JPH0870899A - アンチセンス核酸の探索方法 - Google Patents

アンチセンス核酸の探索方法

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JPH0870899A
JPH0870899A JP30170994A JP30170994A JPH0870899A JP H0870899 A JPH0870899 A JP H0870899A JP 30170994 A JP30170994 A JP 30170994A JP 30170994 A JP30170994 A JP 30170994A JP H0870899 A JPH0870899 A JP H0870899A
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antisense nucleic
cell
acid compound
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JP30170994A
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Inventor
Kiyoshi Uchida
潔 内多
Takayoshi Uchida
貴義 内田
Yoichi Tanaka
陽一 田中
Yoko Matsuda
陽子 松田
Shinichi Kondo
伸一 近藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toagosei Co Ltd
Original Assignee
Toagosei Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 目的とする蛋白質をコードする遺伝子の塩基
配列のうちの任意の部分に対して相補的な塩基配列を有
する核酸化合物を合成し、無細胞転写翻訳系又は無細胞
翻訳系を利用して目的蛋白質の産生の阻害の有無を判定
することにより有効なアンチセンス核酸化合物を選択す
ることを特徴とするアンチセンス核酸の探索方法。 【効果】 本発明により、目的とする蛋白質の発現を阻
害するアンチセンス核酸化合物の塩基配列を特定するこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、目的とする蛋白質の発
現を有意に阻害するアンチセンス核酸を探索する方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】蛋白質の発現を有意に阻害するアンチセ
ンス核酸配列を選出する経験的な方法として、翻訳開始
部位やその上流の非翻訳部位を選ぶ方法が提案されてい
る(K.R. Blakeら、Biochemistry 24巻 6132-6138頁、1
985年; E. Uhlmann および A. Peyman、Chemical Revi
ews 90巻 543-584頁、1990年)。しかし、この方法で選
んだアンチセンス核酸は、蛋白質の発現を必ずしも有効
に阻害するとは限らない(例えば、R. D. Rickerおよび
A. Kaji、 FEBS Letters 309巻 363ー370頁、1992)。
また、計算によりその部位を予測する方法も提案されて
いるが、すべての場合に有効ではない(R. A. Stull
ら、Nucleic Acids Research 20巻 3501-3508頁、1992
年)。更に、アンチセンス核酸により蛋白質の発現が阻
害される部位(適用部位)として、mRNAの一本鎖部
分が適していると一般には考えられているが、むしろ塩
基対を形成している2本鎖部分のほうが適しているとの
報告もある(A. V. Laptevら、Biochemistry 33巻 1103
3-11039頁、1994年)。
【0003】即ち、これまでのところ、適用部位につい
ての経験則や計算予測からアンチセンス核酸法適用部位
を決定するのでは、必ずしも良い結果につながるとはい
えない。また、mRNAの2次構造との関係についても
充分に明らかになっていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、蛋白質の発
現を有意に阻害するアンチセンス核酸を実験的に探索す
るための方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
に基づいて鋭意研究を行った結果、兎網状赤血球溶解物
由来の転写翻訳系などを用いることにより、目的とする
蛋白質をコードする遺伝子の発現を有意に阻害する、該
遺伝子に相補的な塩基配列、即ち、有効なアンチセンス
核酸塩基配列を選択する方法を見い出し、本発明を完成
するに至った。
【0006】すなわち、本発明は、目的とする蛋白質を
コードする遺伝子の塩基配列のうちの任意の部分に対し
て相補的な塩基配列を有する核酸化合物を合成し、無細
胞転写翻訳系又は無細胞翻訳系を利用して目的蛋白質の
産生の阻害の有無を判定することにより有効なアンチセ
ンス核酸化合物を選択することを特徴とするアンチセン
ス核酸の探索方法である。
【0007】さらに、本発明は、目的とする蛋白質をコ
ードする遺伝子の塩基配列に基づいて系統的に調製され
た8〜30個の相補的な塩基配列を有する複数の核酸化合
物の中から、無細胞転写翻訳系又は無細胞翻訳系を利用
して目的蛋白質の産生を阻害するアンチセンス核酸化合
物を選択することを特徴とするアンチセンス核酸の探索
方法である。
【0008】上記無細胞転写翻訳系又は無細胞翻訳系と
しては、例えば細胞溶解物、具体的には兎網状赤血球溶
解物又は小麦胚芽由来の溶解物から得られたものが挙げ
られる。ここで、「目的とする蛋白質をコードする遺伝
子」とは、目的とする蛋白質(シグナルペプチドが存在
する場合はその部分を含む)のアミノ酸配列を規定して
いる構造遺伝子、および該遺伝子の発現に関与する、構
造遺伝子上流の塩基配列(プロモーターやオペレーター
など)や構造遺伝子下流の塩基配列(ポリAなど)のほ
か、構造遺伝子の途中に存在する介在配列(イントロ
ン)をも含み得る。
【0009】また、「目的とする蛋白質の発現を有意に
阻害する」とは、該蛋白質をコードする遺伝子の8〜30
個、好ましくは10〜20個の塩基配列に対して相補的な塩
基配列を有するアンチセンス核酸化合物による該蛋白質
の発現阻害効果が、同程度の塩基数からなる同様な核酸
化合物でランダムな塩基配列を有する核酸化合物による
阻害効果よりも大きい場合をいう。なお、「ランダムな
塩基配列」とは、目的とする蛋白質をコードする遺伝子
に対する相補性の程度が、統計的に期待される相補性の
程度またはそれ以下の程度である塩基配列をいう。
【0010】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
アンチセンス核酸の探索方法とは、アンチセンス核酸法
の考えを基に探索に用いる一群の核酸化合物の塩基配列
を決定し、該化合物群による目的蛋白質の産生阻害を評
価し、その目的蛋白質の産生を阻害するのに役割を果た
す核酸化合物を選択する方法である。
【0011】すなわち、まず目的とする蛋白質をコード
する遺伝子の塩基配列を、文献等の情報又は実験により
調べ、プラスミドの構築又はmRNAの調製を行う。し
かる後に、該遺伝子の塩基配列の全領域又は一部領域の
うちの8ないし30塩基程度、好ましくは10ないし20塩基
程度からなる部分塩基配列群に対して相補的な塩基配列
を有する一群の核酸化合物を合成化学的手法などにより
調製する。該核酸化合物の調製は、例えば鋳型となる塩
基配列に対して合成の開始点を1〜30塩基ずつ、好まし
くは1〜10塩基ずつ順次ずらしながら行う。このように
して合成された塩基配列を系統的に調製された8〜30個
の塩基からなる塩基配列という。例えば、10個の塩基か
らなる塩基配列を有する核酸化合物を5塩基ずつずらし
ながら調製する場合は、鋳型となる塩基配列に対して先
ず第1〜10番目の塩基配列に相補的な配列を合成し、次
は第6〜15番目の塩基配列に相補的な配列を合成し、そ
の次は第11〜20番目に相補的な配列を合成するという具
合に核酸化合物を合成する。但し、合成の開始点につい
ては任意に決定することができる。
【0012】次に、該化合物群が目的とする蛋白質の産
生を有意に阻害するかどうかを転写翻訳系または翻訳系
が機能する反応混合物系を用いて評価する。そして、目
的蛋白質の産生を有意に阻害する核酸化合物の塩基配列
