【発明の詳細な説明】
カポジ肉腫を処置、及び脈管浸透を阻止又は阻害するための方法
発明の背景
1.発明の分野
本発明はカポジ肉腫損傷における悪性又は前悪性細胞の増殖を阻止又は阻害す
るための方法に向けられている。本発明は更に、脈管細胞における細胞性脈管浸
透因子の活性を阻止又は阻害する方法に向けられている。
2.背景情報
様々な形状のカポジ肉腫が臨床的に認められている。これらには古典型〔W.A
.Reynoldら、Medicine,44,419(1965)〕、アフリカ風土病型〔J.F.Taylor
ら、Br.J.Cancer 26,483(1972)〕、免疫抑制治療型〔I.Penn Transplanat ion
27,8-11(1979);D.I.GreenfieldらJ.Rheumatol.13,637(1986)〕
、及び若いHIV−1感染ホモセクシャル男子によく観察される攻撃型カポジ肉腫
〔K.B.Hymesら、Lancetii,598(1981);B.SafaiらAnn.Intern.Med.103
,744(1985)〕が含まれる。臨床的及び表皮学的に相違する形態にかかわりな
く、それらは全て組織学的に類似しており,そして病巣の発症の初期の段階にお
いて微小脈管増殖(脈管形成)を示し、これに増殖性紡錘細胞の存在、水腫及び
多発性細胞タイプによる湿潤が続く〔N.S.McNuttら、Am.J.Pathol.111,62
(1983)〕。
本発明者は以前に、細胞増殖を助長するためのHTLV−IもしくはHTLV−II感染
化、且つ不死化CD4陽性T細胞に由来する、又は活性化末梢血液単核細胞に由来
する、コンディション培地を用いるカポジ肉腫由来紡錘型細胞の長期培養のため
のインビトロ系〔S.Nakamura
ら、Science 242,426(1988)〕、及びカポジ肉腫の形成を刺激するインビボ系
〔S.Nakamuraら、Science 242,426(1988);S.Z.Salahu-ddinら、Science
242,430(1988)〕を開発している。これらの細胞は、これらの細胞のインビト
ロ増殖を樹立する数種のリンホカインを産生する。それにはインターロイキン6
(IL−6)〔S.A.Milesら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,4068(1990)〕
、インターロイキン1(IL−1)、及び腫瘍壊死因子α(TNFα)〔S.Nakamura
ら、Science 242,426(1988)〕が含まれる。ところで、カポジ肉腫にとって最
も活性な成長因子は近年精製され、そして現在分析下にある30kDタンパク質であ
る〔S.Nakamuraら、Science 242,426(1988)〕。この30kDのリンホカインの
作用はコルチコステロイドにより増強されるが、しかしその相互作用についての
メカニズムは不明である。これらのT細胞由来リンホカインに加えて、あるウィ
ルスタンパク質、即ち、Tatと称されているHIV−1調節タンパク質も、これらの
細胞に対して類似の増殖促進作用を有しており〔B.Ensoliら、Nature 345,84
(1990)〕、そしてその作用は低濃度において非常に低いことが示されている。
様々な患者及び様々な組織/器官より獲得したこれらの培養カポジ肉腫紡錘細
胞はそれ自身で、それ自身の増殖、他の細胞の増殖、及びカポジ肉腫に似た生物
学的変化に至るその他の作用に影響を及ぼす様々なサイトカインを産生する。こ
のようなサイトカインには:塩基性繊維芽細胞増殖因子(dFGF)−様因子、血小
板由来増殖因子(PDGF)、IL−1、顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF)
〔B.EnsoilらScience 243,223(1989)〕、IL−6〔S.A.Miles ら、Proc.N atl.Acad.Sci.USA
87,4068(1990)〕、及び脈管浸透因子が含まれる。培養
したヒトカポジ肉腫細胞はニワトリ漿尿膜(CAM)の血管新生を誘発せしめ、そ
してヌードマウスに移植せしめたとき、それら
は血管の過剰浸透(hyperpermeability)、その結果としての水腫、脈管形成及
びネズミ起源のカポジ肉腫様病巣の発症を誘発せしめる〔S.Z.Salahuddinら、Science
242,430(1988)〕。いくつかの臨床所見と組合せたこれらの結果は、
カポジ肉腫が単純な悪性疾患ではなく、少なくともその初期の段階において内因
可溶性仲介因子に応答して発症する反応性病巣のようであることが示唆されてい
る〔J.CostaとA.S.Rabson Lancet i,58(1983);J.T.Brooks Lancet ii
,1309(1986)〕。
カポジ肉腫は現在、様々な細胞障害剤、例えばビンブラスチン、ブレオマイシ
ン〔P.A.Volberdingら、Ann.Intern.Med.103,335(1985);P.GillらAm .J.Oncol
.13,315(1990)〕、スラミン〔A.M.Levineら、Ann.Intern.Me d
.105,32(1986)〕により、又はサイトカイン、例えばインターフェロンα(
IFNα)〔S.E.Krownら、N.Engl.J.Med.308,1071(1983)〕により処置さ
れている。これら両者の治療形態は数多くの細胞機能に影響を及ぼしうる。より
最近になって、制脈管(ong-iostatic)化合物、ペントサンポリスルフェートも
採用されているが、しかし数多くの最近述べられている有効な制脈管化合物〔R
.C.Gallo Quatrieme Colloque Des Cent Gardes(Proceedings,Biomed-ical
Research Strategy on AIDS)113(1989);B.Ensoliら、Hematol.Oncol.Cli n.North Am.
