JPH085917B2 - 新規な蛋白質およびその製法 - Google Patents

新規な蛋白質およびその製法

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JPH085917B2
JPH085917B2 JP20909186A JP20909186A JPH085917B2 JP H085917 B2 JPH085917 B2 JP H085917B2 JP 20909186 A JP20909186 A JP 20909186A JP 20909186 A JP20909186 A JP 20909186A JP H085917 B2 JPH085917 B2 JP H085917B2
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    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/705Receptors; Cell surface antigens; Cell surface determinants
    • C07K14/7056Lectin superfamily, e.g. CD23, CD72
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、新規な蛋白質およびその製法に関し、得ら
れた蛋白質は、ヒトIgE結合因子またはヒトFcεレセプ
ター(以下、レセプターをRと略記)蛋白をコードする
遺伝情報を単離するために用いられる。
(従来の技術) ヒトIgEはアレルギー反応を担う免疫グロブリンであ
り、高IgE血症として、気管支ぜん息、アレルギー性鼻
炎、非アレルギー性の木村氏病、その他の肺疾患に関連
するもの、自己免疫疾患に関するものなどがあり、臨床
上大きな問題となつている。免疫グロブリンは、抗原結
合部位を形成するFab部分と対応するRと結合するFc部
分がある。肥満細胞にはFcεRが発現されており、IgE
が結合すると、ヒスタミン、セロトニン、SRS-A(スロ
ー リアクテイング サブスタンス オブ アナフイラ
キシー Slow Reacting Substance of Anaphylaxis)な
どの生理活性物質が放出され、その生理作用により発症
する。IgE産生調節に関与している物質が解明されるこ
とにより、アレルギーの治療薬、診断薬としての応用が
可能となる。
IgE産生調節にFcεRが関与していることは、石坂、
淀井らによつてラツトの系を用い、IgE結合因子がFcε
R陽性T細胞から産生されていることによつて示された
〔淀井、石坂:ジヤーナル・オブ・イムノロジイ(J.Yo
doi and K.Ishizaka:J.Immuol.,)124巻、1322頁、1980
年〕。
一方臨床的には、永井(T.Nagai)らによつて木村氏
病およびアトピー患者について、IgE-ORBCロゼツト法お
よびH107抗体を用いてFcεRの発現が調べられている。
その結果によると、正常人では、FcεR陽性率が1%以
下であるのに比べて、高IgE血症の患者では、10〜20%
の高値を示すことが明らかになつている〔永井他、クリ
ニカルイムノロジイ アンド イムノパソロジイ(T.Na
gai etal:Clin,Immunol,Immunopathol.,)35巻、261
頁、1985年〕。
したがつて、IgE結合因子を単離できれば、これを医
薬として用いることが期待されるが、IgE結合因子は微
量しか産生されず、しかも不純物との分離精製が極めて
困難であるため、現在ではまだ単離されていない。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明者らは、IgE結合因子がFcε陽性細胞から産生
されることから、IgE結合因子はFcεRの一部であるか
もしくはFcεRと相同部分があるか、またはIgE結合因
子をコードする遺伝情報がFcεRをコードする遺伝情報
の近傍に存在することを予想した。かかる予想から、Fc
εR陽性細胞が産生する蛋白質のなかで、抗Fcεレセプ
ター抗体との反応性を有する蛋白質を得て、その構造を
明らかにすることができれば、これにもとづき遺伝子を
合成し、これをプローブとしてIgE結合因子またはFcε
R蛋白をコードする遺伝情報を単離できることが期待さ
れる。したがつて、本発明が解決すべき問題点は、抗Fc
εR抗体との反応性を有する構造の明らかな蛋白質を得
ることである。
(問題点を解決するための手段) かかる問題点は下記に示す本発明により解決される。
(i)分子量が25,000±2,000であり、等電点が5.4〜6.
