【発明の詳細な説明】
生存できない細胞の蛍光検出
発明の分野
本発明は、間接免疫蛍光法を使用した生物学的試料中の細胞パラメーターの分
析に係わる。特に本発明は、全血溶解及び固定細胞懸濁物を使用する、フローサ
イトメトリー法を使用したアッセイにおける生存できない(nonviable)細胞の
蛍光検出に係わる。
発明の背景及び関連技術
血液は2つの主要な部分、(1)血漿、即ち主として水からなり、血液により
組織からあるいは組織へ運ばれるタンパクや多くの無機及び有機物質が溶解して
いる流体部分、及び(2)血液細胞、即ち全血液容量の約45パーセントを構成し
、赤血球細胞、白血球細胞及び血小板を含む、血漿中に懸濁された粒子からなる
。
白血球は、感染に対する身体の主要な防御である。健康な個体においては血液
の立方ミリメートルあたり5,000〜10,000の白血球が存在し、これらは3つのタ
イプ、(1)細菌を貧食することができる顆粒球(好中球、好酸球、及び好塩基
球)、(2)細胞の破片を貴食し、免疫反応における抗原の加工処理においてリ
ンパ球と相互作用する単球、及び(3)リンパ球からなる。血液中のリンパ球の
集団は、免疫反応において異なる役割を果たすいくつかのサブクラスにより定義
される。例えば、種々のサブクラス中のリンパ球の相対数は疾患状態において変
化しやすい。従って、種々
のサブクラスの細胞を計数し同定することによって、特に血液の構成のみならず
、一般に生物の相対的な健康状態が示される。
免疫反応に関連するリンパ球には2つの主要な種類がある。Bリンパ球は骨髄
に由来するリンパ球で、胸腺を通過することなく、あるいはそれに影響されるこ
となく組織に移動する。これらの細胞は体液性免疫において主要な役割を果たし
、抗原により剌激されたときに体液抗体を合成する血漿細胞へ成熟する。Tリン
パ球は、組織への過程において、胸腺を通過するかあるいはそれに影響されるリ
ンパ球である。Tリンパ球は、抗原の存在下においてBリンパ球中での抗体産生
の刺激を抑制しあるいは助長することができ、また腫瘍細胞、移植組織細胞のよ
うな細胞を殺すことができる。機能的に異なるリンパ球の特定のサブクラスは細
胞表面の抗原決定基に基づいて区別することができる。
Tリンパ球のクラスあるいはサブクラスを同定しあるいは抑制する能力は、種
々の免疫制御疾患または症状の診断や治療に重要である。例えば、ある種の白血
病及びリンパ腫は、それらがB細胞起源であるかあるいはT細胞起源であるかに
よって異なる予後を示す。従って、この疾患の予後を評価することはリンパ球の
これらの2つのクラスを区別することによるものである。ある種の疾患状態、例
えば若年性リューマチ関節炎及びある種の白血病はT細胞サブクラスのアンバラ
ンスを伴う。自己免疫疾患は一般に、ヘルパーT細胞の過剰、あるいはある種の
サプレッサーT細胞の不足を伴い、一方、悪性腫瘍は一般にサプレッサーT細胞
の過剰を伴う。ある種の白血病においては、分化の停止段階において過剰のT細
胞が生産される。従って、診断はこのアンバランスや過
剰を検出する能力に依存するものである。腎臓同種移植を受けた患者においては
、末梢血におけるT細胞サブセットを監視することにより、臨床上の意思決定の
基礎として使用できる情報が得られる。T細胞の亜集団(subpopulation)の大
きさの比較的小さな変化が有意であるので、T細胞亜集団に関するデータを得る
ための正確で再現可能な方法が必要となる。従って、造血系における細胞タイプ
の検出及び同定は研究及び臨床上の道具として有用である。
最近、モノクローナル抗体法を使用して種々のリンパ球サブクラスに対する高
度に精製された大量の抗体が製造されている。そのような抗体を使用して、個体
のリンパ球をアッセイし、種々のサブクラス中の細胞の相対数を決定することが
できることが判明した。さらに、直接法または間接法を使用して抗体を蛍光によ
り標識し、研究中の試料をフローサイトメトリーにより分析できるものとするこ
とができる。細胞を着色染料あるいは蛍光染料で染色することにより、細胞及び
