JPH0892067A - アミノ酸型糖脂質及び小胞体安定化剤 - Google Patents

アミノ酸型糖脂質及び小胞体安定化剤

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JPH0892067A
JPH0892067A JP6252791A JP25279194A JPH0892067A JP H0892067 A JPH0892067 A JP H0892067A JP 6252791 A JP6252791 A JP 6252791A JP 25279194 A JP25279194 A JP 25279194A JP H0892067 A JPH0892067 A JP H0892067A
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Hidetoshi Tsuchida
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 リン脂質小胞体水溶液の凝集・融合を抑制
し、また、凍結したリン脂質小胞体水溶液を融解して
も、乾燥したリン脂質小胞体を水に再分散しても、もと
の構造と機能を保持したまま安定に再生させることがで
きる構造の明確なアミノ酸型糖脂質を低コストで提供す
る。 【構成】 糖単位数2〜50である糖の末端アルドース
がアミノ酸のアミノ基に結合していると共に、二本の疎
水性基がアミノ酸のアミノ基あるいはカルボン酸基に導
入されている構造のアミノ酸型糖脂質及び該アミノ酸型
糖脂質からなるリン脂質小胞体安定化剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低コストで大量に合成
できる構造の明確なアミノ酸型糖脂質に関するものであ
り、当該糖脂質をリン脂質小胞体の二分子膜中に導入す
ることによって小胞体の分散状態を安定化させることが
できる。従って、本発明は医薬、食品、化粧品、界面活
性剤の各分野において広く利用できる。
【0002】周知の通り、糖脂質の利用分野は、その両
親媒性や糖鎖構造に由来する諸機能を生かして、医薬、
化粧品、バイオテクノロジー、機能性食品、環境保全な
ど広範囲にわたっている。例えば、界面活性を利用して
クリームなどのエマルション形成に用いられている。ま
た、化合物の分離精製に用いるHPLCの充填剤に糖脂
質糖鎖自体が有する分子認識能を利用する試みも行われ
ている。
【0003】さらに糖脂質を、リン脂質を主成分とした
二分子膜小胞体( リポソーム) の二分子膜に導入する用
途開発が行われており、特に小胞体はその内水相に種々
の水溶性の機能物質を内包させたり、膜中に脂溶性機能
物質を包埋させることができ、しかも、生体適合性が高
く毒性が低いため、ドラッグデリバリーシステム(DD
S)や保湿性を生かした化粧品、徐放剤などへの応用が
試みられているが、この小胞体の表面を糖鎖にて修飾す
ることにより、血中滞留時間制御、放出制御、ターゲッ
ティングや各種生理活性などの機能性付与が期待でき
る。
【0004】本発明者らは小胞体の応用において問題と
なる凝集・融合などの不安定性を解決するための一手段
として、合成糖脂質を二分子膜の一成分として導入し、
小胞体表面を糖修飾することが有効であることを明らか
にしている(特開平1−294701号公報、特開平5
−294983号公報、および特開平5−317677
号公報)。
【0005】
【従来の技術】リン脂質小胞体が外部刺激によって凝集
・融合したり、内包物を漏出する現象や静脈内投与した
場合に細網内皮系(RES)に捕捉されて速やかに血流
中から排除される現象を回避するために、リン脂質小胞
体表面を改質する技術が数多く提案されている。
【0006】例えば、負に帯電したリン脂質小胞体にカ
ルシウムイオンを添加すると直ちに凝集するが、天然の
オリゴ糖脂質であるトリヘキソシルセラミドを膜成分と
して導入することによって、糖鎖の立体障害により凝集
が抑制されることが報告されている(D.Hoekstra & N.Du
zgunes, Biochemistry 25, 1321 (1986)) 。また、ガン
グリオシド(GM1)を小胞体に導入することによって
細網内皮系への捕捉が抑制されて血中滞留時間が延長さ
れることが報告されている(T.M.Allen et al,FEBS Let
t., 223, 42 (1987) )。また、疎水部のセラミド部位に
存在するアミド基や水酸基はリン脂質膜の親疎水界面付
近に存在し、膜中の隣接する脂質と水素結合することに
よって高い親和性を示して安定に導入されることが知ら
れている。また、オリゴ糖鎖は小胞体表面から25Å伸
び、10Åの位置に負電荷が存在しているが、このと
き、オリゴ糖鎖の立体障害によって負電荷が遮蔽されて
いることが重要であるとされている(岩森、細胞工学
5, 566 (1986)))。しかし、これらの糖脂質は、生体
からの抽出物であるために量産が困難という問題があ
る。
【0007】天然の糖脂質の機能が明らかにされるにつ
