JPH09196869A - メロン果実の熟成度評価方法 - Google Patents

メロン果実の熟成度評価方法

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JPH09196869A
JPH09196869A JP923996A JP923996A JPH09196869A JP H09196869 A JPH09196869 A JP H09196869A JP 923996 A JP923996 A JP 923996A JP 923996 A JP923996 A JP 923996A JP H09196869 A JPH09196869 A JP H09196869A
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relaxation time
maturity
melon
transverse relaxation
period
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Noriyuki Kimura
則幸 木村
Masaru Iketani
大 池谷
Takashi Miki
孝史 三木
Kazunari Saito
一功 斉藤
Seiji Hayashi
征治 林
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Kobe Steel Ltd
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JAPAN MAGNET TECHNOL KK
Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 外部から果肉の熟成度を判別しがたいメロン
果実の熟成度を、或は必要により熟成度と共に糖度を、
非破壊的に且つ迅速に評価することのできる有用な方法
を提供する。 【解決手段】 核磁気共鳴法によって果汁に含まれる水
分子中の水素原子核の少なくとも横緩和時間(T2)を
測定し、この横緩和時間(T2)に基づいて果肉の熟成
度を評価する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、外部から果肉の熟
成度を判別しがたいメロン果実(以下、単に「メロン」
と略称することがある)の熟成度を、或は必要により熟
成度と共に糖度を同時に、非破壊に且つ迅速に評価する
方法に関し、殊にメロン生産業者における出荷ラインや
青果流通業者における入出荷ライン等で適用することが
でき、メロンの等級分類や熟成度判定による製品の出荷
タイミングの適正化を図ることや、製品の食べ頃に関す
る消費者に対する情報を提供する上で有用なメロンの熟
成度評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】果菜類においては、トマト,メロン,ス
イカ,カボチャ,イチゴ等の様に果実の発育が終了して
ほぼ成熟した時点で収穫されるものと、ナス,ピーマ
ン,キュウリ等の様に果実の発育途中で未熟のうちに収
穫されるものとがある。このうち成熟した時点で果実を
収穫するものでは、着色具合や軟化程度等により熟成度
を外観的に判定して収穫期や出荷時期を決めたりしてい
る場合が多いが、特にメロン等では外皮が固く、しかも
色調変化が少ないために、外部から果肉の熟成度を判別
することが困難である。
【0003】このためメロンに関して多くの出荷場で
は、階級分けを主に外観のみで行ない、食べ頃の指標と
なる熟成度については、開花後の日数を基準にして決
め、市場に送り出すのに必要な日数から逆算して収穫時
期を決めている。こうしたことから、階級分けが個人の
判別基準に依存されてしまい、果実内部の熟成度や糖度
等の個体差は見逃され易くなり、品質にバラツキが生じ
る場合が多いのが現状である。
【0004】加えてメロンのように高価な果実では、消
費者は単品買いをすることが多く、商品に対するイメー
ジはたまたま購入した商品で決定されてしまう傾向にあ
る。もし未熟若しくは過熟等の不具合品を購入してしま