5,281(1991);S.TaylorとS.Folkman Nature 297,307(198
2);J.Folkmanら、Science 243,1490(1989);J.FolkmanとD.E.Ingber A nn.Surg
.206,374(1987);T.E.MaioneらScience 247,77(1990)〕はい
まだ臨床検査され続けられている。これらのうちの一つ、SP−PG、即ち、細菌ア
ルスロバクター(Arthrobacter)の特定の種AT−25により産生される天然の硫酸
化多糖−ペプチドグリカンが本発明の化合物である。SP−PGはCAMアッセイにお
いて血管新生の発生を、そして皮下的に接種した固形腫瘍の増殖(これはその増
殖のために脈管形成を必要とする)を阻害し、且つ同じ起源の腹水腫瘍細胞の増
殖に影響を及ぼさないことが報告されている〔N.Tanakaら、Cancer Res.49,6
726(1989)〕。
SP−PGはDF4639としても知られている。米国特許第4,900,815号(その全開示
内容は引用することで本明細書に組入れる)はDF4639の抗腫瘍及び抗脈管形成作
用を述べている。ところで、本発明に先行して、この薬剤のカポジ肉腫病巣にお
ける細胞の増殖を阻止又は阻害する能力、及び病巣自体の増殖を阻止又は阻害す
るSP−PGの能力は知られていない、又は予想されていなかった。同様に、細胞性
脈管浸透因子の活性を阻止又は阻害するSP−PGの能力も知られていない、又は予
想されていなかった。
SP−PGの抗−脈管形成活性及び抗−腫瘍活性は共に米国特許第4,900,815に既
に記載されているが、先の発明者はその薬剤をカポジ肉腫に対して試験していな
いか、又はそれがカポジ肉腫病巣の増殖を阻止しうることを予想していない。こ
のことは、その特許は固形腫瘍に対するSP−PGの作用を扱っており、そしてカポ
ジ肉腫病巣は「古典的」な固形腫瘍でないと考えていることにある程度基づくも
のと信じられている。これは腫瘍細胞全体を含んで成っていない;様々なタイプ
の正常細胞がカポジ肉腫病巣の中に存在している。どちらにしても、DF4639(SP
−PG)の活性に詳しい当業界の科学者にとって、その薬剤がカポジ肉腫病巣の発
症を阻害するであろうことは自明でない。これらの科学者は、それがカポジ肉腫
の可能な処置として提唱されうることさえも予想していない。
従って、その抗腫瘍及び抗脈管形成活性に関連して、本発明者はカポジ肉腫患
者の処置における薬剤の利用性をまず認識した。更に、その薬剤を利用して従来
得られたデーターより、それが脈管の浸透性に影響することの示唆はない。
本発明者は、患者におけるカポジ肉腫に時折り関係する水腫が、ヌードマウス
に皮下的に接種せしめたAIDS−KS細胞により誘発されることを実証することがで
きた。KS細胞のこの作用は従来実証されていない。次いで、本発明者はDF4639(
SP−PG)がこの活性を阻止することができうることを実証できた。脈管形成の誘
発又は阻止にかかわる細胞メカニズムはよく理解されていないため、そして脈管
の浸透性の誘発又は阻止にかかわるメカニズムがよく理解されていないため、脈
管形成を誘発する又は高められた脈管浸透を阻止する共通のメカニズムを予想す
る動機はなく、そして脈管形成を阻害する薬剤が、水腫に至る高められた脈管浸
透をも阻止するであろうことを推定する動機はない。
抗腫瘍細胞の原因であるSP−PGの抗脈管形成活性は脈管起源の細胞を標的とす
ることが信じられているため〔N.Tanakaら、Cancer Res.49,6726(1989)〕
、本発明者は、ナショナル キャンサー インスティチュート(NCI)で開発さ
れたインビトロ及びインビボカポジ肉腫系においてSP−PGの試験を開始した〔S
.Nakamuraら、Science 242,426(1988);S.Z.SalahuddinらScience 242,4
30(1988)〕。ヒト組換インターフェロンα(IFNα)〔S.E.KrownらN.Engl .J.Med
.308,1071(1983)〕、スラミン〔A.M.LevineらAnn.Intern.Med
.105,32(1986)〕及びペントサンポリスルフェート〔L.Biesertら、AIDS 2
,449(1989)〕も平行実験において研究した。これらの試験の結果を以下で考
察する。
発明の概要
本発明は、カポジ肉腫病巣における前悪性又は悪性細胞の増殖を、前記細胞を
有効量のSP−PG、即ち、細菌アルスロバクターの特別の種、AT−25により産生さ