クロモソームのような細胞内成分の可視性が増強され、細胞パラメーターの特性
化と測定、特に細胞タイプについての細胞表面抗原検出及びサブセット分析が可
能となる。
近年では、マルチパラメーターフローサイトメーターが使用できるようになっ
たことにより、直接及び間接免疫蛍光により多数の細胞試料を迅速に定量分析す
ることが可能となった。フローサイトメトリーは、細胞タイプの同定、その間の
識別、細胞タイプ内の種々の機能的及び/または成熟サブセットの同定及びその
間の識別を助ける道具として広く受け入れられている。フローサイ
トメトリーにおいては、細胞を流体懸濁物中に分散し、典型的にはアルゴンレー
ザーからの光の狭いビームの中を1つずつ通す。各細胞は光学的な信号を発生し
、これを測定し分析する。信号は散乱された光でよく、これは細胞の質量に関連
し、また蛍光でもよく、これは細胞を染色するのに使用した染料の量及び分子環
境に関連するものである。フローサイトメーターについては、Herzenberg et al
.(Scientific American,Vol.234,pp.108-117,1976)及び米国特許第3,82
6,364号、米国特許第4,284,412号及び米国特許第4,661,913号に、より詳細に記
載されている。
従来の免疫蛍光法は現在のところ、予備的な段階として、他の白血球及び赤血
球からのリンパ球の物理的分離を使用するものであり、これは通常密度勾配遠心
分離により行われる。この分離段階により、非リンパ球細胞、即ち赤血球、単球
、及び顆粒球が特異的に染色されたリンパ球として計数される可能性が排除され
る。この最初のリンパ球分離段階は、時間を要し骨の折れるものである。実際、
この段階はリンパ球を標識し、標識リンパ球を分析する比較的簡単な段階よりも
ずっと時間がかかる。他の白血球及び赤血球からリンパ球を分離する必要がある
ことは、迅速な臨床的分析にとって重大な障害である。さらに、早い分析時間が
それ程重要ではない研究的な用途でも、白血球分離段階はいくらかのリンパ球が
失われる危険を伴い、これはその後の分析に不確実さと不正確さをもたらす。
より最近では、全血溶解法が使用され、これはリンパ球を他の血液細胞から予
め分離する必要を回避するものである。典型的には、全血試料を選択的に標識し
、白血球の選択サブクラスに識別
マーカーを与える。標識化は、好ましくは試料を、選択サブクラスの細胞表面上
の特異的な抗原決定基に選択的に反応性を有する抗体とインキュベートすること
により行う。この抗体は典型的には蛍光色素に結合されており、これは抗体に所
定の蛍光を与え、これが与えられた光学的刺激に対して応答するものである。次
いで赤血球を溶解し、赤血球を断片に分解する。次にその選択サブクラスが標識
化された白血球集団を含む試料を、実質的に一回に一細胞ずつ、焦点を合わせた
光学的剌激の領域を通過させ、細胞により散乱され、細胞から放出された光を検
出しながら、抗体により標識された細胞を決定する。このように、選択されたサ
ブクラスの細胞は、少なくとも部分的には光学的刺激に対する所定の蛍光応答の
発生に基づいて他の細胞から区別される。
残念ながら全血溶解法には重大な欠点があり、それは一部の抗体により損傷を
受けた生存できない細胞が非特異的に染色されてしまうことである。この非特異
的な蛍光色素結合抗体の死細胞及び細胞断片による取り込み、即ち、人為的な染
色は、特異的なものから区別できない。無傷の(intact)あるいは生存できる(
viable)細胞を生存できない細胞から区別する試みにおいていくつかの方法が使
用されてきた。0tten及びLoken(Cytometry,Vol.3,pp.182-187,1982)は、
胸腺細胞の膜の一体性の喪失によるその前方角光散乱(forward angle light-sc
attering)特性に基づいて、生存できる胸腺細胞を生存できない胸腺細胞から区
別した。しかしこの方法は、細胞寸法及び光散乱特性が均一である細胞集団につ
いてのみ使用できるという制限がある。
