JPH09127853A - ホログラムの作製方法 - Google Patents

ホログラムの作製方法

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JPH09127853A
JPH09127853A JP28220995A JP28220995A JPH09127853A JP H09127853 A JPH09127853 A JP H09127853A JP 28220995 A JP28220995 A JP 28220995A JP 28220995 A JP28220995 A JP 28220995A JP H09127853 A JPH09127853 A JP H09127853A
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和俊 鯉江
Katsumasa Nishii
克昌 西井
Masahiro Shiozawa
方浩 塩澤
Tomoyuki Kanda
知幸 神田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】短焦点のレンズ作用をもつ透過型ホログラムを
容易に作製することができるホログラムの作製方法を提
供する。 【解決手段】スクリーンホログラムとなる感光乾板(ホ
ログラム乾板)15に近接して可動型の半透明鏡14が
配置され、拡散板13の通過後の物体光が半透明鏡14
で反射して感光乾板15に照射される。半透明鏡14の
背面側に近接して対物レンズ18が配置され、参照光が
対物レンズ18および半透明鏡14を透過して感光乾板
15に照射される。拡散板13を通過した物体光と、参
照光とによる干渉縞が感光乾板15に記録される。記録
の際に、物体光の感光乾板15への照射角度を変えて複
数回干渉縞が記録される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ホログラムの作
製方法に係り、特に、ホログラムをスクリーンとして利
用するスクリーンホログラムの作製方法として好適なも
のである。
【0002】
【従来の技術】ホログラムを利用した表示装置として、
プロジェクタからスクリーンホログラムに像を投射し
て、この像を透過あるいは反射して観察できる装置が知
られている。より詳しく説明すると、透過型スクリーン
は、図24に示すように、スクリーンホログラム41の
背面側においてプロジェクタ42から表示像を投影し
て、観察者43から表示像を見るものである。一方、反
射型スクリーンは、図25に示すように、スクリーンホ
ログラム44の前面側において、プロジェクタ45から
表示像を投影して、プロジェクタ45と同方向にいる観
察者46から表示像を見るものである。
【0003】又、透過型スクリーンホログラムを作製す
る露光光学系(像の記録)として色むらを無くすための
一手法として、図26に示すように拡散体47に光を当
てて出力された物体光を感光乾板48に照射するととも
に参照光を感光乾板48に照射して干渉縞を記録するこ
とにより行われる。一方、反射型スクリーンを作製する
時の露光光学系(像の記録)は、図27に示すように拡
散体49に光を当てて出力された物体光を感光乾板50
に照射するとともに参照光を感光乾板50に照射して干
渉縞を記録することにより行われる。
【0004】さらに、特開平4−298710号公報に
は、表面に結像した実像を所定方向に指向性をもって回
折させる透明スクリーンホログラムが開示されている。
これは、観察者の眼の近傍の複数個の点に向けて回折す
る複数個の干渉縞を記録することを特徴としている。こ
れは、画面全体を色むら無く観察するためであるが、観
察者と表示面の距離が近い場合には、ホログラムのレン
ズ作用として、短焦点が必要となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、反射型ホロ
グラムの場合は、作製時に、物体光と参照光は、感光乾
板に対して反対側から入射するので、短焦点にすること
は、容易であるが、透過型ホログラムでは、物体光の光
束の中に、参照光の発散用レンズが入ってしまうので、
作製できないという問題があった。
【0006】つまり、図28において、スクリーンホロ
グラム51に結像している実像を、観察者52が見る
時、スクリーン全体の輝度のムラおよび色ムラをできる
だけ少なくするには、スクリーンホログラム51に視野
レンズの機能を持たせればよい。つまり、プロジェクタ
投影レンズ53と、観察者52の位置が共役関係になる
ようにスクリーンホログラム51がレンズ作用を持てば
よい。しかし、視野レンズとしての焦点距離はレンズの