0であり、ポリペプチド構造の一部がMet-Glu-Leu-Gln-V
al-Ser-Ser-Gly-Phe-Valで表わされるアミノ酸配列構造
を有し、かつ抗Fcεレセプター抗体との反応性を有する
蛋白質。
(ii)クラス特異的Fcεレセプターを表面に持つ細胞を
培養し、その培養上清から分離採取することを特徴とす
る、分子量が25,000±2,000であり、等電点が5.4〜6.0
であり、ポリペプチド構造の一部がMet-Glu-Leu-Gln-Va
l-Ser-Ser-Gly-Phe-Valで表わされるアミノ酸配列構造
を有し、かつ抗Fcεレセプター抗体との反応性を有する
蛋白質を製造する方法。
(なお、上記略号は下記のことを表わす。
Met:メチオニン、Glu:グルタミン酸、Leu:ロイシン、 Gln:グルタミン、Val:バリン、 Ser:セリン、 Gly:グリシン、 Phe:フエニールアラニン) 本発明の蛋白質は、クラス特異的FcεRを表面に持つ
細胞を培養し、その培養上清から得られるが、培養に用
いられる細胞としては、クラス特異的FcεRを表面に持
つヒトB細胞もしくはそのハイブリドドーマまたはヒト
悪性化B細胞、ヒトT細胞もしくはそのハイブリドーマ
またはヒト悪性化T細胞のいずれもが用いられる。ヒト
B細胞としては、RPMI8866〔サルフアチ等(Sarfati et
al)、イムノロジイ(Immunology)第53巻、第197頁、1
984年〕、RPMI1788(ATCCカタログNo.CCL156)などが挙
げられ、ヒトT細胞としては、F18-19-19〔ミクロバイ
オロジカル イムノロジイ(Microbiol.Immunol.)27
巻、10号、877〜891頁、1983年〕などが挙げられる。ま
た、一般的にヒト末梢血より得られるBリンパ球をIgE
存在下に培養することによりFcεRが誘導されることか
ら、かかる方法により得られる細胞も本発明において用
いられる。
これらの細胞を培養するのに用いられる培地として
は、例えば10%FCSを含むRPMI1640培地があげられ、こ
の培地を用いて上記の細胞を30〜38℃、好ましくは36〜
37℃で、pH4〜8好ましくはpH7〜8で、CO2濃度3〜10
%、好ましくは5〜7%で、1週間、細胞密度が1×10
4〜1×106個/ml程度までに培養する。これらの細胞
は、場合により無血清で培養することも可能であり、蛋
白質精製の点からは、無血清培地の方が有利である。培
養上清をそのままあるいは濃縮し、ゲルロ過や液体クロ
マトグラフイなどのクロマトグラフイ好ましくは抗Fcε
R抗体、更に望ましくは抗FcεR単クローン性抗体、例
えば特開昭60-255734号に示されるごとき単クローン性
抗体H107を用いたアフイニテイクロマトグラフイで処理
することにより分離できる。H107がFcεRに特異的に反
応する単クローン性抗体であることは上記公開特許明細
書に示されている。H107のごとき単クローン性抗体を用
いたアフイニテイクロマトグラフイで単離する場合、例
えば次の様に行うことができる。H107抗体を結合したセ
フアロース(Sepharose)4BカラムにFcεRを有する細
胞、例えば、RPMI8866の培養上清を通し、リン酸バツフ
アーで洗浄したのち、0.5MNaCl、0.1M酢酸水溶液(pH4.