に対して相補的な塩基配列をアンチセンス核酸として選
択(スクリーニング)する。尚、「転写翻訳系」とは、
転写に係わる酵素など及び翻訳に係わる酵素などからな
る系で、DNAから蛋白質を産生するまでの系を意味
し、「翻訳系」とは、翻訳に係わる酵素などからなる系
で、RNAから蛋白質を産生するまでの系を意味する。
【0013】(1)プラスミドの構築およびmRNAの
調製 先ず、無細胞系における転写翻訳により目的とする蛋白
質を産生できるプラスミドを入手するため、該プラスミ
ドの構築を行う。本発明の方法で目的とする蛋白質につ
いて、格別の制限はなく、各種の蛋白質に本発明の方法
は適用される。また、目的とする蛋白質の構造遺伝子を
含むプラスミドの製造方法も特に限定されないが、例え
ば以下のような方法で行うことができる。プラスミドpP
oly(A)-luc(SP6)(Promega社製)に含まれるルシフェラ
ーゼ構造遺伝子の上流と下流をそれぞれ異なる制限酵素
で切断する。一方、目的とする蛋白質の構造遺伝子は、
クローニングにより調製することができる。または、ク
ローニングにより得た該遺伝子を組み込んだプラスミド
などから調製することができる。
【0014】そして、得られた、目的とする蛋白質の構
造遺伝子の上流および下流に存在する上記それぞれの制
限酵素の部位を、それぞれの制限酵素で切断する。な
お、クローニング等で得た目的とする蛋白質の構造遺伝
子の上流または下流に上述の制限酵素部位が存在しない
場合は、合成などにより得たDNA断片を常法に従って
付着させることができる(J. Sambrook、 E. F. Fritsc
h、および T.Maniatis著、Molecular Cloning: A Labo
ratory Manual第2版、Cold Spring Harbor Laboratory
Press、1989年)。
【0015】pPoly(A)-luc(SP6)のうち、2種の制限酵
素でルシフェラーゼ構造遺伝子を切断除去した残りの部
分に、上述のように調製した目的とする蛋白質の構造遺
伝子を含む部分を結合させる。この際、例えば、Takara
社製のDNA Ligation Kitを利用することができる。この
ようにして得られたプラスミドを、例えば大腸菌、酵母
等の細胞に導入し、大腸菌等の増殖を利用して大量に複
製することができる。大腸菌としては、例えばTakara社
製の E. Coli JM109を用いることができる。
【0016】次いで、常法、例えば、次のような方法に
従って大腸菌からプラスミドを抽出精製し、目的のプラ
スミドを入手する。すなわち、まずプラスミドを含有す
る大腸菌等の細胞を遠心分離操作により集める。つい
で、該細胞にGTE溶液(50mMグルコース、25mM Tri
s・Cl、および10mMEDTA含有、pH8.0)を加えて懸
濁し、その1/9量のリゾチーム溶液(50mg/ml)、およ
び20/9量の水酸化ナトリウム(0.2規定)−ドデシル
硫酸ナトリウム(1%)混合溶液を用いて細胞を溶解さ
せる。酢酸カリウム(pH5.2)を加えて(最終濃度1
M)中和し、不溶物質を遠心分離操作で除去する。蛋白
質を除去するため、フェノール−クロロホルム−イソア
ミルアルコール(25:24:1)の混合溶液を加えて振り
混ぜる。遠心分離操作を行って上層(水相)を取り出
し、水相と等量の2−プロパノールを加えて攪拌し、室
温でしばらく置く。これを遠心分離して得られたものが
目的のプラスミドを含有する。ついで、これを適量のT
E(10mM Tris・Cl、および1mM EDTA含有、pH8.
0)に溶かし、それを塩化セシウムの密度勾配分離用液
に混ぜ、超遠心分離操作により分離する。塩化セシウム
は、プラスミドをTEに対して透析することにより除去
することができる(前掲のMolecular Cloningを参
照)。
【0017】このようにして得たプラスミドは、アガロ
ースゲル電気泳動法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動
法、パルスフィールド電気泳動法、ゲル濾過クロマトグ
ラフィー法、沈降速度法、光散乱法等によって分子量を
決定することができる。更に、目的とする蛋白質をコー
ドする塩基配列は、Sanger法またはMaxam-Gilbert法を
用いて決定することができる。
【0018】このようにして得られたプラスミドを用い
て、常法により該プラスミドに対応するmRNAを入手
することができる(たとえば、前掲のMolecular Clonin
g、およびTakara Biotechnology Guide: Protocols & A
pplications 1992/1993を参照)。
【0019】(2)核酸化合物の合成 次に、前記(1)で決定された塩基配列をもとに、目的
とする蛋白質をコードする塩基配列の全領域または一部
領域に対して、1〜30塩基ずつ逐次的にずらした8〜30
塩基からなる塩基配列を選択し、該塩基配列に相補的な
核酸化合物を合成によって調製する。好ましい方法とし
ては、1〜10塩基ずつずらした10〜20塩基からなる塩基
配列を、目的とする蛋白質をコードする塩基配列の全領
域または一部領域について選択し、該塩基配列に相補的
な塩基配列を合成によって調製する方法が挙げられる。
【0020】核酸化合物としては、天然型のオリゴデオ
キシリボヌクレオチド、ホスホロチオエート型のオリゴ
デオキシリボヌクレオチド、ホスホロジチオエート型の
オリゴデオキシリボヌクレオチド、メチルホスホネート
型のオリゴデオキシリボヌクレオチド、ホスホロアミデ
ート型のオリゴデオキシリボヌクレオチド、H−ホスホ
ネート型のオリゴデオキシリボヌクレオチド、トリエス
テル型のオリゴデオキシリボヌクレオチド、α−アノマ
ー型のオリゴデオキシリボヌクレオチド、上記の各オリ
ゴデオキシリボヌクレオチドに対応するオリゴリボヌク
レオチド、ペプチド核酸、およびその他の人工核酸や核
酸修飾化合物等を挙げることができるが、天然型のオリ
ゴデオキシリボヌクレオチドが、mRNAと結合して二
重鎖を形成したときにRNase Hの基質となる点、非特異
的な発現阻害が少ない点、合成が容易な点などから好ま
しい核酸化合物である。
【0021】天然型の核酸化合物の合成は、例えば、A
BI(Applied Biosystems Inc.)社製の381A DNA合成
機または同社製の394 DNA/RNA合成機を用いて、ホスホ
ロアミダイト法(ABI社の手順書、または F. Eckstein
編、Oligonucleotides and Analogues: A Practical Ap
proach、IRL Press、1991年を参照)により行うことが
できる。
【0022】ホスホロアミダイト法とは、修飾デオキシ
リボヌクレオシドまたは修飾リボヌクレオシドの3’末
端にシアノエチル基などで保護したホスホロアミダイト
を結合した試薬を用いて、別の修飾デオキシリボヌクレ
オシド、修飾リボヌクレオシド、オリゴ修飾デオキシリ
ボヌクレオチド、オリゴ修飾リボヌクレオチド等の5’
末端に縮合させることを基本とするオリゴデオキシリボ
ヌクレオチドやオリゴリボヌクレオチドなど核酸関連化
合物の合成法である。
【0023】そして、合成の最終サイクルにおいて、
5’末端の糖水酸基の保護基(ジメトキシトリチル基
等)が結合した状態で合成を終了する。室温下で合成し
たオリゴマーをサポートから切断後、塩基部分およびリ
ン酸部分の脱保護を行う。このようにして天然型オリゴ
核酸の粗精製物を得る。ホスホロチオエート型の核酸化
合物も上述の天然型と同様、ABI社の合成機を用いて
ホスホロアミダイト法で合成することができる。合成の
最終サイクル以降の処理も上述の天然型の場合と同様で
ある。
【0024】得られた核酸化合物の粗精製物は、通常の
精製方法、例えば、エタノール沈殿法を用いたり、ま
た、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラ
フィー、およびゲル濾過クロマトグラフィーの原理に基
づく高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超臨界
クロマトグラフィーなど種々のクロマトグラフィー、さ
らには、電気泳動法を用いて精製することができる。こ
のほか、逆相クロマトグラフィーの原理に基づいて製造
されたカートリッジ〔例えば、tC18を充填剤とするセ
ップパックプラス(ロングボディ/ENV);Waters社
