JPH0851977A - ブプレウルム属植物の細胞への外来遺伝子の導入方法 - Google Patents

ブプレウルム属植物の細胞への外来遺伝子の導入方法

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JPH0851977A
JPH0851977A JP6206087A JP20608794A JPH0851977A JP H0851977 A JPH0851977 A JP H0851977A JP 6206087 A JP6206087 A JP 6206087A JP 20608794 A JP20608794 A JP 20608794A JP H0851977 A JPH0851977 A JP H0851977A
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cells
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JP6206087A
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Hiromichi Morikawa
弘道 森川
Takeshi Kusakari
健 草苅
Mineyuki Yokoyama
峰幸 横山
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Shiseido Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 植物、特にブプレウルム(Bupleuru
)属に属する植物細胞内に外来遺伝子をパーティクル
ガンを使用して導入するに際し、被処理細胞を予め飢餓
処理することを特徴とする遺伝子導入方法。 【効果】 導入された外来遺伝子の宿主細胞内での発現
効率が高められる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ブプレウルム(Bup
leurum)属植物の細胞への外来遺伝子の導入方法
に関する。より具体的には、本発明はパーティクルガン
法による外来遺伝子の一定の導入効率を維持したまま、
導入された遺伝子発現効率を向上させる改良方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】植物細胞へ外来遺伝子を直接導入するの
にパーティクルガン、すなわち、圧縮空気圧式パーティ
クルガン(pneumatic particle g
un)装置が使用できることは当該技術分野で周知であ
る(例えば、Kodama ら、Transgenic
Research 、147−152ページ、19
93、参照)。例えば、アグロバクテリウム・リゾゲネ
ス(Agrobacterium rhizogene
)を遺伝子の導入媒体として使用する間接導入方法
は、双子葉植物には適用できるが裸子植物や単子葉植物
には適用できないことなど、適用可能な植物種を選ぶの
に対し、パーティクルガンを使用する外来遺伝子の特定
細胞への導入方法(以下、単に「パーティクルガン法」
ということもある)は、植物種を始め、細胞の起源に左
右されない点で注目を集めている。
【0003】そこで、既に、外来遺伝子の導入にパーテ
ィクルガン法を利用する各種試みがなされている。上述
の学術論文の他にも、例えば、タバコBY−2細胞にパ
ーティクルガン法を適用した場合、遺伝子(DNA)を
まぶした金粒子の細胞核内への導入効率と導入された遺
伝子の発現頻度ともある程度満足できる結果が得られて
いる報告もある(例えば、Morikawaら、App
l.microbiol.Biotechnol.,
、320−322ページ、1989、参照)。
【0004】しかし、細胞の起源により、遺伝子の前記
導入効率またはその発現効率のいずれか、特に発現効率
について満足できない場合がある。このような外来遺伝
子の発現効率に影響を及ぼす要因として、培地の浸透圧
