JPH09105612A - 塗装膜厚計測装置 - Google Patents

塗装膜厚計測装置

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JPH09105612A
JPH09105612A JP26287195A JP26287195A JPH09105612A JP H09105612 A JPH09105612 A JP H09105612A JP 26287195 A JP26287195 A JP 26287195A JP 26287195 A JP26287195 A JP 26287195A JP H09105612 A JPH09105612 A JP H09105612A
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JP
Japan
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coating
film thickness
wavelength
roughness
calculating
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JP26287195A
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Kiyoshi Yoshida
清 吉田
Yutaka Suzuki
裕 鈴木
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】自動車車体塗装の上塗りベース塗装のような非
常に薄い塗装でも上塗りクリア塗装のような比較的厚い
塗装の場合でも共に高精度で膜厚を計測することが出来
る塗装膜厚計測装置を提供する。 【構成】表面粗さ判定部5によって表面粗さ度(膜厚に
対応する値)を判定し、通常は第1膜厚演算手段7によ
って粗さ度と、粗さ度の時間変化量と、波長分布と、塗
装条件とに基づいて塗装膜厚を算出するが、表面粗さ度
が基準粗さ度以上(膜厚が40μm以下の薄い状態に相
当する)の場合には、第2膜厚演算手段9によって波長
分布に基づいて塗装の膜厚を演算するように構成した塗
装膜厚計測装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗料を塗布した直
後の未乾燥状態で塗装の膜厚を計測することの出来る塗
装膜厚計測技術に関し、特に、極く薄い膜厚も比較的厚
い膜厚でも正確に計測することの出来る塗装膜厚計測技
術に関する。
【0002】
【従来の技術】塗装直後の未乾燥状態で塗装膜厚を計測
する装置としては、例えば針ゲージを利用した接触式の
装置、或いは電磁式や渦電流式の非接触式の装置があ
る。図19は、上記のごとき従来装置のうち、磁気を用
いた計測装置の一例の原理を示す断面図である。図19
においては、まず(a)に示すように、鋼板の被塗装体
81の塗装表面に対向して非接触膜厚センサ82を近接
距離h0に予め位置決めする。そして非接触膜厚センサ
82内に設けられた送受信コイル(図示省略)によって
被塗装体81と非接触膜厚センサ82との間に磁界を生
成する。この状態で、被塗装体81の表面にウェット状
態の塗料83を塗布すると、塗装後の被塗装体81と非
接触膜厚センサ82との間の磁界は、塗装膜厚による電
磁気抵抗によって減衰し、塗装前よりも低下した状態で
送受信コイルに感知される。このように膜厚hに比例し
て減衰する磁束の変化を検出することにより、塗装膜厚
を測定することが出来る。
【0003】しかし、上記のごとき従来の膜厚測定装置
においては、塗装前に被塗装体81と非接触膜厚センサ
82との距離を所定の近接距離に設定し、塗装前後を通
じてその位置関係を精密に保つ必要があるため、塗装中
でもセンサを近接距離に設定したままにしておく必要が
あり、実用的でない。また、測定を塗装前と塗装後との
2回行なう必要があるので手間がかかると共に、測定精
度も悪い、等の問題があった。また、前記針ゲージを用
いた接触式の装置では、塗装面に傷を付けるので、塗装
品質が低下するという問題があった。
【0004】上記のごとき問題を解決するため、本出願
人は、塗料を塗布した直後の未乾燥塗装表面の粗さに基
づいて、非接触で塗装膜厚を測定する装置を既に出願
(特願平4−306966号)している。上記の測定装
置は、光学的な表面粗さ計や撮像装置によって塗装直後
の未乾燥塗装表面の粗さと、塗装表面の凹凸波形の波長
とを計測し、それらに基づいて未乾燥状態における膜厚
(ウェット膜厚)を測定し、さらに乾燥後の膜厚(ドラ
イ膜厚)を予測するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、従来の
接触式の装置では、塗装面に傷を付けるので、塗装品質
が低下するという問題があり、また、磁気を利用した非
接触の装置では測定に手間がかかると共に測定精度が悪
いという問題があった。
【0006】また、上記のごとき従来装置の問題を解決
した本出願人の先行出願においては、非接触で、しかも
容易に正確な測定を行なうことが可能であるが、自動車
車体塗装の上塗りベース塗装のような非常に薄い塗装、
すなわち膜厚が20〜30μm程度の極めて薄い塗装に
おいては、次のごとき問題がある。すなわち、上記の先
行出願においては、未乾燥塗装表面の粗さの時間変化量
から膜厚を求めているが、上記のごとく膜厚が極めて薄
い場合には、塗料の揮発成分の揮発速度が大きいので、
粘度が急激に大きくなり、そのため粗さの時間変化量が
極めて小さくなるので、正確な測定が困難となり、した
