JPH0852305A - 油水分離用濾過器および油水分離方法 - Google Patents

油水分離用濾過器および油水分離方法

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JPH0852305A
JPH0852305A JP18731394A JP18731394A JPH0852305A JP H0852305 A JPH0852305 A JP H0852305A JP 18731394 A JP18731394 A JP 18731394A JP 18731394 A JP18731394 A JP 18731394A JP H0852305 A JPH0852305 A JP H0852305A
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JP
Japan
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oil
water
filter
separation
membrane
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Application number
JP18731394A
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English (en)
Inventor
Yuji Hirano
裕司 平野
Yuji Kamei
裕二 亀井
Hiroshi Yorita
浩 寄田
Hisatomi Taguchi
久富 田口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Noritake Co Ltd
Original Assignee
Noritake Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 油水混合液から水分含有率が低い油を効率的
に回収するための油水分離用濾過器、および油水分離方
法を提供する。 【構成】 油水分離用濾過器10は、油水混合液に接す
るセラミックフィルタ12の表面56や細孔の内壁面に
撥水親油膜が形成されているため、油水混合液の濾過に
用いられると、その撥水性によって液中の水は表面56
で拒絶されてセラミックフィルタ12を透過させられ
ず、一方親油性によって液中の油は透過させられる。し
たがって、この油水分離用濾過器10を用いた油水分離
装置によれば、油水混合液から水分含有量の少ない油を
回収することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、油水混合液から水分含
有率の低い油を効率良く回収するために用いられる油水
分離用濾過器および油水分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】食品製造、繊維処理、機械加工、或いは
石油精製等の生産工程或いは廃液の処理工程において
は、その工程の一部として油水混合液を油と水とに分離
する分離処理も行われている。従来、上記分離処理の方
法としては、比重分離、加圧浮上分離、遠心分離、吸着
分離、電気的方法等が行われてきたが、近年では、高濃
度分離が可能且つ省エネルギの点で有利な、逆浸透法、
精密濾過法、限外濾過法等の膜分離方法が注目されてい
る。このような油水混合液の膜分離方法として、特開昭
54−152680号公報に示されるような高分子多孔
膜を用いる方法や、或いは、特開平1−139107号
公報に示されるようなセラミックフィルタを用いる方法
がある。
【0003】
【発明が解決すべき課題】ところで、例えば、金属の切
削加工や研削加工、セラミックス等の研削加工において
は、切削油や研削油を循環して用いているが、その切削
油等には多くの水分が含まれていくため、その切削油等
を長期間用いるためには、切削或いは研削性能に影響が
生じる含水率(一般に0.1 vol%程度)とならないよ
うに、その水分を分離除去することが必要である。この
ような、油水混合液から水分含有率の低い油を回収する
ために上記膜分離方法の利用が考えられるが、前記公報
に開示されているような従来の膜分離方法は、一般に油
水混合液から油の含有率の低い水を回収するための技術
である。
【0004】すなわち、上記従来の膜分離技術は、濾過
膜を透過する際の速度が水と油とではその粘度の差に起
