【発明の詳細な説明】
ボルテックスチューブにおける熱力学的プロセスを制御する方法及び
該方法を実施するためのボルテックスチューブ並びにその適用
発明の分野
本発明は、流体媒体の制御及び使用に関し、より具体的には、ボルテックスチ
ューブ(vortex tube)における熱力学的プロセスを制御する方法及
びこの方法を実施するためのボルテックスチューブ並びにその適用に関する。
現在の技術
環境と共存し、即ち環境に優しい製造プロセスを開発することは、今日の重要
な課題となっている。故に、工業、農業及び医療分野で使用される、人間に有用
な環境と共存する「作動流体(working fluid)」を得るための方
法及び装置を形成することは、現在の関心事の一つである。
例えば、加工中の金属を冷却するため、水及び潤滑剤−冷却剤と称される油系
の流体が、金属加工業界で一般的に使用されており、フレオンと称されるフッ素
及び塩素を有する薬剤が、製品の状態を設定し且つ保存するために冷凍業界で使
用されている。これらの薬剤は共に、人間及び環境に対する影響の点で有害であ
る。
この問題点の一つの可能な解決策は、ランク(Rank)効果を利用するボルテッ
クスチューブを使用することで得られる、環境的に優しい流体を工業、農業及び
医療分野で使用することである。
ランク効果を利用して、ボルテックスチューブ内の熱力学プロセスを制御する
方法が当該技術分野で公知である(エナジア・パブリシャーズ(Energia Publis
hers)1976、6−11ページにおける、A.V.マチノフ(Martynov)及びV.M
.ブロジェンスキー(Brodyansri)による「ボルテックスチューブとは何か(Wh
at is a Vortex tube)」)。これは、加圧流体流がノズル入口に供給されるこ
とを記述している。ノズル入口において、流体流は膨張し、渦流とされ且つ作用
チューブに供給され、その流体流は低温流と高温流とに分割される。この低温流
は、低温流の枝管を介して吸引され、高温流は、作用チューブの他端から弁を介
して
伝達される。高温流の枝管内の弁の位置及びノズルの供給圧力を変化させること
により、大部分が高温流及び低温流の温度、流量及び排出流の速度である、ボル
テックスチューブ内の熱力学的プロセスのパラメータが調節される。
弁を介して高温流の排出枝管と連通する一端を有する作用チューブを備えるボ
ルテックスチューブのデザインが当該技術分野で公知である。この作用チューブ
の他端は、隣接する作用チューブに対し同軸状に配置されたノズル入口と連通し
、孔を有する隔膜によって作用チューブの反対側から遮断され、流体は、この孔
を通って、低温流内に伝達される。
このボルテックスチューブの作用は、次の通りである。
加圧流体流が、導入ポートを介してノズル入口に供給される。この圧縮された
流体は、最初にノズル入口で、次に作用チューブで、膨張され且つ低温流及び高
温流に分割される。低温流体流は、低温流の枝管の隔膜の孔を通じて運ばれる。
高温流は、弁を介して作用チューブの他端から高温流の枝管に運ばれる。弁の位
置を変更することにより、低温流体流及び高温流体流の温度を変化させることが
可能となる。低温流の温度を低くするためには、弁を使用して、低温流の流量を
少なくし、作用チューブにおける高温の端部の流動断面積を大きくする。逆に、
高温流の温度を上昇させるためには、弁を使用して、作用チューブの断面を小さ
くし、これにより、流動断面積を小さくする。
ボルテックスチューブ内に流入する流体流のエネルギが、その一定量が低温流
から運ばれて高温流に付与されるように分配されなければ、低温流及び高温流は
形成されない。このエネルギの再分配は、ボルテックスチューブ内で生じる複雑
な熱力学的プロセスの結果である。
ボルテックスチューブは、そのユニークな特性のため、各種の工業、農業及び
医療分野で広く使用されている。
しかしながら、ボルテックスチューブの設計のそれぞれにおいては、低温流及
び高温流のパラメータを変化させることに限界があり、流れのパラメータを変化
させるためにはボルテックスチューブの設計を変更しなければならないこともあ
り、その結果、その適用分野が限定される。
発明の開示
本発明は、ボルテックスチューブ内での熱力学的プロセスを制御する方法、及
びこの方法を実施するためのボルテックスチューブを提供するものであり、ここ
で、そのボルテックスチューブの幾何学的パラメータが一定であると仮定して、
ボルテックスチューブの構造的変化により、ボルテックスチューブ内で生じる熱
力学的プロセスを上述の技術的問題点に対応して広範囲に亙って調節することが
可能となる。
上述の問題点は、ボルテックスチューブ内の熱力学的プロセスを制御する方法
により解決され、この方法は、加圧流体流がノズル入口に供給され、膨張する流
体流がノズル入口内を動くとき、その流れが渦流とされて作用チューブに入り、
ここで、その渦流となった流体流は、低温流と高温流とに分割され、その流れが
それぞれ低温流の枝管及び高温流の枝管を介して吸引されるようにする。この間
に、その流体の低温流及び高温流に必要とされる特性に従って、作用チューブ内
で生じる熱力学的プロセスのパラメータを変化させることにより、ノズル入口内
の流体流が制御されるようにしたことを特徴とする。このようにして、高温流の
枝管中の高温流の流量を調節することで、熱力学的プロセスのパラメータを制御
する方法が実現可能となる。
ノズル入口の流体の流路の長さを調節することにより、ノズル入口内の流体流
を制御することができる。
