JPH09140292A - トランスジェニック動物の作成方法 - Google Patents

トランスジェニック動物の作成方法

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JPH09140292A
JPH09140292A JP7326533A JP32653395A JPH09140292A JP H09140292 A JPH09140292 A JP H09140292A JP 7326533 A JP7326533 A JP 7326533A JP 32653395 A JP32653395 A JP 32653395A JP H09140292 A JPH09140292 A JP H09140292A
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】外来遺伝子を導入した非増殖型組換えアデ
ノウイルスを卵膜を除去した動物受精卵に感染させた
後、この胚を借り親動物の子宮に移植することを特徴と
するトランスジェニック動物の作成方法。 【効果】本発明の方法によって簡便かつ効率的にトラン
スジェニック動物を作成することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は非増殖型組換えアデ
ノウイルスを用いて外来遺伝子をゲノム内に導入して得
られるトランスジェニック動物、および該トランスジェ
ニック動物の作成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】トランスジェニック動物の作成は、従来
より困難であり、目的とするトランスジェニック動物の
作成が可能な施設は極めて限られているのが現状であ
る。従って、トランスジェニック動物の簡便かつ効率的
な作成方法の開発が強く望まれている。一方、本発明者
らは、非増殖(E1A欠損)型の組換えアデノウイルス
が宿主ゲノム中にほとんど組み込まれないこと(Rosenf
eld et al., Science 252, 431-434 (1991)) から、遺
伝子制御の研究や体細胞遺伝子治療の開発のための遺伝
子発現に利用されてきた(Akli et al., Nat. Genet.
3, 224-228 (1993)) ことに着目して種々研究を重ね、
LacZ遺伝子を含む非増殖型アデノウイルスが、前核
期の無卵膜マウス卵子に感染することが可能であり、悪
影響なしに卵割期の着床前胚において発現することを明
らかにした(Tsukui et al., J. Mamm. Ova.Res., 10
(1), (1993,4) 150-151) 。しかし、この方法によって
も発現は一過性であり、安定なトランスジェニック動物
を作成することには成功していなかった(Tsukui et a
l., Mol. Reprod. Dev. 42 , 291-297 (1995)) 。
【0003 】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の第1
の目的は、外来遺伝子をゲノムに導入されたトランスジ
ェニック動物の簡便かつ効率的な作成方法を提供するこ
とにある。さらに本発明の第2の目的は、本発明の方法
によって作成されたトランスジェニック動物を提供する
ことにある。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記課題を
解決するために鋭意検討した結果、非増殖型組換えアデ
ノウイルスが動物の卵子のゲノム中に組み込まれ、そし
て組み込まれた該アデノウイルスDNAが動物の生殖細
胞系に移行すること、すなわち非増殖型組換えアデノウ
イルスを用いることによりトランスジェニック動物を作
成し得ることを発見した。本発明はかかる発見に基づき
さらに研究を重ねて完成するに至ったものである。
【0004】即ち、本発明の要旨は、(1) 外来遺伝
子を導入した非増殖型組換えアデノウイルスを卵膜を除
去した動物受精卵に感染させた後、この胚を借り親動物
の子宮に移植することを特徴とするトランスジェニック
動物の作成方法、(2) 外来遺伝子が、生理活性タン
パク、抗体、マーカー遺伝子としての発色タンパクまた
はマーカー遺伝子としての薬剤耐性タンパクをコードす
る塩基配列を有するヌクレオチドである前記(1)記載
