【発明の詳細な説明】
吸収冷凍装置に関する改良
本発明はヒートポンプおよび冷凍システムに関し、特に、インゼクタ、エゼク
タまたはジェットポンプ(以下エゼクタと称する)と組み合わせた、可逆ヒート
ポンプおよび冷凍システムに関する。
蒸気圧縮タイプに代えて熱作動の冷凍およびヒートポンプサイクルを用いるた
めの環境的ケースは強力である。例えば、空気調節の用途において典型的に用い
られる、幾分より複合的な、つまり多効果の吸収冷凍装置は、ほぼ1.5の有効性
能係数(COP)値(一次エネルギー消費に関して)を有していることが報告さ
れている。一方、本線からの電力によって動力を供給される蒸気圧縮システムは
、電力供給の非能率性を考慮しても0.9よりも大きな有効COP値を有すること
はまれである。これらのCOP値の比較は、CO2放出を70%低減する潜在的可
能性が吸収冷凍装置への変更によって可能であることを示している。これは、上
記潜在的可能性に加えて、水などの環境に馴染みやすい冷媒を用いる環境的利益
である。
残念なことに、より複合的でない、つまり単効果の吸収冷凍装置は上述のいず
れと比較しても効率的ではない傾向がある。例えば、それらは0.4〜0.45の領域
においてCOPを有する傾向がある。したがって、それらの性能は多効果吸収冷
凍装置および蒸気圧縮冷凍装置よりも低い。さらに、それらは
冷却用のkWあたりの設備投資に関してさらにコストがかかる傾向もある。
冷凍およびヒートポンプの重要な用途の1つは建造物における空気調節である
。現時点では、経済的および環境的制御の両理由から大きな中央冷凍プラントか
ら離れる傾向が増大している。この傾向は、分割、多分割、および可変冷媒ボリ
ューム(VRV)システムの増加する販売の成功によって認識される。上記シス
テムのすべては小さな本線から動力を供給される蒸気圧縮冷凍装置を有している
。販売されたシステムの大多数は30kWよりも低い冷却能力を有している。しか
しながら、現時点では、吸収冷凍装置ユニットは一般に300kWから6000kWの
範囲の冷却能力を持つもののみが入手可能である。
小さな能力範囲においてコスト効果的および効率的な吸収冷凍装置の必要性が
認識される。しかしながら、小規模な冷凍装置市場は特に価格に敏感であり、非
常に競争的である。効率的かつコスト効果的なユニットがさらに広く利用可能と
なり環境的利益が理解されるようになるには、熱によって動力を供給される冷凍
装置の技術に関してさらなる調査研究が必要である。
冷凍機の将来の発展に対する我々の目標は、CFC、HCFC、およびHFC
冷媒などの合成冷媒流体の使用を中止することを含み、作動中の冷凍機器に付随
するCO2放出を大幅に削減することを含まなくてはならない。これらの目標を
達
成する1つの方法は、冷凍機器のユーザに、蒸気圧縮のオプションではなく、熱
によって動力を供給される冷凍装置のオプションを選択するように働きかけるこ
とである。
したがって、本発明の目的は、熱によって動力を供給されるので環境的に好ま
しく、また、小規模であるので商業的に好ましいヒートポンプおよび冷凍システ
ムを提供することである。
したがって、本発明によればヒートポンプおよび冷凍システムが提供され、こ
のシステムは、
システムに動力を供給するために熱を生成する発生器、
該システムから熱を拒絶(reject)する凝縮器、
環境との熱交換を可能にする蒸発器、
該蒸発器から冷媒蒸気を抽出(extract)する吸収器、および
該蒸発器から冷媒蒸気を抽出するエゼクタ、
を備えており、
該エゼクタは、蒸発器からエゼクタによって抽出された冷媒蒸気が凝縮器へ送
達される前にエゼクタを通過するように、蒸発器の下流側かつ凝縮器の上流側に
配置されていることを特徴とする。
上記配置において、エゼクタを通過する冷媒蒸気は凝縮器における凝縮を容易
にするために圧縮される。
さらに、蒸発器から抽出された冷媒蒸気のうちいくらかはエゼクタを介して凝
縮器へ飛沫同伴(混入)されるので、吸収器に要求される処理の度合いが比較的
低減される。これは、