因して大きく異なることを利用するものであり、粘度の
低い水の透過速度が粘度の高い油に比して大きいため透
過液中の水分含有率が原液に比して高くなるのである。
そして、原液すなわち油水混合液から比較的油の含有率
が低い水が回収されるため、原液は濃縮されることにな
るが、その濃縮された原液においても水の含有率は比較
的高く、したがって、油水混合液から水分含有率の低い
油を回収することは一般に困難であった。そのため、例
えば切削油等において上記のように切削或いは研削性能
に影響が生じる含水率となった場合には、その切削油等
は廃液として処理する以外にないという問題があったの
である。
【0005】そこで、本願出願人は、先に特願平5−3
37949号において、濾過膜に予め油が含浸されるこ
とによって、膜表面に油膜が形成され或いは濾過膜内の
細孔が油で満たされた濾過器を用いて油水混合液を濾過
することにより、油水混合液から水分含有率の低い油を
回収する油水分離方法を提案した。この油水分離方法に
よれば、含浸された油によって濾過膜の細孔は水を通し
難く、油を通し易い状態となるため、従来の膜分離方法
とは反対に濾過膜を通して水分含有率が低い油が回収さ
れる。
【0006】しかしながら、上記の方法によっても、濾
過時間が経過するに従って次第に透過流束が低下し、更
には濾過が行われなくなるという問題がある。これは、
一般に濾過膜として用いられる材料が親水性が高く且つ
親油性に乏しいセラミックス等であることから、濾過膜
表面或いは細孔内の油が次第に油水混合液中の水に置換
されて、水による濾過膜の目詰まり状態が生じるためと
考えられる。しかも、このように油が水に置換させられ
た濾過膜は、濾液を透過方向とは反対方向から透過させ
ることにより目詰まりを除去する所謂逆洗を行っても透
過流束が回復させられないため、濾過器を取り外して交
換するか或いは加熱処理等によって濾過膜の水を除去す
る必要があって手間を要し、全体として高い濾過効率が
得られないのである。
【0007】本発明は、以上の事情を背景として為され
たものであって、その目的は、油水混合液から水分含有
率が低い油を効率的に回収するための油水分離用濾過
器、および油水分離方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための第1の手段】斯かる目的を達成
するため、第1発明の油水分離用濾過器の要旨とすると
ころは、多数の細孔を有するセラミックスから成る濾過
膜を備えて油水混合液から水分含有率の低い油を回収す
るために用いられる油水分離用濾過器であって、前記濾
過膜の少なくとも前記油水混合液に接する表面に、カッ
プリング剤から成る撥水親油膜が形成されていることに
ある。
【0009】
【作用および第1発明の効果】このようにすれば、セラ
ミックスから成る濾過膜を備えた油水分離用濾過器は、
少なくとも油水混合液に接する濾過膜表面にカップリン
グ剤から成る撥水親油膜が形成されているため、この濾
過器を用いて油水混合液の濾過を行うと、その撥水性に
よって液中の水は膜表面で拒絶されて膜を透過させられ
ず、一方親油性によって液中の油は膜を透過させられ
る。したがって、油水混合液から水分含有率の低い油を
回収する目的に好適に用いられ得る。なお、ここで撥水
性とは水との接触角が90度以上であることを、親油性
とは油との接触角が0度に近いことをいう。
【0010】上記カップリング剤は、例えば−OH等の
親水基と、炭化水素鎖等の親油基とがTi(チタン),
Al(アルミニウム)等の金属を介して結合させられて
いるものであり、親水基がセラミックスと結合させられ
ることによって、そのセラミックス表面(少なくとも濾
過膜表面。必要に応じて細孔内を含む)には、カップリ
ング剤によって撥水親油膜が形成されるのである。しか
も、カップリング剤は親水基のみがセラミックスと化学
的に結合させられるため、薄く且つ均一な膜に形成され
てカップリング剤による濾過膜の細孔の目詰まり等が生
じないと共に、その結合が強固なものとなって撥水親油
膜が剥離し難く、高い透過流束が長時間に亘って維持さ
れる。
【0011】なお、カップリング剤とは、一般に共有結
合によって異種物質間の界面を制御して、その異種物質
を相互に結合させるものであり、無機材料と有機材料と
を結合させるシラン系カップリング剤が良く知られてい
る。上記チタンを有するカップリング剤は、有機物質と
必ずしも共有結合を形成しないこと知られており、厳密
にはカップリング剤の範疇に入るものではないが、同様