れる天然の硫酸化多糖−ペプチドグリカン
と接触させることによって阻止又は阻害するための方法に向けられている。この
方法は、ヒトを含む温血動物において、及びインビトロで有効である。
本発明は更に、ヒトを含む温血動物におけるカポジ肉腫病巣の増殖を、前記病
巣における細胞を、前記病巣の増殖を阻止又は阻害するのに有効な量の硫酸化多
糖−ペプチドグリカンSP−PGと接触させることによって阻止又は阻害するための
方法に向けられている。
本発明は他に、細胞性脈管浸透因子の活性を阻止又は阻害するための方法を提
供し、この方法は、脈管細胞を、前記因子の活性を阻止又は阻害するのに有効な
量のSP−PGと接触させることを含んで成る。ある態様において、この方法は、高
められた脈管浸透性が、例えばカポジ肉腫、腫瘍形成、炎症、糖尿病網膜症等の
病理に寄与している疾患及び障害における高められた脈管浸透(その結果として
の水腫)を阻止又は阻害するのに用いられる。
これら及びその他の目的、並びに利点は、以下の詳細を読むことによって当業
者にとって明らかとなるであろう。
図面の簡単な説明
図1。カポジ肉腫細胞、H−UVE細胞及びヒト繊維芽細胞のインビトロ増殖に
対するSP−PG、IFNα、スラミン及びペントサンポリスルフェートの作用。
図2。SP−PG単独、及びテトラヒドロコルチゾンと組合されての、正常ヒナの
胎芽脈管形成の阻害。
図3。SP−PGによるヒナの漿尿膜に基づくカポジ肉腫細胞により誘発された脈
管形成の阻害。双眼顕微鏡において低倍率のもとで、末梢領域の輪光様脈管形成
が観察された。
図3(a):リン酸バッファー食塩水(PBS)のみのコントロール;
図3(b):ヒドロコルチゾン;
図3(c):SP−PG:
図3(d):SP−PG+ヒドロコルチゾン。
図4。SP−PGによるヒナの漿尿膜に基づくカポジ肉腫細胞により誘発された脈
管形成の阻害。CAMを4%のパラホルムアルデヒドで固定し、そしてギムザで染
めた。
図4(a):リン酸バッファー食塩水(PBS)のみのコントロール;
図4(b):ヒドロコルチゾン;
図4(c):SP−PG;
図4(d):SP−PG+ヒドロコルチゾン。
図5。カポジ肉腫細胞により誘発された脈管浸透性に対する様々な濃度のSP−
PG及びIFNαの作用。
図5(a):SP−PGの投与量応答。
ヒドロコルチゾンを伴う(■)及び伴わない(□)投与。
図5(b)−(e):SP−PGによる、カポジ肉腫関連脈管浸透性の阻害。
図5(b):リン酸バッファー処理のコントロール;
図5(c):0.5mgのSP−PG;
図5(d):5mgのSP−PG;
図5(e):10,000UのIFNα。
図6。ヌードマウスにおけるカポジ肉腫様病巣のSP−PG誘発退化。
(>)は紡錘型細胞、そして(+)は小脈管を示す。
図6(a)は、コントロールのリン酸バッファー食塩水で処理した後のヌード
マウスにおけるカポジ肉腫病巣の全体外観を示し、そして図6(c)はその組織
切片を示す。
図6(b)は、i.v.SP−PG(5mg)及び経口テトラヒドロコルチ
ゾン(1mg)による処置後のヌードマウスにおけるカポジ肉腫病巣の全体外観
、そして図6(d)はその組織切片を示す。
発明の詳細な説明
本発明は、カポジ肉腫病巣における細胞の増殖を、前記細胞を有効量のSP−PG
、即ち、細菌アルスロバクターの特別の種、AT−25により産生される天然の硫酸
化多糖−ペプチドグリカンと接触させることによって阻止又は阻害するための方
法に向けられている。この方法は、ヒトを含む温血動物において、及びインビト
ロで有効である。
別の態様において、本発明はヒトを含む温血動物におけるカポジ肉腫病巣の増
殖を、前記病巣における細胞を、前記病巣の増殖を阻止又は阻害するのに有効な
量の硫酸化多糖−ペプチドグリカンSP−PGと接触させることによって阻止又は阻
害するための方法に向けられている。
別の態様において、本発明はヒトを含む温血動物におけるカポジ肉腫病巣の出
現を予防するための方法であって、脈管細胞を、前記病巣の出現を予防するのに
有効な量の硫酸化多糖−ペプチドグリカンSP−PGと接触させることによる方法に
向けられている。
更なる別の態様において、本発明は細胞性脈管浸透因子の活性を阻止又は阻害
するための方法を提供し、この方法は、脈管細胞を、前記因子の活性を阻止又は
阻害するのに有効な量のSP−PGと接触させることを含んで成る。(本明細書で用
いている「脈管」なる語は、リンパ管及び血管を抱括するように意味する)。こ
の方法は、高められた脈管浸透性が、例えばカポジ肉腫、腫瘍形成、炎症、糖尿