った場合には、それがたとえ確率的に極めて低いもので
あっても、商品全体のイメージは損なわれてしまい、生
産者に対する信用をなくすばかりか、その商品は販売競
争力をも失ってしまう。特に近年のように、生産者が独
自のブランドをつけて、商品に付加価値をつけることが
好まれている状況では、商品のイメージ悪化は生産者に
決定的なダメージを与えかねない。こうした事情から、
近年では、各種測定技術を応用した果実の各種評価方法
が検討されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】これまで検討されてき
た方法には大きく分けて、振動伝達特性を利用する方法
と、光学的手法を用いるものがある。前者の方法は、従
来人が掌で果実の外皮を叩いて評価していた方法を機械
に代替えさせようとするものであり、果実の熟成度に伴
って果実の硬さが変化し、振動に対する共鳴周波数が変
化する性質を利用したものである。しかしながらこの方
法では、果実に衝撃を与えるものであるため、商品を傷
めやすく、しかも判別に音波の共鳴を利用するために、
果実の形状や大きさ、果皮の厚さ等が避けがたい誤差要
因として含まれており、品種や形状の違いがある場合に
適用することが難しいという欠点がある。また硬度とい
う一側面のみしか捕えていないため、メロンの様に糖度
と熟成度を別々に判別する必要のある果実では、総合的
な熟成度を評価することが不可能である。
【0006】一方後者の方法は、主に近赤外線の吸収ス
ペクトルが、果実内に含まれる蛋白分子や糖分子中に含
まれるO−H鎖,N−H鎖,C−H鎖等の総量を反映し
ているという原理を利用するものである。しかしながら
この方法では、原理的に光の透過量が問題となり、ミカ
ン,リンゴ,桃等の外皮が比較的薄い果実や、果実径の
小さなものには適用できるが、メロンの様に果皮が厚
く、しかも直径の大きい果実には適用できないという欠
点がある。更にこの方法では、測定量が分子量のみに依
存するものであるため、糖度の評価には適用できても、
軟化の度合は捕らえることができず、従って熟成度を評
価することは基本的に不可能である。
【0007】また上記した各種方法で得られる評価値
は、果実全体の平均値を取り出したものであり、実際に
食されない果皮部分をも測定値に含めてしまうことにな
るため、この評価値が全く無意味なものになる恐れもあ
る。
【0008】ところで本発明者らは、かねてより核磁気
共鳴(以下、「NMR」と略称することがある)法を利
用して果実を評価する方法について研究を重ねてきた。
そしてその研究の一環として、例えば特開平7−198
635号の様な技術も提案している。この技術は、NM
R法によって、果実に含まれる水分子中の水素原子の横
緩和時間(T2)を測定し、この横緩和時間(T2)に
基づいて果実中の糖度を評価するものである。しかしな
がらこの方法は、果実の糖度については正確に評価でき
たのであるが、食べ頃を判定する上で重要な熟成度に関
しては何らの情報も与えることができないものであっ
た。
【0009】本発明はこうした状況の下になされたもの
であって、その目的は、外部から果肉の熟成度を判定で
きないメロン果実の熟成度を、或は必要によって熟成度
と共に糖度を、非破壊的に且つ迅速に評価することので
きる有用な方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成し得た本
発明とは、核磁気共鳴法によって果汁に含まれる水分子
中の水素原子核の少なくとも横緩和時間(T2)を測定
し、この横緩和時間(T2)に基づいて果肉の熟成度を
評価する点に要旨を有するメロン果実の熟成度評価方法
である。
【0011】上記本発明方法において、具体的には、横
緩和時間(T2)の測定領域を果実の内果皮より半径方
向外側へ1cm以内の中果皮最内層部とすることが好ま
しい。また維管束帯より半径方向内側へ1cm以内の中
果皮最外層部で縦緩和時間(T1)を測定し、この縦緩
和時間(T1)に基づいて熟成度を評価することもでき
る。
【0012】上記いずれの構成を採用するにしても、横
緩和時間(T2)測定位置と同じ位置において縦緩和時
間(T1)をも測定すれば、T1およびT2を両軸とす