に界面を制御する作用を有することから、本願において
はこれを含めてカップリング剤という。
【0012】
【課題を解決するための第2の手段】また、前記の目的
を達成するための第2発明の油水分離方法の要旨とする
ところは、濾過膜によって分離された第1室および第2
室を有する前記第1発明の油水分離用濾過器を用いて、
油水混合液から水分含有率の低い油を回収するための油
水分離方法であって、(a) 前記油水混合液を所定圧力で
前記濾過器の第1室を通る循環経路内で前記濾過膜表面
に沿って循環させる循環工程と、(b) 前記水分含有率の
低い油を前記濾過膜を通してその濾過器の第2室へ濾過
させる濾過工程とを、含むことにある。
【0013】
【作用および第2発明の効果】このようにすれば、濾過
膜表面に撥水親油膜が形成された前記第1発明の油水分
離用濾過器を用いて油水分離が行われるため、前述のよ
うに油水混合液中の油のみが主に濾過膜を透過させら
れ、従来の膜分離方法とは反対に水分含有率の低い油が
回収される。このとき、上記油水分離方法は、濾過器の
第1室を通る循環経路内で濾過膜の表面に沿って油水混
合液を循環させる循環工程と、水分含有率の低い油を濾
過膜を通して第2室側へ濾過させる濾過工程とを含む所
謂クロスフロー濾過であるため、油水混合液が高速で膜
表面を流されることにより、その近傍で液中の水の濃度
が高くなる濃度分極が抑制され、安定した濾過を行うこ
とができる。しかも、油水混合液中に切削屑等の固形分
が含まれている場合等にも、油水混合液の流通によって
膜表面に剪断力が働くため目詰まりが生じ難く、このよ
うな場合にも高い透過流束が長時間に亘って維持され
る。また、濾過膜内に油水混合液中の水や固形分等が目
詰まりした場合にも、逆洗を行うことによって透過流束
を回復させることが容易である。
【0014】ここで、好適には、上記油水分離方法は、
前記循環工程に先立って前記濾過膜に油を予め含浸する
油含浸工程を更に含むものである。このようにすれば、
元々撥水親油性を有する濾過膜に油が予め含浸されるた
め、濾過膜の細孔は一層水を通し難く、一層油を通し易
い状態となって、一層高い透過流束が得られる。しか
も、濾過膜に含浸された油は撥水親油膜に強固に付着さ
せられて、濾過中にも液中の水に置換され難いため、高
い透過流束が長時間に亘って維持される。なお、濾過膜
への油の含浸状態は、膜表面に油膜が形成される程度、
或いは細孔内に油が満たされる程度の何れであっても同
様な効果が得られる。
【0015】
【実施例】以下に、本発明の一実施例を図面を参照して
説明する。
【0016】図1は、本発明の一実施例の油水分離用濾
過器10が適用された油水分離装置の一例の構成を示す
図である。図において、濾過器10は、例えば円筒状の
二重構造とされたもので、その内部はセラミックフィル
タ12によって二室に仕切られている。一方の第1室1
4の一端部に設けられた原液導入口16は、供給バルブ
18と循環ポンプ20とを備えた供給路22を介して原
液タンク24に接続されており、他端部に設けられた原
液排出口26は、戻しバルブ28を備えた戻し路30を
介してその原液タンク24に接続されている。また、濾
過器10の外周面の上記原液排出口26側の上側端部に
は濾液排出口32が設けられており、濾過器10内の他
方の第2室34は、濾液出口バルブ36を備えた濾液路
38を介して濾液タンク40に接続されている。本実施
例においては、上記供給路22および戻し路30が循環
経路を構成している。
【0017】上記濾液タンク40内の濾液すなわち水分
含有率の低い油は、三方弁42を介して送液ポンプ44
によって図示しない次工程に送液されて再利用される。
一方、濾過器10の外周面の上記原液導入口16側の上
側端部には、濾液導入口46が設けられており、上記第
2室34は、逆洗バルブ48を備えた逆洗路50を介し
て上記三方弁42に接続されている。また、濾過器10
の原液排出口26側の下側端部には、水抜きバルブ52
を備えて戻し路30に接続される水抜き路54が接続さ
れている。この水抜き路54は、濾過器10の第2室3
4の下部に水が溜まった際に排出するためのものであ
る。なお、本実施例においては、上記セラミックフィル
タ12が濾過膜に相当する。
【0018】上記セラミックフィルタ12は、例えばア
ルミナ質セラミックス等から成るものであって、例えば
0.05乃至3μm程度の範囲内において任意の大きさ
の比較的均一な細孔を有する濾過膜を内周面に備えて円
筒状に形成され、更に、濾過器10の第1室14側に位