れ、天然糖脂質の合成法の開発が行われるようになった
( 木曽、長谷川,油化学 40, 28 (1991)) 。しかし、糖
鎖に保護基の導入、脱保護など煩雑な反応工程が必要で
あることや疎水性基であるセラミドの合成も困難である
ことから、やはり糖脂質の量産には不向きであるという
問題がある。なお、SPセラミドと称するセラミドと類
似構造の疎水性基が開発され、化粧品分野で使用されて
いる例もあるが、糖鎖は結合していない。
【0008】また、ホスファチジルエタノールアミンに
還元性末端基を有する生体由来のオリゴ糖鎖を添加して
シッフ塩基を形成させてNaBH4 などで還元してオリゴ糖
脂質を合成する方法が生化学の分野で広く用いられてい
るが、ホスファチジルエタノールアミンが高価であるた
め量産に適さないという問題がある(M.S.Stoll, T. Miz
oguchi, et al., Biochem. J., 256, 661 (1988)) 。
【0009】また、シュガーエステルは合成法が確立さ
れている上に安全性も十分に確認されているため広く食
品の添加剤として利用されているが、反応部位が特定さ
れておらず、種々の異性体が存在して構造が不明瞭であ
ると共に、リン脂質小胞体の二分子膜中に一成分として
導入しても安定化効果は得られていない。
【0010】小胞体の凝集・融合の抑制は、オリゴ糖鎖
の立体障害によるものであり、細胞表面に存在する構造
の複雑なオリゴ糖鎖に限らず、澱粉を解重合して得られ
るグルカンのような単純な構造のオリゴ糖鎖でも、小胞
体表面に固定されると小胞体の凝集抑制能を示す(S. Ta
keoka, et al., J.Colloid & Interface Sci., 152,351
(1992)) 。オリゴ糖鎖に脂肪酸をエステル結合させて
得られるオリゴ糖脂質は、合成が簡便である( 特開平1
−294701号公報) ものの、構造が不明瞭で種々の
異性体を生じるためその分離が困難であること、また異
性体によって小胞体凝集に対する効果が異なることなど
が問題とされている。
【0011】グルカン骨格の糖鎖の水酸基をアセチル基
で保護してトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホ
ン酸で末端アノマー位のみを活性化させ、これにジアル
キルグリセロールなどの水酸基を有する疎水性基をエー
テル結合させ、最終的にアセチル基を脱保護して糖脂質
を得る方法が知られている(T.Ogawa, et al., Carbohyd
rate Res.,93, C6 (1981))。この方法では、糖鎖と疎水
性基がグリセロールを介して結合した構造明確な糖脂質
を得ることができる。同様の方法で、本発明者らは、マ
ルトペンタオースからオリゴ糖脂質(1,2-di-O-octadecy
l-3-O-α( β)-maltopentaosyl-rac-glycerol)を合成
し、これを小胞体に導入すると高い導入率と優れた凝集
抑制能を示すことを確認している(S. Takeoka, et al.,
Chem. Lett., 1977 (1992))が、反応率が低く、保護基
の導入や反応雰囲気の厳密な制御、HPLCによる精製
を必要とし、大量合成にはさらなる改良を要する( 特開
平5−294983号公報) 。
【0012】オリゴ糖鎖末端アノマー位を臭素酸酸化し
てカルボン酸とし、ラクトン化を経て疎水性基を結合さ
せる方法により構造明確なオリゴ糖脂質が合成できる。
Denkinger らは、マルトースからマルトヘキサオースま
での一連のオリゴ糖をラクトン化したあと、種々の長鎖
アルキルアミンをアミド結合させた糖脂質を合成し、界
面活性剤としての物理化学的特性を調べている(Colloid
& Polymer Sci., 268, 513 (1990)) 。本発明者らもマ
ルトペンタオースラクトンにヘキサデシルアミンを反応
させて得られるヘキサデシルマルトペンタオンアミド
(HDMPA)をはじめとする一連のアミド結合型オリ
ゴ糖脂質、および、ラクトンを開裂した四級アンモニウ
ム塩とハロゲン化アルキルとの反応で得られるエステル
結合型のオリゴ糖脂質が、小胞体の凝集抑制能、凍結融
解や凍結乾燥に対する安定化効果を有することを報告し
た(H. Sakai, et al., Chem. Lett., 1891 (1993) 、特
開平5−317677号、および特願平5−20697
0号公報) 。しかし、オリゴ糖鎖に一本のアルキル鎖が
導入された構造は、親水性が高いため未反応の糖との分
離が困難になる場合がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】前記の通り、構造が明
確な糖脂質の合成法が幾つか確立されてはいるが、より
精製工程が簡便で生産性が高く、また二本の疎水性基が
導入された構造により、従来の一本のアルキル鎖が結合
したオリゴ糖脂質よりも疎水性が高く、二分子膜内に安
定に導入できる構造のオリゴ糖脂質が望まれている。隣
接脂質分子との親和性が高く、小胞体安定化効果に優れ