結像関係より図28におけるプロジェクタ投影レンズ5
3とスクリーンホログラム51との間隔S1 よりも短い
ものとなる。短焦点の透過型ホログラムを作製するに
は、図29に示すように対物レンズ54が物体光の光束
に入ってしまうので、作製不可能となる。
【0007】そこで、この発明の目的は、短焦点のレン
ズ作用をもつ透過型ホログラム(例えばスクリーンホロ
グラム)を容易に作製することができるホログラムの作
製方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明
は、感光乾板に近接して半透明鏡を配置し、物体光を半
透明鏡で反射して感光乾板に照射するとともに、半透明
鏡の背面側に近接して光発散体を配置し、参照光を光発
散体および半透明鏡を透過して感光乾板に照射するよう
にしたので、図29に示したように物体光の光束の中に
対物レンズが配置されることなく、参照光の対物レンズ
と感光乾板との距離を短くして短焦点のホログラムが容
易に作製される。
【0009】請求項2に記載の発明は、感光乾板に近接
して半透明鏡を配置し、光拡散体の通過後の物体光を半
透明鏡で反射して感光乾板に照射するとともに、半透明
鏡の背面側に近接して光発散体を配置し、参照光を光発
散体および半透明鏡を透過して感光乾板に輝度むらを少
なくし、照射するようにしたので、図29に示したよう
に物体光の光束の中に対物レンズが配置されることな
く、参照光の対物レンズと感光乾板との距離を短くして
短焦点のスクリーンホログラムが容易に作製される。
【0010】請求項3に記載の発明は、可動型半透明鏡
を用いて、物体光の感光乾板への照射角度を変えて複数
回干渉縞を記録するようにしたので、作製されたホログ
ラム(スクリーンホログラム)を用いた表示装置におい
ては、像(プロジェクタ等で投影された種々の表示像)
の輝度むらを、全面で少なくし、また、観察者が広い範
囲で観察できる。
【0011】請求項4に記載の発明は、物体光の感光乾
板への照射角度が異なる半透明鏡を用いて、同時に複数
の干渉縞を記録するようにしたので、作製されたホログ
ラム(スクリーンホログラム)を用いた表示装置におい
ては、像(プロジェクタ等で投影された種々の表示像)
の輝度むらを、全面で少なくし、また、観察者が広い範
囲で観察できる。
【0012】請求項5に記載の発明は、光拡散体に対し
異なる方向から光を照射することにより形成される照射
角度の異なる複数の物体光を用い、同時に複数の干渉縞
を記録するようにしたので、作製されたホログラム(ス
クリーンホログラム)を用いた表示装置においては、像
(プロジェクタ等で投影された種々の表示像)の輝度む
らを、全面で少なくし、また、観察者が広い範囲で観察
できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)以下、この発明の第1の実施の形
態を図面に従って説明する。
【0014】本発明のホログラムを組み込んだ表示装置
の構成を図2に示す。この装置は透過型スクリーンを用
いている。プロジェクタ1は表示器1aと投影レンズ1
bとを備えている。プロジェクタ1から所定の距離だけ
離間した位置にスクリーンマウント2によりスクリーン
ホログラム3が立設されている。又、プロジェクタ1に
対しスクリーンマウント2よりも離間した位置に観察者
4がいる。
【0015】プロジェクタ1の表示器1aを出射した光
は、投影レンズ1bによってスクリーンホログラム3に
結像する。このとき、表示器1aは光軸L1に対して傾
いており、表示器1aの表示像5がスクリーンホログラ
ム3の全面でピントが合うようになっている。表示像5
は、スクリーンホログラム3によって一部が回折光6と
なる。回折光6は、散乱光であるが、その指向性の中心
は観察者4の眼に向かう。
【0016】図1には、スクリーンホログラム3を作製
する露光光学系を示す。レーザー発振器7に対しそのレ
ーザー発射口に対向してミラー8が配置され、このミラ
ー8により形成される光軸上には半透過鏡9が配置され
ている。さらに、ミラー8により形成される光軸上にお
ける半透過鏡9の延長線上にはミラー10が配置されて
いる。このミラー10により形成される光軸上には対物
レンズ11を介して軸はずし放物面鏡12が配置されて
いる。対物レンズ11により光が広がるが軸はずし放物
面鏡12により平行光となる。
【0017】軸はずし放物面鏡12により形成される光
軸L2上には拡散板(光拡散体)13を介して半透過鏡
14が配置され、さらに、半透過鏡14により形成され
る光軸(反射軸)L3上にはスクリーンホログラムとな
る感光乾板(ホログラム乾板)15が配置されている。
拡散板13は、すりガラスを用いている。感光乾板15
