【発明の詳細な説明】
ドメインの交換によるキメラL-およびP-セレクチン、ならびにそれらの使用
関連出願
本出願は、1992年11月30日に出願されたTedderによる米国特許出願第07/983,6
06号の一部継続出願である。この出願は、1991年7月8日に出願された米国特許
出願第07/730,503号および1989年2月21日に出願された米国特許出願第07/313,1
09号の37CFR 1.62に基づく継続出願であり、これらは現在では両方とも放棄され
ている。本出願はまた、Tedderの1991年5月15日に出願された米国特許出願第07
/700,773号;1991年7月29日に出願されたTedderの米国特許出願第07/737,092号
;Tedderらの1991年10月3日に出願された米国特許出願第07/770,608号;および
Tedderらの1992年4月2日に出願された米国特許出願第07/862,483号の一部継続
出願であり、これらの全てを、本明細書中で参考として援用する。
発明の分野
本発明は、レセプター接着分子のセレクチンファミリーそしてより特定すれば
セレクチン機能を妨害する薬剤に関する。
政府の権利
本発明の研究の一部は、合衆国政府資金で行われた。それ
ゆえ、米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
発明の背景
白血球が循環を離れて、組織中に移動する能力は、免疫反応の重要な特徴であ
る。通常、湿潤性白血球は、侵入生物体あるいは死細胞または損傷細胞を食する
。しかし、病的炎症においては、浸潤性白血球は、重篤な損傷および時には致死
的な損傷を生じ得る。白血球介在性炎症は、成人呼吸障害症候群、多器官不全お
よび再灌流傷害を含む、多数のヒト臨床症状発現に関係している。
レセプター接着分子のセレクチンファミリーは、白血球と内皮との初期相互作
用を仲介する(Springer、Nature 346:425-434(1990);Lasky、Science 258
:964-969(1992))。L-セレクチン(LAM-1としても知られている)は、ほとん
どのクラスの白血球の表面で発現され(Griffinら、J.Immunol.145:576-584
(1990);Tedderら、J.Immunol.144:532-540(1990))、そしてリンパ球
のリンパ節の高内皮小静脈(HEV)へのおよび活性化内皮への結合を仲介する。P
-セレクチン(PADGEM、CD62またはGMP-140とも呼ばれる)は、活性化血小板およ
び内皮細胞によって発現され(Johnstonら、Cell 56:1033(1989);Hsu-Linら
、J.Biol.Chem.259:9121(1984))、そして骨髄細胞と活性化内皮または活
性化血小板との間の接着を仲介する(Gallatinら、Nature 304:30-34(1983)
;Spertiniら、J.Immunol.147:2565-2573(1991);Larsenら、
Cell 59:305-312(1989);Gengら、Nature 343:757-760(1990))。ファミ
リーの他のメンバーであるE-セレクチン(ELAM-1としても知られている)は、活
性化内皮細胞によって発現され(Bevilacquaら、Science 243:1160(1989);B
evilacquaら、Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 84:9238(1987))、そして炎症
部位で好中球の内皮への結合を部分的に仲介する(Bevilacquaら、Proc.Nat'l
.Acad.Sci.USA 84:9238(1987))。全てのセレクチンは、進化論的に関連
した遺伝子由来であり(Collinsら、J.Biol.Chem.266:2466-2478(1991)
;Johnstonら、J.Biol.Chem.34:21381-21385(1990);Ordら、J.Biol.Ch
em.265:7760-7767(1990);Watsonら、J.Exp.Med.172:263-272(1990)
)、そしてNH2-末端、Ca+-依存性レクチンドメイン、多数の短いコンセンサス繰
返し(SCR)ドメインに続く表皮細胞成長因子(EGF)様ドメイン、トランスメン
ブラン領域、および細胞質尾部(cytoplasmic tail)によって特徴付けられてい
る。レクチンドメインは、特異的な炭水化物リガンドの結合に重要である(Spri
nger、Nature 346:425-434(1990);Lasky、Science 258:964-969(1992))
が、保存されたEGF様ドメインの役割は知られていない。
病的炎症を患う患者を、接着レセプター機能に対するアンタゴニストで治療す
ることは、白血球の移動を、標的内皮細胞によって処理可能なレベルまで減少し
得、そしてその後患者の劇的な回復をもたらし得る。治療薬剤の局的投与は、白
血球と炎症領域に隣接している内皮との間の接着相互作用を競争的にブロックし
得る。治療薬剤はまた、伝播した炎症を患う患者の治療のために、全身的なレベ
ルで投与され得る(HarlanおよびLiu編、Adhesion:Its Role in Inflammatory Disease
、W.H.Freeman(印刷中))。
発明の要旨
P-セレクチンおよびE-セレクチンのEGF様ドメインが、直接に細胞接着に関与
し得、それらのそれぞれのレクチンドメインのリガンド結合部位とは別のリガン
ド結合部位を有することを本明細書で報告する。少なくともP-およびE-セレクチ
ンによって仲介される細胞接着は複雑であり得、レクチンドメインと炭水化物リ
ガンドとの間の相互作用、そして別に、EGF様ドメインと1つまたはそれ以上の
タンパク質または他のリガンドとの間の相互作用を含み得る。与えられたセレク
チンのレクチンドメインおよびEGFドメインによって認識されるリガンドの少な
くとも1つにおける相違の発見は、1つの分子内で、2つまたはそれ以上の異な
るセレクチンリガンドを標的する能力(二官能性)と、治療におけるまたはセレ
クチン機能に対するアンタゴニストのさらなるクラスの調製におけるこれら薬剤
の使用とを兼備するキメラポリペプチドの調製を可能にする。
従って、本発明は、一般的に、2つの異なるセレクチンのレクチンドメインお
よびEGFドメイン内からのリガンド結合部
分を結合するキメラペプチドまたはポリペプチドを特徴とする。これらのペプチ
ドまたはポリペプチドは、レクチンドメインまたはEGFドメインの示された部分
のみからなり得、あるいは、これらは一般的なセレクチン分子の、任意の残りの
ドメイン(SCR、トランスメンブランまたは細胞質)の部分、または完全な細胞
外部分を含み得る。これらペプチドまたはポリペプチドはまた、キャリアタンパ