がって塗装膜厚の測定精度が大幅に低下してしまう、と
いう問題があった。
【0007】本発明は、上記のごとき本出願人の先行出
願をさらに改良し、自動車車体塗装の上塗りベース塗装
のような非常に薄い塗装でも上塗りクリア塗装のような
比較的厚い膜厚の場合でも共に高精度で膜厚を計測する
ことが出来る塗装膜厚計測装置を提供することを目的と
する。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明においては、特許請求の範囲に記載するよう
に構成している。まず、請求項1に記載の発明は、未乾
燥塗装表面の画像情報を処理した画像処理データに基づ
いて、塗装表面の凹凸波形の波長分布と、塗装表面の粗
さ度とを算出する手段(波長分布演算手段と表面粗さ算
出手段)と、上記粗さ度と、該粗さ度の時間変化量と、
上記波長分布と、塗装条件とに基づいて塗装膜厚を算出
する第1膜厚演算手段と、粗さ度と所定の基準粗さ度と
を比較する表面粗さ判定手段および上記第1膜厚演算手
段で求めた膜厚と所定の基準膜厚とを比較する膜厚判定
手段の少なくとも一方の手段と、上記粗さ度が上記基準
粗さ度以上であるかまたは上記膜厚が上記基準膜厚以下
であるかの少なくとも一方または両方であるときには、
上記波長分布に基づいて塗装の膜厚を算出する第2膜厚
演算手段と、を備えたものである。
【0009】すなわち、本発明は、基本的には、第1膜
厚演算手段によって粗さ度と、粗さ度の時間変化量と、
波長分布と、塗装条件とに基づいて塗装膜厚を算出する
が、表面粗さ度が基準粗さ度以上(例えば1〜2μm程
度以上、膜厚が30〜40μm程度以下の薄い状態に相
当する)か上記の算出した膜厚が基準膜厚(例えば30
〜40μm程度)以下の薄い膜厚である場合には、第2
膜厚演算手段によって波長分布に基づいて塗装の膜厚を
演算するように構成したものである。
【0010】上記第1膜厚演算手段のように、粗さ度
と、粗さ度の時間変化量と、波長分布と、塗装条件とに
基づいて塗装膜厚を算出する場合は、膜厚が比較的厚い
場合(例えば40μm程度以上)には、非常に精度の高
い(±2μm程度)膜厚計測を行なうことが出来るが、
膜厚が極めて薄い(例えば20〜30μm程度)場合に
は、精度が大幅に低下する。一方、第2膜厚演算手段の
ように、波長分布に基づいて塗装の膜厚を演算する場合
には、膜厚が非常に薄い場合でも比較的精度の良い計測
を行なうことが出来るが、膜厚が厚い場合(例えば上塗
りクリア塗装のようなウエット膜厚で50〜80μm程
度の場合)の精度は第1膜厚演算手段には及ばない。し
たがって、上記のように表面の粗さ度もしくは第1膜厚
演算手段で求めた膜厚によって概略の膜厚を判断し、そ
れが所定値以上の比較的厚い膜厚の場合には精度の高い
第1膜厚演算手段の値を用い、所定値未満(例えば40
μm程度未満)の極めて薄い膜厚の場合には第2膜厚演
算手段で求めた膜厚を用いるようにしたものである。な
お、表面の粗さ度と膜厚には相関があり、膜厚が薄いほ
ど粗さ度が大きくなるので、どちらを用いても概略の判
断を行なうことが出来る。
【0011】また、請求項2に記載の発明は、第2膜厚
演算手段の構成例を示すものであり、塗装表面の凹凸波
形のパワースペクトラムにおける長波長領域のピーク波
長を求め、そのピーク波長の値と予め実験で求めた塗装
膜厚との関係から、ウエット状態における膜厚を算出す
る。
【0012】上記のように、第2膜厚演算手段において
は、第1膜厚演算手段のような粗さ測定を行なわず、凹
凸波形のパワースペクトラムにおける長波長領域のピー
ク波長のみを演算し、その値と予め実験で求めた塗装膜
厚との関係から膜厚を求めるように構成している。した
がって塗装後の塗膜の粘度に影響されないので、膜厚が
ウエット膜厚で20〜30μm程度と極めて薄い場合で
も正確な膜厚計測を行なうことが出来る。なお、上記の
ようにして求めた膜厚は、その数値をそのまま表示して
利用することも出来るし、或いは塗装ラインの自動制御
用の数値として与えることも出来る。
【0013】また、請求項3に記載の発明は、塗装表面
の複数個所を撮像し、それら複数個の波長分布を平均し
た値を用いて膜厚を演算するものである。このように複
数個所の値を平均することにより、さらに正確な膜厚を
計測することが出来る。なお、塗装条件入力手段によっ
て塗料の種類等の情報を与えることにより、演算精度を
向上させることが出来る。
【0014】次に、請求項4に記載の発明は、塗装条件
入力手段から塗料の非揮発性成分の含有量情報を入力
し、その情報と計測したウエット膜厚とによって乾燥後
のドライ膜厚を演算するものである。すなわち、ウエッ
ト状態の塗膜から揮発性成分が揮発した後の状態がドラ
イ膜厚となるから、塗料の非揮発性成分の含有量とウエ
ット膜厚が判ればドライ膜厚を演算で求めることが出来
る。
【0015】
【発明の実施の形態】図1は本発明の第1の実施の形態
を示す図であり、本発明を自動塗装ラインに適用した場
合のブロック図を示す。まず、図1に基づいて全体の構
成の概略を説明する。1は被塗装体(例えば車体)であ
り、塗装ライン上を所定の速度で移動しながら塗装され
るものである。2は塗装直後におけるウエット状態の塗
装表面を撮像する撮像部(詳細後述)である。なお、撮
像する時点は、塗料を吹き付けたのち所定時間(例えば
1〜2分)後に行なう。そのため、撮像部2は塗装ライ
ンの移動速度に合わせて、例えば1〜2分後に被塗装体
1が到達する位置に設置されている。上記の撮像部2で
撮像された塗装表面の画像は、画像処理部3で2値化等
の画像処理される。なお、この画像処理部3は画像情報