るオリゴ糖脂質が量産可能となれば、医薬品業界や化粧
品業界への影響は大きく、様々な実用への道が期待でき
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、糖単位数2〜
50である糖末端のアルドースのアノマー位にアミノ酸
のアミノ基が結合していると共に、二本の疎水性基がア
ミノ酸のアミノ基あるいはカルボン酸基に導入されてい
る構造のアミノ酸型糖脂質及び該アミノ酸型糖脂質から
なるリン脂質小胞体安定化剤である。
【0015】本発明に係るアミノ酸型糖脂質は、反応部
位が限定されるため保護基を導入せずとも単一体のみの
生成であるので高収率で得られることから、低コストで
大量合成でき、また、アルキル鎖が二本鎖であるため疎
水性が高いので、リン脂質小胞体の二分子膜中に安定に
導入できる。
【0016】以下に本発明を詳細に説明する。本発明に
係るアミノ酸型糖脂質の原料となる糖は、糖鎖末端にア
ルドースをもつ糖単位数2〜50の整数で示される糖で
ある。好ましくは糖鎖末端にアルドースをもつ糖単位数
5〜20の整数で示されるオリゴ糖がよい。糖鎖は、グ
ルカン、フルクタン、キシラン、ガラクタン、マンナ
ン、キチン、キトサン系列の糖のほか、結合様式が異な
った糖でもよい。アルドースとアミノ酸との結合様式と
しては、アミド結合による導入やシッフ塩基による結合
を−CH2 −NH−に還元する結合などがある。
【0017】糖とアミノ酸をアミド結合させる場合に
は、糖鎖末端のアルドースを臭素酸酸化、ヨウ素酸酸
化、電解酸化、などによってカルボン酸塩とした後、イ
オン交換樹脂や透析によって脱塩してプロトン化し、溶
媒を減圧留去、加熱乾燥を経て、分子内エステルを形成
させてラクトン型とする。この糖鎖のラクトン部位にア
ミノ酸のアミノ基を反応させてアミド結合を得る。
【0018】ここでいうアミノ酸は、カルボン酸基およ
びアミノ基を合わせて3つ以上あることが要求される。
うち1つのアミノ基は糖鎖末端のアルドースと結合し、
他のアミノ基またはカルボン酸基は疎水性基と結合す
る。アミノ酸はα、β、γ、δ型、またこれらのペプチ
ド、ポリペプチドなどどれも可能であるが、好ましくは
α- アミノ酸、例えばグルタミン酸、アスパラギン酸、
リジンおよびアルギニンなどが経済的に用いられる。
【0019】アミノ酸のカルボン酸基にエステル結合に
よって導入する疎水性基としては、炭素数12−22個
の第一および第二ハロゲン化アルキルがあり、直鎖第一
ハロゲン化アルキルとしては、ラウリルクロライド、セ
チルブロマイド、ステアリルブロマイド、ベヘニルヨー
ダイドなどがあり、直鎖第一不飽和ハロゲン化アルキル
としてはオレイルブロマイド、リノレニルヨーダイドな
どがある。また、分岐第一飽和ハロゲン化アルキル、あ
るいは第二不飽和ハロゲン化アルキルなども用いられ
る。また、前記直鎖状の疎水性基のほかにステロールが
あり、ハロゲン化コレステリルなどが用いられる。アミ
ノ酸のカルボン酸の対カチオンをテトラアルキルアンモ
ニウムイオンとし、上記ハロゲン化物を反応させると、
疎水性基がアミノ酸部位に導入される。
【0020】また、アミノ酸のカルボン酸基にエステル
結合により疎水性基を導入する方法として、水酸基を有
する疎水性基をアミノ酸と混合し脱水反応によりエステ
ル結合させる方法があるが、このときの水酸基を有する
疎水性基としては、炭素数12−22個の第一および第
二長鎖アルコールがあり、直鎖第一アルコールとして
は、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリ
ルアルコール、ベヘニルアルコールなどがあり、直鎖第
一不飽和アルコールとしてはオレイルアルコール、リノ
レニルアルコールなどがある。また、分岐第一飽和アル
コールあるいは第二不飽和アルコールなどがあり、ステ
ロールとしてはコレステロールがある。
【0021】また、脱水反応によりアミノ酸のカルボン
酸基にアミド結合により導入する疎水性基としては、炭
素数12−22個の第一および第二アルキルアミンが用
いられ、直鎖第一アルキルアミンとしては、ラウリルア
ミン、セチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミ
ンなどがあり、直鎖第一不飽和アルキルアミンとしては
オレイルアミン、リノレニルアミンなどがある。また、
分岐第一飽和アルキルアミンあるいは第二不飽和アルキ
ルアミンなどが用いられる。また、疎水性基としてコレ
ステリルアミンなどのステロールも用いることができ
る。
【0022】また、アミノ酸のアミノ基でアミド結合さ
せる場合の疎水性基としては、炭素数12−22個の脂
肪酸のハロゲン化物があり、ラウリン酸クロライド、ミ
リスチン酸クロライド、ペンタデカン酸ブロマイド、パ
ルミチン酸クロライド、アラキン酸クロライド、マーガ
リン酸クロライド、ステアリン酸クロライド、ノナデカ
ン酸クロライド、ベヘン酸クロライド等が挙げられ、そ
の他オレイン酸ブロマイド、リノール酸クロライド、リ