のトランスジェニック動物の作成方法、(3) 非増殖
型組換えアデノウイルスを卵膜を除去した動物受精卵に
感染させる場合の投与量が5×107 〜108 pfu/
mlであることを特徴とする前記(1)または(2)記
載のトランスジェニック動物の作成方法、(4) 非増
殖型組換えアデノウイルスが、CAGプロモーター支配
下に発現するものである前記(1)〜(3)いずれかに
記載のトランスジェニック動物の作成方法、(5) 非
増殖型組換えアデノウイルスが、核移行シグナルを含む
ものである前記(1)〜(4)いずれかに記載のトラン
スジェニック動物の作成方法、(6) 外来遺伝子を導
入した非増殖型組換えアデノウイルスの1コピーだけが
動物受精卵のゲノムに組み込まれることを特徴とする前
記(1)〜(5)いずれかに記載のトランスジェニック
動物の作成方法、並びに(7) 外来遺伝子を導入した
非増殖型組換えアデノウイルスを卵膜を除去した動物受
精卵に感染させた後、この胚を借り親動物の子宮に移植
することによって作成されたトランスジェニック動物、
に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。本発明に用いられる非増殖型アデノウイルスは、
鐘ケ江 裕美、原田 志津子および斎藤 泉「実験医学
別冊」バイオマニュアルシリーズ4「遺伝子導入と発現
・解析法」43〜58頁「アデノウイルスを用いた遺伝
子導入」1994年に記載の方法によって調製すること
ができ、また外来遺伝子を導入した非増殖型アデノウイ
ルスを調製することができる。
【0006】本発明に用いられる非増殖型アデノウイル
スは、幾つかの特徴を有する。すなわち、アデノウイル
スは、第1に宿主の範囲がきわめて広く、第2に組み換
え遺伝子を非分裂細胞中に導入させることが可能であ
る。
【0007】非増殖型組換えアデノウイルスは、かかる
性質を有することから、前核期における動物受精卵に対
するベクターとして期待される。しかしながら、本発明
者らの研究では、非増殖型アデノウイルスベクターの1
種であるSRαプロモーターの制御下にある大腸菌La
cZ遺伝子を含むAdex4SRLacZLを使用して前核期におけ
る動物受精卵に対する遺伝子導入を試みたが、感染卵子
から発育した13.5日胎仔において発現を検出するこ
とができなかった(Tsukui, T., et al. Mol.Reprod. D
ev. 42, 291-297 (1995))。
【0008】本発明においては、動物細胞に感染した後
外来遺伝子の発現を可能とするため、アデノウイルスベ
クターにプロモーターを導入する必要があるが、かかる
プロモーターとしては従来アデノウイルスを用いる遺伝
子導入に使用されてきたものはいずれも使用可能であ
り、特にCAGプロモーター(Araki et al., Proc. Na
tl. Acad. Sci. U.S.A. 92, 160-164 (1995)) が好適に
用いられる。
【0009】本発明において、外来遺伝子の発現産物が
細胞質に蓄積されることによる毒性が懸念される場合
は、外来遺伝子とともに核移行シグナル配列を組み込ん
でもよい。核移行シグナル配列はアデノウイルスベクタ
ーにより感染細胞の核内で発現され核外に分泌された外
来遺伝子産物が再び核内に移行することを促進する(Da
niel Kalderon et al., Cell 39 , 499-509 (1984)) 。
【0010】本発明者らは、ウイルス組み込みの結果を
明確にするために、以下には1例として、新たなベクタ
ーであるAxCANLacZを用いる。このAxCAN
LacZは、外来遺伝子(LacZ)により発現するβ
−ガラクトシダーゼ(β−gal)活性の同定のため
に、トランスジェニックマウスで普遍的発現に用いられ
るCAGプロモーターの支配下にある核標的化されたL
acZ遺伝子を含む。このベクターの調製は以下のよう
にして行うことができる〔Kanegae,Y. et al., Nucleic
Acids Research, 1995, vol. 23, 3816-3821 〕。例え
ば、Kanegae らの方法により、アデノウイルスの複製に
必要なE1A蛋白質を産生させず、外来遺伝子を発現す
るように設計し、また細胞および組織での発現を確認で
きるように、CAGプロモーターの支配下に大腸菌由来
のLacZ遺伝子を挿入することにより調製できる。