また、それぞれ異なる経路の長さを有する少なくとも2つの回転流に分割する
ことにより、ノズル入口内の流体の流れを制御すると都合がよい。
また、ノズル入口における流体流の流入速度、流量及びその方向を調節するこ
とにより、流体流を制御することができる。
ノズル入口における流体流を調節することにより、ボルテックスチューブの要
素を構造的に変化させることなく、該ボルテックスチューブの出口における高温
流及び低温流の特性を広い範囲に亙って制御し、また、ユーザに対する流体の流
量又は圧力の変化を考慮して、これらの特性を制御することが可能となる。
より低い低温流を得るため、作用チューブ内の高温流の壁に近接する層の移動
速度を変化させることが更に可能となる。
流体を冷却する程度を増すため、低温流の枝管の出口における低温流の排出速
度を更に調節することが望ましい。
低温流及び高温流を変化させる限界点を拡げるため、作用チューブ内における
流体の壁に近接する層の対流による熱伝達を促進することが更に可能である。
場合によっては、流体の低温流及び/又は高温流を更にイオン化するとよい。
任意の流体をイオン化する間に低温流及び高温流の組成を変化させることが可
能である。
この低温流及び高温流のイオン化により、流体に対する流体流の化学的影響が
大きくなり、表面間の接触状態が変化し、又は、流体自体の状態が安定する。
流体の表面層の物理化学的性質を変化させるためには、密度の異なる材料をイ
オン化時に更に導入する必要がある。
一つの流体として、気体及び/又は液体及びその混合体を使用することが可能
である。
上述の問題点は、作用チューブを含むボルテックスチューブによっても解決さ
れ、該ボルテックスチューブの一端は、制御チューブを介して、高温流の排出枝
管と連通し、その他端は、同軸状に配置されたノズル入口と連通し、このノズル
入口は、低温流の排出枝管に接続され、また、本発明に従い、加圧状態でノズル
入口に供給される流体の供給源に、導入ポートを介して接続される。更に、低温
流及び高温流の要求される特性に従って、ノズル入口における流体流を制御し且
つボルテックスチューブ内で生じる熱力学的プロセスのパラメータを変化させる
手段が、このノズル入口に設けられる。
該ノズル入口は、導入ポートを有する円筒状スリーブの形態にて形成し、その
一端は作用チューブに接続する一方、その他端は中央孔及び/又は開口部を有す
る隔膜で覆い、ノズル入口における流体流を制限する手段として機能する平坦な
スパイラルを円筒状スリーブ内で作用チューブを向いた上述の隔膜の一端面に堅
固に固着し、上記の隔膜が、その軸線を中心として回転可能であるように配置さ
れるようにすることができる。
ノズル入口は、導入ポートを有する円筒状スリーブの形態にて形成し、該導入
ポートの一端は作用チューブに接続し、また、円筒状スリーブは、フランジを有
し、該フランジは、流体の流れを制御する働きをし、また、円筒状スリーブ内で
同軸状に配置し、また、互いに関して回転し且つ円筒状スリーブに関して同心状
に配置され、大径のスリーブは突起を有し、より小径の円筒状スリーブは、作用
チューブを向いたその端部に溝を有し、より小径の円筒状スリーブの開口部が低
温の流体流を低温流の枝管に排出する導管として機能するようにすることが可能
となる。
フランジを有する円筒状スリーブは、互いに関して入れ子式に動き得るように
配置することが可能である。
より大径の円筒状スリーブに設けた突起の外径は、該突起の全高に沿ってスリ
ーブの外半径よりも小さくする必要がある。
場合によっては、ノズル入口は、斜めのラバル(Laval)ノズルの形態にて作
用するように形成し、該ノズル入口の短部分には、ダンパを取り付け、供給され
る流体流に関して該ダンパが回転することが出来るようにすることが可能である
。
このノズル入口の実施例は、ユーザの状態に関係なく、ボルテックスチューブ
を汎用とし、また、チューブの幾何学的パラメータを変化させることなく、ユー
ザの所定の伝導状態が変化することを考慮して、流体流の流量、温度及び排出速
度に関して異なる組み合わせとすることを許容する。
ノズル入口における流体の流出量を増すためには、円筒状スリーブの内面は、
摩擦率の小さい材料で形成することができる。
高温流の枝管の側部からの作用チューブの外面の部分は、露出させ、流体の壁
に近接する層が環境と熱交換されるようにすることが可能である。
また、高温流の枝管の側部からの作用チューブの部分は、波形に形成し、流体
流の壁に近接する経路の長さを変化させ、また、対流による熱交換を行うことが
可能である。
高温流の速度及び流量をより制御可能にするため、高温流の排出枝管の制御弁
は、結合ナットの形態にて形成し、作用チューブに螺着し、また、半径に沿って
作用チューブの壁に近接する位置にて上記作用チューブの端部に開口部を形成し
、調節可能な環状空隙を有するコンフューザーデュフューザノズルをフランジを
利用して結合ナットの端部に接続し、その際、結合ナットの半径に対応する開口
部をフランジに形成し、該ナット及びフランジが共通の中心軸線の周りを回転可
能であるように取り付けることができる。
流体流の速度、流量及び流体流のトーンピッチ(pitch of tone
)を制御するため、低温流の枝管の出口部分は、第二の狭小部分の断面が変化す
る、二つの(twin)ラバルノズルを備える形態で形成することが望ましい。
高温の流体流の枝管は、単一の円筒状スリーブ内に配置された一組の円筒状ス
リーブの形態で形成し、円筒状スリーブの各々には、それ自体のノズル入口を取
