JPH0896A - 緑化壁面を構成するための植栽壁ユニット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 通常のパネル状建材のように壁面に対して取
付けが自由に行え且つ搬送も自由に行える緑化壁面用の
植栽壁ユニットをえる。 【構成】 前面に孔付き扉を備え且つ内部に棚段をもつ
奥行きの浅いボックス壁内に該棚段を利用してつる性植
物を鉢植えすると共に，該扉の孔を通じて該植物のつる
と葉部を扉前に導出させてなるつる性植物の植栽壁ユニ
ットであって，該ボックス壁内の上部に散水ノズルを取
付けると共に該ボックス壁内の下部に液体容器を配置
し，該液体容器内の液体を該散水ノズルに送液するため
のポンプを取付け，該扉の少なくとも外側表面に気生藻
類を被着させてなる，緑化壁面を構成するための植栽壁
ユニット。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は，建物内外の自然環境造
りを簡便に且つ融通性よく行えるようにした植栽壁ユニ
ットに関する。

【０００２】

【従来の技術】都市空間やビル空間，更には建設工事現
場等において，自然環境造りがいろんなアイデアのもと
で実施されている。その例として，植物による緑化があ
る。これには，鉢植え植物の植栽が最も普通に採用され
ている。この鉢植えにも各種の植物を組合せができるよ
うにしたものや，移動と配置換えが簡単にできるように
したものも知られている。

【０００３】つる性植物による壁面緑化も行われてい
る。この場合は，特に建物の南側外壁につる性植物を這
わせることによって直射日光を遮ぎり，これによって冷
房負荷の軽減に役立てたりしている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】つる性植物は二次元的
な拡がりをもって成長するので，壁面緑化を図るのに適
しているが，幹で自立する一般植物のように鉢植えして
搬送移動するのが一般に困難であり，また成長も遅いの
で短期間に緑化を行なうのが困難である。このため，つ
る性植物による壁面緑化は，建物外壁に対する野外栽培
の例を除いて，あまり普及していない。本発明はこのよ
うな問題を解決することを目的としたものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明によれば，前面に
孔付き扉を備え且つ内部に棚段をもつ奥行きの浅いボッ
クス壁内に該棚段を利用してつる性植物を鉢植えすると
共に，該扉の孔を通じて該植物のつるおよび葉部を扉前
に導出させてなるつる性植物の植栽壁ユニットであっ
て，該ボックス壁内の上部に散水ノズルを取付けると共
に該ボックス壁内の下部に液体容器を配置し，該液体容
器内の液体を該散水ノズルに送液するためのポンプを取
付け，該扉の少なくとも外側表面に気生藻類を被着させ
てなる，緑化壁面を構成するための植栽壁ユニットを提
供する。

【０００６】

【作用】本発明の植栽壁ユニットは，高さおよび横幅に
比べて奥行きの浅いパネル形状（例えば高さ１ｍ，横幅
１ｍ，奥行き０.１５ｍ程度のパネル形状）の外形をも
つボックス壁につる性植物を植栽したものであるから，
このユニットを通常のパネル建材のように建物壁に沿っ
て据付けたり，自身で壁面を構成したりすることができ
る。したがって，このユニットを上下左右に連設設置す
ることによって任意の広さと形状をもつ緑化壁面を自由
に形成できる。

【０００７】前面の扉は，ボックス壁内につる性植物を
鉢植えしたり取り出したりするのに用いられ，ユニット
の使用現場でつる性植物の鉢植えも可能となる。扉に設
けた孔を通じてつるをボックス内外に導くことにより，
ボックス前面がつる性植物で緑化される。また扉の外側
表面に気生藻類が被着していることによって，ボックス
前面には隙間なく緑で覆われる。

【０００８】ボックス内底部に設置された液体容器には
養分と水分が収容され，これがポンプの駆動によってボ
ックス内の散水ノズルに供給され，鉢植えされたつる性
植物に散布されると共に，扉の内面・外面に付着してい
る気生藻類にも水分と養分がミストや湿気によって供給
されるので，これら植物はみずみずしい緑色の状態に維
持される。ポンプ用モータの電源は一般のＡＣ電源コン
セントから取るが，ＡＣ電源コンセントの無い屋外の場
合には別途に太陽電池を設置して電源に供することもで
きる。