ノレン酸ブロマイド等で知られる直鎖不飽和脂肪酸ハロ
ゲン化物やあるいはミコール酸ブロマイドなどの分岐脂
肪酸、分岐不飽和脂肪酸ハロゲン化物などがある。これ
ら脂肪酸ハロゲン化物をアミノ酸のアミノ基と反応させ
ることにより疎水性基を導入する。残りのアミノ基をラ
クトン化糖と反応させてアミド結合させる。
【0023】また、糖がアミノ酸と−CH2 −NH−で
結合した糖脂質の場合には、上記方法によりアミノ基が
一つ残るようにアミノ酸に疎水性基を二本結合させ、得
られた脂質をクロロホルム/メタノール/水の混合溶媒
に分散させる。これに末端アルドースの糖を添加してア
ミノ酸アミノ基と糖鎖末端アルドースをシッフ塩基で結
合させる。更に水素化ホウ素ナトリウムやシアノ水素化
ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元させ、結合を(糖
−CH2 −NH−アミノ酸) とする。また、小胞体の表
面に糖鎖を結合させる方法もある。アミノ酸の一つのア
ミノ基を残し、他の残基に疎水性基を二本結合して得ら
れる両親媒性分子を小胞体膜の一成分としておき、これ
に末端アルドースの糖を添加して小胞体表面に存在する
アミノ基にシッフ塩基で結合させる。更に同様の還元剤
を用いて還元させて、結合を(糖−CH2 −NH−アミ
ノ酸) とする。
【0024】
【作用】本発明に係るアミノ酸型糖脂質は、構造の明確
な糖脂質であり、合成に当たっては結合部位と結合様式
が自ずと限定されるために保護基を必要としない。ま
た、比較的安価な原料を用いて合成でき、反応率が高
く、原料や副生物との溶解性が大きく異なるため精製が
容易である。二本の疎水性基が結合していることでリン
脂質小胞体の二分子膜にこれまで以上に安定に導入する
ことができる。
【0025】また、本発明に係るアミノ酸型糖脂質は、
リン脂質小胞体凝集防止、膜融合防止、特定抗体による
認識用ラベル化、生体内での貪食抑制などに応じての使
い分けが可能である。しかもいずれも少量の添加で十分
に有効であり、リン脂質小胞体の基本的な物性は変化さ
せない。
【0026】リン脂質小胞体は、その構成分子のゲル−
液晶相転移温度以下での静置や、カルシウムイオンや、
デキストラン、ポリエチレングリコールなどの水溶性高
分子の添加、アルコールなどの有機溶媒の添加で凝集・
融合し、内包物の漏出を認める。同様の現象は血漿蛋白
質との相互作用でも誘起される。しかし、本発明に係る
アミノ酸型糖脂質で小胞体表面を修飾することにより、
このような不安定化を抑制することができる。
【0027】リン脂質小胞体の内水相に機能性分子を包
含してこれを運搬体として生体投与した場合、血中滞留
時間が長いほど有効性が高くなるが、リン脂質小胞体は
血漿中に存在する蛋白質やカルシウムイオンなどとの相
互作用により凝集し、細網内皮系や貪食細胞へのとりこ
みにより短時間で血中より除外される。本発明に係るア
ミノ酸型糖脂質による表面修飾により、血中滞留時間を
制御することができる。また、リン脂質小胞体は疎水性
相互作用により脂質分子が集合して形成した比較的不安
定な構造であるために、そのままでは長期保存すること
ができない。しかし、本発明に係るアミノ酸型糖脂質の
導入により、凍結融解や凍結乾燥が可能となり、またそ
の性能は従来の糖脂質との比較でも優れた効果が得られ
る。
【0028】
【実施例】以下、本発明を実施例並びに比較例を挙げて
より詳しく説明する。 実施例1 (アミノ酸型糖脂質の合成)マルトペンタオース(2
3.0g)と炭酸カルシウム(6.67g)を純水12
0mlに分散させ、25℃で撹拌しながら臭素水溶液
(8.8g/340ml水)を徐々に添加した。6時間
後、薄層クロマトグラフィー( シリカゲル60:商品
名、Merck社、展開溶媒 クロロホルム/メタノー
ル/水/酢酸=3/4/2/1)ではマルトペンタオー
スのスポット(Rf=0.4)が消失し、末端カルボン
酸塩のスポット(Rf=0.24)のみになり、末端ア
ルドースの酸化反応が完了した。濾過により炭酸カルシ
ウムを除去後、炭酸銀(18.0g)を添加し、遮光下
2時間撹拌して、溶存する臭素イオンを臭化銀として不
溶化して除去した。更にH+型陽イオン交換樹脂(Amber
lite IR-120B) により末端をカルボン酸型とした。得ら
れた水溶液を凍結乾燥、更に80℃にて真空乾燥を8時
間した。TLCではRf値0.24が乾燥とともに減少
し、Rf値0.41のラクトン型のスポットのみになっ
た。IRスペクトルでは、1740cm-1にエステル結
合由来のC=O逆対称伸縮のピークの出現と、13C−N
MR(溶媒: 重DMSO)では、カルボン酸由来のピー
ク(174.5ppm)の消失とラクトンの炭素由来の
ピーク(171.5ppm)の出現から、カルボン酸が
ラクトン化したことを確認した。マルトペンタオースラ
クトンは18g得られた(収率:78%)。
【0029】グルタミン酸( 関東化学5.7g,38.
8mmol)を792mlのテトラブチルアンモニウム
ハイドロオキサイドのベンゼン/メタノール溶液(0.