0)で溜出する。溜出液を濃縮し、逆相高速液体クロマ
トグラフイで分離精製することができる。
このようにして分離精製された蛋白質のアミノ酸配列
を決定すべく、RPMI8866を大量に培養し、上清を上述し
た如く、H107抗体結合カラムで分離し、逆相高速液体ク
ロマトグラフイで精製したのち、エドマン分解法にて分
析した。分析は手動によることもできるが、微量の蛋白
質を精度よく分析するために気相法で行うことが好まし
い。例えばアプライド バイオシステムズ(Applied Bi
osystems)社製ガスフエーズ470Aシーケンサーおよび12
0APTHアナライザーを用いて分析した結果、1部のアミ
ノ酸配列はMet-Glu-Leu-Gln-Val-Ser-Ser-Gly-Phe-Val
であつた。この様なアミノ酸配列の蛋白質はこれまで報
告されておらず新規な蛋白質である。
蛋白質の分子量は例えばSDS−ポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動(以下、SDS-PAGEと略記)で25kd付近にバン
ドとして観察されることにより測定できる。分子量測定
のための標準蛋白質としては低分子量蛋白マーカー〔例
えばフアルマシア(Pharmacia)社 エレクトロホレイ
シス カリブレーシヨン(Electro-phoresis Calibrati
on)KIT〕を用いることができる。後述のごとく実施例
で得られた蛋白質の分子量は、SDS-PAGEの分子量測定の
精度を考慮して、25,000±2,000であることが確認され
ている。
また、分離された蛋白質の等電点をセレクテツド メ
ソツド イン セルラー イムノロジー(Selected Met
hods in Cellular Immunology)〔ミツシエル(B.B.Mis
hell)、シイギ(S.M.Shiigi)著、416頁、1980年、フ
リーマン・アンド・カンパニー(Freeman&Co.,)刊〕
によるNEPHGE2次元電気泳動法でPIマーカーとして、フ
アルマシア(Pharmacia)社 エレクトリツク フオカ
シング カリブレーシヨン(electric focusing calibr
ation)KIT中の蛋白を用い、pH3-10の範囲で測定するこ
とができる。本発明の蛋白質の等電点は、5.4〜6.0の範
囲にある。
つぎに、得られた蛋白質の性状を前記のH107抗体を用
いて調べたところ、本蛋白はRPMI8866へのH107抗体の結
合を阻害することが明らかになつた。RPMI8866細胞を、
1%FCSを含むRPMI1640培地で培養し、得られた培養上
清を濃縮し、H107抗体、ヒトイムノグロブリン、抗Tac
抗体を各々結合したセフアロース4Bカラムにそれぞれ通
し、通過液と125IラベルしたH107を混合する。次いで、
この混合液にRPMI8866細胞を加え、一定時間放置後、細
胞部分と上清を遠心によつて分離し、細胞部分と上清の
放射能活性をγカウンターで測定する。以上の様な操作
の結果H107抗体結合Sepharose4Bカラムを通過した液は
125Iラベル化H107抗体とRPMI8866との結合を阻害しない
が、本蛋白と結合しないヒトイムノグロブリン及び抗Ta
c抗体結合カラムを通過した培養上清は125Iラベル化H10
7抗体とRPMI8866との結合を阻害することが明らかにな
つた。又、FcεRが発現されていないATL-2細胞の培養
上清を濃縮したのち、ウサギ抗RPMI8866細胞抗体−上清
125Iラベル化H107抗体のサンドイツチRIA法によつて
調べたところH107抗体と反応する抗原は検出されなかつ
たが、RPMI8866細胞上清には抗原が検出された。
(実施例) 実施例1 RPMI8866細胞を10%FCS(牛胎児血清)を含むRPMI164
0培地(GIBCO社製RPMI1640培地に硫酸ストレプトマイシ
ン100μg/ml、ペニシリンGカリウム100u/mlを加えた)
で温度37℃、CO2濃度7%において細胞密度5×105cell
s/mlまで培養した培養液2lを遠心操作により細胞と培養
上清に分離した。得られた培養上清をそのまま、0.2ml
のH107抗体を結合したセフアロース4Bカラムに通した。
H107抗体結合カラムは次の様にして準備した。H1075mg
をフアルマシア社のトリシルーセフアロース4B(Trisyl