(高張)処理などの細胞に対する生理条件が挙げられて
いるが、パーティクルガン処理に際して、被処理細胞を
浸透圧調節だけでは、必ずしも十分な成果が得られてい
ない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、パーテ
ィクルガン法で外来遺伝子を被処理細胞核内へ導入する
際に、その導入された遺伝子の発現効率の低い細胞に対
し、かかる発現効率をも高める手段を提供することが望
まれるであろう。
【0006】従って、本発明の目的は、パーティクルガ
ン法による一定細胞への外来遺伝子の導入効率を維持し
たまま、導入された遺伝子の発現効率を高めることので
きる、パーティクルガン法における改良方法を提供する
ことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ブプレウ
ルム属植物について前記課題を解決すべく、細胞の処理
条件を検討してきたところ、被処理細胞の処理条件のう
ち、処理培地の、特に栄養条件を制限することによっ
て、トランスジェニック細胞における外来遺伝子の高発
現率が達成できることを見い出した。
【0008】従って、本発明によれば、パーティクルガ
ンを使用してブプレウルム属植物の細胞内に外来遺伝子
を導入するに際し、被処理細胞を予め飢餓処理すること
を特徴とする遺伝子の導入方法が提供される。
【0009】本発明で使用できるパーティクルガンは、
型式を問うことなく、既知のパーティクルガン装置はも
とより、それらの改良した任意の装置が使用できる。例
えば、本発明者らによって開発された、図1に記載され
るような圧縮空気圧式装置を好適に使用することができ
る。
【0010】本発明にいうブプレウルム(Bupleu
rum)属に属する植物の具体的なものとしては、根が
サイコ剤として使用されるミシマサイコ(Bupleu
rum falcatum L.)を始め、ブプレウル
ム・チャイニーズ(Bupleurum Chines
)DC.、ブプレウルム・コマロビアナム(Bupl
eurum Komarovianum)Linc
z.、ブプレウルム・スコルカツォネラフオリウム(
upleurum scorzoneraefoliu
)willd.などが挙げられる。
【0011】以下、本発明をミシマサイコを参照しなが
ら説明するが、当業者であれば、以下の説明から他のブ
プレウルム属植物の細胞についてもミシマサイコと同様
に本発明の効果を確認できるであろう。
【0012】本発明では、上述のような細胞がパーティ
クルガンによる外来遺伝子の導入に先立って、飢餓処理
される。ミシマサイコの細胞または組織は、通常の植物
の細胞、組織の培養に使用できる培地を若干改変して培
養されている。このような培地には、多量必須元素と微
量必須元素、さらに水、無機塩および糖類、必要により
ビタミンなどの有機物、オーキシン、サイトカイニンな
どの植物成長調節物質などが含められる。より具体的
に、リンスマイヤー・スクーグ(Linsmeier−
Skoog)培地(LS培地)を利用する場合を例にと
ると、ショ糖が3重量%、2,4−Dが0.2mg/lと
なるように含められたLS培地(pH5.8)を標準培
地として使用する。
【0013】ミシマサイコの被処理細胞は、適当な植物
体切片から誘導したカルスを上記標準培地で継代培養
し、懸濁培養細胞を得て、本発明による飢餓処理に付す
ることによって調製することができる。飢餓処理の培地
条件は、細胞の種類および通常の継代培養に使用する培
地組成によってある程度変動するので限定されるもので
ない。ところで、ミシマサイコの細胞に対し、上記標準
培地を使用する場合には、その培地成分から、窒素源、
炭素源、リン酸およびカリのいずれか一種、またはそれ
らの任意の組み合わせを除去した培地を使用する。
【0014】ミシマサイコの場合、窒素源、炭素源、リ
ン酸およびカリを同時に欠く培地での飢餓処理が、特に
好ましい。処理すべき植物細胞に関し、それぞれ最適の
飢餓処理条件の選定は後述するミシマサイコについての