り付け、低温の流体流の必要な流量を提供し、また、枝管内の温度を滑らかに変
化させることができる。
ボルテックスチューブは、低温流体流及び/又は高温流体流をイオン化するイ
オン化装置を更に設けることができる。
該イオン化装置は、電源に接続された二つの電極として形成し、その一方の電
極は、その端部に配置されたリング電極を有する低温流及び/又は高温流の枝管
の円筒状部分とし、その他方の電極は、低温流及び/又は高温流の枝管内に取り
付けられたコロナ放電発生装置とし、また、該コロナ放電発生装置は、電源の陽
極又は陰極の何れかに接続することができる。
コロナ放電発生装置は、針ステムの形態にて形成し、該針ステムの外面には、
高さの等しい針タグを配置することが可能である。
また、コロナ放電発生装置は、正弦曲線の形態とすることも可能である。
コロナ放電発生装置は、低温流体流及び/又は高温流体流の方向と反対方向に
、又は同一方向に配置することが可能である。
任意の寸法のセルを有する誘電グリッドをコロナ放電発生装置の上方に取り付
けることが適当である。
また、コロナ放電発生装置を配置する領域内で高温流及び/又は低温流の枝管
の円筒状部分の内面に放射被覆を付与することも可能である。
温度感知要素をイオン化装置の出力側に取り付け、また、適合する増幅器及び
非線形フィードバック装置を介して電源に接続することが便宜である。
ボルテックスチューブにイオン化装置を取り付けることにより、また、コロナ
放電発生装置の形状のため、低温流及び/又は高温流の枝管内の温度、流量及び
圧力に従って流れに対する所望の程度のイオン化が可能となる。
密度の異なる材料を低温流及び/又は高温流に供給するため、低温流及び/又
は高温流の枝管の出口にエジェクタを取り付けることが適当である。
該エジェクタはイオン化装置の出口側に取り付けることが可能であり、これに
より、密度の異なる流体を低温及び/又は高温のイオン化流に供給することが確
実となる。
金属切断機械における切断領域を冷却する手段として、ボルテックスチューブ
を使用することが可能である。
金属切断機械の切断領域を冷却するためにボルテックスチューブを使用する場
合、二つの排出導管を有する可撓性ホースを低温流の枝管に接続し、低温流は、
一方の導管を介してカッターの正面に沿って切断領域に供給され、また、低温流
は、機械加工される物品とカッター背面との間の空隙にもう一方の排出導管を介
して供給され、イオン化流及び非イオン化の低温流の双方により処理が行われる
。
有機剤及び無機剤並びに製品の貯蔵を可能にするため、イオン化した低温流の
枝管を冷却チャンバに接続することができる。
また、高温流の枝管をチャンバに接続し、これにより、該チャンバを加熱し、
また、該チャンバをイオン化により加熱することも可能である。
図面の簡単な説明
添付図面に関して一例としての実施例に関して、本発明を以下に説明する。添
付図面において、
図1は、本発明による一つの可能な実施例によるノズル入口を備えるボルテッ
クスチューブを示す図、
図2、図3及び図4は、ノズル入口における導入ポートに関するスパイラルの
位置の可能な変形例を示す図、
図5は、隔膜の一実施例の図、
図6は、別の形態のノズル入口を有するボルテックスチューブの縦断面図、
図7及び図8は、ノズル入口における導入ポートに関する円筒状スリーブの位
置の変形例を示す図、
図9、図10及び図11は、スリーブの形態を示す図、
図12は、ボルテックスチューブの外面にスリーブフランジを配置した、図5
と同一の図、
図13は、ラバルノズルの形態に形成した導入ポートの一実施例を示す図、
図14は、高温の流体流を吸引する導管の変形例を示す図、
図15は、低温の流体流を吸引する導管の変形例を示す図、
図16は、高温流の枝管の変形例の図、
図17は、低温及び高温流の枝管内に取り付けられたイオン化装置を備えるボ
ルテックスチューブの図、
図18及び図19はコロナ放電発生装置の変形例の図、
図20、図21及び図22は、イオン化装置の変形例の図、
図23は、エジェクタを備えるボルテックスチューブの図、
図24は、ボルテックスチューブを使用して部品を機械加工する変形例を示す
図、
図25は、ボルテックスチューブを使用して冷却チャンバを冷却する変形例を
示す図である。
発明の詳細な説明
本発明に従い、ランク効果(Rank effect)を利用してボルテック
スチューブ内の熱力学的プロセスを制御する方法は、流体流を圧力下で且つ導入
ポートを介して接線方向にノズル入口まで供給する段階を含む。ノズル入口にお
いて、膨張する流体流は、渦流とされて、作用チューブに入り、ここで、低温流
と高温流とに分割され、その流れの各々は、それぞれ低温流の枝管及び高温流の
枝管を介して排出される。
高温流及び低温流の必要な特性に従い、ボルテックスチューブ内の熱力学的プ
ロセスは、通常、高温流の流量を調節することにより制御される。しかしながら
、ボルテックスチューブの構造が同一であることを条件として、本発明の方法は
、作用チューブ内の熱力学的プロセスのパラメータを更に制御し、ノズル入口自
体の流量を調節する、即ち、ノズル入口内で回転する流体流の経路の長さを変化
させ、流体流を少なくとも二つの回転流に分割し、その各々がそれ自体の経路/
長さを有するようにし、またノズル入口の導入ポートにおける流体流の排出速度
、流量及びその方向が調節されるようにする段階を含む。
更に、ボルテックスチューブの出口における低温流及び/又は高温流の排出速
度を調節することにより、作用チューブ内の熱力学的プロセスが制御される。