を記憶する画像メモリとコンピュータ等の演算装置で構
成される。上記の画像処理部3で処理された画像処理デ
ータは、表面粗さ演算部4と波長分布演算部8に送られ
る。
【0016】まず、表面粗さ演算部4では、入力した画
像処理データから塗装表面の凹凸のピーク・ツー・ピー
クの面平均に相当する粗さ度R(具体的には、後記のパ
ワースペクトル積分値Pまたは濃度ベクトルNを用い
る)を算出する。上記の表面粗さ演算部4で算出された
粗さ度は表面粗さ判定部5および第1膜厚演算部7へ送
られる。
【0017】表面粗さ判定部5は、上記の表面粗さ演算
部4から送られた粗さ度と所定の基準粗さ度との比較を
行なう。そして粗さ度が基準粗さ度(例えば2μm)未
満である場合(膜厚が例えば40μm以上に相当)に
は、通常の膜厚範囲であると判断して第1膜厚演算部7
で膜厚演算を行なわせ、粗さ度が基準粗さ度以上である
場合(膜厚が所定値未満に相当)には、膜厚が非常に薄
い範囲であると判断し、第2膜厚演算部9で膜厚演算を
行なわせる。また、塗装条件入力部6は、例えばキーボ
ード等の入力手段であり、塗料の種類、粘度等について
の情報を入力する。
【0018】一方、波長分布演算部8では、入力した画
像処理データのパワースペクトル周波数分析(例えば高
速フーリエ変換:FFT)を行ない、入力した画像デー
タから塗装表面の凹凸のパワースペクトルPS(詳細後
述)を算出する。そして第1膜厚演算部7は、表面粗さ
演算部4で求めた粗さ度Rと、その粗さ度の時間変化量
ΔRと、波長分布演算部8で求めたパワースペクトルP
S(波長λ)と、塗装条件入力部6から入力した塗装条
件とに基づいて未乾燥のウエット状態における塗装膜厚
hを算出する(詳細後述)。
【0019】また、第2膜厚演算部9は、波長分布演算
部8で求めたパワースペクトルPSに基づいて未乾燥の
ウエット状態における膜厚hを算出する(詳細後述)。
上記の表面粗さ演算部4、表面粗さ判定部5、第1膜厚
演算部7、波長分布演算部8および第2膜厚演算部9
は、例えばコンピュータのような演算装置で構成され
る。
【0020】上記のようにして求められた塗装膜厚h
は、液晶表示装置やCRT表示装置等の表示器10で表
示して作業員に提示すると共に、塗装条件制御システム
11へ送られ、塗装ガン12の作動条件(塗料の吐出
量、ベル回転数、エア圧等)を所望の塗装膜厚を達成す
るための最適条件に保つように制御する。
【0021】上記のように、図1の装置においては、表
面粗さ判定部5によって表面の粗さ度から概略の膜厚を
判定し、その結果、膜厚が通常の範囲(例えば40μm
程度以上)の場合には、計測精度の極めて高い第1膜厚
演算部7で膜厚演算を行ない、膜厚が非常の薄い場合
(例えば40μm未満)には、薄い膜厚でも計測可能な
第2膜厚演算部9で膜厚演算を行なうように構成してい
る。したがって自動車車体塗装の上塗りベース塗装のよ
うな20〜30μm程度の非常に薄い塗装でも上塗りク
リア塗装のような比較的厚い膜厚(50〜80μm程
度)の場合でも共に高精度で膜厚を計測することが出来
る。
【0022】なお、図1の装置においては、表面粗さ判
定部5を設け、表面の粗さ度から膜厚の概略値を判定し
て膜厚演算の方法を切り換えるように構成しているが、
第1膜厚演算部7の後に膜厚判定部(図示せず)を設
け、その結果の値が所定の基準膜厚(例えば40μm)
より薄い場合に第2膜厚演算部9の数値を膜厚値として
用いるように構成しても良い。また、上記膜厚判定部と
表面粗さ判定部5との両方を設け、両者の判定結果の少
なくとも一方が基準値に達した場合、すなわち粗さ度が
基準粗さ度以上か膜厚が基準膜厚以下かの少なくとも一
方が満足された場合に、第2膜厚演算部9の数値を膜厚
値として用いるように構成しても良い。或いは両方の判
定値が基準に達した場合にのみ第2膜厚演算部9の数値
を用いるようにしても良い。
【0023】次に、各部の詳細構成と作用について説明
する。最初に、第1膜厚演算部7と第2膜厚演算部9に
おける膜厚測定の方法について説明する。第1膜厚演算
部7における膜厚測定方法は、塗料を塗布した直後の未
乾燥状態、すなわちウエット状態の塗装表面の平滑化現
象に着目して塗装膜厚を測定するものであり、この方法
には平滑化理論式による方法と濃度ベクトルによる方法
との二つの方法がある。また、第2膜厚演算部9におけ
る膜厚測定方法は、波長分布に基づいて膜厚を演算する
方法であり、極めて薄い膜厚測定に適した方法である。
【0024】まず、第1膜厚演算部7における膜厚測定
の第1の方法について説明する。図2は、塗装後の塗膜
の断面図である。塗装直後には、(a)に示すように、
塗装表面は初期の付着粒子の結合によって凹凸状態にな
っている。そして時間の経過と共に、(b)に示すよう
に、レベリング力によって次第に平滑化され、最終的に
は、(c)に示すように、平滑化状態となる。本発明に
おいては、このような平滑化現象に着目し、ウエット状
態における塗装表面の凹凸状態を測定し、それによって
平滑化後の塗装膜厚を算出するものである。上記のごと
きウエット状態における凹凸状態を測定するには、光干
渉式表面粗さ計など種々の方法(例えば「機械工学便欄
日本機械学会1989年9月30日 新版3刷発行
B2編 207頁〜208頁」に記載)があるが、ここ
では撮像手段(例えばCCDカメラ)で塗装表面を撮像
し、その情報を画像処理する方法について説明する。
【0025】図3は、撮像部2の一例を示す断面図であ
る。図3に示すように、撮像部の基本的構成は、光源3
1、明暗パタン板32、反射鏡33、レンズ34、CC
