JPH085685B2 - 分散シフト光ファイバ用母材の製造方法 - Google Patents

分散シフト光ファイバ用母材の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は零分散波長が1.5μm帯にあり、伝送損失の
低減されたシングルモード光フアイバ用母材の製造方法
に関するものである。本発明の母材から製造される1.5
μm帯零分散シフトシングルモードフアイバは長距離か
つ大伝送容量の光通信線路として用いて好適である。
〔従来の技術〕 石英系光フアイバでは、光の波長1.5〜1.6μm領域
(1.5μm帯)で伝送損失が最小となるため、この波長
域で光伝送すれば最大の中継間隔が得られ、長距離通信
が可能となる。一方、大伝送容量を得るには、マルチモ
ードフアイバよりもはるかに広い伝送帯域を持ち、非常
に高い伝送速度を可能とするシングルモードフアイバが
用いられるが、この際、使用波長におけるフアイバの分
散効果を最小としておく必要がある。
したがつて、長距離、大伝送容量用の石英系光フアイ
バとして、1.5μm帯で材料分散と構造分散の和が零と
なるようにフアイバ構造を設計した1.5μm帯零分散シ
フト・シングルモードフアイバ(以下分散シフトフアイ
バという)の開発が進められている。
ところで、シングルモードフアイバにおいて零分散波
長を通常の1.3μm帯から1.5μm帯へシフトさせるに
は、フアイバの径をより細くすると共に、コアとクラツ
ドの比屈折率差△nを増大させる必要がある。コアとし
てGeO2添加SiO2を用いた場合、△nを大きくとるために
GeO2添加量を増すと、伝送損失も増加するという現象
は、よく知られた問題である。
そこで、1.55μmで伝送損失が最低であり、しかも耐
放射線特性、耐水素特性、初期伝送損失等においても原
理的に優れている。純SiO2をコアとし、F添加SiO2をク
ラツドとしたフアイバ構造が検討されている。
この構造で1.5μm帯で零分散とするには、第3図に
示すように△nが0.8%程度の高N,Aとし、かつコアAの
径が5μ程度であることが要求される。光フアイバ外径
を125μm程度とすると、このときのコア径に対するク
ラツドBの外径の比は約25以上が必要なわけである。
第3図のような構造の分散シフトフアイバを製造する
従来法の一つに、F−SiO2ガラスパイプの内側に、SiCl
4等のガラス原料及びO2を流しながら該パイプの外側か
ら加熱することにより、該ガラスパイプ内壁にコア層と
なる合成SiO2層を形成した後、中実化するという、いわ
ゆる内付法(MCVD法)によつて、SiO2コア/F−SiO2クラ
ツドからなるガラス母材を得る方法がある。この方法に
よると、細径の純SiO2コアAと、該コア径の25倍以上の
外径のF−SiO2クラツドBを有する第3図の構造が実現
できる。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、上記の従来法により作成した第3図の
構造の母材を線引した分散シフトフアイバにおいては、
波長0.63μmにおける吸収が大きくなるという問題があ
つた。この0.63μmという波長は伝送用に入射する光波
長とは異なつているが、該0.63μmにおける吸収は、コ
ア又はクラツドの海面におけるいわゆる非架橋酸素欠陥
(non Bridging Oxigen as−sociated Hole Center:nBO
HCと略す)の存在によると考えられており、この存在
は、光フアイバの耐放射線特性、耐水素特性を悪化させ
て、該フアイバの長期安定性、信頼性の低下につながる
ものであるため、光フアイバの実用化にとつては重大な
問題となつていた。
さらに研究を重ねるうちに、該欠陥量つまり0.63μm
での吸収はNoAoフアイバに特有であり、母材をフアイバ
化する際の線引速度に比例することも判つてきた。
このような事実に鑑みると、従来法において外部の太
径のF−SiO2パイプと内部の細いSiO2層を中実化にあた
り加熱された際、純SiO2より軟化点の低いF−SiO2の方
が粘性小であるに加え外側のため先に熱を受けるのに対
し、軟化点の高い純SiO2は内側にあり加熱が遅れるため
両者の粘性差がより大となり、この粘性差によるひずみ
によつてコア部又はコア−クラツド界面に欠陥が生じる
のではないかと考察される。又、これと同様の現象が線
引工程でも繰り返されているのではないかと考えられ
る。
本発明はこのような考察に基き、上記従来法を改良し
て、母材形成時に極力欠陥の生成を防止した1.5μm帯
零分散シフトシングルモードフアイバ用母材の製造方法
を提案しようと意図したものである。さらに本発明の他
の目的は従来よりも製造効率の高い上記母材の製造方法
