JPH09202945A - 建材用光輝焼鈍仕上げステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

建材用光輝焼鈍仕上げステンレス鋼板およびその製造方法

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JPH09202945A
JPH09202945A JP2744796A JP2744796A JPH09202945A JP H09202945 A JPH09202945 A JP H09202945A JP 2744796 A JP2744796 A JP 2744796A JP 2744796 A JP2744796 A JP 2744796A JP H09202945 A JPH09202945 A JP H09202945A
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stainless steel
weight
steel sheet
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corrosion resistance
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JP2744796A
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Takeshi Utsunomiya
武志 宇都宮
Kazu Shiroyama
和 白山
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
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Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Ti含有高Crフェライト系ステンレス鋼を
素材とした、耐食性,加工性,および表面性状に優れる
建材用光輝焼鈍仕上げステンレス鋼板を提供する。 【解決手段】 Cr:16.0〜35.0%、Ti:
0.05〜(0.5−10×N)%、Al:0.005
〜0.3%を含有し、N:0.02%以下であるフェラ
イト系ステンレス鋼板を、水素濃度[H2](容量
%)、窒素濃度[N2](容量%)、温度TA(℃)、
露点DP(℃)の間に下記(1)式および(2)式の関
係が成立する条件で光輝焼鈍して、不動態皮膜にTi濃
化層およびAl濃化層があり、表層に窒化物層が存在し
ない、光輝焼鈍仕上げステンレス鋼板を得る。 [H2]+[N2]=100 -----(1) X=DP−0.15(TA−1000)としたとき、
1.1[N2]−88≦X≦−30 -----(2)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐食性,加工性,
表面性状に優れた建材用光輝焼鈍仕上げステンレス鋼板
およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】建材用のステンレス鋼板は、主に屋根、
外装、内装に使用される。屋根用の材料には、表面光沢
を抑えた防眩性が要求されるため、一般にダル仕上げ材
が用いられる。外装用、内装用の材料には、意匠性の面
から種々の仕上げ材が使用され、特に、玄関周りのフロ
ント材やドア・サッシのフレーム材にはHL仕上げ材や
鏡面仕上げ材が使用される場合が多い。鏡面仕上げ材は
通常、光輝焼鈍仕上げ材をベースにバフ研磨等の鏡面研
磨を施して作られる。
【0003】屋根・外装用に使用されるステンレス鋼と
しては、従来、SUS304やSUS316に代表され
るオーステナイト系のステンレス鋼が使用されていた
が、海岸地区など海塩粒子が飛散する環境においては耐
発銹性が不十分である場合もある。また、オーステナイ
ト系ステンレス鋼は、フェライト系ステンレス鋼に比べ