は重クロム酸ゼラチン(DCG)を用いている。
【0018】又、半透過鏡14は、特に表面処理等、何
も施さなくてもよいが表面に誘電体多層膜による反射増
加処理を施してもよい。この処理を施せば、反射光の強
度を高めることで、光の利用率が上がるので(通常のガ
ラスだけでは、透過率が高く無駄になる光が多い)露光
時間が短くて済むので、露光中の振動による干渉縞のぶ
れが抑えられる。
【0019】前記半透過鏡9の反射により形成される光
軸上にはミラー16が配置され、そのミラー16により
形成される光軸上にはミラー17が配置され、ミラー1
7により形成される光軸上には対物レンズ(光発散体)
18および半透過鏡14を介して感光乾板15が配置さ
れている。つまり、半透過鏡14に対し正面側(図1に
おいて右側)には感光乾板15が配置されるとともに背
面側(図1においては左側)には対物レンズ18が配置
されている。又、半透過鏡14と感光乾板15とは接近
して配置されるとともに、半透過鏡14と対物レンズ1
8とは接近して配置されている。よって、感光乾板15
と対物レンズ18の距離S2 は小さく両者は接近配置さ
れている。
【0020】半透過鏡14は可動となっており、拡散板
13からの光を感光乾板15に対し上下および左右方向
に向きが変えられる。図1においては半透過鏡14の下
端部が回転軸19となっており、回転軸19を中心に回
動して拡散板13からの光を感光乾板15に対し上下方
向に向きを変えることができる。つまり、半透過鏡14
の角度θ1が調整され、拡散板13を出射した物体光が
感光乾板15に入射する角度θを自由に調節できる。従
って、この半透過鏡14を5°傾けると(Δθ1=5
°)、感光乾板15への入射角度θが10°傾く。
【0021】尚、左右方向に光の向きを変えるための機
構の説明は省略する。次に、スクリーンホログラム3の
作製の手順を説明する。まず、半透過鏡14を、図1
中、実線で示す角度に固定する。そして、レーザー発振
器7からレーザー光を発射させる。レーザー発振器7を
出射したレーザー光は、半透過鏡9によって、2方向に
分けられる。一方のレーザー光はミラー10で方向を変
えた後、対物レンズ11で発散光に変えられる。次に、
軸はずし放物面鏡12で平行光にされて拡散板13に入
射して拡散光となる。これを半透過鏡14で反射した
後、感光乾板15に物体光として入射する。他方、半透
過鏡9で反射したレーザー光は、ミラー16、ミラー1
7を経て、対物レンズ18で発散光に変えられる。次
に、半透過鏡14を透過した後、感光乾板15に参照光
として入射する。この光拡散板13を通した物体光と、
参照光とによる干渉縞が感光乾板15に記録される。
【0022】その後、半透過鏡14を、図1において破
線で示すように、5°傾けて(Δθ1=5°)、感光乾
板15への入射角度θを10°傾ける。この状態でレー
ザー発振器7からレーザー光を発射させる。そして、拡
散板13を通した物体光と、参照光とによる干渉縞が感
光乾板15に記録される。これにより、半透過鏡14を
傾けずに記録した干渉縞と合わせると上下方向の視域が
広がる。
【0023】同様にして、半透過鏡14を左右に向き
(角度)を変えてレーザー発振器7からレーザー光を発
射させ、拡散板13を通した物体光と、参照光とによる
干渉縞を感光乾板15に記録する。これにより、左右方
向の視域が広がる。
【0024】又、半透過鏡14を用いて感光乾板15と
対物レンズ18とを接近して配置して短焦点としている
ので、プロジェクタで投影された種々の表示像の輝度む
らをスクリーン全面で少なくできる。さらに、透過型ス
クリーンホログラムは、全面フルカラー再生が可能とな
る。
【0025】ここで、物体光を半透過鏡14で反射する
ことの有用性を述べる。図28において、スクリーンホ
ログラム51に結像している実像を、観察者52が見る
時、スクリーン全体の輝度のムラをできるだけ少なくす
るには、スクリーンホログラム51に視野レンズの機能
を持たせればよい。つまり、プロジェクタ投影レンズ5
3と、観察者52の位置が共役関係になるようにスクリ
ーンホログラム51がレンズ作用を持てばよい。しか
し、視野レンズとしての焦点距離はレンズの結像関係よ
り図28におけるプロジェクタ投影レンズ53とスクリ
ーンホログラム51との間隔S1 よりも短いものとな
り、短焦点の透過型ホログラムを作成するには、図29
に示すように対物レンズ54が物体光の光束に入ってし
まうので、作成不可能となる。
【0026】しかし、本実施の形態においては、物体光
の光路中に半透過鏡14を配置して物体光を半透過鏡1
4にて反射して感光乾板15に照射するとともに半透過
鏡14を透過して参照光を感光乾板15に照射すること