製〕を用いることもできる。
【0025】ホスホロチオエート型の核酸化合物の精製
も上述の天然型の場合と同様である。なお、天然型およ
びホスホロチオエート型の核酸化合物の純度は、HPLC分
析により調べることが可能である。合成した核酸化合物
は、後述するスクリーニングに用いられる。
【0026】(3)スクリーニング 核酸化合物のスクリーニングは、目的とする蛋白質をコ
ードする遺伝子が存在する転写翻訳系に、(2)で合成
した核酸化合物を添加し、目的とする蛋白質の発現阻害
を調べることにより行うことができる。あるいは、目的
とする蛋白質をコードする遺伝子に対応したmRNAが
存在する翻訳系に、(2)で合成した核酸化合物を添加
し、目的とする蛋白質の発現阻害を調べることでも行う
ことができる。
【0027】反応温度は通常25〜40℃、反応時間は通常
0.5〜3時間であるが、30℃で1〜2時間、または37℃
で1時間の場合が好ましい。目的とする蛋白質をコード
する遺伝子を持つプラスミドを用いて、その蛋白質を発
現させる方法を以下に述べる。発現ベクターとしては、
目的とする蛋白質の構造遺伝子を含み、該遺伝子を発現
させることができるものが常法どおりに利用できる。ま
た、転写翻訳系としては、例えば、細胞溶解物由来、具
体的には兎網状赤血球溶解物由来又は小麦胚由来の転写
翻訳系などが利用できるが、目的とする蛋白質の遺伝子
を発現し目的とする蛋白質を産生するものであればいず
れでもよい。また、翻訳系についても、例えば細胞溶解
物由来、具体的には兎網状赤血球溶解物由来又は小麦胚
由来の転写翻訳系などが利用できるが、目的とする蛋白
質のmRNAから目的とする蛋白質を産生するものであ
ればいずれでもよい。
【0028】好ましい発現ベクターとしては、目的とす
る蛋白質をコードする遺伝子がSP6プロモーターの下流
の適当な部位にあるプラスミドなどを挙げることができ
る。この場合の転写翻訳系としては、Promega社製など
の兎網状赤血球溶解物由来の転写翻訳系やPromega社製
などの小麦胚由来の転写翻訳系などを利用することがで
きる。これらの転写翻訳系を用いて転写翻訳を行う際の
実験方法は、同社などのキットに添付の方法に基本的に
従えばよいが、アンチセンス核酸化合物による阻害効果
をより明確に知るためには、RNase Hを適当量添加すれ
ばよい。尚、RNase Hは、DNAからの転写で産生する
mRNAが、その塩基配列に相補的なオリゴデオキシリ
ボヌクレオチドと水素結合を介して2本鎖を形成したと
き、mRNAをその2本鎖形成部分で切断する酵素であ
る(H. Steinおよび P. Hausen、Science 166巻 393-39
5頁、1969年、; P. Hausenおよび H. Stein、 Europea
n Journal of Biochemistry、14巻 278-283頁、1970
年)。この酵素の作用により、その遺伝子がコードする
蛋白質の産生阻害がいっそう確実に行われるようにな
る。
【0029】また、アンチセンス核酸化合物として天然
型のオリゴデオキシリボヌクレオチドを用いる場合の濃
度は、0.1〜10μM、好ましくは0.4〜2μMである。特
に好ましくは、兎網状血赤球溶解物由来の転写翻訳系に
おいて、RNase H共存下、0.4μMで行うことができる。
さらに、アンチセンス核酸化合物としてホスホロチオエ
ート型のオリゴデオキシリボヌクレオチドを用いる場合
の濃度は、0.01〜1μM、好ましくは0.02〜0.4μMであ
る。特に好ましくは、兎網状血赤球溶解物由来の転写翻
訳系において、RNase H共存下、0.064〜0.15μMで行う
ことができる。
【0030】上述の転写翻訳系又は翻訳系において生成
する目的蛋白質を確認する方法としては、以下の2つが
挙げられる。第一の方法として、目的とする蛋白質に対
するポリクローナル抗体〔目的とする蛋白質をたとえば
大腸菌に産生させ、その産生物をたとえば兎に投与して
得た抗体(S. Kondoら、Biochemical and Biophysical
Research Communications 194巻 3号 1234-1241頁、199
3年を参照)〕を用いたサンドイッチ方式の酵素免疫測
定法(例えば E. Harlowおよび D. Lane著、Antibodie
s: A Laboratory Manual 、Cold Spring Harbor Labora
tory、1988年、を参照)が挙げられる。
【0031】この方法は、一般的によく知られた方法で
あり、具体的には以下の通りである。マイクロタイター
プレートに上述のポリクローナル抗体を常法(例えば、
上掲のE. Harlow および D. Lane著、Antibodies: A La
boratory Manual を参照)に従って固定化し、ついで、
上述の目的とする蛋白質をコードする遺伝子を転写翻訳
系に、又は該遺伝子に対応するmRNAを翻訳系に加え
て適当な温度で適当な時間保った反応混合液をマイクロ
タイタープレートに入れ、室温で放置したあと洗浄す
る。しかる後に、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識し
た上述のポリクローナル抗体を添加して室温で放置した
後に洗浄し、基質であるオルト−ジアミノベンゼン溶液
を加え、適度に発色するまで室温で放置後、吸光度を測
定し、目的とする蛋白質の含有量を評価する。
【0032】第二の方法として、目的とする蛋白質が上
述の転写翻訳系又は翻訳系で生成することをSDS−P
AGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド
ゲル電気泳動法)及びオートラジオグラフィーで確認す
る方法が挙げられる。SDS−PAGEは、常法(例え
ば、Promega社の転写翻訳系キットに添付されている手
順書、および、高木俊夫編著、PAGEポリアクリルア
ミドゲル電気泳動法、広川書店、1990年を参照)に従え
ばよく、典型的な例は、次のとおりである。
【0033】転写翻訳系又は翻訳系の反応混合液に2−
メルカプトエタノール含有のSDS Sample Buffer(Prome
ga社の手順書に示す組成の混合溶液を使用できる)を加
えて密栓後、熱処理を行って蛋白質を変性させる。この
サンプルを泳動槽に取り付けたドデシル硫酸ナトリウム
−ポリアクリルアミドゲルのウェルに添加し、SDS−
PAGE(15%または17.5%のポリアクリルアミドゲ
ル)で電気泳動を行う。その後、オートラジオグラフィ
ーを行うために、ゲルを濾紙に移し、ゲル乾燥装置を用
いて乾燥させ、次いで、暗室中でそのゲルをX線用フィ
ルムと重ねてカセットに入れ、数時間から数十時間、室
温で放置したあと、該X線用フィルムを現像する。目的
とする蛋白質をコードする遺伝子が発現していれば、目
的とする蛋白質の分子量に応じた位置にバンドが出現す
る。アンチセンス核酸化合物によって該遺伝子の発現が
阻害されている場合には、該バンドは発現しないかまた
は発現が弱くなる。尚、バンドが出現する場合におい
て、用いたプラスミドまたはmRNAが含む遺伝子の違
いによりバンドの位置に相違がみられる。例えば、プラ
スミドとしてpSU02を用いて血管内皮細胞増殖因子(以
下「VEGF」という)を発現させたときは、分子量約
15kdにバンドが認められるが、pPoly(A)-luc(SP6)をプ
ラスミドとして用いてルシフェラーゼを発現させたとき
には、分子量約60kdの場所にバンドが見られる。
【0034】添加した核酸化合物、すなわち、アンチセ
ンス核酸化合物の目的とする蛋白質をコードする遺伝子
に対する発現阻害効果は、それを添加しない場合と比較
することで行うことができる。例えば、前記の目的とす
る蛋白質が生成するか否かの確認方法に記載の通り、産
生した目的とする蛋白質を前記SDS−PAGEで分離
し、それをオートラジオグラフィーに付し、その黒化度
をデンシトメータで定量すればよい。そして、アンチセ
ンス核酸化合物を添加した場合の黒化度と添加しない場
合の黒化度とを比較することにより確認することができ
る。
【0035】かかる比較によって、遺伝子の発現阻害率
を求めることができる。遺伝子の発現を阻害するために
は、遺伝子の塩基配列のうち少なくとも8個の塩基、好
ましくは連続する8個の塩基に対して相補的な塩基配列
を有する核酸化合物であることが必要であり、8個以上
であれば塩基の数は限定されないが、30個以上の相補的
な塩基配列を有しても格別に効果に優れるということは
