JPH089521B2 - 極洋の魚類から単離および精製された熱ヒステリシスタンパク質 - Google Patents

極洋の魚類から単離および精製された熱ヒステリシスタンパク質

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JPH089521B2
JPH089521B2 JP3505533A JP50553391A JPH089521B2 JP H089521 B2 JPH089521 B2 JP H089521B2 JP 3505533 A JP3505533 A JP 3505533A JP 50553391 A JP50553391 A JP 50553391A JP H089521 B2 JPH089521 B2 JP H089521B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、哺乳動物細胞を処理する分野、および哺乳
動物の細胞に損傷を与える種々の条件に曝された際に哺
乳動物の細胞の生存力を保護する分野に関するものであ
る。また、本発明は、熱ヒステリシスタンパク質または
不凍化タンパク質として知られるペプチドおよびグリコ
ペプチドの分野に関するものである。
(発明の背景) 「不凍化タンパク質」または「熱ヒステリシスタンパ
ク質」および下位分類の「不凍化糖タンパク質」および
「不凍化ポリペプチド」として知られている天然に存在
する巨大分子物質の存在はよく知られており、また文献
に広く報告されている。不凍化の発見は、例えば、De V
ries,A.L.等によって「サイエンス、163:1073〜1075(1
969年3月7日)の「若干の南氷洋の魚における耐凍結
性(Freezing Resistauce in Some Antartic Fishe
s)」中に最初に報告された。De Vries等は、南氷洋の
マクマード湾における水温が年間を通じて平均−1.87℃
であり、種々の魚類の血清中に存在する塩化ナトリウム
と他の低分子量物質との合計濃度がこのような条件下に
おける生存に必要である凍結点降下の半分未満を生じさ
せるにすぎないにもかかわらず、種々の魚類がこのよう
な条件下において生存することを観察した。初期の研究
は、これらの魚の生存が魚の血液中における巨大分子不
凍化化合物の存在に帰することができることを示してい
るが、De Vriesおよびその協力者はこれらの巨大分子不
凍化化合物の性質および組成を始めて明確にした。これ
らの巨大分子不凍化化合物は、代表的な分子量範囲が約
2,500〜約34,000であり、今日では不凍化グリコペプチ
ドまたは「AFGP」と呼ばれている。さらに研究の結果、
多くの種類の北温帯および北氷洋の魚がその血液中に不
凍化成分を含有していることが明らかになった。これら
の化合物のうちの若干のものは糖タンパク質であるが、
他のものは糖部分を有しておらず、不凍化ポリペプチド
または「AFP」と呼ばれ、その分子量範囲は約3,300〜約
12,000である。
AFGPとAFPとに共通な特徴のうち若干のものは次の通
りである: (a) これらは魚の血液中に比較的高濃度(約10〜40
mg/mL)で存在する。季節的な温度変化を経験している
魚の場合には、1年の大部分を通じて前記化合物は低濃
度で存在しているか、あるいは全く存在しておらず、季
節的に温度が低く日照時間が短い期間にはより高いレベ
ルに上昇する。水が凍結点以下の温度に留まっている南
氷洋区域に生息する魚の場合には、前記化合物は年間を
通じて高い濃度で存在する。
(b) 前記化合物は、凍結点降下を非束一的に(すな
わち、作用が分子の大きさによって変り、存在する分子
の種類によっては変らないように)かつ前記化合物の分
子を含有する溶液のオスモル濃度に基いて予想される極
めて大きな程度まで達成する。
(c) 前記化合物は凍結点を低下するが、融点は影響
を受けない(すなわち、前記化合物は熱ヒステリシス特
性を示す)。
(d) 前記化合物は氷晶と相互作用し、氷晶の形態
(morphology)を変える作用をする。
前記化合物は、熱ヒステリシス作用のために、ここで
は便宜上「熱ヒステリシスタンパク質」と呼ぶことにす
る。
本発明以前には、熱ヒステリシスタンパク質に関する
研究は (a) タンパク質の単離および特徴づけ、 (b) 二次および高次の構造を包含するタンパク質分
子の立体構造、 (c) タンパク質分子と氷との相互作用、および (d) 組換えDNAの使用を含む方法を包含するタンパ
ク質合成方法 に集中していた。
タンパク質の生物学的作用および有用性に関する研究
のみがタンパク質分子と氷との相互作用の研究であっ
た。これらの研究は、氷晶表面の熱力学および表面動力
学(surface kineties)、結晶の成長方向、およびタン
パク質による結晶成長の阻止モードおよび阻止方向のよ
うな問題に向けられていた。
タンパク質の発見後間もなく、タンパク質を取り出し
た原料の魚以外の生体材料中で該タンパク質を使用する
ことにより、タンパク質の不凍化特性を活用しようとす
る試みが行なわれた。例えば、標準凍結保存法を使用し
て赤血球をタンパク質で処理し、凍結条件に曝すことが
行われた。しかし、この結果は好ましいものではなかっ
た。その理由は、タンパク質が赤血球の保存作用ではな
く完全な破壊作用をしたからである。タンパク質を取り
出した魚以外の生体材料と共に該タンパク質を使用した
場合に成功を収めたという証拠は知られていない。
要するに、本発明以前には、氷晶とは関係のない環境
におけるタンパク質の性質また有用性に関する研究はな
されていない。これらのタンパク質が魚以外の生物、特
に哺乳動物の生物および組織に与えるかもしれない潜在
的利益を示すかあるいは示唆する研究はなされていな
い。さらに、これらタンパク質が魚において見い出され
る濃度より有意に低い濃度において、これらのタンパク
質が何らかの有利な作用を行うかもしれないことを示唆
する研究は行われていない。事実、これらのタンパク質
に関する十分に認められた広範囲に報告されている非束
一的特性は、これらのタンパク質に帰するとができる有
害な作用も有利な作用も濃度と共に変化するかもしれな
いと示唆することを思いとどまらせるものである。
(発明の要約) 本発明は、熱ヒステリシスタンパク質の従来認められ
ていない性質および利用されていない性質、すなわち熱
ヒステリシスタンパク質と細胞および細胞膜との相互作
用能力を見い出したことに基く。細胞膜との相互作用
は、細胞懸濁液中の個々の細胞、組織および臓器中の連
続している細胞物質、および脈管系が全面的に広がって
いる細胞構造物を包含する広範囲の構造物において起
る。この相互作用は好ましい作用であって、細胞膜およ
び細胞膜が組み込まれている構造物に、細胞の生存力お
よび生存割合の改善、細胞および細胞組織の機能性、安
定性および構造上の安全性の延長、有害な条件下におけ
る膜および細胞に対する構造的損傷の生起の減少、およ
び細胞膜を通るイオン移動の制約を包含する種々の利点
を提供する。
本発明に係る種々のタイプの相互作用は氷の広がり
(propagation)に対する上述のタンパク質の既知の作
用とは関係がない。その理由は、これらの相互作用の有
利な作用が氷晶の存在下に生起するほか氷晶の全く生成
しない条件下に観察されるからである。例えば、極低温
から生理温度より十分に高い温度までの範囲の温度にお
いて利点が観察される。従って、本発明は生理条件なら
びに非生理条件を包含する状態、および氷晶の存在する
条件ならびに氷晶の完全に存在しない条件を包含する状
態に拡張される。従来生きている細胞および細胞膜に対
する有利な作用が観察されている非生理条件としては次
の条件がある: (i) 水の正常な凍結点(0℃)より高い温度によっ
て規定され、従って氷形成の可能性がなく、細胞の生理
温度より低い微温条件; (ii) ガラス形成温度(またはガラス転移温度)また
はこれより低い温度、例えば、150Kより低く約4Kまでの
温度、およびガラス化を促進し結晶化を抑制するガラス
化剤の存在によって規定されたガラス化条件; (iii) 凍結条件、例えば、水の正常な凍結点より低
く約4Kまでであって氷晶を形成することのできる温度; (iv) 細胞の生理温度より高い温度、例えば、生理温
度から該生理温度より約10℃高い温度の範囲内の温度に
よって規定される高温条件;および (v) 細胞の生理化学的雰囲気とは異なる化学的雰囲
気によって規定される条件、例えば、非生理的pHおよび
生理化学的組成からの他の変動、ならびに非生理温度の
条件と組み合わされた上述の条件。
また、本発明の適用は、以上な生理条件、例えば、細
胞膜の不安定性と関連する疾病および細胞膜を通る異常
なイオン移動を生じさせる細胞空間と細胞外空間との間
におけるイオンの不均衡と関連する疾病に拡大される。
このような挙動が予期できないものであることは、イオ
ン通路の閉塞、例えば、上皮細胞におけるカルシウムイ
オンおよびカリウムイオンの通路の閉塞が、ATPイオン
ポンプおよびカルバコールとの相互作用を包含する細胞
の他の代謝機能を妨害することなく達成されることを見
出したことによって強められた。さらに、本発明は正常
な生理条件において、例えば、表皮組織を回復、保存ま
たは修復させるための化粧品および医薬を使用すること
により、細胞に利点を提供する。さらに、本発明は、さ
もなければ食料品における細胞の構造および機能を損な
うためにその魅力を失うことになる食物を保存する場合
に適用される。
本発明は、動物細胞および植物細胞の両方を包含する
広範囲の生細胞に適用することができる。しかし、本発
明の関連する特に普通といえない興味ある新規な知見
は、哺乳動物の細胞、組織および器官を処理および保存
する際における熱ヒステリシスタンパク質の有用性であ
る。これらの熱ヒステリシスタンパク質は天然の形態で
は非哺乳動物の種のみに存在し、非哺乳動物の種と哺乳
動物の種との間における細胞および膜の構造ならびに血
液および細胞質の組成の相違は現在見出されている利点
を驚くべきものとしかつ予期できないものとする。従っ
て、本発明は、哺乳動物の正常な生理条件とは異なる条
件に曝される哺乳動物の細胞、組織、臓器および有機体
に適用されるように、特に重要でありかつ有用性の大き
いものである。本発明を適用することができる細胞の例
は、哺乳動物の卵母細胞、肝細胞、赤血球、白血球、お
よび種々のタイプの植物細胞である。組織および臓器の
例は、肝臓、心臓および腎臓の組織、ならびに臓器その
ものである。生物の例は、胚、自立する(self−sustai
niig)全動物、植物の種子および全植物である。
本発明における新規な重要な知見の一つは、魚以外の
細胞に関する早期の研究において生物細胞がタンパク質
によって破壊される手段である。本発明においては、結
晶生長をc軸に限定する際のタンパク質の作用の結果と
して形成される針状氷晶の機械的せん断作用によって破
壊が起ることを見出した。
この新規な知見は、天然のままの魚類だけではなく細
胞懸濁液においても破壊が起こらないので、全く予期さ
れないことである。この新規な知見の結果は、タンパク
質を天然の濃度より低い濃度で使用した場合、あるいは
ガラス化が起る条件下に使用した場合、あるいは上述の
濃度および条件で使用した場合に、凍結点以下の温度に
おいて破壊作用ではなく保護作用を達成することができ
るタンパク質の能力である。従って、タンパク質は、タ
ンパク質がその天然の供給源生物中に存在している濃度
より著しく低い濃度において利点を提供し、かつタンパ
ク質が前記生物中に存在しているという単なる知識から
は予知できない特性を提供する。さらに、天然系以外の
生物系のタンパク質では、タンパク質は上述の低い濃度
においてこれより高い天然の濃度では見られない利点を
提供する。
機械的損傷モードを見出したことによるそのほかの結
果は、タンパク質を臓器の脈管系を経て臓器中に導入す
ることによって、保護作用を全臓器の凍結の際に達成す
ることができることである。針状の氷晶は脈管系内で自
由に広がり、血管壁のみによって制限され、かつタンパ
ク質は間隙区域に侵入して細胞膜と接触するので、タン
パク質はそうでない場合に低温によって生起する損傷か
らの保護を提供する。
本発明から得られるそのほかの利点は沢山あり、種々
のものがある。これらの利点に含まれるのは、極低温に
冷凍する間急速な冷却速度を維持する必要がなくなるこ
と、既知の冷凍防止剤より著しく低い濃度において溶液
粘度を高めることができるタンパク質の能力、および凍
結の際に食物を保護することができるタンパク質の能力
である。本発明の他の優れた点、利点および適用は以下
の説明から明らかである。
(発明の詳細な説明および好適例) 1.定義 この明細書では次の用語を使用し、次のように定義す
る: 細胞、組織、臓器または生物に対して使用する「異
常」あるいは「非生理条件」とは、正常な生理条件とは
異なる条件のことである。異常または非生理な条件に
は、細胞、組織または臓器が天然のままである健康な生
物または生物自体の正常な生理温度より有意に高いか低
い温度;過大または正常未満の二酸化炭素、酸素、無機
塩または有機化合物、健康な生物における有意に高いか
低いpH値、これらの条件の組合せが含まれるが、これら
に限定されるものではない。
「不凍化タンパク質」、「不凍化ポリペプチド」
(「AFP」)、「不凍化糖タンパク質」および「不凍化
グリコペプチド」(「AFGP」)とは、若干の動物の体液
中に見出され、水の凍結点を非束一的に低下させる一般
的に知られている性質を有する巨大分子のことである。
また、不凍化タンパク質、ポリペプチド、糖タンパク
質およびグリコペプチドは「熱ヒステリシスタンパク
質」として知られ、その理由は、凍結の起る温度をタン
パク質の束一的特性に帰することができる程度より大き
い程度まで低下させるが、融解中に氷の融解する温度を
束一的特性のみに従って有意に小さい程度低下させるか
らである。
「極低温」とは、0℃より低い温度のことである。
「凍結」とは、液相の水から固相の水に転移すること
である。
「高温」とは、細胞、組織、臓器または生物の正常な
生理温度より高い温度、例えば、正常な生理温度より約
20℃まで高い、好ましくは約10℃まで高い、一層好まし
くは約5℃まで高い生理温度のことである。
「低温」とは、細胞、組織、臓器または生物の正常な
生理温度より低いが、固相への相転移を生じさせるのに
十分な低い温度ではない温度のことである。
「単離および精製された」とは、分子が天然の状態で
存在している生物から取り出され、クロマトグラフィー
のような従来の実験室技術によって、好ましくは約85%
以上、一層好ましくは約95%以上の濃度まで濃縮された
分子のことである。さらに、本発明は天然に存在する形
態の分子と同じか、極めて類似しているか、あるいは同
族である分子構造を有し、化学的手段または組換えDNA
技術によって合成することができる分子に及ぶ。
「哺乳動物」とは、生物学の分野で一般に使用されて
いるように、例えば、ブタ,ウシ,ウサギ,ウマおよび
ヒトを包含する温血哺乳動物のことである。
「極地の魚類」とは、北氷洋圏および南氷洋圏の領域
を包含する地球の極地領域の水中に生息する冷血水生動
物、特に脊椎動物のことである。本発明と関連する特に
興味ある極地の魚類は、水中に留まっている魚類および
着氷状態になることがあるか着氷状態に留まっている魚
類である。
「針状体」および「針状」とは、氷晶および針様形状
を有する結晶を形成するために結晶の広がる主方向がc
軸に沿っている、すなわち基礎平面に垂直である氷晶の
生長のことである。
「生きている(viable)」とは、生存することができ
ること、生理条件下にあるいは該条件に戻った際に生存
または発育することができること、あるいは通常発芽に
好ましい条件下に発芽できることを意味する。
「ガラス化」とは、結晶質の氷ではなくガラス相すな
わち非結晶質固体が形成するような極低温における凝固
のことである。「見掛けのガラス化」とは、顕微鏡下の
目による観察によって決められるガラス化のことであ
る。普通、生体物質のガラス化は、グリセリンおよびプ
ロピレングリコールのような多価アルコール、またはジ
メチルスルホキシドのような他の化合物を包含する種々
の凍結防止剤または「ガラス化剤」を生体物質中に導入
することによって達成される。ガラス化剤の導入は比較
的高い冷却速度に伴われることが多い。それぞれの場合
における最適速度は、系の組織および熱力学によって変
化する。卵子、精子および胚のような組織されていない
小細胞、ならびに臓器の大部分の場合における代表的な
冷却速度は、普通約100℃/分〜約2,000℃/分、好まし
くは約200℃/分〜約1,750℃/分、一層好ましくは約70
0℃/分〜約1,750℃/分の範囲である。
2.熱ヒステリシスタンパク質−供給源、種類および構造 熱ヒステリシスタンパク質は広範囲の種々の供給源か
ら単離されており、これらの供給源および該供給源から
得られた種々のタンパク質の構造は、文献に広く報告さ
れている。供給源としては魚類と魚類でないものとの両
方があり、これらの供給源を次の表1および表2に示
す。
広範囲に研究され、本発明を実施する際に使用するの
に好ましいタンパク質である熱ヒステリシスタンパク質
は、魚類から単離されたタンパク質である。表1に示す
ように、これらのタンパク質としてはグルコシル化タン
パク質(AFGP)および非グリコシル化タンパク質(AF
P)の両方があり、後者はタイプI,タイプIIおよびタイ
プIIIと呼ばれる3種の広いカテゴリーに分けられる。
一般的に、AFGPは二糖類β−D−ガラクトシル−(1
→3)−α−N−アセチル−D−ガラクトサミンがトレ
オニン残基の水酸基に結合している一連のトリペプチド
単位アラニル−トレオニル−アラニルの繰返しから成る
が、変化した化合物も存在する。例えば、比較的低分量
のAFGPは、若干のアラニン残基およびトレオニン残基の
代わりに、それぞれプロリン残基およびアルギニン残基
を有する。代表的な魚類からのAFGPのクロマトグラフィ
ーによる研究によって、表3に示すように、8種の主要
な分子量フラクションが明らかになった: AFPはAFGPにおけるより互いに著しく異なる。表1に
示すように、3種のタイプのAFPはその残基含有量の点
で互いに異なる。タイプIのAFPはアラニン残基量が多
く(約65%)、残りの大部分はアスパラギン酸、グルタ
ミン酸、リシン、セリンおよびトレオニンのような極性
残基から成る。分子量範囲は約3,300〜約6,000である。
タイプIIのAFPはシステイン(実際は半システイン)残
基量が多く、ケムシカジカからのタイプIIのAFPはシス
テインを7.6%、アラニンを14.4%、アスパラギン酸お
よびグルタミン酸を合計で19%、およびトレオニンを8
%含有する。分子量範囲は約14,000〜約16,000である。
タイプIIIのAFPはシステイン残基がなく、アラニン残基
は多くない。特定のアミノ酸が著しく多く存在している
ことがないのは明らかであり、アミノ酸量は極性残基お
よび非極性残基に均等に分けられている。分子量範囲は
約5,000〜約6,700である。ここに、パーセントはすべて
モル基準である。
昆虫からの熱ヒステリシスタンパク質は主としてタイ
プIIのAFPであり、アミノ酸残基に基づく代表的組成は
コリストネウラ・フミフェラナ(ハマキガの幼虫)およ
びテネブリオ・モリトル(甲虫)のものである。これら
のアミノ酸組成を表4に示す。また、表4には比較のた
めにケムシカジカのアミノ酸組成を含めた。
熱ヒステリシスタンパク質は、生物が生来有している
血清または他の体液から従来手段によって取り出すこと
ができる。タンパク質の単離および精製はクロマトグラ
フィ手段、ならびに吸収、沈殿および蒸発により達成す
ることができる。他の手段も当業者によって全く明らか
であり、その多くは文献に記載されている。
また熱ヒステリシスタンパク質は、従来の化学的合成
法または組換えDNAを含む方法によって、合成によって
製造することができる。これらのタンパク質を形成する
遺伝子の暗号配列は解明され、広範囲に報告されてい
る。例えば、DeVries,A.L.等,「J.Biol.Chem.246:305
(1971)」;Lin,Y.等,「Biochem.Biophys.Res.Commun.