作用チューブの壁に近接する流体の渦流層からの熱伝達を増すことにより、又
はその高温流の壁に近接する層の移動速度を変更することにより、ボルテックス
チューブの作用効率は、向上する。
場合によっては、影響を受ける流体の選択に従い、高温流体流及び/又は低温
流体流をイオン化し、その温度に依存して、流体流のイオン化の程度を変更する
ことが出来る。
更に、イオン化前、又は必要であればイオン化工程中に、低温流及び/又は高
温流の組成を変化させ、イオン化後に、密度の異なる材を任意の流体流に導入し
、その流体流による影響を受ける流体の外側層の物理化学的性質を変化させる。
上記の目的に従い、組成の異なる高温及び低温のイオン化流が任意の比率にて
混合される。
気体状媒体として使用されるものには、空気、アルゴン、ネオン、クリプトン
、水素、四塩化炭素、二酸化炭素、窒素、及び必要とされるその他の流体がある
。
この方法は、該方法を実施する装置の作用を説明することにより、一層明らか
になるであろう。
本発明による方法を実施するためのボルテックスチューブは、作用チューブ1
(図1)を備えており、該チューブ一端は、弁2を介して高温流体流の排出枝管
3に接続され、その他端は、作用チューブ1に同軸状に取り付けられたボーテッ
クスチューブ入口4に接続され、また、低温流体流の排出枝管5に接続される。
加圧流体は、ノズル入口4(図1)に対して接線方向に配置された導入ポート
6(図2、図3、及び図4)を通じて供給源からボルテックスチューブの入口4
に供給される。ノズル入口4には、低温及び高温流に必要とされる排出特性に従
い、ノズル入口4内の直接的な流体流の動きの性質を変更する手段が取り付けら
れている。
ノズル入口4の可能な構造体的実施例について説明する前に、ボルテックスチ
ューブ内で生じる熱力学的プロセスについて説明する。
ボルテックスチューブが作用するために必要とされる第一の条件は、その内部
に回転する流体流が存在することである。任意の回転流において、各箇所におけ
る基本的な流体流の移動速度は、成分の合計、即ち、接線方向速度、軸方向速度
及び半径方向速度の各成分の合計値として示すことが出来る。接線方向速度は、
回転流の急激さの程度を表し、軸方向速度は、作用チューブ1に沿った流体流の
軸方向への動きを示し、また、半径方向速度は、チューブ1の半径に沿った流体
の流動方向を示す。
ボルテックスチューブの作用チューブ1内の流体流は、その内面に対して接線
方向に配置された導入ポート6を介して加圧流体をノズル入口4に供給すること
により回転される。ノズル入口4の内部及び作用チューブ1の内部を通った後、
流体流は、接線方向及び軸方向速度を特徴とする回転を始める。ノズル入口4は
、加圧流体流が導入ポート6から供給される箇所であるから、接線方向の最高速
度は、このノズル入口4にて生ずる。接線方向速度は、作用チューブ1の半径に
沿って変化し、ノズル入口4から高温流の排出枝管3に向けて遅くなる。これは
、作用チューブ1に対して上方層が摩擦動作する結果、流動速度が遅くなるから
である。
ボルテックスチューブ内で生じる上記の熱力学的プロセスの結果、作用チュー
ブ1の断面に沿った流体流の温度に差が生じる。即ち、流体流は、周縁層におい
て高温となり、中央層において低温となる。流体流を温度によって分割するため
、高温流体流は、弁2を介して高温流の枝管3に導入され、低温流体流は、対向
流により低温流の枝管5に導入される。
作用チューブ1に関する弁2の位置を変更することにより、低温流及び高温流
の流量及び及び温度を変化させることが出来る。低温流の温度を低下させるため
には、低温流の流量を少なくし(弁2を開放し)、また、逆に、高温流の温度を
上昇させるためには、弁2を閉じる。
弁2の流動断面積を変更することにより、低温流の枝管3から逃げる気体の量
を変化させることが出来る。低温流の枝管5に向けられた中央流は、流体の一部
が外部層から内部層に流れなければ、形成されない。このことは、接線方向動作
及び軸方向動作と共に、実質的に外周から中心方向に半径方向への動作が生じる
ことを意味し、このため、作用チューブ1における、流体流の軸方向動作は反対
方向となる。即ち、外側層は、ノズル入口4から弁2の方向に動き、また、内側
層はノズル入口4及び流体流の枝管5と反対方向に流れる。
このように、ボルテックスチューブの効率は、反対の二つのファクタに依存す
る。即ち、
−流体の中央(軸方向)層がそのエネルギを周縁層に付与することによって冷
却されること。
−流体の軸方向層が、周縁層から熱を奪うことによって予熱されることである
。
こうしたファクタの組み合わせにより、ボルテックスチューブの低温流の枝管
5からの出口にて且つ高温流の枝管3にて流体を冷却する効果が得られる。
しかしながら、ボルテックスチューブ内の熱力学的プロセスのパラメータを調
節する範囲は、幾何学的寸法及びボルテックスチューブの基本的要素の形状によ
り制限され、特別の技術上の問題点を解決する目的にて高温流及び/又は低温流
に必要とされる特性を得るためには、設計の異なるボルテックスチューブを利用
するが、その基本的要素の幾何学的寸法及び形状により、その広範囲の利用が妨
げられる。
開示されたボルテックスチューブの要素の構造上の改良は、作用チューブ1に
おける熱力学プロセスの制御を可能にすることを目的とする。
図1には、ノズル入口4の可能な変形例の一つが示してある。このノズル入口
は、作用チューブ1と同軸状/直線状に配置され且つ作用チューブと係合状態に
配置された円筒状スリーブ7として形成されている。