置する表面56およびその内部の細孔すなわち相互に連
通した空隙の内壁面には、撥水親油膜が設けられてい
る。この撥水親油膜は、例えば−OH等の親水基と、炭
化水素鎖等の親油基とが金属(例えばTi〔チタン〕
等)を介して結合させられたカップリング剤等から生成
された極めて薄いものであり、例えば以下のようにして
形成されたものである。
【0019】例えば、有機官能基としてカルボキシラト
(−OCOR等;但し、Rはメチル、エチル等の炭化水
素基を表す)を有するチタネート系カップリング剤(例
えば、味の素(株)製 KR−TTS等)を、トルエン
等の有機溶剤で希釈して、カップリング剤の希釈溶液を
作製し、上記セラミックフィルタ12をその希釈溶液内
に浸す。希釈溶液をセラミックフィルタ12の細孔内に
充分浸透させた後、例えば150℃の温度で乾燥して有
機溶剤を蒸発させることにより、セラミックフィルタ1
2の表面および細孔の内壁面(すなわちセラミックス表
面)にカップリング剤がコーティングされ、撥水親油膜
が生成される。このようにして生成された撥水親油膜
は、例えば、セラミックス表面に酸素を介して金属(上
記のカップリング剤においてはチタン〔Ti〕)が化学
的に結合させられ、更に、その金属には酸素を介して炭
化水素鎖が化学的に結合させられている。このような炭
化水素鎖は一般的に撥水親油性を有するものであり、こ
れにより、一分子層程度の極めて薄い撥水親油膜が、セ
ラミックフィルタ12の表面56およびその細孔表面に
強固に形成されるのである。
【0020】前記濾過器10は、例えばステンレス等の
円筒状容器58内に上記セラミックフィルタ12が固定
されて構成されており、セラミックフィルタ12は、そ
の端面においてEPゴムやシリコンゴム等によってシー
ルされて、その円筒状の内周面すなわち濾過膜が前記供
給路22および戻し路30のみに連通させられている。
これにより、前記第2室34は密閉された円筒状に形成
されている。なお、上記細孔の大きさは、濾過を行う原
液に応じて適宜選択されるものである。
【0021】上記のように構成された油水分離装置を用
いることにより、以下のようにして油水混合液から水分
含有率の低い油が回収される。すなわち、原液タンク2
4内に油水混合液を投入し、供給バルブ18,戻しバル
ブ28,濾液出口バルブ36が開かれ、逆洗バルブ48
が閉じられた状態で循環ポンプ20を運転する。これに
より、原液タンク24内の油水混合液は、供給路22,
濾過器10の第1室14,戻し路30を通る循環経路内
で循環させられ、セラミックフィルタ12の表面56に
沿って流通させられる。上記バルブ18,28の開弁量
は、例えば濾過圧力(すなわち、供給路22および戻し
路30における油水混合液の圧力の平均値)が1.0k
g/cm2 程度、膜面流速が3m/s程度となるように
設定される。本実施例においては、上記の油水混合液が
循環経路内で流通させられる工程が循環工程に対応す
る。
【0022】油水混合液は循環させられるうち、主に液
中の油のみがセラミックフィルタ12を通って第2室3
4に透過させられ、濾液排出口32から水分含有率の低
い油が濾液として回収されて濾液タンク40に蓄えられ
る。油水混合液は原液タンク24から連続的に圧送され
ており、セラミックフィルタ12を油が透過することに
よって水の含有率を高くされて原液タンク24に戻り、
繰り返し濾過器10を通って循環させられる。本実施例
においては、上記の油が第2室34に透過させられる工
程が濾過工程に対応する。
【0023】図2は、上記のようにして油水分離装置を
運転した際の透過流束(すなわち油の濾過速度)を表し
たものであり、油水混合液として、含水率10 vol%
程度の灯油、含水率20 vol%程度の灯油、含水率
10 vol%程度で30℃における粘度2.3cSt 程度の
研削液を用いて、油水分離して測定したものである。
〜の符号を付した実線が本実施例を表す。なお、セラ
ミックフィルタ12としては、例えば、直径30mm、
長さ300mmで、平均細孔径0.2μmの濾過膜が形
成された直径4mmの原液通路が19個設けられている
円筒状のアルミナセラミックス製フィルタを用いた。図
から明らかなように、本実施例によれば比較的高い透過
流束が長時間に亘って維持される。
【0024】なお、濾液排出口32から回収された灯油
および研削油の含水率の測定を適宜おこなったが、上記
〜の何れの油水混合液を用いた場合も、常に含水率
は0.01% vol%以下であった。この測定は検出限界