46:87(1972)」;Yang,D.S.C.等「Nature 333:232(198
8)」;Lin,Y.,「Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:2825(1
981)」;Davies,P.L.等「J.Biol.Chem.79:335(198
2)」;Gourlie,B.等,「J.Biol.Chem.259:14960(198
4)」;Scott,G.K.等,「Can.J.Fish.Aquat.Sci.43:1028
(1986)」;Scott,G.K.等,「J.Mol.Evol.27:29(198
8)」参照。AFP遺伝子の生来の種以外の種のなかへのAF
P遺伝子の顕微注射の成功例が報告されている。例え
ば、Zhu,Z等,「Angew.Ichthyol.1:31(1985)」;「Ke
xue Tongbao 31:988(1986)」;Chourrout,D.等,「Aqu
aculture 51:143(1986)」;Dumman,R.A.等,「Trans.A
M.Fish.Soc.116:87(1987)」;Fletcher,G.L.等「Can.
J.Fish Aquat.Sci.45:352(1988)」;Maclean,N.D.等,
「Bio Teghnology 5:257:(1987)」;Stuart,G.W.等,
「Development 103:403(1988)」;McEvoy,T.等,「Aqu
aculture 68:27(1988)」;Ozato,K等,「Cell Differ.
19:237(1986)」参照。
3.配合方法および使用方法 本発明を実施する場合には、普通熱ヒステリシスタン
パク質を液体溶液、好ましくは水溶液の形態で使用す
る。タンパク質を組み合わせて使用する場合には、タン
パク質が供給源の種において生来存在する生理学的組合
せ中のタンパク質、すなわち取り出すのに使用した魚、
昆虫または他の生物の体液中に見い出されるのと同じ混
合物および割合のタンパク質を使用するのが最も好都合
であることが多いが、これらのタンパク質は体液の他の
成分から単離され、異なる溶媒または溶液中におそらく
タンパク質混合物がその天然の雰囲気中に存在している
場合の全濃度とは異なる全濃度で再溶解されることがあ
る。しかし、ある場合には、活性および効果は、供給源
混合物中のタンパク質を分別し、得られた部分を最適に
なるように選択し、組み合わせることにより、改善する
ことができる。
本発明で使用する液体溶液中の熱ヒステリシスタンパ
ク質の濃度は広範囲に変えることができるが、ある場合
にはある濃度範囲内で改善された結果が得られ、またあ
る場合には濃度をある範囲に限定してタンパク質自体に
よって生じる損傷を回避する必要がある。しかし、一般
的に、タンパク質は約0.01mg/mL〜約80mg/mL,好ましく
は約0.1mg/mL〜約60mg/mL,一層好ましくは約1mg/mL〜約
40mg/mL,最も好ましくは約1mg/mL〜約20mg/mLの濃度で
使用する。ヒト細胞と共に、特にヒト細胞の生理温度よ
り低い温度で使用する場合には、好ましい濃度は約0.1m
g/mL〜約40mg/mL,一層好ましくは約0.1mg/mL〜約3mg/mL
である。タンパク質を使用して組織の生理温度より低い
温度で組織を保護する場合には、好ましい濃度は約0.1m
g/mL〜約50mg/mLの範囲であり、組織がヒト組織である
場合には、好ましい濃度は約0.1mg/mL〜約3mg/mLの範囲
である。タンパク質を使用して一般的に細胞の生理温度
より低いが細胞の凍結温度より高い温度において、ある
いは細胞の凍結温度より低い温度であるがガラス化剤ま
たは他の非ペプチド凍結防止剤の存在下に細胞を保護す
る場合には、好ましい濃度は約0.01mg/mL〜約60mg/mLの
範囲であり、一層好ましい濃度は約1mg/mL〜約40mg/mL
の範囲である。タンパク質を使用して細胞膜を通るイオ
ン通路を閉塞する場合には、好ましい濃度は約0.01mg/m
L以上、一層好ましくは約0.1mg/mL以上、最も好ましく
は約0.5mg/mL〜約40mg/mLである。ここに、熱ヒステリ
シスタンパクの全濃度は、溶液が種々の熱ヒステリシス
タンパク質の混合物を含存している場合には、個々の熱
ヒステリシスタンパク質の濃度の合計として表わされて
いる。
本発明で使用する熱ヒステリシスタンパク質水溶液
は、さらに塩,糖,イオンおよび生体物質の保存に有用
であることがこの技術分野において知られている電解液
中に含まれている他の栄養物の広範囲な種々の混合物を
含むことができる。このような混合物としては、組織培
養培地,臓器潅流液などがある。電解液はタンパク質の
生体適合性を高めるのに特に有用である。この技術分野
において知られている多くの電解液の例は次の通りであ
る: 生理食塩水,そのNaCl濃度は0.9%または0.95%であ
る。
リンガー注射液(米国),「Facts and Comparison
s」第50頁(米国,ミズーリ州セントルイス所在のLippi
ncott Publishing Co.発行,1981年10月)中に記載され
ている。
哺乳動物用リンガー液(英国およびカナダ),Bestお
よびTalyorによって「Basis of Medical Practice(第
6版)」(米国,バルチモアで発行,1950年)中に記載
されている。
乳酸塩添加リンガー液(米国),「Facts and Compar
isons」第50頁(米国,ミズーリ州セントルイス所在のL
ippincott Publishing Co.発行,1981年10月)中に記載
されている。
乳酸塩添加リンガー液(ハルトマン),Hartman A.F.
によって「J.Am.Med.Assoc.」103巻,第1349〜1354頁
(1934)中に記載されている。
酢酸塩添加リンガー液,Fox,C.L.等によって「J.Am.Me
d.Assoc.」第148巻,第825〜833頁(1952)中に記載さ
れている。
ロック液,Locke,F.S.によって「Zbl.Physiol.」第8
巻,第166頁(1894);第14巻,第670頁(1900);第15
巻第490頁(1901)に記載されている。
タイロード液、Tyrode,M.J.によって「Arch.Int.Phar
macodyn.」第20巻,第205頁(1910)中に記載されてい
る。
クレブス−ヘンゼライト液,Krebs,H.A.等によって「H
oppe−Seyle's Z.Physiol.Chem.」第210巻,第33〜66頁
(1932)中に記載されている。
クレブス−リンガーリン酸液,Krebs,H.A.によって「H
oppe−Seyle's Z.Physiol.Chem.」第217巻,第193頁(1
933)中に記載されている。
クレブス血清代用液,Krebs,H.A.によって「Biochem.B
iophys.Acta」第4巻,第249〜269頁(1950)中に記載
されている。
クレブス−改良リンガーII液,Krebs,H.A.によって「B
iochem.Biophys.Acta」第4巻,第249〜269頁(1950)
中に記載されている。
クレブス−改良リンガーIII液,Krebs,H.A.によって
「Biochem.Biophys.Acta」第4巻,第249〜269頁(195
0)中に記載されている。
クレブス肝臓潅流液にウシ血清アルブミンおよび赤血
球を加えたもの,Hem.R.等によって「Biochem.J.」第101
巻,第284頁(1966)中に記載されている。
シマセック肝臓潅流液,Schimassek,H.等によって「Bi
ochem.Z.」336,440(1963)中に記載されている。
クレブス肝臓潅流液,Nishiitsutsuji−Uwo,J.等によ
って「Biochem.J.」第103巻,第852〜862頁(1967)中
に記載されている。
肝細胞培養液,Crow,K.E.等によって「Biochem.J.」第
172巻,第29〜36頁(1978)中に記載されている。
バールマン腎臓潅流液,Bahlman,J.等によって「Am.J.
Physiol.第212巻,第77頁(1967)中に記載されてい
る。
フルグラフ腎臓潅流液、Fulgraff等によって「Arch.I
nt.Pharmacodyn.」第172巻,第49頁(1972)中に記載さ
れている。
特定用途に用いる電解液の最適な選択はその適用、例
えば熱ヒステリシスタンパク質によって処理または保護
しようとする細胞の形態(細胞が細胞懸濁液,組織また
は臓器として存在するかどうか),細胞が採取される動
物、および細胞が曝されるかあるいは曝されるのが予想
される条件に応じて変る。
ガラス化条件を含む本発明の例では、凍結温度より低
い温度に冷却した際に、細胞内および細胞外の流体が凝
固する間に氷晶が形成するのを防止または制御するガラ
ス化剤を熱ヒステリシスタンパク質と併用する。種々の
ガラス化剤がこの技術分野において知られており、これ
らのガラス化剤を個々にあるいは他のガラス化剤または
生体適合性溶質と組み合わせて使用することができる。
ガラス化剤の例はグリセリン,ジメチルスルホキシド,
エチレングリコール,ポリビニルピロリドン,グルコー
ス,スクロース,プロパンジオール,ブタンジオールお
よびカルボキシメチルセルロースである。一つの種類と
して多価アルコールがガラス化剤として有用である。特
に好ましい例はグリセリン,エチレングリコール,プロ
パンジオール,ブタンジオールおよびブタントリオール
である。ガラス化剤濃度は、系中の他の成分の濃度,冷
却速度および最低到達温度に応じて、広範囲に変えるこ
とができる。一般に、最良の結果は濃度が約5重量%〜
約35重量%の場合に得られる。普通、ガラス化は急速な
冷却速度、例えば100℃/分を越える速度、好ましくは1
000℃/分を越える速度で実施される。
必ずしも氷晶の形成を避けるとは限らないが、非ペプ
チド凍結防止剤を使用する例では、上述の考察の多くが
適用される。ガラス化剤の例として先に例示した物質
は、同様な濃度範囲で、凍結防止剤と同様に作用する。
細胞および/または細胞膜に対する熱ヒステリシスタ
ンパク質の有利な作用は、タンパク質を細胞と接触さ
せ、そうでない場合に有害である条件に曝される期間の
全体あるいは大部分にわたって上述の接触を維持するこ
とにより、達成される。細胞が細胞懸濁液の形態をして
いる場合には、単に懸濁液にタンパク質を添加すること
により、この種の接触が達成される。細胞が組織または
臓器の形態をしている場合には、タンパク質溶液中に組
織まだは臓器を浸漬することにより、接触が達成され
る。細胞が脈管系を含む組織または臓器の形態をしてい
る場合には、タンパク質溶液を脈管系に潅流させ、潅流
後に、貯蔵期間、保存期間または有害な条件に曝されて
いる期間の全体にわたって、タンパク質溶液を脈管系中
に保持することにより、接触が達成される。潅流方法は
生理学および外科方法の分野における通常の知識を有す
る者の間でる知られている。
本発明に従って熱ヒステリシスタンパク質処理を行う
ことによって利益を得ることのできる細胞としては広範
囲の種々のタイプの細胞がある。その例は、卵母細胞、
胚、白血球、赤血球、血小板、膵臓のランゲルハンス島
および肝細胞である。また、本発明から利益を得ること
のできる臓器としては広範囲の種々のタイプの臓器があ
る。その例としては、肝臓、腎臓、心臓、脳、肺、膵
臓、脾臓、卵巣および胃がある。本発明から利益を得る
ことができる組織としては、これらの臓器の組織、なら
びに皮膚組織、骨髄組織、角膜組織、および広範囲の他
の臓器がある。本発明は、哺乳動物全般に適用すること
ができ、ヒトの細胞、組織および臓器と関連して使用す
る場合に特に重要性および有用性を有する。
細胞膜を通るイオンの移動を抑制する熱ヒステリシス
タンパク質の作用は、種々のイオンに及び、特に重要な
のは作用がCa++,K+およびNa+イオン、ならびにこれらの
イオンの2種または3種以上の組合せに及ぶ場合であ
る。
過大なイオン移動は体温の異常低下を伴う1種の生理
作用であるから、イオン移動を抑制する熱ヒステリシス
タンパク質の能力は、体温が異常に低下する条件下に細
胞の生存力を高めるタンパク質の能力に関連させること
ができる。従って、イオン移動抑制作用を達成するため
に投与するタンパク質の量および濃度は、一般的に、体
温の異常低下を起こす条件に曝されながら生存力を高め
るのに使用する量と同じかあるいは同様な量である。
また、細胞膜を通るイオン移動を抑制するタンパク質
の能力は、タンパク質を、膜を通る過大なイオン移動が
行われる疾病および異常生理条件を処理するのに有用に
する。このような疾病および状態の例は、嚢包性線維
症、カルタゲナー症候群、尿崩症、真性糖尿病、および
抗利尿ホルモン異常である。このような作用のためのタ
ンパク質投与は、摂食、脈管注入、局部適用、およびこ
れらの疾病および状態の処理および管理に使用する際に
他の医薬または処置剤を投与する場合に一般的に使用さ
れる種々の手段によって達成することができる。この場
合にも、有用な結果を得るのに必要な濃度は、一般的に
上述の濃度と同じであり、投与量および投与頻度は処置
される病状が進行している程度、ならびに処置に対する
観察された応答によって決まる。
次に、本発明を実施例について説明する。しかしこれ
らの実施例は本発明を限定または規定するものではな
い。
実施例では次の略語を使用した: AFP 不凍化ポリペプチド AFGP 不凍化糖タンパク質 ATP アデノシン・三リン酸 AVS 見掛けのガラス化溶液(組成は実施例12に示され
ている) BSA ウシの血清アルブミン EGTA エチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエ
ーテル)N,N,N′,N′−四酢酸 FCS 胎児のコウシ血清 FDA フルオレセイン・ジアセテート FSH 卵胞刺激ホルモン HCG ヒトの絨毛性性腺刺激ホルモン HEPES N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N′−
2−エタンスルホン酸 HTF ヒト卵管液 I.U. 国際単位 LDH 乳酸デヒドロゲナーゼ LTSEM 低温操作型電子顕微鏡 PBS リン酸緩衝食塩水 PMSG 妊娠した雌ウマの血清性腺刺激ホルモン TB トリパン青 これらの実施例において使用したAFPおよびAFPGの供
給源は次の通りである。
ウィンターフランダ:プレウロネクツク・アメリカヌス
(AFP I) オーシャンパウト:マクロゾアルセス・アメリカヌス
(AFP III) ケムシカジカ:ヘミトリプテルス・アメリカヌス(AFP
II) 南氷洋産ノトテニイド:ディスソスティクス・マウソニ
(AFGP) 南氷洋産イール・パウト:アウストロリシクスティス・
ブラキセファスル(Austrolycichthys brachycephalus
(AFP III) これらの実施例において引用したクレブス溶液は次の
組成を有する溶液である: Na+ 327ミリ当量/L K+ 23 Ca++ 10 Mg 2.9 Cu- 454 PO4 - 11 SO4 - 11.4 HCO3 -(5容量%) 残部 pH 7.4 実施例1 この例は、未成熟ウシ卵母細胞を微温(4℃)に曝し
ている間、このウシ卵母細胞を保護するのにAFPおよびA
FGPを使用した例を示す。この例は部分的にRubinsky,B.