る2次元平面内で、得られた2つの緩和時間を座標とす
る点の位置に基づいて、熟成度と共に糖度を同時に評価
することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明者らは前記課題を解決する
ため、メロン(静岡県産: cantalope)の果汁に含まれ
る水分子の水素原子核について、NMR法によって、縦
緩和時間(T1)および横緩和時間(T2)の夫々と、
光学的な方法によって測定される果汁の糖度や、機械的
な方法によって測定される果肉硬度の関係等について様
々な角度から検討した。
【0014】そしてまず発明者らは、適熟期にあるメロ
ンについて、得られた縦緩和時間(T1)および横緩和
時間(T2)と、光学式糖度計による糖度指示値との関
係を重回帰分析した。その結果、縦緩和時間(T1)お
よび横緩和時間(T2)を用いて、下記(1)式によっ
て糖度が予測できることがわかった。 糖度=30.514−0.00871 ・T1−0.03302 ・T2 …(1) 予測された糖度と観測された糖度の関係を図1に示す。
また上記予測式(1)の適用範囲を調べた結果、未熟期
のメロンに対しては、上記3つの定数がそのままでもよ
く成り立ち、完熟期以降のメロンでも定数を変化させる
だけで適用できることもわかった。
【0015】次に本発明者らは、様々な熟成度(未熟
期、適熟期I,II、完熟期および過熟期)にあるメロン
に関して、表皮からの深さの異なる測定領域毎に夫々2
2箇所で、縦緩和時間(T1)および横緩和時間(T
2)を測定し、これらを両軸とする2次元平面上に対応
する点をプロットし、縦緩和時間(T1)や横緩和時間
(T2)と熟成度の関係について調査した。このときの
縦緩和時間(T1)と横緩和時間(T2)の測定領域に
ついて、図面を用いて説明する。即ち、典型的なメロン
の断面を示した図2(模式図)において、果実の内果皮
より半径方向外側へ1cm以内の中果皮最内層部(以
下、単に「最内層」と呼ぶ)、維管束帯より半径方向内
側へ1cm以内の中果皮最外層部(以下、単に「最外
層」と呼ぶ)およびこれらの中間に相当する中果皮中間
層部(以下、単に「中間層」と呼ぶ)の3つの深さ領域
について測定した。
【0016】その結果、図3〜7に示すグラフが得られ
た。図3は、未熟期にあるメロンから得られた縦緩和時
間(T1)と横緩和時間(T2)の値を示すグラフであ
る。図4は、適熟期にあるメロンから得られた縦緩和時
間(T1)と横緩和時間(T2)の値を示すグラフであ
る。図5は、図4に示した適熟期Iから多少進行した適
熟期IIにあるメロンから得られた縦緩和時間(T1)と
横緩和時間(T2)の値を示すグラフである。図6は、
完熟期にあるメロンから得られた縦緩和時間(T1)と
横緩和時間(T2)の値を示すグラフである。図7は、
過熟期にあるメロンから得られた縦緩和時間(T1)と
横緩和時間(T2)の値を示すグラフである。
【0017】上記図3〜7を総括して検討した結果、以
下〜に示すのような結論に到り、本発明を完成し
た。 最内層の横緩和時間(T2)が200msecを越えない
メロンは未熟期〜適熟期にあり(図3〜5)、最内層の
横緩和時間(T2)が200msecを越えるメロンは完熟
〜過熟期にある(図6,7)。従って、最内層の横緩和
時間(T2)を測定すれば、これに基づいてメロンの熟
成度が評価できる。 上記において未熟期〜適熟期にあると評価されたメ
ロンにおいては、中間層と内層部の測定点は、メロンが
熟すにつれて糖度一定の線に沿って縦緩和時間(T1)
が減少し、且つ横緩和時間(T2)が増加する方向に移
動する(図3→図4→図5)。従って、糖度一定の線に
沿って少なくとも内層部の横緩和時間(T2)の位置を
調べることにより、メロンがあと何日で適熟期(食べ
頃)に到るか、適熟期を何日過ぎているかが評価でき
る。
【0018】上記において完熟〜過熟期にあると評
価されたメロンにおいては、最外層の縦緩和時間(T
1)が1600msecを越えるものは完熟期(図6)、1
500msecを下回るものは過熟期にある(図7)。従っ
て、最内層の横緩和時間(T2)と共に最外層の縦緩和