により対物レンズ18と感光乾板15との距離間隔S2
を小さくして短焦点のホログラムが作製できる。尚、光
路中に半透過鏡14を配置しても、半透過鏡14の表面
と裏面の反射によって形成される干渉縞のコントラスト
は低いものとなり、支障はない。
【0027】又、図1において、拡散板13を通過する
光束の断面積が感光乾板15の面積よりも大きくなって
いる。つまり、図3の模式図に示すように、拡散板20
は、感光乾板15より大きいサイズである。図3におい
て、拡散板20に入射した物体光は散乱光となって出射
するが、散乱光21a,21b,21cは感光乾板15
の一点から発散するように記録することになる。ここ
で、図4に示すように拡散板22と感光乾板15が同じ
大きさだったとすると、散乱光21aに対応する方向の
光が記録されていないので、図4の光学系で作製された
スクリーンホログラムを図2のように観察すると、スク
リーンホログラム3の周辺部が暗く、また、色分散のた
めに色付いて見えてしまう。これに対し、図3の方法で
作製したホログラムであれば、色付きが無くなり周辺部
の明るさも確保できる。
【0028】又、本実施の形態においては、物体光の強
度を感光乾板15の感度領域外とするとともに、物体光
の強度を40mJ/cm2 以下とし、さらに、物体光の
強度EO に対する参照光の強度ER の比ER /EO を、
「5」以上としている。即ち、透過型スクリーンホログ
ラムを作製する露光光学系を示す図26において、感光
乾板48として重クロム酸ゼラチン(DCG)を利用
し、拡散体47として#1000の片面すりガラスを使
用する。この時、図5に示すように、物体光の強度EO
に対する参照光の強度ER の比ER /EO を、「5」以
上とすることによって、ノルズ率(白濁、くすみ)を2
%以下とし、透明で、曇りのない透過型スクリーンホロ
グラムを得た。ここで言うノイズ率について説明する。
図21に示すように、作製したスクリーンホログラム9
9に対し、白色光100(入射光強度I0 )を投影す
る。次に、投影されてスクリーンホログラムで透過散乱
する光102のうち入射光の垂直方向に透過してくる垂
直透過光101の透過光強度I 1 を測定する。この時、
入射光強度I0 と垂直透過光強度I1 との比をとると図
22に示す結果となる。この時、図22中の110の部
分が透過率となり、111のハッチング部分がノイズ率
とスクリーンホログラムの吸収の和になる。DCGの場
合、吸収はほとんど0と考えてよいため、ハッチング部
分をノイズ率と定義した。このノイズ率が増加するとス
クリーンホログラムに白濁、くすみが生じて背景がくす
み明瞭に視認できない。
【0029】つまり、図1の感光乾板15として重クロ
ム酸ゼラチン(DCG)を用いるとともに拡散板13と
して#1000の片面すりガラスを使用した場合におけ
る、物体光の強度EO に対する参照光の強度ER の比E
R /EO を変えた時のノイズ率の測定結果を図5に示
す。尚、物体光同士で形成される干渉縞のノイズ率の測
定方法としては、そのスクリーンホログラムの露光光学
系において、実際の撮影時と同量の物体光のみを露光
し、次に硬膜のため参照光だけ照射した後現像して、そ
のノイズ率を測定する。
【0030】図5から、ER /EO =「5」以上とする
ことによって、ノイズ率(白濁、くすみ)を2%以下と
し、透明で、曇りのない透過型スクリーンホログラムを
得ることができることが分かる。
【0031】ER /EO を「5」以上とする方法とし
て、より具体的には、図1に示すような光学系において
物体光用レンズ11の倍率nO を大きくして参照光用レ
ンズ18の倍率nR を小さくしている。物体光用レンズ
11の倍率nO と参照光用レンズ18の倍率nR の比
(nO /nR )としては、物体光用レンズ11の倍率n
O:参照光用レンズ18の倍率nR の倍率=4:1〜
8:1程度とすることが望ましく、また、それ以上の比
でもよい。
【0032】つまり、レンズ倍率を大きくすることによ
り、レーザー光がより拡げられるため、中心に対して入
射してくる光強度を小さくできる。ここで、ER /EO
を「5」以上とすることにより、透明感が増し、ノイズ
率が低減することについて述べる。
【0033】干渉縞を記録するためには、干渉する2つ
の光の強度がある程度必要である。図6に示すように、
今、物体光O1 と物体光O2 の2つの光が感光乾板23
上で干渉縞を形成する場合を想定する。感光乾板23の
干渉縞の記録に必要となる露光量を示すグラフを図7に
示す。物体光O1 と物体光O2 の光強度の和が大きい時
(図7中、A領域)は、物体光O1 と物体光O2 の干渉
縞は記録できる。しかし、物体光O1 と物体光O2 の光