1N,関東化学)にて中和してグルタミン酸テトラブチ
ルアンモニウム塩(以下Glu−(Bu4 + 2 塩と
略す)22.6gを得た(収率92%)。このGlu−
(Bu4 + 2 塩22.6g(36mmol)および
マルトペンタオースラクトン(18g,22mmol)
をDMF(150ml)に溶解させ、70℃にて16時
間撹拌した。反応の進行は、TLC(展開溶媒:クロロ
ホルム/メタノール/水=3/4/1)にてマルトペン
タオースラクトンのスポット(Rf=0.41)の消失
と、アミド結合して得られたマルトペンタオース−グル
タミン酸塩のスポット(Rf=0.20)の生成から確
認した。70℃にて減圧留去して濃縮後、アセトンへの
再沈精製を二度繰り返し、真空乾燥してマルトペンタオ
ース−Glu−(Bu4 + 2 塩(28g,収率88
%)を得た。IRスペクトルでは、1637cm-1のア
ミド結合由来のC=O逆対称伸縮が確認された。
【0030】マルトペンタオース−Glu−(Bu4
+ 2 塩(28g,19mmol)を250mlのDM
Fに溶解させ、これに1−ブロモテトラデカン(42m
l,80mmol)を加え、65℃にて8時間撹拌し
た。反応の進行は、TLC(展開溶媒:クロロホルム/
メタノール/水/酢酸=3/4/2/1)にて、原料の
スポット(Rf=0.1)、一本のアルキル鎖が導入さ
れた型のスポット(Rf=0.45)の消失と、O1,O5-
ditetradecyl-N-maltopentaonoyl-L-glutamateのスポッ
ト(Rf=0.7)の出現から確認した。減圧留去によ
り濃縮後、アセトン再沈し、Rf=0.9に出現する未
反応の1−ブロモテトラデカンをアセトン層に抽出除去
した後、真空乾燥して目的とするアミノ酸型糖脂質であ
るO1,O5-ditetradecyl-N-maltopentaonoyl-L-glutamate
(以下「DTMPGlu」と略す)22gを得た(収率
90%)。
【0031】(リン脂質小胞体の調製)1,2-Dipalmitoy
l-sn-glycero-3-phosphorylcholine(以下、「DPP
C」と略す),コレステロール、パルミチン酸、および
前記DTMPGluを、モル比で7/7/2/1.5の
割合で5g秤量し、メタノール/クロロホルム(1/1
vol比)の混合溶媒約50mlに溶解させた。この溶
液を1リットル容量のナス型フラスコに溶解させ、ロー
タリーエバポレータを用いて内壁に薄膜を形成せしめ
た。これを更に真空乾燥して溶媒を完全に除去後、40
mg/dl濃度の中性インスリン水溶液(10mM−リ
ン酸緩衝液、pH7.4)を添加し、4℃にて12時間
撹拌、水和させた。得られたインスリン内包小胞体分散
液を、エクストルージョン法により最終的に孔径0.2
μm のポリカーボネート製メンブランフィルター(Milli
pore製) に透過させることにより、平均粒径205±4
0nmに制御した。超遠心分離( Beckman L8-80M,20
万g、30分)操作を2回行って、外水相の未内包のイ
ンスリンを除去し、総脂質濃度を5g/dlとした。遠
心分離して得られる上澄の糖成分をフェノール硫酸法で
定量したところ、糖は殆ど検出されず、DTMPGlu
は99%二分子膜中に導入されたことが確認された。ま
た、対照試料として、DTMPGluを二分子膜に含ま
ないインスリン内包小胞体を調製した。
【0032】このインスリン内包DTMPGlu修飾小
胞体分散液0.5mlを、ヒト血漿3mlと混合して3
7℃にて静置した。DTMPGlu修飾系では、1時間
経過後も溶液の状態には変化は認められず凝集体形成も
確認されなかった。一方、DTMPGlu修飾していな
い系では、15分後には目で確認できる凝集体が出現
し、1時間後には凝集体の殆どが沈澱した。従って、D
TMPGluには血漿中での小胞体凝集抑制効果がある
ことが確認された。次に、血中動態を調べることを目的
とし小胞体をラベルするため、膜成分として1,2-di[1-1
4C]palmitoyl-sn-glycero-3-phosphorylcholine を5%
含む小胞体を同様の方法により調製した。これをマウス
( 雄) に、脂質量で400μg/匹の小胞体分散液を尾
静脈投与した(n=10)。経時的に血中放射能濃度を
測定し、半減期を得た。DTMPGlu修飾していない
系では半減期は約2時間であったが、DTMPGlu修
飾系では、約8時間にまで延長された。
【0033】比較例1 対照試料として、アルキル鎖が一本結合したオリゴ糖脂
質、N-hexadecylmaltopentaonamide(以下、HDMPA
と略す) を二分子膜に導入したインスリン内包小胞体を
調製し、実施例1記載の方法で血漿中での分散安定度試
験を行った。HDMPA修飾系は37℃で静置を開始し
て20分後に凝集体が確認されはじめ、1時間後には一
部沈澱している小胞体が確認された。1時間経過後、糖
修飾した小胞体を遠心分離して回収して再分散させ、リ
ン脂質濃度と糖定量から小胞体から抜け出たHDMPA
の量を測定したところ、血漿と混合する前と比較して、
約18%が小胞体から消失していた。一方、実施例1で
調製したDTMPGlu修飾系についても同様にして小
胞体から抜け出たDTMPGluの量を測定したところ
消失量は約3%であった。従って血漿中での分散安定度
は、アルキル二本鎖型のDTMPGluの方が一本鎖型
のHDMPAよりも小胞体安定化効果が高いことが判
る。また、同様の方法により血中での半減期を観察した
ところ、アルキル一本鎖型のHDMPA系は約4時間で