本発明のシステムにおいてkW冷却あたり、吸収器の大きさが従来のシステムに
おいて典型的に必要であった大きさよりも小さく半分から3分の2にまで減少可
能であることを意味する。さらに、凝縮器の大きさは変更されないままである。
吸収器は比較的複合的であり、大きく、コストのかかるシステムの構成要素であ
るので、本発明による改変がシステムのコストを低減し、かつ良好な性能を提供
しながら複雑さを減少させるという理由から多くの利点を有することは明らかで
ある。
本発明の好ましい実施態様において、エゼクタはまた、発生器から流出してエ
ゼクタを通過する流体、例えばスチームなどの蒸気冷媒が蒸発器からエゼクタへ
の蒸気冷媒を飛沫同伴する手段を提供するように、発生器の下流側に配置される
。
この好ましい配置において、発生器から流出した流体は蒸気の形態であり、当
業者はこれがエゼクタの動作において最大の効率を与えることを理解するであろ
う。
好ましくは、液体冷媒は凝縮器から蒸発器へ通過し、次に、蒸発器で蒸発され
るとすぐに、蒸気冷媒はエゼクタおよび吸収器の両者へと通過する。つまり、本
発明のシステムにおいては冷媒流体のすべてが蒸発器を通過することになる。こ
のことの重要性は従来技術を参照して以下に明らかになる。
あるいは蒸発器での冷却能力と発生器へ入力される熱との間の比率として測定
されるシステムの効率は、蒸発器からエゼクタを通して引かれる冷媒蒸気の量と
吸収器内へ引かれる
冷媒の量の合計量によって決定される。
熱によって動力を供給される冷凍システムまたは吸収冷凍装置におけるエゼク
タの使用は従来技術において説明されてきたが、上記配置および対応する利点は
これまで開示も理解もされていなかった。
例えば、KuhlenschmidtはUS 3717007において塩吸収剤をベースとした作業流
体を用いた吸収サイクルが低い蒸発器温度で作業することが可能であり、結晶化
の問題を引き起こさずに空気冷却された吸収剤を用いることが可能であることを
開示している。このサイクルの概略図を図aに示す。このサイクルは二重効果発
生器からなるが、従来の二重効果システムに対して、第2効果発生器からの低圧
蒸気冷媒が、蒸発器からの冷媒蒸気を飛沫同伴するエゼクタからの一次流体とし
て用いられている。これは、第2効果発生器からの冷媒はいずれも蒸発器を通過
しないことを意味する。したがって、このシステムにおける冷媒のすべてが蒸発
器における熱交換の目的のために用いられるわけではない。これは非効率的とな
る傾向がある。
エゼクタの排気は蒸発器と吸収器との間の圧力差を維持するために吸収器へ排
出される。これは、吸収器が第1効果発生器から蒸発器を通過する冷媒を処理し
、蒸発器をバイパスする第2効果発生器からの冷媒も処理することを意味する。
したがって、吸収器は蒸発器内での熱交換に直接関与しない冷媒も処理しなくて
はならない。これは非効率的となる傾向
がある。さらに、吸収器が行わなくてはならない処理が増加すればするほど、そ
の大きさおよび複雑さ、したがってシステムのそれも増大する。
高圧の冷媒蒸気は第2効果発生器において凝縮されるのでこのサイクルにおい
ては凝縮器は存在しないこと、および低圧の冷媒蒸気がエゼクタの一次流体とし
て用いられることに注意されたい。
同様に、Chenらはthe Journal of Applied Energy Volume 30 Pages 37〜51に
おいて、エゼクタを備えたサイクルが発生器から戻った高温液体溶液を一次流体
として用い、蒸発器からの冷凍蒸気を二次流体として用いることを開示した。流
体をエゼクタの一次流体として用いることは発生器から直接得られる蒸気を用い
るよりも非効率的である。
発生器の排気は図bに示すように吸収器へ排出される。ここでも、吸収器はシ
ステムを流れる冷媒のすべてを処理する責任を負っている。したがって、吸収器
の大きさおよび複雑さはそれに従って修正されなくてはならない。吸収器と蒸発
器との間の差分圧力比率は1.1から1.2の間であることが請求の範囲に規定されて
いる。