等、「Biochem.Biophys.Res.Comm.180(2):566−571
(1991)」、また部分的にRubinsky,B.等、「Cryobiolo
gy 28(6):594(1991)」に報告されている。
この例に使用したAFPはウィンターフランダタイプ
I)、オーシャンパウト(タイプIII)およびケムシカ
ジカ(タイプII)から単離した。AFGPは南氷洋産ノトテ
ニイド魚(ディスソスティクス・マウソニ)から単離し
た。これらの実験に使用したAFPおよびAFGPの組成は、
これらを単離した原料の魚中に天然に存在している性理
学的組成であった。
多層に緻密に集合し、細胞質の変質が認められない未
成熟ウシの卵を、温食塩水(0.9%)中に入れて実験室
に持ち込まれた選択した雌ウシ卵胞(2〜6mm)および
未経産雌ウシ卵巣から得た。卵胞は屠殺してから80分以
内に15ゲージの針で吸い取った。卵母細胞は、0.4%
(容量基準)のBSA、0.34mMのピルビン酸(pyruvat
e)、5.5mMのグルコースおよび15mMのカナマイシンを加
えたPBS中に維持した。微温における実験の前に、0.5mL
の次の溶液: (a) PBS (b) PBSにタイプI(ウィンターフランダ)のAFPを
20mg/mL加えたもの (c) PBSのタイプII(ケムシカジカ)のAFPを20mg/m
L加えたもの (d) PBSにタイプIII(オーシャンパウト)のAFPを2
0mg/mL加えたもの (e) PBSにAFG(ノトテニイド、(ディスソスティク
ス・マウソニ))を20mg/mL加えたもの が入っているエッペンドルフ(Eppendorf)小びん中に
導入した。セファデックス(Sephadex,商品名)G75を使
用して、魚の血漿からAFPおよびAFGPのすべてを精製し
た。20mg/mLの濃度を選択したのは、この濃度が全AFPお
よび全AFGP生理学的範囲内にあるからである(AFPの生
理学的濃度は約20mg/mLであり、AFGPの生理学的濃度は
約35mg/mLである)。追加のコントロール(対照)実験
は、0.1Mのスクロールを加えたPBS溶液中および20%
(容量基準)のFCSを加えたPBS溶液中で、卵母細胞を使
用して行った。
卵母細胞は種々の溶液中で4℃において24時間温置し
た。卵母細胞を4℃の雰囲気から取り出してから、その
卵母細胞の完全性を、3種の異なる試験:形態検査、フ
ルオレセイン2アセテート(FDA)染色、およびトリパ
ン青排除(exclusion)によって求めた。形態検査はラ
イツ社の位相差顕微鏡を使用して行った。
FDA染色試験はFDAが蛍光化合物に転化することに基づ
くもので、この転化は生細胞中の加水分解酵素と接触し
た場合に限って生起する。従って、卵母細胞の生存力お
よび卵細胞膜の無傷さ(intactness)は強い蛍光を発生
し、蛍光が発生しないのは生存力が欠けていることを示
す。この実験で使用した手法として、5μg/mLのFDAを
含有するPBS溶液に卵母細胞を3分間曝した。次いで、
この卵母細胞をスライドの上に載せ、カバーグラスでお
おい、細胞内蛍光を定量的に評価できる蛍光装置が連結
されている蛍光顕微鏡(ライツ社)でスクリーニングし
た。受光装置の定量的な読みが新鮮な卵母細胞について
の実験で求められた標準偏差の2倍以内であった場合
に、卵母細胞は微温に曝した後に無傷な卵細胞膜を有し
ていると考えた。
TB排除試験において、TB排除は無傷な卵細胞膜を示
す。これらの試験では、卵母細胞を含有するPBS溶液に
0.1%のTBを含有する水溶液を加え、この一緒にした溶
液を3分間静置した。次いで、位相差顕微鏡(ライツ
社)を使用して卵母細胞を調べて、TBが排除されている
かどうかを求めた。
新鮮な卵母細胞を微温に曝す前に、この卵母細胞につ
いて同じ試験を行って、微温に曝した後の卵母細胞の完
全性を評価する際の対照として使用する定量的基準とし
た。
これらの試験結果を次の表5に示す。
表5のデータは、4℃に曝した後に、対照卵母細胞の
10%〜26%のみが無傷な卵細胞膜を保持していた、こと
を示す。0.1Mのスクロールまたは20%(容量基準)のFC
Sを加えたPBS溶液中で4℃に温置した卵母細胞について
も同様な結果を得たが、表に示さなかった。種々のAFP
又はAFGPを温置媒質に加えた場合には、卵細胞膜の完全
性は、該完全性を測定するのに使用した試験方法によっ
て、50〜75%の卵母細胞において保持されていた。ま
た、AFPの一次構造と二次構造とにおける相違、およびA
FPの分子構造とAFGPの分子構造との相違にもかかわら
ず、細胞膜保護レベルは異なるAFPおよびAFGPにおいて
同様であった。
追加の試験を行って、卵母細胞のインビトロ成熟能力
およびインビトロ受精能力を求めた。微温に曝した(4
℃に24時間)後に、集合した細胞を有する卵母細胞を、
標準成熟媒質、すなわち10%(容量基準)のFCSを含有
しかつ500mg/mLのホルモン、LH(NiH−LH−B9)およびF
SH(bFSH−LER−1596−1)および顆粒膜細胞が加えら
れているTCM−199培地中で温置した。顆粒膜細胞は約5
×106個/mLの細胞の濃度で使用し、小さい新鮮な卵胞を
切開することにより得た。これらの細胞を洗浄し、成熟
媒質中に再び採取した。卵母細胞を温置媒質中において
CO2濃度5%の空気雰囲気下に4℃で24時間温置した。
温置後に、卵母細胞を酢酸/エチルアルコール混合物
(容量基準で1:3)中で固定し、24時間後にラクモイド
染料で染色してインビトロ成熟を受けた割合を求めた。
第2中期段階M IIおよび/または第1極体の押出しにつ
いての顕微鏡証拠を使用して、卵母細胞の減数成熟を確
かめた。インビトロ成熟を検討するのに使用しなかった
温置卵母細胞をインビトロ受精させた。精液注入直後に
卵母細胞を5分間にわたって、0.1%のヒアルロニダー
ゼ(米国ミズーリ州セントルイス所在のシグマ・ケミカ
ル・カンパニィから入手)を含有するPBS溶液に移し
て、集合した細胞の一部を取り除いた。次いで、この卵
母細胞をブラケット(Brackett)−オリファント(Olip
hant)受精媒質に1.9mg/mLのカフェインを加えたものの
なかに入れた。ストロー中の凍結精液を使用してインビ
トロ受精を行った。このストローを35℃の水中で融解さ
せた後に、受精媒質中で遠心分離することにより精液を
洗浄した。ヘパリン(100mg/ml)を加えた受精媒質中で
精子を15分間温置することにより、受精機能の獲得を達
成させた。次いで、最終細胞濃度106個/mLの細胞におい
て受精機能を獲得した雄ウシ精子をインビトロ成熟卵母
細胞と共に同時に温置した。14〜16時間温置した後に、
卵母細胞を固定、染色し、卵母細胞の形態(細胞質、卵
細胞膜)および受精状態を評価した。
これらの試験の結果を次の表6に示す。表6は、AFP
を含有していないPBS中において微温温置を行った試験
(「PBS単独」)ならびに微温に全く曝さなかった試験
(「新鮮な卵母細胞」)からの比較結果を示す。
成熟試験は、微温条件下にPBS単独中に温置した卵母
細胞は23.5%のみがインビトロ成熟したが、AFPおよびA
FGPの存在下に同じ微温条件に曝した場合には64〜75%
がインビトロ成熟し、新鮮な卵母細胞の場合の割合(80
%)にかなり匹敵する、ことを示す。これに対し、0.1M
のスクロースまたは20%(容量基準)のFCSをAFPの代わ
りに使用した場合には、成熟割合は約30%にすぎなかっ
た(このデータは表6に示されていない)。
受精試験は、「PBS単独」の場合にはいずれの卵母細
胞もインビトロ受精しないが、AFPまたはAFGPの存在下
に温置した卵母細胞は40〜50%が受精した、ことを示
す。従って、試験した全てのAFPおよびAFGPが同様な効
果を有することが判った。この受精割合は通常の条件下
の未成熟卵母細胞について得た受精割合(約60%)に匹
敵する。これらの結果は、既知タイプのAFPおよびAFGP
はすべて、(a)細胞膜の完全性を保護する際、および
(b)細胞の機能的生存力を保存する際に、同様に有効
であることを示す。
実施例2 この例は、ヒト卵母細胞を微温条件に曝している間、
ヒト卵母細胞を保存するのにAFPを使用した場合を示
す。使用したAFPはウィンターフランダ(タイプI)お
よびオーシャンパウト(タイプIII)から単離した。
卵母細胞の提供者は、慢性無排卵と男性因子不妊症と
の両方の診断に起因する一次不妊症の27才の婦人であっ
た。提供者は以前に標準方法を使用して3回インビトロ
受精を試み、その際の受精割合は5.7%であり、サブゾ
ナル(subzonal)精子挿入を使用する受精は試みてなか
った。FSHとヒト閉経期尿性ゴナドロピンで刺激してか
ら37時間後に経膣卵母細胞の回復を行って、32個の卵母
細胞を得た。さらに、無精子の2個の精液試料を卵母細
胞提供者の夫から採取した。
回復後に、1心臓が活性を失っている胎児のヒトコー
ド血清(human cord serum)(受精媒質)10%を加えた
ヒト卵管液(HTF)(米国カリフォルニア州アービン所
存のアービン・サイエンティフィックから入手)中に卵
母細胞を入れ、CO2 5%と空気95%とのガス混合物中で3
7℃に維持した。2時間以内に、精子を顕微注入するた
めの準備として、卵母細胞集合複合体を、700I.U./mLの
濃度でHTF中に溶解したヒアルロニダーゼ(英国オビン
所在のフィソンスから入手)に曝した。2分後に、卵母
細胞を数回ピペットで採取し、ヒアルロニダーゼから取
り出し、新鮮なHTFで2回洗浄し、新鮮な受精媒質中に
入れ、恒温器に戻して20分以上の間再度平衡させた。細
く引いた毛管ピペットで穏やかに吸い取ることによって
残りの放射冠細胞を取り出した。各卵母細胞をその形状
およびその卵細胞質の状態について評価し、また極体ま
たは胚小胞の存在について評価した。次いで、卵母細胞
を恒温器に戻して約1時間にわたって再度平衡させた。
3個の卵母細胞は閉塞しており、従ってこの研究に含め
なかった。
微温に曝すために、卵母細胞をグループに分け、各グ
ループを1個の冷凍管(cryotube)中に入れ、各冷凍管
中に次の溶液の1種を入れた: (a) PBS単独(変性デゥルベッコ(Dulbeccos')リ
ン酸緩衝食塩水(米国ミズーリ州セントルイス所在のシ
グマ・ケミカル・カンパニィから入手)に10%の胎児ヒ
トコード血清を加えたもの)1mL(卵母細胞n=8) (b) オーシャンパウトからのAFP 1mg/mLを含有する
PBS 1mL(n=5) (c) オーシャンパウトからのAFP 10mg/mLを含有す
るPBS 1mL(n=5) (d)ウィンターフランダからのAFP 1mg/mLを含有する
PBS 1mL(n=5) (e)ウィンターフランダからのAFP 10mg/mLを含有す
るPBS 1mL(n=5) 種々の冷凍管内で、卵母細胞を20時間にわたって4℃
に曝した。その後、冷凍管を室温に暖まるにまかせ、次
いで卵母細胞を各冷凍管から取り出し、新鮮な受精媒質
中で2回洗浄し、再び懸濁させ、沈降した。15分後に、
懸濁液から上層を取り除き、運動能力のある精子の濃度
を測定した。次いで、卵母細胞に1×106個/mLの運動能
力のある精子の濃度において精液を注入した。
精液を注入してから38時間後に、単精子受精によって
得た胚を胚の数および形態について評価し、その結果を
表7に示した。
これらの結果を要約するに、8個の対照卵母細胞のう
ちから、僅かに2個の胚が得られた。これらのいずれも
発育段階の低いものであった。1mg/mLのAFPを使用して
保存した2個のグループを含む10個の卵母細胞のうちか
ら、2〜3細胞段階の6個の胚が得られ、そのうちの5
個は標準通りの分割球および一様な細胞質を有してい
た。10mg/mLのAFPを使用して保存した2個のグループを
含む11個の卵母細胞のうちから、僅かに1個の胚が得ら
れ、この胚は発達段階の低いものであった。これから、
AFPはヒト卵母細胞ならびにウシ卵母細胞を保護するの
に有用であり、そのヒト卵母細胞に対する保護作用は低
濃度において最も良く認められること、が確認される。
実施例3 この例では、微温で貯蔵した哺乳動物の臓器全体の完
全性および生存力を改善するのに、AFPを用いた場合を
説明する。この例は、Lee,C.Y.等の「Cryo−Letters,1
3:59〜66(1992)」に報告されている。
この実験に用いたAFPはニューファンドランド産オー
シャンパウト(AFP III)から分離されたもので、6,000
〜7,000の分子量範囲を有する少なくとも10種の独立的
に活性なポリペプチドのグループからなっている。この
実験に用いたAFP組成は魚において天然に存在する生理
学的組成と同じであり、この魚からAFPを分離した。こ
の研究に用いた哺乳動物の臓器は生後50〜55日のスプラ
ギューダウレイラットから摘出した肝臓であった。これ
らの実験では、肝臓に試験溶液を潅流し、微温で貯蔵
し、次いで肝臓を潅流液中への乳酸デヒドロゲナーゼ
(LDH)の放出および胆汁生成について試験することに
よって肝臓の生存力を評価した。これらの試験は肝臓の
生存力の最も堅実で信頼性のあるインビトロインジケー
ターとして当技術分野において認められている。
肝臓は次のようにして調製した。ラットをネンブター
ル麻酔下に置き、肝臓を縦方向の中線および横方向の肋
骨下の切開によって露出させた。次いで、各肝臓の胆汁
管にPE−10ポリエチレンカテーテルをカニューレとして
挿入し、胆汁を手術を進めながら10分間にわたって採集
した。隣接組織から肝臓を部分的に動くようにした後
に、3.0mLの食塩水中に1,000単位のヘパリンが入ってい
る注射器に取付けた16ゲージのテトロン(登録商標)静
脈注射カテーテルを門脈中に導入し、食塩水を迅速に潅
流した。次いで、下大静脈を腎静脈上で結紮し、隣接末
梢組織から自由にした。AFP−205ポリエチレンカテーテ
ルを右房における切開によって下大静脈に取り付けた。
次いで、肝臓全体を注意しながら摘出し、温クレブス緩
衝液(米国ミズリー州セントルイス所在のシグマ・ケミ
カル・カンパニー)で洗浄した。残りの手術の間、門脈
カテーテルに、38℃においてO2とCO2との95:5混合物と
予じめ平衡させたクレブス溶液を潅流した。
それぞれ重量7〜10gの肝臓を、それぞれ4〜6個の
肝臓からなる3個のグループに分けた。第1グループの
肝臓に、15mg/mLのAFPを含有する濾過した2.5mLのクレ
ブス緩衝液をカテーテルを経て注入して、潅流した。15
mg/mLのレベルを選択した理由は、このレベルが、AFPを
採取した魚における生理学的範囲内の下限に近い値であ
るからである。第2および第3のグループでは、潅流液
としてAFPを含まない2.5mLのクレブス溶液を使用した。
第1および第2のグループは4℃で24時間にわたって微
温貯蔵した。
第1および第2のグループを微温貯蔵した後に、すべ
ての3つのグループの肝臓に周囲温度において20mLのク
レブス溶液を流し、次いで直ちに門脈カテーテルを経て
シングル−パス重力駆動潅流回路に接続した。潅流液は
38℃に維持し、O2とCO2との95:5混合物と予じめ平衡さ
せたクレブス溶液であった。流量は、当初5mL/分に設定
し、次いで25mL/分に増大した。潅流を25mL/分で45分間
にわたって継続し、流出液を微温貯蔵してから取り出し
たのち、0〜5分、5〜10分および25〜45分の間隔で個
々の小びんに連続的に採集した。LDH活性を、標準比色