あるのに対し、アルキル二本鎖型のDTMPGlu系は
約8時間であるので、血中でも一本鎖型よりも二本鎖型
が小胞体安定化効果に優れていることが確認できた。
【0034】実施例2 (アミノ酸型糖脂質の合成)マルトオリゴ糖(サンオリ
ゴ5,6:商品名、参松工業(株)、マルトペンタオー
スとマルトヘキサオースを70%以上含む)2.0gを
実施例1と同様の臭素を使用する方法により酸化した。
TLC(展開溶媒:クロロホルム/メタノール/水/酢
酸=3/4/2/1)では、サンオリゴ5,6のスポッ
ト(Rf=0.41)が消失し、カルボン酸塩型のスポ
ット(Rf=0.26)のみが認められ、反応の終了を
確認した。炭酸銀、陽イオン交換樹脂を用いて脱塩した
あと、凍結乾燥、加熱乾燥(80℃、5時間)を経て、
マルトオリゴ糖ラクトンを得た(1.8g、収率90
%)。
【0035】N−ドデカノイル−L−リジン(AMIHOPE
LL:商品名、味の素)10gにテトラブチルアンモニウ
ムハイドロオキサイドのベンゼン/メタノール溶液
(0.1N、関東化学)を26ml加え、25℃にて1
時間撹拌した。減圧乾固してN−ドデカノイル−L−リ
ジンのテトラブチルアンモニウム塩を得た。これを10
0mlのDMFに溶解させ、マルトオリゴ糖ラクトンを
21g添加して70℃にて5時間撹拌した。反応の進行
は、TLC(展開溶媒:クロロホルム/メタノール/水
=3/4/1)にて、N−ドデカノイル−L−リジンが
マルトオリゴ糖に結合した型のスポット(Rf=0.5
0)の出現から確認した。反応終了後、更に1−ブロモ
ヘキサデカンを4.3g添加し、リジンのカルボン酸基
にヘキサデシル基を結合させた。反応の進行は、TLC
にてRf=0.75のスポットから確認した。減圧留去
により濃縮後、アセトンに滴下して再沈し、未反応の長
鎖アルキル基と、副生するテトラブチルアンモニウムブ
ロマイド塩を除去した後、真空乾燥して、目的とするア
ミノ酸型糖脂質である O-hexadecyl-N1-maltooligonoyl
-N5-dodecanoyl-L-lysine (以下HMDLと略す)を収
率90%で得た。IRスペクトルでは、1636cm-1
のアミド結合由来のC=O逆対称伸縮と、1739cm
-1にエステル結合由来のC=O逆対称伸縮のピークが確
認された。
【0036】(リン脂質小胞体の調製)HMDLの3m
gとDPPC100mgを、メタノールに溶解し混合し
た後、ロータリーエバポレーターにて200ml容量の
ナス型フラスコの内壁に薄膜を形成させた。5mlの純
水とガラスビーズと共に添加して、ボルテックスにて5
0℃で撹拌して白濁液を得た。この白濁液をエクストル
ーダーにて処理し最終的に孔径0.05μmのポリカー
ボネート製フィルター(Nuclepore社) を5回通過させる
ことにより白色透明なDPPC小胞体分散液を得た。粒
径分布測定装置(Coultrer, NS 4D) で測定したこの小胞
体の平均粒径は各々57±12nmであった。
【0037】前記小胞体分散液を0.5wt%に希釈し
た後、ゲル濾過( ファルマシア社製、セファロース CL-
4B, 20mm d × 300mm h) し、小胞体に導入されなかっ
たHMDLを系外に除去した後、各フラクションの糖を
フェノール−硫酸法によって定量することにより、HM
DLの小胞体への導入率を測定した。HMDLは添加量
の99.5%が小胞体に取り込まれていた。
【0038】この小胞体の分散安定性は、4℃静置で8
00nmの吸光度(濁度)の変化を紫外可視分光光度計
(島津社製、MP-2,000)で測定して評価した。HMDL
を導入していないDPPC小胞体分散液は直ちに濁度が
上昇しはじめ、吸光度は0.2まで上昇し、小胞体の凝
集が生起していることを示した。一方、HMDLを導入
した系では、静置直後0.03程上昇が認められるがそ
れ以降は殆ど上昇せず、凝集が抑制されていた。従来の
マルトペンタオースにパルミチン酸が一本エステル結合
した糖脂質では、吸光度が0.06にまで上昇したので
これよりもHMDLは優れている。また、グリセロール
型の二本鎖のオリゴ糖脂質(1,2-di-O-octadecyl-3-O-α
( β)-maltopentaosyl-rac-glycerol)は吸光度は約0.
03でHMDLと同程度であった。
【0039】実施例3 (アミノ酸型糖脂質の合成)デキストリン( マルトオリ
ゴ糖、平均重合度20) の末端アノマー炭素を実施例1
と同様にして酸化し、脱塩、脱水を経てデキストリンラ
クトンを得た。L−アスパラギン酸( 関東化学) にテト
ラエチルアンモニウムハイドロオキサイド25%水溶液
(関東化学)を二つのカルボン酸に対して等モル添加し
て中和したあと、ロータリーエバポレータにて減圧留
去、加熱乾燥した。実施例1記載の方法と同様に、デキ
ストリンラクトンとL−アスパラギン酸テトラエチルア
ンモニウム塩をDMF中に加熱溶解後、70℃にて20
時間撹拌した。減圧留去にて濃縮後、アセトンへの再沈
精製を三度繰り返した後、真空乾燥して、デキストリン
−アスパラギン酸テトラエチルアンモニウム塩を90%
の収率で得た。IRスペクトルでは、1637cm-1
アミド結合由来のC=O逆対称伸縮の出現が確認され
た。
【0040】デキストリン−アスパラギン酸テトラエチ
ルアンモニウム塩をDMFに溶解させた。これに1−ブ
ロモオクタデカンを加え、70℃にて5時間撹拌した。
反応の進行は、TLCにて、原料のスポット(Rf=
0.05)、一本のアルキル鎖が導入された型のスポッ
ト(Rf=0.30)の消失と、O1,O2-dioctadecyl-N-