本発明のさらに他の局面によれば、蒸発器からの蒸気を飛沫同伴し、前記蒸気
を凝縮器へ送達することによってシステムの性能を向上させるように蒸発器およ
び凝縮器とはエゼクタが流体接続していることを特徴とするヒートポンプおよび
冷凍システムが提供される。
ここに開示され発明される単効果システムのコンピュータシミュレーションは
、二重効果サイクルから得ることが可能な値に近いCOP値が可能であるが、構
成の複合性が低下していることを示す。新しい設計に基づく製品は、冷却のキロ
ワットあたりの価格の点から従来の機器よりも小型でありかつ安価とすることが
できる。提案されるサイクルは二重効果システムに比べてさらに容易に逆転させ
ることができ、同様のCOP値でさらに高い吸込み温度を提供することができる
。COPのさらなる増加は、組み合わせたエゼクタ−吸収サイクルにエコノマイ
ザユニットを導入することによって達成され得る。
最も迅速な適用は、注文製造の機器に対してであり、その後は主要なパートナ
ーと直接組んで、および/または技術の使用許可を受けることによって大衆市場
装置の発展となる。
本発明の一実施態様を以下の図面を参照することによって単なる実施例として
以下に説明する。
図1は従来の単効果吸収サイクルの概略図を示し、
図2は本発明による新規のエゼクタ−吸収システムの概略図を示し、
図3は分離器をさらに備えた本発明による新規のエゼクタ−吸収システムの概
略図を示し、さらに、
図4はエゼクタエコノマイザ装置をさらに備えた本発明による新規のエゼクタ
−吸収システムを示す。
先ず図1では、従来の吸収ヒートポンプおよび冷凍装置シ
ステムが図示され、その最も簡単な形態において、凝縮器2と流体接続した発生
器1を備え、凝縮器2は蒸発器3と流体接続している。蒸発器3は吸収器4と流
体接続しており、吸収器4は最終的に発生器と流体接続している。このように、
少なくとも4つの部材を有するシステムが図示される。
説明の目的のために、吸収剤および吸収器は臭化リチウムであり、冷媒は水で
あるとする。冷媒(水)の蒸気は蒸発器3から吸収器4へ流れ、そこで吸収剤(
臭化リチウム)と共に溶液に取り込まれる。冷媒蒸気の流れは蒸発器3内のボイ
ル工程によって維持され、これによって、必要な冷凍効果が生成される。吸収工
程は発熱を伴うので、吸収器4はその温度を維持するように一定の冷却を必要と
する。冷媒が吸収剤と共に溶液に入ると、水蒸気を吸収するその能力が減少する
。吸収剤の力を維持するために、大量の溶液が高圧で発生器1へ継続的にポンプ
注入され、そこで溶液は加熱されて溶液から引き出された冷媒水を発生し、その
後、それは圧力調整バルブ5を介して吸収剤4に戻される。高圧冷却水蒸気は発
生器1から凝縮器2へ流れ、そこで液化されて膨張バルブ6を介して蒸発器3へ
戻される。このようにしてサイクルは完了する。溶液熱交換器7は、発生器1か
ら戻った高温の溶液を用いる吸収器を離れる溶液を予め加熱するために追加され
得る。このように、発生器1の入力が低減され、システムの性能が改良される。
これに対し、図2において、本発明による吸収熱/冷凍装
置システムが図示される。エゼクタ8が蒸発器3および発生器1の下流側であっ
て、凝縮器2の上流側に配置される。発生器1から出た冷媒蒸気がエゼクタ8を
駆動させ、続いて蒸発器3からの冷媒蒸気を飛沫同伴する。さらに、図1を参照
して説明されるように、吸収器4内の吸収剤もまた、蒸発器3からの冷媒蒸気を
飛沫同伴する。このように、本発明のシステムにおいて、2つの手段8および4
が蒸発器3からの冷媒蒸気を飛沫同伴するために設けられており、これによって
システムの性能が向上する。しかしながら、蒸発器3を出てエゼクタ8を通過す
る冷媒蒸気は凝縮器2へ送達される。これは、エゼクタ8を通過する冷媒蒸気が
圧縮されて凝縮器2内で凝縮するので、吸収器4にかかる重荷が大きく低減され
たことを意味する。吸収器4にかかる重荷または負担は大きく低減され、その結
果、吸収器4の大きさおよび複雑さが従来の比較可能なシステムにおいて通常見