ある種の染料は、無傷の細胞を損傷を受けたかあるいは生存で
きない細胞から区別するのに使用できる。例えばヨウ化プロピジウム(propidiu
m iodide)は生存できない細胞に侵入し、染色するが、無傷の細胞ではそうなら
ない。しかしヨウ化プロピジニウムによる染色は可逆的なものであり、ヨウ化プ
ロピジニウムが死細胞から漏れ、固定あるいは溶解過程により透過性になった膜
を有する、以前には生存可能であった細胞のDNAの間に挿入され得る。このよう
な制御されていない取り込みにより、生存できる(ヨウ化プロピジニウム非染色
)細胞の評価を変えてしまい得る。
Schmid et al.(Cytometry,Vol.13,pp.204-208,1992,以下Schmid)は
、生存できない細胞を生存できる細胞から区別するための蛍光非活性DNA染料と
してヨウ化プロピジウムの代わりに7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)を使用
した。しかし、Schmidは細胞固定及び/または溶解の前に生存できないものであ
る細胞を区別するという問題を認識せず、解決することを試みていない。
米国特許第5,057,413号において、Terstappen et al.(以下Terstappen)は
固定の後に損傷細胞から無傷のものを区別するのにDNA染料LDS-751を使用してい
る。しかしTerstappenの方法はやはり、DNAインターカレーター(lntercalator
)を使用する他の方法のように、溶解及び/または固定段階の前に生存できない
ものである細胞を、溶解及び/または固定の後に生存できないものとなった細胞
から区別することを可能とするものではない。
Riedy et al.(Cytometry,Vol.12,pp.133-139,1991、以下Riedy)は、
固定された標本中の生存可能な細胞から生存できないものを区別するのにエチジ
ウムモノアジドを使用した。エチジ
ウムモノアジドは、細胞中の核酸による光化学架橋により損傷を受けた膜で細胞
に非可逆的に結合し、従ってヨウ化プロピジウムのように細胞から漏れることは
ない。Riedyの方法においては、細胞をエチジウムモノアジドで処理する前に細
胞を溶解するものであった。残念ながら、エチジウムモノアジド光活性化は15%
の効率しかなく、またその多くは固定及び洗浄の間に細胞から洗い出されてしま
う。従って、染色された細胞は、ヨウ化プロピジウムにより染色された細胞より
もずっと暗い。その上、光標識化は染色とは別に行われなければならず、従って
分析時間が長くなる。これはこの方法を日常的に使用することにおいて重大な欠
点となる。
従って本発明の目的は、細胞膜を透過性にしたりあるいは損傷する段階の前及
び後に試料中の生存できない細胞を検出し区別する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、免疫染色のときに生存可能でない分析細胞を同定し排除
する方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、本発明の方法を実施するための試験キットを提供
することである。
本明細書で使用する「無傷の細胞」は、固定剤または溶解剤で処理されておら
ず、明らかな形態的損傷あるいは機能的な障害を受けていない細胞を意味するも
のである。「生存できない細胞」は、死亡しているか、損傷しているか、無傷で
はないか、又は溶解若しくは固定段階を経ることによってその膜が透過性になっ
ている細胞をいうものである。
発明の要旨
本発明は、試料中の生存できない細胞を蛍光検出し区別するための方法であっ
て、核酸染料の相補対の使用によるものであり、それにより細胞膜を透過性にし
たり損傷する段階、例えば、溶解及び固定段階の前及び後に生存できないもので
ある細胞による前記核酸染料での結合の区別を可能にする方法を包含する。核酸
染料は好ましくはDNA染料であり、そのDNA結合特性は実質的に同じである(即ち