が0.01 vol%の携帯用水分測定器〔浅野ケミカルズ
(株)製 AQUA TEST FINA〕で行ったも
のであり、すなわち回収された灯油および研削液の含水
率は常に検出限界以下であった。例えば、研削液の場合
には含水率が0.1 vol%以下であれば研削性能に関し
て問題が生じず、未使用の研削液の場合にも含水率が
0.05〜0.08 vol%程度の場合があることとか
ら、研削加工に用いられた結果水分の含有率の高くなっ
た研削液は、上記油水分離方法によって水分含有率を低
下させて再生することが可能である。
【0025】すなわち、本実施例によれば、油水分離用
濾過器10は、油水混合液に接するセラミックフィルタ
12の表面56や細孔の内壁面に撥水親油膜が形成され
ているため、上記のように油水混合液の濾過に用いられ
ると、その撥水性によって液中の水は表面56で拒絶さ
れてセラミックフィルタ12を透過させられず、一方親
油性によって液中の油は透過させられる。したがって、
この油水分離用濾過器10を用いた油水分離装置によれ
ば、油水混合液から水分含有率の少ない油を回収するこ
とができるのである。
【0026】しかも、上記撥水親油膜はカップリング剤
がその親水基のみによってセラミック表面と化学的に結
合させられることによって形成されるため、薄く且つ均
一となって撥水親油膜が設けられることによる細孔の目
詰まり等は生じず、透過流束が低下させられない。更
に、撥水親油膜はセラミック表面に化学的に結合させら
れるため、その結合が強固なものとなって剥離し難く、
高い透過流束が長時間に亘って維持されるのである。
【0027】これに対して、本願出願人が先に出願した
特願平5−337949号に開示した、セラミックフィ
ルタ12に撥水親油膜を形成せず、予めセラミックフィ
ルタ12に油を含浸させて油水混合液を循環させること
により油水分離を行う方法では、本実施例と同様に水分
含有率の充分低い油を回収することができるものの、セ
ラミックフィルタ12は通常親水性を有しているため、
含浸された油は次第に油水混合液中の水に置換され、油
の透過を阻害することとなる。そのため、前記の油水
混合液(すなわち含水率10 vol%程度の灯油)から灯
油を分離する場合の透過流束は、上記従来の油水分離装
置では、図2に一点鎖線で示される従来例との符号を
付した実線(本実施例)との対比から明らかなように、
運転開始時においては本実施例よりも高い透過流束が得
られるが、長時間に亘って油水分離装置を運転すると次
第に透過流束が低下して更には透過流束が殆ど0とな
り、充分に高い濾過効率が得られないのである。
【0028】図3は、上記の運転方法において所定の時
間間隔(例えば1時間毎すなわち図の矢印に示す時点)
で逆洗を行った場合に、前記の油水混合液を分離する
際の透過流束を本実施例および従来例について示す図で
ある。この逆洗は、例えば循環ポンプ20を停止すると
共に濾液出口バルブ36を閉弁し、三方弁42を送液ポ
ンプ44と逆洗路50とが接続される位置に切り換える
共に逆洗バルブ48を開弁して、10乃至15秒間送液
ポンプ44を運転することにより、第2室34内の圧力
を第1室14よりも高め、濾液タンク40内の油を第2
室34から第1室14へ逆流させることによって行われ
る。
【0029】図3に実線で示されるように、本実施例に
よれば、低下(僅かな量であるが)していた透過流束が
逆洗を行うことによって回復させられ、一層高い透過流
束が維持されることとなる。すなわち、セラミックフィ
ルタ12に撥水親油膜が形成されているため、細孔内に
進入した水は逆洗によって容易に油に置換されて除去さ
れるのである。そのため、上記逆洗処理を所定の時間間
隔で実施することにより、一層長時間に亘って高い透過
流束が得られる。
【0030】これに対して、図3に一点鎖線で示される
セラミックフィルタ12に撥水親油膜を形成せず油含浸
を行った従来の油水分離方法では、逆洗を行っても透過
流束が回復させられない。すなわち、上述のようにセラ
ミックフィルタ12は親水性を有しているため、セラミ
ックス表面の油が一旦水に置換されると、その水を油で
洗い流すことは困難となるのである。そのため、従来の
油水分離方法においては、透過流束がある程度低下した
時点でセラミックフィルタ12を取り外し、交換或いは
加熱して水分を除去することが必要となって、結局高い
濾過効率は得られないのである。
【0031】また、本実施例によれば、油水分離用濾過
器10に、高強度、高剛性、高硬度で多孔質のセラミッ
