【発明の詳細な説明】
ガス透過性材料
発明の技術分野
本発明は、疎水性かつ疎油性のガス透過性材料に関する。より詳しくは、本発
明は、濾過や衣服の構成に使用するための疎水性かつ疎油性の組成物でコーティ
ングした材料に関する。
発明の背景
改良された疎水性と疎油性を有するガス透過性材料に対するニーズが存在する
。
ガスフィルターとベントフィルターは、多孔質ポリオレフィンやポリテトラフ
ルオロエチレンのような多孔質ポリマーを含む多孔質材料より作成されている。
しかしながら、これら材料の疎水性と疎油性が改良されることが要求されている
。例えば、疎油性の不足は、周囲の環境中のオイルに普段に曝されるエンジンや
装置を含む用途にガスフィルターとしてのそのような材料を使用する価値を減じ
ている。
さらに、多孔質のフィルムや膜を含む柔軟なラミネートは衣服の部材として有
用であるが、オイルと水の忌避性が場合により望まれる。
発明の要旨
本発明の生成物は、基材を貫通する流路又は連続気孔を有する基材と、この流
路の少なくとも一部の内面に次の成分の反応生成物であるコーティングを含む柔
軟なガス透過性材料である:
A.4〜24の炭素原子のペルフルオロアルキルアルコールと2〜6の炭素原
子の多塩基性ヒドロキシル含有カルボン酸のエステル、及び
B.メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、及びグ
リコール改質ホルムアルデヒド樹脂からなる部類より選択された樹脂材料。
本発明のプロセスは、材料を貫通する流路を有するガス透過性材料に、前記の
Aと5Bの混合物をコーティングし、その混合物を架橋させることを含む。
用語「連続的気孔」又は「流路」は、その材料が、材料の厚さを貫通する連続
的な相互に接続した流路を構成する隙間を有し、流路が両側に開いていることを
意味する。
コーティングは気孔の表面の一部を被覆するが、気孔を閉塞しない。したがっ
て、ガス透過性材料のガス透過特性は損なわれずに維持され、その材料は、そこ
をガスが貫通するフィルターとして有用である。コーティングの存在は、コーテ
ィングのない材料よりもその材料を疎油性にする。
発明の説明
ガス透過性材料は、ガス特に空気の通過を許容する任意の材料でよい。これは
、材料の厚さを貫通する連続的流路を構成する隙間を含む材料である。流路は両
側に開いている。好ましくはその材料は柔軟であり、シート、チューブ、又はプ
ラグの形状である。その材料は不織布、織布、メリヤス生地のような布帛、又は
スクリムでよい。その材料は濾紙のような紙、又は布で作成されることもできる
。また、その材料は、気孔が隙間又は流路を形成する合成物又は天然物の多孔質
高分子フィルム又は膜であることもできる。その材料
に有用な代表的なポリマーにはポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ
フッ化ビニリデン、ポリアクリル、ポリオレフィン例えばポリエチレンやポリプ
ロピレン、等がある。その材料は一般に約1〜約200μmの厚さであろう。
ガス透過性濾過材料としては、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE
)、特に米国特許第3953566号に開示のようにして作成された、フィブリ
ルで相互に接続したノードの微細構造を有する微細多孔質の延伸ポリテトラフル
オロエチレン膜のシートが好ましい。得られた微細気孔又は空隙が、液体水への
抵抗を提供しながら、良好なガス又は空気の流れを可能にする。これらの多孔質
PTFE膜は、気孔サイズと気孔体積に依存し、好ましくは0.1秒〜80秒の
ガーレイ数を有する。
エステル化生成物は、ペルフルオロ化アルコールとヒドロキシル官能性を有す
る多塩基性カルボン酸との反応生成物である。コーティング材料のエステル化生
成物を作成するに有用なペルフルオロ化アルコールは次の一般式であり、
Rf(CH2)nOH
ここで、Rfは4〜24の炭素原子の直鎖又は枝分かれ鎖のペルフルオロ化アル
キルであり、nは1−12の整数である。代表的なRf基にはC4F9−、C24F4 9
−等がある。好ましいアルコールはF(CF2)n(CH2)2OHの混合物であ
り、ここでnは6、8、10、12、14である。多塩基酸には、ジ−、及びト
リ−塩基性アルキルカルボン酸がある。例えば、そのような酸の1つはクエン酸
であり、次の式を有する。
クエン酸の完全なエステル化を得ることは難しく、これは立体障害が中位のC
OOH基のエステル化を妨害するためであり、立体障害された−COOH基のエ
ステル化を助けるために、場合によりエポキシドが反応混合物に添加される。特
に好ましい多塩基酸は次の式を有するリンゴ酸であり、
又は次の式を有する酒石酸である。
次にアルコール又はエステルが、メラミンホルムアルデヒド樹脂、又は尿素ホ
ルムアルデヒド樹脂、又はグリコール改質ホルムアルデヒド樹脂のような架橋剤