強度の和が小さい時(図7中、B領域)は、干渉縞の記
録は不可能である。そこで、感光乾板23としてDCG
乾板を用いた場合において、干渉縞の記録に必要な最低
露光量の値Pmin を求めた。即ち、物体光O1 と物体光
2 の強度比を1:1とした時の結果を図8に示す。図
8より感光乾板23としてDCG乾板を用いた場合にお
いて、Pmin の値は10mJ/cm 2 となった。
【0034】以上を考慮し、透明なスクリーンホログラ
ムを作製する場合を考える。反射型スクリーンの場合を
例にとると、その露光光学系の一例を図9に示す。今、
拡散体24のある一点Sから感光乾板25のある一点U
にくる物体光をO1 とし、同様にある一点Tから点Uに
くる物体光をO2 とする。又、点Uに入射する参照光を
1 とする。この時、感光乾板25上の点Uで形成され
る干渉縞としては、図10に示すように、O1 とO2
1 とR1 、O2 とR1 の3つがある。今回、透明なス
クリーンホログラムを作製するに当たり、必要となる干
渉縞はO1 とR 1 、O2 とR1 の2つの干渉縞である。
又、スクリーンホログラムの透明感を悪くし、ノイズ率
を高くする原因となるのは、O1 とO2 の干渉縞であ
り、フレネルノイズと呼ばれるものである。よって、O
1 とR1 、又はO2 とR1 の干渉縞のみを記録し、O1
とO2 の干渉縞を記録しなければ、白濁、くすみをなく
し透明なスクリーンは作製可能である。
【0035】ここで、O1 とO2 の光強度の比は、一般
的に1:1であると考えられる。感光乾板23としてD
CG乾板を用いた場合においては、前記の通りO1 とO
2 の光強度の和を10mJ/cm2 以下すれば、O1 とO
2 の干渉縞(フレネルノイズ)は記録されない。今、O
1 とR1 、又はO2 とR1 の光強度の比を1:1(つま
りER /EO =1)とすると、O1 とR1 、又はO2
1 の光強度の和を10mJ/cm2 以上とすれば、本来
必要な干渉縞は記録できるが、同時にフレネルノイズも
記録されて、透明にはできない。
【0036】つまり、物体光O1 ,O2 により形成され
る干渉縞はたとえば重クロム酸ゼラチン(DCG)ホロ
グラム乾板を利用すると、図8に示すように、物体光の
光量(O1 ,O2 の光を足した露光量)が10mJ/c
2 以下であれば記録されない。一方、本来スクリーン
ホログラムに必要な干渉縞(本来ほしい物体光のO1
はO2 と参照光R1 との干渉縞)は、露光量を10mJ
/cm2 以上とすれば記録できる。この時、物体光
1 ,O2 の光強度はほぼ1:1と考えられる。そのた
め、物体光Oと参照光Rの比ER /EO を大きくするこ
とにより、O1 (又はO2 )とR1 との干渉縞は記録さ
れて、白濁、曇りの原因であるO1 とO2 の干渉縞(拡
散体のフレネルノイズ)は記録されずに、透明なスクリ
ーンホログラムが作製可能である。
【0037】そこで、O1 とR1 、又はO2 とR1 の光
強度の比ER /EO を、例えば1:20(ER /EO
20)とする。ここで、2つの光の強度比が1:20の
時に、感光乾板23としてDCG乾板を用いた場合に干
渉縞が記録可能となる露光量を示すグラフを図11に示
す。図11より図9のR1 とO1 (又はR1 とO2 )の
光強度の和が25mJ/cm2 以上であれば、干渉縞の記
録が可能である。
【0038】よって、図9においてO1 =O2 =3mJ
/cm2 、R1 =60mJ/cm2 (O 1 :R1 =1:2
0)とすれば、上記両方の条件を満足し、フレネルノイ
ズのない透明なスクリーンホログラムが作製可能とな
る。
【0039】以上より、ER /EO を「5」以上とする
ことにより、ノイズ率の小さい、透明なスクリーンホロ
グラムを得ることができる。これについては、透過型ス
クリーンホログラムにおいても、同様の効果を得ること
ができる。
【0040】さらに、図12に示すように、スクリーン
ホログラムにおいてある程度のくすみ、白濁が許される
のは物体光O1 と物体光O2 の拡散光同士の干渉縞の発
光強度を40mJ/cm2 以下としたときであり、40m
J/cm2 以下とすることによりスクリーンホログラムの
ノイズ率を2%以下にすることができることを確認して
いる。
【0041】このように本実施の形態によれば、図1の
感光乾板15に近接して半透明鏡14を配置し、拡散板
13の通過後の物体光を半透明鏡14で反射して感光乾
板15に照射するとともに、半透明鏡14の背面側に近
接して対物レンズ18を配置し、参照光を対物レンズ1
8および半透明鏡14を透過して感光乾板15に照射す
るようにしたので、参照光の対物レンズ18と感光乾板