、両方の染料がDNA上の共通の結合部位に結合する)が、それらの染料は蛍光放
出特性において異なるように選択される。特に好ましい染料の相補的対は、7-ア
ミノアクチノマイシンD(7-AAD)及びアクチノマイシンD(AD)のものである。7
-AADは、488nmで励起可能な染料であり、従って、アルゴンイオンレーザー励起
を使用するフローサイトメーター中で、標準的な免疫蛍光蛍光色素、例えばフル
オレセインイソチオシアネート(FITC)及びフィコエリスリン(PE)から解像で
きる蛍光放出とともに使用するのに適している。アルゴンレーザーのような光学
的剌激にさらすと、7-AADは630nmよりも大きい赤色の蛍光を発する。一方、DNA
染料ADは、同じ光学剌激にさらしたときに赤色の蛍光放出を示さない。
本発明の特に好ましい態様においては、溶解されていない細胞を含む全血ある
いは組織試料を選択した免疫蛍光染料、即ち、蛍光標識に結合された対象の細胞
抗原に対する抗体に、最初に接触させる。標識抗体を対象の細胞に結合させるが
、前記抗体による生存できない細胞に対するいくらかの非特異的結合も存在して
もよい。免疫蛍光染料の添加の後、あるいはそのときに、試料中の
細胞を相補的染料対の第1のメンバー、好ましくは7-AADとも接触させ、これは
生存できない細胞中の核酸と結合する。細胞を洗浄して過剰な抗体を除去し、残
留7-AADを最小にした後、モル過剰の相補的染料対の第2のメンバー、好ましく
はADを加える。次に、溶解及び/又は固定段階を所望の従来の方法により行う。
ADは、溶解及び固定の間に透過性にされた細胞のDNAに結合し、モル過剰のADの
存在は、新たに透過性となった細胞による残留7-AADの取り込みを拮抗的に阻害
し、これにより溶解後に生存できないものとなった細胞から溶解前に生存できな
いものであった細胞を区別することが可能になる。
本発明はさらに、特定の細胞マーカーまたは構成物質に選択的であり、刺激時
に蛍光を放出することができる標識抗体を含む試験キットを包含する。該試験キ
ットはさらに、相補的な染料対であって、そのメンバーの1つが測定可能で抗体
標識のものから識別可能な蛍光放射を有するものを含む。
図面の説明
図1は、2μg〜20μgの7-AAD濃度範囲における7-AAD及びAD結合の拮抗的阻
害を示すグラフである。
図2は、2色フローサイトメトリー装置により得られた概略的なプロットであ
り、本発明の種々の特徴を示している。Y軸にプロットされているのは、フルオ
レセイン標識抗-thy-1.2により染色された細胞からの緑色の蛍光(LIGRF)であ
る。同時に7-AADで染色された細胞は赤色の蛍光を発し、これはX軸にプロット
した(IRFL)。
発明の詳細な説明
本発明は、試料中の生存できない細胞を蛍光検出し区別するための方法であっ
て、核酸染料の相補的な対の使用によるものであり、それにより細胞膜を透過性
にしたり損傷する段階、例えば、溶解及び固定段階の前及び後に生存できないも
のである細胞による前記核酸染料での結合の区別を可能にする方法を包含する。
核酸染料は好ましくはDNA染料であり、そのDNA結合特性が実質的に同じである(
即ち、両方の染料がDNA上の共通の結合部位に結合する)が、それらの染料は
蛍光放出特性において異なるように選択される。特に好ましい染料の相補的対は
7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)及びアクチノマイシンD(AD)のものであ
る。7-AADは、488nmで励起可能な染料であり、従ってアルゴンイオンレーザー励
起を使用するフローサイトメーター中で、標準的な免疫蛍光蛍光色素、例えばフ
ルオレセインイソチオシアネート(FITC)及びフィコエリスリン(PE)から解像
できる蛍光放出とともに使用するのに適している。アルゴンレーザーのような光
学的刺激にさらすと、7-AADは630nmよりも大きい赤色の蛍光を発する。一方、DN
A染料ADは、同じ光学刺激にさらしたときに赤色の蛍光放出を示さない。
本発明の特に好ましい態様においては、溶解されていない細胞を含む全血ある