Dカメラ35から成る。上記の明暗パタン板32は、所
定間隔(例えば1mm間隔)で直線状のスリットが設け
られた不透明板(または透明板に所定間隔で不透明なス
トライプパタンを印刷したもの)である。そして光源3
1からの平行光線を上記明暗パタン板32と反射鏡33
とレンズ34とを介して塗装面に斜め方向から照射する
ことにより、被塗装体上にスリットに対応した縞模様を
つくる。この縞模様は、被塗装体上の凹凸に応じて歪ん
だ波形となる。その反射光をCCDカメラ35で撮像
し、上記の歪んだ縞模様、すなわち表面粗さの情報を入
力するようになっている。上記のごとき縞模様の画像情
報を画像処理し、パワースペクトル周波数分析(例えば
高速フーリエ変換処理:FFT)を行なってパワースペ
クトルPSを求める。
【0026】図4は、上記パワースペクトルPSの周波
数特性図であり、縦軸はパワースペクトルPS、横軸は
周波数f(波長λの逆数、f=1/λ)である。図4に
おいて、第1のピーク波形は、前記スリットに対応し
た基本縞による基本波形のパワースペクトル、第2のピ
ーク波形は、塗装表面の凹凸波形の長波長領域(10
〜1mm程度)に対応したパワースペクトル、第3のピ
ーク波形は、凹凸波形の中波長領域(1〜0.1mm
程度)に対応したパワースペクトル、第4のピーク波形
は、凹凸波形の短波長領域(0.1mm以下)に対応
したパワースペクトルを示す。
【0027】上記のパワースペクトル波形において、凹
凸波形の長波長領域のピーク波長、すなわち第2のピー
ク波形のピーク値に対応した波長λを求め、さらに表
面の粗さを表示する値として、第2のピーク波形の積
分値(斜線部分の面積)を求め、それをパワースペクト
ル積分値Pとする。上記の波長λ(長波長領域のピーク
波長)とパワースペクトル積分値Pとは、下記のごとく
膜厚と関係があり、これらの値に基づいて、下記の平滑
化理論式を用いて膜厚を算出することが出来る。
【0028】まず、パワースペクトル積分値Pによる平
滑化特性を説明すると、表面の凹凸(ピーク・ツウ・ピ
ーク値)の面積平均値に相当する粗さ度Ra(単位はμ
m)とパワースペクトル積分値Pとは、図5に示すよう
な関係にあり、下記(数1)式、(数2)式に示す関係
がある。 P=Q+k×√Ra …(数1) Ra={(P−Q)/k}2 …(数2) ただし、上式において、Qは粗さ補正値、kは粗さ変換
係数である。
【0029】パワースペクトル解析値による平滑化理論
式の導出では、まず、ウエット塗膜平滑化理論式(近似
式)として、粗さ度Raは下記(数3)式で表される。 Ra=Ra0・exp(−t/τ) …(数3) ただし、Ra0はRaの初期値(時点0すなわち塗装直後
の値)、tは塗装後の経過時間である。また、τは粘性
流体の基本式から導出された時定数であり、後記(数
8)式に示すごときものである。
【0030】上記(数2)式を(数3)式に代入する
と、下記(数4)式が得られる。 {(P−Q)/k}2={(P0−Q0)/k}2 exp(−t/τ) …(数4) ただし、P0はPの初期値(時点0における値)であ
り、Q0はQの初期値である。
【0031】上記(数4)式において、P、P0をそれ
ぞれの補正値Q、Q0を含んだ値として、(P0−Q0
→P0、(P−Q)→Pと示せば、(数4)式は下記
(数5)式のように表すことが出来る。 P=P0・exp(−t/2τ) …(数5) また、時定数τは下記(数6)式で示される。 τ=3ηλ4/16π4γh3 …(数6) ただし、ηは塗料の粘度、λは前記の長波長領域のピー
ク波長、γは塗膜の表面張力、hはウエット状態におけ
る膜厚(撮像部分の平均値)である。以上から、パワー
スペクトル解析値による塗装膜厚hは、下記(数7)式
で示すようになる。
【0032】
【数7】
【0033】ただし、P1は時点t1におけるパワースペ
クトル積分値Pの値、P2は時点t2(ただし−t1
2)におけるPの値である。なお、τ'iは下記(数
8)式で示される。 τ'i=3η(ti)・λ4/16π4γ …(数8) ただし、i=1,2であり、η(ti)は塗料の粘度が塗
装後の経過時間の関数であることを示す。すなわち、塗
装条件入力手段7から入力するのは、塗装前における塗
料の粘度ηであるが、塗装後の塗着粘度は、塗装後の経
過時間に応じて変化する値η(ti)となる。この値は、
塗料組成(塗料内の揮発成分の割合等)や風速などによ
って定まる値である。
【0034】上記(数7)式から判るように、塗料の粘
度η、塗膜の表面張力γ、凹凸波形の長波長領域のピー
ク波長λ、塗装後の2つの時点t1、t2におけるパワー
スペクトル積分値Pの値から、ウエット状態における膜
厚hを求めることが出来る。上記の各数値のうち、塗料
の粘度ηと塗膜の表面張力γは、塗料の特性によって定
まる値であるから、予め判っている値を入力し、長波長
領域のピーク波長λとパワースペクトル積分値Pの値
は、前記の画像情報を処理した値を用いる。
【0035】図6は、上記(数7)式を用いた平滑化理
論値と測定値を比較したウエット平滑化動特性(パワー
スペクトル積分値P)を示す特性図である。図6におい
て、横軸は塗装後の経過時間、縦軸はパワースペクトル
積分値Pである。上記の測定は、塗布直後の画像を撮像
部2で撮影し、パワースペクトル解析を行なったもので
ある。図6から、測定値は理論値とほぼ一致した平滑化
特性となっていることがわかる。
【0036】また、下記の表1は、膜厚60μmと54
μmの2つのサンプルに対して、上記(数7)式の推定
式を用いて膜厚hを計測した結果を示す表である。表1
に示すように、数μmの精度で計測可能であることが判
る。
【0037】