15との距離S2 を短くして短焦点のスクリーンホログ
ラムが容易に作製される。よって、透過型スクリーンホ
ログラムで、かつ全面フルカラー再生が可能となった。
又、プロジェクタで投影された種々の表示像の輝度むら
を、スクリーン全面で少なくすることができる。
【0042】又、拡散板13を透過する光束の断面積が
感光乾板15の面積よりも大きいので、感光乾板15の
周縁部にも多方向から拡散光が入り、そのため、作製さ
れたスクリーンホログラムを用いた表示装置において
は、プロジェクタで投影されたスクリーンホログラムの
周辺部が暗くなったり色付いたりすることが防止でき
る。
【0043】又、可動型半透明鏡14を用いて、物体光
の感光乾板15への照射角度θを変えて複数回干渉縞を
記録するようにしたので、作製されたスクリーンホログ
ラムを用いた表示装置においては、プロジェクタで投影
された種々の表示像の輝度むらを、スクリーン全面で少
なくし、また、観察者が広い範囲で観察できる。 (第2の実施の形態)次に、この発明の第2の実施の形
態を、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0044】第2の実施の形態を図13に示す。本形態
においては、2枚の半透過鏡26,27が傾きを異なら
せて設けられている。そして、拡散板13によって拡散
光になった物体光は、傾きの異なる2枚の半透過鏡2
6,27で、それぞれ反射して感光乾板15に入射す
る。そして、対物レンズ18で発散光になった参照光と
干渉して、感光乾板15には干渉縞が形成される。
【0045】このように本実施の形態では、物体光の感
光乾板15への照射角度が異なる半透明鏡26,27を
用いて、同時に複数の干渉縞を記録するようにしたの
で、作製されたスクリーンホログラムを用いた表示装置
においては、プロジェクタで投影された種々の表示像の
輝度むらを、スクリーン全面で少なくし、また、観察者
が広い範囲で観察できる。 (第3の実施の形態)次に、この発明の第3の実施の形
態を、第2の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0046】第3の実施の形態を、図14に示す。これ
は、第2の実施の形態における2枚の半透過鏡26,2
7の代わりにくさび形のウェッヂプリズム28を用いて
いる。このウェッヂプリズム28の表面と裏面での反射
方向が異なるため、図13のように半透過鏡2枚を角度
を変えて配置したことと同じ効果がある。 (第4の実施の形態)次に、この発明の第4の実施の形
態を、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0047】図15に示すように、本実施の形態におい
ては、物体光の照射角度が異なるホログラム29,30
をそれぞれ作製した後、当該各ホログラム29,30を
重ねた状態で貼り合わせている。
【0048】このように、異なった方向に指向性を有す
るホログラムを別々に作製して、重ね合わせることで、
全体として視域が広がり、表示輝度も上がることにな
る。このように本実施の形態によれば、物体光の感光乾
板への照射角度が異なるホログラム29,30を作製し
た後、当該各ホログラム29,30を重ねた状態で貼り
合わせたので、作製されたスクリーンホログラムを用い
た表示装置においては、プロジェクタで投影された種々
の表示像の輝度むらを、スクリーン全面で少なくし、ま
た、観察者が広い範囲で観察できる。 (第5の実施の形態)次に、この発明の第5の実施の形
態を、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0049】図16に示すように、四角板状をなす拡散
板31の各辺には、反射鏡32a〜32dが配置されて
いる。この反射鏡32a〜32dにより、拡散板の面積
を大きくすることと同等の効果がある。
【0050】その原理を図17に示す。入射光33が、
拡散板31に入射し、拡散点P1において、拡散したと
する。拡散光の中で、反射鏡32aに当たった光は、反
射点P2で反射したとする。この反射光は、仮想拡散点
P2’から拡散してきたことと同等であるので、拡散板
31の面積が小さくても、面積が大きな拡散板と同じ効
果が得られる。 (第6の実施の形態)次に、この発明の第6の実施の形
態を、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0051】本実施の形態においては、図1における拡
散板13として、拡散特性が異なる2種類以上の光拡散
体を貼り合わせたものを用いている。具体的には、例え
ば、すりガラスとレンチキュラーレンズとオパールガラ
スとフライアイレンズ等の各材料のうちの「2」または