病網膜症等の病理に寄与している疾患及び障害における高められた脈管浸透性(
その結果としての水腫)を阻止又は阻害するのに用いら
れる。
本発明の硫酸化多糖、SP−PGは、日本国政府、通商産業省、工業科学技術庁、
発酵研究機関にFERM P−5255のもとで、「マイクロコッカス(Micrococcus)種A
T−25」の名称で寄託されているアルスロバクター種AT−25(FERMBP−1357)の
培養培地から精製したDF4639(日本国特許公開公報67301/1981)から、15×104
以上の分子量を有する発熱物質を適当な分子量分画法、例えばゲル濾過法、限外
濾過法又はアルコール沈殿法により除去することによって獲得できうる。
例示のゲル濾過法に従うと、DF4639を、ゲル濾過に適当な担体、例えばSephac
ryl S-300(商標名:Pharmacia AB,Dppsala,Swedenの製品)を利用することに
よってゲル濾過にかける。次いで得られる画分を「G3000SWカラム」(商標名:
東ソー(株)、日本国、山口県、新南陽市の製品)での高性能ゲル濾過クロマト
グラフィーにかける。ボイドボリュームにおいてピークを示す画分(H画分)、
及びボイドボリュームにおいてピークを示さず、そして約2×104−8×104の分子
量域において溶離した画分(L画分)を別々に集め、そして脱イオン水に対して
透析する。
このようにして得られた透析内容物を別々に濃縮し、次いで濾過する。その濾
液を別々に、数倍容量のエタノールに撹拌しながら加え、そして得られる沈殿物
をそれぞれ集める。その沈殿物を90%のエタノール、エタノール、次いでアセト
ンで順次洗った後、その沈殿物をそれぞれ減圧のもとで乾かして、目的とするDS
4152(L画分)及び発熱物質(H画分)を得る。
一方、限外濾過は、適当な膜(例えば「YM10」、「YM30」「XM50」もしくは「
PM30」商標:Amicon Corporationの製品;又は「NOVA 100」、「OMEGA 100」、
「NOVA 50」もしくは「OMEGA 50」商標:
Filtron Technology Corporationの製品;等、典型的には「YM10」)を利用し、
窒素ガス又はポンプにより圧力を適用し(0.5−5kg/cm2等)、次いでSP−PGと
しての濾液を集めることによって行なわれうる。適当な溶媒は水−エタノール(
10:2−3)又は水でありうる。限外濾過は通常4℃〜室温の範囲の温度で行な
われる。
以上のようにして得られるSP−PGは、そのナトリウム塩として、下記の物理化
学的な特徴を有する:
(1)分子量(ゲル濾過法による):
29,000±3,000
(2)元素分析(5ロットでの範囲):
C:24.42−25.76%
H:3.34−3.98%
N:0.51−0.89%
S:10.6−11.7%
P:0.77−1.06%
(3)糖及びタンパク質含量
糖含量(%):57±3(フェノール−硫酸法による;標準品:ガラクトース)
タンパク質含量(%):1±0.5(ローリー−フォリン法;標準品:牛血清ア
ルブミン)
(4)比旋光性:
(5)赤外吸収スペクトルにおける特徴的な吸収バンド:
1240,840(ショルダー)、810(cm-1KBr)
(6)溶解性:
水の中ではかなり可溶性であるが、エーテル、ベンゼン、クロロホルム、メタ
ノール及びエタノールの如きの有機溶媒の中では実
質的に不溶性である。
(7)発色反応:
フェノール−硫酸反応、アンスロン−硫酸反応、ビウレット反応及びローリー
−フォリン反応において陽性。酸加水分解物の形態においては、エルソン−モー
ガン反応及びニンヒドリン反応においても陽性。カルバゾール反応及びサカグチ
反応において陰性。
(8)酸性、中性又は塩基性の特色:
pH6−8(3%の水性溶液)
(9)構成糖、硫酸基及び燐の含量:
D−グルコース:D−ガラクトース:SO3 -:Na:P(燐)のモル比はおよそ10
:61:73:6。
(10)構成アミノ酸及びアミノ糖:
アミノ酸分析器による酸加水分解物の分析は、アラニン、グリシン、グルタミ
ン酸、ジアミノピメリン酸、グルコサミン及びムラミン酸の存在を示した。
前述した通り、高められた脈管浸透性が疾患病理に寄与する、及びSP−PGの投
与が有利である疾患には、例えばカポジ肉腫、腫瘍形成、炎症、並びに糖尿病網
膜症及び水腫が含まれる。
前述のSP−PGは単独で脈管浸透性因子の活性を阻止又は阻害するが、それらの
作用は、SP−PGを任意の抗水腫剤と組合せたときに高まる。
