JPH08585A - 胃電図および腸電図の計測方法並びに計測装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 胃電図や腸電図を呼吸の影響を受けずに長時
間に亘って計測することができ、以て種々の病気に対す
る薬物投与や治療の指針となる情報を得ることを可能な
らしめる、胃電図および腸電図の計測方法並びに計測装
置を提供することを目的とする。 【構成】 体表面に固定される電極１と、電極１で検出
された電位を増幅する増幅器２と、増幅器２によって増
幅された胃の電位及び腸の電位以外の周波数信号を除去
するロ−パスフィルタ−３と、記録装置７とを少なくと
も含み、前記ロ−パスフィルタ−３の入力信号の周波数
と出力信号の位相との関係をリニア−にして成る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、種々の病気に対する薬
物投与や治療の指針となる情報を得るために、主として
人体の体表面に電極を設置して、胃および腸の動きを電
位として把えて記録するための胃電図および腸電図の計
測方法並びに計測装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】上記情報を得るためには胃や腸の動きを
観察する必要があるが、胃や腸の動きを体表面から計測
することは困難なため、それに代わるものとして従来
は、体内に飲み込んだカテ−テルで胃内部の圧力を計測
したり、針電極で臓器の筋電位を計測したりすることが
行なわれていた。しかし、それらの計測から得られる情
報は、上記指針とするには凡そ十分なものとは言えな
い。

【０００３】そこで、胃や腸の動きを反映する、より正
確で詳細な情報を得るべく、体表面に設置した電極の電
位から胃や腸の動きを計測する方法が種々試みられてき
ているが、その場合、呼吸や体動の影響を受けずに計測
することは不可能であるという大きな問題に直面してい
る。

【０００４】即ち、胃および腸の電位を体表面に設置し
た電極で計測すると、それは２０〜２００μＶｐｐと心
電図などに比べると極端に小さく、これに呼吸に伴う横
隔膜の筋電位が強くオ−バ−ラップしてくる。しかも、
呼吸の周期（１５〜２０サイクル／分）が胃や腸の動作
周期（２〜６サイクル／分）に近接しているため、従来
の簡単なパッシブフィルタ−や次数の低いアクティブフ
ィルタ−では、呼吸の影響を十分に除去することができ
ない。そのため、呼吸の影響を受けにくい痩せた患者、
即ち、実質的に絶縁体となる皮下脂肪層の非常に少ない
患者に限り、横臥して静止した状態で短時間計測してい
るのが現状である。

【０００５】ところで、胃や腸の臨床的な評価には、日
常の活動状態を長時間に亘って知ることが不可欠で、体
表面から胃電図や腸電図を計測する方法は、この要求に
答え得る唯一の手段であると言える。上述したように、
呼吸と胃や腸の動作周期が近接しているため、呼吸の影
響を除去するには急峻な遮断特性のロ−パスフィルタ−
が必要である。しかし、急峻な遮断特性のフィルタ−は
位相特性が大きく乱れ、オ−バシュ−トやリンギングが
強く現れ、胃や腸の計測波形の歪みが大きくなる。

【０００６】胃や腸の電位は他の電位に比べ相対的に小
さいため、体動や電極の不安定さによって電位のレベル
が変動すると、計測すべき信号が消失してしまうが、オ
−バシュ−トのあるフィルタ−を用いると元の状態に戻
るのに長時間を要する。このような電位の変動は日常の
活動下で計測すると頻繁に生ずるため、オ−バシュ−ト
のあるフィルタ−を用いると、静止した状態でしか計測
できなくなる。また、リンギングは、外乱による少しの
レベル変動で胃や腸の動きと見間違う偽の信号を発生
し、診断を著しく困難にする。

【０００７】更に、位相特性の乱れは計測波形の形状を
大きく変化させ、振幅特性で比較するベクトル解析を事
実上不可能にする。波形歪みが少なく、オ−バシュ−ト
やリンギングがないフィルタ−としてベッセルフィルタ
−があるが、それは次数を多くしても遮断特性が改善さ
れないため、実用的ではない。近接した周波数を除去す
るフィルタ−の遮断特性を固定した成人用の装置で小児
や新生児を計測すると、胃や腸の動きが早く、必要な信
号がフィルタ−によって除去されてしまうために計測が
できない。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】上述したように従来
は、胃電図や腸電図を呼吸の影響を受けずに長時間に亘
って計測することが実際上困難であった。そこで、本発
明は上記計測を可能にし、以て種々の病気に対する薬物
投与や治療の指針となる情報を得ることを可能ならしめ
る、胃電図および腸電図の計測方法並びに計測装置を提
供することを課題とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、胃の電位及び
腸の電位に含まれる周波数信号以外の高い周波数信号を
除去するロ−パスフィルタ−を、生体信号の増幅器と、
前記増幅器により増幅した信号を記録する記録装置との
間に配備し、前記ロ−パスフィルタ−の入力信号の周波
数と出力信号の位相との関係をリニア−にすることを特
徴とする胃電図および腸電図の計測方法、並びに、体表
面に固定される電極と、前記電極で検出された電位を増
幅する増幅器と、前記増幅器によって増幅された胃の電
位及び腸の電位以外の周波数信号を除去するロ−パスフ
ィルタ−と、記録装置とを少なくとも含み、前記ロ−パ
スフィルタ−の入力信号の周波数と出力信号の位相との
関係をリニア−にして成る胃電図および腸電図の計測装
置、を以て上記課題を解決した。好ましくは、ロ−パス
フィルタ−の遮断周波数を可変にする。

