JPH09119373A - 低粘性燃料用ポンプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 エンジン９の始動時にも燃焼室内直接燃
料噴射型エンジンとして運転することができるように高
圧噴射を可能とし、その始動性を改善することができる
とともに、モーターの消費電力を小さく押さえることが
できる低粘性燃料用ポンプ２０を提供すること。 【解決手段】 エンジン９の始動時のみモーター駆動型
とし、始動後は、エンジン直接駆動型とすること、マグ
ネットカップリング１４の一部を要素とするモーター機
構を採用することに着目したもので、マグネットカップ
リング１４の一部（従動側磁石１８）を要素とするモー
ター機構２１を構成し、モーター機構２１の作動時に当
該燃料ポンプ２０とエンジン９との間の駆動力伝達を遮
断する駆動力伝達遮断機構２４を設けたことを特徴とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は低粘性燃料用ポンプ
にかかるもので、とくに燃焼室内ガソリン噴射型のエン
ジンにおいてガソリンなど低粘性燃料を高圧にして燃料
噴射装置に供給する低粘性燃料用ポンプに関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】従来から燃料としてガソリンを使用する
燃焼室内直接燃料噴射型エンジンにおいては、ガソリン
を高圧にする装置、一般的には燃料用ポンプが必要とな
る。燃料用ポンプの駆動方式としては、エンジンによる
直接駆動型と、バッテリーに蓄えられた電気を利用する
モーター駆動型とがある。

【０００３】こうした燃料用ポンプは、一般の流体用ポ
ンプとは異なり、ガソリンの外部への洩れは安全上、わ
ずかでも許されないという事情がある。エンジン内部に
燃料用ポンプを内蔵するように構成する場合には、エン
ジン内部へのガソリンの洩れがエンジンオイルの希釈を
招き、ひいては、エンジンを焼き付かせるおそれがあ
り、やはり許容されるものではない。なお、回転軸に用
いられる一般的なオイルシールにより、ガソリン洩れの
防止を確実にすることは困難である。

【０００４】そこで、エンジンによる直接駆動型の燃料
用ポンプにおいては、図３および図４に示すように、マ
グネットカップリングを用いてエンジンからの駆動力を
伝達可能とするとともに、ガソリンを燃料用ポンプ内に
密封する構造が知られている。たとえば特開平５−２５
６２５２号などがある。

【０００５】図３は、従来の低粘性燃料用ポンプ１の要
部断面図、図４は、図３のＩＶ−ＩＶ線断面図であっ
て、低粘性燃料用ポンプ１は、ポンプハウジング２と、
フランジ３と、ポンプシャフト４と、を有する。

【０００６】ポンプハウジング２内には、任意のポンプ
機構５、たとえばラジアルピストンポンプ機構、ギアポ
ンプ機構、ベーンポンプ機構あるいはその他のポンプ機
構を設け、高圧燃料を吐出可能としてある。

【０００７】フランジ３には、ベアリング６を設ける。
ポンプシャフト４は、駆動側シャフト４Ａおよび従動側
シャフト４Ｂを有する。駆動側シャフト４Ａは、ベアリ
ング６により回転可能にこれを軸支する。駆動側シャフ
ト４Ａの端部にプーリー７を設け、ベルト８を介してエ
ンジン９の駆動を受ける。

【０００８】なおプーリー７およびベルト８以外にも、
エンジン９からの駆動力の伝達は可能であり、たとえば
ポンプシャフトをカムシャフトとしてこれを直結するな
ど任意のものを採用することができる。

【０００９】従動側シャフト４Ｂは、ポンプハウジング
２内においてブッシュ１０および軸受けローラー１１に
よりこれを回転可能に軸支し、ポンプ機構５を駆動可能
としてある。

【００１０】ポンプハウジング２とフランジ３との間に
は、非磁性体による遮蔽板１２（隔壁）を設け、取付け
ボルト１３により両者を一体的に締め付ける。

【００１１】この遮蔽板１２の間にまたがって、マグネ
ットカップリング１４を設けてある。マグネットカップ
リング１４は、駆動側シャフト４Ａの取付けアーム１５
の円周上に取り付けた駆動側磁石１６と、従動側シャフ
ト４Ｂの取付けアーム１７の円周上に取り付けた従動側
磁石１８とを有し、遮蔽板１２を介して駆動側シャフト
４Ａの回転力を従動側シャフト４Ｂに伝達可能としてあ
る。