(1)例えば、SP−PGはコルチゾン及びその誘導体(アセテート、エナンテー
ト、ウンデシルエート等);ヒドロコルチゾン及びその誘導体(アセテート、ヘ
ミスクシネート、カプロエート、等);プレドニソン及びその誘導体;プレドニ
ソロン及びその誘導体(アセテート、ヘミスクシネート、ホスフェート、ブチル
アセテート、テトラヒドロフタレート、トリメチルアセテート、等);メチルプ
レ
ドニソロン及びその誘導体(アセテート、ヘミスクシネート、等);並びにベー
ターメタソン及びその誘導体(ホスフェート、バレレート、等)と組合せてよい
。11−ヒドロキシル基がα−立体配置を有している一定のグルココルチコイド異
性体、例えば11α−エピエヒドロコルチゾン:及びグルココルチコイド活性に関
係なく、上記のグルココルチコイドのテトラヒドロ代謝物。
黄体ホルモンプロゲステロン及びヒドロキシプロゲステロン、並びにそれらの
誘導体(アセテート、等);ジドロゲストロン及びその17α−アセトキシ誘導体
(Duphaston,商標);等。他に、S04P−PGの作用は、それをミネラロコルチコ
イド、アルドステロン及びデソキシコルチコステロン、並びにそれらの誘導体(
アセテート、トリメチルアセテート、エナンテート、フェニルプロピオネート、
等)と組合せたときに高まる。
(2)アンドロスタン核を含むステロイドホルモン、即ち、アンドロゲン:
アンドロステロン及びテストステロン、並びにそれらの誘導体(プロピオネー
ト、エナンテート、ブチレート、カプリエート、等)。
エピチオスタノール及びメピチオスタノン、並びにそれらの誘導体。
フルオキシメステロン及びその誘導体;メチルテストステロン及びその誘導体
;並びにスタノロン及びその誘導体。
(3)エストラン核を含むステロイドホルモン、即ち、小胞ホルモン:
エストロン及びその誘導体;エストラジオール及びその誘導体(ベンゾエート
、ジプロピオネート、バレレート、ウンデセノエート、等);エストリオール及
びその誘導体(トリプロピオネート、等)。
他方、典型的な抗エストロゲンとして、クロミフェン、ナフォキシジン、タモ
キシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン及びN−デスメチルタモキシフェン
、並びに生理学的に許容されるそれらの塩、例えばその有機酸塩、例えばシトレ
ート、それらの無機酸塩、例えば塩酸塩、等が挙げられうる。
そこで、本発明の薬理製剤は、薬理学的に許容される担体と、単独での、又は
コルチゾンもしくはコルチゾンの誘導体との組合せでの活性成分としてのSP−PG
とを含んで成りうる。この活性成分はこの製剤の中に、細胞性脈管浸透因子の活
性を阻止又は阻害するのに十分な量で存在している。
この薬理製剤は溶液、粉末、顆粒、錠剤、注射物又は座薬の形態でありうる。
この製剤は、静脈内的、動脈内的、経口的、皮下的、直腸内的、粘膜的に、又
は冒された組織もしくは病巣に直接的に投与してよい。
適切な個々の投与量は当業者により容易に決定されうる。処置を施すのに投与
すべき投与頻度及び量は、活性成分の投与方法、特定の患者の必要性、特定の疾
患等に依存し、そして当業者により容易に決定されうる。
インビトロ実験は、SP−PGがある程度の特異性を示すこと、即ち、各細胞タイ
プにとって適切な増殖因子を伴って又は伴わないでインキュベートしたとき、そ
れがカポジ肉腫細胞の増殖に影響を及ぼし、そして高濃度において正常な脈管内
皮細胞(H−UVE)の増殖にも影響を及ぼすが、しかし繊維芽細胞には影響を及
ぼさないということを実証した。図1に示す通り、カポジ肉腫紡錘細胞は正常内
皮細胞よりも感受性であった。IC50(50%阻害が得られる濃度)はカポジ肉腫細
胞に対して3μg/ml、そしてH−UVEに対しては25μg/mlであった。しかし
ながら、繊維芽細胞は試験した全ての濃度にお
いて影響されずにいつづけた。活性化T細胞コンディション培地の存在下でカポ
ジ肉腫の増殖を強めることが従来より見い出されたヒドロコルチゾンはカポジ肉
腫細胞に対するSP−PGのIC50を12.5μg/mlにまで高めた(図1)。反対に、ヒ
ドロコルチゾンはH−UVE細胞の増殖をSP−PG単独よりも効率的に阻害し、一方
、繊維芽細胞の増殖はSP−PGとヒドロコルチゾンとの組合せにより影響を受けず
、なぜならこれはSP−PG単独では影響を受けないからである。
ペントサンポリスルフェートもカポジ肉腫及びH−UVE細胞のインビトロ増殖
を阻害したが、高濃度でのみ阻害した(IC50は、カポジ肉腫細胞については12.5
