【発明の詳細な説明】
p-アルキルスチレン/イソオレフィン官能化共重合体
並びにポリマーブレンドにおけるその用途 発明の分野
本発明は、イソオレフィンとp-アルキルスチレンの官能化共重合体、並びにポ
リマーブレンド調製の際の成分又は相溶化剤成分として当該官能化共重合体を使
用することに関する。関連技術の説明
イソブチレンのようなC4〜C7イソオレフィンと20モル%以下のイソプレン
のようなマルチオレフィンからなる共重合体(ブチルゴム)は周知の高分子材料
であって、その加硫物は他の多くのジオレフィン系エラストマーにみられない幾
つかの卓越した性質を示す。硬化ブチル及びハロゲン化ブチルエラストマーから
製造した物品は耐油・耐脂性に優れており、酸素分解及びオゾン分解に対する耐
性にも優れている。ブチルゴム加硫物は良好な耐摩耗性を示し、空気・水蒸気・
多くの有機溶剤に対する不透過性にも優れているだけでなく、耐老化性・耐直射
日光性も示す。これらの材料は、このよう諸性質をもっているので、水用ホース
、有機溶剤用ホース、建築部材、ガスケット部材、接着剤成分及び各種成形品の
部材などに応用するのに理想的な材料となり得る。
近年、新たな部類のハロゲン化ゴム弾性共重合体が発見されたが、それらはハ
ロゲン化ブチルゴムの性質の多くと同じ性質を示すが、耐オゾン性及び耐溶剤性
に一段と優れ、一段と容易に硬化し得る。この材料は、C4〜C7イソオレフィン
(イソブチレンなど)とパラ異性体含有量約80重量%以上(好ましくは90重
量%以上)のp-アルキルスチレンコモノマー(p-メチルスチレンなど)とのラン
ダム共重合体のハロゲン化生成物であり、スチレンモノマー単位に存在するアル
キル置換基の少なくとも幾つかがハロゲンを有しているものである。好ましい材
料は下記モノマー単位がポリマー鎖全体にランダムに配置されたものからなるイ
ソブチレン共重合体であることを特徴とする。
式中、R及びR′は各々独立に水素、低級アルキル、好ましくはC1〜C4アル
キルであり、Xは臭素又は塩素であり、当該共重合体はそれ以外の環上ハロゲン
もポリマー主鎖中のハロゲンも実質的に含んでいない。好ましくは、RとR′は
各々水素である。共重合体に存在するp-アルキルスチレンの最大60モル%まで
が上記(2)のハロゲン化構造を取り得る。
このような材料の中で最も有用なものは、p-メチルスチレン含有量約0.5〜
20モル%のイソブチレンとp-メチルスチレンのゴム弾性共重合体であって、ベ
ンジル環に存在するメチル置換基が臭素又は塩素原子(好ましくは臭素原子)を
最大約60モル%に至るまで含んでいるようなものである。このような共重合体
は実質的に均一な組成分布を有しており、当該ポリマーの95重量%以上が当該
ポリマーの平均p-アルキルスチレン含有量の10%以内のp-アルキルスチレン含
有量を有している。これらの材料は、さらに、分子量分布(Mw/Mn)が約5
未満、さらに好ましくは約2.5未満と非常に狭いという特徴も有しており、約
300000〜約2000000の範囲の好ましい粘度平均分子量と約2500
0〜約500000の範囲内の好ましい数平均分子量をもつ。
これらの共重合体は、ルイス酸触媒を用いて上記単量体混合物のスラリー重合
を行い、続いてハロゲン及びラジカルイニシエーター(例えば熱及び/又は光及
び/又は化学開始剤など)の存在下溶液中でハロゲン化(好ましくは臭素化)を
行うことによって製造し得る。
好ましい臭素化共重合体は一般に約0.1〜約5モル%のブロモメチル基を含
んでおり、その大半がモノブロモメチルであって、共重合体中に存在するジブロ
モメチル置換基の割合は0.05モル%未満に過ぎない。かかる共重合体、その
製造方法、その硬化やグラフトの方法又はかかる共重合体由来の官能化ポリマー
の製造方法については、米国特許第5162445号にさらに詳細に記載されて
いる。その全開示内容は文献の援用によって本願明細書の内容の一部をなす。
このような共重合体には芳香族ハロメチル基が存在するので、例えばハロゲン
化ブチルゴムの硬化に常用されている酸化亜鉛又はプロモーター添加酸化亜鉛硬
化系などの、様々な方法で簡単に架橋することができる。
上述の通り、ハロゲン化イソブチレン/p-メチルスチレン共重合体(以下、H
I-PMSと略す)系加硫物は、その優れた性質のゆえに、良好な耐熱老化性、
耐候性、耐オゾン性、液体・気体・上記に対する不透過性、エネルギー吸収、耐
屈曲亀裂性及び耐薬品性が重要とされる用途に著しく適している。そうした用途
としては、ベルト類、水又は有機液体用のホース類、ガスケット類、遮断層建築
用の部材、接着剤成分、各種成形品の部材、コンベヤーベルト用部材、空気バネ
用部材などが挙げられる。
HI-PMSのその他の用途としては、HI-PMSの有する上記諸性質の内の
1又はそれ以上を欠いた1種又はそれ以上の異種エラストマーを含んだ組成物の
性質を向上させるため及び/又はHI-PMS含有組成物に異種エラストマーの
有益な性質を付与するために、HI-PMSを異種エラストマーとのブレンド成
分として使用することが示唆されている。
例えば、ネオプレン(すなわちポリクロロプレン)ゴム(CRと略す)は、耐
油性・靭性・動的屈曲亀裂寿命・他の材料に対する良好な接着性・100℃まで
の耐熱性という、そのユニークな性質の組み合わせのゆえに、ほとんどの動力伝
達用ベルトに採用されてきた材料である。過去においてはCRベルトは自動車産
業のニーズに添っていたが、最近では要求の一段と厳しい用途に対する新材料が
求められている。まず第一に、ボンネット内の温度の上昇(150℃に達する)
のために、CRベルトに課せられる運転時の熱的束縛が増大しつつある。第二に
、自動車産業の保証期間の長期化(「100000マイル目標」)を満足すべく
、CRベルトは、高温に遭遇しない場合でも、高い平均寿命でさらに低い破壊率
を有していなくてはならない。これらの新たなニーズに応えるため、ネオプレン
ベルトの耐熱性、耐オゾン性及び耐切傷生長性を改良することが望まれている。
ニトリルゴム(NBR)は、燃料・各種油・その他の液体に対して広い温度範
囲で耐性を有しているので、自動車に使用されている。しかし、ニトリルゴムは