具体例を参考すれば、当業者には容易であろう。従っ
て、本発明にいう飢餓処理は、標準培地から窒素源、炭
素源、リン酸およびカリのすべてを除去した培地による
処理に限定されないものでなく、標準培地から何等かの
成分を除去することにより本発明の目的が達成できるす
べての処理条件が包含されることが理解できるであろ
う。
【0015】本発明により被処理細胞に導入される外来
遺伝子は、その細胞内への導入および発現が有意な作用
効果を奏するものであれば遺伝子の機能を問うものでな
いが、例えば、有用産物をコードする遺伝子、そのよう
な遺伝子の発現を調節する遺伝子などが挙げられる。以
下に説明する遺伝子の導入例は、本発明の効果を例証す
るものであって、本発明にいう外来遺伝子がこれらに限
定されるものでない。
【0016】従って、本明細書では、遺伝子の導入効率
および発現効率を容易に確認することができるβ−グル
クロニダーゼ(GUS:EC 3.2.1.31.)をコー
ドする遺伝子の導入例について説明する。本発明方法に
より導入する遺伝子は、それらが導入される宿主細胞内
で自律増殖できるか、またはゲノムへ安定に組み込まれ
る状態のものを使用するのが好ましい。ミシマサイコに
由来する細胞へのGUS遺伝子を導入するには、その遺
伝子を有するベクターの状態で導入する。このようなベ
クターとしては、市販のプラスミドpBI 221(C
lon tech Co.)を使用するのが好都合であ
る。このプラスミドでは、GUS遺伝子はカリフラワー
モザイクウイルス35Sプロモーターとノパリン合成酵
素のターミネーターの制御下にある。
【0017】このような外来遺伝子のパーティクルガン
法による導入は、例えば、図7に示すような装置を使用
して、Iida ら、Theor.Appl.Gene
t.(1990)80、813−816ページに記載の
方法に従い、濾紙上に均一に広げた飢餓処理細胞に、導
入すべき遺伝子DNAを塗布した金粒子を導入すること
によって実施する。こうして、外来の遺伝子が導入され
た細胞を適当な培地で後培養し、導入された遺伝子の発
現をその産物のアッセイによって、目的の遺伝子の導入
効率および発現効率を評価することができる。
【0018】
【実施例】以下、本発明を具体例によってさらに詳細に
説明する。
【0019】懸濁培養細胞の調製 無菌的に、発芽、生育させた、ミシマサイコ(Bupl
eurum falcatum L.)の葉切片を2,
4−D 1mg/l、カイネチン 0.1mg/lを含
むLS寒天培地上で培養して、カルス誘導を行ない、
2,4−D 0.2mg/lを含むLS液体培地(標準培
地)に懸濁し、暗所下に130rpm、26℃で振とう
培養した。この液体懸濁培養細胞を1週間毎に1/10
量を新たな培地に移して継代を行なった。こうして、継
代培養した4日目のものを飢餓処理に供する。
【0020】 (LS寒天培地組成) (g/l) NH4NO3 1650 KH2PO4 170 NH4NO3 600 KNO3 1900 CaCl2・2H2O 440 MgSO4・7H2O 370 FeSO4・7H2O 27.8 Na2EDTA 37.3 H3BO3 6.2 MnSO4・4H2O 22.3 ZnSO4・7H2O 8.6 Na2MoO2・2H2O 0.25 CuSO4・5H2O 0.025 CoCl2・6H2O 0.025 KI 0.83 ミオイノシトール 100 チアミン−HCl 0.4 (以上単位mg/l) ショ糖 30g/l 0.8パーセント寒天 (pH5.8に調節)飢餓処理 飢餓処理には、上記標準培地から窒素源(NH4NO3
よびKNO3)を除いた培地(以下、「−N」とい
う)、リン酸源(KH2PO4)を除いた培地(以下、
[−P]という)、炭素源(ショ糖)を除いた培地(以
下、[−C]という)、窒素源およびリン酸源(NH4
NO3、KNO3およびKH2PO4)を除いた培地(以
下、「−NP」という)、窒素源、リン酸源および炭素
(NH4NO3、KNO3、KH2PO4およびショ糖)を