【0011】本発明に用いられる外来遺伝子としては、
特に限定されるものではなく、その有用性の観点から、
生理活性タンパク、抗体、マーカー遺伝子としての発色
タンパク、マーカー遺伝子としての薬剤耐性タンパク等
をコードする塩基配列を有するヌクレオチドが挙げられ
る。生理活性タンパクとしては、サイトカイン類(例え
ば、インターロイキン−1〜15、インターフェロン−
α,βもしくはγ、腫瘍壊死因子−αもしくはβ、顆粒
球コロニー刺激因子、エリスロポエチン、成長ホルモ
ン、インシュリン、インシュリン様成長ホルモン等)、
神経栄養因子類、α−1アンチトリプシン、血液凝固第
8因子、血液凝固第9因子、α−ガラクトシダーゼ等が
挙げられる。マーカー遺伝子としての発色タンパクとし
ては、β−ガラクトシダーゼ、GFP(Green fluoresc
ent protein)等が挙げられる。マーカー遺伝子としての
薬剤耐性タンパクとしては、アミノグリコシドフォスフ
ォトランスフェラーゼ等が挙げられる。
【0012】本発明のトランスジェニック動物を作成す
る方法は、以下のようにして行うことができる。本発明
において、トランスジェニック動物とは、生殖系に導入
された外来遺伝子を含有するヒト以外の哺乳動物をい
う。このような動物としてはマウス、ラット、ウサギ、
モルモット、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ等が挙げられ
る。
【0013】以下にマウスを例として、トランスジェニ
ック動物の典型的な作成方法を説明する。まず、雌マウ
スにPMSG(ウマ絨毛性性腺刺激ホルモン)、hCG
(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)を腹腔内に注射して過
排卵を誘起する。精子提供用の雄には同系統の雄マウス
を用いる。培養およびウイルスとの反応は、すべて5%
CO2 、95%空気、37℃の条件で行う。hCGの投
与後16時間に、卵丘細胞に包まれた未受精卵をTYH
( マウス体外受精用培地 (Toyoda et al., Jpn. J. Ani
m. Reprod. 16 , 147-151 (1971)))中に採取し、予めT
YHで2時間前培養を行った精子を最終濃度が150精
子/μLとなるように加えて体外受精を行う。受精して
から3〜6時間後に受精卵をWM・EDTA(受精卵発
生用培地(Hoshi et al., Jpn. J. Zootech. Sci. 56,
931-937 (1985)))に移し、ヒアルロニダーゼおよび酸性
タイロード液(pH2.5)で卵丘細胞および卵膜を除
去する。次に、AxCANLacZ等の、外来遺伝子の
導入された非増殖型アデノウイルスを106 〜108
fu/ml、好ましくは5×107 〜108 pfu/m
lの投与量で、該ウイルスとの反応時間を2〜8時間と
してウイルス感染を行う。
【0014】ウイルス感染後の胚を借り親マウスの子宮
に移植する。
【0015】得られた産仔のゲノムに外来遺伝子の導入
された非増殖型アデノウイルスが伝達されたか否かを確
認する。
【0016】次に、以上のようにして得られたトランス
ジェニックマウスと野生型のマウスとを交配して得られ
る子孫のF1において、該トランスジーンが安定に伝達
され、組換え非増殖型アデノウイルス由来の外来遺伝子
が発現していることを確認する。
【0017】以上のようにして得られるトランスジェニ
ックマウスについては、以下のような性質が観察され
る。後述の実施例において示すように、3匹のマウスす
べてにおいて、1コピーの組み込み、すなわち完全なア
デノウイルスDNAが観察される(図1)。これに反し
て、卵子の前核中にDNAをマイクロインジェクション
した場合には、トランスジェニック動物への組み込み
は、縦列の頭一尾方式で配列された多数のトランスジー
ンのクラスターとなって生ずる。これらの現象は、アデ
ノウイルスの末端蛋白質が、裸のDNA分子の場合と異
なり、マウス卵子中でのウイルスゲノムの縦列形成を阻
止しているのかも知れない。
【0018】メンデルの法則に従った安定な生殖細胞系
遺伝が認められるが、この事実は、アデノウイルスゲノ
ムの組み込みが1−細胞期におけるDNA合成の期間前
または期間中に起こったことを示す。前核中へのDNA
のマイクロジェクションの場合には、1−細胞期の受精