られるものの半分から3分の2にまで減少され得る。
本発明のシステムを流れる冷媒のすべてが蒸発器を直接通過し、したがって、
周囲の環境との熱交換のために用いられることに注意されたい。
エゼクタによって蒸発器から引き出される蒸気の量はシステムの性能およびシ
ステムの冷却の効率の両方を決定する。引き出される蒸気の量が増加すればする
ほど、冷却性能は増大する。
図3は分離器9を備えた本発明によるエゼクタ−吸収シス
テムを示す。分離器9はシステムを流れる吸収剤溶液の再充填または乾燥を制御
するために設けられる。図2に示すシステムにおいて、吸収剤の再充填は、発生
器1からエゼクタ2を通って流れる冷媒蒸気によって大部分が決定されている。
したがって、冷媒蒸気のエゼクタ8を通る流れの速度は、吸収剤の再充填に対す
る重要な制御効果を有している。これに対し、図3に示すシステムにおいて、分
離器9は、発生器1を通過して吸収器4に戻る途中の吸収剤が分離器9において
さらに再充填されることができるように設けられ、生成された冷媒蒸気が供給ラ
イン10を介して凝縮器2へと通過される。分離器9における再充填は膨張など
の従来の技術によって実施され得る。分離器9の設置は用いられる吸収剤の性質
に依存し、分離器などのある吸収剤を備えたものとすれば、システムが動作する
方法を制御する際に有益である。
図4はエゼクタエコノマイザ装置11をさらに備えた本発明によるエゼクタ−吸
収システムを示す。エコノマイザ装置11はエゼクタ8の下流側かつ凝縮器2の上
流側に設けられる。エコノマイザ装置11は吸収剤溶液が発生器1を通過する前に
それを加熱するために用いられる。このように、吸収器4を出た吸収剤は供給ラ
イン12に沿って移動する。この供給ラインは供給ライン13を通って平行な流れを
生成するために点Xで分岐している。ライン13はエコノマイザ装置11を通って進
み、供給ライン13aを介して発生器1へ進む。さらに、発生器1およびエゼクタ
8をすでに通過した冷媒蒸気も同様にエコ
ノマイザ装置11を通過する。このように、この冷媒蒸気からの熱は供給ライン13
を流れる吸収剤を加熱するために用いられる。供給ライン13aを介して発生器1
へ通過する吸収剤はこのようにして発生器1へ入る前に予め加熱される。これに
よってシステムの効率が増大する。
加えて、蒸発器3から飛沫同伴され、エゼクタ8を通過する冷媒蒸気も同様に
エコノマイザ装置11を通過することも理解され得る。
したがって、発生器1および蒸発器3から引き出された冷媒蒸気は供給ライン
13を通過する吸収剤を予め加熱するために用いられる。この構成によって発生器
にかかる負担が低減され、凝縮器での外部熱転移を低減させる。これは、凝縮器
の大きさ/能力が低減され得ることを意味する。
加熱器およびボイラーへの本発明の応用は本発明の範囲内であり、さらに、本
発明は化学および加工産業における市場性開発へも適用可能である。本発明の主
な論点はシステムの性能を変えるために蒸発器と凝縮器との間にエゼクタを設け
ることに関する。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1994年12月7日
【補正内容】
明細書
吸収冷凍装置に関する改良
本発明はヒートポンプおよび冷凍システムに関し、特に、インゼクタ、エゼク
タまたはジェットポンプ(以下エゼクタと称する)と組み合わせた、可逆ヒート
ポンプおよび冷凍システムに関する。
蒸気圧縮タイプに代えて熱作動の冷凍およびヒートポンプサイクルを用いるた
めの環境的ケースは強力である。例えば、空気調節の用途において典型的に用い
られる、幾分より複合的な、つまり多効果の吸収冷凍装置は、ほぼ1.5の有効性
能係数(COP)値(一次エネルギー消費に関して)を有していることが報告さ
れている。一方、本線からの電力によって動力を供給される蒸気圧縮システムは
、電力供給の非能率性を考慮しても0.9よりも大きな有効COP値を有すること
はまれである。これらのCOP値の比較は、CO2放出を70%低減する潜在的可