【００１２】こうした構成の低粘性燃料用ポンプ１にお
いて、エンジン９により、ポンプシャフト４の駆動側シ
ャフト４Ａを回転駆動し、マグネットカップリング１４
における駆動側磁石１６および従動側磁石１８による引
張り力により駆動側シャフト４Ａの回転力を従動側シャ
フト４Ｂに伝達し、ポンプ機構５を作動させることがで
きる。

【００１３】さらに、ポンプハウジング２とフランジ３
との間に遮蔽板１２を介在させることにより、ポンプハ
ウジング２のポンプ機構５およびガソリンを密閉するこ
とができる。

【００１４】しかしながら、エンジン９の始動時には、
そのセルモーター（図示せず）による回転数はせいぜい
１５０〜２００ｒｐｍ程度であり、この回転数では低粘
性燃料用ポンプ１ないしポンプ機構５の構造の如何にか
かわらず、燃料の高圧を発生することはきわめて困難で
ある。

【００１５】したがって、エンジン９の始動時には、ガ
ソリンを低圧のまま燃焼室に噴射するか、あるいはポー
ト（吸入マニホールド）噴射用のインジェクターを別に
用意し、始動時においてのみこのインジェクターから低
圧ポート噴射するしかないが、この場合には排気ガスな
どに悪影響が出やすいという問題がある。

【００１６】なお、前記モーター駆動型の燃料用ポンプ
は、モーター内部をガソリンが流れる構造にすれば、そ
の回転軸を外部に露出しない構成とすることができるこ
とが知られている。ただし、モーター駆動型の燃料用ポ
ンプは、その消費電力が大きく、上述のエンジン直接駆
動型に比較してかなり効率が悪く、燃焼室内直接燃料噴
射型エンジンによる燃費改善のメリットが相殺されてし
まうという別の問題がある。

【００１７】

【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような
諸問題にかんがみなされたもので、エンジンの始動時に
も燃焼室内直接燃料噴射型エンジンとして運転すること
ができるように高圧噴射を可能とし、そのメリットを得
ることができる低粘性燃料用ポンプを提供することを課
題とする。

【００１８】また本発明は、エンジンの始動時において
も必要に応じて燃料の高圧を得ることができて、その始
動性を改善することができる低粘性燃料用ポンプを提供
することを課題とする。

【００１９】また本発明は、エンジンの始動時のみモー
ター駆動型とし、始動後は、エンジン直接駆動型とする
ことにより、始動性、排気ガスを改善するとともに、モ
ーターの消費電力を小さく押さえることができる低粘性
燃料用ポンプを提供することを課題とする。

【００２０】

【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、エン
ジンの始動時のみモーター駆動型とし、始動後は、エン
ジン直接駆動型とすること、およびマグネットカップリ
ングの一部を要素とするモーター機構を採用することに
着目したもので、マグネットカップリングを介してエン
ジンにより駆動される低粘性燃料用ポンプであって、上
記マグネットカップリングの一部を要素とするモーター
機構を構成し、このモーター機構の作動時に当該燃料ポ
ンプと上記エンジンとの間の駆動力伝達を遮断する駆動
力伝達遮断機構を設けたことを特徴とする低粘性燃料用
ポンプである。

【００２１】上記駆動力伝達遮断機構として、当該燃料
ポンプと上記エンジンとの間に、このエンジン側からの
駆動力のみを伝達するワンウェイクラッチを設けること
ができる。

【００２２】上記エンジンの始動時のみ上記モーター機
構を駆動することができる。

【００２３】なお、上記駆動力伝達遮断機構は、エンジ
ン始動後は、エンジンからの回転トルクを当該燃料用ポ
ンプに伝達可能とするものである。は、

【００２４】本発明による低粘性燃料用ポンプにおいて
は、エンジンの始動時のみモーター駆動型とし、始動後
はエンジン直接駆動型としたので、それぞれの長所を活
かして、燃焼室内直接燃料噴射型エンジンとして運転す
ることができ、そのメリットを得ることができる。