該円筒状スリーブ7の他端は、中央孔9を有する隔壁(diaphragm)
8により規制されている。中央孔9を囲繞する平坦なスパイラル10(図2、図
3、図4)は、その一方の端縁がノズル入口4を向いた隔壁8の端面に堅固に固
着されており、歯車11(図1)は、標識及び数字を有する別の歯車12に係合
して、隔壁8をそれ自体の軸線を中心として回転させ、また、隔壁8の他方の端
面に、該隔壁8と同軸状に堅固に固着されている。この際、歯車11は、円錐形
の開口部13を有し、該開口部は、隔壁8の中央孔9と共に、冷却流を低温流枝
管5に導入するための導管を形成する。
隔壁8が回転すると、ノズル入口4の導入ポート6に関するスパイラル10(
図2、図3、図4)の位置が変化する。
スパイラル10が図2に示した位置にあるとき、ノズル入口4に流体の一つの
渦流が形成される。隔壁を回転させると、ノズル入口4に流体の渦流が形成され
る。矢印Aに沿って隔壁8を回転させると、流体流路の長さが変化する。即ち、
流体流の回転速度が加減され、ノズル入口4における流体流のパラメータがそれ
ぞれ変化する。
スパイラル10が図3に示した位置にある場合、流体流は、導入ポート6から
出るときに、二つの流れに分割され、該流れの各々は、ノズル入口4から出ると
き、それ自体の経路長さ、回転速度、温度、及び圧力を有する。
隔壁8が矢印B(図3)に沿って回転すると、開口部(図4)を出て、ノズル
入口4に入る流体流は、膨張して、加速され、次に、二つの流れに分割され、そ
の流れの各々は、ノズル入口4から出るとき、それ自体の経路長さ、回転速度、
温度及び圧力を有する。
枝管5内に配置された低温流の流量を調節するため、隔壁は、開口部16、1
7を有する二つのディスク14、15(図5)の形態で形成し、ノズル入口4に
対して同軸状に配置され、また、中央軸線に沿って互いに往復運動することが出
来る。この際、スパイラル10(図5)は、上述の図1の設計のようにディスク
14に固着し、また、歯車11(図1)をディスク15に固着する。弾性リング
18が開口部16、17(図5)内に取り付けられ、ディスク14、15が往復
運動をするとき、該弾性リングは、中央開口部16、17の流動断面積を変化さ
せ、その結果、枝管5内に排出される低温流の流量を増減させる。
ノズル入口4内でスパイラル10が利用可能であること、隔壁8(又はディス
ク14)を使用して導入ポート6に関するその位置を変更することが可能である
こと、及び低温流を枝管5内に導入するため排出開口部の寸法を調節することが
可能であることは、ノズル入口4内の流体の流れパラメータを制御し、ノズル入
口4及び作用チューブ1双方の熱力学的プロセスを変化させ、低温流及び高温流
に必要とされる特性を得るための手段となる。
図6に示したボルテックスチューブのノズル入口のもう一つの変形例が可能で
ある。ノズル入口19は、作用チューブ1と直線状に取り付けられ且つ該作用チ
ューブに係合する円筒状スリーブ20の形態にて形成される。ノズル入口19の
外側に配置されたフランジ27、28、29、30、31、32を有する円筒状
スリーブ21、22、23、24、25、26が円筒状スリーブ20と直線状に
且つ互いに同心状に回転可能に且つスリーブ20に関して回転可能に円筒状スリ
ーブ20内に取り付けられている。該円筒状スリーブ20は、導入ポート33(
図7、図8)を有し、流体流は、該導入ポートを通じて円筒状スリーブ26に接
線方向に入り、また、該円筒状スリーブ26の開口部34(図6)を通じて、低
温流が低温流の枝管35に排出される。
スリーブ22、24、26には、溝36(図9)が形成され、またスリーブ2
1、23、25には、突起37(図10、図11)が設けられている。これらの
突起37及び溝36の方向は、作用チューブ1の方向と同一である(図6)。
必要であれば、スリーブ21乃至26は、互いに入り子式に動いて、作用チュ
ーブ1内で接線方向にスパイラル状の渦巻き流を導入することが出来る。
数字を有する線38(図12)が各フランジ27乃至32に沿って伸長し且つ
互いに等間隔で離間されており、スリーブ21乃至26(図6)が互いに関して
相対的に動いて、各種の数字の組み合わせを設定し、ノズル入口19内の流体の
流路長さの調節を行う。
更に、最大直径を有するスリーブ21(図11)の突起39の外径を突起39
の全高さに沿ったスリーブ21の外半径よりも小さくする変形例も可能である。
ノズル入口19のこの構造体的な実施例は、導入ポート33から流入する流体の
流れを二つの回転流に分割し、その流れの各々が、それ自体の経路長さを有する
ようにすることを可能にする。
該ボルテックスチューブの設計は、その他の点では、図1に示したボルテック
スチューブの設計と同様である。
図1に示したノズル入口4の設計と同様に、ノズル入口19内において(図6
)、スリーブ21乃至26を互いに関して回転させ、また、その流れを経路長さ
の異なる二つの回転流に分割することにより(図8)、導入ポート33(図7、
図8)から流入する流体流の長さを調節する手段が提供される。
その結果、低温流及び高温流に必要とされる特性に従い、作用チューブ1内の
熱力学プロセスのパラメータを変化させることが可能となる。
ノズル入口4(図1)内における熱力学プロセス条件のパラメータを変更する
ためのもう一つの可能な変形例は、導入ポート6を斜めのラバルノズルの形態に
て形成する実施例であり、ダンパ40が、ノズル入り口部分4への入口(図13
、図14)にてノズルの短部分に配置され、また、流体流に関して回転可能であ