卵への遺伝子の組み込みが約70%の頻度で起こること
が報告されている(Bishop et al., Mol. Biol. Med.,
6 , 283-298 (1989))。レトロウイルスベクターの他の
場合は、分裂中の胚(好ましくは4−または8−細胞
期)に感染するときは(Rubenstein et al., Proc. Nat
l. Acad. Sci. U.S.A. 83, 366-368 (1986))、前ウイル
ス組み込み(proviral integration) が1個以上の細胞
中で独立に起こり得る。従って、生殖細胞系遺伝率は、
モザイク形成により(Jaenisch et al., Cell 24, 519-
529 (1981)) 、一般的に低い。
【0019】F1子孫へのアデノウイルストランスジー
ンの遺伝の場合は、転位は一切示されない(図3)。こ
れに反して、ウイルス複製と宿主細胞に対する細胞毒性
の誘導を支配するE1A遺伝子を含む野生型のアデノウ
イルスの場合の組み込み事象は、培養された細胞系中で
多くの転位が起こるようにみえる(Dorsch, M. K. eta
l., J. Virol. 34, 305-314 (1980)、Visser, L. et a
l., J. Virol. 39, 684-693 (1981))。一つの可能性
は、細胞毒性をもつE1A遺伝子の欠損により、組み込
まれたアデノウイルスDNAが、マウスの1−細胞から
生殖細胞系へゲノム中で安定な状態で維持されるという
ものである。
【0020】
【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説
明するが、本発明はこれらによって制限されるものでは
ない。なお、実施例中のコスミド、DNA、各種酵素、
大腸菌、培養細胞などを取り扱う諸操作およびサザン分
析は、特に断らない限り、「Molecular Cloning A Labo
ratory Manual. T. Maniatisら編、第 2版 (1989) ,Co
ld Spring Harbor Laboratory 」に記載の方法に準じて
行った。
【0021】実施例1(組換えアデノウイルスゲノムの
卵子前核における転写および翻訳の確認) まず、卵膜の存在または非存在の状態で、前核期にある
1−細胞卵子に感染するAxCANLacZの能力を試
験した。マウスの1−細胞卵を卵膜を有するまま又は卵
膜を除去したのち、1×108pfu/mlのAxCA
NLacZ(核移行シグナルを有するアデノウイルス)
で感染させた。感染させた卵子を培養し、感染24時間
後の2−細胞期で染色した。β−ガラクトシダーゼ活性
は、組織化学的(X−Gal)染色(Beddingtonet a
l., Development 106, 37-46 (1989)) により検出し
た。その結果、、β−gal活性は、感染卵から発育し
た2−細胞胚(ウイルス感染24時間後)の核中に、明
確に局在していることが分かった。この結果は、組換え
アデノウイルスゲノムが卵子の前核中に移行し、そして
感染後24時間以内に転写/翻訳されることを示した。
他方、卵膜の存在下では、β−gal活性は検出されな
かった。従って、卵膜の除去は、感染のための前提条件
である。
【0022】実施例2(組換えアデノウイルスゲノムの
卵子ゲノムへの組み込みの確認) アデノウイルスゲノムがマウス卵子ゲノム中に組み込ま
れたか否かを明らかにするために、blastocyst(培養4
日後)における感染胚を借り親の子宮に移植した。27
匹の生まれたマウスの尾静脈血から単離したゲノムDN
Aを制限酵素EcoRVおよびHindIII で消化し
た。サザンブロット分析を行うと、図1に示すように、
3匹のものはアデノウイルスDNAを含んでいた。2〜
4レーンはそれぞれ、ウイルスの内部断片と同定され
た。そして、宿主ゲノムへのアデノウイルスゲノムの組
み込みにより生じたウイルス−細胞DNAの連結断片と
推定されたものに星印を付した。3匹のマウス(ACL
9.1 、9.3 および9.23)はすべて、1個のアデノウイル
スゲノムを保持し、以上の分析により、アデノウイルス
ゲノムはマウスゲノム中にランダムに組み込まれたこと
が分かった。
【0023】<実験方法>マウスのゲノムDNA(10
μg)をEcoRVまたはHindIII で消化し、1.