【００１０】

【作 用】本発明では、呼吸の影響を除去するロ−パス
フィルタ−の遮断特性を良くするためフィルタ−の次数
を高くし、なお且つ、入力と出力信号の周波数に対する
位相特性をリニア−にする。それにより、オ−バシュ−
トやリンギングが防止され、波形歪みが少なくなる。胃
電図や腸電図に使用するロ−パスフィルタ−は、呼吸の
影響を除去できる遮断特性を確保した上で、位相特性に
暴れがなく、周波数に対する位相変化がリニア−でなけ
れば実用的な計測はできない。

【００１１】成人に比べ小児や新生児は胃や腸の動きが
早いが、相対的に呼吸の動きも早いため、呼吸の影響を
除去するロ−パスフィルタ−の遮断周波数を患者の胃や
腸の動きに合わせて変化させることにより、成人と同様
に最適な状態で計測することが可能となる。また、計測
対象とする臓器（例えば、大腸は胃よりも少し動きが早
い）によっても最適なフィルタ−特性は異なるため、遮
断周波数を可変にすることは非常に好ましいことであ
る。

【００１２】

【実施例】本発明は、２種類の方法にて実施することが
できる。その一つは、アナログ信号処理により、入力信
号の周波数と出力信号の位相関係がリニア−に変化する
ロ−パスフィルタ−を構成することであり、例えばリニ
アテクノロジ−社のＬＴＣ１１６４−７型のスイッチド
キャパシタ−（図３はその通過帯域における位相変化を
示すグラフである。）を用いて構成することができる。

【００１３】もう一つは、アナグロ信号をＡ／Ｄ変換し
たデジタル信号を、本発明に係る特性を持つようにプロ
グラムしたデジタルフィルタ−を用いて構成する方法で
ある。この方法の場合は、デジタル信号に変換した後で
フィルタ−処理することになる。胃電図や腸電図は１チ
ャンネルの計測でも十分動きを評価できるが、胃の移動
していく状態やベクトル解析を行なう場合は多チャンネ
ル計測が必要である。

【００１４】先ず、スイッチドキャパシタ−フィルタ−
を用いた多チャンネル計測の例を図１に拠って説明す
る。体表面に張り付けた電極１で検出した胃電図や腸電
図を、増幅器２でフィルタ−処理できるレベルまで増幅
し、増幅した信号に含まれている高周波成分を簡単なロ
−パスフィルタ−３にて除去した後、スイッチドキャパ
シタ−フィルタ−４に加える。このスイッチドキャパシ
タ−フィルタ−４は、本発明の要件である、入力信号の
周波数と出力信号の位相関係をリニア−な特性とするロ
−パスフィルタ−を構成する。

【００１５】また、スイッチドキャパシタ−フィルタ−
４は、与えるクロックの周波数と遮断周波数が比例する
ので、クロック発生器８の周波数を変化させて最適な遮
断周波数を選択する。スイッチドキャパシタ−フィルタ
−４を出た信号は、信号切換器５で複数のチャンネルを
順次切り換えてＡ／Ｄ変換器６に送る。そして、Ａ／Ｄ
変換器６でアナログ信号をデジタル信号に変換して記録
器７に送る。

【００１６】電極１からスイッチドキャパシタ−フィル
タ−４までは、使用するチャンネルの数だけ同じものが
必要になる。別チャンネルのブロックを参照数字９で示
す。なお、信号切換器５やＡ／Ｄ変換器６の構成方法は
種々あるが、ここでは代表的な方法を示した。また、記
録器７は半導体メモリ−を用いるのが普通であるが、磁
気テ−プや光ディスク等の記憶媒体を用いてもよい。

【００１７】実際の装置においては、計測周期や全体の
動作、表示等を制御するマイクロプロセッサ−や、電源
および電池の管理回路、静電気等から装置を守る保護回
路等が必要となるが、本発明とは直接関係がないので説
明を割愛する。

【００１８】図４は図１にブロック的に示した回路部材
を、より具体的に示した回路図であっで、図１に示すも
のと同一の機能を有する部位には同一の参照番号を付し
てある。図４に示されるように、切換器５の切換は、マ
イクロプロセッサ１０からの制御信号により切り換えら
れる。また、スイッチドキャパシタ−フィルタ−４のク
ロックは、マイクロプロセッサ１０から供給される。こ
のクロックの周波数を制御することにより、スイッチド
キャパシタ−フィルタ−４の遮断周波数を変更すること
ができる。