る。
ダンパ40の位置(図13の位置A、B)を変更することにより、導入ポート
6に関するスパイラル10の位置に従って、ノズル入口への入り口部分の圧力、
流体の排出速度、流体の流量、及びノズル入口4に対する流体流の方向(導入角
度)を調節することが可能となる。上述のパラメータ、及び導入ポート6から出
るときの流体流の幅を変化させることにより、低温流及び高温流のそれぞれの枝
管5、3内の高温流及び低温流の温度特性を制御することが可能となる。
ノズル4(図1)及び19(図6)の双方の設計にとって、スパイラル10の
内側、円筒状スリーブ7(図1)の面、及び円筒状スリーブ20、21乃至26
(図6)の面は、例えば、銅、ニッケル、コバルト、アルミニウム又は金属テフ
ロン、金属プラスチック系の材料のような低摩擦率の材料で形成し、ボルテック
スチューブの入口4、19における渦流の移動速度が最大となるようにする。
しかしながら、高温流及び低温流の分配、高温流及び低温流の損失、その枝管
を通じて排出される速度は、ボルテックスチューブ内で生じる熱力学プロセスに
顕著に影響する。
高温の流体流を排出するため作用チューブ1の端部に取り付けた弁2の可能な
設計の一つについて説明する。
該弁(図14)は、作用チューブ1に螺着された結合ナット41として形成さ
れ、該作用チューブの端部には、半径に沿った作用チューブ1の壁に近接する層
の位置にて、開口部42が形成され、また、コンフューザ−ディフューザノズル
44が設けられており、調節可能な環状空隙45は、フランジ43により結合ナ
ット41の端部に接続されている。結合ナット41の端部にて開口部42の半径
に等しい半径に沿ってフランジ43に開口部46が形成されており、該ナット4
1及びフランジ43の、双方が、この共通の中心軸線の周りを回転することが可
能である。
弁2の作用は、次の通りである。
高温の流体流は、作用チューブ1の壁に近接する層から開口部42、46を通
じてディフューザ47に供給されるから、その方向を逆にすれば、流体流は、環
状の空隙45を通り、ここで、その臨界速度となる。次に、その流れは、ノズル
44のコンフューザ48内で膨張して、高温流の枝管に入る(高温流は、図14
に図示)。
弁のこの設計は、高温の流体流の壁に近接する層を作用チューブ1から強く吸
引し、その結果、作用チューブ1内の熱力学的プロセスのパラメータが変化する
。即ち、中央の低温流が、高温流の壁に近接する層と混合する程度は多少、弱く
なり、従って、エネルギの分離効果が向上し、ボルテックスチューブは、より低
温度で作用する。
低温の流体流の排出速度は、二つのラバルノズル(図15)を備える形態によ
る低温流体流の排出導管を提供することにより調節することが出来、この際、低
温の流体流の入口側から配置されたノズル49の第一の狭小部分50は、一定の
断面積F1を有する一方、ノズル49の第二の狭小部分51は、可変の断面積F
2を有するゴムリングの形態にて形成される。
低温流の排出導管のこの設計は、ノズル49の断面積F1と断面積F2との関
係を変化させることにより、低温の流体流の排出速度を制御し、また、異なる排
出状態とすることを可能にする。断面積F2が断面積F1よりも小さい場合、ノ
ズル出口49の圧力Paは、ノズル入口49における圧力値Poよりも常に低い
ため、低温の流体流の排出速度は、部分51にて臨界速度となる。圧力Paを更
に低下させると、膨張部分51内の亜音速の流れは高温流に変化する。断面積F
1が断面積F2よりも小さい場合、圧力Paが低下すると、低温流の排出速度は
、部分50にて臨界速度となる。断面積F1対F2の比を変更することにより、
ノズル49の膨張部分52にて臨界速度Fmaxを得ることが出来る。
低温の流体流の排出速度は作用チューブ1内のプロセスを変化させ、吸引され
る低温の流体流の温度に影響を与える。
更に、低温の流体流の排出速度は、この流出流に伴うトーンピッチを決定する
ことに留意すべきである。
従って、部分51の断面積F1を変化させることにより、トーンピッチを調節
することが可能となる。
弁2の出口(図1)に取り付けられた単一の円筒状スリーブ54内に配置され
た一組みの円筒チューブ53(図16)として高温の流体流の枝管を形成するこ
とにより、高温の流体流出流の流量及び速度は、制御可能であり、これらの管5
3の各々は、そのノズル入口55を有する。
ボルテックスチューブの異なる実施例の構造体的要素に加えて、高温流及び低
温流に必要とされる特性に従って、作動中の作用チューブ内の熱力学的プロセス
のパラメータを変化させることにより、全体として、ボルテックスチューブの作
用を、より効率的にする構造上の改善が実現される。
かかる改善の一つは、作用チューブ1(図1)における熱伝達をより促進させ
ることである。
高温流の枝管の側部からの作用チューブ1の部分をギザギザにし、又は波形に
形成し、又は作用チューブのこの部分の外面を露出させることにより、熱伝達を
促進することが可能である。
場合によっては、イオン化した低温流及び/又は高温流を使用することが必要
となる。
この場合、ボルテックスチューブには、低温流及び/又は高温流のイオン化を
確実にする、イオン化装置が設けられる。
このイオン化装置は、殆どの場合、低温流及び/又は高温流の枝管5、3内に
取り付けられる。
低温流及び高温流のイオン化装置の構造体的要素は同一であるから、イオン化
装置の製造について、及び低温流の枝管5内にイオン化装置を取り付ける方法に
ついて説明する。