技術(シグマ・ダイアノスティックス、LDHキット500;
シマズUV−160A型記録分光光度計)を用いて、流量液試
料の入っている小びん中で測定した。シングル−パス潅
流の開始後3〜5分してから胆汁が流れ始めた。カニュ
ーレを挿入した胆汁管から胆汁を15分間隔で連続的に小
びん中に採集した。
流出液試料について測定したLDH活性のレベルは始め
の2回目の採集間隔中に最大に到達した。次いで、測定
値は低下し、最後の2回目の採集間隔中に安定レベルを
達成した。第3期中に行った測定は、微温貯蔵中に肝細
胞に加えられた不可逆損傷の測定であって、極めて一致
した結果を与えた。これらの測定によれば、AFP潅流グ
ループ(すなわち、第1グループ)についての潅流液の
LHD活性は158±103ベルガー−ブロイダ(Berger−Broid
a)(「B−B」)単位/mL(4個の肝臓についての平均
値)であったが、これに対してAFPを潅流しなかったグ
ループ(すなわち、第2グループ)についての潅流液の
LHD活性は655±280 B−B単位/mL(6個の肝臓の平均
値)であった。第3グループ(微温貯蔵しなかった肝
臓)についての相当する数値は70±28B−B単位/mL(5
個の肝臓の平均値)であった。B−B単位の使用はCaba
ud,P.G.等、「Am.J.Clin.Pathol.30:234(1958)」に示
されているように当技術分野において知られている。
要するに、AFP溶液中で4℃において貯蔵した肝臓潅
流液のLDH活性レベルは、AFPの不存在下に同様に貯蔵し
た肝臓潅流液におけるレベルより著しく低かった(25%
未満)。これらの数値は、AFPが微温に曝されている
間、肝細胞膜を損傷から保護したことを示している。
胆汁生成量の測定値は、第2の15分採集期間中に高原
状態に到達し、生成量レベルは残りの試験の間高原状態
を維持することを示した。肝臓の第1グループ(AFP保
護を行って微温貯蔵)の場合には、高原状態のレベルは
肝臓100g当り0.5±0.27mL/h(6個の肝臓の平均値)で
あった。第2グループ(AFP保護を行わずに微温貯蔵)
の場合には、高原状態のレベルは肝臓100g当り1.53±0.
35mL/h(4個の肝臓の平均値)であった。第3グループ
(微温貯蔵していない肝臓)についての相当する数値は
肝臓100g当り2.9±0.4mL/h(5個の肝臓の平均値)であ
った。明らかに、微温貯蔵中、潅流液中にAFPを存在さ
せると、AFPを存在させなかった点を除いて同様に処理
した肝臓と比べた場合に、胆汁の流れが有意に改善され
た。AFPで処理した肝臓について観察した胆汁生成量の
増大は、これらのタンパク質が微温貯蔵中に肝臓の機能
の完全性を維持するのを助けることができることを強く
示すものである。
実施例4 この例は、AFGPをAFPの代りに用いた点では異なる
が、哺乳動物の臓器全体を微温貯蔵した場合をさらに説
明する。この例でも、臓器として生後50〜55日のスプラ
ギューダウレイラットからの肝臓を用いた。使用したAF
GPは南氷洋産ノトテニイド魚(ディスソスティクス・マ
ウソニ)から得たもので、魚に見出される生理学的組成
において20mg/mLの全濃度でフラクション1〜8の全範
囲を含んでいた。
肝臓は次のようにて調製した。ラットをネンブタール
麻酔下に置き、腹膜腔にPE−30ポリエチレンカテーテル
を差し込み、各肝臓の胆汁管にこのカテーテルをカニュ
ーレとして挿入し、胆汁を手術を進めながら10分間にわ
たって採集した。隣接組織から肝臓を部分的に動くよう
にした後に、3.0mLの食塩水中の1000単位のヘパリンが
入っている注射器に取り付けた16ゲージのテトロン(登
録商標)静脈注射カテーテルを門脈中に導入し、迅速に
潅流した。次いで、下大静脈を遠位で横に切開し、門脈
カテーテルに0℃でO2とCO2との95:5混合物と予じめ平
衡させたクレブス溶液を潅流した。この潅流を残りの操
作の間でも継続した。下大静脈を腎静脈上で結紮し、隣
接末梢組織から自由な状態にした。PE−205ポリエチレ
ンカテーテルを右房における切開部を経て上大静脈に取
り付け、流出液の試料を採集した。次いで、肝臓全体を
注意して摘出し、温食塩水で洗浄した。残りの手術の
間、門脈カテーテルに38℃でO2とCO2との95:5混合物と
予じめ平衡させたクレブス溶液を潅流した。
試験肝臓において、潅流ラインを取り出し、20mg/mL
のAFGPを含有するクレブス溶液の3mL溶液をカテーテル
中に注入した。次いで、直ちに各肝臓を冷クレブス溶液
で満たした容器中に入れ、肝臓の内側部分の入っている
容器を恒温装置に入れ、ここで肝臓およびクレブス溶液
の温度を4℃に一定に維持した。肝臓をこのようにして
6、12および24時間にわたって貯蔵した。
貯蔵後に、肝臓を取り出し、3mLのクレブス溶液を周
囲温度において注射してAFGP溶液を除去した。次いで、
直ちに各肝臓をシングル−パス潅流回路に挿入して、肝
臓に37℃でO2とCO2との95:5混合物と予じめ平衡させた
クレブス溶液を潅流した。流量は、当初5mL/分に設定
し、次いで肝臓およびカテーテルの部位に注意しながら
25mL/分に増大した。潅流を25mL/分で45分間にわたって
継続し、流出液を0〜5分、5〜10分、10〜25分および
25〜45分の間隔で個々の小びんに連続的に採集した。胆
汁は15分間隔で採集した。
コントロールとして使用するために、新鮮な肝臓に周
囲温度で3mLのクレブス溶液を注射した。次いで、AFGP
添加を行わずに最終段階の操作を行った。次いで、直ち
に肝臓をシングル−パス潅流回路に挿入し、潅流液およ
び胆汁試料を上述のようにして採集した。
胆汁およびLDHの測定を前の実施例に記載したと同様
にして行った。結果を次の表8および9に示す。
表8は、試験したすべての貯蔵時間にわたって、AFGP
を使用して貯蔵した肝臓からの胆汁生成量に有意な増加
が認められることを示しており、これはAFGPが微温貯蔵
中に臓器全体の機能を完全性を保存することを示す。ま
た、表9のLDH活性試験は、AFGPが微温条件下における
貯蔵中に肝細胞膜を保護することを示し、AFGPの存在に
より達成され利点を示している。
実施例5 この例は、微温で貯蔵した哺乳動物の臓器全体の完全
性および生存力の改善にAFGPを使用した場合について説
明する。この実験に用いたAFGPは、南氷洋産ノトテニイ
ド魚(ディスソスティクス・マウソニ)から得たもの
で、魚に天然に存在する組成で使用した。臓器は成熟し
たウサギの心臓であった。
体重2〜3kgの2匹の実験用白ウサギに麻酔をかけ、
各ウサギから心臓を摘出した。コントロールとして用い
た第1心臓にクレブス溶液を5℃において30分間にわた
って潅流し、その後に5mLの標準クレブス溶液を5℃で
大動脈室に注射した。第2心臓を、クレブス溶液に20mg
/mLのAFGPを含有させた点を除き同様にして潅流し、注
射した。次いで、直ちに各心臓を5℃でクレブス溶液の
入っている小さい試験管に入れ、試験管を氷/水浴中で
0℃に維持した。
両心臓を0℃に4時間にわたって維持し、次いでラン
ゲンドルフ潅流システムに連結し、ここで両心臓にクレ
ブス溶液を37℃で1時間にわたって潅流した。この時間
中、第1心臓の大動脈は鼓動が弱くなった。この時間の
終りに、第1心臓の大動脈圧は約27mm水柱となり、大動
脈の流れは極くわずかになり、心臓を通る流量は約2cc/
分になった。心臓は活発でなくなり、1分間当り約30回
の速さで鼓動を打った。目視観察において、心臓組織の
諸部分が死んだか死にかかっている状態に見えた。
第2心臓の挙動は第1心臓と異なっていた。37℃にお
ける潅流時間の終りに、大動脈圧は100mm水柱を越え、
大動脈の流れは12cc/分であり、心臓血管流量は約47cc/
分であった。この心臓は活発で、1分間に160回の鼓動
を打った。これらの値は正常な成熟したウサギの心臓の
値に近い。目視した結果では、心臓は強壮に見えた。
実施例6 この例はRubinsky B.等「Biochem.Biophy.Res.Comm.1
173(5);1369〜1374(1990)」によって部分的に報告
されている。この例は、微温において細胞膜および膜機
能を保護することができるAFGPの能力について説明す
る。この例で報告する試験は、ブタ卵母細胞の静止電位
およびインビトロ培養の測定を行うことにより、AFGPが
微温に曝された後の卵母細胞の構造的完全性およびその
機能を保護することを示している。文献に記載されてい
ない卵母細胞およびその卵細胞膜の顕微鏡観察を、この
実施例の終りに加えて、静止電位試験の結果を確認し
た。
卵母細胞としては、20℃で屠殺後20分経過したサイク
リック雌ブタ(cyclic sow)の選択した卵胞から得た丘
(細胞集合体)によって囲まれた未成熟ブタの卵母細胞
を用いた。AFGPは南氷洋産ノトテニイド魚(ディスソス
ティクス・マウソニ)から得た。この例における種々の
フラクション中のAFGPを単離するために、AFGPを含む血
清を0.1M NH4HCO3中で、セファデックスG75カラム上に
おいて種々のフラクションにクロマトグラフィーによっ
て分けた。各フラクションの不凍化活性(熱ヒステリシ
ス)をクリフトン・ナノリッター(Clifton nanolite
r)浸透圧計を用いて測定した。活性フラクションをプ
ールし、凍結乾燥し、再びセファデックスG75上におい
てクロマトグラフィーによって分けた。フラクション1
〜8をプールした組合せおよびフラクション1〜5とフ
ラクション7〜8とを別々にこのようにして調製した。
卵母細胞を、0.4W/VのBSA、0.34mMのピルビン酸、5.5
mMのグルコースおよび70μモル/mLのカナマイシンを補
充したPBS中の種々の濃度のAFGP組合せが入っている小
びん中に入れた。AFGPの保護効果を調べるために、卵母
細胞を恒温室において4時間または24時間にわたって4
℃に曝した。
卵母細胞を4℃の雰囲気から取り出した後に、卵母細
胞の静止膜電位を室温(22℃)で測定することによって
卵細胞膜の完全性を調べた。細胞内電圧の測定を、ホウ
ケイ酸塩ガラス管から作った単一微小電極を用いて行っ
た。電極は水平引き抜装置にて引っ張り、これに2M KCl
を満たした。電極の抵抗は10〜20メガオームであった。
膜電位を記録するために、微調整装置を使用して微小電
極の先端を細胞表面まで巧みに誘導し、この際ノマルス
キー光学素子(Nomarski optics)を装着した倍率400X
のライツ社フルオバート(Fluovert)顕微鏡下に観察す
ることにより微調整装置を制御した。先端が細胞表面に
丁度くぼみを作った時に、増幅器の容量補償を行うこと
によって誘発される電気的振動を単に生じさせることに
よって、最終侵入を達成した。少なくとも1〜2分間に
わたって一定に維持された電位値が記録された。静止膜
電位は、膜の機能的完全性に対する極めて敏感な基準で
あり、また膜を通るイオン漏洩の直接的尺度である。
静止電位測定の結果を表10に示す。表10の各見い出し
項目は、微温条件に曝した後に正常静止電位を有する卵
母細胞の数と曝した卵母細胞の全数との比を示す。正常
電位に対する基準を明確にするために、予備試験を卵母
細胞の各バッチについて行い、この実験では新鮮な卵母
細胞の膜電位を22℃で測定した。電位の平均値および
標準偏差σを各バッチについて計算した。平均値および
標準偏差をPBS溶液中および40mg/mLのAFGPを含有するPB
S溶液中で新鮮な卵母細胞について測定した。これらの
結果を比較すると、AFGPが新鮮な卵母細胞の静止電位に
影響を及ぼさないことが判る。微温条件に曝す操作を含
む試験測定については、低温に曝した後に22℃で測定し
た静止電位の絶対値が|σ|または||−|2σ|の絶
対値より大きい場合には、卵母細胞は正常膜電位を有し
ていると考えた。
第1基準は2つの基準のうち最も厳格な基準であり、
これを表10では基準Aとして示し、第2基準を基準Bと
して示す。についてのすべての平均値を平均した値は
1〜3mVであり、平均標準偏差は4.5mVであった。これら
の値はブタ卵母細胞についての膜電位の正常な範囲内に
ある。
表10のデータは、4℃において4時間曝した後に、PB
S溶液中に保存した卵母細胞の87.5〜81.2%の膜電位
が、新鮮な卵母細胞の膜電位の正常値より、それぞれ標
準偏差の1倍または2倍低くなったことを示している。
これに対して、時間および温度条件は同じであるがAFGP
を含むPBS中で曝した卵母細胞の70〜84%は正常静止電
位を保持していた。AFGP 1〜8によって与えられた保護
は、40mg/mLから1mg/mLに及ぶ全濃度範囲において常に
高度であり、これより低い濃度では0.1mg/mL AFGP 1〜
8において保護は低い値に低下した。さらに、データ
は、余生理学的組成で用いた場合にAFGPは最も有効な結
果を与えるが、すべてのAFGP組成についての試験におい
てある程度の保護が達成されたことを示している。なお
さらに、データは、40mg/mLのAFGPないし1mg/mLのAFGP
を使用した場合に、24時間曝した後に、高度に有意な割
合の卵母細胞が正常な膜電位(41〜64%の範囲)を保持
するのに対し、PBS中または0.1mg/mLのAFGP 1〜8を含
むPBS中の卵母細胞はいずれも測定可能な静止電位を有
していなかったことを示す。
要するに、AFGPの存在下に微温条件に曝した際に卵細
胞膜の介在による静止電位は急激に低下し、これは膜損
傷およびイオン漏れを示すのに対して、AFGPの存在下に
曝した場合には極めてわずかな低下が起った。
また、実験を顕微鏡下の観察によって行って、卵母細胞
の生存力および微温条件に曝された卵細胞膜の形態完全
性を調べた。卵母細胞をPBS溶液中および40mg/mLのAFGP
1〜8を含むPBS溶液中で4℃に4時間曝した。微温に
曝した後に、卵母細胞を10%のFCS、5μg/mLのヒッジ
黄体形成ホルモン(NIH S20)、ブタ卵胞刺激ホルモン
(LER441−2)および20mg/mLのブタプロラクチン(LER
2073)を補充したTCM−199溶液中で、5%のCO2雰囲気
下に37℃で44時間にわたって温置した。温置後に、卵母
細胞を酢酸/エチルアルコール(容量基準で1:3)中で
固定し、ラクモイド染料によって染色した。未成熟のブ
タ卵母細胞の生存力を、位相差顕微鏡を用いて初期胚小
胞段階から第1中期M Iまたは第2中期M IIにインビト
ロ発育する能力、および正常な形態、すなわち、細胞質
の緻密さ、無傷な卵細胞膜、目に見える核段階を与える
ことができる能力によって評価した。また、顕微鏡観察
は卵細胞膜の構造的完全性の定性的評価を与えた。
顕微鏡観察は、AFGPの不存在下において、2〜20個の
みの卵母細胞が形態学的に無傷な卵細胞膜を保持するこ
と、およびいずれの卵細胞もインビトロ成熟しないこと
を示した。これに対し、40mg/mLのAFGPが存在している
場合には、18個のうち11個の卵母細胞が形態学的に無傷
な卵細胞膜を保持し、かつ18個のうち14個の卵母細胞が
インビトロ成熟した。
実施例7 この例は、哺乳動物細胞におけるイオン通路を閉塞す
ることができるAFPおよびAFGPの能力を説明する。この
例で使用したAFPはウインターハウンダ(AFP I)から単
離し、AFGP南氷洋産ノトテニイド(ディスソスティクス
・マウソニ)から単離し、哺乳動物細胞はブタ顆粒膜細
胞であった。この例はRubinsky,B.等,「Am.J.Physiol.