なく、合成等が困難になるばかりであるから、30個以下
の相補的配列を有する核酸化合物を用いて本発明の目的
は十分に達成される。
【0036】このようにして、アンチセンス核酸法適用
部位を探索し、その結果を基に設計したアンチセンス核
酸化合物は、目的とする蛋白質の発現を阻害するのに有
効である。従って、本発明で得られるアンチセンス核酸
を基にして治療薬を開発することができる。たとえば、
様々な病気の原因となる蛋白質をコードする遺伝子につ
いて、そのアンチセンス核酸法適用部位を探索し、その
結果を基に設計したアンチセンス核酸化合物は、目的と
する蛋白質の発現を阻害するのに有効である。
【0037】また、本発明で得られるアンチセンス核酸
を基にして検出薬・診断薬を、たとえば次のようにして
開発することもできる。ある特定の疾病において、その
原因となる蛋白質が発現されていることが知られている
場合、該蛋白質をコードするDNA又は該DNAに対応
するmRNAの特定の塩基配列に相補的な塩基配列をも
つ核酸化合物をプローブとして用いて、目的とする蛋白
質の発現の程度を推定することができる。この際、mR
NAの特定の塩基配列に相補的な塩基配列として、すな
わちプローブとして用いる核酸化合物の塩基配列とし
て、本発明の方法により示されたアンチセンス核酸を用
いることができる。
【0038】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に具体的に説
明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されない。 〔実施例1〕本実施例では、VEGFに対するアンチセ
ンス核酸を探索する場合について説明する。
【0039】(1)プラスミドの構築及び塩基配列の決
定 プラスミドpPoly(A)-luc(SP6)(Promega社製)に含まれ
るルシフェラーゼ構造遺伝子の上流と下流をそれぞれ制
限酵素ApaI、および制限酵素SacIで切断した。一方、P
CR法により得たヒト由来VEGFをコードする遺伝子
を、プラスミドpRC/CMVのマルチクローニングサイト中
にあるApaIサイトとXbaIサイト間に挿入したプラスミド
pSU01を構築した。ついで該プラスミドを該遺伝子の上
流に存在するApaI部位および下流に存在するSacI部位を
それぞれに作用する制限酵素ApaI、およびSacIで同様に
切断した。
【0040】pPoly(A)-luc(SP6)のうち、前記2種の制
限酵素でルシフェラーゼ構造遺伝子を切断除去した残り
の部分に、VEGF構造遺伝子を含む部分をTakara社製
のDNA Ligation Kitを用いて結合させた(結合方法は、
説明書に従った)。次に、このようにして得られたプラ
スミドをTakara社製の大腸菌コンピテントセルJM10
9に、同社の説明書に従って導入し、大量に複製し、該
プラスミドを含有する大腸菌等の細胞を遠心分離操作に
より集めた。ついで、該細胞にGTE溶液(50mMグル
コース、25mM Tris・Cl、および10mM EDTA含有、
pH8.0)を加えて懸濁し、その1/9量のリゾチーム
溶液(50mg/ml)、および20/9量の水酸化ナトリウム
(0.2規定)−ドデシル硫酸ナトリウム(1%)混合溶
液を用いて細胞を溶解させた。酢酸カリウム(pH 5.
2)を加えて(最終濃度1M)中和し、不溶物質を遠心
分離操作で除去した。蛋白質を除去するため、フェノー
ル−クロロホルム−イソアミルアルコール(25:24:
1)の混合溶液を加えて振り混ぜた。遠心分離操作を行
って上層(水相)を取り出し、水相と等量の2−プロパ
ノールを加えて攪拌し、室温でしばらく放置した。これ
を遠心分離して得られたものが目的のプラスミドを含有
していた。ついで、これを適量のTE(10mM Tris・C
l、および1mMEDTA含有、pH 8.0)に溶かし、そ
れを塩化セシウムの密度勾配分離用液に混ぜ、超遠心分
離操作により分離した。得られたプラスミドは、塩化セ
シウムを除去するため、TEに対して透析した(前掲の
Molecular Cloningを参照)。このようにして、目的の
プラスミドを0.7mg得た。
【0041】ここで得たプラスミド(pSU02と命名)
は、約3.6kbp(bp: 塩基対)からなることがアガロース
ゲル電気泳動の結果から示された(図1)。図1中、レ
ーン1はpSU02のみ、レーン2はpSU02に制限酵素ApaI(1
0u)処理したもの、レーン3は、pSU02に制限酵素ApaI(2
0u)処理したものを表す。Mは、分子量マーカーを表
す。
【0042】次に、pSU02のうちVEGF構造遺伝子部
分およびその前後の部分について、その塩基配列をSang
er法で決定した。その塩基配列を配列番号1に示す。
【0043】(2)天然型及びホスホロチオエート型の
核酸化合物の合成及び精製 天然型の核酸化合物であるオリゴデオキシリボヌクレオ
チドについて、配列番号1の塩基配列に相補的な配列を
77番目の配列から20塩基を、6塩基ずつずらしながら、
ABI(Applied Biosystems Inc.)社の381A DNA合成機ま
たは同社の394DNA/RNA合成機を用い、ホスホロアミダイ
ト法(ABI社の手順書に従った)で合成した。これら
は、表1のA077からA551までの80種類である。また表1
に示すS101からT-20の5種類の20塩基の核酸化合物、お
よび表2に示す6塩基から18塩基の77種類の核酸化合物
も、それぞれの配列に基づいて同様に合成した。合成の
最終サイクルにおいて、5’末端の糖水酸基の保護基
(ジメトキシトリチル基)が結合した状態で合成を終了
した。室温下において、約25%のアンモニア水で60分間
処理し、合成したオリゴマーをサポートから切断した。
これを55℃で8時間保ち、塩基部分およびリン酸部分の
脱保護を行った。
【0044】このようにして天然型オリゴデオキシリボ
ヌクレオチドの粗精製物を得た。得られた天然型オリゴ
デオキシリボヌクレオチド粗精製物は、逆相クロマトグ
ラフィーの原理に基づいて製造されたカートリッジ〔Wa
ters社製の、tC18を充填剤とするセップパックプラス
(ロングボディ/ENV)〕を用いて以下の通り精製し
た。
【0045】20mlのアセトニトリルでカートリッジ内を
洗浄したあと、20mlの12%アセトニトリル−88%TEAA
(TEAA: 0.1M酢酸トリエチルアンモニウム pH7.2)溶液
でカートリッジ内を平衡化した。約3mlの12%アセトニ
トリル−88%TEAAに溶解したオリゴデオキシリボヌクレ
オチド粗精製物をカートリッジ内に注入し、その際に溶
出した液を再びカートリッジ内に注入した(2回繰り返
す)。15mlの12%アセトニトリル−88%TEAAでカートリ
ッジ内を洗浄した後、3mlのTEAAでカートリッジ内の溶
液を置換した。ついで、3mlの2%トリフルオロ酢酸水
溶液をカートリッジ内に注入し、約4分間そのまま放置
して、ジメトキシトリチル基を切断後、3mlの2%トリ
フルオロ酢酸水溶液を新たに注入し、カートリッジ内の
トリフルオロ酢酸水溶液を押し出した。3mlのTEAB(重
炭酸トリエチルアンモニウム pH7)でカートリッジ内
を置換した後、8mlの15%アセトニトリル−85%TEABで
溶出し、精製オリゴデオキシリボヌクレオチドを含む分
画を集めた。これを真空下で乾固した後、滅菌した生理
食塩水0.2mlを加え、これを再び真空下で乾固した。少
量の滅菌水を加えて再び乾固する操作を繰り返し(合計
2回)、最初に加えた滅菌生理食塩水と同量の滅菌水を
加え、これを所定の濃度(オリゴデオキシリボヌクレオ
チドとして500μM)に希釈して後述のスクリーニング
実験に用いた。但し、20mMリン酸ナトリウムと100mM
塩化ナトリウムからなる緩衝液(pH7.0)にオリゴデオキ
シリボヌクレオチドを溶かし、光路長1cmのセルを用い
て260nmで測定(室温)したときの吸光度の値が1のと
き、その溶液1ml中には、オリゴデオキシリボヌクレオ
チドが33μg含まれているとした。また、天然型オリゴ
デオキシリボヌクレオチドのヌクレオチドあたりの分子
量は330として換算した。本発明において記載の核酸化
合物の濃度は、以上の仮定に基づいて計算した値であ
る。
【0046】ホスホロチオエート型オリゴデオキシリボ
ヌクレオチド(20量体、粗精製品で約3mg)の精製も、
上述の天然型の場合と同様に行った。但し、カートリッ
ジの平衡化、粗精製物のカートリッジに添加後の洗浄、