0%アガロースゲルで電気泳動し、ナイロン膜ハイボン
ド−N(アマシャム社製)上にブロットし、そしてラン
ダムにジゴキシゲニン標識されたプローブにハイブリダ
イズさせ、サザン分析を行った。
【0024】実施例3(トランスジェニック動物中での
外来遺伝子LacZの発現) さらに、本発明者らは、この3匹のトランスジェニック
動物中での外来遺伝子LacZの発現を試験した。耳の
パンチングにより採取した組織片を常法によりX−ga
l染色法(Beddington et al., Development 106, 37-4
6 (1989)) で染色した。3匹のトランスジェニック動物
のうち2匹(ACL9.3 と9.23)において実際にβ−g
al活性が検出された。しかし他の1匹(ACL9.1)で
は検出されなかった。
【0025】実施例4(子孫F1への組換えアデノウイ
ルスの伝達) アデノウイルスDNAが子孫F1に伝達したか否かを確
かめるために、3匹のトランスジェニックマウスをIC
R系マウスと自然交配させた。トランスジェニックマウ
スの1匹(図1、ACL9.23)に由来した妊娠13.5
日目の10匹のF1の胎盤から単離したゲノムDNAを
HindIII で消化した。サザン分析により、アデノウ
イルストランスジーン(transgene)はF1子孫10匹の
中の6匹に伝達したことが分かった(図3)。これらの
断片パターン(図3、レーン1、3、4、7、8および
10)は、親のトランスジェニックマウスの断片パター
ン(図3、レーンACL9.23)と一致した。他の2
匹のトランスジェニックマウス(ACL9.1 およびAC
L9.3)のウイルストランスジーンも子孫F1に伝達した
(それぞれ、21匹中の11匹および13匹中の7
匹)。したがって、アデノウイルストランスジーンは、
F1子孫に安定に遺伝することが確認されたといえる。
アデノウイルストランスジーンの生殖細胞系への伝達は
メンデルの法則に従っており、転位は全く認められなか
った(図3)。
【0026】実施例5(アデノウイルストランスジーン
の発現の確認) F1子孫でのアデノウイルストランスジーンの発現をさ
らに検討するために、同じサンプル(図3)由来の10
匹のF1胎仔についてβ−gal活性の染色を行った。
全面的かつ強烈な暗青色の染色が10匹のF1胎仔中の
6匹で観察された。このことは、遺伝したアデノウイル
ストランスジーンが実際にLacZ遺伝子を発現したこ
とを示すものである。対照的にアデノウイルストランス
ジーンを受け取らなかった他の4匹の胎仔は、全く染色
されなかった。他のトランスジェニックマウスの系列に
ついては、ACL9.3 由来の13匹のF1胎仔のうちの
7匹がβ−gal活性を示した。以上を総合すると、こ
れらのデータは、F1子孫におけるLacZ発現がアデ
ノウイルストランスジーンの安定な状態での伝達から生
じたことを明示するものである。
【0027】<実験方法>胎仔全体を、Allen らの方法
(Allen, N. D. et al., Nature 333 ,852-855 (1988))
の改良法によりβ−gal活性を調べるためX−gal
を用いて染色した。すなわち、胎仔を0.5%ホルムア
ルデヒド、2.5%グルタールアルデヒド、および0.
05%NP40を含むリン酸緩衝液(pH7.7)中に
4℃で30分間浸漬して固定した。そしてさらに15分
間、2回目の固定を行った。固定された胎仔をリン酸緩
衝液で3回洗浄し、染色溶液(5mMフェリシアン化カ
リウム、5mMフェロシアン化カリウム、0.1%NP
40および0.5mg/mlのX−galを含むリン酸
緩衝液)中に37℃で4時間インキュベートした。
【0028】実施例6(組み込まれたアデノウイルスト
ランスジーンは1コピーである) 3匹のマウスすべてにおいて、1コピーの組み込み、す
なわち完全なアデノウイルスDNAが観察された(図
1)。これに反して、卵子の前核中にDNAをマイクロ
インジェクションした場合には、トランスジェニック動
物への組み込みは、縦列の頭一尾方式で配列された多数
のトランスジーンのクラスターとなって生ずる。これら
の現象は、アデノウイルスの末端蛋白質が、裸のDNA
分子の場合と異なり、マウス卵子中でのウイルスゲノム
の縦列形成を阻止しているのかも知れない。
【0029】実施例7(組み込み効率に対するウイルス
投与の影響) 受精卵の卵丘細胞および卵膜を除去した後、表1に記載
の投与量でAxCANLacZを感染させ、インビトロ
でblastocystまで培養した後、借り親の子宮