μg/ml、そしてH−UVE細胞についての50μg/mlであった)。スラミン(IC5 0
、100μg/ml)もIFNα(IC50、10,OOOU/ml)も、カポジ肉腫又はH−UVE細
胞増殖に有意に影響を及ぼさなかった(図1)。
新たな血管形成に対するSP−PGの作用を評価するためにCAMアッセイを用いた
。既に報告され〔(N.Tanakaら、Cancer Res.49,6726(1989)〕、そして図
2に示す通り、新たな血管形成はSP−PGの添加により抑制された。驚くべきこと
に、SP−PGの作用はテトラヒドロコルゾンの添加により強められた(図2)。ま
た、カポジ肉腫細胞(1×105)により誘発された、通常直径1−1.5cmに達する輪
光様脈管形成病巣の形成〔S.Z.SalahuddinらScience 242,430(1988)〕(図
3)は、SP−PGによる処置によって阻害された。25μgのSP−PGを病巣に4日に
一度加えたとき、脈管形成病巣は0.5cm未満に収縮した。より高めの濃度(100μ
g)はより劇的な増殖抑制即ち、目視できる脈管形成の徴候がカポジ肉腫細胞自
体の付近にしかないという抑制をもたらした。CAMアッセイにおけるカポジ肉腫
細胞に対するSP−PGの作用のまとめを下記の表に記載した。
CAMアッセイにおける脈管形成に対するインビボ作用と類似して、しかしなが
ら細胞増殖に対するインビトロ作用とは異なり、SP−PG(25μg)とヒドロコル
チゾン(20μg)との組合せをこのアッセイに利用しときに相乗作用が観察され
た(図3及び4)。
前述した通り、カポジ肉腫様病巣発症の少なくとも2つの生物学的特性、即ち
、高められた脈管浸透性及び脈管形成を研究するのにヌードマウスが利用できう
る(水腫及び新たな血管形成は共にカポジ肉腫腫瘍の目印である)。2〜4×106
のカポジ肉腫−3細胞をヌードマウスの背中に皮下的に注射、又は腹腔内的に
投与したとき、二期の脈管浸透応答が観察された。第一は接種して約30分後に認
められる非特異的な早期ヒスタミン依存期であり、そして第二は、接種して約12
時間後に認められる、カポジ肉腫細胞誘発型の後期遅延
型でヒスタミン−非依存期である。更に、これらの皮下病巣において脈管形成が
誘発され、そしてネズミ起源の紡錘型細胞の増殖後がヒト培養カポジ肉腫細胞の
移植の5〜6日後に観察れた〔S.Z.Salahuddinら、Science 242,430(1988)
〕。このようなインビボ系を、カポジ肉腫病巣の発症に対するSP−PG及びその他
の試薬の作用を研究するために利用した。
カポジ肉腫細胞で皮下接種したマウスに、SP−PG、IFNα、スラミン、又はペ
ントサンポリスルフェートのいづれかを静脈内(i.v.)又はi.p.投与した。
図5(a)から5(d)に示す通り、SP−PGは、0.5mg(25mg/kg)ほどの低い
投与量で始めた投与量依存状況で、カポジ肉腫細胞により誘発された後期脈管過
剰浸透期の誘発を阻害した。ピーナッツオイル中でのテトラヒドロコルチゾンの
経口投与はこの応答に有意な影響を及ぼさなかった。他方、非特異的な早期ヒス
タミン依存期の過剰浸透性はSP−PGにより影響されなかった。高い投与量のIFN
α(10,000U i.v.)(5×105U/kg)も後期応答を部分的に阻害した〔図5
(e)〕。スラミン(5mg i.P.)(250mg/kg)又はペントカンポリスルフェ
ート(2mg i.V.)(100mg/kg)は高濃度でも、テトラヒドロコルチゾンを伴
っても伴わなくても効果がなかった。カポジ肉腫細胞により誘発された脈管浸透
の増大に対するSP−PG及び様々なその他の試薬の相対効果の比較を下記の表2に
示す。
*脈管浸透は、本発明の詳細な説明の本文及び例4に記載の通り、無胸腺症ヌ
ードマウスに4×106の細胞を皮下注射して誘発し、次いでエバンスブルー染色
により測定した。
0=阻害なし
±=非常にわずかな阻害(ほとんど検出できない)
+,++,+++=有意な阻害の域(+++、完全阻害)
カポジ肉腫細胞誘発化脈管形成に対するSP−PGの作用を評価するために、ヌー
ドマウスに0.05(2.5mg/kg)、0.5(25mg/kg)又は5mg(250mg/kg)のSP−PG
を、1mgのテトラヒドロコルチゾンの経口投与を伴って、又は伴わないで、5日
間にわたり1日1回静脈内的に接種せしめた。0.05mgのSP−PGはテトラヒドロコ
ルチゾンとの組合せでさえも脈管形成に影響を及ぼさなかったが、0.5mgのSP−P
Gは新たに形成された脈管病巣のある程度の退化をもたらし、そして5mgのSP−P