【００２５】すなわち、エンジンの始動時には、マグネ
ットカップリングの一部を用いて構成したモーター機構
によってポンプ機構を駆動するので、高圧燃料を始動時
から供給可能でエンジンの始動性を向上させることがで
きるとともに、排気ガスの悪影響を減少させることがで
きる。エンジンの始動後、その回転数が所定数に達した
ときには、モーター機構をオフとし、エンジンからの駆
動力によってポンプ機構を直接駆動するようにしたの
で、始動時とともに始動後も高圧燃料を供給可能であ
り、かつこの始動後はモーター機構には通電しないの
で、その消費電力の抑制が可能である。

【００２６】

【発明の実施の形態】つぎに本発明の実施の形態による
低粘性燃料用ポンプ２０を図１および図２にもとづき説
明する。ただし、図３および図４と同様の部分には同一
符号を付し、その詳述はこれを省略する。図１は、低粘
性燃料用ポンプ２０の要部断面図、図２は、図１のＩＩ
−ＩＩ線断面図であって、低粘性燃料用ポンプ２０は、
ポンプハウジング２と同様のポンプシャフト４、ポンプ
機構５、マグネットカップリング１４、その他を有する
とともに、モーター機構２１と、ホール素子（ホール素
子磁力計）２２と、制御回路２３と、駆動力伝達遮断機
構２４と、を有する。

【００２７】モーター機構２１は、マグネットカップリ
ング１４の従動側磁石１８から構成するローターと、ポ
ンプハウジング２に設けた鉄芯２５（図２）にコイル２
６を巻いたステーター２７と、を有する。

【００２８】ホール素子２２は、従動側磁石１８の始動
時における円周方向の位置を検出するためのもので、従
動側磁石１８に対して相対的に３カ所にこれを設け、３
ビットの検出信号を出力可能としてある。

【００２９】制御回路２３は、ホール素子２２からの検
出信号に応じて順次極性の異なる電圧をステーター２７
に通電して、モーター機構２１をオンとし、従動側シャ
フト４Ｂの回転を開始する。さらに制御回路２３は、モ
ーター機構２１を回転させるとともに、ポンプ機構５が
所定噴射を行ってエンジン９が所定回転数以上になった
とき、ステーター２７への通電を中止し、モーター機構
２１をオフとする。

【００３０】駆動力伝達遮断機構２４は、プーリー７に
取付けボルト２８により取り付けたクラッチハウジング
２９と、ワンウェイクラッチ３０とからこれを構成して
ある。この駆動力伝達遮断機構２４は、モーター機構２
１の回転当初は、従動側シャフト４Ｂの回転にともなっ
て回転する駆動側シャフト４Ａの回転力をエンジン９に
伝達することなく、エンジン９が所定回転以上となった
とき、つまりエンジン９の回転が従動側シャフト４Ｂ
（駆動側シャフト４Ａ）の回転をこえたとき、エンジン
９からの駆動回転力を駆動側シャフト４Ａに伝達可能と
してある。

【００３１】こうした構成の低粘性燃料用ポンプ２０に
おいて、エンジン９の始動時には、制御回路２３はモー
ター機構２１のステーター２７に通電して、ローターで
ある従動側磁石１８を回転させ、従動側シャフト４Ｂを
回転させてポンプ機構５を始動し、エンジン９に高圧燃
料を噴射可能とする。

【００３２】すなわち、モーター機構２１は、所定の回
転数を得ることができるため、高圧燃料を噴射可能とす
るように、従動側シャフト４Ｂを回転することができ、
エンジン９はその始動時から燃焼室内直接燃料噴射型エ
ンジンとして運転することができる。

【００３３】なお、このモーター機構２１における従動
側磁石１８の回転により、マグネットカップリング１４
の駆動側磁石１６も磁気引力によって同方向に回転する
が、駆動側磁石１６を取り付けている駆動側シャフト４
Ａからは駆動力伝達遮断機構２４によってエンジン９側
には回転力が伝達されず、エンジン９側はモーター機構
２１の負荷になることはない。