ク質(例えば、免疫グロブリン分子の可溶性部位)に結合し得、治療薬剤の血清
半減期を増加させ得る。他の局面においては、本発明は、キメラポリペプチドを
コードする核酸を特徴とする。
キメラポリペプチドは、セレクチン機能と拮抗する治療薬剤として用いられ得
る。これらはまた、異なるセレクチンのレクチンドメインおよびEGFドメインの
機能の同時アンタゴニストである薬剤のスクリーニングに有用である。
本明細書中で使用される、用語「ポリペプチド」は、より短い分子、すなわち
「ペプチド」を含むことを意図する。用語「本質的に精製された」は、ポリペプ
チド配列が調製されたまたはそれが天然に存在する周囲から分離または単離され
たポリペプチド配列のことをいう。
図面の簡単な説明
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を考慮して、好ましい実施態様の
以下の記載により明らかにされる。
図1は、L-セレクチン/P-セレクチンキメラタンパク質の
構造および発現を示す(レクチン、レクチンドメイン;EGF、表皮細胞成長因子
様ドメイン;SCR、短いコンセンサス繰返しドメイン;TM、トランスメンブラン
ドメイン;C、細胞質ドメイン)。
図2aは、HL-60細胞の、天然およびキメラセレクチンでトランスフェクトされ
たCOS細胞への結合を示す(オリジナル倍率、200×)。
図2bは、HL-60細胞の接着の原因であるL2Pの1つまたは複数のドメインのマッ
ピングを示す(バーは平均±SDを表し、そして少なくとも6回の実験の代表であ
る)。
図3aは、P-セレクチンのレクチンドメインおよびEGFドメインによって仲介さ
れる接着についてノイラミニダーゼ感受性を示す。
図3bは、P-セレクチンのレクチンドメインおよびEGFドメインによって仲介さ
れる接着についてプロテアーゼ感受性およびCa2+要求性を示す。
図3cは、キメラL2P3Lの結合の分析を示す。
図4a、4b、および4cは、L-セレクチンをコードするcDNAヌクレオチド配列(配
列番号1)を示し、そしてL-セレクチンのアミノ酸配列(配列番号2)もまた示
す。
図5は、lyam-1遺伝子の制限地図およびエキソン−イントロン構築を示す。
図6a、6b、および6cは、lyam-1遺伝子のエキソンIIからXまでのヌクレオチド
配列を示す。そして
図7は、L-、P-およびE-セレクチンのレクチンドメインおよびEGFドメイン間
の相同性を示す。
好ましい実施態様の説明
L-、P-およびE-セレクチンのレクチンドメインならびにEGF様ドメインの細胞
接着における役割を調べ、そしてP-およびE-セレクチンのEGF様ドメインが、リ
ガンド認識および各々のセレクチンによって仲介される白血球接着において直接
役割を演じていることを決定した。この発見は、1つの治療薬剤内で2つまたは
それ以上の異なるセレクチンリガンドを標的する能力を組み合わせた二官能性キ
メラポリペプチドの調製、および治療におけるこれら薬剤の使用、またはセレク
チン機能に対するアンタゴニストのさらなるクラスの調製を可能にする。セレクチンレクチンドメインおよびEGFドメインの結合特異性の決定
上記の接着事象において、L-、P-およびE-セレクチンのレクチンおよびEGF様
ドメインの機能的な活性は、L-セレクチン/P-セレクチンおよびL-セレクチン/
E-セレクチンキメラ分子のパネルを用いて調べられた。図1を参照すると、これ
らハイブリッドポリペプチドは、実験手順のセクションに記載されるように、レ
クチン、EGF、または所望のセレクチンのレクチンドメインならびにEGFドメイン
の両方をコードするcDN
Aの交換およびキメラ核酸の発現によって創り出された。当業者に公知の多くの
他の方法が、類似の生成物を調製するために使用され得る。
これらのキメラは、セレクチンの全体のポリペプチド骨格構造を保存し、そし
てドメイン間の結合において変化を最小にする。それゆえ、これらキメラセレク
チンの機能的な特徴付けは、これら分子によって仲介される細胞接着の分子的基
礎を決定すること、および個々のセレクチンの性質を同一のポリペプチドに取り
込んだ診断薬剤および治療薬剤を調製することに強力なアプローチを提供した。
COS細胞でのキメラタンパク質の発現は、直接接着アッセイで、P-、E-およびL
-セレクチンドメイン特異的なモノクローナル抗体(mAb)のパネルを用いて確認
および定量された。キメラcDNAは、実験手順に記載されるように、pMT-2ベクタ
ー中にサブクローンされ、そしてCOS細胞を一時的にトランスフェクトするため
に用いられた。分析の24時間前に、2.5×104個のトランスフェクトCOS細胞を96
ウェルブレートに再プレート化した。キメラセレクチンによるドメイン特異的な
エピトープの発現は、記載されているように(Luscinskasら、J.Immunol.149
:2163-2171(1992))、特定ドメインと反応性のmAbおよび表面免疫蛍光アッセ
イを用いて評価した。
再び図1を参照すると、個々の構築物(P-セレクチンおよびL-セレクチンの示
されたドメインを含有する)は、特異的な、示されたドメインを認識する抗L-セ
レクチンおよび抗P-
セレクチンモノクローナル抗体とのみと反応する。これらの結果は、キメラcDNA
が予測されるタンパク質をコードし、そして各々のタンパク質がCOS細胞の表面
で発現され、すぐに検出されたことを示す。注意すべきことは、LAM1-1mAbが、L
2PまたはP2Lタンパク質のいずれかを認識せず、それゆえ、レクチンドメインお
よびEGFドメインの両方にある残基からなるエピトープを規定することである。
与えられた値は、コントロール非結合mAbで得られたOD単位を引いた、絶対光学
密度(OD)単位の平均値である。コントロール値より小さい実験値は、ゼロとし
て表す。示される値は、3回の実験で得られた代表的な値である。これら蛍光測
定の標準偏差は、15%未満であった。セレクチンレクチンドメインおよびEGFドメインによって仲介される接着反応の 特徴付け
HL-60骨髄単球細胞株は、P-セレクチンに対するリガンド(Larsenら、Cell 59
:305-312(1989);Gengら、Nature 343:757-760(1990))、およびE-セレク
チン対するリガンド(Bevilacquaら、Science 243:1160(1989);Bevilacqua
ら、Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 84:9238(1987))を発現するそれゆえ、こ
れを、P-セレクチンおよびE-セレクチン機能を評価するために用いた。図2aを参
照すると、HL-60細胞は、P-セレクチンを発現するCOS細胞に高レベルで結合した