、そのままでは、耐熱性と耐オゾン性の要求される特定の用途には使用できない
。NBR(アクリロニトリルとブタジエンのランダムコポリマー)の耐オゾン性
及び耐熱老化性が劣っているのは、ポリマー主鎖中の不飽和に起因し、かかる不
飽和の存在のためにある種の悪条件下でポリマー鎖の切断を起きるようになるか
らであると考えられている。
天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン及びブタジエン/スチレン共重合
体ゴムのような、さらに不飽和度の高いゴムは、耐候性、屈曲性、路面接着性な
どに関して良好な性質を示すが、これらの材料は化学薬品の作用並びに酸素及び
オゾンによる分解を受け易く、そのため、それらの加硫物から製造した物品(タ
イヤ、ホース、フロントガラスワイパー、ガスケット、成形自動車部品など)の
有効寿命が制限される。
しかし、他のエラストマーとのブレンドにHI-PMSゴムを使用できるのは
、その他のエラストマーがHI-PMSゴムに対する相溶性をもつと同時にHI-
PMSゴムと同程度の硬化速度挙動をもつ場合に限られることが多い。例えば、
ブタジエン/スチレン共重合体のような高度不飽和エラストマーは場合によって
はほどほどの相溶性を有していてエチレン性不飽和部位の有効利用度が高いので
共加硫(co-vulcanize)し得るものの、ポリクロロプレンやブタジエン/アクリ
ロニトリル共重合体及びポリマー鎖に沿って極性基を含んでいたりエチレン性不
飽和度の比較的低い同様の材料のようなその他のエラストマーではそれほど容易
には共加硫されない。これら後者のエラストマーとのブレンドの場合、HI-P
MSゴムの作用によって耐薬品性及び耐オゾン性を改良することはできるかもし
れないが、そうした共加硫物の引張強さ、伸び率、モジュラス及び/又は耐摩耗
性などの物理的性質が硬化エラストマー自体に比べて低くなってしまうことが多
い。
エラストマーブレンドにおける相溶化剤の役割は多岐にわたっており、(1)
相と相の間の界面エネルギーを下げ、(2)混合時に一段と微細な分散体を与え
、(3)全体的な相分離に対する安定性の尺度を提供し、かつ(4)界面接着性を
高める
結果をもたらす(G.E.Molau,“Block Copolymers”(S.L.Agarwal編,Plenum
,New York,1970)79頁)。
2種類のエラストマーが下記の特徴の少なくとも1つを有していればそれらの
エラストマーは相溶性混合物を形成する。
・セグメントの構造的同一性。例えば、ブタジエンとスチレンのグラフト又は
ブロックコポリマーはポリブタジエン又はポリスチレンのいずれかと相溶性であ
る。
・相互の混和性又は部分的混和性。溶解度パラメーターの差が1単位未満、一
般には0.2単位未満。例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリル酸エ
チル(PEA)、ポリアクリル酸メチル(PMA)は9.4〜9.5の範囲の溶
解度パラメーターを有しており、相溶性混合物を形成する。ニトリルゴム(NB
R)の構造はPVC、PEA、PMAの構造とは全く異なるが、9.5という同
様の溶解度パラメーターを有しているのでこれら3種類のポリマーと相溶性をも
つ。
・ポリマー間で共有結合、イオン結合、供与体-受容体結合又は水素結合を生
じ得る官能基。
本発明は、一緒にブレンドを形成すべき異種極性重合体に存在する極性基と化
学的に相互作用して、それにより各タイプの重合体の分子鎖間の界面接着性を高
めて、オゾン又は酸素による作用に対する耐性と熱安定性が改良されているだけ
でなく引張強さ及び耐熱老化性のような重要な物理的性質の保持(場合によって
は改良)された相溶化エラストマーブレンドの発生を促するような官能基を有す
る官能化HI-PMSポリマーを提供する。発明の概要
本発明は、p-アルキルスチレン及び官能化p-アルキルスチレンと共重合したC4
〜C7イソオレフィンの新規官能化共重合体並びにそのブレンドを提供する。さ
らに詳細には、本発明は、C4〜C7イソオレフィンとp-アルキルスチレンとアミ
ン又はヒドロキシアルキルチオエーテルで官能化したp-アルキルスチレンとを含
んでなる官能化共重合体に関する。
この官能化共重合体は、物理的性質と化学的性質のバランスに優れ、耐熱性、
耐オゾン性及び耐油性の改良された組成物及び加硫物をもたらす。本発明のブレ
ンドは、耐熱性・耐オゾン性・耐油性が改善されているだけでなく、耐摩耗性・
モジュラス・伸び率・引張強さのような物理的性質も保持或いは向上した、駆動
ベルトや自動車用ホース、空気バネ、成形品のような製品へと、容易にコンパウ
ンディング・成形・共加硫することができる。好ましい実施態様の詳細な説明
好ましい実施態様では、本発明の官能化共重合体には次式で表される1種類又
はそれ以上の単量体を含んでなるイソオレフィン共重合体が包含される。
(上記式中、各々のR及びR′は独立に水素又は低級アルキルであり、YはS-
R2(-OH)nであり、R2は炭素数1〜20のヒドロカルビル基であり、nは1〜
10、好ましくは1〜4の整数である。)
本発明は下記の成分(i)及び(ii)を含んでなる相溶化ブレンドをも提供す
る。
(i)C4〜C7イソオレフィンとp-アルキルスチレンとアミン又はヒドロキシ
アルキルチオエーテルで官能化されたp-アルキルスチレンとを含んでなる少なく
とも1種類の官能化共重合体であって、好ましくは上記p-アルキルスチレン及び
官能化p-アルキルスチレンが次式で表されるもの
(上記式中、各々のR及びR′は独立に水素又は低級アルキルであり、Zは
ヒドロキシ含有官能基、好ましくはOH又はS-R2(-OH)n又はN(H)2-m((R3
OH))m及びこれらと臭素又は塩素原子との混合物であり、R2及びR3は独立に
炭素数1〜20のヒドロカルビル基であり、nは1〜10、好ましくは1〜4の
整数であり、mは1又は2である。);及び
(ii)少なくとも1種類の異種ポリマー、好ましくは上記ヒドロキシ含有官能
基と反応又は相互作用し得る極性基を含んでいるもの。