および精製ホスホロチオエート型オリゴデオキシリボヌ
クレオチドの溶出には、20%アセトニトリル−80%TEAA
(またはTEAB)を用いた。
【0047】合成した天然型オリゴデオキシリボヌクレ
オチドの塩基配列を表1及び表2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】表1の「試料#」において、数字の前に書
かれている「A」は、VEGFをコードする核酸のセン
ス鎖に対する相補鎖であること、すなわち、アンチセン
ス鎖に相当することを、「S」はセンス鎖に相当するこ
とを意味する。また、「R」はランダム配列であること
を意味する。例えば、「RA101」は「A101」と同一の塩
基組成であるが、その順序をランダムに入れ換えたもの
である。
【0051】数字は各オリゴデオキシリボヌクレオチド
が対応する、配列番号1で表される塩基配列のうち、最
も小さい番号である。例えば、「A101」は、配列番号1
の配列表の101番目から120番目の塩基に相補的な塩基の
配列からなる、20量体のいわゆるアンチセンス核酸化合
物である。各試料#に対応する20量体の配列を、表1の
「塩基配列」の欄に記載してある。尚、「T-20」は、チ
ミジンの20量体からなる核酸化合物を意味する。
【0052】表2の「試料#」において、数字の前に書
かれている「A」は、表1の場合と同じ意味である。数
字の後に記載されているアルファベットは、重合度を示
す。この場合、Fは6量体を、Hは8量体を、Iは9量
体を、Jは10量体を、Lは12量体を、Nは14量体を、P
は16量体を、そしてRは18量体を示す。各試料#に対応
する配列を「塩基配列」の欄に記載してある。
【0053】なお、天然型およびホスホロチオエート型
オリゴデオキシリボヌクレオチドの純度を、HPLC及び紫
外線吸収スペクトルにより調べた。溶出条件、使用カラ
ム等は、次の通りである。
【0054】(i)HPLC (a)天然型オリゴデオキシリボヌクレオチドの場合。 試料:A101 使用カラム:イオン交換カラム(Gen-Pak DNA 6×150m
m; Waters社製) 溶液A:25mMリン酸ナトリウムpH6.0(90%)及びアセ
トニトリル(10%)からなる溶液 溶液B:溶液Aに1M塩化ナトリウムを加えた溶液 溶出条件:溶液Bを20%(溶液Aを80%)から100%ま
で、2%/分、0.8ml/分。 結果を図2に示す。
【0055】(b)ホスホロチオエート型オリゴデオキ
シリボヌクレオチドの場合。 試料:S101と同一の塩基配列でリン酸ジエステル結合が
ホスホロチオエート型になったもの 使用カラム:逆相型カラム(μ Bondasphere 5μ C18 3
00A 3.9×150mm;Waters社) 溶液A:0.1M酢酸トリエチルアンモニウム水溶液(pH
7.0) 溶液B:アセトニトリル 溶出条件:溶液Bを10%(溶液Aを90%)から60%まで
2%/分で25分間、ついで溶液B60%で5分間、いずれ
の場合も1ml/分 結果を図3に示す。
【0056】(ii)紫外線吸収スペクトル分析 試料:天然型、ホスホロチオエート型共にHPLCの場
合と同じ。 溶媒:天然型、ホスホロチオエート型共に20mMリン酸
ナトリウム及び0.1M塩化ナトリウムpH7.0 図4及び図5にそれぞれ天然型及びホスホロチオエート
型についての結果を示す。
【0057】図2及び3から、これらの該化合物は本発
明の実験に用いるのに充分な純度を有し、また図4及び
5から、これらの該化合物の紫外線吸収スペクトルは核
酸化合物が示す紫外線吸収スペクトルに一致することが
わかる。
【0058】(3)VEGFの発現 pSU02の発現系として、Promega社製の兎網状赤血球溶解
物由来の転写翻訳系を利用することができる。pSU02に
は、VEGFの構造遺伝子の上流にSP6プロモーターが
存在するので、pSU02を用いて転写翻訳を行う際は、Pro
mega社製のTNTT M SP6 Coupled Reticulocyte Lysate
Systemのキットを用いた。実験方法は、同キットに添付
の方法に従った。
【0059】転写翻訳系の反応混合液の組成は表3の通
りである。
【0060】
【表3】
【0061】35S-メチオニンは、Amersham社製のin vi
vo cell labelling grade(SJ1015、 37TBq/mmol、0.37
MBq/μl)を用い、Promega社キットに添付の方法で示さ
れている量の半分に相当する量(1μl)を添加した。
また、Ribonuclease Inhibitorは、Takara社製のものを
用い、滅菌水は、121℃で15分間処理したものを用い
た。これらおよびpSU02以外の混合液組成物は、上述のP
romega社キットに含まれているものである。上述の反応
混合液を30℃または37℃で1〜2時間保ち、目的の蛋白
質であるVEGFを10〜100ng得た。
【0062】(4)VEGF発現の確認 (i)酵素免疫測定法 マイクロタイタープレート(ポリスチレン製)にポリク
ローナル抗体(ヒト由来のVEGFを大腸菌に産生さ
せ、その産生物を兎に投与して得た抗体)を常法に従っ
て固定化した。ついで、上記(3)に記載のVEGF用
の転写翻訳系混合液(30℃で2時間反応させたもの)を
3倍から9375倍に希釈した液を加え、室温(約25℃)で
2時間放置した。この希釈液を除き、0.1%ウシ血清ア
ルブミンを含有するリン酸緩衝液で充分に洗浄した。次
に、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した前記ポリク
ローナル抗体を添加し、室温で1時間放置した。前記洗
浄液で充分に洗浄した後、基質であるオルト−ジアミノ
ベンゼン溶液を加え、適度に発色するまで室温で放置し
た(約30分)。その後、490nmにおける吸光度を測定
し、VEGFの含有量を評価した。
【0063】結果を図6に示す。プラスミドとしてpSU0
2を用いた際、反応混合液の希釈倍率が小さい場合(3
倍から375倍希釈)の吸光度は、希釈倍率の大きい場合
(1875倍または9375倍希釈)のそれにくらべ明らかに増
加した(図中の「○」)。このような現象は、VEGF
を産生しないpPoly(A)-luc(SP6)をプラスミドとして用
いた反応混合液の場合には見られない(図中の
「●」)。
【0064】すなわち、この場合は一定の吸光度の値を
示し、その値は、pSU02を用いた反応混合液を高希釈し
た場合の値、およびコントロールとしてpSU02のかわり
に、水のみを加えて反応させた反応混合液の場合の値
(図中の「◎」)と実質的に等しい。従って、pSU02を
用いた反応混合液を低希釈した場合の吸光度の増加は、
VEGFが転写翻訳系混合液に含まれていたためと結論
できる。なお、プラスミドとしてpSU02を用いた際、3
倍希釈での吸光度の値は15倍希釈での値よりも小さい現
象が観察された。これは反応混合液中に、VEGFとそ
のポリクローナル抗体との反応を有意に阻害する物質が
含まれていたことを示唆する。
【0065】(ii) 電気泳動法 次にVEGFが上述の転写翻訳系で生成することをSD
S−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリル
アミドゲル電気泳動法)で確認した。SDS−PAGE
は、Promega社の転写翻訳系キットに添付されている手
順書に従って、以下の通り行った。
【0066】転写翻訳系の反応混合液から5μlをと
り、これに20μlの2−メルカプトエタノール含有のSDS
Sample Buffer(Promega社の手順書に示す組成の混合
溶液を使用)を加えて密栓した。ついで、100℃で2分
間処理を行い、蛋白質を変性させた。このうちの5μl
をとり、SDS−PAGE(15%または17.5%のポリア
クリルアミドゲル)で電気泳動を行った。その後、オー
トラジオグラフィーを行うために、ゲルを濾紙に移し、
ゲル乾燥装置を用いて80℃で充分に乾燥させた。つい
で、暗室中でそのゲルをX線用フィルムと重ねてカセッ
トに入れ、10時間から100時間室温で放置したあと、X
線用フィルムを現像した。
【0067】その結果を図7に示す。レーン1及び3
は、プラスミドとしてpSU02を用いたときのバンドを、
レーン2及び4は、プラスミドとしてpPoly(A)-luc(SP
6)を用いたときのバンドを示す。また、レーン1及び2
は転写翻訳系の反応を30℃、レーン3及び4は転写翻訳
系の反応を37℃で行ったものである。尚、分子量は、色