が、L-セレクチンを発現するCOS細胞には結合しなかった。HL-60細
胞はまた、キメラタンパク質P2Lを発現するCOS細胞にも結合した。そこでは、P-
セレクチンからのレクチンドメインを、L-セレクチンのレクチンドメインの代わ
りに置き換えた。それゆえ、P-セレクチン単独のレクチンドメインは、L-セレク
チンからのEGF様ドメインおよび他のドメインに付着した場合、高レベルのHL-60
細胞接着を仲介するに充分であった。しかし、P-セレクチンのレクチンドメイン
単独では、HL-60結合の全部について専らその原因ではなかった。なぜならばHL-
60細胞はまた、L2P(そこでは、P-セレクチンレクチンドメインは、L-セレクン
ドメインと置換された)を発現するCOS細胞に結合するからである。
HL-60接着の原因であるL2P内の1つまたは複数のドメインは、さらなるキメラ
セレクチンを用いてマップされた。図2bを参照すると、HL-60細胞はL2P3L(これ
は、P-セレクチンからのEGFドメインのみを含有する)を発現するCOS細胞に結合
したが、L3P(これは、P-セレクチンのレクチンドメインおよびEGF様ドメインの
両者を欠くが、P-セレクチンSCRドメインを含有する)を発現するCOS細胞に結合
しなかった。さらに、HL-60細胞のP3L(これは、P-セレクチンからのレクチンド
メインおよびEGFドメイン両方を含有する)への結合は、天然P-セレクチンの結
合とおおよそ等しく、たとえP2LおよびP3Lの発現がほぼ等しい場合であっても、
細胞のP2Lへの結合よりも有意に高い(P<001;StudentのT検定)。これらのデ
ータは、P-セレクチンのレクチンドメインおよびEGF様ドメインの
両方が、HL-60細胞接着を独立して仲介し得る能力があるリガンド結合部位を含
むことを示す。
E-セレクチンのリガンド結合部位を研究するために、4つのL-セレクチン/E-
セレクチンキメラ分子を構築した。L2Eは、L-セレクチンのレクチンおよびE-セ
レクチンの残余部分を有し;E2Lは全く逆である。L5Eは、L-セレクチンのアミノ
末端の88アミノ酸を有し(すなわち、レクチンドメインの74%)、そしてE5Lは
全く逆である。HL-60細胞のこれらキメラを発現するCOS細胞への結合を、前と同
様に評価した。特異的なレクチンドメインの部分のみを含む構築物は、ゼロ結合
を示したが、その一方異なるセレクチンからのレクチンドメインおよびEGFドメ
インを含有するキメラへの結合は、約半分に減少した。それゆえ、結合の全体の
パターンは、L-セレクチン/P-セレクチンキメラを用いる結果と同様であった。接着活性またはレクチンドメインの特異性に対するEGF-ドメインの影響の測定
P-セレクチンにより仲介される接着は、シアル酸を有する炭水化物を含み、お
そらくsLexおよび/または関連構造、およびタンパク質決定基を含む(Larsenら
、Cell 63:467-474(1990);Zhouら、J.Cell.Biol.115:557-564(1991)
;Mooreら、J.Cell.Biol.118:445-456(1992);Mooreら、J.Cell.Biol.112
:491-499(1991);Polleyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:6224-6228
(1991);Larsenら、J.Bio
l.Chem.267:11104-11110(1992))。それゆえに、P-セレクチン、P3L、また
はP2Lを発現するCOS細胞への結合について、HL-60細胞のノイラミニダーゼおよ
びプロテアーゼ処理の効果を調べた。
HL-60細胞からのシアル酸残基の除去は、HL-60細胞の天然P-セレクチンまたは
P3Lを発現するCOS細胞への接着を、有意に(P<0.01、しかし不完全に減少させ
た(図3A)。対照的に、HL-60細胞からのシアル酸残基の除去は、HL-60細胞のP2
Lへの接着をほぼ完全に排除した(図3A)。さらに、E-セレクチン/L-セレクチ
ン構築物E2Lへの結合は、HL-60細胞を、sLexに対するCSLEX1 mAbで前処理するこ
とにより部分的に阻害された。同様に、COS細胞を、P-セレクチンのレクチンド
メインに対するmAbで前処理すると、有意に(P<0.005)、しかし部分的にのみ
、HL-60細胞のP-セレクチンまたはP3Lへの接着を阻害し、P2Lへの接着はなくし
た(図3A)。
HL-60細胞とのキモトリプシンまたはパパイン処理は、P-セレクチン、P3L、ま
たはP2Lを発現するCOS細胞への結合を90%以上排除した(図3B)。さらに、2.5m
M EGTAは接着をなくした(図3B)。これらの結果は、接着におけるレクチンドメ
インの重要性を確証し、P-セレクチンのEGFドメインもまた接着において直接的
役割を演じ、タンパク質リガンドを認識するという独立した証拠を提供する。
同様の分析をL2P3Lについて行い、P-セレクチンのEGF様ドメインによって仲介
される接着を特徴付けた。HL-60細胞のL
2P3Lを発現するCOS細胞への接着もまた、HL-60細胞のノイラミニダーゼ処理によ
って減少したが、排除されなかった(図3C)。L2P3L内に存在するL-セレクチン
レクチンドメインに対するmAbはまた、接着を有意に(P<0.01)阻害した。これ
らの結果は、L-セレクチンのレクチンドメイン(これ単独では細胞接着に充分で
はない)によるHL-60細胞上の特異的炭水化物構造の認識が、この相互作用がP-
セレクチンのEGFドメインによって仲介される接着活性によって支持される場合
には、この系で白血球接着に寄与することを示唆する。この仮説と一致して、HL
-60細胞のまれな(プレートに1まで)ロゼットが、L-セレクチンでトランスフ
ェクトしたCOS細胞に時折観察され(データは示していない)、そして可溶性L-
セレクチン/IgG融合タンパク質は、精製、固定化sLexに対して測定可能な親和
性を有する(Foxallら、J.Cell.Biol.117:895-902(1992))。HL-60細胞の
L2P3Lへの接着は、EGTAによって除去され(EGF様ドメインによって仲介される接
着がまたCa2+依存性であることを示す)、そしてプロテアーゼ処理によって有意
に(P<0.01)減少した(図3C)。接着活性またはレクチンドメインの特異性に対するEGFドメインの影響の測定
セレクチンのEGF様ドメインが接着活性またはレクチンドメインの特異性に対
して任意の影響を有するかどうか決定するために、L-セレクチン、P-セレクチン
、L2PまたはL2P3Lを発
現する300.19ネズミプレB細胞株の安定なトランスフェクタントを生成した。こ
れらの細胞は、標準インビトロ凍結切片アッセイ(Stamper Jr.ら、J.Exp.Med