262(Regulatory Integrative Comp.Physiol.31):R542
−R545(1992)」中に部分的に報告されている。
直径3〜6mmの健康なアントラル(antral)卵胞から
ブタ顆粒膜細胞を取り出した。この卵胞は屠殺直後に採
取したブタ卵巣から得た。0.4%(容量基準)のBSA,0.3
4mMのピルビン酸、5.5mMのグルコースおよび14mMのカナ
マイシンを加えたPBS中で、前記細胞を2回洗浄し、NaC
l 130mM,KCl 3mM,CaCl2 10mMおよびHEPES 10mMを含有す
るpH7.2の記録用溶液中に懸濁させた。記録は全細胞形
状についてパッチ−クランプ(patch−clamp)技術を使
用して行った。電極は水平引張り装置を使用してホウケ
イ酸塩ガラスから作ったもので、外径1〜2ミクロン
で、浴溶液中に浸漬した場合に5〜20MΩの抵抗を示し
た。全細胞電極溶液はKCl 140mM,EGTA 1mMおよびHEPES
10mMを含有していた。リスト社のEPC 7増幅器を使用し
て細胞電流を測定し、アタリイ社の4メガコンピュータ
に接続したITC 16インターフェィスおよびパッチ・プロ
グラム・インストルテク(Patcn Program Instrutech)
を使用してデータを記憶、解析した。
実験は室温(22℃)で行い、実験操作として、顕微鏡
下に100μLの液滴中に顆粒膜細胞を導入し、カルシウ
ム電流の場合には−80mV〜−30mVの200ms減極パルスを
使用し、カリウム電流の場合には1000msの減極パルスを
使用して電流を流した。正常な電流が定常的に流れ、こ
れを記録した後に、AFPおよびAFGPを5μLの塊とし、
微調整装置を使用して、100μLの小滴中に個々に注入
した。塊中のAFPおよびAFGPの濃度は、小滴中の濃度が
0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、5mg/mL、10mg/mLおよび2
0mg/mLになるように設定した。各塊の注入時間を電流の
読みと整合させて注入時およびその後20秒毎に完全な電
流記録を記録させた。
K+電流およびCa++電流については別の実験を行った。
上述のAFP濃度およびAFGP濃度のそれぞれについて、3
回以上の実験を行った。また、BSA 0.1Mおよび大豆トリ
プシン抑制剤0.1Mを含有する100μLの小滴中で、マイ
ナスの結果を与える対照実験も行った。
AFPおよびAFGPの不存在下に行った電流測定は、既知
のチャネル動力学(channel kinetics)に従った特性を
示した。Ca++電流試験の場合には、その特性はT6タイプ
Ca++チャネル動力学の代表的なものであり、減極パルス
は初期の迅速化相に次いで不活性相を生じた。K+電流試
験の場合には、その特性は遅延整流器の代表的な特性で
あり、高原状態に上昇する緩やかな遅延した活性化相を
生じさせる減極パルスを有し、パルス中には次の不活性
相が無かった。
小滴中にBSAおよび大豆トリプシン抑制剤を含有させ
た実験では、電流測定結果は、これらの添加剤の不存在
下の測定結果と比較した場合に、これらの添加剤はいず
れもイオン電流に全く影響を及ぼさないことを示した。
AFPおよびAFGPの存在下に行った電流測定は次の結果
を与えた。Ca++測定およびK+測定の両方の場合に、イオ
ン電流は、AFPおよびAFGPの濃度0.1mg/mL(0.028mM)に
おいて、5分間の全試験期間にわたって変化せず、これ
はこれらの実験において達成された測定分析において、
AFPおよびAFGPがいずれも、この濃度ではこの期間中イ
オン電流に全く影響を及ぼさないことを示した。しか
し、0.5mg/mL(0.14mM)またはこれより高い濃度におい
て、試験は常にイオン電流の抑制を示した。Ca++電流試
験の場合には、1.0mg/mLのAFPの存在下および0.5mg/mL
のAFGPの存在下に達成された電流は、AFPおよびAFGPを
導入してから20秒後に低下し、40秒後に完全に止まっ
た。K+電流試験の場合には、1mg/mL(0.28mM)のAFPの
存在下および1mg/mL(0.28mM)のAFGPの存在下に達成さ
れた電流は400秒以内に完全に止まったが、10mg/mL(2.
8mM)のAFPまたは10mg/mL(2.8mM)のAFGPの存在下に達
成された電流は20秒以内に完全に止まった。
実施例8 この例は、さらに、哺乳動物細胞におけるイオン通路
を閉塞することができるAFPの能力を説明する。この例
は、Negulescu,P.A.等,「Am.J.Physiol.263(Cell Phy
siol.32)−(1992年12月)」に報告されている。この
例に使用したAFPはニュージーランド産オーシャンパウ
ト(AFP III)から単離したもので、その生理学的組成
で使用した。細胞はウサギ胃腺からの壁細胞であった。
無傷なウサギ胃腺を得るために、ニュージーランド産
白ウサギからの細かに刻んだ胃粘膜を、イーグル最小必
須培地中に0.3mg/mLのタイプIAコラゲナーゼを含有さ
せ、これに1mg/mLのBSA(カルバイオケミカル社から入
手した)、10−4Mシメチジン(胃腺を刺激されない状態
に確実しておくためのヒスタミンH2遮断薬)、および20
mMのHEPESを加えて得た消化媒質中に入れた。この溶液
をかきまぜ、37℃において100%酸素ガスでガス処理し
た。45分以内に腺が形成した。これらの腺を静置し、次
いで40μMのシメチジンを含有しかつ酸素およびアルブ
ミンを含有していないイーグル培地(米国ミズーリ州セ
ントルイス所在のシグマ・ケミカル・カンパニィから入
手した)中で室温において数回洗浄した。この操作はBe
rglindh,T.等、「Acta.Physiol.Scand,96:150−159(19
76)」の記載に準じて行った。
細胞内の遊離カルシウム(Cai)を測定するために、
単離した胃腺の懸濁液(5%のシトクリット(cytocri
t)を含有する)に、10−4Mシメチジンおよび10μMの
染料を含有するイーグル培地中のカルシウム感応性蛍光
指示薬、フラ(fura)−2/AMを加えた。添加後に、腺を
イーグル培地中で洗浄し、使用するまで室温に置いた。
各細胞における蛍光測定値は、2種の波長における測
定値についてGrynkiewicz,G.等,)「J.Biol.Chem.260:
3440−3450(1985)」の導出した次式を使用して較正し
た: 上式において、RminはCa=0の場合に得た340nmと385nm
とにおける蛍光強さの比を示し、RmaxはCa飽和の場合に
得た上述の比を示し、Rは測定された比を示す。Rmin
RmaxおよびKの値は、別個の実験において、Negulescu,
P.A.,「Methods Enzymol.192:38−77(1990)」の方法
によって求めた。
フラー2を加えた胃腺を潅流室内に取り付け、37℃に
おいてツアイス社製IM 35型倒立顕微鏡の対物レンズ(4
0 X)上に載させた。無傷な胃腺内の単細胞からの蛍光
を、各励起波長の蛍光によるビデオ画像を画像処理する
ことによって測定した。腺全体の白黒蛍光画像をSIT
(シリコン・インテンシファィド・ターゲット)カメラ
によって得、これをゴウルド(Gould)FD 5000画像プロ
セッサに供給し、この画像プロセッサをDECコンピュー
タ(PDP 11/73)によって制御した。カメラのバックグ
ラウンドおよび暗電流について補正した後に、蛍光強さ
の比を各画素について計算し、32種の疑似色の1種とし
て表示した。次いでこれらの比を較正した。個々の壁細
胞からのデータを集めることができるグラフィックス・
エミュレーション端末(スマルターム(Smarterm)24
0)を使用して、個々の細胞について解析および比対時
間のプロットを行った。酸分泌壁細胞は隣接する酵素分
泌主細胞から目による観察によって容易に判別すること
ができた。壁細胞を選択した理由は、壁細胞が主細胞よ
り比較的大きいCai応答を示すからである。
実験溶液はいずれも次の組成を有していた: NaCl 144.0 mM K2HPO4 2.0 mM CaCl2 2.0 mM MgSO4 1.0 mM グルコース 11.0 mM HEPES 10.0 mM pH 7.45 これらの壁細胞を100μMのカルバコールで繰り返し
刺激した。1個の胃腺における10個の壁細胞からの平均
Cai信号対時間を表わす軌跡は、各刺激毎に二相(bipha
sic)増加を示し、各増加は、急激な初期上昇(すなわ
ち、スパイク(spike))と、これに続く中間高さの高
原相と、その後の基線レベルへの復帰とから成る。この
スパイクは内部貯蔵からのCaの放出によって生じ、減衰
はCaイオンを細胞から押し出すATPイオンポンプによっ
て生じるが、高原相はATPイオンポンプと細胞外空間か
らイオン通路を経由する細胞中へのイオン流入とのバラ
ンスによって生じる。カルバコールは細胞内プールを完
全に空にするが、高原相は50分以下の間安定であって細
胞外Caの存在を必要とする。そうでない場合には、Cai
は直ちに基線に戻る。全高原相において、Caが細胞外か
ら細胞中に流入する速度は休止状態におけるより速くな
り、高原相において細胞は新たな定常状態になるので、
この期間中細胞からのCaポンピングも増大する。
壁細胞および他の種類の上皮細胞中へのこのCaイオン
の流入を制御する通路の性質および調節は十分には解明
されていない。これらの通路は被刺激性組織におけるも
のとは異なるように思われる。それは、これらの通路は
ニフェジピンまたはバラパミルによってCaイオンの流入
が阻止されるが、他のCa通路のように5μMのLaおよび
6.7未満の低いpHによって抑制されるからである。この
軌跡は各相の特性形成が多様な刺激中維持されているこ
とを示し、これは細胞が細胞内貯蔵を比較的迅速に再び
満たすことができることを示し、また応答の脱感作がコ
ントロール条件下では起こらないことを示す。
AFPの作用を試験するために、容量−応答の実験を0.1
mg/mL〜20mg/mLのAFP濃度で行った。0.1mg/mLではCaの
移動に対する影響は認められなかったが、カルバコール
によって生じる高原相の完全な阻止が1mg/mL(140μ
M)およびそれ以上の濃度で達成された。1mg/mLでは、
AFPsはカルバコールによって生じるCaiスパイクに影響
を及ぼさなかった。スパイクはカルバコール/受容体を
結合させること、ホスホリパーゼCの活性化、およびIP
3の形成を必要とするから、これは、AFPがこれらの生化
学的径路のいずれに対しても全く抑制作用を有していな
いことを示す。さらに、Caイオンを含有していない溶液
で細胞を刺激した場合には、スパイクに続くCaiの減少
速度はAFP処理細胞およびコントロール細胞の両方にお
いて同じであり、これはAFPが放出されたCaを細胞から
取り除く形質膜中のCa−ATPアーゼに影響を及ぼさない
ことを示す。従って、カルバコール応答の二次高原相を
阻止する際の1mg/mLの作用は、このタンパク質がCaの流
入を選択的に抑制することを示唆する。
通常、細胞外Caの流入は細胞内プールを再び満たすの
に必要であるので、カルバコールによる刺激の繰り返し
によってCaiの増大の繰り返しが生じるのを阻止するの
に十分な程度まで、AFPがCaの流入を阻止するかどうか
を確かめるために試験を行った。この試験のために、カ
ルバコールで刺激する前に、細胞をAFP含有溶液で3分
間刺激した。次いで、これらの細胞をカルバコールで3
回刺激し、コントロール条件で1回、AFPの存在下に2
回以上行った。1個の胃腺からの10個の細胞の平均値に
基く結果では、AFPは高原状態を消滅し、また内部貯蔵
が再び満たされるのを妨害した。これは、AFPの存在下
において細胞の二次刺激が阻止されたからである。AFP
の引続いた存在は、第3のカルバコール刺激によって細
胞内プールからのCaの正常な放出が生じるのを阻止し、
これは長期にわたるAFP処置が細胞内プールを再び満た
すのを阻止することを強く示唆するもので、この作用は
Laの作用と類似している。従って、1mg/mLの存在下で
は、1つの刺激のみが可能である。
AFPによる短期の処理を行った試験において、最初はA
FPを使用せず、2回目はAFPを使用し、3回目および4
回目はAFPを使用しなかった。3回目と4回目の刺激の
間でAFPを洗浄除去した。Cai対時間の軌跡は、AFPの作