上記式Iに示した混成モノマー単位を含んでいるこの新規官能化共重合体は、
上記で説明しかつ米国特許第5162445号にも開示されているHI-PMS
ポリマーを前もって製造しておき、それを式MS-R2(-OH)n(式中、Mは水素
、金属イオン又はオニウムイオンであり、R2及びnは上述の通りである)の求
核試薬と、HI-PMSポリマー構造に存在するベンジル基のハライド原子の一
部又は全部が求核置換反応を介して脱離してS-R2(-OH)nで置換されるような
反応条件下で接触させることによって製造される。この反応は、基体HI-PM
Sポリマーのベンジル基上のハロゲン(以下、ベンジル基ハロゲンという)と上
記求核分子が密接に接触するようにHI-PMSポリマーを溶解すると共に求核
試薬の溶液又は分散液を与えるような溶媒系を用いた溶液中で行うのが好ましい
。好適な溶媒としては、ベンゼン、トルエン、ヘプタンやヘキサンやシクロヘキ
サンのようなアルカン類並びにテトラヒドロフランのような含酸素溶媒又は溶媒
混合物、又はこれらと低級アルコールの混合物が挙げられる。
この反応は、架橋又はゲル化生成物の生成を防止すると共に不要な副反応を最
小限度に抑制するため、温和な反応条件下で行うのが好ましい。好ましい反応温
度の範囲は約20℃〜100℃である。温和な条件下で反応体として求核試薬の
オニウム塩(すなわち、テトラブチルアンモニウム塩)を利用することによって
所望反応生成物の生成が促進される。
官能化HI-PMSポリマーの構造と組成は、基体となるHI-PMSポリマー
の構造と組成並びに上記求核試薬の求核基によってベンジル基ハロゲンがどの程
度置換されるかによって支配されるであろう。好ましい基体HI-PMSポリマ
ーは、約10〜約99.5モル%のイソブチレンを含んだイソブチレン共重合
体であって、当該共重合体の残りが、ポリマー鎖全体にランダムに配置された次
式で表される単量体を含んでいるものとして特徴付けられる。
ただし、ポリマー鎖に存在するコモノマー単位(1)及び(2)の少なくとも約
5モル%は式2の構造のものであり、R及びR′は独立に水素又はC1〜C4アル
キルであり、R″は独立に水素、C1〜C4アルキル又はXであり、Xは臭素又は
塩素であり、当該共重合体はそれ以外にはポリマー主鎖に如何なるハロゲンも実
質的に含んでいない。
イソブチレンが上記イソオレフィンコモノマーである場合に関して、これらの
共重合体には次のものが含まれる:
a)イソブチレンと式2の構造のモノマーからなる共重合体であって、R″が
水素又はC1〜C4アルキルであるもの(例えば、イソブチレンとモノハロ置換p-
アルキルスチレンの共重合体);
b)イソブチレンと式1・式2の構造のモノマー混合物からなる三元共重合体
であって、R″が水素又はC1〜C4アルキルであるもの(例えば、イソブチレン
とp-アルキルスチレンとモノハロ置換p-アルキルスチレンの三元共重合体);
c)イソブチレンと式2の構造のモノマー混合物からなる三元共重合体であっ
て、R″は水素又はC1〜C4アルキルであるが、当該式2のモノマーの少数部分
についてはR″がX(例えば臭素又は塩素)であるもの(例えば、イソブチレン
とモノハロ置換p-アルキルスチレンとジハロ置換p-アルキルスチレンの三元共重
合体);及び
d)イソブチレンと式1・式2の構造のモノマー混合物からなる四元共重合体
であって、当該式2のモノマーの大部分についてはR″が水素又はC1〜C4アル
キルであり、当該式2のモノマーの少数部分についてはR″が臭素又は塩素であ
るもの(例えば、イソブチレンとp-アルキルスチレンとモノハロ置換p-アルキ
ルスチレンとジハロ置換p-アルキルスチレンの四元共重合体)。
上述の通り、これらのハロゲン化共重合体は、C4〜C7イソオレフィンとp-ア
ルキルスチレンの共重合体をハロゲン化の基質として用いて製造される。上記(
a)、(b)、(c)又は(d)の組成の共重合体はハロゲン化反応の厳しさの関数
として生じる。例えば、温和なハロゲン化では(b)の特徴をもつ共重合体が生
じ、もっと強いハロゲン化では(a)又は(d)の特徴をもつ共重合体が生じ、最
も強いハロゲン化では(c)の特徴をもつ三元共重合体が生じる傾向にある。
本発明の組成物に使用するのに最も好適なエラストマーは、イソブチレンとp-
メチルスチレン(PMS)とを含んでなり、PMS含有量が約0.5〜約20モ
ル%、さらに好ましくは約2〜約15モル%で、当該PMSモノマー単位の約6
0モル%以下がモノブロモメチル基を含んでいるようなゴム弾性臭素化ランダム
三元共重合体である。このようなゴム弾性共重合体は一般に約25000〜約5
00000の範囲、さらに好ましくは約50000〜約250000の範囲内の
数平均分子量を示す。かかる三元共重合体に含まれる全PMSモノマーのうちの
約5〜約60モル%がモノブロモメチル基を含んでおり、ポリマー主鎖でも芳香
族環でも臭素化は実質的に起こらない。これらの三元共重合体の臭素含有量は一
般に約0.1〜約5モル%である。
本発明で製造される官能化ポリマーは、上述の通り、ベンジル基ハロゲンの少
なくとも一部が求核基S-R2(-OH)nで置換されていること以外は、基体HI-
PMSポリマーと基本的に同じ構造を有する。その置換度は、求核試薬のモル量
と基幹HI-PMSポリマーに存在するハロゲンのモル数の化学量論比の1次関
数となるはずである。例えば、上記式IにおいてYが求核基とハロゲンの混合物
であるような構造のポリマーは、等モル量未満の求核試薬を用いた場合に得られ
るであろう。式IでYが基本的に求核基からなるような場合には、等モル又はモ
ル過剰の求核試薬が用いられるはずである。
本発明の好ましいポリマーは、式Iの構造のものであって、Y基の少なくとも
50重量%が求核基を含んでいるようなもの、さらに好ましくはY基の実質的に
100%が求核基であるようなものである。かかるポリマーは約0.05〜約5
モル%のY基を含んでおり、当該Y基の約50〜100重量%をS-R2(-OH)n
のような求核基が占め、当該Y基の約0〜50重量%を臭素のようなハロゲンが
占める。
構造Iの官能化ポリマーの製造に使用し得る求核試薬は、式MS-R2(-OH)n