いは組織試料を選択した免疫蛍光染料、即ち、蛍光標識に結合された対象の細胞
抗原に対する抗体に、最初に接触させる。標識抗体を対象の細胞に結合させるが
、前記抗体による生存できない細胞に対するいくらかの非特異的結合も存在して
も
よい。免疫蛍光染料の添加の後、あるいはそのときに、試料中の細胞を相補的染
料対の第1のメンバー、好ましくは7-AADとも接触させ、これは生存できない細
胞中の核酸と結合する。細胞を洗浄して過剰な抗体を除去し、残留7-AADを最小
にした後、モル過剰の相補的染料対の第2のメンバー、好ましくはADを加える。
次に溶解及び/又は固定段階を所望の従来の方法により行う。ADは、溶解及び固
定の間に透過性にされた細胞のDNAに結合し、モル過剰のADの存在は、新たに透
過性となった細胞による残留7-AADの取り込みを拮抗的に阻害し、これにより溶
解後に生存できないものとなった細胞から溶解前に生存できないものであった細
胞を区別することが可能になる。
本発明はさらに、特定の細胞表面マーカーについて選択的であり、刺激時に蛍
光を発することができる標識抗体を含み、さらに、相補的な染料対であって、そ
のメンバーの1つが測定可能で抗体標識のものから識別可能な蛍光放射を有する
染色対を含む試験キットを包含する。
実施例I
7-AAD及びAD結合の拮抗的阻害
6〜8週齢のBALB/cマウスを頚部脱臼により屠殺し、切開して胸腺を摘出した
。胸腺を70%エタノールですすぎ、全ての赤血球を除去して、10%ウシ胎児血清
を補充した10mlの細胞培養培地RPMI(Gibco)を含む15ml円錐形遠心管に入れた
。血球計算機を使用して細胞を計数し、0.1%ナトリウムアジド及び0.1%ウシ血
清アルブミンを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1×106細胞/
mlに希釈した。細胞の1mlを32の12×75mmホウケイ酸試料管中にそれぞれ入れた
。管を200×gで10分間4℃で遠心分離にかけた。上清を捨て、細胞ペレットを再
懸濁し、0.5mlの1%パラホルムアルデヒド溶液を各試料管に加えた。次に試料
を30分間4℃でインキュベートし、その後0.5mlのPBSを各管に加え、次いで試
料を200×gで10分間4℃で遠心分離した。1mlのPBSを使用して、先の洗浄段階
を2回繰り返した。0.1%TRITON X-100(商標、Rohm& Haas,Philadelphia,PA)
中に調製した下記の染料溶液中に細胞を再懸濁した。各試料の全容量は0.5mlで
あった。
試料を4℃で30分間インキュベー卜した。インキュベートの後、0.5mlのPBSを
各試料に加え、これを200×gで10分間4℃で遠心分離した。上清を捨て、細胞ペ
レットを再懸濁し、1mlのPBSを使用して先の洗浄段階を2回繰り返した。次に
試料を0.5mlのPBS中に再懸濁した。試料をCoulter EPICS Profile IIフローサ
イトメーターにより488nmの15ミリワットレーザー放射で分析した。得られたデ
ータを下記表に示す。
実施例II
生存できない細胞のフローサイトメトリー検出
ヒトリンパ球調製物:
静脈穿刺によりヒト末梢静脈血をVACUTAINER(商標,Becton Dickinson)血液
収集管に取った。0.1%ナトリウムアジド及び0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を
含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で全血(8-10ml)を30mlに希釈した。次に希
釈した血液を、50ml円錐形ポリプロピレン遠心管中のリンパ球分離培地(Boehri
ngerMannheim)の10mlの層の上にゆっくりと注いだ。2つの液体の層、即ち分
離培地及び希釈血液を含む管を400×gで30分間、20℃で遠心分離にかけた。遠心
分離の後、淡黄褐色の被覆層(上から2番目の層)をピペットで回収し、15ml円
