ード量の関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 脇阪 達司 和歌山県和歌山市湊1334 花王株式会社研 究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材表面にある重水素化した有機化合物
    を、その重水素フラグメントを用いて2次イオン質量分
    析法により定量分析することを特徴とする基材表面の有
    機化合物の分析方法。
  2. 【請求項2】 基材の深さ方向の分析を行う請求項1記
    載の分析方法。
  3. 【請求項3】 基材が高分子材料、繊維、毛髪、皮膚、
    紙、有機粉体又は爪である請求項1又は2記載の分析方
    法。
  4. 【請求項4】 有機化合物が汚れ成分、界面活性剤又は
    高級アルコールである請求項1〜3のいずれか一項に記
    載の分析方法。
JP7170757A 1995-07-06 1995-07-06 基材表面の有機化合物の分析方法 Pending JPH0921768A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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