のメルカプトアルコール又はその塩(式中、Mは水素、金属イオン又はオニウム
イオンであり、R2は炭素数1〜20のヒドロカルビル基、さらに好ましくは炭
素数2〜6のヒドロカルビル基であり、nは1〜10の整数である)である。好
ましい求核試薬は、Mがテトラブチルアンモニウム(Bu4アンモニウム)のよ
うなオニウムカチオンであり、nが1又は2であって、R2の炭素数が2又は3
であるようなもの、例えばテトラブチルアンモニウム(2-ヒドロキシエチル)チオ
レートやテトラブチルアンモニウム(1,2-ジヒドロキシプロピル)チオレートなど
である。
上述の通り、本発明は、上記式IIの構造のモノマー混合物を含んだヒドロキシ
官能化イソオレフィン/p-アルキルスチレン共重合体と、当該ヒドロキシ含有官
能基と反応又は相互作用し得る極性基を含む少なくとも1種類の異種ポリマーと
の、相溶化ブレンドも提供する。ここで、「反応し得る」という用語は上記ヒド
ロキシ官能化イソオレフィン共重合体と共有結合又はイオン結合による化学結合
を形成するような極性基を包含するものであり、「相互作用し得る」という用語
は上記ヒドロキシ官能化イソオレフィン共重合体と水素結合を形成するか或いは
上記ヒドロキシ官能化イソオレフィン共重合体との混和性を向上させるような極
性基を包含するものである。かかるヒドロキシ官能化イソオレフィン共重合体に
含まれるものとして、実施例1〜3で製造されたもの、すなわち、式IIの構造の
モノマー混合物を有する共重合体であって、ZがS-R2(-OH)nのもの、並びに
ZがOH又はN(H)2-m((R3)OH)mのもの、がある。この実施態様では、かか
る共重合体は、約0.5〜20モル%のp-メチルスチレン(PMS)コモノマー
と共重合したイソブチレンを含むエラストマーであって、PMSモノマー単位の
約5〜約60モル%が官能基Zを含んでいるものが最も好ましい。
式IIにおいてZがOHであるような共重合体は、HI-PMSを酢酸ナトリウ
ムのようなモノカルボン酸塩とBu4NOH(相移行性触媒)の存在下で反応さ
せてベンジル基ハロゲンをエステル官能基で置換し、続いて加水分解を行ってア
ルコールを生じさせることによって製造し得る。このような材料及びその製造方
法は米国特許第5162445号の例113に開示されており、その開示内容は
文献の援用によって本明細書の内容の一部をなす。
式IIにおいてZがN(H)2-m((R3)OH)mであるような共重合体は、エタノー
ルアミンやジエタノールアミンのようなモノ-又はジアルカノールアミンを求核
試薬として用いる同様の求核置換反応によって製造し得る。このような材料も米
国特許第5162445号に開示されている。かかる共重合体の製造に適した方
法は実施例6に記載されている。
上記の官能化HI-PMS共重合体とブレンドし得る異種ポリマーには、ポリ
マー主鎖にハライド又はカルボキシ官能基を含んだポリマーが含まれる。含ハロ
ゲンポリマーには、ポリクロロプレン、ハロゲン化ブチルゴム、ポリ塩化ビニル
、ポリ塩化ビニリデン、塩素化及びクロロスルホン化ポリエチレン及び同様の材
料が含まれる。カルボキシ官能基を含んだポリマーには、ブタジエンとアクリロ
ニトリルのカルボキシ化共重合体のようなブタジエンのカルボキシ化重合体又は
共重合体、ポリアミド、ポリエステル、エチレンとアクリル及び/又はメタクリ
ルモノマーの共重合体、並びにマレイン酸化ポリエチレン、エチレンとプロピレ
ンのマレイン酸化共重合体及びエチレンとプロピレンと非共役ジエンのマレイン
酸化三元共重合体のような酸官能基をグラフトしたオレフィン重合体が含まれる
。
本発明は、特に、官能化HI-PMSとポリクロロプレン及び/又はカルボキ
シニトリルゴムの混合物をベースとする加硫性ブレンドに対して適用し得るが、
それは、これらの材料について、それらに特有の良好な耐油性及び接着性をHI
-PMSエラストマー特有の優れた耐オゾン性及び高い熱安定性と釣り合わせる
必要性が最も高いからである。
本発明の一つの実施態様のエラストマーブレンドに使用されるポリクロロプレ
ンエラストマーは市販品として入手し得る材料であって、一般にCR又はネオプ
レンゴムと呼ばれる。この材料については数多くのグレード及び分子量のものを
入手することができるが、中でもエラストマーグレードのものが本発明の組成物
への使用に適している。好ましいグレードはネオプレンGRTであるが、これは
結晶化に対する抵抗性が高く、クロロプレンと2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの
共重合体をベースとしたものである。ネオプレンの合成は当業者には周知である
。C.A.Hargraves他著のEncyclopedia of Polymer Science and Technology,vo
l.3,705〜730頁参照。
本発明の別の実施態様のエラストマーブレンドに使用されるカルボキシニトリ
ルゴムも市販品として数多くのグレードのものを入手し得る材料である。ニトリ
ルゴムは大量のブタジエンと少量のアクリロニトリルからなるランダム共重合体
であって、一般にはラジカル触媒で製造される。特に好ましいカルボキシニトリ
ルゴムはB.F.Goodrich社からHYCAR1072CGの商品名で市販
されている。
特定の理論に束縛されることを望むわけではないが、上記極性エラストマーと
官能化HI-PMSエラストマーの相溶化は、含ハロゲンエラストマーの場合に
はアリル基上のハロゲン(例えば塩素)の置換によるHI-PMS重合体のヒド
ロキシ官能基とのエーテル結合の形成によって、カルボキシ官能例を含んだエラ
ストマーの場合にはHI-PMS重合体のヒドロキシ官能基とのエステル結合の
形成によって、起こるものと考えられる。後者の場合、触媒量の適当なエステル
化触媒(例えばオクタン酸スズなど)を添加することで相溶化をさらに促すこと
ができる。
本発明の組成物中の官能化HI-PMSの存在量は、当該組成物の合計エラス
トマー含有量を基準にして、約1〜約95重量%という広い範囲にすることがで