除いた培地(以下、[−NPC]という)を用いた。お
のおの培地でのカリの欠如分はKClで補填した。ま
た、一部の実験は、KClで補填してない培地それぞれ
(「−NK」、「−PK」、「−CK」、「−NP
K」、「−NPCK」という)を用いた。
【0021】懸濁培養細胞の処理は、継代後4日目の懸
濁培養細胞を孔径50μmのナイロンメッシュを用いて
濾過し、生重量2gの細胞を飢餓処理培地あるいは標準
培地(比較)20mlに移植して、振とうあるいは静置
の条件下、26℃にて1〜5日間培養した。
【0022】遺伝子の導入 上記の培養条件下(2g/20ml)で培養した懸濁培
養細胞の1mlを遺伝子導入に用いた。一部の実験で
は、各種の培地から細胞をメッシュで濾過して集め、生
重量(100mg)を揃えて遺伝子導入を行った。
【0023】パーティルガンは、図7に示すような圧縮
空気式装置を使用し、(Iida(1990)の方法を
簡単に説明(Iida ら、Theor.Appl.G
enet.(1990)80、813−816ページ、
参照)、濾紙上に均一に広げた細胞(細胞層直径3.5
cm)にプラスミドpBI 221をコーティングした
金粒子を導入した。使用した材料および条件は次のとお
りであった。
【0024】金粒子・・・・・真球状、平均直径1.1
μm((株)徳力本店製); 金粒子量・・・・0.2mg/projectile; DNA量・・・・4μg/mg Au; 加速圧力・・・・200kg/cm2; ショット回数・・1回; 試料−ストッパー間の距離・・・10cm; 減圧・・・・・・60mmHgGUSアッセイ GUS遺伝子の発現はX−Glucを基質として組織化
学的方法により検出した。遺伝子導入後、細胞を濾紙ご
と、培地2mlで湿らせた2枚の濾紙上に移し、ペトリ
シャーレで、暗所で26℃、24時間培養した。X−G
lucを含む反応液を添加し、暗所下で、37℃、24
時間インキュベートし、顕微鏡下でGUS遺伝子を発現
している細胞塊からなるブルースポットの数を計測した
(ブルースポットはその大小に関わらず1つとみなし
た)。
【0025】導入された金粒子の細胞内における局在部
位の観察 細胞内に導入された金粒子の位置の決定は、Yamas
hita ら、Plant Physiol.(199
1)97、829−831ページの方法に従った。遺伝
子導入直後の細胞を培地2〜3mlで15ml遠心管に
回収し、遠心により沈殿させ、エタノール/酢酸(3:
1)で固定した(4℃、24時間以上)。細胞をスライ
ドグラス上にとり、余分な固定液を濾紙で吸い取り、酢
酸オルセインを加え、カバーグラスをかけ染色した(室
温、2〜3分)。余分な染色液を除き、ワラップでカバ
ーグラスの周囲を封じて顕微鏡で観察した(X100
0)。金粒子は黒い点として観察されるため、フォーカ
スを変えることにより、細胞内に金粒子が導入された位
置を決定した(1000細胞以上)。
【0026】結果 (1) 遺伝子導入前の飢餓処理の効果 5種類の飢餓処理培地と標準培地で細胞を1日あるいは
3日間振とう培養し、遺伝子発現に及ぼす効果を検討し
た。結果を図1に示す。図1より、NHNOおよび
KNO3(−NK)、KH2PO4(−PK)、NH4NO
3、KNO3およびKH2PO4(−NPK)を除いた飢餓
培地ではGUSの発現を示すブルースポットの数は、1
日、3日とも標準培地と殆ど変わらず、10〜20であ
ることがわかる。これに対し、ショ糖(−C)あるいは
NH4NO3、KNO3、KH2PO4、ショ糖(−NPC
K)を除いた培地では1日処理により、標準培地の値の
2〜3倍に上昇した。3日処理では−C培地では1日処
理とは殆ど変わらなかったが、−NPCK培地では1日
目のそれよりさらに約4倍上昇した(標準培地での10
倍以上)。このことから、窒素源、炭素源、リン酸源お
よびカリ源をすべて除いた培地での飢餓処理が遺伝子発
現(遺伝子導入と発現)に最も顕著な効果を示すことが
分かった。