-Sepharose4B)のデータシートにしたがい、膨潤したゲ
ル1mlと0.1M NaHCO3、0.5M NaCl水溶液(pH8.0)中で4
℃一夜反応させた後、未反応の活性基を0.1M Tris塩酸
水溶液(pH8.0)中で4℃一夜反応させてブロツクし
た。しかる後に、0.1M酢酸pH4.0、0.5M NaCl;0.1M Tris
Hcl pH8.0、0.5M NaClで交互に3回洗浄し、最後にNaC
lリン酸バツフアー(PBS)で洗浄した。得られたH107抗
体結合カラムを用いて、該カラムに培養上清を流した。
培養上清を流したカラムを10mlの0.5M NaClリン酸バツ
フアー(pH7.5)で洗浄したのち、0.5M NaCl、0.1M酢酸
水溶液(pH4.0)で溜出した。溜出後速やかに2M Tris b
aseで中和し、アミコン社製セントリコン(Centricon)
10を用いて濃縮とともにバツフアーを水に交換し、逆相
高速液体クロマトグラフイー〔シンクロパツク(Synchr
opak)RD-PC18カラム、0.1%トリフルオロ酢酸(TF
A),水−アセトニトリル連続グラジエント〕で分離し
た。この精製液20μlをセレクテツド メソツド イン
セルラー イムノロジイ(ミツシエル、シイギ著、434
頁、1980年、フリーマン アンド カンパニー刊)にし
たがつて15%ポリアクリルアミドゲル上にのせ、バツフ
アーとして25mM Tris、190mMグリシン、0.1%SDSを用
い、電流25mAで3hr電気泳動を行つた。標準蛋白質とし
て前述のフアルマシア社製のエレクトロホレイシス カ
リブレーシヨンKITを同時に用いた。その結果25kd近辺
に近接した2本のバンドを与える蛋白を100ng得た。(S
DS-PAGEの銀染色によるバンドの濃さより推定。)SDS-P
AGEの蛋白分離能を考慮すると、25kd近辺に示される蛋
白の分子量は25,000±2,000と考えられる。
実施例2 RPMI8866細胞をHB101無血清培地(Hana社製)で細胞
密度5×105cells/mlまで培養した後、遠心操作によつ
て培養上清を得た。培養上清10lをアミコン社製CH2PR-H
IP10-20ホローフアイバーシステムを用いて、400mlに濃
縮し、0.4mlのH107抗体を結合したセフアロース4Bカラ
ムに通した。しかる後、20mlの0.5M NaCl、NP400.1%、
リン酸バツフアー(pH7.5)で洗浄し、次いで0.5M NaC
l、NP400.1M酢酸水溶液(pH4.0)で溜出した。溜出液を
実施例1と同様に行い逆相高速液体クロマトグラフイー
によつて分離精製し、実施例1と同一条件で、SDS-PAGE
にかけた。その結果、25kd近辺に近接した2本のバンド
を与える蛋白を3μg得た。SDS-PAGEを第1図に示す。
第1図において、lane AはH107アフイニテイカラムで精
製して得られた蛋白質を示し、lane Bは分子量マーカー
を示す。
実施例3 実施例2に於いて逆相高速液体クロマトグラフイーで
分離精製した蛋白をアプライド バイオシステムズ(Ap
plied Biosystems)社製ガスフエーズ470Aシークエンサ
ー及び120APTHアナライザーを用いてアミノ酸配列分析
を行つた結果、SDS PAGEで25kdに近接した2本のバンド
を与える蛋白のそれぞれのN末のアミノ酸配列はいずれ
もMet-Glu-Leu-Gln-Val-Ser-Ser-Gly-Phe-Val(先の出
願では、最後のValをアスパラギンと同定したが、Valが
正しい。)を含んでいた。この蛋白の等電点を前述のNE
PHGE2次元電気泳動法でPIマーカーとして、フアルマシ
ア社のエレクトリツクフオカシイング カリブレーシヨ
ン KIT中の蛋白を用い、pH3-10の範囲で測定した。そ
の結果、PIは前者の蛋白は5.50、後者の蛋白は5.85であ
つた。
実施例4 実施例1及び実施例2で得られた蛋白がFcεRを認識
するH107抗体に特異的な抗原であり、FcεRを多量に発
現するRPMI8866細胞に固有の抗原であることは次の事実
によつて証明された。
(1)RPMI8866細胞を1%FCS RPMI1640培地で、細胞密
度5×105cellまで培養した培養上清をアミコン社製CH2
PR-HIP10-20ホローフアイバーシステムを用いて75倍に