能性が吸収冷凍装置への変更によって可能であることを示している。これは、上
記潜在的可能性に加えて、水などの環境に馴染みやすい冷媒を用いる環境的利益
である。
残念なことに、より複合的でない、つまり単効果の吸収冷凍装置は上述のいず
れと比較しても効率的ではない傾向がある。例えば、それらは0.4〜0.45の領域
においてCOPを有する傾向がある。したがって、それらの性能は多効果吸収冷
凍装置および蒸気圧縮冷凍装置よりも低い。さらに、それらは
冷却用のkWあたりの設備投資に関してさらにコストがかかる傾向もある。
冷凍およびヒートポンプの重要な用途の1つは建造物における空気調節である
。現時点では、経済的および環境的制御の両理由から大きな中央冷凍プラントか
ら離れる傾向が増大している。この傾向は、分割、多分割、および可変冷媒ボリ
ューム(VRV)システムの増加する販売の成功によって認識される。上記シス
テムのすべては小さな本線から動力を供給される蒸気圧縮冷凍装置を有している
。販売されたシステムの大多数は30kWよりも低い冷却能力を有している。しか
しながら、現時点では、吸収冷凍装置ユニットは一般に300kWから6000kWの
範囲の冷却能力を持つもののみが入手可能である。
小さな能力範囲においてコスト効果的および効率的な吸収冷凍装置の必要性が
認識される。しかしながら、小規模な冷凍装置市場は特に価格に敏感であり、非
常に競争的である。効率的かつコスト効果的なユニットがさらに広く利用可能と
なり環境的利益が理解されるようになるには、熱によって動力を供給される冷凍
装置の技術に関してさらなる調査研究が必要である。
冷凍機の将来の発展に対する我々の目標は、CFC、HCFC、およびHFC
冷媒などの合成冷媒流体の使用を中止することを含み、作動中の冷凍機器に付随
するCO2放出を大幅に削減することを含まなくてはならない。これらの目標を
達
成する1つの方法は、冷凍機器のユーザに、蒸気圧縮のオプションではなく、熱
によって動力を供給される冷凍装置のオプションを選択するように働きかけるこ
とである。
したがって、我々は吸収器にかかる負担が軽減されるように適用されたヒート
ポンプおよび冷凍システムを提供することを望む。
凝縮器の上流側となるように配置されたエゼクタを備えたヒートポンプおよび
冷凍システムを提供することは公知である。例えば、US 4,290,273はそのような
システムを説明しているが、エゼクタが蒸発器からの冷媒蒸気を抽出し、システ
ムの効率を増大させるために吸収器の需要を低減させる目的では用いられていな
いことに注目されたい。一方、エゼクタを設けることは吸収器にかかる負担には
何の影響も持たないので、本特許書類において説明されるシステムにおけるエゼ
クタの相対的配置は本発明の主題とは何の関係もない。
同様に、US 3,440,832もまた、エゼクタが組み込まれており、このエゼクタが
凝縮器の上流側に配置されているシステムを説明している。しかしながら、この
文献は同様に、吸収器にかかる負担を低減する方法に関しては述べておらず、逆
に、吸収器にかかる極度の負担のインパクトを最小化する方法を述べている点で
本出願に述べられる発明とは異なった教示を行っている。
したがって、本発明の目的は、熱によって動力を供給されるので環境的に好ま
しく、また、小規模であるので商業的に
好ましいヒートポンプおよび冷凍システムを提供することである。
したがって、本発明によればヒートポンプおよび冷凍システムが提供され、こ
のシステムは、
システムに動力を供給するために熱を生成する発生器、
該システムから熱を拒絶(reject)する凝縮器、
環境との熱交換を行う蒸発器、
該蒸発器から冷媒蒸気を抽出(extract)する吸収器、および
該蒸発器から冷媒蒸気を抽出するエゼクタ、
を備えており、
該エゼクタは、前記蒸発器からエゼクタによって抽出された冷媒蒸気が凝縮器
へ送達される前にエゼクタを通過するように、前記蒸発器の下流側かつ凝縮器の
上流側に配置されていることを特徴とする。
上記配置において、エゼクタを通過する冷媒蒸気は凝縮器における凝縮を容易