Gは血管新生を完全に阻害した。脈管透過性とは異なり、
脈管形成に対する作用は5mgのSP−PGを1mgのテトラヒドロコルチゾンと組合せ
たときでさえも増強された(図6)。全てのマウスは健康、且つ活動的であり続
けた。ヌードマウスにおける病巣の組織検査は、未処理のコントロール動物に比
しての、脈管構造の退化及び少なめの血管数、少ない出血、そしてほんのわずか
の紡錘型細胞を示した(図6)。同様の実験において、5mgのスラミンは毒性で
あることが見い出された。即ち、5匹のヌードマウスのうち2匹が実験中に死に
、そして残りのマウスは傾眠及び虚弱の徴候を示した。IFNα(10,000U)は限
られた作用しかなく、そして2mgのペントサンポリスルフェートはこのような脈
管形成病巣の発症に対して阻害作用を有していなかった(表3)。
カポジ肉腫により誘発させた脈管形成に対するSP−PG及び様々なその他の試薬
の相対効果の比較を下記の表3に示す。
*全ての動物を6日間にわたって毎日処理した
≠脈管形成は、無胸腺症ヌードマウスに4×105の細胞と皮下
注射することによって誘発した。6日目で観察された脈管形成病巣を本発明の詳
細な説明の本文及び例6に記載の通り評価のために固定して染色した。
スラミンはヌードマウスに傾眠及び虚弱性をもたらしたため、この阻害は毒性
な非特異的作用に関係しうる。スマリン処置後のKS−様病巣の変化は若干であり
、そしてSP−PGのはるかに高い作用から容易に区別できた。
0=阻害なし
±=非常にわずかな阻害(ほとんど検出できない)
+,++,+++=有意な阻害の域(+++、完全阻害)
近年の所見は、カポジ肉腫が、サイトカイン、ホルモン及び/又はその他の生
物学的因子が典型的なその病巣の発症、維持及び転移に重要な被害を担っている
因子仲介型疾患でありうると示唆している〔S.Nakamuraら、Science 242,426
(1988);S.Z.Salahuddinら、Science 242,430(1988);B.Ensoliら、Sci ence
243,223(1989);並びにR.C.Gallo Quatrieme Colloque Des Cent Gar des
(Proceedings,Biomedical Research Strategy or AIDS)113(1989)、及
びB.EnsoliらHematol.Oncol.Clin.North Am.5,281(1991)に記載〕。カ
ポジ肉腫由来紡錘型細胞の増殖のための長期培養系及び既に開発されているイン
ビボモデルが、カポジ肉腫病巣発症、例えば脈管形成、水腫及び紡錘型細胞の増
殖のいくつかの重要な組織学的特徴に対する有効な治療剤の薬効を評価するため
に利用できうる。これらのアッセイ系は、従ってカポジ肉腫の治療のための手法
の開発の機会を提供できうる。
脈管形成のいくつかの古くから知られているインヒビター、例えばプロタミン
スルフェート〔S.TaylorとS.Folkman Nature 297,307(1982)〕及びペパリ
ン又はヘパリン類似体〔S.TaylorとS.Folkman
Nature
297,307(1982);J.FolkmanらScience 243,1490(1989)〕と制脈管
ステロイド〔J.FolkmanとD.E.lngber Ann.Surg.206,374(1987)〕とが、
CAM又は腫瘍肉連脈管形成系で試験されている。しかしながら、これらの化合物
は顕著な毒性を示すか、又は出血を誘発する。最近、その他の制脈管剤、例えば
血小板因子4〔T.E.Maioneら、Science 247,77(1990)〕、軟骨由来インヒ
ビター〔M.A.MosesらScience 248,1408(1990)〕及び菌類産物又はその類似
体〔D.lngberらNature 348,555(1990)〕も述べられている。本発明者はこれ
らを、そのカポジ肉腫モデル系においてまだ試験していない。その代わり、本発
明者は、カポジ肉腫において既に臨床利用されている試薬及びその作用を、イン
ビトロ細胞障害を明らかに欠いている理由により選ばれたSP−PGと比較すること
を選択した。本研究において、SP−PGはカポジ肉腫にとって特に有望であること
が見い出され、その理由はその低細胞障害性、並びにカポジ肉腫細胞増殖及びカ
ポジ肉腫様病巣発症を抑えるその効力にある。このことは、SP−PGが自発性胎芽
CAM脈管形成及び腫瘍誘発型脈管形成を阻害すること〔N.TanakaらCancer Res.