濃縮し、次の3種の抗体−H107、ヒトイムノグロブリ
ン、抗Tac抗体をそれぞれ結合したセフアロース4Bカラ
ム(濃縮培養上清50mlに大使、0.2mlのカラムを使用)
にそれぞれ通した。培養上清及びそれぞれの通過液に存
在するH107抗原の相対量をRPMI8866細胞へのH107抗体の
結合を阻害する割合で算出した。即ち、125Iでラベルし
たH107抗体50μl5000cpmと、濃縮した培養上清、通過液
及びそれぞれの希釈物20μlを混合し、氷冷下30分放置
した。次いでRPMI8866細胞を1×106ケ含む液50μlを
加え軽く混合し、氷冷下30分放置した。この混合物を20
%オリーブオイル、80%ジブチルフタレートの混合液に
重層し、遠心した。細胞ペレツトと上清とをそれぞれγ
カウンターでcpmを測定し、125IラベルしたH107抗体の
結合率を算出した。その結果、H107抗体結合カラムを通
過した液の細胞ペレツト部分のカウントは1970cpmであ
り上清は750cpmであつた。ヒトイムノグロブリン結合カ
ラムを通過した液の細胞ペレツト部分のカウントは、57
0cpmであつた。抗Tac抗体結合カラムを通過した液の細
胞ペレツト部分のカウントは700cpmであつた。従つてRP
MI8866細胞の培養上清に存在するH107抗原はヒトイムノ
グロブリンおよび抗Tac抗体には吸収されないがH107抗
体には吸収された。
(2)RPMI8866細胞の培養上清よりH107抗体を用いたア
フイニテイクロマトで得た分画のウエスタンブロツトを
行いH107抗原を検出した。すなわち、実施例2において
H107抗体を結合したセフアロース4Bカラムより留出した
粗な分画を非還元状態で15%SDS-PAGEにかけた後ニトロ
セルロース膜に電気泳動的にブロツトした。ニトロセル
ロース膜を牛血清アルブミン(BSA)でブロツクした
後、H107抗体と反応させ、次いでヤギ抗マウスIgG抗体
−HRPと反応させた。しかる後に過酸化水素及びジアミ
ノベンジジンで発色させた。その結果、25kd付近に近接
した2本のバンドを検出した。ウエスタンブロツト図を
第2図に示した。第2図において、lane Aは上記により
検出された2本のバンドを示し、lane BはH107抗体との
反応をさせなかつた例であり、lane CはマウスIgGを還
元状態で本蛋白の代わりに用いた例である。
(3)RPMI8866細胞とATL-2細胞(FcεRの発現は見ら
れない)(ATL-2は人白血病細胞を意味する)の培養上
清中のH107抗原量を比較した。すなわち、RPMI8866及び
ATL-2をHB101無血清培地(Hana社製)で培養しそれぞれ
58倍、66倍に濃縮したのち、ウサギ抗RPMI8866細胞抗体
及び125IラベルしたH107抗体を用いるサンドイツチRIA
法によつてH107抗原の量を比較した。その結果、ATL-2
の培養上清にはH107抗原は検出されなかつた。一方、RP
MI8866の培養上清には有為にH107抗原が存在した。
実施例5 RPMI8866細胞の培養上清から、H107抗体を結合したセ
フアロース(Sepharose)カラムによつて精製される25k
d蛋白を2μgを200μlPBS溶液(NaCl、リン酸緩衝液)
に溶解し、1%となる様にFCS(牛胎児血清)を加え
た。これをフアルマシア社製ゲル過用カラム セフア
ロース(Sepharose)で0.5mlずつ分画した。それぞれの
分画について、H107抗原量、、RPMI8866細胞に対する牛
赤血球結合IgE(Eo′‐IgE)のロゼツト形成を阻害する
活性、更にPWMで刺激したヒト末梢血のIgE産生に及ぼす
影響を調べた。
H107抗原量の定量は次の様に行つた。ELISA用96穴プ
レートを用い、プロテインA セフアロース(ProtinA
sepharose)で精製したウサギ抗RPMI8866細胞抗体(IgG
分画)の2μg/mlカツプリングバツフアー(0.1M NaHCO
3、NaOHでpH9.6に調節)溶液を各ウエルに200μlずつ
加え、4℃で4時間インキユベートした。洗浄バツフア
ー〔PBS,pH7.5,ツイーン(tween)20,0.05%〕で7回洗
浄後、3%BSA(ウシ血清アルブミン)/洗浄バツフア
ー液200μl加え、4℃,4時間インキユベートした。次
いで、洗浄バツフアーで7回洗浄したのち、各分画を0.