.144:828-833(1976))を用いて、リンパ節HEVへの結合に対してテストされ
た。P-セレクチンを発現するトランスフェクタントはHEVに結合しなかったが、
その一方L-セレクチン、L2PまたはL2P3Lを発現するトランスフェクタントは同等
に、および高レベルでHEVに結合した(表I)。
L-セレクチン単独のレクチンドメインは、従って、P-セレクチンのEGF様ドメ
インおよび他のドメインに付着する場合には、HEVへの結合を仲介し得た。L2Pお
よびL2P3Lキメラセレクチンは、従って、L-またはP-セレクチンのいずれかに対
する1つまたは複数のリガンドを発現する、異なるタイプの細胞に結合し得、そ
れらが構築される由来となる親セレクチンの両方の特異性を反映する。セレクチ
ン間のレクチンドメインまたはEGF様ドメインの変換の結果としての、新規接着
性質のこの獲得は、P-セレクチンのEGF様ドメインが細胞接着を仲介し得るとい
う仮説を増強する。さらに、これらのデータは、レクチンドメインおよびEGF様
ドメインの機能的独立を直接に示し、そしてそれ故、レクチンドメインの炭水化
物特異性を決定することにおいてEGF様ドメインに対する役割の反証となる。
L-セレクチン遺伝子の構造
米国特許出願第07/983,606号に開示されているように、L-セレクチンをコード
するcDNAは、図4a、4bおよび4cに示されるようにクローンされ、そして配列決定
されている(配列番号1)。cDNAは、372アミノ酸のタンパク質をコードする(
配列番号2)。
LAM-1タンパク質をコードするlyam-1遺伝子の構造は、LAM-1 cDNAプローブと
ハイブリダイズした重複ゲノムDNAクローンを単離することにより決定された。l yam-1
遺伝子は30kbの
DNAより大きく広がり、少なくとも10のエキソンからなる。LAM-1 mRNAの5'末端
は、プライマー伸長分析によってマッピングされ、転写のための単一の開始領域
を示す。エキソンIIからXは、翻訳配列を含有し;エキソンII(配列番号3)は
、翻訳開始コドン、図2に示される残基14、をコードし;エキソンIII(配列番
号4)は、リーダーペプチドドメイン、残基15〜41、をコードし;エキソンIV(
配列番号5)は、レクチン様ドメイン、残基42〜170、をコードし;エキソンV
(配列番号6)は、表皮細胞成長因子様ドメイン、残基171〜206、をコードし;
エキソンVI(配列番号7)およびVII(配列番号8)は、短いコンセンサス繰返
し単位ドメイン、残基207〜269および残基270〜331、をコードし;エキソンVIII
(配列番号9)は、トランスメンブラン領域、残基332〜373、をコードし;エキ
ソンIX(配列番号10)は、潜在的リン酸化部位を含む7アミノ酸、残基374〜380
、をコードし;そして、エキソンX(配列番号11)は、細胞質尾部および長い3'
非翻訳領域の5つの残存アミノ酸をコードする。
pLAM-1 cDNAを32Pで標識し、そしてプローブとして用いて、ヒト白血球ゲノム
DNAライブラリーからハイブリダイズするDNAを単離した。約1×106のプラーク
をスクリーンし、そしてcDNAプローブとハイブリダイズした13プラークを同定お
よび単離した。これらのクローンの7つは、独特の制限酵素地図を用いて、少な
くとも30kbに渡る重複ゲノムフラグメントを表す挿入断片を含むことが分かった
。これらの挿入物(LAMG
-17、-19、-20、-28、-35、-37、および-47)を、さらに切断して、プラスミド
にサブクローンした。これらサブクローンの詳しい制限地図を作成し、そして無
傷の挿入物の制限地図と比較して、それらの正確な位置を決定した(図4Aおよび
図4B)。
制限地図の正確さはサザンブロット分析で確かめた。2つのB細胞株(BLおよ
びBJAB)および1つのT細胞株(HSB-2)から単離されたDNAを、Bam HI、Bal II
、またはPvu IIで完全に切断し、サイズ画分し、そしてニトロセルロースに移し
た。このフィルターを、LAM-1 cDNAクローン、pLAM-1でプローブした。全てのゲ
ノムフラグメントは、cDNAプローブとハイブリダイズしたエンドヌクレアーゼ切
断DNAに由来し、適切なサイズのハイブリダイズしているバンドを生成した。
pLAM-1 cDNAクローンは、85bp 5'非翻訳領域をコードする。pLAM-1 cDNAの5'
配列と相同なオリゴヌクレオチドを、プライマー伸長分析のプローブとして用い
た。このオリゴヌクレオチドは、ヒトB細胞株RAJI、LAM-1陰性ヒトB細胞株Nam
alwa、ネズミプレ-B細胞株A20、およびコントロールとして酵母tRNAから単離し
たポリ(A+)RNAとハイブリダイズした。相補的DNAを、逆転写酵素でプライマー
を伸長することによって合成した。ヒトLAM-1陽性B細胞株RNAを用いて得られた
主要なプライマー伸長生成物は、翻訳開始部位を超えて126ヌクレオチド伸長し
た。RAJI RNAとの反応において明らかなlyam-1遺伝子についての転写開始部位の
単一のクラスターがあったが、
それはLAM-1陰性Namalwa RNAを用いては見い出されなかった。ヒトB細胞株RNA
のサイズに類似のサイズのいくつかのプライマー伸長生成物をネズミB細胞RNA
を用いて得た。従って、ネズミB細胞は、用いたオリゴヌクレオチドプローブと
交叉ハイブリダイズするRNA種を発現し得る。プライマー伸長生成物は、酵母tRN
Aコントロール反応では得られなかった。
クローン化LAM-1 cDNAおよび単離されたlyam-1の最も5'側のエキソンに対する
プライマー伸長結果物の関係を、翻訳開始AUGコドンをコードするエキソンのヌ
クレオチド配列を決定するために用いた。このエキソンは、翻訳開始コドンをコ
ードする部位のすぐ後で終わり(図5)、そしてpLAM-1 cDNA配列と正確に重な
り合う。Bowenら、J.Cell.Biol.109:421-427(1989)によって得られたcDNA
クローンの長さは、2ヌクレオチドを除いて、プライマー伸長結果物と正確に一
致する。しかし、cDNAの5'末端の前の15ヌクレオチドの配列は、3'スプライスア
クセプター部位コンセンサス配列と相同な部位でゲノム配列から様々に変化する
。それゆえ、この15bp領域は、おそらく、この潜在的スプライス部位のエキソン
上流由来である。従って、プライマー伸長結果物は、エキソンIが15塩基対また
はそれより少ない塩基対からおそらくなることを示す。
Bowenら、前述、のcDNAクローンに存在するがエキソンIIによってコードされ
ていない5'ヌクレオチドと相同な15bpオリゴヌクレオチドを用いて、エキソン11
のクローン化DNA 5'の
10kbをプローブした;しかし、特異的なハイブリダイゼーションは、サザンブロ