用は高原状態の形成を阻止することであることを示し
た。3回目および4回目の刺激は内部貯蔵を部分的に再
び満たすことであった。これは、3回目および4回目の
スパイクの高さが2回目の高さの約60%であったからで
ある。3回目および4回目のスパイクの高原状態もまた
極めて小さく、これはAFPの作用が若干残っていたこと
を示し、これはおそらくAFPが細胞に結合していること
によると思われる。
これらの結果から、AFPは細胞内側におけるCaの蓄積
を阻止するか、細胞の他の重要な機能を妨害することが
ないという結論が得られる。
実施例9 この例は、微温条件ではなく高温条件に曝された哺乳
動物の胚を保護する際に、AFGPを使用した場合を示す。
AFGPは南氷洋産ノトテニイド魚(ディスソスティクス・
マウソニ)のAFGPで、AFGPが魚中に存在している生理学
的組成で使用した。哺乳動物の胚はマウス胚であった。
2細胞段階のマウス胚を、40mg/mLのAFGPを含有するT
6ホワイティングハム(Whittingham)培地中に入れ、5
%CO2雰囲気を維持することなく、また温度を37℃に制
御することなしに、上述の培地中に72時間保持した。さ
らに、2細胞段階のマウス胚を、AFGPを含有ていないT6
ホワイティングハム培地中に入れ、第1グループと同じ
雰囲気中に同じ期間保持した。この期間中、両培地上の
雰囲気中のCO2濃度は偶発的に約8%に上昇し、温度は4
0℃より高く上昇し、大部分の期間においてこの高いレ
ベルに留まっていた。
72時間の期間の終りに、AFGP含有培地中ではマウス胚
の80%近くが胚盤胞段階まで発育したが、AFGPを含有し
ていない培地中では50%未満が胚盤胞段階まで発育し
た。このことは、AFGPが、高温および細胞の生育に適合
しない化学的雰囲気を含む非最適雰囲気条件下に哺乳動
物細胞を保護するのに有用であることを示す。
実施例10 この例は、ヒト赤血球を凍結するための保存溶液中
に、AFPおよびAFGPを従来の凍結防止剤と組み合わせて
使用すること、およびその作用を示す。この際に、AFP
およびAFGPは、臨界的上限値より高い濃度で使用した場
合には、氷晶形成に対する作用のために、細胞に物理的
損傷を与えるが、上限値より低い濃度で使用した場合に
は、AFPおよびAFGPは、細胞の生存割合を凍結防止剤単
独の場合に達成される生存割合より改善することによ
り、有利な作用を提供することが判った。
第1の組の実験はRubinsky,B.等、「Cryobiology 26
(6):580(1989)」に報告されており、この実験で
は、赤血球を2種の保存溶液中に懸濁させた。第1溶液
は20%のグリセリンを含有する生理食塩水であり、第2
溶液は20%のグリセリンおよび南氷洋産ノトテニイド魚
(ディスソスティクス・マウソニ)からの40mg/mLのAFG
Pを含有する生理食塩水であった。次いで、各懸濁液を
方向性(directional)凝固装置で凍結した。この凝固
装置はRubinsky,B.,米国特許No.4,531,373(1985年7月
30日付発行)、およびRubinsky,B.等,「Cryobiology 2
2:55−68(1985)」中に開示されている移動式速度制御
凍結装置であった。冷却速度は1℃/分であり、この速
度を−35℃の最終温度まで続け、次いで290℃/分で溶
解した。冷却中に、ツァイス社ユニバーサル顕微鏡(倍
率:120Xおよび340X)に取り付けたビデオカメラによっ
て、観察、記録した。
AFGPを含有していない懸濁液中で細胞を凍結した場合
に、顕微鏡観察は、極めて大きい樹枝状氷晶構造が形成
し、これが細胞を取り包み、閉じ込めることを示した。
その後融解した場合に、この懸濁液中の細胞はすべて損
傷を受けておらず、従って凍結処理にもかかわらず生存
していた。これに対し、AFGPを含有していない懸濁を凍
結した場合には、小さい針様(針状(spicular))氷晶
が形成し、これら氷晶が細胞を前方に押し進め、細胞の
多くが氷晶間の未凍結流体通路中に閉じ込められた状態
になった。凍結を続けた際に、−35℃に冷凍され閉じ込
められた細胞はすべて、針状氷晶間のさらなる成長によ
って変形し、せん断力を受けている状態になった。凍結
した懸濁液を融解した場合には、針状氷晶によって変形
した細胞はすべて断片になり、細胞は生存しなかった。
これらの実験は、グリセリンのような凍結防止剤を含
有する溶液に、生理学的濃度の不凍化タンパク質を単に
直接添加することが有害であり、それは針状氷晶を形成
する際における不凍化タンパク質のよく知られている作
用であるからである。氷晶は細胞を完全に破壊し、細胞
を保存する凍結防止剤の能力を失わせた。
第2組の実験を行い、これらの実験では保存溶液とし
て20%のグリセリンを含有するリン酸緩衝生理溶液を、
単独および20mg/mLのAFP(ウンターフランダ)を含有さ
せた場合の両方について、25℃/分の冷却速度で−50℃
の最終温度まで冷却し、次いで290℃/分の速度で融解
した。凍結融解後の細胞の生存力を、トリパン青の排除
および形態完全性の目視(顕微鏡)観察によって評価し
た。AFPを含有していない保存溶液中の細胞は60%の生
存率を示したが、AFPを含有していない保存溶液中の細
胞は生存力を示さず、すべての細胞が破壊されていた。
ビデオ顕微鏡記録は、細胞が針状氷晶による機械的応力
によって破壊され、これはAFGPを使用した第1組の実験
において観察された作用と類似していることを示した。
新鮮な赤血球は一般的に新鮮でない赤血球より高い生
存率を有しているので、第3組の実験は、グリセリンを
含有していないリン酸緩衝生理溶液中で4℃において14
日間貯蔵することによって新鮮でなくなった赤血球を使
用して行った。次いで、細胞をいくつかのグループに分
け、グリセリンおよびウインターフランダからのAFPを
種々の濃度で含有する種々の溶液のそれぞれのなかに懸
濁させた。次いで、凍結を25℃/分の速度で−50℃まで
行い、次いで290℃/分で融解し、全実験を通じて顕微
鏡による観察をビデオカメラで記録した。この結果を次
の表11に示す。表11には、凍結点以下の温度における氷
の針状結晶の有無および融解後の生存率の観察結果を示
した。
この表から得られる結論は、AFPは、細胞に機械的損
傷を与える針状氷晶の形成を避けるのに十分な低い濃度
範囲で使用した場合に、凍結条件に曝された新鮮でない
赤血球に有利な作用を達成するということである。
実施例11 この例は、ラット肝臓からの組織試料の凍結に関する
実験結果を示し、AFGPの存在下における凍結特性とAFGP
の不存在下における冷凍特性との比較結果、および4000
℃/分という速い冷却速度における冷凍特性と4℃/分
という遅い冷却速度における冷凍特性との比較結果を与
える。
この実験に使用したAFGPは南氷洋産ノトテニイド(デ
ィスソティクス・マウソニ)からイオン交換クロマトグ
ラフィーによって単離したもので、分子量33,700〜10,5
00のフラクション1〜5を一緒にしたもの1重量部、お
よびそれぞれ、分子量3,500および2,600のフラクション
を一緒にしたもの3重量部を使用した。平均分子量は約
4,000であった。
生後45〜50日目の成熟した雌のスブラギューダウレイ
ラットにエーテル麻酔をかけた。腹部に沿って正中線切
開を行って肝臓を露出させた。次いで、門脈を露出さ
せ、カニューレを挿入し、直ちに1,000単位のヘパリン
を門脈中に注入した。次いで、選択したラットに200mg
(400mg/mL)のAFGPを含有する5mLの生理食塩水溶液を
注入し、直ちに門脈を締め付けて逆流を防止した。2分
以内に肝臓を耳たぶ状突出部(lobe)の周縁から約3mm
の位置で8×4×3mmの大きさの長方形試料に細分し
た。これらの試料にAFGPを灌流した試料と灌流しなかっ
た試料とを区別するために分離しておき、No.1カバーグ
ラス上に縦方向に載せた。
灌流試料および未灌流試料の両方を載せた第1カバー
グラスを直ちに、真空下で−213℃に維持した窒素スラ
ッシュ(slush)中に突っ込んだ。沸騰は認められなか
った。窒素スラッシュ中のこれらの試料の冷却速度は約
4000℃/分であると評価した。灌流試料および未灌流試
料の両方を載せた第2カバーグラスを実施例10の方向性
凝固装置上に載せた。この装置において、25℃の初期温
度から−35℃の最終温度まで4℃/分の制御した速度で
試料を冷凍した。これらの試料の凍結は約15分で達成さ
れた。冷凍直後に、これらの試料を液体窒素スラッシュ
中に浸漬した。
次いで、全試料をアムレイ(AMRAY)1000型低温走査
電子顕微鏡(LTSEM)中に入れた。試料を電子顕微鏡の
低温室(cryochamber)で破壊して耳たぶ状突出部の外
側表面から約2mmの区域を露出させた。次いで、これら
の試料を金で被覆し、凍結水和状態でLTSEMの凍結段階
に移送した。
200Xから5000Xに変動する倍率でLTSEMから得た顕微鏡
写真から、次のことが観察された。
AFGPを使用せずに4℃/分で凍結した試料:大きく滑
らかな連続する氷の単結晶が入っている拡張された洞様
血管が観察され、洞様血管を取り囲んでいる肝細胞は完
全に脱水され、従ってこの肝細胞は収縮していた。これ
らの観察は、先にRubinsky,B.等,「Cryoletters 8:370
(1987)」およびRubinsky,B.等「Proc.Roy.Soc.Lond.b
234:343(1988)」に報告されている。
AFGPを使用せずに4000℃/分で凍結した試料:肝細胞
の正常な構造が保持されていた。
AFGPを使用して4℃/分で凍結した試料:同じ速度で
冷凍したがAFGPを灌流しなかった試料において観察され
た大きく滑らかな氷の単結晶に対し、サブミクロンの大
きさの氷の針様結晶が血管中に観察された。すべての氷
晶が同じ配位方向を有し、すべての氷晶が血管境界で終
わっていた。肝細胞はAFGPを使用せずに4000℃/分で冷
凍した試料中の肝細胞について観察されたものと同じ無
傷の外観を保持していた。ただし、両方の場合に、肝細
胞はAFGPを使用せずに4℃で冷凍した試料の肝細胞と、
外観の点で明確に区別された。
AFGPを使用して4000℃/分で冷凍した試料:この場合
にもサブミクロンの大きさの針様氷晶が観察され、すべ
ての氷晶が同じ配位方向を有し、すべての氷晶が血管境
界で終わっていた。肝細胞および細胞核は無傷であるこ
とが観察された。
要約するに、AFGPを灌流し、4℃/分で冷凍した試料
は、AFGPを使用せずに4℃/分で冷凍した試料に対する
より、AFGPを使用せずに4000℃/分で冷凍した試料に対
して、より大きい類似性を有していた。経過の観察はす
べて液体窒素の温度において行った。これらの結果は、
AFGPが細胞外空間を通って拡散し、肝細胞と相互作用
し、肝細胞を低温の損傷作用から保護することを示唆す
る。また、これらの結果は、極めて迅速な冷却速度を必
要とせずに哺乳動物組織の保存を助けるAFGPの能力を確
認し、臓器および食物の保存にAFGPを適用することを示
唆する。
これらの結果を、高濃度のAFGPを組織ではなく細胞懸
濁液中に使用した実施例10の結果と比較すると、懸濁液
中の細胞は物理的損傷を受けるが、組織中の細胞は物理
的損傷を受けないことが判る。この差異は、組織のおけ
る細胞の稠密な組織化に関係し、組織の場合には針状氷
晶が血管境界で終るという観察結果に帰することができ
る。
実施例12 この例は、ガラス化中における哺乳動物細胞の凍結防
止にAFPおよびAFGPを使用すると、これらの物質が細胞
膜に対して保護作用を示すことを例示する。この例に使
用した細胞は未成熟ブタ卵母細胞であり、AFPはウイン
タフランダ、ケムシカジカ、およびオーシャンパウトか
ら採取し、AFGPは南氷洋産ノトテニイド(ディスソステ
ィクス・マウソニ)から採取した。
未成熟ブタ卵母細胞は、20℃で屠殺してから20分後
に、Mattioli,M.等「Gamete Res.21:223−232(198
8)」に記載されている従来方法によって、サイクリッ
ク雌ブタの選択した卵胞から単離した。低温に曝す準備
として、先ず0.1Mのスクロースおよび20%のFCSを含有
する1mLのPBS中に22℃において卵母細胞を入れた。次い
で、Arav,A.等,「Crybiology 66:567(1988)」によっ
て開発された既知方法に従って、5%のグリセリン、0.