「3」等を適宜組み合わせて貼り合わせたものを用いる
(例えば、すりガラスとレンチキュラーレンズとを貼り
合わせたもの)。他にも、番数の異なるすりガラスを貼
り合わせてもよい。
【0052】そして、この拡散特性が異なる2種類以上
の光拡散体を貼り合わせた拡散板13を用いて、拡散板
13を通過した物体光と、参照光とによる干渉縞を感光
乾板15に記録する。このとき、感光乾板15には拡散
特性が異なる干渉縞が同時に記録される。
【0053】このように本実施の形態によれば、拡散板
13は、同軸上に拡散特性が異なる2種類以上の光拡散
体を配置した(より詳しくは、拡散特性が異なる2種類
以上の光拡散体を貼り合わせた)ものであるので、乾板
には拡散特性に応じた干渉縞が記録され、作製されたス
クリーンホログラムを用いた表示装置においては、プロ
ジェクタで投影された種々の表示像の輝度むらを、スク
リーン全面で少なくし、また、観察者が広い範囲で観察
できる。 (第7の実施の形態)次に、この発明の第7の実施の形
態を、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0054】本実施の形態においては、図1における拡
散板13に異なる角度の複数の物体光を照射し、図23
に示すように、例えば、3方向から平行な物体光を拡散
板13に所定の角度θだけずらして照射する。このよう
にすると、拡散板13を通過した物体光はそれぞれの拡
散角の重ね合わせの散乱光となり、この大きく散乱した
物体光と参照光が干渉し、感光乾板15に記録される。
【0055】このように本実施の形態によれば、拡散板
13(光拡散体)に対し異なる方向から光を照射するこ
とにより形成される照射角度の異なる複数の物体光を用
い、同時に複数の干渉縞を記録するようにしたので、拡
散板13は各物体光による複数の異なる拡散特性を持
ち、感光乾板15には拡散特性に応じた干渉縞が記録さ
れ、作製されたスクリーンホログラムを用いた表示装置
においては、プロジェクタで投影された種々の表示像の
輝度むらを、スクリーン全面で少なくし、また、観察者
が広い範囲で観察できる。更に、同時に複数の干渉縞を
記録できる。
【0056】これまでに説明したものの他にも次のよう
に実施してもよい。ER /EO を「5」以上とする方法
として、図18に示すように、感光乾板34と拡散体3
5の距離(図18に示す距離S3 )を大きくしてもよ
い。具体的には5mm以上離して配置する。拡散体35
に入射する物体光の強度を一定とすると、距離S3
「5」から400mmまで変化することにより、ER
O を2〜8まで変化可能であり、400mm以上離す
ことにより、ER /EO を「8」以上も可能である。
【0057】又、ER /EO を「5」以上とするため、
図19に示すように、物体光側にハーフミラー、フィル
ター等のレーザー強度減衰体36を配置してもよい。こ
れにより、物体光の強度を弱くして、ER /EO
「5」以上が達成できる。
【0058】又、ER /EO を「5」以上とするため
に、図20に示すように、前述した3つの手法を同時に
用いてもよい。つまり、(イ)参照光用レンズ18の倍
率nRに対する物体光用レンズ11の倍率nO の比nO
/nR を「4」以上とし、(ロ)感光乾板34と拡散体
35の距離S3 を大きくし、(ハ)レーザー強度減衰体
36を配置する。これは、レーザーのパワー、光路長等
の条件によりその達成が困難である場合に有効である。
又、(イ),(ロ),(ハ)の組み合わせにより、ER
/EO ≧5を達成するとともにER /EO が「5」以上
の領域で設定がより段階的で可変となる。
【0059】又、ホログラム特性を安定させるために
は、DCG乾板の膜厚を薄くすることが有効であり、厚
さ10mm程度とすることにより、安定的な特性を持つ
ホログラムが作製できる。
【0060】又、感光乾板15を色素増感重クロム酸ゼ
ラチン、フォトポリマー等の感光材料としてもよい。
又、ホログラム記録(露光)時に、拡散体をいろいろな
角度で透過してくる光の入射角度と強度を考慮に入れ
て、物体光、参照光の入射強度を計算し、ホログラム乾
板全面でER /EO を「5」以上とすることにより、作
製したホログラム全面での透明性を確保してもよい。
【0061】又、図1においては拡散板13(光発散
体)として対物レンズ(凸レンズ)18を用いたが、他
にも、凹レンズや光発散機能を有するホログラムを用い
てもよい。
【0062】又、図1においては光拡散体を通過した物
体光と、参照光とによる干渉縞を感光乾板に記録するよ
うにしたスクリーンホログラムを作製する場合について
述べたが、その他のホログラムを作製する場合にも適用