【００１９】次に、デジタルフィルタ−を用いて１チャ
ンネルで構成した例を図２に示す。電極１１と増幅器１
２及びロ−パスフィルタ−１３は、上述したスイッチド
キャパシタ−フィルタ−で構成した場合と同じである。
但し、この場合のロ−パスフィルタ−１３は、Ａ／Ｄ変
換器１４とデジタルフィルタ−１５に悪影響を与える高
周波成分を除去するために用いられる。

【００２０】Ａ／Ｄ変換器１４でアナログ信号をデジタ
ル信号に変換して、デジタルフィルタ−１５に入力す
る。このデジタルフィルタ−１５は、本発明の要件であ
る、周波数に対する入力と出力信号の位相変化がリニア
−な特性のロ−パスフィルタ−になるようにプログラム
する。

【００２１】デジタルフィルタ−１５としては、専用の
半導体やＤＳＰ（デジタルシグナルプロセッサ−）を用
いるのが普通であるが、高性能なマイクロプロセッサで
あれば、ソフトウエアのみでデジタルフィルタ−を構成
することができる。デジタルフィルタ−１５は出力がデ
ジタル信号なので、そのまま記録器１６に接続すること
ができる。

【００２２】デジタルフィルタ−１５で遮断周波数を変
える方法は、フィルタ−を構成するプログラムを変える
方法と、Ａ／Ｄ変換してデジタルフィルタ−に信号を取
り込む周期を変える方法とがある。装置としては、全体
を制御するマイクロプロセッサや電源および電池の管理
回路、保護回路等がスイッチドキャパシタ−フィルタ−
の場合と同様に必要である。

【００２３】図５は図２においてブロック的に示した回
路部材を、より具体的に示した回路図であって、図２に
示すものと同一の機能を有する部位には同一の参照番号
を付してある。Ａ／Ｄ変換器１４の入力側に設けるロ−
パスフィルタ−１３は、帰還型の簡易なものが用いら
れ、その出力はＡ／Ｄ変換器１４に供給される。Ａ／Ｄ
変換器１４のデジタル出力は、マイクロプロセッサ１６
により制御されるデジタルフィルタ−１５に供給され
る。このデジタルフィルタ−１５は、デジタルシグナル
プロセッサ（ＤＳＰ）と称せられるもので、種々の信号
処理に用いられ、製品としてはテキサスインスツルメン
ツ社のＴＭＳ３２０Ｃ３０等がある。

【００２４】

【発明の効果】本発明は上述した通りであって、胃電図
や腸電図を呼吸の影響を受けずに長時間に亘って計測す
ることが可能であり、食事や睡眠を含めた胃や腸の実際
の活動状況を体外から把握することができるため、種々
の病気に対する薬物投与や治療の指針となる情報を得る
ことができ、以て患者の病状回復に寄与するところ大な
る効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】 スイッチドキャパシタ−フィルタ−を用いて
本発明の要件を満たすロ−パスフィルタ−を構成し、多
チャンネルで構成した場合の主要部のブロック図であ
る。

【図２】 デジタルフィルタ−で本発明のロ−パスフィ
ルタ−を構成し、１チャンネルで構成した場合の主要部
のブロック図である。

【図３】 本発明において用いるロ−パスフィルタ−の
通過帯域における位相変化を示すグラフである。

【図４】 図１に示すブロック図のより具体的な回路図
である。

【図５】 図２に示すブロック図のより具体的な回路図
である。

【符号の説明】

１ 電極 ２ 増幅器 ３ ロ−パスフィルタ− ４ スイッチドキャパシタ−フィルタ− ５ 信号切換器 ６ Ａ／Ｄ変換器 ７ 記録器 ８ クロック発生器 ９ 別チャンネルのブロック 10 マイクロプロセッサ 11 電極 12 増幅器 13 ロ−パスフィルタ− 14 Ａ／Ｄ変換器 15 デジタルフィルタ− 16 記録器及びマイクロプロセッサ

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 胃の電位及び腸の電位に含まれる周波数
   信号以外の周波数信号を除去するロ−パスフィルタ−
   を、生体信号の増幅器と、前記増幅器により増幅した信
   号を記録する記録装置との間に配備し、前記ロ−パスフ
   ィルタ−の入力信号の周波数と出力信号の位相との関係
   をリニア−にすることを特徴とする胃電図および腸電図
   の計測方法。
2. 【請求項２】 ロ−パスフィルタ−の遮断周波数を可変
   にすることを特徴とする請求項１記載の胃電図および腸
   電図の計測方法。
3. 【請求項３】 体表面に固定される電極と、前記電極で
   検出された電位を増幅する増幅器と、前記増幅器によっ
   て増幅された胃の電位及び腸の電位以外の周波数信号を
   除去するロ−パスフィルタ−と、記録装置とを少なくと
   も含み、前記ロ−パスフィルタ−の入力信号の周波数と
   出力信号の位相との関係をリニア−にして成る胃電図お
   よび腸電図の計測装置。
4. 【請求項４】 ロ−パスフィルタ−の遮断周波数を可変
   にすることを特徴とする請求項３記載の胃電図および腸
   電図の計測装置。