熱膨張係数が大きいため、長尺の屋根に適用した場合、
フェライト系ステンレス鋼より温度サイクルによる材料
の劣化が起こりやすいことも指摘されている。このよう
な観点から、最近ではフェライト系ステンレス鋼を屋根
・外装用材料として使用する場合が増えてきた。
【0004】しかし、フェライト系ステンレス鋼は、一
般的にはオーステナイト系ステンレス鋼よりも耐食性が
劣り、例えば代表的なSUS430では田園地区等の腐
食環境の穏やかな場所においても比較的短期間で赤錆を
生じる。また、溶接時の加熱・冷却によって粒界腐食が
生じやすくなるという欠点もある。そこで、これらの欠
点を改善すべく、種々の高耐食性フェライト系ステンレ
ス鋼が開発されている。例えば、Cr含有量の増加やM
oの添加およびC,Nを固定するNb,Tiの添加によ
り耐食性を改善した、低炭素低窒素の22Cr−1Mo
−Nb鋼,30Cr−2Mo−Nb鋼が開発されてい
る。また、本発明者らは、C,Nの固定のためだけでは
なく酸洗仕上げ後の皮膜を積極的に改質するためにTi
とAlを複合で添加してさらなる耐食性の向上を図っ
た、22Cr−1.2Mo−Nb−Ti−Al鋼や30
Cr−2Mo−Nb−Ti−Al鋼を開発した。
【0005】一方、光輝焼鈍仕上げが要求される外装材
・内装材に使用されるフェライト系ステンレス鋼として
は、表面の皮膜組成をSiあるいはCrに富む組成とし
て耐食性の向上を図った例は多いが、Tiを添加した高
Crフェライト系ステンレス鋼を光輝焼鈍して耐食性・
加工性・表面性状の向上を同時に図った例はない。Ti
を含有する高Cr鋼について光輝焼鈍が適用されていな
い理由としては、Ti含有鋼を光輝焼鈍した際には窒化
が生じやすく、その結果材料の加工性が劣化する恐れが
あること、また、TiN等の粗大な介在物が生成しやす
く、その場合には製品において表面疵が発生して意匠性
を損なう恐れがあることが考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述のTi+Al複合
添加鋼等の高Crフェライト系ステンレス鋼は、本来腐
食環境の比較的厳しい場所で外装材として使用し得る高
い耐食性を有するにもかかわらず、光輝焼鈍を適用しに
くいために意匠性が要求される鏡面仕上げ材としては採
用されておらず、このような用途においてその特性が十
分に生かしきれていない。一方、同等の耐食性を有する
建材用ステンレス鋼として、酸洗仕上げ用と光輝焼鈍仕
上げ用の2種類の鋼種を持ち合わせて使い分けるのは、
材料メーカーや流通業者にとって不経済なことである。
【0007】そこで、本発明は、Tiを含有する高Cr
フェライト系ステンレス鋼を素材として、その素材が本
来有している優れた耐食性を維持しつつ、窒化を防止し
て加工性を改善し、かつTiN等の介在物の生成を抑制
して表面性状を改善した建材用光輝焼鈍仕上げステンレ
ス鋼板を安定して製造し、提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的は、Cr:1
6.0〜35.0重量%、Ti:0.05〜(0.5−
10×N)重量%、Al:0.005〜0.3重量%、
Mo:0〜6.0重量%(無添加を含む)、Nb:0〜
1.0重量%(無添加を含む)を含有し、Nの含有量を
0.02重量%以下に制限したフェライト系ステンレス
鋼の鋼板であって、表面に形成されている不動態皮膜に
Ti濃化層およびAl濃化層があり、かつ、表面から深
さ50μmまでの表層に窒化物層が存在しないことを特
徴とする耐食性、加工性および表面性状に優れた建材用
光輝焼鈍仕上げステンレス鋼板によって達成される。
【0009】また、本発明では、Cr:16.0〜3
5.0重量%、Ti:0.05〜(0.5−10×N)
重量%、Al:0.005〜0.3重量%、Mo:0〜
6.0重量%(無添加を含む)、Nb:0〜1.0重量
%(無添加を含む)を含有し、Nの含有量を0.02重
量%以下に制限したフェライト系ステンレス鋼の鋼板