素で標識した蛋白質の分子量マーカー〔Amersham社製の
RainbowTMマーカー(高分子量レンジ)〕を同時に泳動
し、その位置をもとに算定した。プラスミドとしてpSU0
2を用いたときは、分子量約15kdにバンドが認められる
が、pPoly(A)-luc(SP6)をプラスミドとして用いたとき
は、上述のバンドはなく、かわりに分子量約60kdの場所
にバンドが見られる。pSU02をプラスミドとしたときに
生成するVEGFの分子量は、そのアミノ酸配列から1
7.2kdと計算でき、pSU02からVEGFが生成したことに
よることがわかる。
【0068】(5)スクリーニング 上記(1)〜(4)の結果をもとに、兎網状赤血球溶解
物由来の転写翻訳系(Progema社製)を用いてスクリー
ニングを行った。尚、スクリーニングを行うにあたり、
最も効率よく結果が得られるようにすべく、次の通りス
クリーニング条件の検討を行った。
【0069】(i)天然型又はホスホロチオエート型の
違い及び反応温度の検討 スクリーニング用に上記(2)のアンチセンス核酸化合
物として、天然型オリゴデオキシリボヌクレオチドとホ
スホロチオエート型オリゴデオキシリボヌクレオチドの
いずれが適当であるかを、その安定性、転写翻訳系への
効果の点などから比較した。その結果を以下に述べる。
【0070】天然型またはホスホロチオエート型オリゴ
デオキシリボヌクレオチド(20量体程度)の5’末端に
T4 Polynucleotide Kinase(Takara社製)で32P−リン
酸基を結合させたものをプローブとして用い、それぞれ
のオリゴデオキシリボヌクレオチドの兎網状赤血球溶解
物由来の転写翻訳系(Promega社製)中での安定性を調
べた。その結果、30℃で3時間、あるいは37℃で2.5時
間の処理条件では、いずれのオリゴデオキシリボヌクレ
オチドも少なくともその大部分が安定に存在することが
確認できた。特に37℃1時間における天然型オリゴデオ
キシリボヌクレオチドの分解は、ほとんど無視できる程
度であった。
【0071】以上の結果より、アンチセンス核酸化合物
効果を調べるスクリーニングの目的には、合成が容易で
ある天然型のオリゴデオキシリボヌクレオチドが適して
いると結論できる。また、兎網状赤血球溶解物由来の転
写翻訳系(Promega社製)でスクリーニングを行う際の
温度は、30℃および37℃のいずれもが可能であるが、後
者のほうが通常の生体温度に近いことから37℃でスクリ
ーニングを行うこととした。
【0072】(ii)RNase Hの作用の検討 兎網状赤血球溶解物由来の転写翻訳系(Promega社製)
を用いてアンチセンス核酸化合物配列のスクリーニング
を行う際、アンチセンス核酸化合物であるオリゴデオキ
シリボヌクレオチドとハイブリッドを形成しているmR
NAを切断する酵素であるRNase Hの添加効果をSDS
−PAGE及びオートラジオグラフィーによって検討し
た。この実験に用いた転写翻訳系の反応混合液の組成は
表4の通りである。
【0073】
【表4】
【0074】この実験に用いた組成物のうち、RNase H
以外は上記(1)または上記(3)で記載したものを用
いた。RNase HはTakara社製のもので、総量が1、5、
または25ユニットとなるように調整して用いた。37℃で
1時間保ったのち、上記(4)で記載した方法に従って
SDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーを行っ
た結果が図8に示されている。
【0075】その結果、VEGFのバンド(図8の
「→」印)の強度が、RNase Hの添加で有意に減少しな
いことより、RNase Hを添加しても兎網状赤血球溶解物
由来の転写翻訳系(Promega社製)の活性は低下しない
ことが確かめられた。図8中、レーン1はRNase Hが無
添加の場合、レーン2、3、4はそれぞれRNase Hを
1、5、25ユニット添加した場合を表す。
【0076】次に、兎網状赤血球溶解物由来の転写翻訳
系(Promega社製)においてRNase H活性があらわれるか
否かの検討を行った。文献に記載の方法(I. Berkower
ら、Journal of Biological Chemistry 248 巻 5914-59
21頁、1974年)を参考に以下のように行った。アッセイ
用混合液の組成は表5の通りである。
【0077】
【表5】
【0078】poly[3H-rA]はAmersham社製で、重合度
は38-137、放射比活性は51.8MBq/mgであった。poly[d
T]はPharmacia社製で、平均重合度は174であった。ア
ミノ酸混合物(1mM、但しロイシンを含まず)は、兎
網状赤血球溶解物由来の転写翻訳系(Promega社)キッ
トに含まれていたものである。これら以外の組成物は上
記(1)又は上記(3)で記載したものを用いている。
【0079】上述の混合液を37℃で20分間保った後、次
の試薬を順次加えた。 0.1 Mピロリン酸ナトリウム(4℃) 50μl サケ精子DNA(加熱変性、1mg/ml) 25μl ウシ血清アルブミン(10mg/ml ) 50μl 10%トリクロロ酢酸水溶液 150μl ここで得られた混合液をゆるやかに撹拌したあと、4000
rpmで2分間遠心分離を行った。その上澄み液を液体シ
ンチレーション用ミニバイアル瓶に入れ、2mlの液体シ
ンチレーション用試薬(Packard社製の Ultima Gold)
を加えて軽く振り混ぜた後、液体シンチレーションカウ
ンター(Beckman社製)で放射活性を測定した。その結
果、行った反応条件下でRNase H活性が有意に存在する
ことがわかった(図9)。
【0080】オリゴデオキシリボヌクレオチドの濃度効
果に与える共存RNase Hの影響について検討した。実験
方法は、次の通りである。RNase Hの存在下および非存
在下において核酸化合物の濃度を0〜2000nMまで変化
させ、VEGFの発現量を上記(4)の(ii)で示した
方法で調べた。この場合の反応混合液は、表3の反応混
合液に、必要に応じてRNase H(11.4ユニット)および
核酸化合物(最終濃度で16〜2000nM)を添加した。
【0081】その結果を図10および図11に示す。ここ
で、図10は核酸化合物としてA101を、図11は核酸化合物
としてA143を用いた結果である。これらの図の横軸は核
酸化合物濃度(nM)を、縦軸はVEGFの発現量を反
映する量としてデンシトメーターで測定したオートラジ
オグラフィーの黒化度である。また、「■」はRNase H
が存在する場合を、「□」はRNase Hが存在しない場合
を示す。
【0082】これらの図に示すように、RNase Hを共存
させることにより、該オリゴデオキシリボヌクレオチド
(アンチセンス核酸化合物)によるVEGFの発現阻害
効果がより顕著に現れた。即ち、より低濃度のオリゴデ
オキシリボヌクレオチドで、VEGFの産生を阻害する
ことができた。以上の事実より、アンチセンス核酸化合
物部位のスクリーニングを行う際には、RNase Hを添加
することとした。
【0083】(iii)核酸化合物の濃度の検討 アンチセンス核酸化合物部位のスクリーニングを行う際
の核酸化合物の濃度について検討した。実験方法は、次
のとおりである。RNase Hの存在下および非存在下にお
いて核酸化合物の濃度を0〜2000nMまで変化させ、V
EGFの発現量を上記(4)の(ii)で示した方法で調
べた。この場合の反応混合液は、表3の反応混合液に、
必要に応じてRNase H(11.4ユニット)および核酸化合
物(最終濃度で16〜2000nM)を添加した。
【0084】その結果を図12に示す。図12中、「●」は
A101の核酸化合物を使用してRNaseHを11.4ユニット添加
したもの(以下、図12において「+」とする)、「○」
はA101の核酸化合物でRNase Hを添加しなかったもの
(以下、図12において「−」とする)である。同様にし
て、「▲」はA143で「+」、「△」はA143で「−」、
「■」はR101で「+」を意味する。
【0085】この図に示す条件下では、0.08μM以下の
オリゴデオキシリボヌクレオチド濃度では、VEGF産
生阻害効果が顕著ではなかった。従って、いわゆるアン
チセンス核酸化合物部位を決定するスクリーニングにお
いては、オリゴデオキシリボヌクレオチドの種類によっ
てVEGF発現阻害効果の差が顕著な0.4μMを採用す
ることとした。