クフィルタ12が用いられているため、濾過圧力を比較
的高いものとすることができて、油水混合液の粘性が高
い場合にも比較的高い透過流束で油水分離を行うことが
可能である。しかも、セラミックフィルタ12は耐薬品
性に優れているため、水や油による変質が少なく長寿命
が得られると共に、必要に応じて薬品による膜洗浄を行
うことが可能である。また、耐熱性にも優れているた
め、油水混合液を高温で循環させることによりその粘性
を低くして透過流束を一層高くすることが可能であり、
また、油等の有機物質による目詰まりが生じた場合には
高温で加熱して目詰まりを除去した後に再度使用するこ
とが可能である。なお、薬品処理或いは加熱処理を行っ
た場合には、前述のようにして撥水親油膜を再度設ける
必要がある。
【0032】また、油水分離装置は、所謂クロスフロー
方式で運転されて、油水混合液が高速でセラミックフィ
ルタ12の表面56を流されるため、その近傍で液中の
水の濃度が高くなる濃度分極が抑制され、安定した濾過
を行うことができる。しかも、油水混合液中に切削屑等
の固形分が含まれている場合等にも、油水混合液の流通
によって表面56に剪断力が働くため目詰まりが生じ難
く、このような場合にも高い透過流束が長時間に亘って
維持される。
【0033】また、本実施例においては、逆洗バルブ4
8および逆洗路50が備えられているため、前述のよう
に定期的に油を第2室34に送って逆洗を行うことでセ
ラミックフィルタ12の目詰まり除去が行われ、高い濾
過流束が長期間に亘って維持される。そのため、例え
ば、この逆洗処理が所定の時間間隔で実施されるように
装置を自動制御すれば、長時間の無人運転も可能であ
り、高い作業効率が得られる。
【0034】なお、図2に示されるように、および
の油水混合液を分離する場合の透過流束が、の油水混
合液を分離する場合に比較して低いものとなっている。
の油水混合液はの油水混合液と同様に灯油に水が含
まれたものであるが、含水率はが10 vol%であるの
に対して20 vol%と高いため、また、の油水混合液
は比較的粘度が高い研削液であるため、何れもの油水
混合液を分離する場合に比して透過流束が低下したもの
であるが、そのことを除けば、前述のようにの場合と
同様な低い含水率の油が回収される。すなわち、本実施
例によれば、透過流束は低下するものの比較的高い含水
率の油水混合液の分離が可能であり、また、比較的高粘
度の油水混合液の分離も可能である。
【0035】また、比較的含水率の高い油水混合液を分
離する場合には、液中の水の一部がセラミックフィルタ
12を通って第2室34に透過することとなるが、セラ
ミックフィルタ12を透過する速度は比較的遅いため、
透過した水は直ちに濾液路38から回収されることな
く、油と分離されて濾過器10の下部(すなわち、水抜
き路54が接続されている部分)に溜まることとなる。
そのため、所定の時間間隔で水抜きバルブ52を開いて
第2室34から水を戻し路30に排出することにより、
比較的含水率の高い油水混合液を分離する場合にも、濾
液タンク40には含水率の低い油のみが回収される。
【0036】図4は、本発明の他の実施例に用いられる
油水分離装置の構成を示す図である。本実施例において
は、供給路22には、循環ポンプ20と原液タンク24
との間の位置において、三方弁60が設けられて油導入
バルブ62を備えた油導入路64を介して油タンク66
が接続されている。上記三方弁60は、循環ポンプ20
を、原液タンク24或いは油導入路64に択一的に接続
するものである。また、濾液排出口32と濾液路38と
の間にはガラス管68が備えられており、濾液路38へ
の油の到達が確認できるようにされている。
【0037】上記のように構成された油水分離装置によ
って油水混合液から含水率の低い油を回収する方法を以
下に説明する。先ず、三方弁60により循環ポンプ20
に油導入路64が接続された状態で、供給バルブ18、
濾液出口バルブ36および油導入バルブ62を開弁し、
戻しバルブ28および逆洗バルブ48を閉弁状態とす
る。次いで循環ポンプ20を運転すると、油タンク58
内の油が濾過器10に送られる。このとき、戻しバルブ
28が閉じられているため、セラミックフィルタ12に
は比較的高い圧力が加えられ、その濾過膜の細孔に油が
含浸される。この含浸は、前記ガラス管68内に油が到
達するまで行われ、これにより、確実に濾過膜に油が含
浸される。本実施例においては、この工程が油含浸工程