を、雰囲気中の水素濃度[H2](容量%)、雰囲気中
の窒素濃度[N2](容量%)、焼鈍温度TA(℃)、
露点DP(℃)の間に下記(1)式および(2)式の関
係が成立する条件で光輝焼鈍する、耐食性、加工性およ
び表面性状に優れた建材用光輝焼鈍仕上げステンレス鋼
板の製造方法を提供する。 [H2]+[N2]=100 -----(1) X=DP−0.15(TA−1000)としたとき、
[N2]−85≦X≦−30 -----(2)
【0010】ここで、「Ti:0.05〜(0.5−1
0×N)重量%」におけるNは、ステンレス鋼中におけ
る窒素の含有量(重量%で表される値)を意味する。ま
た、Ti濃化層とは、ステンレス鋼素地のTi含有量に
対して原子比で2倍以上のTiが存在する層を意味す
る。同様に、Al濃化層とは、ステンレス鋼素地のAl
含有量に対して原子比で2倍以上のAlが存在する層を
意味する。またここで、(1)式の[H2]+[N2]=
100とは、水素と窒素からなる工業的純度(不可避的
不純物成分の存在を許容する)の混合ガスを意味する。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の対象とする光輝焼鈍ステ
ンレス鋼板においては、光輝焼鈍により形成される表面
皮膜(不動態皮膜)にTi濃化層およびAl濃化層が存
在していることを要件とする。光輝焼鈍のような還元性
の雰囲気でTiとAlを含有する高Cr鋼を焼鈍したと
きの光輝焼鈍皮膜の生成過程においては、より酸化され
やすい元素であるTiおよびAlがCrよりも優先的に
酸化され、TiとAlが表面に濃化する。表面にTi濃
化層およびAl濃化層がいち早く形成されるため、Cr
の酸化ロスが抑制され、表層直下の素地におけるCr濃
度は高く維持されるので、その結果、耐食性の高いCr
不動態皮膜が形成される。このように、光輝焼鈍皮膜の
生成過程においてTi濃化層とAl濃化層の早期形成
は、高Cr鋼本来の高い耐食性を付与する上で必要不可
欠の現象であり、このような過程を経て製造される本発
明の光輝焼鈍仕上げステンレス鋼板は、その不動態皮膜
にTi濃化層およびAl濃化層が存在しているものとし
て特定される。
【0012】従来の高耐食性光輝焼鈍仕上げステンレス
鋼において採用される、Si濃化皮膜の形成による耐食
性改善手段も、Crの酸化ロスを抑制して耐食性の高い
不動態皮膜を形成する点においては、本発明と同様の作
用を利用していると言える。しかし、このような従来の
鋼板は、表面皮膜のほとんど全てをSi濃化層とするほ
ど多量のSiを含有したものであり、このような鋼はS
iの固溶強化により材料が硬質であるため、軟質で加工
性に富む材料が要求される建材用途には適用できない。
また、Siが富化した皮膜は、皮膜自体も硬質となり、
ロール成形等により強加工を施した部分は皮膜が破壊さ
れて耐食性の低下を招く恐れもある。
【0013】本発明の対象とする光輝焼鈍ステンレス鋼
板は、建材用途に使用されるものであるため、密着曲げ
等の厳しい加工に耐えるものでなくてはならない。この
ためには、表層への窒化物層の形成を防止しなくてはな
らない。Ti,Alは酸素だけでなく、窒素との親和力
も強い。このため、還元性が非常に強い雰囲気、すなわ
ち酸素ポテンシャルが非常に低い雰囲気で焼純すると、
窒素との化合物を生成し、材料の加工性を低下させる。
本発明者らが調査した結果、この窒化物層が表面から5
0μm以内の部分に存在するとき、加工性に悪影響を及
ぼすことを経験的に確認した。Ti含有鋼の光輝焼鈍に
より表層に生成する窒化物層が、材料の加工性を低下さ
せる原因については、現時点では不明な点も多いが、以
下のことが考えられる。すなわち、光輝焼鈍雰囲気中で
焼鈍するとBCC構造のフェライト系ステンレス鋼は鋼
中に水素を吸収する。表層に化合物層が存在しない場合
は、水素は時間の経過と共に放出され、材料の加工性は
回復する。一方、化合物層が存在すると水素の拡散が妨
