JPH087272B2 - 水平ベント管 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、原子炉本体基礎に接合
される水平ベント管に関する。

【０００２】

【従来の技術】水平ベント管に関する従来技術の例を、
図４〜図６を用いて説明する。

【０００３】図４は従来例の原子炉格納容器全体の説明
図、図５は従来例の水平ベント管及び原子炉本体基礎の
要部縦断面図、図６は従来例の水平ベント管の接合手順
の説明図であり、図４のうち、図４の（ａ）は従来例の
原子炉格納容器全体の縦断面図、図４の（ｂ）は図４の
（ａ）のＡ−Ａ断面図である。

【０００４】図４において、鉄筋コンクリ−ト製格納容
器２０内に、格納容器ドライウエル２３及びサプレッシ
ョンチェンバ２４が格納されており、サプレッションチ
ェンバ２４にはサプレッションチェンバプ−ル水２５が
貯水されている。

【０００５】また、鉄筋コンクリ−ト製格納容器２０に
は、原子炉圧力容器２２、原子炉圧力容器２２からの放
射線を遮蔽するために設けられた原子炉遮蔽壁２１、及
びそれらを支持する原子炉本体基礎１などが格納されて
いる。

【０００６】図４及び図５において、水平ベント管５
は、原子炉本体基礎１内を貫通しており、垂直管６、水
平吐出管７、リターンライン８及び底部閉止板９により
構成されている。

【０００７】水平吐出管７及びリターンライン８とも、
垂直管６から分岐しており、水平吐出管７は垂直管６の
下部に、リターンライン８は垂直管６の中央よりやや上
部に、それぞれ取り付けられている。

【０００８】すなわち、垂直管６及び水平吐出管７は、
格納容器ドライウエル２３とサプレッションチェンバ２
４との間を連結し、冷却材喪出事故時に、格納容器ドラ
イウエル２３内の高温高圧の蒸気を、サプレッションチ
ェンバプ−ル水２５内に吹き出させ、格納容器ドライウ
エル２３内の過大圧力を抑制している。

【０００９】また、リターンライン８は、冷却材喪出事
故時（ＬＯＣＡ）において、サプレッションチェンバプ
−ル水２５の水位が上昇した場合、サプレッションチェ
ンバプ−ル水２５を流通させている。

【００１０】垂直管６の下端には底部閉止板９が取り付
けられ、垂直管６内にはサプレッションチェンバプ−ル
水２５と同水位の水が貯えられている。

【００１１】一方、原子炉本体基礎１は、外筒２及び内
筒３から構成されている。

【００１２】次に、図５及び図６を用いて、水平ベント
管５を構成する部材の接合、及び水平ベント管５と原子
炉本体基礎１との接合手順を、以下に説明する。

【００１３】（１）まず、工場溶接で、水平ベント管５
の部材である、垂直管６、水平吐出管７、リターンライ
ン８及び底部閉止板９の各接合箇所を溶接し、水平ベン
ト管５の一体化を行う。

【００１４】（２）その後の接合は、輸送に大きさの制
限があるため、現地で行う。すなわち、現地において、
まず水平ベント管５の水平吐出管７を外筒２の穴部に挿
入し、外筒２と水平吐出管７との接合を、水平吐出管７
と外筒２との溶接部２７を溶接することにより行う。

【００１５】次に、垂直管６と外筒２及び内筒３に固設
してある頂部平板４との接合を、垂直管６と頂部平板４
との溶接部２６を溶接することにより行う。

【００１６】最後に、水平ベント管５のリターンライン
８に内筒３の穴部を嵌め込み、リターンライン８と内筒
３との接合を、リターンライン８と内筒３との溶接部２
８を溶接することにより行う。

【００１７】（３）上記の各溶接部について溶接検査を
行う。

【００１８】（４）更に、原子炉本体基礎１上部の原子
炉遮蔽壁２１などの据付け作業に進む。

【００１９】ここで、上記（３）の溶接検査において、
垂直管６と頂部平板４との溶接部２６、水平吐出管７と
外筒２との溶接部２７、及びリターンライン８と内筒３
との溶接部２８は、耐圧バウンダリーを構成する垂直管
６、水平吐出管７又はリターンライン８との溶接部であ
るため、溶接後、検査規格に基づく溶接検査を要求され
る。