1%BSA/洗浄バツフアーで、それぞれの希釈度に希釈し
た検体を100μlづつ加え4℃,4時間インキユベートし
た。次いで、洗浄バツフアーで7回洗浄し、アルカリホ
スフアターゼを結合したH107抗体〔1.3μg/ml,(株)ニ
チレイ製〕を100μl加え4℃,4時間インキユベートし
た。洗浄バツフアーで3回洗浄した後、基質溶液〔ホス
フエート基質錠剤(Sigma Chem Co.,アメリカ)を、デ
ベロツプバツフアー(ジエタノールアミン97ml、MgCl2
6H2O100mg、NaN3200mgを蒸留水で1にしたもの)5ml
に溶かした溶液〕を100μlずつ加え、室温で発色させ
た。これをELISA Readerで2波長OD405-660nmで測定し
た。H107抗原の検出される分画は分子量マーカー20kd近
辺に存在した。(第3図参照) ロゼツト形成阻害反応は以下の様に行つた。石坂ら
〔ジヤーナル オブ イムノロジー(J.Immunol.)126
1692,1981〕の方法によつて、調整したホルマリン固定
化牛赤血球(PBS中10%溶液)を酢酸バツフアー(0.1M
ACOH、pH5.0)に分散した。この溶液250μlとヒトIgE
(1mg/ml)250μl、酢酸バツフアー500μlを混合し、
室温で2時間インキユベートした。PBSで3回洗浄した
後、1mlのダルベコー変法イーグル培地に分散した。(E
o′‐IgE)Eo′‐IgE溶液25μlに各分画25μlを加
え、室温で30分インキユベートした混合物に、あらかじ
め2%FCSを含むRPMI1640培地にRPMI8866細胞5×106
/mlになるように調整した液25μlを加え、37℃、10分
間インキユベートした。卓上微量遠心機で、2500rpm2分
間遠心した後、氷中で2時間放置した。顕微鏡下で、E
o′‐IgEが3ケ以上結合した細胞をロゼツト形成細胞と
してカウントし、検体を入れなかつた場合のロゼツト形
成率を100として各分画のロゼツト形成阻害率を計算し
た。ロゼツト形成を阻害する分画は分子量マーカーで20
kd近辺に存在した。(第3図参照) PWMで刺激した末梢血のIgE産生に及ぼす影響をみるた
め、次の様な実験を行つた。ヒト末梢血の50mlをPBS50m
lで希釈し、フイコールパーク50mlに加え、1500rpm30分
間遠心し、リンパ球画分を分離した。リンパ球をPBSで
1度洗浄し、更RPMI1640で洗浄した。FCSを10%含むRPM
I1640で、細胞濃度が1×106/mlになるように懸濁し、
その液を200μlずつ96穴マイクロプレートに分注し
た。培養液に、PWM10μg/mlおよび0.01%cowan Iを加
え、更に上記各フラクシヨン画分を5μlずつ加えた。
6日間CO2インキユベータ内37℃で培養し、その後培養
液中のIgEをELISA法により定量した。即ち、ELISA用96
穴プレートにウサギ抗ヒトIgE(DAKO社製)250ng/ml
(0.1M NaHCO3pH9.6NaOHで調整)を100μlづつ加え、
4℃、4時間インキユベートし、洗浄バツフアーで7回
洗浄した。次いで、BSA3%を含む洗浄バツフアーを200
μlずつ加え、4℃、4時間インキユベートした後、洗
浄バツフアーで7回洗浄した。先きに調整した末梢血の
培養上清を、BSA0.1%含む洗浄バツフアーで3倍に希釈