【０００９】ユニットに植栽するつる性植物としては，
垂下型のもの，例えばツルニチニチソウ(Vinca major
L.), フクリンツルニチニチソウ, フクリンヒメツルニ
チニチソウ等が好適である。ボックス内の棚に載せる鉢
は軽量のプラスチックスを使用し，土壌も軽量のもの例
えばビーナスライト, パーライト, ピートモス, バーミ
キュライト, ガーデンロード等を使用するのかよい。

【００１０】他方, 扉の内外に付着させる気相藻類には
例えば Klebsormidium flaccidumやChlorella luteovir
idis等を用いる。これらは，別途の施設で大量培養した
藻類を自然沈澱で濃縮し，好ましい緑色の濃度に調整
し, この濃縮藻類を噴霧器等を用いて該ボックスの扉表
面に吹き付けることによって，扉に付着させることがで
きる。扉に付着した藻類は，ボックス内部から湿分の供
給を受けると共に, 外側のつる性植物が直射日光と雨当
たりを防ぐ役割を果たすので，扉から剥げ落ちることな
く生育を続けることができる。

【００１１】

【実施例】図１は，本発明の植栽壁ユニットの全体構成
例を示したものである。１は前面開口の樹脂製のケーシ
ングであり，このケーシング１の前面開口には扉２が蝶
番３によって縦開きできるように取付けてある。この扉
２を締めると６面体のボックス壁が形成される。このボ
ックスは本例のものでは高さ１ｍ×横幅１ｍ×奥行き
０.１５ｍであり，奥行きが浅いのでパネルに似た形状
を有している。扉２には多数の孔４が開けてある。

【００１２】ケーシング１内には，多孔性（網体）の棚
５が水平方向に図例では２段に設置してあり，各棚５
に，つる性植物が植栽された鉢６が載置される。鉢６は
発泡性ポリウレタン等の荷重の軽い樹脂製のものが使用
されている。この植栽鉢６を棚５に載置したあとで扉２
を締め，つると葉部を扉の孔４から外に延び出させる。
他方，扉４には，少なくともその表面の全面に気生藻類
（図には見えない）が被着されている。

【００１３】ケーシング１の底部には液体容器７が設置
されており，この液体容器７内には水と栄養塩の混合液
が貯留される。８は混合液を注入する注入口を示してお
り，この注入口８は別途に設置される溶液タンク（図示
しない）にホースで接続される。この液体容器７の上面
にはフイルタ１０が蓋代わりに設置してある。

【００１４】ケーシング１の上部には散水ノズル９が取
付けられ，液体容器７の混合液がこの散水ノズル９にポ
ンプ１１によって送液される。１２はこのための配水管
を示している。１３は錠前を示す。

【００１５】ポンプ１１の駆動によって散水ノズル９か
ら混合液が霧状に噴霧されるが，ボックス内を下降する
水滴は多孔性の棚５を通過し，フイルタ１０で混雑物が
分離されたあと液体容器７に還液される。この混合液の
噴霧はタイマー駆動で予め設定された時間毎に間欠的に
行われるが，この噴霧によってつる性植物と気生藻類に
湿分が供給される。

【００１６】図２は，図１のユニットの設置状態を図解
的に示したものであり，図示の例では既設構造物の壁体
１４に対して，ケーシング背面板を貫通してアンカー１
５を打ち込むことにより，ユニット全体の荷重を壁体１
４に支持させている。ユニットの設置面が外壁の南面の
場合には，このユニットの上部に太陽電池１６を据付け
ることによりポンプ駆動用電力を供給することができ
る。もっとも，太陽電池１６の設置位置は，本例のもの
に限らず，ユニットとは離れた別の適切な場所に設置
し，送電線によって送電してもよい。また，室内用電源
が存在する場合にはコンセント１７によって市販電源に
接続しでポンプを駆動する。