げられ、鋼中に閉じ込められた水素による脆化によって
加工性が低下するものと推測される。
【0014】次に、光輝焼鈍条件について説明する。通
常、ステンレス鋼の光輝焼鈍では、材料の酸化を防止す
るためにできるだけ還元性の強い条件で焼鈍することが
望まれる。一般的には75容量%水素−25容量%窒素
の混合ガス(AXガス)中において、材料の再結晶温度
より高温で、酸化による着色を確実に防止するに足るだ
け露点を低く維持しながら、光輝焼鈍が行われる。酸化
を防止する観点からは露点は低いほど良く、通常は、コ
ストとの兼ね合いで最適な露点にコントロールされる。
【0015】ところが、露点が低くなるにしたがって還
元性が高まるため、窒素を含有する光輝焼鈍雰囲気下で
は材料の窒化が起こりやすくなる。特にTiを含有する
鋼では、TiはNと結合し易い元素であるため、露点が
低くなると(=ガスの還元力が強くなると)非常に窒化
が起こり易い。したがって、本発明の対象とする建材用
Ti含有高Cr鋼を光輝焼鈍する際には、窒化物層の形
成防止と酸化による着色防止の両面から適切な還元力を
有する光輝焼鈍雰囲気にコントロールする必要がある。
【0016】雰囲気ガスの還元力は、露点だけでなく、
温度やガス組成にも依存する。露点とガス組成が一定の
場合、温度が高いほど還元力は大きくなる。図1に、7
5容量%水素−25容量%窒素の混合ガスを用いた実験
例として、このガス中で30Cr−2Mo−Nb−Ti
−Al鋼(各元素の含有量は本発明の規定範囲にある)
を焼鈍した場合の、酸化による着色および窒化物層生成
による加工性低下に及ぼす焼鈍温度と露点の影響を示
す。X=DP−0.15(TA−1000)(ここでD
Pは露点(℃),TAは焼鈍温度(℃))としたとき、
図1から次のことがわかる。すなわち、このガス組成で
は、X>−30となるとき酸化によって表面皮膜がMn
あるいはFeの酸化物へと変化して着色が起こることが
懸念され、逆にX<−60となるとき窒化による加工性
低下が問題となる。
【0017】本発明者らは、水素と窒素の混合比を種々
変化させたガスについて、同様の実験を詳細に行った。
その結果、図2に示すように、窒化による加工性低下と
酸化による着色を同時に防止しうる適正条件を見出し
た。すなわち、本発明で規定する組成のTi含有高Cr
鋼について、次のことが明らかとなった。 上記X値が−30以下であれば、ガス中の窒素濃度に
かかわらず、酸化による着色が防止できる。 上記X値が[N2]−85(ここで[N2]は雰囲気ガ
ス中の窒素濃度(容量%))で求まる値以上であれば、
窒化による加工性低下は問題になることがない。 以上の知見を基に、本発明では、前述の(1)式および
(2)式による規定を設けた。
【0018】なお、本発明の対象とする鋼においては、
焼鈍温度が900℃未満では再結晶化が不十分となる恐
れがある。一方、1100℃を超える温度で焼鈍すると
結晶粒の粗大化を促進する恐れがあり、結晶粒の粗大化
は材料の靭性を低下させる。したがって、本発明に適用
する光輝焼鈍は900〜1100℃の範囲でおこなうこ
とが望ましい。
【0019】次に、本発明の対象となる鋼を構成する各
元素の作用について述べる。Cは、ステンレス鋼に不可
避的に含まれる元素である。C含有量を低減すると軟質
になり、加工性が向上すると共に炭化物の生成が少なく
なる。また、C含有量の低減に伴って溶接性および溶接
部の耐食性も向上する。従って、建材用に供される本発
明の対象鋼においてはC含有量は低いほど良く、0.0
2重量%以下にすることが望ましい。
【0020】Nは、Cと同様にステンレス鋼に不可避的
に含まれる元素である。N含有量を低減すると軟質にな
り、加工性が向上するとともに窒化物の生成が少なくな
る。また、N含有量を低減するとTiとの共存によって
生成する粗大な非金属介在物TiNに起因した表面疵の
発生を防止することができる。従って、Tiを含有する
本発明の対象鋼においてはN含有量を低減することが重