maltooligonoyl-L-aspartateのスポット(Rf=0.4
5)の出現から確認した。減圧留去により濃縮後、アセ
トンに滴下して再沈精製した後、真空乾燥して目的とす
るアミノ酸型糖脂質であるO1,O2-dioctadecyl-N-maltoo
ligonoyl-L-aspartate(以下「DOMOAsp」と略
す)(糖鎖平均重合度20)を収率91%で得た。
【0041】(リン脂質小胞体の調製)混合脂質(DP
PC/コレステロール/ステアリン酸=7/7/2(モ
ル比)の薄膜に、アスコルビン酸リン酸マグネシウム塩
を2wt%含むエタノール/水(4/96 vol)混合溶
液を添加して水和させ、実施例1記載のエクストルージ
ョン法にて造粒し、平均粒径209±30nmの小胞体
を調製した。0.3N−NaOH水溶液を添加してpH
値を約7.4に調整したあと、遠心濃縮(20万g,3
0分)により脂質濃度を1wt%に調節した。この小胞
体分散液2mlにDOMOAspの0.1wt%水溶液
を2ml添加して37℃にて1時間撹拌することによ
り、DOMOAspを小胞体二分子膜に導入した。遠心
分離(20万g,30分)して上澄を回収し、フェノー
ル硫酸法にて糖の定量を行い、DOMOAspの導入率
を算出したところ、97%であった。また、紫外可視吸
収スペクトル(Shimadzu MPS-2000) にて上澄のアスコ
ルビン酸リン酸マグネシウム塩を定量したところ、DO
MOAspの導入操作で漏出した割合は約1%であっ
た。
【0042】遠心分離した小胞体を再度4%エタノール
水に分散させて、40℃にて静置した。DOMOAsp
を導入していない系では、1 日後に粒径が372±23
0nmに増大し、漏出率も40%と高いが、DOMOA
spを導入した系では、30日後も粒径は210±40
nmで殆ど変化せず、漏出率も5%に抑制された。従っ
て、DOMOAspは小胞体をエタノールに対して安定
化させる効果を有する事が判る。
【0043】比較例2 実施例3記載のDOMOAsp合成において、1−ブロ
モオクタデカンの添加量を半減させて、一本のアルキル
鎖が導入された型(Rf=0.30)の糖脂質O-octade
cyl-N-maltooligonoyl-L-aspartate(以下OMOAsp
と略す)を得た。これを純水に溶解させて0.1wt%
の水溶液とし、同様の方法によりリン脂質小胞体分散液
に加えて二分子膜中に導入する操作を行った。遠心分離
後の上清中の糖定量から、導入率は40%であり、DO
MOAspに比較してOMOAspは親水性が高いため
に、安定に導入されない。5%エタノール中40℃で静
置したところ、20日後の粒径は305±100nmで
あり、漏出率は10%であった。アルコールに対する安
定化効果は認められるが、二本鎖型のDOMOAspよ
りは低いものであった。
【0044】実施例4 (アミノ酸型糖脂質の合成)ヘキサデシルアルコールを
ベンゼンに溶解させ、これにグルタミン酸を分散させ
た。パラトルエンスルホン酸を触媒として加え沸点還流
を行い、共沸する水を除去し、脱水反応によってヘキサ
デシルアルコールをグルタミン酸のカルボン酸にエステ
ル結合させ、O1,O5-dihexadecyl-L-glutamate とした。
反応終了後、水洗により未反応のグルタミン酸を除去
し、またヘキサン洗浄により未反応のヘキサデシルアル
コールを除去した。O1,O5-dihexadecyl-L-glutamate と
実施例1記載の方法と同様にして得られたデキストリン
ラクトン(平均糖重合度40)をDMF中に加熱溶解
後、70℃、9時間反応させた。反応の追跡は、TLC
(展開溶媒:クロロホルム/メタノール/水=3/4/
1)にて、O1,O5-dihexadecyl-N-maltooligonoyl-L-glu
tamateのスポット(Rf=0.35)の出現から確認し
た。減圧留去により濃縮後アセトンに滴下して再沈し
た。真空乾燥して目的とするアミノ酸型糖脂質であるO
1,O5-dihexadecyl-N-maltooligonoyl-L-glutamate(以
下DHMOGluと略す)を収率90%で得た。
【0045】混合脂質粉末( 水添大豆レシチン/コレス
テロール/ミリスチン酸=7/7/2モル比)10.0
gに10mMのカルボキシフルオレセイン( 以下、CF
と略す)を溶解させた生理食塩水100mlを添加し
(脂質濃度10wt%)、24時間4℃で撹拌した。こ
れをマイクロフルイダイザー(M-110T マイクロフルイデ
ィクス コーポレーション) で処理し(4500ps
i、20分、4℃)、平均粒径300±130nmの小
胞体分散液を得た。これにDHMOGluの0.1wt
%水溶液を添加して25℃にて2時間撹拌し、二分子膜
への導入を実施した。実施例3と同様の方法で遠心分離
により未内包CFを除去した。また、DHMOGluの
導入率は95%であった。再分散により脂質濃度を5w
t%に調節したあと、分散液5mlを液体窒素中に滴下
して粒状に凍結させた。これを100mlのナス型フラ
スコに入れて、−20℃にて1Torr以下の減圧に保
ち、凍結乾燥させた。最後に温度を40℃まで上昇させ
て乾燥を完全にし、小胞体粉末を得た。この粉末に純水
5mlを添加して20分間撹拌して分散させた後、セル
ロースアセテート製フィルター(孔径0.45μm、東
洋濾紙)を透過させた。小胞体の平均粒径は310±1
10nmであり、凍結乾燥前と比較して殆ど変化は認め
られなかった。また、超遠心分離して得られた上澄中の
CFの定量から漏出率を算出したところ、約2%であっ