に戻した。実際、1×107 、5×107 および1×1
8 (pfu/ml)で感染した胚を移植し、それぞれ
55、32、および36匹の動物個体が得られた。これ
らの個体について、LacZ遺伝子をプローブとするサ
ザンブロット解析により得られた結果を表1に示す。表
1から明らかなように、ウイルスの投与量が1×107
pfu/mlの場合(2/55)に比べて、5×107
pfu/mlの場合(4/32)および1×108 pf
u/mlの場合(4/36)は、組み込み効率が飛躍的
に向上することが分かる。これは、通常のウイルス感染
の場合と異なりウイルス投与量の増加による動物細胞の
死滅を考慮する必要がないため、ウイルス投与量の高い
方が効率が向上するという結果が得られたものと思われ
る。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】本発明の方法によって簡便かつ効率的に
トランスジェニック動物を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、非増殖型アデノウイルスDNAの組み
込みのサザン分析による同定を示す電気泳動の写真であ
る。27匹の動物の尾から単離されたゲノムDNAをE
coRVおよびHindIII で消化し、AxCANLa
cZ配列と98%の相同性を有するpAxCANLac
ZのコスミドDNAをプローブとして用いた。aはEc
oRV消化、bはHindIII 消化のデータである。白
丸は、アデノウイルスの末端断片である。星印は組み込
み事象後のウイルス−細胞DNAの連結断片を示す。
【図2】図2は、3匹のトランスジェニックマウスゲノ
ムに組み込まれたアデノウイルスDNAを示す。太線は
組換えアデノウイルスAxCANLacZの制限酵素地
図を示す。
【図3】図3は、F1子孫への生殖細胞系の遺伝および
F1上でのアデノウイルストランスジーンの発現を示す
電気泳動の写真である。LacZ発現性のトランスジェ
ニックマウス(ACL9.23)をICR雌と交配させ、発
生した10匹のF1胎仔を妊娠後13.5日に試験に供
した。その10個の胎盤から単離されたゲノムDNAを
図1に示すものと同様の手順によりサザン分析に付し
た。レーン1、3、4、7、8および10はアデノウイ
ルストランスジーンの伝達があったことを示し、レーン
2、5、6および9は、かかる伝達がなかったことを示
す。星印は組み込み事象後のウイルス−細胞DNAの連
結断片を示す。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外来遺伝子を導入した非増殖型組換えア
    デノウイルスを卵膜を除去した動物受精卵に感染させた
    後、この胚を借り親動物の子宮に移植することを特徴と
    するトランスジェニック動物の作成方法。
  2. 【請求項2】 外来遺伝子が、生理活性タンパク、抗
    体、マーカー遺伝子としての発色タンパクまたはマーカ
    ー遺伝子としての薬剤耐性タンパクをコードする塩基配
    列を有するヌクレオチドである請求項1記載のトランス
    ジェニック動物の作成方法。
  3. 【請求項3】 非増殖型組換えアデノウイルスを卵膜を
    除去した動物受精卵に感染させる場合の投与量が5×1
    7 〜108 pfu/mlであることを特徴とする請求
    項1または請求項2記載のトランスジェニック動物の作
    成方法。
  4. 【請求項4】 非増殖型組換えアデノウイルスが、CA
    Gプロモーター支配下に発現するものである請求項1〜
    請求項3いずれか1項に記載のトランスジェニック動物
    の作成方法。
  5. 【請求項5】 非増殖型組換えアデノウイルスが、核移
    行シグナルを含むものである請求項1〜請求項4いずれ
    か1項に記載のトランスジェニック動物の作成方法。
  6. 【請求項6】 外来遺伝子を導入した非増殖型組換えア
    デノウイルスの1コピーだけが動物受精卵のゲノムに組
    み込まれることを特徴とする請求項1〜請求項5いずれ
    か1項に記載のトランスジェニック動物の作成方法。
  7. 【請求項7】 外来遺伝子を導入した非増殖型組換えア
    デノウイルスを卵膜を除去した動物受精卵に感染させた
    後、この胚を借り親動物の子宮に移植することによって
    作成されたトランスジェニック動物。
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