時間(T1)を測定することによって、上記上記にお
いてメロンが完熟〜過熟期にあると評価された後、更に
メロンが完熟期にあるのか過熟期にあるのかを評価する
ことができうる。 いずれにしてもメロンの任意の部分からNMR法によ
って縦緩和時間(T1)と横緩和時間(T2)を測定し、
これらを両軸とする2次元平面内で、得られた2つの緩
和時間を座標とする点をプロットすれば、この点の位置
に基づいて、各測定点における果肉の熟成度と共に糖度
を同時に評価することができる(図3〜7)。
【0019】上記図3〜7の結果をまとめて、メロン内
の各測定領域から得られた縦緩和時間(T1)と横緩和
時間(T2)の位置がメロンの熟成度とともに変化する
様子を示すと図8の如くになる。
【0020】本発明によって上記のような効果が得られ
た理由はその全てを解明した訳ではないが、おそらく次
のような理由によるものと考えられた。メロン果汁に含
まれる水分子は熱的な運動に起因する回転運動や振動を
行なっているのであるが、この水分子の回転運動の相関
時間τc と、水分子内の水素原子核のNMR緩和時間T
1,T2の間には、図9および下記(2)〜(4)に示
す関係があることは、NMR現象のもつ一般的な性質と
してよく知られたところである(例えば「医学・生物学
のためのNMR(生体系への応用)」、D.G.Gardian
著、西村書店、第6章)。そしてメロン果汁に含まれる
水分子中の水素原子核のスピンにおいても当然この関係
が成り立っていると考えられる。 1/T1=α・{[(τc )/(1+ω2 ・τc 2 )] +[(4τc )/(1+4ω2 ・τc 2 )]} …(2) 1/T2=(1/2)α・{(3τc )+[(5τc )/(1+ω2 ・τc 2 )] +[(2τc )/(1+4ω2 ・τc 2 )] …(3)
【0021】
【数1】
【0022】ここで相関時間τc は、水分子の回転や振
動の激しさに反比例する量であるから、前記図9は水分
子が激しく運動するほど横緩和時間(T2)は大きくな
り、縦緩和時間(T1)は運動の激しさに応じて増減す
ることを意味している。
【0023】一般に、細胞中の水は細胞内器官や細胞壁
の近傍に束縛され、純粋な水中に分子が存在する場合の
様に自由ではないので、ゆっくりとした運動をしてお
り、図9における相関時間τc の値は縦緩和時間(T
1)が極小値をとる位置よりさらに値の大きな領域(図
9の領域I)にあると考えられる。そして果肉の熟成度
が進行するということは果肉細胞壁の破壊が起こり、細
胞間空間が大きくなって硬度が低下することを意味して
いる。従って、熟成度が進行するにつれて、細胞壁等に
よる束縛が緩和されることになり、その結果、果汁内の
水分子はより自由に運動できるようになって、運動の相
関時間τc がより小さな領域に移動するものと考えられ
る。即ち、未熟期から適熟期に到るまでは、τc が図9
の領域Iにあり、完熟期で領域IIに到り、続いて過熟期
では領域III に到るものと考えられる。
【0024】尚本発明が完成に到るまでの過程で使用し
た光学的糖度測定方法とは、果汁の光学的屈折率から糖
度の濃度を知る方法であり、日本農業規格(JAS)に
も天然果汁の糖度測定法として定められているものであ
る。また夫々のメロンの熟成度は機械的方法により評価
した。具体的には、NMR緩和時間測定部位から果肉を
内径8.8mmのパイプで高さ10mmの円柱上にくり
抜き、パイプ内で軸方向に5mm圧縮した時点での果肉
からの反発力(硬度)を測定して、この値の小さいもの
ほど熟成が進行しているとし、適熟期にあるものの値と
比較している。また適熟期の硬度には、開花後55日目
のメロンが示す値の平均値を採用した。
【0025】以下、本発明を実施例によって更に詳細に
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することは
いずれも本発明の技術範囲に含まれるものである。
【0026】
【実施例】図10は本発明を実施するために構成される
MRI装置例のブロック図、図11は該装置を適用した
ときのタイミングチャートである。尚ここではボアの中
心軸をz軸、この直線に直交する鉛直上向きの方向をy