該イオン化装置は、二つの電極の形態で形成され、その電極の一方は、枝管5
の端部に取り付けられたリング電極56(図17)であり、また、その他方の電
極は、低温流の枝管5内に、該枝管5と直線状に配置されたコロナ放電発生器5
7であり、該イオン化装置57は、負の端子、即ち電源58と接続され、リング
電極56は正の端子に接続されている。コロナ放電発生器57は、針状の形状と
して形成し、その先端が低温流の移動方向、又はその反対方向を向くようにする
ことが出来る。
コロナ放電発生器57の先端を低温流と反対方向に配置することにより、低温
流の枝管5の入口にてイオン化が開始されるから、ボルテックスチューブの構造
体的寸法(低温流の枝管の長さ)を短くし、また、低温流のイオン化の程度を増
進することが可能となる。
更に、コロナ放電発生器は、高さの等しい針タグ60がその両側部に配置され
た針ステム59の形態にて形成することが出来る(図18)。
コロナ放電発生器のかかる設計を考慮すると、局部的な電界強度は増し、放電
圧が低下する。電圧を更に上昇させなければ破壊は生じない。その結果、かかる
コロナ放電発生器の設計を考慮すると、電極間の電圧が高く且つその空隙圧力が
高い状態で作動させることが出来る。
コロナ放電発生器は、正弦曲線61(図19)の形態にて形成することが可能
である。
また、このコロナ放電発生器の設計は、局部的な電界強度を大きくし、また、
放電圧を低下させて、コロナ放電発生装置が高電圧で作動することを可能にする
。
コロナ放電発生器の特定の設計の選択は、必要とされるイオン化の程度、枝管
の寸法、リング電極56の通路の形態によって決まり、このリング電極の通路の
形態は、截頭円錐形の形状でよく、また、円筒状に曲げてもよい(図17)。
誘電グリッド62(図20)は、コロナ放電発生器57とリング電極56との
間に取り付けられる。
この誘電グリッド62が存在することで、コロナ放電発生器57における特性
と同一特性の電荷をその表面に印加することが確実となる。その結果、コロナ放
電発生器57と誘電グリッド62との間の強さが低下し、この空隙の破壊強度が
増すが、誘電グリッド62とリング電極56との間の強さは増し、その結果、よ
り高度のイオン化状態となり、また、再結合率も小さくなる。
更に、コロナ放電発生器57が位置する領域にて低温流の枝管5の内側に放射
被覆63(図21)を付与することが出来る。蒸発し易く、また、低温流(又は
高温)流のイオン化に伴って、イオン化されて、流体流と混合する、チタンウム
、ジルコニウム、モリブデン及びその他の化学的に活性な添加剤を上記の被覆と
して使用することが可能である。
部品を機械加工するとき、例えば、工具を冷却するため、かかる添加剤と共に
イオン化した低温流の空気を使用することは、化学的に安定した化合物を形成し
、工具の摩擦面の摩耗を保護することに役立つ。
イオン化装置の作用について説明する。ノズル入口4(図17)及び作用チュ
ーブ1から、低温の流体流は、低温流の枝管5に供給される。
枝管5において、低温流はコロナ放電発生装置57により発生されたコロナ放
電領域内に入る。低温流体流はイオン化され、リング電極56の開口部を通って
ボルテックスチューブから外に出る。
しかしながら、流体流のイオン化程度は、温度により決まり、また、イオン化
装置の出力側は、温度感知要素64(図22)が取り付けられている。この要素
は適合する増幅器65及び非直線状フィードバック装置66を介して電源58に
接続されている。この非直線状フィードバック装置66は、電源58の負荷電流
と低温流体流の温度との必要な作用関係を設定する働きをする。電源58の負荷
電流は、非直線状フィードバック装置66の回路の出力から比較回路(電源58
に接続されているが、図示していない)の入力側に供給された信号の形状を所定
の精度にて反覆し、また、低温流の温度に従って、負荷電流が変化し、また、コ
ロナ放電の電界強度を変化させ、従って、流体流のイオン化程度も同様に変化さ
せる。
イオン化装置に関する上記の説明は、全て低温流の枝管5及び高温流の枝管3
の双方に当て嵌まる。
場合によっては、必要であれば、密度の異なる化学剤を吸引することを確実に
するエジェクタ68(図23)が低温(高温)流の枝管5(又は、枝管3)の出
口に取り付けられる。
場合によっては、必要であれば、混合チャンバ内の所望の温度を維持するため
、低温流及び高温流の枝管5、3は、それぞれ、混合チャンバに接続され、低温
流及び高温流の供給量を調節する。
本発明の多数の具体的な実施例について説明する。
ボルテックスチューブの開示した設計の一つの有望な適用分野は、機械加工分
野である。
水及び油を利用する現在の技術手段と比べて、機械加工のためにイオン化され
た冷却空気を使用することは、生産性、特に、高合金鋼、耐食性合金、高温合金
及び耐火性材料を切断するとき、特に、機械加工するときの精度を著しく向上さ
せる。更に、この場合、環境的に優しい、又は環境的に両立する生産が可能とな
り、労働条件が向上する。
切断領域を冷却するため、別の変形例が可能であり、ここで、ボルテックスチ
ューブの低温流又は高温流の枝管が切断領域に極く近接する位置に配置される。
更に、図24に示した切断領域に低温又は高温の空気流を供給するもう一つの
変形例も可能である。
低温空気流により切断領域を冷却するため、可撓性ホース68が低温流の枝管
5に接続される。
該ホースは、二つの排出導管69、70を有しており、その一方の導管69に
おいて、切断工具71の正面に沿って低温流が切断領域に供給され、また、第二