要であり、上限を0.02重量%に制限する必要があ
る。
【0021】Siは、溶接部の高温割れや溶接部の靱性
に対して有害な元素である。また、ステンレス鋼を硬質
にするので、建材用途ではSi含有量は低い方が良く、
1.0重量%以下とすることが望ましい。
【0022】Mnは、ステンレス鋼中に微量に存在する
Sと結合して可溶性硫化物MnSを生成するので、特に
建材用途では、耐候性を低下させる有害な元素である。
本用途ではMn含有量を1.0重量%以下に抑えること
が望ましい。
【0023】Pは、母材および溶接部の靭性を損なうの
でP含有量は低い方が好ましい。しかし、本発明対象鋼
のような高Cr鋼について脱Pすることは難しく、P含
有量を極度に低下させることは製造コストの上昇を招
く。本発明が目的とする建材用途としてはP含有量は
0.04重量%程度までは許容できる。
【0024】Sは、耐食性および溶接部の耐高温割れ性
に悪影響をおよぽす有害な元素であるため、S含有量は
低い方が好ましい。一般的な外装材としては0.01重
量%程度まで許容できるが、海岸近くで使用する場合や
意匠性が特に要求される用途では0.003重量%以下
とすることが望ましい。
【0025】Niは、フェライト系ステンレス鋼の靭性
改善に有効な元素である。しかし、多量のNi含有はコ
スト高の原因になるばかりでなく、硬さ上昇の原因にも
なる。本発明においては、通常のフェライト系ステンレ
ス鋼で不可避的不純物として混入する0.6重量%程度
までは許容できる。
【0026】Crは、ステンレス鋼の耐食性を高める主
要元素であり、耐候性、耐孔食性、耐隙間腐食性および
一般耐食性を著しく向上させる。建材用としては、少な
くとも16.0重量%以上のCr含有量がなくては、た
とえ内装用であっても満足できる耐食性は得られない。
Cr含有量の増加とともに耐食性は向上するが、本発明
者らの調査によると、23.0重量%を超える量のCr
を含有させたとき、一般的な環境では、軒下,軒天部な
どの腐食性の高い部位においても鏡面研磨材の意匠性を
損なうような発銹を著しく抑制できることが経験的に確
認された。換言すれば、23.0重量%以下のCr含有
量では、鏡面研磨材を軒下,軒天部などの外装材に適用
した場合に必ずしも満足できる耐発銹性を有するとは言
えない。したがって、Cr含有量は23.0重量%を超
える量とすることが望ましい。また、海岸近くなどの厳
しい腐食環境で軒下,軒天部などの部位に使用する場合
を考慮したとき、Cr含有量は28.0重量%以上とす
ることがより望ましい。このように多量のCrを含有す
ると材料の靭性が低下してくるが、本発明における光輝
焼鈍は鋼の靭性改善効果を有するので、特に多量のCr
を含有する鋼に対して有効に作用する。しかし、Cr含
有量が35.0重量%を超えると著しい脆化が生じ、薄
板を製造すること自体が困難となる。
【0027】Tiは、Sを固定してMnSの生成による
耐孔食性の低下を防ぐとともに、C,Nを固定して粒界
腐食を防止する効果もある。また、前述のとおり、光輝
焼鈍皮膜の生成過程においてAlとともに優先的に皮膜
中に濃化し、Cr欠乏層の形成を防止して耐食性の維持
に寄与する。これらの作用を有効に発揮させるために
は、0.05重量%以上のTiを含有する必要がある。
しかし、TiはNとの親和力が強いために、鋼中のNと
反応してTiNの粗大な介在物を生成させやすい。この
TiNはクラスター状の介在物となって、鋼板表面の疵
発生の原因となる。建材用途のうちでも鏡面研磨仕上げ
材ではこのような疵は特に嫌われる。そこで、本発明で
は、TiN生成による疵発生の防止を重要な課題の1つ
として位置付け、N含有量との関係においてTi量を規
定した。図3に、Ti含有鋼の冷延板に発生するTiN
介在物による疵と、鋼中のTiおよびNの含有量の関係
を調査した結果の一例を示す。図3から、Tiの許容量
はNの含有量に依存し、Nが0.02重量%以下の範囲
において、疵を発生させないTi含有量の限界は(0.