軸、同じく水平方向をx軸に選んで説明を進める。
【0027】図10において、1は超電導磁石によって
構成される静磁場を形成する主コイル、2はz軸方向、
y軸方向、x軸方向の夫々の方向に磁場勾配を形成する
為の3つの勾配磁場コイル、3は90°パルスの送信お
よびスピンエコー信号の検出を行なうプローブコイルを
夫々示す。また前記プローブコイル3に関連して、信号
の送受を効率よく行なうためマッチングネットワーク
4、微小なスピンエコー信号を増幅するためのプリアン
プ5、大振幅の90°パルスが入るのを防ぐためのデュ
プレクサ6が夫々設けられている。受信機7ではプリア
ンプ5からの信号を更に増幅して位相検波を行なって、
制御信号処理用コンピュータ8に送出する。前記3つの
勾配磁場コイル2は、3台の勾配増幅器9を介して前記
制御信号処理用コンピュータ8によって制御され、図1
1に示したタイミングチャートに従って所定の磁場勾配
を発生する。送信用増幅器10、シンセサイザー11、
変調器12および波形発生回路13は、選択性90°パ
ルスを作るためのものである。
【0028】本発明者らは、上記MRI装置を用い、前
記主コイル1のボアのほぼ中央にメロン15を置き、縦
緩和時間(T1)および横緩和時間(T2)を測定し
た。このとき、メロン15の内部の評価領域を限定する
ために、STEAM(Stimulated Echo Acquisition Mo
de)法と呼ばれる方法を採用した。手順は下記に示す通
りである。
【0029】メロン15はz軸方向の静磁場中に置かれ
ているので、メロン15の果汁中の水素原子核スピンが
形成するマクロな磁気モーメントは、初めはz軸に平行
な方向の軸の周りに歳差運動している。まずz軸方向の
スライスを限定するために、z軸方向の勾配磁場を印加
しながら、制御信号処理用コンピュータ8の指令を受け
て、シンセサイザー11、変調器12、波形発生回路1
3および送信用増幅器10によって作られる選択性90
°パルスを印加する。この操作で、z軸に直交する特定
スライス内のスピンのみが90°向きを変える。続いて
同様の操作を、x軸方向およびy軸方向の夫々について
も行えば、3つの直交するスライスが重なる立方体の領
域のスピンのみが270°回転し、3つのうち2つのス
ライスが重なる領域のスピンは180°回転することに
なる。
【0030】こうして3つの軸に対する選択操作を行っ
た後、時間Te/2を待てば、スティミュレイティド・
エコー(Stimulated Echo )と呼ばれるエコー信号を得
ることができる。このとき180°回転した領域では、
横磁化が存在しないので、理想的には磁気共鳴信号は発
生しないことになる。従って、外部で観測された前記ス
ティミュレイティド・エコー信号は、3つの直交するス
ライスが重なる立方体の領域からのもののみであり、こ
の領域を熟成度や糖度を評価したい領域に一致するよう
スライス選択を行なえば、特定領域のみの評価を行なう
ことができる。但し、実際には2つの90°パルスの時
間間隔や、180°パルスの不完全性により、スティミ
ュレイティド・エコー以外のエコー信号が多少発生する
ため、これを防ぐために図11における時間Te/2,
Tmの部分に、任意強度の磁場勾配を加えた。尚上記シ
ーケンスで得られるスティミュレイティド・エコー信号
の強度をIとすると、Iは下記(5)式の如く記載でき
る。 I∝exp(−Te/T2)*exp(−Tm/T1) *[1−exp(−Tr/T1)] …(5)
【0031】本発明者らは、メロン内の各測定点におい
て、x,y,z軸の夫々の方向に、10×10×10
(mm)の領域を選択し、時間Tr,Teを変えながら
スティミュレイティド・エコー信号の取得を行ない、上
記(5)式より、評価領域の縦緩和時間(T1)および
横緩和時間(T2)を測定した。
【0032】上記の方法で様々なメロンに関して熟成度
の判定を行ない、未熟期、適熟期、完熟期、過熟期の4
段階に分け、測定後に光学的および機械的方法で判定し
た結果と照らし合わせたところ、熟成度の正当率は85
%であり、糖度の相関係数も0.9を越えていた。
【0033】また測定の速度については、Tr,Teの