し、100μlずつ加え、4℃、4時間インキユベートし
た。洗浄バツフアーで7回洗浄後アルカリホスフアター
ゼ結合ゴート抗ヒトIgE(Tago社製)を、BSA0.1%含む
洗浄バツフアーで100倍に希釈したものを、100μlづつ
加え、4℃、4時間インキユベートした。洗浄バツフア
ーで7回洗浄後、基質溶液(前述)を100μlづつ加
え、室温で発色させた。ELISA Readerで2波長OD405-66
0nmで測定し、あらかじめ決定しておいた検量線と比較
し、産生したIgEの定量を行つた。IgEの産生を増強する
活性は20kd近辺にみられた。(第3図参照) (発明の効果) クラス特異的FcεRを表面に持つ細胞を培養し、その
培養上清から、ポリペプチド構造の一部がMet-Glu-Leu-
Gln-Val-Ser-Ser-Gly-Phe-Valで表わされるアミノ酸配
列構造を有する新規な蛋白質を得ることができた。かか
る蛋白質は、抗Fcεレセプター抗体との反応性を有する
ことからヒトIgE結合因子またはヒトFcεR蛋白をコー
ドする遺伝情報を単離するための蛋白質として有用であ
り、上記の様に一部のアミノ酸配列が明らかにされてい
るので、これにもとづき相当する遺伝子を合成し、これ
をプローブとして遺伝情報を単離することができる。ま
た、かかる蛋白質は、IgEと結合し、Bリンパ球のIgE産
生に影響を与えるIgE結合因子であり、かかるIgE結合因
子はFcεRの一部であることも明らかとなつた。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例2で得られた蛋白質のSDSゲル電気泳
動を示す図であり、第2図は実施例4(2)においてH1
07アフイニテイカラムで精製して得られた蛋白質のウエ
スタンブロツト図である。第3図は実施例5においてRP
MI8866細胞の培養上清から得られた25k蛋白の各分画分
について、H107抗原量、IgE産生量およびロゼツト形成
阻害率を測定した結果を示す図である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】分子量が25,000±2,000であり、等電点が
    5.4〜6.0であり、ポリペプチド構造の一部がMet-Glu-Le
    u-Gln-Val-Ser-Ser-Gly-Phe-Valで表わされるアミノ酸
    配列構造を有し、かつ抗Fcεレセプター抗体との反応性
    を有する蛋白質。
  2. 【請求項2】クラス特異的Fcεレセプターを表面に持つ
    細胞を培養し、その培養上清から分離採取することを特
    徴とする、分子量が25,000±2,000であり、等電点が5.4
    〜6.0であり、ポリペプチド構造の一部がMet-Glu-Leu-G
    ln-Val-Ser-Ser-Gly-Phe-Valで表わされるアミノ酸配列
    構造を有し、かつ抗Fcεレセプター抗体との反応性を有
    する蛋白質を製造する方法。
  3. 【請求項3】該培養上清を、抗Fcεレセプター抗体を結
    合した担体を充填したアフイニテイクロマトグラフイで
    処理し、しかる後該担体への吸着物を分離採取する特許
    請求の範囲第2項記載の方法。
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