にするために圧縮される。
さらに、蒸発器から抽出された冷媒蒸気のうちいくらかはエゼクタを介して凝
縮器へ飛沫同伴(混入)されるので、吸収器に要求される処理の度合いが比較的
低減される。これは、本発明のシステムにおいてkW冷却あたり、吸収器の大き
さが従来のシステムにおいて典型的に必要であった大きさよりも小さく半分から
3分の2にまで減少可能であることを意味する。さらに、凝縮器の大きさは変更
されないままである。吸収器は比較的複合的であり、大きく、コストのかかるシ
ス
テムの構成要素であるので、本発明による改変がシステムのコストを低減し、か
つ良好な性能を提供しながら複雑さを減少させるという理由から多くの利点を有
することは明らかである。
本発明の好ましい実施態様において、エゼクタはまた、発生器から流出してエ
ゼクタを通過する流体、例えばスチームなどの蒸気冷媒が蒸発器からエゼクタへ
の蒸気冷媒を飛沫同伴する手段を提供するように、発生器の下流側に配置される
。
この好ましい配置において、発生器から流出した流体は蒸気の形態であり、当
業者はこれがエゼクタの動作において最大の効率を与えることを理解するであろ
う。
好ましくは、液体冷媒は凝縮器から蒸発器へ通過し、次に、蒸発器で蒸発され
るとすぐに、蒸気冷媒はエゼクタおよび吸収器の両者へと通過する。つまり、本
発明のシステムにおいては冷媒流体のすべてが蒸発器を通過することになる。こ
のことの重要性は従来技術を参照して以下に明らかになる。
あるいは蒸発器での冷却能力と発生器へ入力される熱との間の比率として測定
されるシステムの効率は、蒸発器からエゼクタを通して引かれる冷媒蒸気の量と
吸収器内へ引かれる冷媒の量の合計量によって決定される。
熱によって動力を供給される冷凍システムまたは吸収冷凍装置におけるエゼク
タの使用は従来技術において説明されてきたが、上記配置および対応する利点は
これまで開示も理解もされていなかった。
例えば、KuhlenschmidtはUS 3717007において塩吸収剤をベースとした作業流
体を用いた吸収サイクルが低い蒸発器温度で作業することが可能であり、結晶化
の問題を引き起こさずに空気冷却された吸収剤を用いることが可能であることを
開示している。このサイクルの概略図を図aに示す。このサイクルは二重効果発
生器からなるが、従来の二重効果システムに対して、第2効果発生器からの低圧
蒸気冷媒が、蒸発器からの冷媒蒸気を飛沫同伴するエゼクタからの一次流体とし
て用いられている。これは、第2効果発生器からの冷媒はいずれも蒸発器を通過
しないことを意味する。したがって、このシステムにおける冷媒のすべてが蒸発
器における熱交換の目的のために用いられるわけではない。これは非効率的とな
る傾向がある。
エゼクタの排気は蒸発器と吸収器との間の圧力差を維持するために吸収器へ排
出される。これは、吸収器が第1効果発生器から蒸発器を通過する冷媒を処理し
、蒸発器をバイパスする第2効果発生器からの冷媒も処理することを意味する。
したがって、吸収器は蒸発器内での熱交換に直接関与しない冷媒も処理しなくて
はならない。これは非効率的となる傾向がある。さらに、吸収器が行わなくては
ならない処理が増加すればするほど、その大きさおよび複雑さ、したがってシス
テムのそれも増大する。
高圧の冷媒蒸気は第2効果発生器において凝縮されるのでこのサイクルにおい
ては凝縮器は存在しないこと、および低
圧の冷媒蒸気がエゼクタの一次流体として用いられることに注意されたい。
同様に、Chenらはthe Journal of Applied Energy Volume 30 Pages 37〜51に
おいて、エゼクタを備えたサイクルが発生器から戻った高温液体溶液を一次流体
として用い、蒸発器からの冷凍蒸気を二次流体として用いることを開示した。流
体をエゼクタの一次流体として用いることは発生器から直接得られる蒸気を用い
るよりも非効率的である。
発生器の排気は図bに示すように吸収器へ排出される。ここでも、吸収器はシ