【0086】なお、ホスホロチオエート型のオリゴデオ
キシリボヌクレオチドを用いて同様な系で実験を行う場
合は、0.032または0.15μMのアンチセンス核酸化合物を
採用することによりスクリーニングを行えることが示さ
れた。以上(i)〜(iii)の結果をもとに、スクリーニ
ングを行った。そのアッセイ用混合液に含まれる組成物
は、各チューブあたり表6のとおりである。なお、この
表に示す核酸化合物は、天然型のオリゴデオキシリボヌ
クレオチドである。ホスホロチオエート型のオリゴデオ
キシリボヌクレオチドを用いる場合は、反応混合液中で
の核酸化合物の最終濃度が、0.032または0.15μMになる
ようにして用いた。
【0087】
【表6】
【0088】ここで用いた組成物は、すべて先に述べた
方法により準備調製した。これらを37℃で1時間保っ
た。その後、VEGFの発現量を上記(4)の(ii)で
述べた方法に従って、SDS−PAGEおよびオートラ
ジオグラフィーを行った。オートラジオグラフィーの結
果の解析には、デンシトメータ(Bio-Profil 1-D、M &S
Instruments Trading, Inc.)を用いて黒化度を測定
し、各実験ごとに作製した標準曲線と比較することによ
り、VEGFの発現率を次のようにして求めた。
【0089】産生したVEGFをSDS−PAGEで分
離し、それをオートラジオグラフィーに付し、その黒化
度をデンシトメータで定量した。そして、アンチセンス
核酸化合物を添加した場合の黒化度を、標準曲線をもと
にVEGFの産生量と関係づけ、添加しない場合の発現
量を100%とし相対値であらわした。なお、再現性を確
認する目的で、同一の核酸化合物の同一量を添加した同
一組成のチューブを2つづつ準備し、それらの混合液中
でのVEGF発現量を求めた。その際、各チューブあた
り、2レーンを用いて行った。
【0090】その結果、発現率の相対誤差は通常は10%
程度以内、最大でも30%程度であった。表1には、20量
体のオリゴデオキシリボヌクレオチドを用いて行ったア
ンチセンス核酸化合物効果のスクリーニング結果を、ま
た表2には、20量体以外のオリゴデオキシリボヌクレオ
チドを用いて行った結果を示す。表1及び表2には「発
現率(%)」が示されており、その値が小さい程、アン
チセンス核酸化合物のVEGF遺伝子に対する発現阻害
効果が大きいことを意味する。
【0091】表1及び表2の結果から、VEGFの発現
を阻害するオリゴデオキシリボヌクレオチドが存在する
ことが明白である。その中には、VEGFの発現を極
めて有意に阻害するアンチセンス核酸化合物であるオリ
ゴデオキシリボヌクレオチド(VEGFの発現量を10%
以下に抑える)、VEGFの発現を有意に阻害するア
ンチセンス核酸化合物であるオリゴデオキシリボヌクレ
オチド(VEGFの発現量を30%以下に抑える)があ
る。
【0092】表1に示すように、A383からA521までの、
6塩基ずつずらした24種すべてのオリゴデオキシリボヌ
クレオチドについては、その阻害効果が極めて大きい
(10%以下の発現率)ことがわかった。すなわち、配列
番号1で表される塩基配列の383番目付近から521番目付
近は、アンチセンス核酸化合物によるVEGF産生阻害
効果の大きい領域(10%以下にまで発現率を抑制する領
域;以下このような領域を「核領域」とよぶ)である。
【0093】この核領域内の塩基配列に対するアンチセ
ンス核酸化合物について、その鎖長の影響を検討した。
表2のA422NからA426F、A473NからA473F、およびA497N
からA505Fに記載されている塩基配列について、各ヌク
レオチドの、VEGFをコードする遺伝子に対する発現
阻害効果を検討した。
【0094】その結果、いずれの場合も10量体以上では
極めて大きな阻害効果(10%以下)が認められるが、6
量体では阻害効果が認められなかったかほとんど認めら
れなかった。また8量体ではその効果が認められなかっ
た場合(1ケース)、その効果がほとんど認められなか
った場合(1ケース)、および大きな効果が認められた
場合(1ケース)とがあった。8量体におけるこのよう
な差は、その塩基配列、塩基組成もしくはその場所によ
ると考えることができる。
【0095】上述の事実から、核領域内の10塩基以上に
対して相補的であるアンチセンス核酸化合物は、一般
に、それが標的とする蛋白質の発現を阻害する効果が大
きいことが容易に類推できる。また、核領域内の8塩基
程度に対して相補的であるアンチセンス核酸化合物は、
一般に、それが標的とする蛋白質の発現を阻害する効果
が大である可能性のあることが容易に推定できた。
【0096】これらの事実および推定をもとに、配列番
号1の77番目から570番目の塩基からなる塩基配列に対
し、その核領域を次のように設定することができる。す
なわち、配列番号1の95番目から108番目の塩基からな
る塩基配列(配列番号2)、配列番号1の149番目から1
74番目の塩基からなる塩基配列(配列番号3)、配列番
号1の185番目から210番目の塩基からなる塩基配列(配
列番号4)、配列番号1の219番目から244番目の塩基か
らなる塩基配列(配列番号5)、配列番号1の254番目
から276番目の塩基からなる塩基配列(配列番号6)、
配列番号1の287番目から328番目の塩基からなる塩基配
列(配列番号7)、配列番号1の357番目から372番目の
塩基からなる塩基配列(配列番号8)、および配列番号
1の389番目から534番目の塩基からなる塩基配列(配列
番号9)を核領域として挙げることができる。これらの
うち、核領域として好ましいものは、配列番号2、4又
は5のものであり、より好ましいものは配列番号6、7
又は9のものである。そして、これらの核領域内の8塩
基、好ましくは連続した8塩基以上に対して相補的であ
るアンチセンス核酸化合物の、VEGFをコードする遺
伝子に対する発現阻害効果が大きいことは、表1および
表2に示す多くの例で示されている。例えば、核領域内
の8塩基に対するアンチセンス核酸化合物の例として、
A085R、A087P、A089N、A101N、A167N、A179N、A203N、A
213N、A237N、A248N、A321N、A365N、およびA383Nを挙
げることができる。また、核領域内の8塩基を越えるア
ンチセンス核酸化合物の例としては、A089、A095、A095
N、A143、A146N、A149、A153N、A155、A155N、A156N、A
161、A179、 A185、A189N、A191、A191N、A193N、A19
7、A217N、A227、A251、A251N、A257、A261N、A263、A2
63N、A265N、A281、A287、A293N、A296N、A299、A299
N、A303N、A305、A311、A313N、A317N、A347、A353、A3
56N、A359、A361N、A397N、A513N、A521N、および表1
のA383からA521までの24種のアンチセンス核酸化合物な
どを挙げることができる。
【0097】これらの数多くの例から、核領域内の8塩
基以上の塩基配列に対して相補的な塩基配列をもつアン
チセンス核酸化合物は、VEGF発現阻害効果が大であ
ることが容易に推定できた。従って、VEGFの生体内
における腫瘍血管新生因子としての役割(K. J. Kim
ら、Nature 362巻 4月29日号 841-844頁、1993年; S.K
ondoら、Biochemical and Biophysical Research Comm
unications 194巻 3号 1234-1241頁、1993年)から、核
領域内の8塩基以上の塩基配列に対するアンチセンス核
酸化合物は、固形腫瘍細胞の増殖阻害を目的とする制癌
剤、リューマチ性関節炎の治療剤、および糖尿病の治療
剤などとして、また癌、リュウマチ性関節炎、および糖
尿病などの検出薬・診断剤として有用である。
【0098】
【発明の効果】本発明により、目的とする蛋白質の発現
を阻害するアンチセンス核酸化合物の塩基配列を特定す
ることができる。本発明の方法を用いることにより、疾
病の原因となる蛋白質の発現などを阻害することがで
き、該方法を基に治療薬の開発を行うことができる。ま
た、特定の蛋白質を産生するmRNAを検出するプロー
ブを設計することができ、検出薬・診断薬の開発を行う
ことができる。