【００２０】

【発明が解決しようとする課題】上記の溶接検査は、専
門検査管により行われる、標準溶接工法についての検
査、及び磁粉探傷試験又は浸透探傷試験による検査であ
るが、これらの検査のため、下記のような制約を受けて
いた。すなわち、 （１）専門検査管の検査工程に合わせた製作工程及び据
付け工程としなければならない。

【００２１】（２）現地における検査作業スペースを確
保するため、検査対象部位周りの部材の搬入及び据付け
作業などの組込み手順を調整しなければならない。

【００２２】（３）検査作業が、製作したものを据付け
た後に行われるため、検査結果から修復が必要になった
場合は、製作及び据付けの双方とも再作業が必要にな
る。

【００２３】上記理由のため、耐圧バウンダリーを構成
する水平ベント管５の各部材と、原子炉本体基礎１との
溶接部の現地溶接検査は、水平ベント管５及び原子炉本
体基礎１の建設工程上のネックとなっていた。

【００２４】本発明は、これらの課題を除去し、工程短
縮及び作業効率を図る抜本的改善策を提供することを目
的とする。

【００２５】

【課題を解決するための手段】上記目的は、次のように
して達成することができる。

【００２６】（１）原子炉圧力容器を取り囲む外筒およ
び内筒、前記外筒および内筒に固設した頂部平板を有す
る原子炉本体基礎、前記内筒と外筒との間に設置された
垂直管、前記外筒を貫通して前記垂直管に連通する水平
吐出管、前記内筒を貫通して前記垂直管に連通するリタ
ーンラインを有し、前記垂直管と前記頂部平板との接
合、前記水平吐出管と前記外筒との接合、及び前記リタ
ーンラインと前記内筒との接合の各接合箇所を持つ水平
ベント管において、前記各接合箇所における前記各接合
部材同志の間に介在物を設け、前記介在物と前記介在物
の両側の前記接合部材をそれぞれ溶接すること。

【００２７】（２）（１）において、介在物は円筒状の
前記垂直管、水平吐出側管、リターンラインの外周面に
内周面が嵌合される短管からなること。

【００２８】

【作用】水平ベント管の部材である垂直管、水平吐出管
及びリターンラインと原子炉本体基礎を構成する外筒及
び内筒との各溶接部において、垂直管、水平吐出管及び
リターンラインの各外周面に内周面が嵌合される短管を
それぞれ挿入し、予め工場溶接によってそれらを取り付
け、上記の各管と短管とを一体構造とすることにより、
水平ベント管は、耐圧バウンダリーを構成する垂直管、
水平吐出管及びリターンラインの各部材と、非耐圧バウ
ンダリーの短管とを有することになる。

【００２９】一方、原子炉本体基礎を構成する外筒及び
内筒は非耐圧バウンダリー部材である。

【００３０】したがって、現地において、原子炉本体基
礎と水平ベント管とを接合する場合、水平ベント管の短
管と原子炉本体基礎との溶接部は、非耐圧バウンダリー
部材どうしの接合となるので、耐圧バウンダリーを構成
する部材の溶接の際に必要であった溶接検査が不要にな
る。

【００３１】すなわち、専門検査管による検査日程が、
現地据付け工程のネックとなっていたが、現地における
溶接検査が不要となるので、溶接検査日程に支配される
ことなく据付け作業工程を組むことができる。

【００３２】また、垂直管、水平吐出管及びリターンラ
インと各短管との溶接部の溶接検査は、工場内で行うこ
とができるので、溶接検査用の空間スペースの確保が容
易であり、溶接検査の結果、修復作業を必要とする場合
でも再作業に容易に着手でき、工程短縮を図ることがで
きる。

【００３３】

【実施例】本発明の実施例を、図１〜図３を用いて説明
する。

【００３４】図１は一実施例の水平ベント管及び原子炉
本体基礎の模式縦断面図、図２は一実施例の水平ベント
管及び原子炉本体基礎の要部縦断面図、図３は一実施例
の水平ベント管の接合手順の説明図である。

【００３５】本発明の一実施例では、原子炉本体基礎１
の外筒２及び内筒３と、水平ベント管５の垂直管６、水
平吐出管７及びリターンライン８との間における接合箇
所の接合を、直接ではなく、図１及び図２に示すよう
に、垂直管用短管１０、水平吐出管用短管１１又はリタ
ーンライン用短管１２を介して、溶接により行ってい
る。

【００３６】すなわち、本実施例では、従来例に比べ
て、垂直管用短管１０、水平吐出管用短管１１又はリタ
ーンライン用短管１２を有するため、溶接箇所が多くな
っているが、このうち、まず工場溶接について説明す
る。