き、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは5〜20重量%の官能化HI
-PMSが存在し、それと対応して、1種類以上の異種エラストマーが合計で約
99〜5重量%、好ましくは99〜50重量%、さらに好ましくは95〜80重
量%で存在する。
本発明の加硫性組成物は、さらに、HI-PMSゴム及びブレンド中に存在す
る異種極性エラストマーに対する硬化剤として知られている従来の混合加硫性系
を含んでいてもよい。一般に、かかる加硫系には金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マ
グネシウム又はこれらの混合物など)を配合することができ、これらの金属酸化
物は単独で用いてもよいし、1種類以上の有機加硫促進剤又は追加硬化剤(アミ
ン、フェノール系化合物、スルホンアミド、チアゾール、チウラム化合物、チオ
ウレア又はイオウなど)と混合して用いてもよい。有機ペルオキシドも硬化剤と
して使用できる。酸化亜鉛又は酸化マグネシウムは通例エラストマーブレンド1
00重量部当り約1〜約10重量部のレベルで存在し、イオウ及び追加硬化剤又
は加硫促進剤を使用する場合にはこれらはエラストマーブレンド100重量部当
り約0.1〜約5重量部のレベルで存在し得る。このエラストマー組成物は、さ
らに、滑剤、充填剤、可塑剤、粘着付与剤、着色剤、発泡剤及び酸化防止剤など
の添加剤を含んでいてもよい。
充填剤の具体例には、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク及
びクレーなどの無機充填剤、並びに高スチレン樹脂、クマリン-インデン樹脂、
フェノール樹脂、リグニン、変性メラミン樹脂及び石油樹脂などの有機充填剤が
含まれる。
滑剤の具体例には、オイル、パラフィン、液体パラフィンなどの石油系滑剤;
コールタール及びコールタールピッチなどのコールタール系滑剤;ヒマシ油、ア
マニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系のもの;タル油;ミツロウ、カルナバ
ロウ及びラノリンなどのワックス類;リシノール酸(licinoleic acid)、パルミ
チン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム及びラウリン酸亜鉛な
どの脂肪酸及び脂肪酸塩;並びに石油樹脂のよな合成高分子物質が含まれる。
可塑剤の具体例には、パラフィン、芳香族油及びナフテン系油のような炭化水
素油、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル並びにリン
酸系可塑剤が含まれる。
粘着付与剤の具体例は、石油樹脂、クマリン-インデン樹脂、テルペン-フェノ
ール樹脂、並びにキシレン-ホルムアルデヒド樹脂である。
着色剤の具体例は、無機及び有機顔料である。
発泡剤の具体例は、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、N,N′-ジニトロソ
ペンタメチレンテトラアミン、アゾカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリ
ル、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、カルシウ
ムアミド、p-トルエンスルホニルアジド、サリチル酸、フタル酸及び尿素である
。
この加硫性組成物は、密閉式ミキサー(ブラベンダープラスチコーター)、バ
ンバリーミキサー、ニーダー又は同様の混合装置のような適当な混合装置を用い
て、調製及びブレンドすることができる。ブレンド温度及びブレンド時間はそれ
ぞれ約45〜180℃及び約4〜10分間である。任意成分としての充填剤、加
工助剤、酸化防止剤などと上記エラストマーの均一混合物を形成した後、次に架
橋剤及び促進剤をさらに添加混合して、次いで得られたブレンドを約100℃〜
250℃、さらに好ましくは約125℃〜200℃の温度に約1〜60分間加熱
することによって上記混合物を加硫する。ベルトやホースなどの成形品は、予備
加硫した配合物を押出機又は金型を用いて成形した後、組成物を上記の温度及び
硬化時間に付すことによって製造される。
以下の実施例は、本発明の2種類の好ましい官能化HI-PMSエラストマー
共重合体の製造を例示したものである。例1
この例では、0.48モル%の臭素化p-メチルスチレンを含み、5.25ミリモ
ルの臭素を含有する数平均分子量600Kの、イソブチレンと5重量%のp-メチ
ルスチレンからなる臭素化共重合体を基体重合体として用いたときの、ポリイソ
ブチレン-コ-[4-(2-ヒドロキシエチル)-チオメチルスチレン]の製造の詳細を示
す。
温度計、機械式撹拌機、及び通気窒素用の出口をもつ凝縮器を取り付けたジャ
ケット付樹脂ボトル(1l,三首)に、上記の臭素化イソブチレン/p-メチルス
チレン共重合体(BRI-PMSと呼ぶ)の乾燥標品50g及び溶剤として50
0gのテトラヒドロフラン(THF)を投入した。この混合物をN2気流下で撹
拌し、上記ポリマーを完全に溶解するため55℃に約6時間加熱した。次いで、
同一条件下で撹拌を続けながら、THF/メタノール混液20gに溶解した1.6
8g(5.25ミリモル)のテトラブチルアンモニウム(2-ヒドロキシエチル)チ
オレート塩(TBATと略す)を1時間かけて上記反応混合物に加えた。この反
応混合物を取り出し、酸化防止剤として0.1重量%の2,6-ジ-t-4-メチル
フェノール(BHT)を含有する過剰のイソプロパノールを用いて凝塊を形成さ
せた。2倍容の新鮮な上記アルコール混液中でこの凝塊を再度混練し、55℃で
48時間真空下(32″Hg)で乾燥した。
この生成物(MEI−PMSと呼ぶ)の1H NMRスペクトル分析の結果、最
初のベンジル基臭素のほぼ100%が-S-(CH2)2-OH求核基で置換されたこ
とが判明した。例2
使用した基体BRI-PMSポリマーが1.14モル%の臭素化PMSを含み、
12.5ミリモルの臭素を含有する数平均分子量470Kの、イソブチレンと7.