できる。例えば、図1において拡散板(光拡散体)13
を除去した光学系についても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施の形態におけるスクリーンホログ
ラムの作製の光学系を示す図。
【図2】 スクリーンホログラムを組み込んだ表示装置
の構成図。
【図3】 スクリーンホログラムの作製の光学系を示す
図。
【図4】 比較のためのスクリーンホログラムの作製の
光学系を示す図。
【図5】 ER /EO とノイズ率との関係を示す図。
【図6】 感光乾板を通過する物体光を示す図。
【図7】 露光量と干渉縞の記録割合との関係を示す
図。
【図8】 露光量と回折効率との関係を示す図。
【図9】 スクリーンホログラムの作製の光学系を示す
図。
【図10】 スクリーンホログラムの断面図。
【図11】 露光量と回折効率との関係を示す図。
【図12】 物体光露光量とノイズ率との関係を示す
図。
【図13】 第2の実施の形態におけるスクリーンホロ
グラムの作製の光学系を示す図。
【図14】 第3の実施の形態におけるスクリーンホロ
グラムの作製の光学系を示す図。
【図15】 第4の実施の形態におけるスクリーンホロ
グラムの断面図。
【図16】 第5の実施の形態におけるスクリーンホロ
グラムの作製の光学系を説明するための斜視図。
【図17】 スクリーンホログラムの作製の光学系を示
す図。
【図18】 スクリーンホログラムの作製の光学系を示
す図。
【図19】 スクリーンホログラムの作製の光学系を示
す図。
【図20】 スクリーンホログラムの作製の光学系を示
す図。
【図21】 ノイズ率の測定方法を説明するための図。
【図22】 ノイズ率の定義を説明するための図。
【図23】 第7の実施の形態におけるスクリーンホロ
グラムの作製の光学系を説明するための図。
【図24】 透過型スクリーンを示す図。
【図25】 反射型スクリーンを示す図。
【図26】 透過型スクリーンホログラムの作製の光学
系を示す図。
【図27】 反射型スクリーンホログラムの作製の光学
系を示す図。
【図28】 光学系を示す図。
【図29】 光学系を示す図。
【符号の説明】
13…光拡散体としての拡散板、14…半透明鏡、15
…感光乾板、18…光発散体としての対物レンズ、26
…半透明鏡、27…半透明鏡。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 塩澤 方浩 愛知県西尾市下羽角町岩谷14番地 株式会 社日本自動車部品総合研究所内 (72)発明者 神田 知幸 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本電 装 株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 物体光と参照光とによる干渉縞を感光乾
    板に記録するようにしたホログラムの作製方法であっ
    て、 前記感光乾板に近接して半透明鏡を配置し、物体光を半
    透明鏡で反射して前記感光乾板に照射するとともに、前
    記半透明鏡の背面側に近接して光発散体を配置し、参照
    光を前記光発散体および前記半透明鏡を透過して前記感
    光乾板に照射するようにしたことを特徴とするホログラ
    ムの作製方法。
  2. 【請求項2】 光拡散体を通過した物体光と、参照光と
    による干渉縞を感光乾板に記録するようにしたスクリー
    ンホログラムの作製方法であって、 前記感光乾板に近接して半透明鏡を配置し、前記光拡散
    体の通過後の物体光を半透明鏡で反射して前記感光乾板
    に照射するとともに、前記半透明鏡の背面側に近接して
    光発散体を配置し、参照光を光発散体および前記半透明
    鏡を透過して前記感光乾板に照射するようにしたことを
    特徴とするホログラムの作製方法。
  3. 【請求項3】 可動型半透明鏡を用いて、前記物体光の
    感光乾板への照射角度を変えて複数回干渉縞を記録する
    ようにした請求項1又は2に記載のホログラムの作製方
    法。
  4. 【請求項4】 前記物体光の感光乾板への照射角度が異
    なる半透明鏡を用いて、同時に複数の干渉縞を記録する
    ようにした請求項1又は2に記載のホログラムの作製方
    法。
  5. 【請求項5】 前記光拡散体に対し異なる方向から光を
    照射することにより形成される照射角度の異なる複数の
    物体光を用い、同時に複数の干渉縞を記録するようにし
    た請求項1又は2に記載のホログラムの作製方法。
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