に相当する。その後、戻しバルブ28を開弁すると共に
三方弁52を循環ポンプ20が原液タンク24に接続さ
れるように切り換えると、前述の実施例と同様にして油
水混合液が循環させられ、濾液路38から含水率の低い
油が回収される。
【0038】上記の油水分離装置によって前記実施例と
同様な油水混合液の油水分離を行った結果を前記図2に
破線で示す。図から明らかなように、本実施例によれ
ば、油水分離開始時においては、前記従来の撥水親油膜
を形成せず油含浸のみを行った場合と同様な高い透過流
束が得られ、且つ、長時間に亘って油水分離を行った場
合にも透過流束の低下が比較的小さく前記実施例と比較
しても一層高い透過流束が維持される。
【0039】すなわち、上記油水分離装置においては、
原液タンク24が三方弁60によって供給路22に接続
されており、油水混合液の流通(すなわち濾過)に先立
って濾過器10に油が供給されることによってセラミッ
クフィルタ12に油が含浸され、細孔内が油で満たされ
る。そして、その後に濾過が行われるため、細孔内を油
が一層透過し易く、水が一層透過し難くなって、一層高
い透過流束が得られる。しかも、本実施例においては、
撥水親油膜を設けたセラミックフィルタ12に油含浸を
行っているため、単に油含浸を行った前記従来の油水分
離方法に比較して、セラミックス表面の油が水と置換さ
れ難い。そのため、高い透過流束が長時間に亘って維持
されるのである。前記実施例においては、セラミックス
表面に撥水親油膜が形成されていても比較的大きな細孔
には水が侵入しやすいため、油が含浸されている場合に
比較して低い透過流束しか得られなかったのである。
【0040】以上、本発明の一実施例を図面を参照して
詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施され
る。
【0041】例えば、前述の実施例においては、アルミ
ナ質セラミックスから成るセラミックフィルタ12を用
いたが、他のセラミックス製の濾過膜が用いられても良
い。セラミックスからなるフィルタは、高い剛性を備え
ているため高い濾過圧力をかけることが可能であり、ま
た高い耐薬品性を備えているため薬品洗浄が容易であ
り、また、高い耐熱性を備えているため原液の温度を上
げて粘性を低下させて濾過速度を向上させたり、或いは
1000℃以上の温度で加熱することにより有機性の目
詰まりの焼却除去が可能である。上記セラミックスの材
料としてはアルミナ、ジルコニア、コージェライト、ム
ライト等の酸化物セラミックスが特に好ましく、多孔質
に形成されていれば一層好ましい。
【0042】また、フィルタの形状は、実施例で示し
た、円筒状、或いは軸方向に複数の貫通孔を備え、それ
ら貫通孔の内周面に濾過膜がそれぞれ設けられた円柱状
の所謂マルチタイプの他に、板状、ハニカムタイプ等が
使用される。マルチタイプおよびハニカムタイプは単位
体積当たりの濾過面積が比較的大きく、装置を小型化す
ることが可能である。なお、濾過膜の細孔径は、油水分
離を効率的に行うためには0.05〜3μm程度である
ことが好ましいが、0.08〜1μm程度であれば一層
好適である。また、セラミックフィルタ12は、一般に
比較的大きい径の細孔を有する支持体と上記大きさの細
孔を備えた濾過膜から構成されるが、必要に応じてそれ
らの中間の細孔径を有する中間層が設けられていても良
い。
【0043】また、撥水親油膜を形成するためのカップ
リング剤は、実施例で示した有機官能基としてカルボキ
シを有するチタネート系カップリング剤の他に、有機官
能基として-P(OH)(OR)2 等の亜リン酸基,-O-PO(OH)-O-
PO(OR)2 等のピロリン酸基,-O(CH2)2NH(CH2)2NH2 等の
アミノ基,或いは-O3S-C6H4-C(CH3)2-C6H5等を有するチ
タネート系カップリング剤や、アルミネート系カップリ
ング剤、シラン系カップリング剤等も用いられ得る。す
なわち、セラミックス等の表面と化学的に結合させられ
る親水基と、油との濡れ性が良い親油基とを備えたもの
であれば種々のカップリング剤が使用可能である。
【0044】また、本発明の油水分離装置は種々の油水
混合液の分離に適用され、例えばエマルジョン化した油
水混合液の分離にも用いられ得る。その場合、水および
油の液体粒子の大きさは、濾過膜の細孔径の大きさより
も小さくされていても良い。
【0045】また、図2に示されるように油含浸工程が
実施された場合には一層高い透過流束が得られるため、