【表1】
【0038】図1の実施例においては、撮像部2、画像
処理部3、表面粗さ演算部4、第1膜厚演算部7におい
て、上記のごとき処理を行ない、撮像個所の膜厚hを求
める。
【0039】また、前記(数7)式においては、塗装後
の2つの時点t1とt2における2つの値P1、P2を用
い、粗さ情報の時間変化量を用いて演算している。その
ため、塗装後に2つの時点で同一個所を撮像する必要が
ある。このためには、塗装ライン上の車体の移動に合わ
せて撮像部2を移動させる必要があるので、装置が複雑
になる。それを避けるためには、次のような方法があ
る。すなわち、被塗装体1である車体の他に、テストピ
ースを用意して被塗装体1と同じ条件で塗装を行ない、
時点t1(例えばt1=10秒、t1<t2)における値P
1は、テストピースの画像情報を処理して求めた値を用
いるようにする。このようにすれば、撮像部2は時点t
2(例えば塗装1〜2分後)において1回のみの撮像を
行なえばよいことになる。
【0040】なお、本実施例においては、基本的な測定
を塗装面の撮像と画像処理によって行ない、塗装表面の
粗さの情報としてパワースペクトル積分値Pと長波長領
域のピーク波長λとを用いて演算を行なう場合を例示し
た。しかし、塗装表面の粗さ情報としては、例えば、前
記本出願人の先行出願(特願平4−306966号)に
記載のように、光干渉式表面粗さ計を用い、凹凸のピー
ク・ツウ・ピークと凹凸の波長λに基づいて演算する方
法、或いは上記光干渉式表面粗さ計の測定結果から表面
の平均粗さ度Raと凹凸の平均波長λaとを用いて演算す
る方法などがあり、いずれを用いてもよい。
【0041】次に、第1膜厚演算部7における膜厚演算
の第2の方法について説明する。この方法は、濃度ベク
トルを用いたウエット塗膜面平滑化理論を利用して、ウ
エット膜厚計測の高速化を図るものである。この方法に
おいては、まず、前記表面粗さ演算部4で求めた表面粗
さ情報の2値化情報を処理して濃度ベクトルNiを演算
する。濃度ベクトルNiとは、前記図3に示した撮像部
2における明暗パタン板32のストライプパタンを被塗
装表面に照射して得られるストライプ像における各画素
毎のストライプ端(境界線)の法線の標準偏差(ばらつ
き)の大きさを言う。この濃度ベクトルNiによって塗
膜面の平滑度(したがって粗さ度)が判る。
【0042】濃度ベクトルNiを求めるには、まず、図
7(a)に示すような2値化されたストライプ画像から
輪郭線を抽出して図7(b)に示すような画像を得る。
次にこの画像の輪郭線を平滑化して図7(c)に示すよ
うな画像を得た後、さらに図7(d)に示すような平滑
化した各輪郭線の各構成画素毎の法線の方向を求めるこ
とによって得られる。
【0043】図8は、濃度ベクトルNiとパワースペク
トル積分値Piとの相関関係を示すグラフであり、横軸
は濃度ベクトルNi、縦軸はパワースペクトル積分値P
iである。このグラフから明らかなように、濃度ベクト
ルNiの実測値(図中破線で示す)の増加にほぼ比例し
てパワースペクトル積分値Piの実測値も増加してい
る。上記の関係から塗膜の表面粗さ度を、濃度ベクトル
Niとパワースペクトル積分値Piとで測定し、濃度ベ
クトルNiとパワースペクトル積分値Piの相関性を求
めると下記(数9)式で表されることが判る。
【0044】 Pi=a・Ni+b …(数9) ただし、a:定数 b:定数 次に、濃度ベクトルを用いたウエット膜厚hの演算につ
いて説明する。濃度ベクトルを用いたウエット膜厚の平
滑化理論式は、前記(数5)式に上記(数9)式を代入
して求めた下記(数10)式で表すことが出来る。 N=N0・exp(−t/2τ) …(数10) ただし、N=a・Ni+b−P00=a・Ni+b そしてウエット膜厚hは、前記(数7)式に上記(数1
0)式を代入して求めた下記(数11)式で表すことが
出来る。
【0045】
【数11】
【0046】図9は、濃度ベクトルNiを用いたウエッ
ト膜厚の平滑化特性の理論値と実際の測定値とを示すグ
ラフであり、横軸は時間、縦軸は濃度ベクトルNi(単
位はμm)を示す。ウエット膜厚の平滑化特性を実測し
た場合、実際の測定値は図9に示す通り理論値に対して
数μmの精度で計測されており、十分な精度であること
が確認されている。
【0047】次に、第2膜厚演算部9における膜厚演算
の方法、すなわち波長分布演算部8で求めた波長分布に
基づいて膜厚を演算する方法について説明する。前記の
波長分布演算部8で求めたパワースペクトル波形(図1
0)において、凹凸波形の長波長領域のピーク波長、す
なわち第2のピーク波形のピーク値に対応した波長λ
p(前記図4で説明したλと同じもの)は、後記のごと
く塗装の膜厚と相関性があるので、上記の波長λpを求
めることによって塗装膜厚を計測することが出来る。
【0048】図11(詳細後述)に示すような塗料粒子
の付着メカニズムの基礎実験、具体的には塗料の吹き付
け時間を制御することによって膜厚を変化させ、そのと
きの塗装膜面の波長分布を測定した実験の結果によれ
ば、被塗装面への付着粒子は、粒子結合によって粒子径
が図14に示すように成長することが確認された。さら
に、塗装膜厚hと塗装面の凹凸の波長λとの関係は、下
記(数12)式または(数13)式の関係があり、図1
6に示すようになることが導出された。
【0049】
【数12】
【0050】h=k'×λ−k" …(数13) ただし、k、k'、k"、α:塗料に応じて定まる定数 上記の数式および図の特性から判るように、付着粒子径
(すなわち塗装面の凹凸の波長)は、膜厚が厚いほど粒
子の結合数が多くなるため、大きくなる。すなわち、塗