ット分析によって検出されなかった。このオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼ
ーションに必要な条件下で、λ-DNAとの顕著な交叉ハイブリダイゼーションが起
こり、λをベースにしたゲノムライブラリーから第1エキソンを単離するために
、このオリゴヌクレオチドを用いることを困難にした。
これらの結果は、翻訳開始部位をコードするエキソンがlyam-1遺伝子の第2エ
キソンであることを示唆する(図4C)。これと一致して、エキソンIIの900bp上
流は、真核生物遺伝子のプロモーター領域にしばしば見られる、明らかな「TATA
」または「CCAAT」配列を含まなかった(図5)。それゆえに、翻訳開始領域お
よびエキソンIは、lyam-1遺伝子のエキソンIIからさらに10kb以上上流にありそ
うである。S1ヌクレアーゼ保護分析を行ったが、RAJI、Namalwa、およびA20細胞
からのポリ(A+)RNAとのハイブリダイゼーションのための標識プローブとして
、エキソンIIの5'領域を用いた。2種のmRNA種をRAJImRNAで保護したが、S1保護
は他のRNAによっては提供されなかった。これらのフラグメントの長さは、エキ
ソンIIの潜在的スプライスアクセプター部位内に位置する2つの潜在的なCAG/N
スプライス部位で、別のスプライシングと一致した。それゆえ、転写開始領域は
未だ同定されていないようである。
エキソンの大部分を、ゲノムクローンとpLAM-1 cDNAとの制限酵素地図の比較
によって位置付けした。この方法が決定的
な結果を与えなかった場合には、サブクローン化DNAフラグメントを、選択され
た制限酵素で切断し、アガロースゲルにより電気泳動し、そしてニトロセルロー
スに移した。エキソンを含むフラグメントを、標識cDNAまたはオリゴヌクレオチ
ドプローブを用いて、サザンブロット分析によって同定した。LAM-1 cDNAの3'非
翻訳領域をコードするエキソンは、単離したDNAフラグメントの30kbの範囲内に
含まれていなかった。それゆえ、pLAM-1 cDNAの3'非翻訳領域の大部分を含む標
識された0.9kb DraIフラグメントをプローブとして用いて、ゲノムDNAの完全Ec o
RI切断により生成した相同3.2kbフラグメントを同定した。このサイズのEco R
I切断ゲノムDNAフラグメントを用いて、3.2kb Eco RIフラグメントをクローン化
した、部分λ-gtllゲノムライブラリーを作成した。この3.2kbフラグメントは前
に分離されたゲノムDNAと重なり合わなかった。
エキソンの正確な境界をヌクレオチド配列分析によって決定した。この分析か
ら、9つのエキソンを同定し、全体のpLAM-1 cDNAを組み立てた。エキソンIIは
翻訳開始コドンをコードし、そしてエキソンIIIはLAM-1タンパク質のリーダード
メインをコードする(図5)。レクチン様ドメイン、表皮細胞成長因子様ドメイ
ン、トランスメンブランドメイン、および短いコンセンサス繰返しドメインの各
々は、分離したエキソンによってコードされる。最小のエキソンのIXは、19bpの
長さであり、そしてカルボキシ末端リン酸化カセットをコードし得る。LAM-1タ
ンパク質の最後の5アミノ酸、およびポリ(A)
付着部位(AATAAA)を含む3'非翻訳領域は、図5に示されるようにエキソンXに
よってコードされる。pLAM-1をコードする9つのエキソンは、エキソンIIとIII
との間の接続を除く、すべての場合でコドン内側で分割された。各々の例では、
5'ドナースプライス部位および3'アクセプタースプライス部位のコンセンサス配
列は粘着された。コード領域内のヌクレオチド配列多形性が、エキソンV(cDNA
ヌクレオチド位置741および747(AからG)で、SCRIおよびpLAM-1クローンをコ
ードする)を含むゲノムクローンの間で観測され、両方の場合で、AsnからSerへ
のコード変化に至り、そして位置816(AからG)ではGluからGlyに変化した。
実験手順
キメラセレクチンcDNAの構築
4つの新しい制限エンドヌクレアーゼ認識部位を、ポリメラーゼ連鎖反応(PC
R)をベースにした部位特異的突然変異誘発によって、以下のように、別々にpLA
M-1 cDNAに導入した。各々の新しい制限配列を取り囲みおよび含むオリゴヌクレ
オチドを、センスおよびアンチセンス方向の両方で合成した。新しい制限部位セ
ンスオリゴヌクレオチドおよびcDNAの3'末端近くのプラスミド中に位置するアン
チセンスオリゴヌクレオチドアンカーを用いて、PCRを行った。別々の反応にお
いて、新しい制限部位アンチセンスオリゴヌクレオチドに加えて、プラスミド5'
末端からのセンスオリゴヌクレオチドアンカー
を用いて、LAM-1 cDNAの5'末端を増幅した。これら2つの反応からの個々のPCR
生成物をゲル精製し、pSP65ベクター(Promega Biotec、Madison、WI)にサブク
ローンし、適切な制限酵素で切断し、そして一緒に連結した。ヌクレオチド変化
は以下のようであった:(a)レクチンドメイン中のGA361ATCCからGGATCC、これ
は、BamHI部位を生成し、成熟タンパク質中のアミノ酸番号53に相当する(図2
);(b)EGFドメイン中のA583TGCAGからCTGCAG、これは、PatI部位を生成し、
アミノ酸番号127に相当する;(c)第1SCRドメイン中のGAGG881C822CからGAGCT
C、これは、SacI部位を生成し、アミノ酸番号164に相当する;および(d)第2
SCRドメイン中のGTCAAA1023からGTCAAC、これは、HincII部位を生成し、アミノ
酸番号279に相当する。部位特異的突然変異誘発の忠実性を、cDNAの制限マッピ
ングおよび配列分析によって確認した。これらの部位の各々は、PADGEM cDNA中
に天然に存在する(Larsenら、Cell 59:305-312(1984))。
結合部位のドメインマッピング
キメラセレクチンcDNAを、pMT-2発現ベクター(Kaufmanら、J.Mol.Cell.Bi
ol.9:946-958(1989))にサブクローンし、そして50%までの集密度のCOS細胞
を、DEAEデキストラン法によって一時的に3μgの示されたcDNAでトランスフェ
クトした。トランスフェクションの1日後、COS細胞を50%までの集密度で、ペト
リ皿(アッセイプレート)(Becton-Dickinson、Lin
coln Park、New Jcrsey)上に再プレート化した。次の日に、HL-60細胞を、冷RP
MI 1640培地(Gibco、Grand Island、NY)で2回洗浄し、3.3×106細胞mlの最終
濃度でRPMI 1640に再懸濁し、そして0.6ml(2×106細胞)を、冷RPMI1640培地