【0099】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:774 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA to mRNA 配列: TTATGTATCA TACACATACG ATTTAGGTGA CACTATAGAA TACAAGCTTA TGCATGCGGC 60 CGCATCTAGA GGGCCCGGCC CCGGTCGGGC CTCCGAAACC ATGAACTTTC TGCTGTCTTG 120 GGTGCATTGG AGCCTTGCCT TGCTGCTCTA CCTCCACCAT GCCAAGTGGT CCCAGGCTGC 180 ACCCATGGCA GAAGGAGGAG GGCAGAATCA TCACGAAGTG GTGAAGTTCA TGGATGTCTA 240 TCAGCGCAGC TACTGCCATC CAATCGAGAC CCTGGTGGAC ATCTTCCAGG AGTACCCTGA 300 TGAGATCGAG TACATCTTCA AGCCATCCTG TGTGCCCCTG ATGCGATGCG GGGGCTGCTG 360 CAATGACGAG GGCCTGGAGT GTGTGCCCAC TGAGGAGTCC AACATCACCA TGCAGATTAT 420 GCGGATCAAA CCTCACCAAG GCCAGCACAT AGGAGAGATG AGCTTCCTAC AGCACAACAA 480 ATGTGAATGC AGACCAAAGA AAGATAGAGC AAGACAAGAA AAATGTGACA AGCCGAGGCG 540 GTGAGCCGGG CAGGAGGAAG GAGCCTCCCT CAGGGTTTCG GGAACCAGAT CCACTAGTTC 600 TAGATGCATG CTCGAGCGGC CGCCAGTGTG ATGGATATCT GCAGAATTCC AGCACACTGG 660 CCGTTACTAG TGGATCCGAG CTCCCAAAAA AAAAAAAAAA AAAAAAAAAA AAAAACCGAA 720 TTAATTCGTA ATCATGGTCA TAGCTGTTTC CTGTGTGAAA TTGTTATCCG CTCA 774
【0100】配列番号:2 配列の長さ:14 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA to mRNA 配列: GAAACCATGA ACTT 14
【0101】配列番号:3 配列の長さ:26 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA to mRNA 配列: TACCTCCACC ATGCCAAGTG GTCCCA 26
【0102】配列番号:4 配列の長さ:26 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA to mRNA 配列: ATGGCAGAAG GAGGAGGGCA GAATCA 26
【0103】配列番号:5 配列の長さ:26 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA to mRNA 配列: TGGTGAAGTT CATGGATGTC TATCAG 26
【0104】配列番号:6 配列の長さ:23 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA to mRNA 配列: TGCCATCCAA TCGAGACCCT GGT 23
【0105】配列番号:7 配列の長さ:42 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA to mRNA 配列: CAGGAGTACC CTGATGAGAT CGAGTACATC TTCAAGCCAT CC 42
【0106】配列番号:8 配列の長さ:16 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA to mRNA 配列: GCTGCAATGA CGAGGG 16
【0107】配列番号:9 配列の長さ:146 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA to mRNA 配列: ACTGAGGAGT CCAACATCAC CATGCAGATT ATGCGGATCA AACCTCACCA AGGCCAGCAC 60 ATAGGAGAGA TGAGCTTCCT ACAGCACAAC AAATGTGAAT GCAGACCAAA GAAAGATAGA 120 GCAAGACAAG AAAAATGTGA CAAGCC 146
【図面の簡単な説明】
【図1】アガロースゲル電気泳動の結果を示す写真であ
る。
【図2】HPLCの結果を示す図である。
【図3】HPLCの結果を示す図である。
【図4】紫外線吸収スペクトルを示す図である。
【図5】紫外線吸収スペクトルを示す図である。
【図6】酵素免疫測定法による結果を示す図である。
【図7】SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結
果を示す写真である。
【図8】SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結
果を示す写真である。
【図9】RNaseHの活性の結果を示す図である。
【図10】核酸化合物濃度とVEGFの発現との関係を示
す図である。
【図11】核酸化合物濃度とVEGFの発現との関係を示
す図である。
【図12】核酸化合物濃度とVEGFの発現との関係を示
す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松田 陽子 茨城県つくば市大久保2番 東亞合成株式 会社つくば研究所内 (72)発明者 近藤 伸一 茨城県つくば市大久保2番 東亞合成株式 会社つくば研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 目的とする蛋白質をコードする遺伝子の
    塩基配列のうちの任意の部分に対して相補的な塩基配列
    を有する核酸化合物を合成し、無細胞転写翻訳系又は無
    細胞翻訳系を利用して目的蛋白質の産生阻害の有無を判
    定することにより有効なアンチセンス核酸化合物を選択
    することを特徴とするアンチセンス核酸の探索方法。
  2. 【請求項2】 目的とする蛋白質をコードする遺伝子の
    塩基配列に基づいて系統的に調製された8〜30個の相補
    的な塩基配列を有する複数の核酸化合物の中から、無細
    胞転写翻訳系又は無細胞翻訳系を利用して目的蛋白質の
    産生を阻害するアンチセンス核酸化合物を選択すること
    を特徴とするアンチセンス核酸の探索方法。
  3. 【請求項3】 無細胞転写翻訳系又は無細胞翻訳系が、
    細胞溶解物から得られたものである請求項1又は2記載
    のアンチセンス核酸の探索方法。
  4. 【請求項4】 無細胞転写翻訳系又は無細胞翻訳系が、
    兎網状赤血球溶解物から得られたものである請求項1又
    は2記載のアンチセンス核酸の探索方法。
  5. 【請求項5】 無細胞転写翻訳系又は無細胞翻訳系が、
    小麦胚芽由来の溶解物から得られたものである請求項1
    又は2記載のアンチセンス核酸の探索方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003520254A (ja) * 2000-01-19 2003-07-02 エス. ジル,パーカッシュ アンチセンスvegfオリゴヌクレオチドに関する方法および組成物
JP2005502596A (ja) * 2001-05-25 2005-01-27 デューク・ユニバーシティ 薬物のモジュレータ

Cited By (6)

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US8283330B2 (en) 2001-05-25 2012-10-09 Duke University Modulators of pharmacological agents
JP2013139450A (ja) * 2001-05-25 2013-07-18 Duke Univ 薬物のモジュレータ
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