組合せを3通りとすることによって、1点あたり6秒と
なり、メロン選果装置として十分実用的な速度が得られ
ていた。 (Tr,Te)=(1500,44):(1500,60):(300
0,44)(単位:msec)
【0034】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、メ
ロンの少なくとも熟成度を非破壊的に且つ迅速に評価で
きる方法が実現できた。この方法は、メロン生産業者に
おける出荷ラインや青果物流業者における入出荷ライン
等で適用されると、メロンの等級分類や熟成度判定によ
る製品の出荷タイミングの適正化を図ることができ、消
費者に商品の食べ頃に関する情報を提供する上で極めて
有用であり、その効果が大いに期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】適熟期にあるメロンについて式(1)から推測
された糖度と光学式糖度計を用いて測定された糖度の関
係を示すグラフである。
【図2】典型的なメロンの断面を示した模式図である。
【図3】未熟期にあるメロンから得られた縦緩和時間
(T1)と横緩和時間(T2)の値を示すグラフであ
る。
【図4】適熟期Iにあるメロンから得られた縦緩和時間
(T1)と横緩和時間(T2)の値を示すグラフであ
る。
【図5】適熟期IIにあるメロンから得られた縦緩和時間
(T1)と横緩和時間(T2)の値を示すグラフであ
る。
【図6】完熟期にあるメロンから得られた縦緩和時間
(T1)と横緩和時間(T2)の値を示すグラフであ
る。
【図7】過熟期にあるメロンから得られた縦緩和時間
(T1)と横緩和時間(T2)の値を示すグラフであ
る。
【図8】メロン内の各測定領域から得られた縦緩和時間
(T1)と横緩和時間(T2)の位置がメロンの熟成度
とともに変化する様子を示すグラフである。
【図9】水分子の回転運動の相関時間τc と、水分子内
の水素原子核のNMR緩和時間T1,T2との関係を示
すグラフである。
【図10】本発明方法を実施するために構成されるMR
I装置例のブロック図である。
【図11】図10に示した装置を適用したときのタイミ
ングチャートである。
【符号の説明】
1 主コイル 2 勾配磁場コイル 3 プローブコイル 4 マッチングネットワーク 5 プリアンプ 6 デュプレクサ 7 受信機 8 制御信号処理用コンピュータ 9 勾配増幅器 10 送信用増幅器 11 シンセサイザー 12 変調器 13 波形発生回路 15 メロン
フロントページの続き (72)発明者 三木 孝史 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 斉藤 一功 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 林 征治 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 核磁気共鳴法によって果汁に含まれる水
    分子中の水素原子核の少なくとも横緩和時間(T2)を
    測定し、この横緩和時間(T2)に基づいて果肉の熟成
    度を評価することを特徴とするメロン果実の熟成度評価
    方法。
  2. 【請求項2】 横緩和時間(T2)の測定領域を果実の
    内果皮より半径方向外側へ1cm以内の中果皮最内層部
    とする請求項1に記載の熟成度評価方法。
  3. 【請求項3】 維管束帯より半径方向内側へ1cm以内
    の中果皮最外層部で縦緩和時間(T1)を測定し、この
    縦緩和時間(T1)に基づいて熟成度を評価する請求項
    1または2に記載の熟成度評価方法。
  4. 【請求項4】 横緩和時間(T2)測定位置と同じ位置
    において縦緩和時間(T1)をも測定し、T1、T2を
    両軸とする2次元平面内で、得られた2つの緩和時間を
    座標とする点の位置に基づいて、熟成度と共に糖度を同
    時に評価する請求項1〜3のいずれかに記載の熟成度評
    価方法。
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