と反応する。
メラミンは式C3H6N6、即ち
のアクリルアミンである。
メラミンホルムアルデヒド樹脂は、メラミンとホルムアルデヒド(HCHO)
の反応生成物である。それらは1分子につき数個のメチロール基を含むことがで
き、これはメチロール含有率がメラミン/ホルムアルデヒドの比と反応条件に依
存するためである。最も簡単な反応生成物は、次のトリメチロールアミンである
。
コーティング用混合物は、エステル化生成物に、ケトン例えばアセトン、アル
キルアルコール例えば2−プロパノールのような適当な溶媒中の架橋用物質、又
はその物質の水ベースのエマルジョンを単に混合することによって調製される。
溶媒中のその物質の濃度は所望とする処理量に依存するであろう。
コーティング用溶液は、任意の都合のよい手段によって多孔質フィルター材料
に施され、材料の上に均一に広げられる。気孔の壁をコーティングするが、それ
らを閉塞させないようにして、浸漬コーティングやスプレーを使用することがで
きる。次いで任意の都合のよい手段によって溶媒を蒸発させ、次いで熱硬化が行
われ、必要な架橋された物質を生成する。
ガス透過性材料を作成するために使用され、コーティングを作成するために使
用される物質は、生成物に特定の特性を付与するため又はプロセス助剤として種
々の他の添加成分を含むことができる。例えば、それらは紫外線安定剤、静菌剤
等を含むことができる。
このコーティングは、コーティングされた物に高い疎水性と疎油性を付与し、
得られたコーティングされた材料は、その材料を貫通する良好なガス又は空気の
流れを有しながら、一般に良好な疎水性と疎油性を示す。得られたコーティング
された材料は、その材料が水、オイル、又は脂質エマルジョンによる侵入に抵抗
するべきガス流を含む用途に使用することができる。このような用途には、防水
性、透湿性の布帛、又は自動車エンジンの中又はその近くで使用される電子装置
を保護するガスベントやフィルター等がある。また、
有用な用途には、ガス抜きフィルターが必要とされる医療装置、ガス抜きフィル
ターが必要とされ、オイルミストが存在する工業用濾過がある。
また、コーティングされた材料は、親ドリップボトル中のオイル又は脂肪物質
がガス抜きを詰まらせることがある医療用ガス抜きに有用である。例 例1
次のようにしてコーティング品(AとB)を調製した:
(A)デュポン社から入手したペルフルオロアルキルシトレート(Zonyl TBC)
の3gに、0.6gのメラミンホルムアルデヒド樹脂(アメリカンサイアナミド
社から入手のAerotex 3030)、0.15gの触媒(アメリカンサイアナミド社か
ら入手のAerotex DC)、及び60gのFreon-TF(デュポン社から入手)と5gの
2-プロパノールを混合した。この混合物の中に延伸多孔質PTFE膜(ePT
FE)を浸した。コーティングされた膜を空気乾燥し、次いで170℃のオーブ
ン中に2分間入れ、硬化過程を完了した。
(B)ペルフルオロアルキルシトレート(ZonylTBC)にペルフルオロアルキルエ
ポキシド(デュポン社から入手のZonyl TE)を100℃で4時間混合した(重量
比3:1)。次いで全く精製していないその生成物の3gに、0.6gのメラミ
ンホルムアルデヒド樹脂(アメリカンサイアナミド社から入手のAerotex 3730)
、0.15gの触媒(アメリカンサイアナミド社から入手のAerotex DC)、及び
60gのFreon-TF(デュポン社から入手)と5gの2-プロパノールを混合した
。コーティングと硬化の過程は、(A)と同様にして行った。
使用した膜はW.L.Gore & Associates社より入手し、約20c
m×20cm×厚さ約0.005cmであった。
試験結果は次の通りであった。オイル等級化
これらの試験において、AATCC Test Method 118-1983によってオイル等級化を
行った。この数値が大きい程、オイル忌避性は良好である。
明記した流体を使用した以外はオイル等級化試験と同じ方法によって、ガソリ
ン、エンジンクリーナー、モーターオイル、メタノール、アセトン、及び変速機
用液体についてこの試験を行った。試験温度は記載の通りであった。コーティン
グされた材料の上に流体の滴が存在した時間は5分間であり、その後「はじき」
又は「濡れ」の状態を観察し、記録した。「はじき」は液滴の広がりが認められ
なかったことを意味する。
ガーレイ数は次のようにして求めた。
W.& L.E.Gurley & Sonsによって製作されたガーレイデンソメーター(ASTM
D726-58)によって空気の流れに対するサンプルの抵抗
を測定した。この結果は、水柱4.88インチの圧力差において100立方セン
チメートルの空気が試験サンプルの1平方インチを貫通する秒単位の時間である
ガーレイ数で表している。
水の侵入圧力(WEP)は、W.L.Gore & Associates社の品質管理試験法No.