を提案するところにある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明はF−SiO2ガラスからなるクラツド用パイプの
内壁に、内付け法により厚さ5〜500μmの純SiO2ガラ
ス層を形成した後、該パイプ中空部内に純SiO2ガラスか
らなるコア用ロツドを挿入して外部から加熱し一体化す
ることを特徴とする分散シフト光フアイバ用母材の製造
方法である。
以下に本発明を図面を参照して具体的に説明する。
本発明は、まずクラツド用のF−SiO2からなるガラス
パイプ1の内側に、いわゆるMCVD法により、数μm〜数
100μmの厚さの薄い純SiO2層を形成しておく。第1図
に示すようにクラツド用F−SiO2パイプ1の内側に、ガ
ラス原料として例えばSiCl4、O2ならびにCl2ガスを流し
ながら外部から酸水素バーナ4で加熱することにより、
管内で気相反応して生成したSiO2微粒子2は管内壁に薄
く堆積し、同時に該バーナ4により加熱されて純SiO2
明ガラス体3の薄層が形成される。本発明では、該SiO2
層を5〜500μmの薄層にとどめておくことが特に好ま
しい。
次に、第2図に示すように別途作成しておいたコア用
純SiO2ガラスロツド5を該SiO2薄層3を内部に形成した
クラツド用F−SiO2パイプ1内に挿入した状態で、外部
から酸水素バーナ4で加熱して、該ロツド5と該パイプ
1とをコラプスして一体化することにより、純SiO2コア
とF−SiO2クラツドからなり、所定の屈折率構造を有す
る1.5μm帯零分散シフト・フアイバ用ガラス母材を得
る。
本発明においては、F−SiO2からなるクラツド用パイ
プは、例えばVAD法により作成したSiO2堆積体をF系化
合物含有雰囲気中で加熱してFを添加し、得られたF−
SiO2ロツドの中央に孔あけを行つてF−SiO2パイプとす
る、といつた方法により作製する。
勿論、この方法に限定されることはなく、マンドレル
の外周にスート付けを行なつた後に該マンドレルを抜き
取り管状スート体を得て、これにF添加を行ない透明化
する等の方法やその他の方法によるものであつても差し
支えない。Fの添加量はコアの純SiO2と比屈折率差で△
n≒−0.7%〜1.0%程度とすることが好ましい。
またF−SiO2パイプの内側にSiO2層薄層を堆積させる
方法は、通常の技術によればよく、ガラス原料ガスとし
ては例えばSiCl4等を用い、酸化反応させるためにO2
スをこれと共に流すが、さらにCl4ガス等の脱水ガスを
加えることも好ましい。
これらのガスの流量条件は一概には限定できないが、
具体例としてSiCl4 50C.C./分、O2 20C.C./分、Cl2 100
C.C./分といつた条件である。
該ガラス層は5〜500μm好ましくは数10〜5100μm
の範囲の厚さとする。5μmより薄いとFが拡散して純
シリカ層の物性値が変化するため、欠陥が生成してしま
う。一方、500μmを越えると効果は変らないが、生産
性が悪くなる。外部からの加熱源としては例えば酸水素
バーナ等を用いればよい。
また、得られたSiO2薄層コーテイングしたF−SiO2
ラツドパイプ内に挿入する純SiO2コア用ロツドは、例え
ばVAD法等により作製するが、公知の高純度SiO2ガラス
製造法を利用して製造したものであればいずれでもよ
い。
該パイプと該ロツドの加熱一体化(コラプス)は、前
段と同様の外部熱源を用いるが、水酸基の影響や混入・
汚染を避けるために第2図のようにCl2ガスを流しなが
ら行うことが好ましい。
〔作用〕
このようにMCVD法により直接すべてのコア層を合成す
るのではなく、F−SiO2のクラツド用パイプ内面にSiO2
層を藩く合成しておき、ここに別途合成しておいた純Si
O2コア用ロツドをロツドインチユーブ法でコラプスする
と、パイプの方が粘性小となるものの、コアと接する面
はSiO2層であるために、コアロツド表面との粘性差は緩
和され、欠陥生成が抑制できる。
また、従来のようにコア層全体をMCVD法で作製すると
非常に長時間を要したが、本発明は薄いSiO2層のみの作
製でよく、これに純SiO2コアロツドをロツドインチユー
ブ法によりコラプスするだけであるので、はるかに短時
間で済むので、生産効率が向上する点で有利である。
〔実施例〕
実施例1 第4図に示すような構成でVAD法により多孔質ガラス
体を作成した。本実施例ではガラス微粒子合成用バーナ
ー6にH2 30/分、O2 25/分、Ar 15/分、SiCl4
1600C.C./分を供給し、外径110mmφ長さ550mmの多孔質
ガラス体7を得た。8は出発材である。この多孔質ガラ
ス体7をCl2:He=6:100の雰囲気を有する炉内に挿入し1