5重量%のPMSからなる共重合体であって、12.5ミリモルのTBAT塩を
反応させたことを除いては、例1を繰り返した。
1H NMRスペクトル分析の結果、最初のベンジル基臭素のほぼ100%が-
S-(CH2)2-OH求核基で置換されたことが判明した。例3
反応混合物にTBAT塩を6.25ミリモルしか加えなかったことを除いては
、例2を繰り返した。
1H NMRスペクトル分析の結果、最初のベンジル基臭素の約50%しか置換
されておらず、最初の約50%のベンジル基臭素と約50%のベンジル基-S-(
CH2)2-OH基が混在する混合型ポリマーとなったことが判明した。例4
この例では、ポリイソブチレン-コ-[4-(1,2-ジヒドロキシ-n-プロピル)-チオ
メチルスチレン]の製造の例証する。
例2のBRI-PMS基体ポリマー50gを例1に記載の通りTHFに溶解し
た。THF/メタノール混液に溶解した4.37g(12.5ミリモル)のテトラ
ブチルアンモニウム(1,2-ジヒドロキシ-n-プロピル)チオレート塩(TBADT
と略す)を加え、混合物を55℃に1時間加熱した。混合物を例1に記載の通り
凝塊形成させて回収した。
この生成物(MPGI−PMSと呼ぶ)の1H NMRスペクトル分析の結果、
最初のベンジル基臭素のほぼ100%が-S-(CH2)3(OH)2求核基で置換され
たことが判明した。例5
反応混合物にTBADT塩を6.25ミリモルしか加えなかったことを除いて
は、例4を繰り返した。
1H NMRスペクトル分析の結果、この生成物は最初の約50%のベンジル基
臭素と約50%のベンジル基-S-CH2-CH(OH)-CHOH基を含んでいた。例6
窒素気流下の5l樹脂フラスコ中で、2267gのトルエンにイソブチレン/p
-メチルスチレン/p-ブロモメチルスチレン共重合体(p-メチルスチレン含有量1
.7モル%,p-ブロモメチルスチレン含有量0.7モル%,125℃でのML=3
0)500gを溶解して18重量%溶液とした。次に、室温で撹拌しながら56
7gのイソプロパノール中のジエタノールアミン(Aldrich社製,99%
)を加え、80/20(重量/重量)比のトルエン/イソプロパノール溶剤ブレン
ド中の14.9重量%ポリマー溶液とした。この溶液を撹拌しながら窒素気流下
で約87℃の還流温度に3時間加熱した後、放冷した。ポリマーをイソプロパノ
ール中で沈殿・混練することによって回収した。この回収した「湿性」ポリマー
を50/50比の水/メタノール混液中で洗浄・混練することでさらに精製して未
反応ジエタノールアミンを完全に除去し、0.2重量%のBHTを酸化防止剤と
して添加して70℃の真空オーブン中で48時間乾燥した。このポリマーを1H
NMR分析したところ、p-ブロモメチル基がジエタノールアミノメチル官能基に
完全に変換されていることが判明した(DEA含有量0.7モル%)。
以下の例で使用した材料は次の通りである。
A. ネオプレンGRTはDuPont社から市販されているポリクロロプ
レンエラストマーである。
B. NBR-COOHはB.F.Goodrich社からHYCAR10
72CGという商品名で市販されている、アクリル酸カルボキシ官能基を含有し
たブタジエンとアクリロニトリルの共重合体である。例7〜9
小型(容積=45cc)ブラベンダーミキサー内で110℃の温度で5分間配合
成分を混合することによって、表1に示す組成(重量部)のブレンドを調製した
。例9のブレンドには、さらに0.4重量%のオクタン酸スズ触媒が含まれてい
た。これらのブレンド試料を薄片(100〜200nm)にして位相差を利用して
NBR相が黒く、官能化HI-PMS相が灰白色に見えるようにした光学顕微鏡
によって検査した。
例7のブレンドに使用したBRI-PMS成分は、p-メチルスチレンを5重量
%及び臭素を0.8重量%含有するムーニー粘度55のイソブチレンとp-メチル
スチレンの臭素化共重合体である。例8及び例9のブレンドに使用したMEI-
PMS成分は例1で製造したポリイソブチレン-コ-[4-(2-ヒドロキシエチル)-チ
オメチルスチレン]であり、最初に含まれていた臭素のほぼ100%が2-ヒドロ
キシルエチルチオエーテル官能基で置換されている。
顕微鏡検査の結果、例7の対照ブレンドと比べると例8及び例9のMEI-P
MS相のほうがNBR-COOHマトリックス相中に格段に微細かつ均一に分散
していることが判明した。例8及び例9のMEI-PMS相は25ミクロン未満
の寸法の小粒子又は繊維として分散しており、大多数の粒子は10ミクロン未満
であった。例7の対照試料では、BRI-PMS相は10ミクロンを超えた寸法
の分散性に乏しい長繊維又は孤立集団であり、その大多数は50ミクロンを超え
ていた。
以下の例では、表2〜表4に示す配合成分を含んだ加硫性組成物を製造した。
ポリクロロプレン(PC)及びニトリルゴム(NBR又はNBR-COOH)を
ベースとする配合物についての加硫用配合物は次の組成であった。
硬化性組成物は、小型(容積=60cc)C.W.ブラベンダー内で110〜1
40℃の温度(PCブレンドについては110℃;ニトリルブレンドでは140
℃)で5分間60rpmでまずステアリン酸とオクタミンを混合することによっ