ステムを流れる冷媒のすべてを処理する責任を負っている。したがって、吸収器
の大きさおよび複雑さはそれに従って修正されなくてはならない。吸収器と蒸発
器との間の差分圧力比率は1.1から1.2の間であることが請求の範囲に規定されて
いる。
ここに開示され発明される単効果システムのコンピュータシミュレーションは
、二重効果サイクルから得ることが可能な値に近いCOP値が可能であるが、構
成の複合性が低下していることを示す。新しい設計に基づく製品は、冷却のキロ
ワットあたりの価格の点から従来の機器よりも小型でありかつ安価とすることが
できる。提案されるサイクルは二重効果システムに比べてさらに容易に逆転させ
ることができ、同様のCOP値でさらに高い吸込み温度を提供することができる
。COPのさらなる増加は、組み合わせたエゼクタ−吸収サイクルにエコノマイ
ザユニットを導入することによって達成さ
れ得る。
最も迅速な適用は、注文製造の機器に対してであり、その後は主要なパートナ
ーと直接組んで、および/または技術の使用許可を受けることによって大衆市場
装置の発展となる。
本発明の一実施態様を以下の図面を参照することによって単なる実施例として
以下に説明する。
図1は従来の単効果吸収サイクルの概略図を示し、
図2は本発明による新規のエゼクタ−吸収システムの概略図を示し、
図3は分離器をさらに備えた本発明による新規のエゼクタ−吸収システムの概
略図を示し、さらに、
図4はエゼクタエコノマイザ装置をさらに備えた本発明による新規のエゼクタ
−吸収システムを示す。
先ず図1では、従来の吸収ヒートポンプおよび冷凍装置システムが図示され、
その最も簡単な形態において、凝縮器2と流体接続した発生器1を備え、凝縮器
2は蒸発器3と流体接続している。蒸発器3は吸収器4と流体接続しており、吸
収器4は最終的に発生器と流体接続している。このように、少なくとも4つの部
材を有するシステムが図示される。
説明の目的のために、吸収剤および吸収器は臭化リチウムであり、冷媒は水で
あるとする。冷媒(水)の蒸気は蒸発器3から吸収器4へ流れ、そこで吸収剤(
臭化リチウム)と共に溶液に取り込まれる。冷媒蒸気の流れは蒸発器3内のボイ
ル工程によって維持され、これによって、必要な冷凍効果が
生成される。吸収工程は発熱を伴うので、吸収器4はその温度を維持するように
一定の冷却を必要とする。冷媒が吸収剤と共に溶液に入ると、水蒸気を吸収する
その能力が減少する。吸収剤の力を維持するために、大量の溶液が高圧で発生器
1へ継続的にポンプ注入され、そこで溶液は加熱されて溶液から引き出された冷
媒水を発生し、その後、それは圧力調整バルブ5を介して吸収剤4に戻される。
高圧冷却水蒸気は発生器1から凝縮器2へ流れ、そこで液化されて膨張バルブ6
を介して蒸発器3へ戻される。このようにしてサイクルは完了する。溶液熱交換
器7は、発生器1から戻った高温の溶液を用いる吸収器を離れる溶液を予め加熱
するために追加され得る。このように、発生器1の入力が低減され、システムの
性能が改良される。
これに対し、図2において、本発明による吸収熱/冷凍装置システムが図示さ
れる。エゼクタ8が蒸発器3および発生器1の下流側であって、凝縮器2の上流
側に配置される。発生器1から出た冷媒蒸気がエゼクタ8を駆動させ、続いて蒸
発器3からの冷媒蒸気を飛沫同伴する。さらに、図1を参照して説明されるよう
に、吸収器4内の吸収剤もまた、蒸発器3からの冷媒蒸気を飛沫同伴する。この
ように、本発明のシステムにおいて、2つの手段8および4が蒸発器3からの冷
媒蒸気を飛沫同伴するために設けられており、これによってシステムの性能が向
上する。しかしながら、蒸発器3を出てエゼクタ8を通過する冷媒蒸気は凝縮器
2へ送達される。こ
れは、エゼクタ8を通過する冷媒蒸気が圧縮されて凝縮器2内で凝縮するので、
吸収器4にかかる重荷が大きく低減されたことを意味する。吸収器4にかかる重
荷または負担は大きく低減され、その結果、吸収器4の大きさおよび複雑さが従
来の比較可能なシステムにおいて通常見られるものの半分から3分の2にまで減
少され得る。