膜面の成長は塗装条件である膜厚値に依存することを示
しており、膜厚値の推定を行なう場合には、上記(数1
2)式または(数13)式を用いて、塗膜面の凹凸の波
長から膜厚値の算出を行なうことが可能である。
【0051】以下、第2膜厚演算部9における塗装膜厚
測定の原理について詳細に説明する。まず、図11に基
づいて、塗装時における塗装面への塗料粒子の付着と塗
装膜面の形成過程について説明する。図11(a)に示
すように、塗装ガンから塗装面へ向けて微粒化した塗料
粒子を吹き付ける。この際、塗料粒子の平均粒子径は、
基本的には、塗装条件である塗料速度(下記、、
)と空気速度(下記)と塗料物性(下記)によっ
て決まる。ただし、上記の〜は次の通りである。 塗装ガンの吐出量 塗装ガンのベル回転数 印加電圧 エア圧 塗料物性(粘度、表面張力、密度) なお、ベル回転数とは塗料を微粒化する回転体の回転数
であり、印加電圧とは塗料粒子に静電気を付加するため
に印加する静電圧(50kV程度)であり、エア圧と
は、塗料粒子が周辺に飛散しないように周囲に気流の壁
を作るための気圧である。上記のようにして吹き付けら
れた塗料粒子は、塗装面に衝突し、つぶれた形で付着す
る。
【0052】次に、図11(b)に示すように、塗膜形
成の初期には、付着した小さな塗料粒子が大きな塗料粒
子に結合され、より大きな粒子を形成する。そして、さ
らに粒子の結合が進み、表面張力と境界張力とによって
初期の塗膜面が形成される。上記のように粒子の付着と
結合によって塗膜が形成されていくため、初期の塗膜表
面状況は大きな塗装粒子の粒子径r、粒子衝突速度v
x、塗料物性(表面張力γ、粘度η)等に依存する。例
えば、上塗り塗料の場合、初期塗膜表面の凹凸の高さは
数〜数十μm程度であり、また、凹凸の波長分布は3〜
6mm程度の長波長領域が支配的であることが確認され
た。そして上記の長波長領域のピーク波長λpと大きな
塗料粒子の粒子径rとには相関性があることが実験によ
って確認された。
【0053】次に、図11(c)に示すように、上記の
初期塗膜形成後の塗膜表面は、レベリング力(表面張力
γと重力gとの合成力)によって次第に平坦化して行
く。この平坦化速度は上記のレベリング力と塗料物性
(表面張力γ、粘度η)および膜厚hによって決定され
る。例えば、上塗り塗料の場合、平坦化速度は時定数で
数十秒〜数百秒であることが確認されている。
【0054】次に、塗料粒子径と塗膜面の凹凸との関係
について図12〜図16に基づいて詳細に説明する。図
12に示すように、塗装ガンから吹き付けられた塗料粒
子の粒子径をrとし、それが付着した付着粒子の幅をλ
/2、厚さ(ピーク値)をhとすれば、波長λの凹凸を
持つ塗膜面が形成される。なお、上記付着粒子の幅λ/
2と波長λとの関係は、実験的に求められたものであ
り、ほぼこの程度の値になることが確認されている。上
記の場合における塗料粒子径rは、下記(数14)式で
示される。
【0055】
【数14】
【0056】上記の理論式をグラフに示すと、図13の
破線で示すごとき曲線となる。しかし、実際には、付着
粒子の結合があるため、図13の実線で示すような特性
となる。この実験で求めた特性を数式で示すと、下記
(数15)式のようになる。
【0057】
【数15】
【0058】ただし ks:補正係数 λp:塗膜面の凹凸のピーク波長(前記長波長領域のピ
ーク波長に相当) a:定数 上記のごとき実験で求めた凹凸のピーク波長λpと塗料
粒子径rとの関係を、付着粒子の結合を考慮して解析す
る。まず、図14に示すように、付着粒子径Rは、塗布
時間が大きくなるに従って順次大きくなる。この関係を
数式で示すと下記(数16)式のようになる。
【0059】
【数16】
【0060】ただし R0:初期粒子径 b,c:定数 なお、図14において、塗布時間とは1ヶ所に塗布する
持続時間であり、初期粒子径とは付着前の塗料粒子径で
あり、付着粒子径とは最初に付着したときの粒子径であ
る。この付着粒子径Rは塗布時間が長くなるに従って順
次塗布される粒子が結合するので次第に大きくなる。
【0061】また、図15は、塗布時間と塗膜面の凹凸
波長との関係を、実測値(破線)と周波数解析によるパ
ワースペクトルから求めた結果とについて比較した特性
図である。図15から判るように、パワースペクトルか
ら求めた値は実測値に良く一致している。したがってパ
ワースペクトルから求めた凹凸波長(前記長波長のピー
ク波長λp)を用いて付着粒子径Rを求めることが出来
る。さらに、自動塗装機においては、塗布時間は一定で
あるから、下記(数17)式によって塗料粒子径rも求
めることが出来る。 2r(t)=λp(t) …(数17) 上記のごとき考察により、基本的には前記(数15)式
により、パワースペクトルから求めた凹凸の長波長領域
のピーク波長λpを用いて、塗料粒子径rを求めること
が出来る。具体的には、実験で前記図13の特性を求
め、それから(数15)式の各係数ks、aを予め求め
ておけば、撮像画像から求めたピーク波長λpを用いて
塗料粒子径rを求めることが出来る。
【0062】なお、塗料粒子の粒子径rは塗料の微粒化
の程度に対応しているから、塗料粒子の粒子径rをその
まま用いて微粒化度を表すことも出来るし、或いはrの
逆数、もしくは基準値との百分率などを用いて微粒化度
を表すことも出来る。
【0063】また、図14に示すように、付着粒子径R
は塗布時間すなわち膜厚が大きくなるに従って順次大き
くなっている。この関係を、さらに塗布時間ではなく膜
厚値を実測しながら、膜厚と付着粒子径の関係、すなわ
ち膜厚と塗膜面の凹凸の波長との関係を解析すると、膜