で2回洗浄したアッセイプレートに添加した。プレートを4℃で20分間静かに揺
らし、5回洗浄し、そして個々のCOS細胞に結合したHL-60細胞の数を、最低100
個のCOS細胞についてカウントした。
HEVへの白血球付着のアッセイ
天然L-セレクチン、L2P、およびL2P3LをコードするcDNAを、pZIPneoSV(X)ベ
クターのBam HI部位にサブクローンした(Cepkoら、Cell 37:1053-1062(1984
))。そしてこれを用いて、ネズミプレB細胞株300.19をトランスフェクトした
。安定なトランスフェクタントを、0.5〜1.0mg/mlのG418(geneticin;Sigma)
を含む培地中で選択し、そしてタンパク質を発現する細胞を、LAMI-3 mAbを用い
てパンニング(panning)によって選択した(Spertiniら、J.Immunol.147:94
2-949(1991))。P-セレクチントランスフェクタントを生成するために、pMT-2
ベクター中のP-セレクチンcDNAを、ネオマイシン耐性マーカーを含むpSV2neoベ
クターと共に同時トランスフェクトした。ラットリンパ節を、新たに安楽死させ
たルイスラットから得、イソペンタン/液体窒素中で急速凍結させ、そして使用
するまで-70℃でイソペンタン中に保存した。HEVアッセイには、
5×106個の各々の細胞型を、64rpmで、25分間、約4℃で、スライドあたり3つ
の12mmセクションでインキュベートし、過剰の細胞を静かに取り除き、そしてス
ライドを氷冷固定剤中に(PBS/2.4%グルタルアルデヒド)一晩垂直に置いた。次
いで、スライドをGillのヘマトキシリンで対比染色し、グリセロールゼラチンで
覆って、カバーグラスをかぶせた。各々のスライドを、結合リンパ球/HEVの数
について記録した。100〜200の間のHEVを各々の実験でカウントした。結合リン
パ球/HEVの平均値±標準偏差としてデータを示した。NDは測定していないこと
を示す。
ノイラミニダーゼ感受性、プロテアーゼ感受性
および接着のためのCa2+必要量の測定
COS細胞を示されたcDNAでトランスフェクトし、そして上記のように再プレー
ト化した。RPMI 1640培地中で、37℃で、2時間、0.25U/ml Clostridium erfrin ens
ノイラミニダーゼ(タイプVI、Sigma、St.Louis、MO)、50mg/mlのキモト
リプシンまたはパパイン(Sigma)のいずれかと共にHL-60細胞をインキュベート
し、2回洗浄し、そしてアッセイを図2凡例の記載のように行った。HL-60細胞
のノイラミニダーゼ処理は、CSLEX1抗sLex mAbとの全ての反応性を除去するのに
効果的であった(データは示していない)。いくつかのグループでは、5μg/ml
G1 mAb(Dr.R.P.McEverの提供)(Gengら、Nature 343:757-760(1990))、
または1:200希釈したLAM1-3 mAb
(Spertiniら、J.Immunol.147:942-949(1991))を含有する腹水液のいすれ
かとCOS細胞をプレインキュベートした。EGTAの影響を測定するために、HL-60細
胞およびCOS細胞の両方を、2.5mM EGTAを含有するRPMI 1640で洗浄し、そしてこ
の培地をまたアッセイに使用した。これらの条件下でCOS細胞の脱離は起こらな
かった。これらの結果は少なくとも4つの実験の代表である。使用
白血球の血管の内皮壁への接着、および周辺組織中へのこれら浸潤は、細胞レ
ベルで組織の炎症に寄与する。通常、浸潤白血球は、侵入生物体あるいは死細胞
または損傷細胞を食する。しかし、病的炎症において、浸潤白血球は、重篤な損
傷および時には致死的な損傷を生じ得る。白血球介在性炎症は、成人呼吸障害症
候群、多器官不全および再灌流傷害を包含する、多数のヒト臨床症状発現に含ま
れる。
セレクチンの機能に拮抗する治療薬剤の局所投与は、白血球と炎症領域に隣接
する内皮との間の接着相互作用を競争的にブロックし得る。全身レベルについて
、ショック状態(例えば、重篤な傷害)の患者を、セレクチン機能に対するアン
タゴニストで治療することは、白血球移動および接着の減少およびその後の患者
の劇的な回復をもたらし得る。
2つの異なるセレクチンのレクチンドメインおよびEGFドメイン内からのリガ
ンド結合部分を組み合わせたキメラペプチ
ドまたはポリペプチドは、治療処理に用いられ得、炎症部位で白血球を妨害する
。図7を参照すると、L-、P-およびE-セレクチンのレクチンドメインおよびEGF
ドメインの間の緊密な相同性が見られ得、そしてP-およびE-セレクチンをコード
する各々の遺伝子のイントロン/エキソン構成(Collinsら、J.Biol.Chem.26 6
:2466(1991);Johnstonら、J.Biol.Chem.265:21381(1990))は、本明
細書で開示された、L-セレクチンをコードするlyam-1遺伝子のそれと同じである
。これらキメラ薬剤は、単一の機能アンタゴニストを用いるより、さらに効果的
な標的化を提供し得る。本発明の治療薬剤を用いて、血小板凝縮、または血小板
および単核細胞凝集をブロックし得、血栓(throbus)形成を予防し得る。
治療ペプチドまたはポリペブチドは、レクチンドメインまたはEGFドメインの
示された部分のみからなり得、あるいは、これらは、残りのドメイン(SCR、ト
ランスメンブランまたは細胞質)の任意の部分、または一般セレクチン分子の完
全な細胞外部分を含み得る。ペプチドまたはポリペプチドはまた、キャリアタン
パク質に結合され得(例えば、免疫グロブリン分子の可溶性部分)、治療薬剤の
血清半減期を増加し得る。免疫グロブリンキメラは、IgG結合プロテインA-セフ
ァロースクロマトグラフィーを含む、標準の免疫化学手順により、容易に精製さ
れる。キメラは、より高い親和性および血清半減期を相伴って免疫グロブリン様
ダイマーを形成する能力を有する。
キメラポリペプチドをコードするcDNA配列を、複製可能な発現ベクター中に取
り込み、そしてベクターを適切な宿主にトランスフェクトして、コードされるポ
リペプチドを発現し得る。停止コドンがDNA配列に取り込まれ得、または、任意
の他の鎖終結法を用いて、可溶性ポリペブチドを調製し得る。発現されるポリペ
プチドは、当業者に周知の通常の技術(例えば、アフィニティークロマトグラフ
ィー方法)で精製され得る。
他の薬剤もまた、治療ポリペプチドに結合し得、有用な生成物を形成し得る。
例えば、2つの異なったセレクチンのレクチンドメインおよびEGFドメインのリ
ガンド結合部分を、サイトトキシンの毒性部分に結合し、融合タンパク質を生成
し得る。さらに、セレクチンキメラポリペプチドを、化学療法薬剤、またはこれ