【0027】(2) 遺伝子導入後の培地の検討 飢餓処理培地(−NPCK)と標準培地で細胞を1日あ
るいは2日間振とう培養し、遺伝子導入後、−NPCK
培地あるいは標準培地に戻し、24時間培養後にGUS
アッセイを行った。その結果を図2に示す。図2より、
−NPCK培地で1日間飢餓処理し、遺伝子導入後、標
準培地に戻すものでブルースポットは最も多く観察され
た(平均100)。この結果は、他の組み合わせの約8
〜9倍高い値であった。2日間処理では遺伝子導入前後
いずれの培地で培養した場合でも、発現効率は低い値を
示した。以上のことより、遺伝子発現効率の上昇は遺伝
子導入前に−NPCK培地で処理し、導入後に標準培地
に戻すことにより、引き起こされることが示された。
【0028】(3) 遺伝子導入前の培養方法の検討 前培養方法[振とう培養(t)と静置培養(s)]の検
討を行ったところ、1〜3日間標準培地での培養では両
者の間で遺伝子発現効率に顕著な差は見られず、ブルー
スポットの数は20−40であった(図3参照)。図3
より、−NPCK飢餓培地での1日培養でも、両者の間
で有為な差は見られなかったが、2日、3日の前培養に
おいては、振とう培養は静置培養よりも高い値を示し
た。すなわち、同じ−NPCK飢餓培地で処理する場合
でも、振とう培養は、静置培養より高い効果を示すこと
が分かった(2日では約3倍、3日では約10倍のブル
ースポット数の上昇が見られた)。
【0029】よって、以下の実験では、特記しない限
り、すべて振とう培養を行った。
【0030】(4) 飢餓処理の効果の可逆性 −NPK、−NPCK培地および標準培地で細胞を24
時間振とう培養し、標準培地に戻して0.8、22時間
後に遺伝子導入を行い、標準培地で24時間培養後、G
USアッセイを行った。その結果を図4に示す。図4よ
り、−NPCK処理では飢餓処理直後に遺伝子発現効率
は最も高く、ブルースポットの数は平均130であっ
た。その後、標準培地に戻す時間が長くなるにつれ、ブ
ルースポット数は、次第に減少し、8時間で平均50、
22時間では12の値を示した。それに対し、−NPK
培地および標準培地で培養したものでは、いずれの条件
でもブルースポット数は約20であった。このことよ
り、−NPCK飢餓処理による遺伝子発現効率の上昇の
効果は可逆的であることがわかった。すなわち、−NP
CK飢餓処理により引き起こされる細胞の生理状態の変
化は、細胞を標準培地に戻し、培養することで打ち消さ
れ、外来遺伝子の発現はもとの低い状態に戻るものと考
えられる。
【0031】(5) 飢餓処理日数の外来遺伝子の発現
に及ぼす影響 5種類の飢餓培地と標準培地で細胞を1−5日間振とう
培養し、遺伝子発現に及ぼす効果を検討した。結果を図
5に示す。図5より、−NK、−PK、−NPK培地お
よび標準培地での遺伝子発現効率に差はなく、いずれの
処理日数でも、ブルースポット数は10以下であった。
−Cと−NPCK培地で培養したものは、標準培地で培
養したものよりブルースポットは多く観察された。−C
培地では、1−4日の処理の間、殆ど同じ値(30−7
0)を示したが、5日間の処理では減少した。−NPC
K培地では、3−4日間で、最も多くのブルースポット
が観察された(約300)が、2日、5日間では少し下
がり、約200で、1日では効果は最も少なく、約40
であった。以上のことより、−NPCK培地による3−
4日間の飢餓処理が最も効果的であることが分かった。
【0032】(6) 遺伝子導入に用いる細胞の生重量
を揃えた場合の飢餓処理の効果 飢餓処理培地を用いる場合、細胞の増殖速度が異なるた
め、導入に用いる細胞量の影響を考慮する必要がある。
そこで、細胞の生重量(100mg)を揃えた条件下
で、遺伝子導入を行った。結果を図6に示す。
【0033】図6より、標準培地では、これまでと同様
にGUS遺伝子の発現効率は低く、ブルースポット数は
34以下であった。それに対し、−NPCK培地では1
日処理で、対照での85倍、2日間処理では対照の23
倍であった。3日と4日目では、ブルースポット数は減