の導管70内において、低温流は、機械加工される物品72と切断工具71の背
面との間の空隙に供給される。
最も一般的に冷却目的に使用されるのは、イオン化した低温の空気流であるが
、エジェクタ67(図23)を介して低温流に異なる添加剤を導入して低温流を
使用する、冷却モードを採用することも可能である。イオン化した低温流を利用
して行う切断工程には、二つの基本的な特徴があり、その第一は、空気を作用媒
体として使用し、その第二は、放電により空気を励起させることである、即ち、
イオン化した空気流を提供することである。その明確な特徴の一つは、機械加工
すべき物品72と工具との接触面における酸化過程を急激に励起させて、その面
に酸化膜が形成され、工具71の材料の拡散を防止し、工具の正面における摩擦
が軽減され、その結果、機械加工中の工具71の摩耗が軽減されるようにするこ
とである。
切断領域が脆性であることに加え、機械加工される物品73の気体充填表面層
も脆性であるとき、工具の摩耗を軽減するためには、マイナス温度(−1乃至−
20℃)にて冷却を行うことが望ましいことを認識することが重要である。
異なる材料を機械加工するためには、異なる温度条件が必要とされ、また、空
気流の特別なイオン化の程度が必要とされ、場合によっては、イオン化した空気
流に密度の異なる化学剤を導入しなければならないこともある。これら過程の全
ては、開示された設計の単一のボルテックスチューブにより行うことが出来、こ
のことが、低温流及び高温流の温度を広範囲に亙って調節することを可能にし、
また、温度及び設定条件に従って、流体流のイオン化程度を変更することを可能
にする。
一例として、汎用旋盤を使用して標識P10の硬合金工具により、10Cr32Ni8
ステンレス鋼を機械加工したときの結果が図1に示してある。切断速度V,m/min
、
送り速度S,mm/ラウンド、切断深さt,minを可変パラメータとし、各種の気体状
媒体を使用した。
得られたデータに基づき、次の計算が可能となる。
潤滑性の技術媒体として冷却したイオン化空気を使用することにより、ドライ
機械加工時と比べて、当該切断パラメータの範囲における切断工具の抵抗値が1
乃至4倍向上する。
イオン化した冷却空気を使用することによる最大の効果(工具の抵抗に関して
)は、機械加工速度Vが200m/min以上の高速度であるときに得られることが確認
された。
高速でヘビーデュティの機械加工を考慮すると、上述の切断モードは、実際上
、工具の抵抗を顕著に増すための唯一の手段である。
更に、ボルテックスチューブからの空気の排出速度及び空気温度は、工具の摩
耗に顕著に影響を与える。
実験によって、ボルテックスチューブから排出される冷却空気量が多ければ多
い程、また、その温度が低ければ低い程、工具の抵抗は大きくなる。
例えば、空気流の温度が−5℃から−40℃に変化すると、工具の抵抗値は2.5倍
となり、また、枝管から排出される空気の速度が160m/秒から400m/秒まで速
くなると、工具の抵抗は、4.3倍、増大する。
上述の例から、高速度ジェットの形態にて冷却した空気流を使用するモードは
、液体冷却を採用するときの工具の抵抗に関するその有利な点を最も明確に示す
モードであることが明らかとなり、対流による工具に対する熱伝達を行うことが
可能であり、また、かかる熱伝達が必要であるとの結論に至る。
ボルテックスチューブの更に可能な適用分野は、冷却チャンバ内で低温状態を
実現する場合である。
かかる装置の可能な設計の一つについて説明する。
該装置は、ボルテックスチューブ74に接続された圧縮空気源73(図25)
を備えている。ボルテックスチューブ74の低温流の枝管75は、電源76及び
冷却チャンバ77に接続されている。熱交換器78が冷却チャンバ77に接続さ
れる一方、該熱交換器78は、ディフューザ79に連結されて排出空気を吸引す
る。
該装置の作用は、次の通りである。圧縮空気は、圧縮空気源73からボルテッ
クスチューブ74に供給される。イオン化した低温流は、枝管75を介してボル
テックスチューブ74から冷却チャンバ77に供給され、ここから、排出空気は
、熱交換器78及びディフューザ79を通じて吸引され、該装置内で再使用した
り、又はその他の目的に使用することが出来る。
イオン化した空気流を冷却チャンバ内で使用することは、従来の冷却チャンバ
内におけるよりも高温度で食料製品を保存するのに役立つ。イオン化のため、製
品は、冷凍することなく、その風味を保ち、また、栄養分の特性を保持すること
が可能である。
ボルテックスチューブ内の高温の流体流を使用して、流体を加熱し、また、例
えば、医療目的のためにイオン化した高温流を使用し、流体にイオン化した空気
を提供し、また、農業分野において、グリーンハウス及び養殖場にイオン化した
高温空気を供給することにより使用することが出来る。
このように、高温流及び低温流について利用可能なパラメータの範囲が広いた
め、開示したボルテックスチューブの設計は、各種の目的のために及び異なる分
野で同一設計の単一のボルテックスチューブを使用することが可能となり、これ
により、環境的に優しい生産方法を実現することに寄与する。
産業上の利用性
本発明のボルテックスチューブの設計は、製造及び冷凍業界で使用し、及び医
療分野並びに農業分野で使用することが出来る。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 ペトロヴァ,ヴィクトリア・ドミトリエフ
ナ
ロシア共和国129344 モスクワ,ウル・ラ
ドゥシナヤ 17―38