584に準じて測定した。使用したWEP試験器はGoreによって製作されたも
のである。破損を生じないように注意しながら、試験サンプルを1対の試験用プ
レートの間に締める。下側プレートは、サンプルの一部分を水で加圧することが
できる。水侵入の証拠を指示するものとして、プレートとの間の非加圧側のサン
プルの上に1枚のpH試験紙を配置する。次いでサンプルを僅かな増分で加圧し
、pH試験紙の色の変化が水侵入の最初の兆候を指示するまで、各々の圧力変化
の後に10秒間待つ。漏出又は侵入における水圧を水侵入圧力として記録する。
傷のあるエッジから生じることがある誤った結果を避けるため、この試験結果は
試験サンプルの中央から取得する。
低圧用に改良した前記のWEP試験器を基本にした装置を用い、2psi未満
の水侵入圧力を測定した。膜の1つの側が水で加圧されることができるようにし
て、サンプルをpH試験紙と共にNuclepore社から入手の25mmの透明なフィ
ルターホルダーの中に支持した。pH試験紙に色の変化が現れるまで、サンプル
に漸増して水柱を与える。水柱の高さを記録し、psiに換算する。
結果は次の通りであった。
例2
(A)触媒としてトルエンスルホン酸(Zonyl BA-Nを基準に0.5重量%)を用
い、ペルフルオロアルキルアルコール(Zonyl BA-N)とDLリンゴ酸(Aldrich
)を1.2:1.0のモル比で180℃にて8時間反応させた。1gの反応生成
物を、普通の室内条件で、0.2gのメラミンホルムアルデヒド樹脂(Aerotex
3030)と0.01gのAerotex 4040(触媒)を含む20gのFreon-TFとアセトン
(1:1の重量比)に溶かした。この溶液に延伸多孔質ポリテトラフルオロエチ
レン膜を浸し、空気乾燥し、170℃のオーブンで2分間硬化させた。コーティ
ングした膜は試験に供した。また、1枚のナイロンタスライト布帛もその溶液中
に浸し、空気乾燥し、170℃のオーブンで2分間硬化させた。この布帛も試験
に供した。
(B)ペルフルオロアルキルアルコール(Zonyl BA-N)とDL酒石酸(Aldrich
)を1.2:1.0のモル比で、例2Aと同じ条件下で反応させ、その反応生成
物の1gを、0.2gのメラミンホルムアルデヒド樹脂(Aerotex 3030)と0.
01gのAerotex 4040(触媒)を含む20gのFreon-TFとアセトン(1:1の重
量比)に、普通の室内条件で溶かした。1枚のePTFE膜と1枚のナイロンタ
スライト布帛を、例2Aと同様にしてその溶液中でそれぞれコーティングした。
その膜と布帛は試験に供した。
試験結果は次の通りであった。
各々の試験は例1と同様にして行った。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1994年7月15日
【補正内容】
請求の範囲
1.基材を貫通する流路を有する基材、及び前記流路の少なくとも一部の内面
上のコーティングを含んでなる柔軟なガス透過性材料であって、前記コーティン
グが次の成分の架橋反応生成物であるガス透過性材料:
a)式R1-(CH2)nOHであって、R1は4〜24の炭素原子のペルフルオ
ロアルキルであり、nは1〜12の整数であるペルフルオロアルコールと、2〜
6の炭素原子の多塩基性ヒドロキシル含有カルボン酸とのエステル、及び
b)メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、及びグ
リコール改質ホルムアルデヒド樹脂からなる部類より選択された架橋用樹脂。
2.前記基材が、織布、不織布、メリヤス生地、多孔質高分子シート、セルロ
ース系ペーパー、ガラス繊維ペーパーからなる部類より選択されたシートである
請求の範囲第1項に記載のガス透過性材料。
3.前記基材が延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である請
求の範囲第2項に記載のガス透過性材料。
4.前記反応生成物の成分b)がメラミンホルムアルデヒド樹脂である請求の
範囲第1又は第3項に記載のガス透過性材料。
5.前記反応生成物において、エステルの多塩基性ヒドロキシル含有カルボン
酸がリンゴ酸又は酒石酸であり、前記架橋用樹脂がメラミンホルムアルデヒド樹
脂と尿素ホルムアルデヒド樹脂からなる部類より選択された請求の範囲第1又は
第3項に記載のガス透過性材料。
6.前記反応生成物において、前記エステルがペルフルオロアル
キルシトレートである請求の範囲第1又は第3項に記載のガス透過性材料。
7.請求の範囲第1項に記載の材料をフィルターホルダーの中に配置し、それ
によって得られた組み合わせをガスの流れに供することを含む方法。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
B01D 39/18 9441−4D
39/20 B 9441−4D
C08J 9/42 CEW 7310−4F
C09D 161/20 PHK 8215−4J
C09K 3/18 103 8318−4H
D06M 13/236
15/423 7199−3B
D21H 19/16
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),AT,AU,BB,BG,B
R,CA,CH,DE,DK,ES,FI,GB,HU
,JP,KP,KR,LK,LU,MG,MN,MW,
NL,NO,PL,RO,RU,SD,SE