た。対照試験としてDHMOGluを添加せずに同様の
凍結乾燥を行い分散させたところ、粒径、粒径分布共に
大きくなり、2〜5μmの融合体が光学顕微鏡視野にお
いても多数認められた。更にCFの漏出率は80%であ
った。
【0046】実施例5 (アミノ酸型糖脂質の合成とリン脂質小胞体の調製)実
施例4記載のDHMOGlu合成法と同様の方法によ
り、オクタデシルアルコールをグルタミン酸に結合させ
て、目的とするアミノ酸型糖脂質であるO1,O5-dioctade
cyl-L-glutamate (以下DOGluと略す)を得た。実
施例1記載の方法と同様の方法により、DPPC/コレ
ステロール/ジパルミトイルホスファチジルグリセロー
ル/DOGlu(7/7/2/1 by mol)の混
合脂質薄膜にpH7.0、10mM−リン酸緩衝液を添
加し、エクストルージョン法により脂質濃度1wt%の
小胞体を調製した。この小胞体の平均粒径は211±3
0nmであった。これにマルトペンタオースを1wt%
になるように分散させて、60℃にて2時間反応させる
ことによりマルトペンタオースの末端をDOGluのア
ミノ基にシッフ塩基の形成により結合させた。これにシ
アノ水素化ホウ素ナトリウム0.2gを添加し、60℃
にて16時間撹拌することにより還元し、結合を安定化
させ、小胞体外面をDOGluにて修飾した。
【0047】得られた分散液を超遠心分離で洗浄し、再
度分散させた総脂質濃度1wt%の試料0.5mlを硝
子容器に入れてドライアイス/メタノール寒剤にて凍結
させた後、37℃の水槽に入れて融解させた。粒径分布
は205±40nmであり、小胞体の形態変化は認めら
れなかった。DOGlu修飾せずに凍結融解を行った場
合、粒径分布は幅広になり、目視できる凝集体が多数観
測された。従って、マルトペンタオースを小胞体を形成
させてから結合させる方法によって、凍結融解に対する
安定化効果を付与できることが判る。
【0048】実施例6 (アミノ酸型糖脂質の合成とリン脂質小胞体の調製)実
施例1記載のDTMPGlu合成と同様の方法により、
1−ブロモ−2,4−オクタデカジエンをグルタミン酸
に結合させて、目的とする重合性のジエン基を有するア
ミノ酸型糖脂質であるO1,O5-di(2,4-octadecadienyl)-N
-maltopentaonoyl-L-glutamate(以下OMGluと略
す)を合成した。このOMGluを重合性のリン脂質1,
2-di(2,4-octadecadienoyl)-sn-glycero-3-phosphoryl
choline と重量比で1/9の割合でベンゼンに混合し、
凍結乾燥をして混合脂質粉末を得た。これに純水を添加
してエクストルージョン法により粒径103±10nm
の小胞体(1wt%)を調製した。分散液10mlを石
英管に入れて充分窒素置換した後、4℃にて低圧水銀ラ
ンプ(Riko 社製 30W) から紫外光照射し、小胞体二分子
膜中のジエン基を重合させた。重合率は、ジエン基由来
の250nm付近の極大吸収の減少から追跡し、1時間
で重合率は95%に達した。
【0049】得られたOMGluで修飾した高分子リン
脂質小胞体の分散液を凍結乾燥した粉末状態で保存後、
純水を滴下してゆっくりと撹拌を行ったところ、粉末は
速やかに分散して均一系となった。粒径を測定したとこ
ろ105±12nmであり、形態の変化は無い。また、
血漿との混合では37℃にて2時間静置しても、溶液の
状態に変化は認められず、粒径は102±15nmで維
持されていた。
【0050】
【発明の効果】本発明に係るアミノ酸型糖脂質は、構造
の明確なオリゴ糖脂質であり、天然の糖脂質に近く、し
かも合成に当たっては結合部位と結合様式が自ずと限定
されるため保護基を必要とせず、精製工程ではHPLC
を用いず、比較的安価な原料を用いて収率高く得ること
ができる。また、合成方法が簡単であるため、誘導体の
合成も幅広く行うことができる。さらに、アルキル鎖が
二本あるために脂質二分子膜中に安定に導入されるの
で、多くの用途が期待されているリン脂質小胞体の安定
化剤として性能的にも経済的にも優れている。従って本
発明は、当業界に貢献するところ甚だ大きいものといえ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07C 229/24 7537−4H 229/26 7537−4H C07H 15/04 E

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 糖単位数2〜50である糖の末端アルド
    ースのアノマー位にアミノ酸のアミノ基が結合している
    と共に、二本の疎水性基がアミノ酸のアミノ基あるいは
    カルボン酸基に導入されている構造のアミノ酸型糖脂
    質。
  2. 【請求項2】 オリゴ糖の末端アルドースのアノマー位
    にアミノ酸のアミノ基が結合していると共に、二本の疎
    水性基がアミノ酸のアミノ基あるいはカルボン酸基に導
    入されている請求項1記載のアミノ酸型糖脂質。
  3. 【請求項3】 疎水性基が炭素数12〜22の炭化水素
    鎖である請求項1記載のアミノ酸型糖脂質。
  4. 【請求項4】 アミノ酸がグルタミン酸、アスパラギン
    酸及びリジンのいずれかである請求項1記載のアミノ酸
    型糖脂質。
  5. 【請求項5】 請求項1記載のアミノ酸型糖脂質からな
    るリン脂質小胞体安定化剤。
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