【００３４】エンジンが始動し、所定回転数（たとえば
アイドリング状態の回転数）となれば、従動側シャフト
４Ｂを介したモーター機構２１による駆動側シャフト４
Ａの回転数をエンジン９側がこえるので、エンジン９か
らの回転トルクは駆動力伝達遮断機構２４を介してマグ
ネットカップリング１４に伝達される。

【００３５】この時点で制御回路２３はモーター機構２
１（ステーター２７）への通電を停止して、消費電力を
小さく押さえることができる。

【００３６】かくして、モーター機構２１および駆動力
伝達遮断機構２４を設けたので、エンジン始動後はもち
ろん、エンジン始動時からその燃焼室内に高圧の燃料を
噴射することができる。

【００３７】したがって、始動時にも低圧のまま燃料を
燃焼室に噴射する従来方式の燃焼室内直接燃料噴射型エ
ンジンに較べてスムーズにエンジンを始動することがで
きる。

【００３８】なお、モーター機構２１はこれを短時間駆
動すれば済むものであるから、その全体の大きさは従来
品に比較して若干大きくなる程度であり、従来品の位置
にそのまま取り付けることができる。

【００３９】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、マグネッ
トカップリングの一部（従動側磁石）を活用してモータ
ー機構を構成し、エンジン始動時に高圧燃料を供給可能
としたので、従来のポート噴射型ガソリンエンジンや、
ポート噴射を行う方式の燃焼室内直接燃料噴射型エンジ
ンに較べて始動時の未燃焼炭化水素（ＨＣ）の排出を大
幅に減少することができる。

【００４０】エンジン始動後は、モーター機構への通電
を止めるとともにエンジン出力により駆動することがで
きるので、モーター駆動型のエンジンに比較して消費電
力を低減することができる。

【００４１】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態による低粘性燃料用ポンプ
２０の要部断面図である。

【図２】図１のＩＩ−ＩＩ線断面図である。

【図３】従来の低粘性燃料用ポンプ１の要部断面図であ
る。

【図４】図３のＩＶ−ＩＶ線断面図である。

【符号の説明】

１ 低粘性燃料用ポンプ（図３、図４） ２ ポンプハウジング ３ フランジ ４ ポンプシャフト ４Ａ ポンプシャフト４の駆動側シャフト ４Ｂ ポンプシャフト４の従動側シャフト ５ ポンプ機構 ６ ベアリング ７ プーリー ８ ベルト ９ エンジン １０ ブッシュ １１ 軸受けローラー １２ 非磁性体による遮蔽板（隔壁） １３ 取付けボルト １４ マグネットカップリング １５ 駆動側シャフト４Ａの取付けアーム １６ マグネットカップリング１４の駆動側磁石 １７ 従動側シャフト４Ｂの取付けアーム １８ マグネットカップリング１４の従動側磁石（モー
ター機構２１のローター） ２０ 低粘性燃料用ポンプ（図１、図２） ２１ モーター機構 ２２ ホール素子（ホール素子磁力計） ２３ 制御回路 ２４ 駆動力伝達遮断機構 ２５ ステーター２７の鉄芯 ２６ ステーター２７のコイル ２７ モーター機構２１のステーター ２８ 取付けボルト ２９ クラッチハウジング ３０ ワンウェイクラッチ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 マグネットカップリングを介してエン
   ジンにより駆動される低粘性燃料用ポンプであって、 前記マグネットカップリングの一部を要素とするモータ
   ー機構を構成し、 このモーター機構の作動時に当該燃料ポンプと前記エン
   ジンとの間の駆動力伝達を遮断する駆動力伝達遮断機構
   を設けたことを特徴とする低粘性燃料用ポンプ。
2. 【請求項２】 前記駆動力伝達遮断機構として、 当該燃料ポンプと前記エンジンとの間に、このエンジン
   側からの駆動力のみを伝達するワンウェイクラッチを設
   けたことを特徴とする請求項１記載の低粘性燃料用ポン
   プ。
3. 【請求項３】 前記エンジンの始動時のみ前記モータ
   ー機構を駆動することを特徴とする請求項１記載の低粘
   性燃料用ポンプ。