5−10×N)重量%(ここで、Nは鋼中のN含有量
(重量%)を意味する)で表されることがわかる。図3
中のプロットは一例にすぎないが、本発明の対象鋼では
Ti含有量を(0.5−10×N)重量%以下に規制す
ることによって建材に適用した際に問題となるTiNに
起因する疵を防止できることを確認している。
【0028】Alは、前述のとおり光輝焼鈍後の皮膜を
改質して耐食性を向上させる上で有効な元素である。す
なわち、Tiとの複合添加により、加熱時に優先的に酸
化皮膜を形成し、Crの酸化損失を防止し、再不動態化
能の低下を抑制する。Al量が0.005重量%未満で
はこのような作用が十分に発揮されない。しかし、0.
3%を超えて含有すると表層の皮膜がAlを主成分とす
る皮膜となり、Crの不動態皮膜の生成をかえって阻害
する。従って、Al量の範囲は0.005〜0.3重量
%と規定した。
【0029】Moは、Crとともに鋼の耐食性を高める
ために有効な元素であり、その効果はCrが増すにつれ
て大きくなる。つまり、Moは溶液中に溶けてモリブデ
ン酸イオンとなり、これがインヒビターとして作用し
て、仮に腐食が発生した場合でも腐食の進行を抑制する
効果を有する。したがって、Moを添加することは耐食
性を向上させる上で非常に望ましい。上記のようなMo
の作用は0.3重量%以上含有させることによって顕著
となる。ただし、6.0重量%を超えるMoの含有は鋼
を硬質にし、靱性の低下を生じるため蓮板製造、製品加
工などの際に困難を伴う。このため、Moを添加する場
合は0.3〜6.0重量%の範囲とすることが望まし
い。なお、外装材用途において要求される特性を耐食性
と靭性の両面から検討した結果、Mo含有量を1.0〜
3.0重量%の範囲とすることがより望ましい。
【0030】Nbは、Tiとともに本発明対象鋼のC量
レベルのフェライト系ステンレス鋼で問題となる粒界腐
食を防止するのに有効な元素である。Tiに比べて耐孔
食性の向上効果は小さいが、NbはC,Nを固定する効
果が大きいので、溶接後の耐食性をより向上させる場合
には添加することが望ましい。ただし、1.0重量%を
超えるNbの含有は、溶接部の靭性を阻害する。Nbの
効果を十分に享受するためには0.05〜1.0重量%
の範囲で含有させることが望ましい。なお、溶接部の耐
食性と靭性の両方を特に重視する用途においては、Nb
含有量を0.1〜0.5重量%の範囲とすることがより
望ましい。
【0031】Cuは、亜硫酸ガス腐食環境下における耐
候性を改善する元素であり、高濃度の亜硫酸ガス腐食環
境下の建材へ適用する場合には添加することが望まし
い。ただし、多量のCu含有は固溶強化により材料を硬
質にし、材料の加工性を低下させる。Cuを添加する場
合は、建材用途においては0.5重量%以下の含有量に
抑えることが望ましい。
【0032】Vは、通常、Cr原料の不純物として微量
に混入するが、Ti,Nbと同様にC,Nを固定しフェ
ライト系ステンレス鋼の粒界腐食を防止する効果を有す
るので、積極的に添加しても良い。しかし、VのC,N
を固定する効果はTi,Nbに比べて小さく、またVは
高価である。従って、Vを添加する場合には0.3重量
%以下の含有量とすることが望ましい。
【0033】Coは、Niと同様にフェライト系ステン
レス鋼の靭性を改善する効果がある。通常、Ni原料の
不純物として微量に混入するが、積極的に添加しても良
い。ただし、Coは高価な元素であるので、添加する場
合は0.3重量%以下の含有量とすることが望ましい。
【0034】以上のようにして本発明によって得られる
Ti含有高Cr光輝焼鈍ステンレス鋼板は、耐食性,加
工性,および表面性状に優れているので、外装パネル,
ビルフロント,ドア・サッシ等の建具をはじめとする各
種建材用途に適している。また、建材用途に限らず、イ
オンの溶出が問題となる各種食品プラント材や、冷温水
機器用の材料としても好適に使用できる。
【0035】
【実施例】重量%で、C:0.007%,Si:0.2
2%,Mn:0.21%,P:0.027%,S:0.