厚と波長(前記ピーク波長λp)との関係は、図16に
示すようになる。すなわち、膜厚が大きくなるとピーク
波長λpも大きくなり、前記(数12)式、(数13)
式に示したごとき関係が実験的に得られた。したがって
塗膜表面の凹凸波形の長波長領域のピーク波長λpを求
めることにより、ウエット状態の膜厚hを算出すること
が出来る。
【0064】図1の実施例においては、波長分布演算部
8で、入力した画像処理データから塗装表面の凹凸波形
のパワースペクトルPSを求め、前記の長波長領域のピ
ーク波長λpを算出する。そして第2膜厚演算部9で
は、予め実験で求めた前記図16の特性(数12式また
は数13式)を用いて上記ピーク波長λpから塗装の膜
厚値を演算する。
【0065】なお、上記の演算において、図16の特性
は、正確には塗料の種類に応じて異なるので、塗装条件
入力部6から入力した中塗り、上塗りベース、上塗りク
リア等の塗料の種類に応じて(数12)式、(数13)
式の係数値を変更する。
【0066】上記のように、第2膜厚演算部9において
は、塗装後の未乾燥塗装表面の画像から、凹凸波形のパ
ワースペクトラムにおける長波長領域のピーク波長のみ
を演算し、その値と予め実験で求めた塗装膜厚との関係
から膜厚を求めるように構成している。したがって塗装
後の塗膜の粘度に影響されないので、膜厚が20〜30
μm程度と極めて薄い場合でも正確な膜厚計測を行なう
ことが出来る。そのため自動車ボディの上塗りベース塗
装のような極めて薄い塗装面に対しても、塗装直後に非
接触で容易に計測することが出来、塗装条件を直ちにフ
ィードバック制御することが出来るので、塗装品質を維
持、向上させることができると共に、塗装膜厚計測の工
数を大幅に低減することが出来る。
【0067】次に、図17は本発明の第2の実施の形態
を示すブロック図である。一般に、自動車の車体塗装の
ような塗装自動化ラインでは、上塗り、中塗り、或いは
塗装色の違い等のように、色々な塗料を用いるため、そ
の塗料の種類に応じた条件を入力する必要がある。ま
た、車体のような大型の被塗装体の場合には、吹き付け
面積が大きいため、塗装部位によっては塗装条件が必ず
しも均一にならない場合がある。したがって精度のよい
計測を行なうためには、塗装表面の複数個所を撮像し、
それらの各部位におけるピーク波長λpの平均値を用い
て膜厚演算を行なうことが望ましい。
【0068】図17の実施の形態は、上記の理由によ
り、撮像部2では塗装面の複数個所の撮像を行なってそ
の画像情報を順次演算処理し、求められた複数の波長分
布(例えばピーク波長λp)を波長平均処理部13で平
均化し、また、塗装条件入力部6では塗装の種類等に応
じた情報を入力し、第1膜厚演算部7または第2膜厚演
算部9で用いる波長分布情報としては、上記の平均化し
た値を用いるように構成している。
【0069】また、1個の撮像部2を用いて複数個所の
撮像を順次行なうと、計測時間が長くなると共に計測手
順が複雑になるので、複数の撮像部を設け、同時に複数
個所の画像情報を入力するように構成してもよい。これ
により、計測時間を短縮できると共に計測手順を簡略化
することが出来る。
【0070】さらに、撮像部以外に画像処理部、波長分
布演算部および膜厚演算部も並列に設け、各撮像部で撮
像した画像情報を並列演算処理し、求められた複数の膜
厚値を平均膜厚演算部(図示せず)で平均化した値を膜
厚値とするように構成し、各演算を並列化することによ
り、膜厚計測処理をさらに高速化することが出来る。
【0071】なお、上記図17に示した実施の形態にお
いても、前記図1の実施の形態で説明したのと同様に、
表面粗さ判定手段5の代わりに、第1膜厚演算部7の後
に膜厚判定部(図示せず)を設け、その結果の値が所定
の基準膜厚より薄い場合に第2膜厚演算部9の数値を用
いるように構成しても良い。
【0072】次に、図18は本発明の第3の実施の形態
を示すブロック図である。この実施の形態は、前記図1
7の実施の形態の構成に、乾燥した後のドライ膜厚を演
算するドライ膜厚演算部14を付加したものである。ド
ライ膜厚の演算には、塗料中の非揮発性分すなわち乾燥
後に残る成分の含有量情報が必要である。そのため、こ
の実施の形態においては塗装条件入力部6から塗料の非
揮発性分含有量N.Vを入力し、前記の演算で求めたウ
エット膜厚hと非揮発性分含有量N.Vから、下記(数
18)式によってドライ膜厚Hを演算する。
【0073】H=N.V×h …(数18) なお、非揮発性分含有量N.Vの代わりに揮発性成分含
有量(=1−N.V)を用いても同様にドライ膜厚Hを
演算することが出来る。また、上記の実施の形態におい
ても、前記図1の実施の形態で説明したのと同様に、表
面粗さ判定手段5の代わりに、第1膜厚演算部7の後に
膜厚判定部を設け、その結果の値が所定の基準膜厚より
薄い場合に第2膜厚演算部9の数値を採用するように構
成しても良い。
【0074】
【発明の効果】以上説明したごとく本発明においては、
基本的には、粗さ度と、粗さ度の時間変化量と、波長分
布と、塗装条件とに基づいて塗装膜厚を算出し、表面粗
さ度が基準粗さ度以上か上記の算出した膜厚が基準膜厚
以下の極めて薄い膜厚である場合には、波長分布に基づ
いて膜厚を演算するように構成したことにより、膜厚が
比較的厚い場合には、非常に精度の高い膜厚計測を行な
うことが出来、かつ膜厚が非常に薄い場合でも比較的精
度の良い計測を行なうことが出来る、という効果が得ら
れる。
【0075】また、塗装表面の複数個所を撮像し、それ
ら複数個の波長分布を平均した値を用いて膜厚を演算す
ることにより、さらに正確な膜厚を計測することが出来