1Mのスクロースおよび35%のプロピレングリコールを含
有する1mLのPBSと3分間ゆるやかに混合した。これらの
卵母細胞を次の物質から成る見掛けのガラス化溶液(AV
S)の0.1μL小滴を含むスライドグラスに移した: プロピレングリコール 17.5 % グリセリン 2.5 胎児子ウシ血清 20.0 PBS中の0.05Mのスクロース、これに0.4m/vのBSA,034mM
のピルビン酸、5.5Mのグルコース、および70μg/mLのカ
ナマイシンを加えたもの 残部 この溶液を単独であるいは20mg/mLのAFPまたはAFGPと
一緒に使用し、1個の卵母細胞を1個の小滴に含有させ
た。冷却する前に、卵母細胞を0.1μLの小滴に含有さ
せて顕微鏡のスライドグラス上に載せ、スライドグラス
上で22℃において6分間温置した。次いで、実施例10の
方向性凝固装置によって、顕微鏡による観察下に、1,70
0℃/分の速度で−130℃まで冷却を行った。次いで、ス
ライドグラスを15分間−130℃に保持し、その後試料を
1,700℃/分の速度で室温まで加温した。すべての操作
はビデオカメラを使用して顕微鏡観察下に行った。顕微
鏡によるモニターの結果は、すべての実験において小滴
は透明のままであることを示し、これは目視できる氷晶
が存在していなかったことを示す。さらにモニターの結
果は、胚および卵母細胞の形態が冷却および加温中に変
化しないことを示した。
加温後に、20%のFCSおよび1Mのスクロースを含有す
る1mLのPBS中に卵母細胞を室温において3分間入れ、次
いで20%のFCSを含有するPBSに移し、このPBS中で室温
において10分間平衡させた。次いで、卵母細胞の完全性
を、FDA染色および卵母細胞の完全性に焦点を合わせた
形態検査によって評価した。この例に使用した技術は上
述の実施例1で使用した技術と同じであった。また、評
価はガラス化前の新鮮な卵母細胞について行った。FDA
蛍光強さの平均値および標準偏差を核実験について計算
した。
これらの結果を表12に示す。この表ではFDA強さを次
式に従って正規化した形で表わした: 上式において、Iは測定された強さ、Inは正規化した
強さ、IAVSはAVS単独の場合の強さ、ICはコントロール
(新鮮な卵母細胞)の場合の強さを示す。「無傷パーセ
ント」の欄は、各試料における全卵母細胞に対する形態
の無傷な卵母細胞の割合を示す。形態の完全性に関する
標準は、断片化した卵細胞膜ではなく滑らかで完全な卵
細胞膜であった。
表13の結果は、AFPまたはAFGPによって保護されなか
った卵母細胞が、極低温に曝された際に生存できなかっ
たことを示す。これは、ブタ卵母細胞が極低温に曝され
た際に完全に破壊されるのが普通であることを示す文献
中の従来の結果と一致している。これに対し、ガラス化
培地中にAFPまたはAFGPが含まれている場合には、損傷
に対する保護がいずれの場合にもほぼ同様な程度まで認
められ、いずれの場合にも、FDA試験および形態試験の
両方において生存率が有意に大きいことが認められた。
実施例13 この例はガラス化中におけるマウス胚の凍結防止にAF
PおよびAFGPを使用した場合を示す。
CBA/CAJ雄マウスと一匹づつに対にした生後4週間のC
57B/B1/6Jマウスから2細胞段階のマウス胚を得た。5
〜7.5I.U.のPMSG(米国ミズーリ州セントルイス所在の
シグマ・ケミカル・カンパニー)を腹腔内注入し、その
48時間後に5〜7.5I.U.のHCG(米国ミズーリ州セントル
イス所在のシグマ・ケミカル・カンパニー)を腹腔内注
入することにより、雌マウスを過剰排卵させた。精液注
入後40時間経過してから、マウスから卵管を摘出し、2
細胞胚を排出させ、PBS中に貯蔵した。
低温に曝す準備として、マウス胚を1mLのPBSおよびFC
L中に入れ、次いで見掛けのガラス化溶液と一緒にし、
この際すべての操作を実施例12に記載したと同様に行っ
た。次いで、胚をスライドグラス上で4℃において12分
間温置し、次いで1,700℃/分の速度で−130℃に冷却
し、同じ速度で室温まで加温し、この際操作をすべて実
施例12におけると同様に行い、同じ操作を使用して行っ
た。
倍率340Xにおける顕微鏡観察の結果、全実験において
小滴は透明のままであることが判った。これは目視でき
る氷晶が存在しないことを意味する。さらに、顕微鏡観
察の結果、胚および卵母細胞の形態が冷却および加温中
に変化しなかったことが確認された。
加温後に、マウス胚を4℃において3分間、20%のFC
Sおよび1Mのスクロースを含有するPBSに曝し、次いで20
%のFCSを含有するPBS中に移し、室温(22℃)において
12分間平衡させた。次いで、胚をT6ホワイティングハム
培地である細胞胚地中で3回洗浄し、次いでこの培地中
で培養した。この培地中で平衡状態にした後に、胚を5
%のCO2含有する空気中で72時間温置した。
極低温に曝した後に、マウス胚の生存率を、正常な膨
張した形態を示しながら胚盤段階にインビトロ発育する
マウス胚の能力によって評価した。生存率試験の結果を
表13に示す。表13において生存率のパーセントの数字
は、胚盤段階に到達した胚の数を、冷却した全数のパー
セントとして示したものである。この例においても実施
例12におけると同様に、コントロールデータは冷却せず
に、卵母細胞および胚を室温に保持した試験を示す。
表13のデータは、使用した特定のバッチのAFPにおけ
る欠陥に明らかに帰することできる小数の例外がある
が、AFPおよびAFGPは両方とも、急冷によりガラス化を
受ける胚に有利な作用を与えることを示す。
実施例14 この例は、ガラス化溶液を使用してガラス化を行う際
に、未成熟ブタ卵母細胞およびブタ胚の凍結防止にAFP
およびAFGPを使用した場合を示す。この例の一部分はRu
binsky,B.等「Cryoletters 12:93〜106(1991)」に報
告されている。
この実験で使用したAFGPは南氷洋産ノトテニイドから
得た。AFPは南氷洋産イールパウトから得たもので、そ
の平均分子量は6,900であった。
未成熟ブタ卵母細胞は、20℃で屠殺してから20分後
に、Mattioli,M.等,「Gamete Res.21:223−232(198
8)」に記載されている従来方法によって、サイクリッ
ク雌ブタの選択した卵胞から単離した。2細胞段階のブ
タ胚を平均体重90kgの思春期前の未経産雌ブタから採取
した。1250I.U.のPMSG(米国ミズーリ州セントルイス所
在のシグマ・ケミカル、カンパニー)を投与し、その36
時間後に750I.U.のHCG(米国ミズーリ州セントルイス所
在のシグマ・ケミカル、カンパニー)を投与することに
より、発情させた。2回の人工精液注入を行った。1回
目はHCG注入後34時間で、2回目は46時間で行った。HCG
注入してから60時間後に、全身麻酔下に腹部中央におけ
る腹腔鏡を用いる手術によって動物から2細胞胚を採取
した。
低温に曝す準備として、先ず0.1Mのスクロースおよび
20%のFCSを含有する1mLのPBS中に22℃において胚およ
び卵母細胞を入れた。次いで、Arav,A.等,「Cryobiolo
gy 66:567(1988)」によって開発された既知方法に従
って、5%のグリセリン、0.1Mのスクロースおよび35%
のプロピレングリコールを含有する1mLのPBSと3分間ゆ
るやかに混合した。これらの胚および卵母細胞を次の物
質から成る見掛けのガラス化溶液(AVS)の0.1μL小滴
を含むスライドグラスに移した: プロピレングリコール 17.5 % グリセリン 2.5 胎児子ウシ血清 20.0 PBS中の0.05Mのスクロース、これに0.4m/vのBSA,034mM
のピルビン酸、5.5Mのグルコース、および70μg/mLのカ
ナマイシンを加えたもの 残部 この溶液を単独であるいは40mg/mLまたは50mg/mLのAF
PまたはAFGPと一緒に使用し、1個の卵母細胞を1個の
小滴に含有させた。冷却する前に、胚および卵母細胞を
スライドグラス上で22℃において6分間温置した。
実施例10の移動ベルト式速度制御凍結装置によって、
顕微鏡による観察下に、1,700℃/分の速度で−130℃ま
で冷却を行った。15分間−130℃に保持した後、試料を
1,700℃/分の速度で室温まで加温した。顕微鏡による
モニターの結果は、すべての実験において小滴が透明の
ままであることを示し、これは目視できる氷晶が存在し
ていなかったことを示す。さらにモニターの結果は、胚
および卵母細胞の形態が冷却および加温中に変化しない
ことを示した。
加温後に、細胞培養物における生存率を調べる準備と
して、20%のFCSおよび1Mのスクロースを含有する1mLの
PBS中にブタ卵母細胞およびブタ胚を室温において3分
間入れ、次いで20%のFCSを含有するPBSに移し、このPB
S中で22℃において10分間平衡させた。
細胞培養を行う前に、すべての胚および卵母細胞を細
胞培地中で3回洗浄した。5μg/mLのヒツジ黄体形成ホ
ルモン(NIH S 20)、ブタ卵胞刺激ホルモン(LER 441
−2)および20mg/mLのブタプロラクチン(LER 2073)
を含有させて変性したTCM−199培地中で、ブタ卵母細胞
を培養した。ブリンスター培地にグルコースを加えず
に、この培地中でブタ胚を培養した。細胞培地中で平衡
させた後に、卵母細胞および胚を5%のCO2を含有する
空気中で37℃において培養した。培養時間はブタ卵母細
胞については44時間とし、ブタ胚については24時間とし
た。
ブタ卵母細胞を44時間培養した後に酢酸/エチルアル
コール(容量基準1:3)中で固定し、ラクモイド(lacmo
id)染料で染色した。Mattioli等,「Gamete Res.21:22
3−232(1988)」によって記載された位相差顕微鏡を使
用して、胚の小胞段階から第1中期(M I)段階または
第2中期(M II)段階までインビトロ発育させる能力、
および正常な形態(細胞質の緻密さ、完全な卵細胞膜、
目視できる核段階)を与える能力によって、未成熟ブタ
卵母細胞の生存率を評価した。同じ技術を使用して、完
全な形態(細胞膜および細胞質)を維持しながら、培養
で4細胞段階まで発育する能力によって、2細胞段階の
ブタ胚の生存率を評価した。4細胞段階でインビトロ培
養を停止させた。それは、初期段階のブタ胚がインビト
ロ培養した際に4細胞ブロック(block)と出会うこと
が多く、従ってさらに培養を行っても極低温に曝した後
の胚の生存率を評価するのに有用でないからである。
生存率試験の結果を次の表14に示す。表14において、
ブタ卵母細胞の実験における生存率の数値はM IまたはM
IIの中期段階に到達した卵母細胞の数を、冷却した未
成熟卵母細胞の全数の百分率として示したもので、ブタ
胚についての生存率の数値はインビトロ発育後に4細胞
段階に到達した胚の数を、冷却した胚の全数の百分率と
して示したものである。
表14中のコントロールデータは、冷却を行わず、その
代りに卵母細胞および胚を室温に保持して行った試験を
示す。AVSを単独使用したコントロールデータは、AVSは
卵母細胞または胚に悪影響を与えなかったが、40mg/mL
のAFGPを使用した場合の卵母細胞についてのコントロー
ル試験は、AFGPが悪影響を与えなかったこと、および実
際に低温に曝さかなった場合でも保護作用を有していた
ことを示す。50mg/mLのAFPを使用した場合の卵母細胞に
ついての試験は改善を全く示さなかったが、すべての他
の試験は、冷却/加温期間後に培養した場合の生存率が
AFGPの添加によって改善されたことを示した。50mg/mL
のAFPを使用した場合の試験結果は、実際に劣ったAFPバ
ッチに帰することができ、より好ましい結果が実施例1
2,13および16に記載されている。AVS単独と平衡させた
卵母細胞および胚はいずれも、冷却/加温期間後に、培
養した場合に生存可能でなかった。
これは10℃より低い温度においてブタ胚の保存に成功
した最初の試みを示し、0℃より著しく低い温度におい
て保存を達成することができたことは全く一層驚くべき
ことである さらに、トリパン青の排除および形態学的検査は、急
冷を行いかつAVS+40mg/mLのAFGPを使用した試験では、
卵細胞膜は無傷のままであり、細胞形態は卵母細胞の82
%において正常であったことを示した。AFGPを使用しな
かった試験では、細胞形態は異常に見え、AVSを懸濁液
中に含有させたか否かにかかわらず、卵細胞膜はすべて
の卵母細胞において分断されていた。
実施例15 この例は、微温条件(4℃)に曝している間に桑実胚
および初期胚盤胞ヒツジ胚の保護にAFPを使用する場合
について説明する。この実験に用いたAFPはウィンタフ
ランダ(AFPタイプI)およびオーシャンパウト(AFPタ
イプIII)から単離した。この研究に用いたAFPの組成
は、AFPを単離した魚中に天然に存在しているような生
理学的組成であり、これをセファデックスG75を用いて
魚血漿から精製した。
桑実胚および初期胚盤胞の段階におけるヒツジ胚を人
工受精後7日間経過した雌ヒツジから得た。雌ヒツジは
p−FSHを用いて過剰排卵させた。屠殺後20分以内に単
離したらっぱ管からPBSを用いて胚を採取した。等級(g
rade)1〜2の胚のみを用いた。
微温に曝らす前に、胚を0.5mLの種々の保存液が入っ
ているエッペンドルフ小びん中に入れた。この場合、各
保存液は1,4または10mg/mLの添加剤を含むPBSからな
り、この添加剤はBSAまたは1種のAFP組成物であった。
AFPの濃度として1mg/mLおよび10mg/mLを選択したのは、
実施例2の結果に基く。コントロール試験はPBS中に4mg
/mLのBSAを用いて微温に曝らさないで行った。
胚を種々の保存液中で2〜4℃において4日間にわた
って温置した。この温置期間の後に、胚をインビトロ培
養において次の3種の観察によって生存力を調べた:
(1)膨張した胚盤胞段階に発育した胚の数,(2)透
明帯から孵化した胚の数,および(3)72時間培養後の
孵化した胚盤胞の大きさ。
表15のデータは、4mg/mLのBSAを含むPBS中で微温に曝
した胚のうち、60%のみが胚盤胞段階に発育したが、微
温に曝さなかったコントロールの胚と比較して、孵化率
は極めて低く、孵化胚盤胞の大きさが極めて小さいこと
を示している。これに対し、1mg/mLのAFP I(ウィンタ
フランダ)の存在下に、93%の胚が生存し、正常な発育
を示し、孵化率および孵化胚盤胞の大きさはコントロー
ルの値と実質的に等しかった。
これらの試験は、AFPが短期間の胚の保存および輸送
に有効な保存液であることを確認するものである。この
ような結果は、胚の40〜50%を損失するのが普通である
従来の冷凍方法と比較して有利である。
実施例16 この例は、桑実胚−胚盤胞段階において、ガラス化条
件下におけるウシ胚の凍結防止にAFPおよびAFGPを用い
る場合について説明する。
その実験に用いたAFGPは、南氷洋ノトテニイド魚から
得た。AFPはウィンターフランダ(AFPタイプI)および
オーシャンパウト(AFPタイプIII)から得た。AFPおよ
びAFGPはすべて魚血漿からセファデックスG75を用いて
精製した。この実験に用いるために、桑実胚−初期胚盤
胞胚を、人工受精後7日目に屠殺してから30分間後に過
剰排卵したウシのらっぱ管から分離した。等級1〜2の
胚のみを用いた。
低温に曝すための準備として、先づ胚を0.4%のBSAお
よび1.625Mのグリセリンを含む1mLのPBSからなる予備溶
液中に22℃で16分間にわたって入れておいた。次いで、
胚を4.875Mのグリセリンを含むPBSからなるガラス化容
器(「75%VS3」と称する)の小滴に移した。このガラ
ス化溶液はBSAを60mg/mLあるいはAGPまたはAFGPを40mg/
mL補充してから使用した。次いで、この小滴を顕微鏡ス
ライド上で22℃において1分間温置した。
1分間温置した後に、小滴を含むスライドを実施例10
の移動ベルト式速度制御冷却装置によって4,992℃/分
の速度で−120℃の最終温度に冷却し、この温度に15分
間維持した。次いで、スライドグラスを4,992℃/分の
速度で室温に加温した。冷却中および加温中の両方にお
いて、スライドグラスを顕微鏡によりモニターした。モ
ニターにより、小滴がすべての実験において透明に維持
されたことが明らかになり、これは目に見える氷晶が存
在しないことを示す。また、モニターにより、胚の形態
が冷却中または加温中に、変化しなかったことを確かめ
た。
加温後に、細胞培地における生存力試験の準備とし
て、胚を0.4%のBSAおよび1Mのスクロースを含む1mLのP
BS中に室温(22℃)で10分間にわたって入れておいた。
その後に、0.5Mのスクロースを含むPBSに移し、次いでP
BS中で洗浄した。
次いで、胚を培地中で5%のCO2の雰囲気下に38℃に
おいて約1時間にわたって培養し、次いで、同期(sync
hronized)受け入れウシ(7日)に1匹のウシ当り3個