【００１７】図３は，本発明の植栽ユニットを正面から
見た例を示しており，扉２の各孔４から延び出した垂下
型のつる性植物がユニットの前面を覆っている状態を示
している。扉２の外側表面には前記のように気生藻類が
被着しているので，つる性植物で覆われていない部分も
気生藻類の天然緑色でカバーされ，全体として自然な緑
色で覆われるようになる。

【００１８】図４と図５は，図３のユニットを方形に組
み合わせた状態と，ピラミッド型に組み合わせた状態を
示している。図例の他にも色々な組み合わせ方式がある
が，いずれにしても，本発明のユニットはそれ自身が成
長している植物の瑞々しい天然緑色を保持しているの
で，コンクリート壁や石材仕上げに比べて，より自然な
美的な環境をデザイン的に自由に工夫しながら造り出す
ことができる。

【００１９】

【発明の効果】以上説明したように，本発明の植栽壁ユ
ニットは土木建築用の内外装建材に類似のパネル形状を
有しながら，生きた植物自身の緑を装飾しているので，
壁面等の二次元的な拡がりをもつ構造物に対して，より
自然な緑を自由に演出できるという効果を奏する。そし
て，この天然の緑を維持するための養分と水分の補給は
各ユニット毎に自動制御と管理が可能であるから，その
メインテナンスに対する労力は軽微である。

【００２０】このようなことから，室外では例えば公
園，広場等はもとより一般道路や一般建物等に対して，
また室内では例えばホテル，空港，病院等のロビーやホ
ールに類する公共的空間に対して，自然環境を創出しよ
うとする壁面デザイン設計に新しい材料を提供すること
ができ，さらに殺風景な各種の工事現場に緑の環境を創
出することも簡単に行える。

【００２１】加えて，本発明ユニットはそのつる性植物
と気生藻類の生育を続けることにより，直射日光を遮る
作用と炭酸同化作用による空気浄化作用によって，都市
を自然な環境に復元できるという効果もある。しかも，
本発明ユニットはその組合せが自由で且つ搬送移動も自
由に行えるので，都市・地方を問わず緑化のニーズに応
じて即応が可能となり，また，つる性植物の流通が促進
して新しい市場が形成できるという経済的効果もある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の植栽壁ユニットの構成例を示す全体斜
視図である。

【図２】図１のユニットの設置状態を図解的に示した略
断面図である。

【図３】本発明の植栽ユニットの例を正面から見た図で
ある。

【図４】図３のユニットを方形に組み合わせた状態を示
す正面図である。

【図５】図３のユニットをピラミッド型に組み合わせた
状態を示す正面図である。

【符号の説明】

１ ケーシング ２ 扉 ４ 扉の孔 ５ 棚 ６ 鉢 ７ 液体容器 ９ 散水ノズル １０フイルタ １１ポンプ １２配水管（ビニール製） １３錠前 １４建物壁 １５壁に固定する杭，アンカ １６太陽電池パネル

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ａ０１Ｇ 27/00 ５０３ Ｃ 9318−2Ｂ ５０４ Ｃ 9318−2Ｂ (72)発明者 柵瀬 信夫 東京都調布市飛田給二丁目19番１号 鹿島 建設株式会社技術研究所内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 前面に孔付き扉を備え且つ内部に棚段を
   もつ奥行きの浅いボックス壁内に該棚段を利用してつる
   性植物を鉢植えすると共に，該扉の孔を通じて該植物の
   つるおよび葉部を扉前に導出させてなるつる性植物の植
   栽壁ユニットであって，該ボックス壁内の上部に散水ノ
   ズルを取付けると共に該ボックス壁内の下部に液体容器
   を配置し，該液体容器内の液体を該散水ノズルに送液す
   るためのポンプを取付け，該扉の少なくとも外側表面に
   気生藻類を被着させてなる，緑化壁面を構成するための
   植栽壁ユニット。