【００３７】図２において、水平ベント管５に部材であ
る垂直管６、水平吐出管７、リターンライン８及び底部
閉止板９の各部材間における接合箇所を、従来例と同様
にして溶接する。続いて、次の溶接を行う。

【００３８】すなわち、垂直管６と外筒２及び内筒３に
固設してある頂部平板４との接合部を有する垂直管６の
外周部に、垂直管用短管１０を付設し、垂直管６と垂直
管用短管１０との溶接部１３を溶接により接合し、垂直
管６と垂直管用短管１０とを一体化する。

【００３９】また、水平吐出管７と外筒２との接合部の
水平吐出管７の外周部に、水平吐出管用短管１１を付設
し、水平吐出管７と水平吐出管用短管１１との溶接部１
５を溶接により接合し、水平吐出管７と水平吐出管用短
管１１とを一体化する。

【００４０】更に、リターンライン８と内筒３との接合
部のリターンライン８の外周部に、リターンライン用短
管１２を付設し、リターンライン８とリターンライン用
短管１２との溶接部１７を溶接により接合し、リターン
ライン８とリターンライン用短管１２とを一体化する。

【００４１】なお、図３を用いて、水平ベント管５の接
合手順の例を示すと、次のとおりである。

【００４２】まず、平板のロール曲げ及び溶接により垂
直管６の上半分を製作し、垂直管６と外筒２及び内筒３
に固設してある頂部平板４（図２参照）とを接合する垂
直管６の外周部に垂直管用短管１０を付設し、溶接によ
り垂直管６に固着する。

【００４３】また、垂直管６のリターンライン８を据付
ける部分に穴開けを行い、この穴開け箇所にリターンラ
イン短管１２を固着したリターンライン８を挿入し、垂
直管６にリターンライン８を溶接により固着する。

【００４４】一方、平板のロール曲げ及び溶接により垂
直管６の下半分を製作し、水平吐出管７の据付け部分の
穴開けを行い、この穴開け箇所に、水平吐出管短管１１
を固着した水平吐出管７を挿入し、垂直管６に水平吐出
管７を溶接により固着する。また、垂直管６の下半分の
下端部に底部閉止板９を、溶接により取り付ける。

【００４５】次に、垂直管６の上半分と下半分とを溶接
により一体化し、穴状になっている箇所に耐圧試験用閉
止板１９を接合し、検査規格に基づいて要求されている
耐圧試験及び溶接検査を行う。これらの一連の作業は、
全て工場で行う。

【００４６】すなわち、検査規格に基づいて要求される
溶接検査は、水平ベント管５に対して従来行われていた
検査に、耐圧バウンダリーを構成する水平ベント管５の
各部材と非耐圧バウンダリー部材である上記の各短管と
の溶接部の検査が加わることになる。

【００４７】しかし、上記の検査は、工場で製作したも
のを同じ工場内で行う検査であるため、検査結果から修
復作業が必要となる場合であっても、スペースが十分に
確保できる工場内における再作業となるため、修復作業
を容易に行うことができる。次に、工場内で製作された
水平ベント管５を現地に運搬し、現地において原子炉本
体基礎１と水平ベント管５との接合を、溶接部を溶接す
ることにより行う。この現地溶接を、図２を用いて説明
する。

【００４８】まず、原子炉本体基礎１の外筒２における
水平吐出管７用の穴部に、水平吐出管短管１１を固着し
てある水平吐出管７を差し込み、水平吐出管短管１１と
外筒２との接合を、水平吐出管短管１１と外筒２との溶
接部１６を溶接することにより行う。

【００４９】また、外筒２及び内筒３に固設している頂
部平板４と垂直管６に固着している垂直管用短管１０と
の接合を、垂直管用短管１０と頂部平板４との溶接部１
４を溶接することにより行う。

【００５０】最後に、内筒３におけるリターンライン８
用の穴部を、リターンライン用短管１２を固着している
リターンライン８に嵌め込み、内筒３とリターンライン
用短管１２との接合を、リターンライン用短管１２と内
筒３との溶接部１８を溶接することにより行う。

【００５１】ここで、垂直管用短管１０と頂部平板４と
の溶接部１４、水平吐出管短管１１と外筒２との溶接部
１６、及びリターンライン用短管１２と内筒３との溶接
部１８は、いずれも非耐圧バウンダリー部材どうしの溶
接部であるので、現地溶接における溶接部の溶接検査は
不要となる。したがって、溶接検査は工場溶接における
溶接部のみに限定される。