001%,Ni:0.21%,Cr:28.88%,M
o:1.90%,Nb:0.15%,Ti:0.20
%,Al:0.16%,N:0.012%、残部が実質
的にFeからなる組成のフェライト系ステンレス鋼を溶
製し、通常の製造工程を経て板厚1.5mmの冷延鋼板
を作製した。この冷延鋼板から切り出した試料を用い
て、実験室の光輝焼鈍炉にて種々の条件で焼鈍実験を行
った。焼鈍後の試料について、酸化による表面着色状
況,曲げ加工性,および窒化物層生成の有無を調査し
た。窒化物層生成の有無は試料の断面の電子顕微鏡写
真、およびその断面のEPMA分析あるいはオージェ電
子分光分析の結果により判定した。
【0036】表1に、各試料についての焼鈍条件と、表
面着色状況,曲げ加工性,窒化物層生成の有無について
の調査結果を示す。露点が高いNo.1を除いて表面の
酸化による着色は生じていないが、特定の光輝焼鈍条件
において曲げ試験後に割れが発生し、その試料には表面
から深さ50μm以内の表層に窒化物層が存在してい
た。
【0037】
【表1】
【0038】図4に、表1のNo.12の光輝焼鈍後の
試料における断面の電子顕微鏡写真を示す。同様に、図
5に、表1のNo.11の光輝焼鈍後の試料における断
面の電子顕微鏡写真を示す。密着曲げで割れが発生した
No.12の試料には、表層から10μm付近まで層状
に窒化物層が観察されるが、割れが発生しなかったN
o.11の試料には層状の組織は観察されない。No.
12の表層の窒化物層をEPMAで定量分析した結果、
約60原子%の窒素と約35原子%の炭素が主な元素と
して検出され、その他S,0,Fe,Cr等が検出され
た。EPMA分析では明確なTiの化合物層は検出でき
なかったが、オージェ電子分光分析によればTiが検出
された。また、別途Ti含有量を0.34重量%に高め
た17Cr−Ti鋼においては、同様の窒化物層に針状
の組織が観察され、オージェ電子分光分析のデータを解
析した結果、この針状の組織はTiNであると推定され
た。
【0039】図4において窒化物層が存在する板厚表層
部と板厚中心部の断面のマイクロビッカース硬さを測定
した結果、中心部がHv213であるのに対し、表層部
はHv258と硬質であった。
【0040】図6に、上記図5に示したNo.11の試
料について、表面の光輝焼鈍皮膜をGDSで分析した結
果を示す。AlおよびTiが濃化した皮膜が形成されて
いることがわかる。なお、図6におけるGDS分析で
は、放電時間1秒が表面深さ約100オングストローム
に相当する。
【0041】表2に、上記実験溶製材とSUS316の
耐食性試験結果を示す。表2中の試料Aは表1のNo.