少し、それぞれ対照の3倍および同程度であった。以上
のことより、同量の細胞に遺伝子導入した場合、1から
2日間−NPCK培地による飢餓処理が最も効果的であ
ることが分かった。
【0034】(7) 飢餓処理の金粒子の導入効率に及
ぼす効果 前述のように、外来遺伝子の発現は、−NPCK飢餓培
地による2日間の処理で、著しく上昇し、2日間の標準
培地での培養の23倍、0日対照での132倍となっ
た。−NPCK培地による飢餓処理は、遺伝子導入効率
(金粒子の導入効率)に影響するのか、導入後の転写あ
るいは翻訳レベルに影響するのかを調べるため、2日間
−NPCK培地と標準培地で培養した場合の細胞内各部
位への金粒子の導入効率を調べた。結果を表1に示す。
【0035】 表1 ミシマサイコの細胞を標準培地と飢餓培地でそれぞれ 培養した場合の遺伝子導入頻度と発現頻度の比較 頻度(総金粒子当りの%) 培地(培養期間:日) −NPCK 2 標準 2 標準 0 GUS遺伝子の発現 0.11 0.005 <0.001 対照に対する割合 132 23 1 細胞への導入 9.4 9.8 11.1 核内への導入 2.8 2.1 1.7 細胞質への導入 6.6 7.7 9.4 各条件について1000個を超える細胞をカウントし
た。
【0036】細胞内への金粒子の導入効率は2日間飢餓
培地で培養したもの、2日間標準培地で培養したもの、
0日の対照、いずれもほぼ同じで、9.4%、9.8%、
11.1%であった。核内への金粒子の導入効率(核内
への遺伝子の導入効率)もいずれの場合もほぼ同じで、
それぞれ2.8%、2.1%、1.7%であった(細胞質
内への導入効率もほぼ同じである)。すなわち、飢餓処
理は、導入される金粒子の細胞内における局在性には、
影響を及ぼさないことが分かった。このことから、−N
PCK培地による飢餓処理で遺伝子発現効率が著しく上
昇することは、核内への遺伝子導入効率が高くなるので
はなく、遺伝子が核内に導入された後、細胞の生理状態
が変わり、遺伝子発現効率が上昇するものと結論づけら
れる。
【0037】
【発明の効果】本発明は、ブプレウルム属に属する植物
の細胞に外来遺伝子を導入する改良されたパーティクル
ガン法を提供できる。従来法に比べて改良される点は、
導入遺伝子の発現頻度が顕著に増大することにある。
【図面の簡単な説明】
【図1】遺伝子導入前の飢餓処理培地の種類による外来
遺伝子の発現頻度を示すグラフである。
【図2】遺伝子導入後の生育培地の種類による外来遺伝
子の発現に対する影響を示すグラフである。
【図3】遺伝子導入前の飢餓処理における振とう培養と
静置培養の外来遺伝子発現に対する影響を示すグラフで
ある。
【図4】外来遺伝子発現に対する飢餓処理効果の可逆性
を評価する実験結果を示すグラフである。
【図5】外来遺伝子発現に対する飢餓処理日数の影響を
示すグラフである。
【図6】遺伝子導入に使用する細胞の生重量を揃えた場
合の飢餓処理の効果を示すグラフである。
【図7】本発明で使用するパーティクルガン装置の構成
図である。
【符号の説明】
1・・・・ストッパー 2・・・・試料細胞 3・・・・プラスチックプロジェクタイル 4・・・・金粒子 5・・・・空気室 6・・・・プランジャーポンプ 9・・・・トリガー 11・・・バルブA 13・・・バルブB 15・・・空気取込み口

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パーティクルガンを使用してブプレウル
    ム(Bupleurum)属に属する植物の細胞内に外
    来遺伝子を導入する方法であって、 被処理細胞を予め飢餓処理したことを特徴とする遺伝子
    の導入方法。
JP6206087A 1994-08-09 1994-08-09 ブプレウルム属植物の細胞への外来遺伝子の導入方法 Withdrawn JPH0851977A (ja)

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