錐形ポリプロピレン遠心管に入れた。この層を5mlのPBSで希釈し、400×gで10
分間20℃で遠心分離した。上清を捨て、細胞ペレットを8mlのPBS中に再懸濁し
た。混合物を400×gで10分間20℃で遠心分離した。上清を捨て、細胞ペレットを
0.25%TRIT0NX-100を含む8mlのPBS中に再懸濁した。トリパンブルー(Gibco)排
除により細胞が100%死亡するまで56℃及び-20℃での15分間のインキュベートを
繰り返し、リンパ球を殺した。血球計算機を用いて細胞を計数した。
マウス胸腺細胞調製物:
6〜8週齢のBALB/cマウスを頚部脱臼により屠殺し、切開して胸腺を摘出した
。胸腺を70%エタノールですすぎ、全ての赤血球を除去して、10%ウシ胎児血清
を補充した10mlの細胞培養培地
RPMI(Gibco)を含む15ml円錐形遠心管に入れた。血球計算機を使用して細胞を
計数した。
細胞の検出:
下記表に従い、ヒト及びマウスの細胞を12×75mmホウケイ酸培養管中で混合し
た。
次に0.5mlのPBSを各試料管に加え、試料を200×gで10分間4℃で遠心分離にか
けた。上清を捨て、細胞ペレットを再懸濁した。下記表に従って、適当なFITC-
標識モノクローナル抗体(Boe
hringer mannheim)を各試料管に加えた。
次に、20μgの7-AAD(Sigma)を試料13を除く各試料管に加えた。試料を氷中
で30分間、暗所においてインキュベー卜した。次いで1mlのPBSを各試料に加え
、試料を200×gで10分間、4℃で遠心分離にかけた。上清を捨て、細胞ペレット
を再懸濁した。2つの先の段階を2回繰り返し、全部で3回洗浄した。3回目の
洗浄の後、0.5mlの1%パラホルムアルデヒド溶液中に試料を再懸濁した。次に50
μgのAD(Boehringer Mannheim)を各試料に加え、試料を暗所において氷上で3
0分間インキュベートした。次いで0.
5mlのPBSを各試料に加え、試料を200×gで10分間、4℃で遠心分離にかけた。上
清を捨て、細胞ペレットを再懸濁した。2つの先の段階を2回繰り返し、全部で
3回洗浄した。3回目の洗浄の後、フローサイトメトリー分析のために試料を0.
5mlのPBS中に再懸濁した。試料をCoulter EPICS Profile IIフローサイトメータ
ーにより488nmで放射される15ミリワットヘリウムネオンレーザーを使用して分
析した。図2は、試料9(50%生存/50%死細胞)の結果を示す。
また、標識抗体、例えば細胞表面マ-カーに対するフルオレセイン標識抗体、
及び相補的染料の対、例えば好ましくは7-AAD及びADを別々に含む容器を含むキ
ットが開示されるものであり、これは本発明を実施するのに便利に使用すること
ができる。抗体はキットに含める前に標識してもよく、また蛍光色素を含む別の
容器を独立した標識のために含めてもよいことは当業者に理解されるであろう。
本発明の発明の概念から逸脱することなく、本明細書に示した実施例に記載し
たもの以外の、他の細胞調製方法、他の溶解及び固定法に置き換えることができ
ることは当業者に理解されるであろう。細胞調製、固定法、染色法、染料及びマ
ーカーについての好適な記載は、Howard M.Shapiro(Alan R.Liss,Inc.,198
8)による“Practical Flow Cytometry”,2nd Edition及び“Flow Cytometry a
nd Sorting”,2nd Edition,M.R.Melamed et al.,Eds.(Wiley-Liss,Inc.
,1990)に見られる。本明細書において挙げた全ての刊行物及び特許出願は、当
業者の技術水準を示すものである。
当分野の当業者には、添付の請求の範囲の概念及び範囲を逸脱することなく、
本発明において多数の変更及び改変を行うことが可能であることは明らかであろ
う。例えば、当業者であれば、前記自動化装置を蛍光顕微鏡に置き換えてもよい
ことが理解されるであろう。この場合は、手作業による細胞の計数と同定が必要
である。