本発明のシステムを流れる冷媒のすべてが蒸発器を直接通過し、したがって、
周囲の環境との熱交換のために用いられることに注意されたい。
エゼクタによって蒸発器から引き出される蒸気の量はシステムの性能およびシ
ステムの冷却の効率の両方を決定する。引き出される蒸気の量が増加すればする
ほど、冷却性能は増大する。
図3は分離器9を備えた本発明によるエゼクター吸収システムを示す。分離器
9はシステムを流れる吸収剤溶液の再充填または乾燥を制御するために設けられ
る。図2に示すシステムにおいて、吸収剤の再充填は、発生器1からエゼクタ2
を通って流れる冷媒蒸気によって大部分が決定されている。したがって、冷媒蒸
気のエゼクタ8を通る流れの速度は、吸収剤の再充填に対する重要な制御効果を
有している。これに対し、図3に示すシステムにおいて、分離器9は、発生器1
を通過して吸収器4に戻る途中の吸収剤が分離器9においてさらに再充填される
ことができるように設けられ、生成された冷媒蒸気が供給ライン10を介して凝
縮器2へと通過され
る。分離器9における再充填は膨張などの従来の技術によって実施され得る。分
離器9の設置は用いられる吸収剤の性質に依存し、分離器などのある吸収剤を備
えたものとすれば、システムが動作する方法を制御する際に有益である。
図4はエゼクタエコノマイザ装置11をさらに備えた本発明によるエゼクタ−吸
収システムを示す。エコノマイザ装置11はエゼクタ8の下流側かつ凝縮器2の上
流側に設けられる。エコノマイザ装置11は吸収剤溶液が発生器1を通過する前に
それを加熱するために用いられる。このように、吸収器4を出た吸収剤は供給ラ
イン12に沿って移動する。この供給ラインは供給ライン13を通って平行な流れを
生成するために点Xで分岐している。ライン13はエコノマイザ装置11を通って進
み、供給ライン13aを介して発生器1へ進む。さらに、発生器1およびエゼクタ
8をすでに通過した冷媒蒸気も同様にエコノマイザ装置11を通過する。このよう
に、この冷媒蒸気からの熱は供給ライン13を流れる吸収剤を加熱するために用い
られる。供給ライン13aを介して発生器1へ通過する吸収剤はこのようにして発
生器1へ入る前に予め加熱される。これによってシステムの効率が増大する。
加えて、蒸発器3から飛沫同伴され、エゼクタ8を通過する冷媒蒸気も同様に
エコノマイザ装置11を通過することも理解され得る。
したがって、発生器1および蒸発器3から引き出された冷媒蒸気は供給ライン
13を通過する吸収剤を予め加熱するため
に用いられる。この構成によって発生器にかかる負担が低減され、凝縮器での外
部熱転移を低減させる。これは、凝縮器の大きさ/能力が低減され得ることを意
味する。
加熱器およびボイラーへの本発明の応用は本発明の範囲内であり、さらに、本
発明は化学および加工産業における市場性開発へも適用可能である。本発明の主
な論点はシステムの性能を変えるために蒸発器と凝縮器との間にエゼクタを設け
ることに関する。
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(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
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,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
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B,GE,HU,JP,KP,KR,KZ,LK,LU
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Z,VN
(72)発明者 アフォーンラタナ,ササ
イギリス国 エス6 3ディーゼット,サ
ウス ヨークシャー,シェフィールド,イ
ンフィアマリー ロード,ポートランド
ストリート,ポートランド ビルディング
ス,フラット 2 (番地なし)