らの各々のリガンドを発現する細胞に同時に結合し得る薬剤にカップリングし得
、治療するために、組織損傷部位または炎症部位(例えば、急性の炎症または脈
管炎(vasculitus))に薬剤を投与し得る。このような薬剤は、抗炎症薬剤、ま
たは炎症性苦痛を局部的に除去し得る薬剤が挙げられ得る。これら薬剤で処理し
得る症候群、疾患、および条件は、限定されないが、処置性炎症、微生物/寄生
虫感染、再灌流後傷害(post-reperfusion injury)、白血病、リンパ腫、脈管
炎、腫瘍細胞の転移拡散の阻害、器官移植、または移植片拒絶を含む。当業者に
周知のとおり、融合タンパク質は、ハイブリッドcDNA分子から転写され得る。あ
るいは、
薬剤は、ルーチンの手順によってキメラポリペプチドに共有結合され得る。
患者の炎症部位をイメージする1つの方法として、炎症内皮上でL-セレクチン
リガンドの発現を検出することか挙げられる。この方法は、検出可能な量のL-セ
レクチンの標識リガンド結合性フラグメントからなる薬学的組成物を、単独でま
たはキャリアタンパク質に結合して患者に投与することを含み、薬学的に受容可
能なキャリア中に、異なるセレクチンレセプターのリガンド結合部分を含む。標
識ポリペプチドがL-セレクチンリガンド発現部位に局在化するための充分な時間
が提供され、非結合ポリペプチドを患者の健康組織から取り除くことを可能にし
、そして標識から発生するシグナルを検出して、炎症の部位のイメージに変換さ
れる。L-セレクチンのリガンド結合標識フラグメントの量は、好ましくは、1pg
/kg〜10μg/kgであり得るが、用いられるイメージ薬剤標識および検出方法の感
度に依存して、より多いまたはより少ない投与量が可能である。
ヒト患者体内から外部的に検出され得る標識のいくつかは、放射性核種、放射
性不透過性標識、および常磁性同位体を含む。インビボ診断のための放射性核種
は、最大取込みの時間で、なお検出可能であるに充分長い半減期を有さなくては
ならないが、診断後好ましくない放射線が患者に残らない充分短い半減期を有さ
なくてはならない。放射性核種と抗体またはタンパク質とのカップリングは、当
該分野では周知であり
(例えば、Daddonaら、米国特許第5,026,537号、この教示は本明細書中で参考と
して援用される)、そしてしばしば、中間結合基を用いて、直接的または間接的
のいずれかて成し遂げられる。インビボ診断に用いられ得る放射性同位体の例は
、99Tc、123I、131I、111In、97Ru、97Cu、67Ga、68Ga、72As、89Zr、および2 01
Tiである。インビボ診断の目的のための常磁性同位体もまた本発明の方法に従
って用いられ得る。磁気共鳴エネルギー技術に用いるために特に有用である元素
の例は、157Gd、55Mn、162Dy、52Cr、および56Feが挙げられる。放射性不透過性
イメージングには、LAM-1タンパク質またはリガンド結合フラグメントが、X線
イメージングに際し炎症部位で不透明視野を生成する薬剤にカップリングされる
。
種々のセレクチンのレクチンドメインまたはEGF様ドメインのリガンド結合部
分は、本発明を用いて実験的に決定され得る。代表的な手順では、セレクチンcD
NAのフラグメントは、免疫グロブリン重鎖または異なるセレクチンの他の非リガ
ンド結合部分のような、キャリアタンパク質をコードするcDNAと融合され得る。
これらのキメラタンパク質は細胞表面上で、または可溶性分子として発現され得
、そしてリガンドを結合するこれらの能力が評価される。さらに、研究中のレク
チンドメインまたはEGF様ドメインの分離したフラグメントは、リガンドを結合
するそれらの能力、および親セレクチン分子のリガンドへの結合を阻害するそれ
ら能力について試験され得る。
本発明の任意のペプチドまたはポリペプチドは、2つの異なるセレクチン分子
からのレクチンおよびEGFリガンド結合部分(一般セレクチン分子の残りのドメ
イン(SCR、トランスメンブランまたは細胞質)の任意の部位を包含し、あるい
はキャリアタンパク質を包含して)を含み、レクチンまたはEGF機能のアンタゴ
ニストを個々に、または異なるセレクチンのレクチンドメインおよびEGFドメイ
ンの機能を同時に拮抗し得る薬剤をスクリーニングするために用いられ得る。本
発明は、ペプチド、炭水化物部分、RNAまたは他の小分子からなる薬理学的試薬
の開発を提供し得る。これらは、セレクチンのレクチンドメインまたはEGFドメ
インのリガンドを模倣し得、または各セレクチンドメインのリガンド結合エピト
ープを模倣し得、従って有用な治療薬剤である。
他の治療方法において、キメラセレクチンポリペプチドは、白血球の内皮表面
への接着に関連する任意の他のセレクチンまたは任意の他の細胞表面分子、また
はそれらの可溶性フラグメントとの組み合わせ療法に用いられ得る。さらに、任
意の上記レセプターまたはレセプター部分(あるいはレセプターまたはレセプタ
ー部分に反応性のmAb)に対するアンタゴニストは、患者の治療のために、上記
組合せでまたは独立のアンタゴニストの組合せとして用いられ得る。例としては
、ICAM-1、VCAM-1、VLA-4、CD18、CD11a、CD11bおよびCD31が挙げられ、ならび
にこれらと反応性のmAbがある。
治療薬剤は、薬学的に受容可能な不活性キャリア物質中で、
ルーチンの方法によって、経口的、局所的に、または非経口的に(例えば、鼻腔
内、皮下、筋内、静脈内、または動脈内)投与され得る。最適な投与量および投
与の様式は、通常のプロトコルによって容易に決定され得る。
lyam-1遺伝子それ自体またはその部分を用いて、キメラセレクチンを構成し得
る。この遺伝子はまた、遺伝子療法にも用いられ得る。lyam-1遺伝子に遺伝子欠
損を有する個体は、十分に活性なL-セレクチン白血球「ホーミング(homing)」
レセプターを生成することができず、従って、炎症部位まで十分な白血球を移動
できない。lyam-1遺伝子に先天的欠損を有すると疑われる個体は、記載された配
列およひ構造の情報を用いて、この遺伝的障害についてスクリーニングされ得る
。次いで、スクリーニングされた個体の治療が、lyam-1遺伝子またはこれらのフ
ラグメントを用いて可能であり得る。
lyam-1遺伝子の正常な調節は、特異的な白血球のサブ集団の表面上にL-セレク
チンが出現および消滅することが示されるように、薬剤または遺伝子発現を改変
し得る特異的療法の影響を試験するためにモニターされ得る。
本発明を、好ましい実施態様に関連して記載してきたが、当業者は、前述の明
細書を読んだ後、種々の変化、等価物の置換、ならびに本明細書で示された組成
物および方法の他の改変をなし得る。それゆえ、本明細書に基づいて発行された
特許公報によって特許される保護は、添付の請求項およびその等価物に含まれる
定義によってのみ限定される。