実施されることが好ましいが、油含浸工程が実施されな
い場合にも比較的高い透過流束が得られるため、必ずし
も行われなくとも良い。なお、油含浸工程が実施される
場合に、濾過膜に油を含浸するためには、必ずしも前述
の実施例のように油水分離装置内に油導入手段を設けな
くとも良く、例えば、濾過に先立ってセラミックフィル
タ12を油中に適当な時間保持して油を含浸させても良
い。本発明によれば、含浸された油は水と置換され難い
ため、油水分離に際して濾過器10に組み込む前に予め
油を含浸させるのみで充分な効果が得られるからであ
る。
【0046】また、前述の実施例においては、本発明の
油水分離用濾過器10がクロスフロー式の油水分離装置
に適用された場合を説明したが、その他の形式の油水分
離装置にも本発明は適用され得る。但し、クロスフロー
式であれば、濾過ケークの形成が比較的小さくなるとと
もに、濾過膜近傍の油水混合液中の水の濃度が高くなる
濃度分極が抑制されるため、最も好ましい。
【0047】また、油含浸手段を油水分離装置に備える
場合に、油タンク66内に備える油は、濾液の純度を高
く維持するためには、濾過対象となる油と同じものであ
ることが望ましい。
【0048】また、前述の第2実施例においては、濾過
膜の細孔内を油で満たしたが、必ずしも完全に含浸させ
なくとも良く、例えば濾過膜の第1室14側の表面に油
膜が形成された状態でも良い。
【0049】また、油の含浸の確認のためのガラス管6
0は必ずしも用いなくとも良く、例えば、油含浸工程を
一定時間とすることで含浸状態を管理しても良い。
【0050】また、逆洗バルブ48、逆洗路50等の逆
洗手段は必ずしも設けられなくとも良い。
【0051】その他、一々例示はしないが、本発明はそ
の主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である油水分離装置の構成を
示す図である。
【図2】図1の油水分離装置で油水分離を行った場合の
透過流束の時間変化を示す図である。
【図3】図1の油水分離装置で油水分離を行う際に所定
時間間隔で逆洗を行った場合の透過流束の変化を示す図
である。
【図4】油水分離装置の他の例の構成を示す図である。
【符号の説明】
10:油水分離用濾過器 12:セラミックフィルタ(濾過膜) 14:第1室{22:供給路,30:戻し路}(循環経
路) 34:第2室 56:セラミックフィルタ12の表面{60:三方弁,
62:油導入バルブ,64:油導入路,66:油タン
ク}(油導入手段)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 寄田 浩 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内 (72)発明者 田口 久富 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多数の細孔を有するセラミックスから成
    る濾過膜を備えて油水混合液から水分含有率の低い油を
    回収するために用いられる油水分離用濾過器であって、 前記濾過膜の少なくとも前記油水混合液に接する表面
    に、カップリング剤から成る撥水親油膜が形成されてい
    ることを特徴とする油水分離用濾過器。
  2. 【請求項2】 濾過膜によって分離された第1室および
    第2室を有する請求項1に記載の油水分離用濾過器を用
    いて、油水混合液から水分含有率の低い油を回収するた
    めの油水分離方法であって、 前記油水混合液を所定圧力で前記濾過器の第1室を通る
    循環経路内で前記濾過膜表面に沿って循環させる循環工
    程と、 前記水分含有率の低い油を前記濾過膜を通して該濾過器
    の第2室へ濾過させる濾過工程とを、含むことを特徴と
    する油水分離方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105413237A (zh) * 2015-12-24 2016-03-23 海南科技职业学院 一种油水分离膜
CN110354535A (zh) * 2019-08-02 2019-10-22 瑞安市滤王汽车配件有限公司 一种可将水滤出的油箱漏斗
JP2020189262A (ja) * 2019-05-21 2020-11-26 アクア化学株式会社 劣化リンス水再生装置および洗浄装置

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