の胚の割合で移した。次いで、妊娠したラットを超音波
走査で検査した。結果を次の表16に示す。表16におい
て、右欄は胚を移植したウシの全数に対する妊娠したウ
シの割合を示す。表の末尾には、コントロール試験の結
果を示した。この試験では胚を75%のVS3の60mg/mLのBS
A中に、冷却せずに、従ってガラス化せずに温置した。
これらの結果は、ガラス化操作を行う場合に、新鮮な
コントロール胚におけると同じ妊娠率を得るために、AF
PおよびAFGPを安全に用いることができることを示して
いる。
上述の記載は主として例示のためのものである。この
技術分野における通常の知識を有する者にとって、本発
明の要旨および範囲から逸脱することなく、使用材料,
実施する操作および本発明に適用される状態および条件
に関して、種々の変化、置き換えおよび変更を加えるこ
とができるのは明らかである。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−61503(JP,A) 特開 昭60−226588(JP,A) 米国特許4688387(US,A) 米国特許4155331(US,A) 英国特許2219923(GB,A) 英国特許2219924(GB,A) Nature,Vol.333(1979), P.232−237 Proc.Natl.Acad.Sc i.USA,Vol.86,No.3,P. 881−885(1989) Science,Vol.163(1969), P.1073−1075

Claims (40)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非生理条件に曝される哺乳動物の生細胞を
    保護および保存するに当り、 前記細胞を極洋の魚類から単離および精製された1種ま
    たは2種以上の熱ヒステリシスタンパク質の液体溶液と
    接触させることを特徴とする哺乳動物の生細胞を保護お
    よび保存する方法。
  2. 【請求項2】前記非生理条件は前記細胞にとっての生理
    的レベルとは実質的に異なるレベルを有する温度および
    pHの少なくとも一方によって規定された条件であり、前
    記1種または2種以上の熱ヒステリシスタンパク質の液
    体溶液は水溶液であることを特徴とする特許請求の範囲
    第1項記載の方法。
  3. 【請求項3】前記非生理条件は前記細胞の生理温度より
    実質的に低い温度によって規定される条件であり、前記
    1種または2種以上の熱ヒステリシスタンパク質の液体
    溶液は水溶液であることを特徴とする特許請求の範囲第
    1項記載の方法。
  4. 【請求項4】前記極洋の魚類は南氷洋産ノトテニオイ
    ド,北洋産タラ科の魚,カレイ科の魚,コッチドおよび
    イールパウトからなる群から選択したものであることを
    特徴とする特許請求の範囲第1項記載の方法。
  5. 【請求項5】前記1種または2種以上の熱ヒステリシス
    タンパク質は (a) バゴテニア・ボルクグレビンキ,トレマトムス
    ・ボルググレビンキ,ディスソスティクス・マウソニ,
    ガデゥス・アガク,ガデゥス・モルファ,ミクロガデゥ
    ス・トムコド,ボレオガデゥス・サイダおよびエリゲヌ
    ス・グラシリスからなる群から選択したものから単離お
    よび精製された不凍化糖タンパク質; (b) プセウドプレウロネクツス・アメリカヌス,リ
    マンダ・フェルルギネア,マイオキシセファルス・スコ
    ルピウス,マイオキシセファルス・アエナエウスおよび
    マイオキシセファルス・スコルピオデスからなる群から
    選択したものから単離および精製されたタイプIの不凍
    化ポリペプチド; (c) ヘプトリプテルス・アメリカヌス,オスメルス
    ・モルデクスおよびクルペア・ハレングス・ハレングス
    からなる群から選択したものから単離および精製された
    タイプIIの不凍化ポリペプチド;および (d) マクロゾアルセス・アメリカヌス,ライゴフィ
    ラ・デアルボルニおよびリコデス・ポラリスからなる群
    から選択したものから単離および精製されたタイプIII
    の不凍化ポリペプチド からなる群から選択したものであることを特徴とする特
    許請求の範囲第1項記載の方法。
  6. 【請求項6】前記1種または2種以上の熱ヒステリシス
    タンパク質は (a) パゴテニア・ボルクグレビンキ,トレマトムス
    ・ボルググレビンキおよびディスソスティクス・マウソ
    ニからなる群から選択したものから単離および精製され
    た不凍化糖タンパク質; (b) プセウドプレウロネクツス・アメリカヌスおよ
    びリマンダ・フェルルギネアからなる群から選択したも
    のから単離および精製されたタイプIの不凍化ポリペプ
    チド; (c) ヘミトリプテルス・アメリカヌスから単離およ
    び精製されたタイプIIの不凍化ポリペプチド;および (d) マクロゾアルセス・アメリカヌス,ライゴフィ
    ラ・デアルボルニおよびリコデス・ポラリスからなる群
    から選択したものから単離および精製されたタイプIII
    の不凍化ポリペプチド からなる群から選択したものであることを特徴とする特
    許請求の範囲第1項記載の方法。
  7. 【請求項7】前記1種または2種以上の熱ヒステリシス
    タンパク質は (a) ディスソスティクス・マウソニから単離および
    精製された不凍化糖タンパク質; (b) プセウドプレウロネクツス・アメリカヌスから
    単離および精製されたタイプIの不凍化ポリペプチド; (c) ヘミトリプテルス・アメリカヌスから単離およ
    び精製されたタイプIIの不凍化ポリペプチド;および (d) マクロゾアルセス・アメリカヌスから単離およ
    び精製されたタイプIIIの不凍化ポリペプチド からなる群から選択したものであることを特徴とする特
    許請求の範囲第1項記載の方法。
  8. 【請求項8】前記液体溶液は、さらに組織培養培地を含
    有する水溶液であることを特徴とする特許請求の範囲第
    1項記載の方法。
  9. 【請求項9】前記哺乳動物の生細胞は水懸濁液中の連続
    していない細胞であり、前記非生理条件は前記細胞の生
    理温度とは実質的に異なる温度によって規定された条件
    であり、前記1種または2種以上の熱ヒステリシスタン
    パク質の液体溶液は水溶液であることを特徴とする特許
    請求の範囲第1項記載の方法。
  10. 【請求項10】前記細胞はヒト細胞であり、前記非生理
    条件はヒトの生理温度より実質的に低い温度によって規
    定された条件であり、前記水溶液中の前記1種または2
    種以上の熱ヒステリシスタンパク質の全濃度は約0.1mg/
    mL〜約40mg/mLであることを特徴とする特許請求の範囲
    第9項記載の方法。
  11. 【請求項11】前記水溶液中の前記1種または2種以上
    の熱ヒステリシスタンパク質の全濃度は約0.1mg/mL〜約
    3mg/mLであることを特徴とする特許請求の範囲第10項記
    載の方法。
  12. 【請求項12】前記細胞はヒト卵母細胞およびヒト赤血
    球からなる群から選択したものであり、前記水溶液中の
    前記1種または2種以上の熱ヒステリシスタンパク質の
    全濃度は約0.1mg/mL〜約3mg/mLであることを特徴とする
    特許請求の範囲第10項記載の方法。
  13. 【請求項13】前記哺乳動物の生細胞は哺乳動物の組織
    の形態をしており、前記非生理条件は前記細胞の生理温
    度とは実質的に異なる温度によって規定された条件であ
    り、前記1種または2種以上の熱ヒステリシスタンパク
    質の液体溶液は水溶液であることを特徴とする特許請求
    の範囲第1項記載の方法。
  14. 【請求項14】前記非生理条件は前記哺乳動物の組織の
    生理温度より実質的に低い温度によって規定された条件
    であり、前記方法において、前記組織を前記非生理条件
    に曝す前に、前記組織に前記1種または2種以上の熱ヒ
    ステリシスタンパク質の液体溶液を潅流させ、前記組織
    を前記非生理条件に曝している間前記組織をこのように
    潅流されている状態に維持することを特徴とする特許請
    求の範囲第13項記載の方法。
  15. 【請求項15】前記哺乳動物の組織は血管を含んでお
    り、前記非生理条件は前記哺乳動物の組織の生理温度よ
    り実質的に低い温度によって規定された条件であり、前
    記方法において、前記組織を前記非生理条件に曝す前
    に、前記血管に前記1種または2種以上の熱ヒステリシ
    スタンパク質の液体溶液を潅流させ、前記組織を前記非
    生理条件に曝している間前記血管中に前記液体溶液を保
    持することを特徴とする特許請求の範囲第13項記載の方
    法。
  16. 【請求項16】前記水溶液中の前記熱ヒステリシスタン
    パク質の濃度は約0.1mg/mL〜約50mg/mLであることを特
    徴とする特許請求の範囲第13項記載の方法。
  17. 【請求項17】前記哺乳動物の組織はヒト組織であり、
    前記水溶液中の前記熱ヒステリシスタンパク質の濃度は
    約0.1mg/mL〜約3mg/mLであることを特徴とする特許請求
    の範囲第13項記載の方法。
  18. 【請求項18】前記液体溶液は、さらに組織培養培地を
    含有する水溶液であることを特徴とする特許請求の範囲
    第13項記載の方法。
  19. 【請求項19】前記哺乳動物の生細胞は哺乳動物の臓器
    の形態をしており、前記非生理条件は前記細胞の生理温
    度とは実質的に異なる温度によって規定された条件であ
    り、前記1種または2種以上の熱ヒステリシスタンパク
    質の液体溶液は水溶液であることを特徴とする特許請求
    の範囲第1項記載の方法。
  20. 【請求項20】前記非生理条件は前記哺乳動物の臓器の
    生理温度より実質的に低い温度によって規定された条件
    であり、前記方法において、前記哺乳動物の臓器を前記
    非生理条件に曝す前に、前記哺乳動物の臓器の血管に前
    記1種または2種以上の熱ヒステリシスタンパク質の液
    体溶液を潅流させ、前記哺乳動物の臓器を前記非生理条
    件に曝している間前記血管中に前記液体溶液を保持する
    ことを特徴とする特許請求の範囲第19項記載の方法。
  21. 【請求項21】前記水溶液中の前記熱ヒステリシスタン
    パク質の濃度は約0.1mg/mL〜約50mg/mLであることを特
    徴とする特許請求の範囲第19項記載の方法。
  22. 【請求項22】前記非生理条件は前記細胞の生理温度と
    は実質的に異なる温度によって規定された条件であるこ
    とを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の方法。
  23. 【請求項23】前記非生理条件は前記細胞の生理温度と
    は実質的に異なる温度によって規定された条件であり、
    前記条件は氷晶を形成しやすくない条件であることを特
    徴とする特許請求の範囲第1項記載の方法。
  24. 【請求項24】前記非生理条件は水の凍結温度より高く
    前記細胞の生理温度より低い温度によって規定された条
    件であることを特徴とする特許請求の範囲第23項記載の
    方法。
  25. 【請求項25】前記熱ヒステリシスタンパク質の濃度は
    約0.01mg/mL〜約60mg/mLであることを特徴とする特許請
    求の範囲第24項記載の方法。
  26. 【請求項26】前記熱ヒステリシスタンパク質の濃度は
    約1mg/mL〜約40mg/mLであることを特徴とする特許請求
    の範囲第24項記載の方法。
  27. 【請求項27】前記非生理条件は前記溶液のガラス形成
    温度またはこれより低い温度および氷晶を形成する代り
    にガラス化を促進するガラス化剤の存在によって規定さ
    れた条件であることを特徴とする特許請求の範囲第23項
    記載の方法。
  28. 【請求項28】前記ガラス化剤はグリセリン,ジメチル
    スルホキシド,エチレングリコール,ポリビニルピロリ
    ドン,グルコース,プロパンジオール及びカルボキシメ
    チルセルロースからなる群から選択した1種または2種
    以上の物質を含有することを特徴とする特許請求の範囲
    第27項記載の方法。
  29. 【請求項29】前記熱ヒステリシスタンパク質の濃度は
    約0.01mg/mL〜約60mg/mLであることを特徴とする特許請
    求の範囲第27項記載の方法。
  30. 【請求項30】前記熱ヒステリシスタンパク質の濃度は
    約1mg/mL〜約40mg/mLであることを特徴とする特許請求
    の範囲第27項記載の方法。
  31. 【請求項31】前記非生理条件は前記細胞の生理温度よ
    り高い温度によって規定された条件であることを特徴と
    する特許請求の範囲第1項記載の方法。
  32. 【請求項32】前記非生理条件は水の凍結温度またはそ
    れより低い温度および非ペプチド系凍結防止剤の存在に
    よって規定された条件であることを特徴とする特許請求
    の範囲第1項記載の方法。
  33. 【請求項33】前記非ペプチド系凍結防止剤はグリセリ
    ン,ジメチルスルホキシド,エチレングリコール,ポリ
    ビニルピロリドン,グルコース,プロパンジオール及び
    カルボキシメチルセルロースからなる群から選択した1
    種または2種以上の物質であることを特徴とする特許請
    求の範囲第12項記載の方法。
  34. 【請求項34】前記哺乳動物の生細胞は細胞懸濁液中の
    連続していない細胞であり、前記非生理条件は水の凍結
    温度より実質的に低い温度によって規定された条件であ
    り、前記非ペプチド系凍結防止剤は約5重量%〜約35重
    量%の範囲の量で存在し、前記1種または2種以上の熱
    ヒステリシスタンパク質の全濃度は約0.1mg/mL〜約3mg/
    mLであることを特徴とする特許請求の範囲第32項記載の
    方法。
  35. 【請求項35】前記哺乳動物の生細胞は哺乳動物の組織
    の形態をしており、前記非生理条件は水の凍結温度より
    実質的に低い温度によって規定された条件であり、前記
    非ペプチド系凍結防止剤は約5重量%〜約35重量%の範
    囲の量で存在し、前記1種または2種以上の熱ヒステリ
    シスタンパク質の全濃度は約0.1mg/mL〜約60mg/mLであ
    ることを特徴とする特許請求の範囲第32項記載の方法。
  36. 【請求項36】前記哺乳動物の生細胞は哺乳動物の組織
    の形態をしており、前記非生理条件は水の凍結温度より
    実質的に低い温度によって規定された条件であり、前記
    非ペプチド系凍結防止剤は約5重量%〜約35重量%の範
    囲の量で存在し、前記1種または2種以上の熱ヒステリ
    シスタンパク質の全濃度は約1mg/mL〜約40mg/mLである
    ことを特徴とする特許請求の範囲第32項記載の方法。
  37. 【請求項37】哺乳動物の細胞膜を通るイオンの移動速
    度を望ましくない値にする傾向のある条件下に、哺乳動
    物の細胞における膜機能を維持するに当り、 前記細胞膜を極洋の魚類から単離および精製された有効
    量の1種または2種以上の熱ヒステリシスタンパク質で
    処理することを特徴とする哺乳動物の細胞における膜機
    能を維持する方法。
  38. 【請求項38】前記細胞膜を、約0.01mg/mL以上の全熱
    ヒステリシスタンパク質濃度を有する1種または2種以
    上の熱ヒステリシスタンパク質の水溶液と接触させるこ
    とを特徴とする特許請求の範囲第37項記載の方法。
  39. 【請求項39】前記細胞膜を、約0.1mg/mL以上の全熱ヒ
    ステリシスタンパク質濃度を有する1種または2種以上
    の熱ヒステリシスタンパク質の水溶液と接触させること
    を特徴とする特許請求の範囲第37項記載の方法。
  40. 【請求項40】前記細胞膜を、約0.5mg/mL〜約40mg/mL
    の全熱ヒステリシスタンパク質濃度を有する1種または
    2種以上の熱ヒステリシスタンパク質の水溶液と接触さ
    せることを特徴とする特許請求の範囲第37項記載の方
    法。
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