て調製した。窒素気流下でブレンド試料を取り出して、冷却し、上記配合成分の
残りを50℃、60rpmで5分間混合した。ブレンド試料は次に160℃で2
0分間硬化して試験片(引張試験用ダンベルなど)に二次加工し、試験片は24
時間おいてから試験に付した。機械的性質、耐熱老化性及び動的オゾン耐性は標
準(ASTM)条件を用いて測定した。
これらのブレンドについては、また、加硫用配合物をコンパウンディングする
前に上記の光学顕微鏡検査を行った。例10〜12
表2の組成のポリマーブレンドを処方し、上記のPC硬化用配合物とコンパウ
ンディングして、上記の通り硬化した。
上記エラストマーブレンドを薄片(100〜200nm)の顕微鏡検査で比較
すると、例11のBRI−PMS相の形態がPC相と共にほぼ連続相といえるも
のであったのに対して、例12のMEI-PMS相はPC相の中に分散していて
、分散粒子のほとんどが10ミクロン未満の大きさのものであった。さらに、表
2に示すデータから、例12の硬化配合物では耐熱老化性及び耐オゾン性が例1
0の純PC配合物及び例11のPC/BRI-PMS配合物と比べて格段に改良さ
れていることが分かる。例13〜15
表3に示す組成の3種類の配合物を、MPGI-PMSと名付けた成分が例4
で製造したポリイソブチレン-コ-[4-(1,2-ジヒドロキシ-n-プロピル)-チオメチ
ルスチレン]であったことを除いては例10〜例12に記載の通り調製し、処方
し、硬化した。
上記の例10〜例12の場合と同様、顕微鏡検査から、例14のBRI-PM
S相がPC相と共にほぼ連続相として存在していたのに対して、例15のMPG
I-PMS相はPC相の中に分散していて、分散粒子のほとんどが10〜15ミ
クロン未満の直径のものであったことが判明した。さらに、表3に示す物理的及
び機械的性質のデータから、例15の配合物では引張強さ、耐熱老化性及び動的
オゾン耐性が例13及び例14の配合物と比べて向上していることが分かる。例16〜19
表4に示す組成の4種類の配合物を例10〜例12に記載の通り調製し、処方
し、硬化した。ただし、この例では、DEAI-PMSと名付けた成分が例6で
製造したBRI-PMSとジエタノールアミンの反応生成物であった点で異なる
。
例16(対照)と例18のブレンドを顕微鏡で比較すると、例16ではBRI
-PMS相がNBR中でほとんど分散していなかったのに対して、例18ではM
PGI-PMS相がNBR-COOH中に格段に良好に分散していて、ほとんどの
粒子の寸法が10ミクロン未満であった。こうした相溶化による有益な効果は、
例18及び例19のブレンドの引張特性、耐熱老化性及び耐オゾン性が例16の
対照ブレンドよりも向上していることに実証されている。
【手続補正書】特許法第184条の7第1項
【提出日】1995年2月1日
【補正内容】
3.請求項1記載の組成物において、存在する上記p-アルキルスチレンと官能
化p-アルキルスチレンの合計量が当該イソオレフィンポリマーの約0.5〜約2
0モル%であることを特徴とする組成物。
4.請求項1記載の組成物において、上記p-アルキルスチレンが-S-CH2-O
H、-S-CH2-CH(OH)-CH2OH、-S-CH2-CH2OH、-S-(CH2)3(O
H)又はN(CH2CH2OH)2で官能化されていることを特徴とする組成物。
5.請求項1記載の組成物において、上記異種ポリマー成分(ii)がハライド
又はカルボキシ官能基を含んだポリマーからなる群、好ましくはポリクロロプレ
ン、ニトリルゴム又はカルボキシニトリルゴムから選択されることを特徴とする
組成物。
6.請求項1記載の組成物において、上記異種エラストマーが、当該ポリマー
組成物の全エラストマー含有量を基準にして、30〜約90重量%の量で存在す
ることを特徴とする組成物。
7.請求項1記載の組成物において、上記異種共重合体が、上記官能化p-アル
キルスチレンの上記ヒドロキシ含有官能基と反応又は相互作用し得る極性基を含
んでいることを特徴とする組成物。
8.C4〜C7イソオレフィンと、p-アルキルスチレンと、p-ベンジル炭素原子
がヒドロキシアミン又はヒドロキシアルキルチオエーテルで官能化されたp-アル
キルスチレンとを含んでなる共重合体を、異種ゴムとブレンドすることからなる
相溶化ゴム組成物の製造方法。
9.請求項8記載の方法において、上記2つのp-アルキルスチレンが共にp-メ
チルスチレンであることを特徴とする方法。
10.請求項1記載の組成物でできた成形品。
11.C4〜C7イソオレフィン、p-アルキルスチレン、及びヒドロキシアミン又
はヒドロキシアルキルチオエーテルで官能化されたp-アルキルスチレンを含んで
なる官能化共重合体を含んでなる組成物。
12.請求項11記載の組成物において、上記p-アルキルスチレンが-S-CH2-
OH、-S-CH2-CH2-OH、-S-CH2-CH2-CH2-OH又は
-S-CH2-CH(OH)-CH2OHで官能化されていることを特徴とする組成物。
13.請求項11又は請求項12記載の組成物の相溶化剤としての使用。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1995年5月23日