050℃に加熱して脱水処理を施したのち、SiF4:He=8:10
0の雰囲気中で1200℃に加熱してF添加処理を施し、さ
らにSiF4:He=8:100の雰囲気中で1600℃に加熱し透明ガ
ラス化を行つた。その結果外径50mmφ長さ270mmの円
柱状のF−SiO2からなる透明ガラス体を得た。該透明ガ
ラス体中央に超音波穿孔機を用い8mmφの穴をあけ、パ
イプ状としたのち、外径25mmφまで延伸した。次にこの
パイプ状透明ガラス体をガラス旋盤に装着し、内部にSF
6ガス300C.C./分を流しつつ外部よりH2/O2バーナーで加
熱することにより、内径が約12mmφになるまでガスエツ
チングした。このガスエツチングにより穿孔時に内面に
生じた傷や凹凸などはなくなり平滑な内面が得られた。
次に、該パイプ状ガラス体内部にSiCl4 50C.C./分,O2 2
00C.C./分,Cl2 100C.C./分を供給し、外部よりH2/O2
ーナーを5往復させて加熱することにより、MCVD法によ
る純SiO2層の形成を行つた。該純SiO2層の厚さは約50μ
mであつた。
別途VAD法により作成した外径2mmの純SiO2からなるコ
ア用透明ガラスロツドを該パイプ内に挿入し、外部より
H2/O2バーナーで加熱して、該パイプ内壁とガラスロツ
ド表面を融着させて、両者を一体化した。得られたガラ
ス母材の外径は22mmφであり、コア径は約2mm、クラツ
ド径/コア径の比は約11倍であり、クラツドのコアに対
する比屈折率差△n−0.7%であつた。
該ガラス母材を出発材とし、VAD法により、その外周
に純SiO2を堆積させて、前記のクラツド部としたパイプ
作成の際と同様に行つて、脱水、F添加・透明化してク
ラツドパイプと同じく比屈折率差−0.7%のF−SiO2
らなるジヤケツト層を形成し外径50mmの光フアイバ用母
材を得た。
該母材を加熱延伸して23mmφとしたものを線引用プリ
フオームとし、これを線引して外径125μm、コア径5
μm、コアとクラツドの比屈折率差−0.7%の1.5μm帯
零分散シングルモードフアイバを得た。該フアイバの特
性を調べたところ、0.63μmにおける吸収は10dB/kmと
低いものであつた。
比較例1 実施例1同様に作成したF−SiO2ガラスパイプ内にSi
O2層を形成することなく、そのまま、実施例1で用いた
と同じ純SiO2コア用ロツドを挿入し、加熱一体化して、
外径22mmφ、コア径2mmの光フアイバ用中間母材を作製
した。以下実施例1と同様にF−SiO2からなるジヤケツ
ト層を形成し、同サイズの線引用プリフオームを得た。
該プリフオームを実施例1同条件で外径125μmに線
引きして、1.5μm帯零分散シフトフアイバとし、この
伝送特性を調べたところ、0.63μmにおける吸収は20dB
/cm以上もあつた。
以上の実施例1及び比較例1の結果から、本発明のF
−SiO2クラツドパイプ内部に純SiO2ガラス薄層を形成し
ておく手段が、0.63μmの吸収の基となる欠陥発生量の
低減に有効であることがわかる。
〔発明の効果〕
以上のように、本発明によれば純SiO2コア、F−SiO2
クラツドからなる1.5μm零分散シフトフアイバ用母材
を、従来より短時間で効率良く生産できるに加え、本発
明による母材は、製造程のコラプスの際に、クラツドパ
イプ内面とコアロツド表面の粘性差が緩和されるのでコ
ア又はコア/クラツド界面での欠陥発生を抑制できるの
で、長距離かつ大伝送容量が可能であり、耐水素性が長
期に安定し、信頼性に優れた分散シフトフアイバを得る
ことができるという優れたものである。
【図面の簡単な説明】 第1図及び第2図は本発明を工程順に説明する概略図で
あつて、第1図はクラツド用F−SiO2ガラスパイプ内に
MCVD法により純SiO2薄層を形成する工程、第2図は第1
図の工程の次に該パイプとコア用純SiO2ガラスロツドを
ロツドインチユーブ法により一体化する工程を示す。第
3図は純SiO2コア、F−SiO2クラツドからなる1.5μm
帯分散シフトフアイバの構造を示す図である。第4図は
VAD法によりガラス多孔質体を作製する工程の説明図で
ある。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】F−SiO2ガラスからなるクラツド用パイプ
    の内壁に、内付け法により厚さ5〜500μmの純SiO2
    ラス層を形成した後、該パイプ中空部内に純SiO2ガラス
    からなるコア用ロツドを挿入して外部から加熱し一体化
    することを特徴とする分散シフト光フアイバ用母材の製
    造方法。
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