る。また、計測したウエット膜厚から乾燥後のドライ膜
厚を演算することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すブロック図。
【図2】塗装後の塗膜の状態を示す断面図。
【図3】撮像部2の一例を示す断面図。
【図4】パワースペクトルPSの周波数特性図。
【図5】表面の凹凸の面積平均値に相当する表面粗さR
aとパワースペクトル積分値Pと関係の関係を示す特性
図。
【図6】(数7)式を用いた平滑化理論値と測定値を比
較したウエット平滑化動特性を示す特性図。
【図7】濃度ベクトル演算における画像処理を示す図。
【図8】濃度ベクトルNiとパワースペクトル積分値P
iとの相関関係を示すグラフ。
【図9】濃度ベクトルNiを用いたウエット膜厚の平滑
化特性の理論値と実際の測定値とを示すグラフ。
【図10】パワースペクトルPSの周波数特性図。
【図11】塗装時における塗装面への塗料粒子の付着と
塗装膜面の形成過程を示す図。
【図12】飛行中の塗料粒子と付着粒子との関係を示す
図。
【図13】塗料粒子の平均径と凹凸波形の波長との関係
を示す特性図。
【図14】塗料の粒子径と塗布時間との関係を示す特性
図。
【図15】波長λと塗布時間との関係を示す特性図。
【図16】波長λとウエット膜厚hとの関係を示す特性
図。
【図17】本発明の第2の実施の形態を示すブロック
図。
【図18】本発明の第3の実施の形態を示すブロック
図。
【図19】従来装置の一例の断面図。
【符号の説明】
1…被塗装体(ボディ) 8…波長分布演算部 2…撮像部 9…第2膜厚演算部 3…画像処理部 10…表示器 4…表面粗さ演算部 11…塗装条件制御シ
ステム 5…表面粗さ判定部 12…塗装ガン 6…塗装条件入力部 13…波長平均処理部 7…第1膜厚演算部 14…ドライ膜厚演算

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】塗料を塗布した直後の未乾燥塗装表面を撮
    像する撮像手段と、 上記撮像手段からの画像情報を画像処理する画像処理手
    段と、 上記画像処理手段で処理された画像処理データに基づい
    て、塗装表面の凹凸波形の波長分布を算出する波長分布
    演算手段と、 上記画像処理手段で処理された画像処理データに基づい
    て、塗装表面の粗さを算出する表面粗さ算出手段と、 少なくとも塗料の粘度を含む塗装条件を入力する塗装条
    件入力手段と、 上記表面粗さ算出手段で算出された粗さ度と、該粗さ度
    の時間変化量と、上記波長分布演算手段で算出された波
    長分布と、上記塗装条件入力手段から入力された塗装条
    件とに基づいて塗装膜厚を算出する第1膜厚演算手段
    と、 上記表面粗さ算出手段で算出された粗さ度と所定の基準
    粗さ度とを比較する表面粗さ判定手段と、上記第1膜厚
    演算手段で求めた膜厚と所定の基準膜厚とを比較する膜
    厚判定手段との少なくとも一方の手段と、 上記粗さ度が上記基準粗さ度以上であるかまたは上記膜
    厚が上記基準膜厚以下であるかの少なくとも一方または
    両方であるときには、上記波長分布演算手段で求めた波
    長分布に基づいて塗装の膜厚を算出する第2膜厚演算手
    段と、 を備えたことを特徴とする塗装膜厚計測装置。
  2. 【請求項2】上記波長分布演算手段は、塗装表面の凹凸
    波形のパワースペクトラムにおける長波長領域のピーク
    波長を求めるものであり、上記第2膜厚演算手段は、上
    記長波長領域のピーク波長の値と予め実験で求めた塗装
    膜厚との関係から、ウエット状態における膜厚を算出
    し、それを膜厚値として出力するものである、ことを特
    徴とする請求項1に記載の塗装膜厚計測装置。
  3. 【請求項3】上記撮像手段では、塗装表面の複数個所を
    撮像し、上記波長分布演算手段では上記複数個所の塗装
    表面に対応した複数個の波長分布を算出し、 かつ、上記複数個の波長分布を平均処理する波長平均処
    理手段と、少なくとも塗料の種類を含む塗装条件を入力
    する塗装条件入力手段と、を備え、 また、上記第2膜厚演算手段は、上記波長平均処理手段
    で求めた波長分布の平均値と上記塗装条件とに基づいて
    塗装膜厚を算出するものである、ことを特徴とする請求
    項1または請求項2に記載の塗装膜厚計測装置。
  4. 【請求項4】少なくとも塗料の塗着後の非揮発性成分情
    報を含む塗装条件を入力する塗装条件入力手段と、 上記第1膜厚演算手段および第2膜厚演算手段で求めた
    ウエット状態における膜厚と上記塗装条件とに基づいて
    ドライ状態の膜厚を演算するドライ膜厚演算手段と、 を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れ
    かに記載の塗装膜厚計測装置。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09262533A (ja) * 1996-03-27 1997-10-07 Nissan Motor Co Ltd 塗装品質解析装置

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09262533A (ja) * 1996-03-27 1997-10-07 Nissan Motor Co Ltd 塗装品質解析装置

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