配列表
(1)一般的情報:
(i)出願人:
(A)名称:ダナ − ファーバー キャンサー インスティテュート,イ
ンコーポレイテッド
(B)番地:ビニー ストリート 44
(C)市:ボストン
(D)州:マサチューセッツ
(E)国:アメリカ合衆国
(F)郵便番号:02115
(ii)発明の名称:成分セレクチン機能に対する同時ブロック性薬剤としてのキ
メラセレクチン
(iii)配列数:11
(iv)コンピューター読み出し形態:
(A)媒体型:フロッピーディスク
(B)コンピューター:IBM PC互換用
(C)OS:PC-DOS/MS-DOS
(D)ソフトウェア:パテントイン リリース #1.0、バージョン #1.25(EPO)
(v)現在の出願データ:
(A)出願番号:PCT/US94/00909
(vi)先願データ:
(A)出願番号:US 08/008,459
(B)出願日:1993年1月25日
(vi)先願データ:
(A)出願番号:US 07/983,606
(B)出願日:1992年11月30日
(vi)先願データ:
(A)出願番号:US 07/962,483
(B)出願日:1992年4月2日
(vi)先願データ:
(A)出願番号:US 07/770,608
(B)出願日:1991年10月3日
(vi)先願データ:
(A)出願番号:US 07/737,092
(B)出願日:1991年7月29日
(vi)先願データ:
(A)出願番号:US 07/730,503
(B)出願日:1991年7月8日
(vi)先願データ:
(A)出願番号:US 07/700,773
(B)出願日:1991年5月15日
(vi)先願データ:
(A)出願番号:US 07/313,109
(B)出願日:1989年2月21日
(2)配列番号1の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:2330塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(iii)ハイポセティカル:NO
(iii)アンチセンス:NO
(ix)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号:CDS
(B)存在位置:53..1210
(xi)配列:配列番号1:
(2)配列番号2の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:385アミノ酸
(B)型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:タンパク質
(xi)配列:配列番号2:
(2)配列番号3の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:1192塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:DNA(genomic)
(iii)ハイポセティカル:NO
(iii)アンチセンス:NO
(xi)配列:配列番号3:
(2)配列番号4の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:363塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:DNA(genomic)
(iii)ハイポセティカル:NO
(iii)アンチセンス:NO
(xi)配列:配列番号4:
(2)配列番号5の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:531塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:DNA(genomic)
(iii)ハイポセティカル:NO
(iii)アンチセンス:NO
(xi)配列:配列番号5:
(2)配列番号6の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:832塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:DNA(genomic)
(iii)ハイポセティカル:NO
(iii)アンチセンス:NO
(xi)配列:配列番号6:
(2)配列番号7の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:712塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:DNA(genomic)
(iii)ハイポセティカル:NO
(iii)アンチセンス:NO
(xi)配列:配列番号7:
(2)配列番号8の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:451塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:DNA(genomic)
(iii)ハイポセティカル:NO
(iii)アンチセンス:NO
(xi)配列:配列番号8:
(2)配列番号9の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:544塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:DNA(genomic)
(iii)ハイポセティカル:NO
(iii)アンチセンス:NO
(xi)配列:配列番号9:
(2)配列番号10の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:524塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:DNA(genomic)
(iii)ハイポセティカル:NO
(iii)アンチセンス:NO
(xi)配列:配列番号10:
(2)配列番号11の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:1696塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:DNA(genomic)
(iii)ハイポセティカル:NO
(iii)アンチセンス:NO
(xi)配列:配列番号11:
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C07H 21/04 B 8615−4C
C12P 21/02 C 9282−4B
// C07K 14/47 8318−4H
C12N 5/10
G01N 33/564 8310−2J
9455−4C A61K 37/24 ABN
7729−4B // C12N 5/00 B