11(本発明による光輝焼鈍仕上げ(BA)材)、試料
Bは試料Aと同じ鋼における酸洗仕上げ(2D)材、試
料CはSUS316の酸洗・調質圧延仕上げ(2B)材
である。孔食電位は、20%NaCl水溶液40℃にお
ける走引速度20mV/minで求めた結果である。C
CT発銹率は、塩水噴霧(5%NaCl,15分)→乾
燥(60℃,20〜30%RH,60分)→湿潤(50
℃,90〜95%RH,180分)のサイクルを100
回繰り返した後の発銹率である。本発明による光輝焼鈍
を行った試料Aは、酸洗により不動態化させた試料Bと
同様に良好な耐食性を有している。
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】本発明者らは、Tiを含有する高Crフ
ェライト系ステンレス鋼に対して、窒化物層の生成やT
iN介在物による表面疵を防止した光輝焼鈍仕上げ材を
安定して得ることができる手段を明らかにして本発明を
完成した。本発明を適用して得た鋼板は、光輝焼鈍仕上
げ材であるにもかかわらず、酸洗仕上げ材と同等の高い
耐食性を示し、しかも軟質で加工性が良好であり、なお
かつ表面性状が良好である。このため、従来はTi含有
高Cr鋼の光輝焼鈍材の適用が困難であった建材用鏡面
研磨仕上げ材の用途においても、Ti含有高Cr鋼を適
用することが可能となった。すなわち、本発明はTi含
有高Cr鋼の新たな用途を開拓し、当該鋼の普及に寄与
するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】75容量%水素−25容量%窒素の混合ガス中
で30Cr−2Mo−Nb−Ti−Al鋼を焼鈍した場
合の、酸化着色および加工性に及ぼす焼鈍温度と露点の
影響を示すグラフである。
【図2】水素−窒素の混合ガス中で30Cr−2Mo−
Nb−Ti−Al鋼を焼鈍した場合の、酸化着色および
加工性に及ぼす窒素ガス濃度とX値の影響を示すグラフ
である。
【図3】Ti含有鋼の冷延板に発生するTiN介在物に
よる疵と、鋼中のTiおよびNの含有量の関係を示すグ
ラフである。
【図4】比較例である表1のNo.12の光輝焼鈍後の
試料における断面の金属組織を示す電子顕微鏡写真であ
る。
【図5】本発明例である表1のNo.11の光輝焼鈍後
の試料における断面の金属組織を示す電子顕微鏡写真で
ある。
【図6】本発明例である表1のNo.11の光輝焼鈍後
の試料について表面の光輝焼鈍皮膜をGDSで分析した
結果を示すグラフである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cr:16.0〜35.0重量%、T
    i:0.05〜(0.5−10×N)重量%、Al:
    0.005〜0.3重量%、Mo:0〜6.0重量%
    (無添加を含む)、Nb:0〜1.0重量%(無添加を
    含む)を含有し、Nの含有量を0.02重量%以下に制
    限したフェライト系ステンレス鋼の鋼板であって、表面
    に形成されている不動態皮膜にTi濃化層およびAl濃
    化層があり、かつ、表面から深さ50μmまでの表層に
    窒化物層が存在しないことを特徴とする耐食性、加工性
    および表面性状に優れた建材用光輝焼鈍仕上げステンレ
    ス鋼板。
  2. 【請求項2】 Cr:16.0〜35.0重量%、T
    i:0.05〜(0.5−10×N)重量%、Al:
    0.005〜0.3重量%、Mo:0〜6.0重量%
    (無添加を含む)、Nb:0〜1.0重量%(無添加を
    含む)を含有し、Nの含有量を0.02重量%以下に制
    限したフェライト系ステンレス鋼の鋼板を、雰囲気中の
    水素濃度[H2](容量%)、雰囲気中の窒素濃度
    [N2](容量%)、焼鈍温度TA(℃)、露点DP
    (℃)の間に下記(1)式および(2)式の関係が成立
    する条件で光輝焼鈍する、耐食性、加工性および表面性
    状に優れた建材用光輝焼鈍仕上げステンレス鋼板の製造
    方法。 [H2]+[N2]=100 -----(1) X=DP−0.15(TA−1000)としたとき、
    [N2]−85≦X≦−30 -----(2)
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008001945A (ja) * 2006-06-22 2008-01-10 Nippon Steel & Sumikin Stainless Steel Corp 耐発銹性と加工性に優れた光輝焼鈍仕上げフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法
JP2010229488A (ja) * 2009-03-27 2010-10-14 Nisshin Steel Co Ltd フェライト系ステンレス鋼研磨仕上げ材の製造方法
EP3121304A4 (en) * 2014-03-20 2017-04-26 JFE Steel Corporation Ferritic stainless steel and production method therefor

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