【００５２】すなわち、現地における原子炉本体基礎１
の据付け作業工程上ネックとなっていた、耐圧バウンダ
リーを構成する部材の溶接部の溶接検査を削除すること
ができ、水平吐出管７及び原子炉本体基礎１の建設工程
の大幅な工程短縮、及び原子炉本体基礎１の早期据付け
が可能となり、水平吐出管７より上部の原子炉本体基礎
１の部分に据え付けられるアクセストンネル及び原子炉
遮蔽壁２１（図４参照）などの据付け作業への早期着工
が可能となり、鉄筋コンクリート製格納容器２０（図４
参照）の建設工程の大幅な工程短縮を図ることができ
る。

【００５３】

【発明の効果】本発明によれば、現地における水平ベン
ト管と原子炉本体基礎との接合箇所を、非耐圧バウンダ
リー部材どうしの溶接部に限定でき、耐圧バウンダリー
を構成する部材の溶接において必要とされている溶接検
査の削除を可能にし、水平ベント管及び原子炉本体基礎
の据付け作業の大幅な工程短縮及び作業効率向上を図る
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例の水平ベント管及び原子炉本
体基礎の模式縦断面図である。

【図２】本発明の一実施例の水平ベント管及び原子炉本
体基礎の要部縦断面図である。

【図３】本発明の一実施例の水平ベント管の接合手順の
説明図である。

【図４】従来例の原子炉格納容器全体の説明図である。

【図５】従来例の水平ベント管及び原子炉本体基礎の要
部縦断面図である。

【図６】従来例の水平ベント管の接合手順の説明図であ
る。

【符号の説明】

１…原子炉本体基礎、２…外筒、３…内筒、４…頂部平
板、５…水平ベント管、６…垂直管、７…水平吐出管、
８…リタ−ンライン、９…底部閉止板、１０…垂直管用
短管、１１…水平吐出管用短管、１２…リタ−ンライン
用短管、１３…垂直管６と垂直管用短管１０との溶接
部、１４…垂直管用短管１０と頂部平板４との溶接
部、、１５…水平吐出管７と水平吐出管用短管１１との
溶接部、１６…水平吐出管用短管１１と外筒２との溶接
部、１７…リタ−ンライン８とリタ−ンライン用短管１
２との溶接部、１８…リタ−ンライン用短管１２と内筒
３との溶接部、１９…耐圧試験用閉止板、２０…鉄筋コ
ンクリート製格納容器、２１…原子炉遮蔽壁、２２…原
子炉圧力容器、２３…格納容器ドライウエル、２４…サ
プレッションチェンバ、２５…サプレッションチェンバ
プール水、２６…垂直管６と頂部平板４との溶接部、２
７…水平吐出管７と外筒２との溶接部、２８…リタ−ン
ライン８と内筒３との溶接部。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 服部 明 茨城県日立市幸町三丁目１番１号 株式会 社日立製作所日立工場内 (72)発明者 佐藤 智二郎 茨城県日立市幸町三丁目２番１号 日立エ ンジニアリング株式会社内 (72)発明者 上遠野 泰一 茨城県日立市幸町三丁目２番１号 日立エ ンジニアリング株式会社内 (72)発明者 和田山 忠雄 茨城県日立市幸町三丁目２番１号 日立エ ンジニアリング株式会社内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 原子炉圧力容器を取り囲む外筒および内
   筒、前記外筒および内筒に固設した頂部平板を有する原
   子炉本体基礎、前記内筒と外筒との間に設置された垂直
   管、前記外筒を貫通して前記垂直管に連通する水平吐出
   管、前記内筒を貫通して前記垂直管に連通するリターン
   ラインを有し、前記垂直管と前記頂部平板との接合、前
   記水平吐出管と前記外筒との接合、及び前記リターンラ
   インと前記内筒との接合の各接合箇所を持つ水平ベント
   管において、前記各接合箇所における前記各接合部材同
   志の間に介在物を設け、前記介在物と前記介在物の両側
   の前記接合部材をそれぞれ溶接したことを特徴とする水
   平ベント管。
2. 【請求項２】 前記介在物は円筒状の前記垂直管、水平
   吐出管、リターンラインの外周面に内周面が嵌合される
   短管からなる請求項１記載の水平ベント管。