【補正内容】
請求の範囲
1.下記の成分(i)及び(ii)をを含んでなるブレンド。
(i)炭素数4〜7のイソオレフィンと、p-アルキルスチレンと、p-ベンジル
炭素原子がヒドロキシアミン又はヒドロキシアルキルチオエーテル又はヒドロキ
シで官能化されたp-アルキルスチレンとを含んでなる少なくとも1種類の官能化
共重合体;及び
(ii)少なくとも1種類の異種ポリマー。
2.請求項1記載の組成物において、上記p-アルキルスチレン及び官能化p-アル
キルスチレンが次式で表されることを特徴とする組成物。
上記式中、各々のR及びR′は独立に水素又は低級アルキルであり、ZはOH
、S-(R2)n(OH)及びN(H)2-m((R3)OH)mからなる群から選択されるヒドロ
キシ含有官能基であり、R2及びR3は独立に炭素数1〜6のヒドロカルビル基で
あり、nは1〜10の整数であり、mは1又は2である。
【手続補正書】
【提出日】1996年5月28日
【補正内容】
1.明細書中第4頁9行「耐候性」を「耐摩耗性」と訂正する。
2.同第5頁下から13行「存在する極性基」を「存在する官能基」と訂正する
。
3.同第6頁4行「自動車用ホース、空気バネ、」を「自動車用ホース、ガスケ
ット、空気バネ、」と訂正する。
4.同第10頁6行「構造I」を「上記構造I」と訂正する。
5.同第13頁下から10行「石油樹脂のよな」を「石油樹脂のような」と訂正
する。
6.同第16頁6行「ベンジル基−S−CH2−CH(OH)−CHOH」を「
ベンジル基−S−CH2−CH(OH)−CH2OH」と訂正する。
7.同第19頁11行「50℃、60rpmで」を「50℃、50rpmで」と
訂正する。
8.請求の範囲を以下のように訂正する。
「 請求の範囲
1.下記の成分(i)及び(ii)をを含んでなるブレンド。
(i)炭素数4〜7のイソオレフィンと、p-アルキルスチレンと、p-ベンジ
ル炭素原子がヒドロキシアミン又はヒドロキシアルキルチオエーテル又はヒドロ
キシで官能化されたp-アルキルスチレンとを含んでなる少なくとも1種類の官能
化共重合体;及び
(ii)少なくとも1種類の異種ポリマー。
2.請求項1記載の組成物において、上記p-アルキルスチレン及び官能化p-ア
ルキルスチレンが次式で表されることを特徴とする組成物。
上記式中、各々のR及びR′は独立に水素又は低級アルキルであり、ZはOH
、S-(R2)n(OH)及びN(H)2-m((R3)OH)mからなる群から選択されるヒドロ
キシ含有官能基であり、R2及びR3は独立に炭素数1〜6のヒドロカルビル基で
あり、nは1〜10の整数であり、mは1又は2である。
3.請求項1記載の組成物において、存在する上記p-アルキルスチレンと官能化
p-アルキルスチレンの合計量が当該イソオレフィンポリマーの約0.5〜約20
モル%であることを特徴とする組成物。
4.請求項1記載の組成物において、上記p-アルキルスチレンが-S-CH2-OH
、-S-CH2-CH(OH)-CH2OH、-S-CH2-CH2OH、-S-(CH2)3(OH
)又はN(CH2CH2OH)2で官能化されていることを特徴とする組成物。
5.請求項1記載の組成物において、上記異種ポリマー成分(ii)がハライド又
はカルボキシ官能基を含んだポリマーからなる群、好ましくはポリクロロプレン
、ニトリルゴム又はカルボキシニトリルゴムから選択されることを特徴とする組
成物。
6.請求項1記載の組成物において、上記異種エラストマーが、当該ポリマー組
成物の全エラストマー含有量を基準にして、30〜約90重量%の量で存在する
ことを特徴とする組成物。
7.請求項1記載の組成物において、上記異種共重合体が、上記官能化p-アルキ
ルスチレンの上記ヒドロキシ含有官能基と反応又は相互作用し得る極性基を含ん
でいることを特徴とする組成物。
8.C4〜C7イソオレフィンと、p-アルキルスチレンと、p-ベンジル炭素原子が
ヒドロキシアミン、ヒドロキシアルキルチオエーテル、又はヒドロキシで官能化
されたp-アルキルスチレンとを含んでなる共重合体を、異種ゴムとブレンドする
ことからなる相溶化ゴム組成物の製造方法。
9.請求項8記載の方法において、上記2つのp-アルキルスチレンが共にp-メチ
ルスチレンであることを特徴とする方法。
10.請求項1記載の組成物でできた成形品。
11.C4〜C7イソオレフィン、p-アルキルスチレン、及びヒドロキシアミン又
はヒドロキシアルキルチオエーテルで官能化されたp-アルキルスチレンを含んで
なる官能化共重合体を含んでなる組成物。
12.請求項11記載の組成物において、上記p-アルキルスチレンが-S-CH2-O
H、-S-CH2-CH2-OH、-S-CH2-CH2-CH2-OH又は-S-CH2-CH(
OH)-CH2OHで官能化されていることを特徴とする組成物。
13.請求項11又は請求項12記載の組成物の相溶化剤としての使用。」
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C08L 23/18 LCZ 7107−4J C08L 23/18 LCZ
101/00 LSZ 9167−4J 101/00 LSZ