49,6726(1989)〕、反復皮下投与が固形腫瘍細胞を注射したマウスの存命を長
期化したこと〔N.TanakaらGancer Res.49,6726(1989)〕の先の報告と一致
するが、これらの過去の研究はカポジ肉腫を含んでいない。
カポジ肉腫の阻害におけるその作用のメカニズムは、これらの研究において示
されている紡錘細胞増殖のその阻害に基づくものと信じられている。この作用の
分子メカニズムは理解されていないが、それは硫酸化化合物であるため、ヘパリ
ン又はヘパリン類似体について予想されているのと類似のメカニズム、即ち、ヘ
パリノイドとして機能するものと信じられている〔S.TaylorとS.Folkman Natu re
297,307(1982):J.FolkmanらScience 243,1490(1989);J.Folkman
とD.E.lngber Ann.Surg.206,374(1987)〕。
本発明者のインビトロ及びインビボ系においては、カポジ肉腫病巣発症の2つ
の重要な事項、即ち、脈管過剰透過性及び脈管形成がそれぞれ評価できる。脈管
過剰浸透性(必要な細胞性及び細胞外物質を受容するのに病巣を発症するための
効率的な状態)、脈管増殖、及びその他の脈管応答は様々な病理学的状況、例え
ば腫瘍形成、炎症及び糖尿病網膜症に関与しているため、それらの作用を予防又
は排除するための方法の開発は疾患処置のための広い暗示を有するものと予測さ
れる。これらの系におけるかかる有効な治療剤の作用のよりよい理解は、水腫、
炎症及び腫瘍細胞増殖の発生についての生理学的及び病理学的プロセス、並びに
それらの治療に至る重要な識見を生みだすものとも予測される。従って、これら
の系は様々な脈管増殖障害に対して有効であると考えられる候補薬剤の評価にと
って、及び基礎的な生物学的プロセスについての情報を増やすのに役立つことに
とって有用性を示すと予測される。この観点において、SP−PGはカポジ肉腫のみ
ならず、その他の障害にとっての治療剤のための候補、並びにこれらの現象の基
礎研究のための有用な手段であると予測される。
本発明を下記の実施例で詳細に例証する。これらの実施例は例示目的のために
含ませたものであり、本発明を限定するものと考えられるべきではない。例1
SP−PG、IFNα、スラミン及びペントサノニルスルフェートの、カポジ肉腫細
胞、H−UVE細胞及びヒト繊維芽細胞のインヒドロ増殖に対する作用
NCIラボトリーにおいて樹立されたカポジ肉腫−3細胞(3×103)〔P.A.Vo
lberdingらAnn.lntern.Med.103,335(1985)〕を、15%の
ウシ胎児血清(FCS)(lnovar,Gaithersburg,MD)、12.5%の活性化CD4陽性T
細胞由来コンディション培地(T−細胞CM)(□)又はT細胞CMと10-6Mのヒ
ドロコルチゾン(■)0.5ml(Hydrocorton,Merck,Sharp and Dhome,West Poi
nt PA)の添加されたRPMI 1640培地の中で培養した。NCIラボラトリーにおいて
樹立されたヒト臍帯血管内皮細胞(H−UVE)(5×103)〔P.A.VolberdingらAnn.lntern.Med.
103,335(1985)〕を、15%のFCS、30μg/mlの内皮細胞
増殖補助剤(Collaborative Research,Lexington,MA)と45μg/mlのヘパリ
ン(O)(Sigma,St.Louis,Mo)の添加されたRPMI 1640培地の中に培養した
。0.5mlの培地中のこれらの細胞をゼラチン入り24穴組織培養皿の中でプレート
培養に付した。National Institutes of HealthのDr.Stuart Aaronsonより贈呈
されたヒト皮膚繊維芽細胞(HSF)(3×103)を、10%FCSに付加されたダルベ
ッコイーグル改良培地(DMEM)(ABI,Silver Spring,MD)の中で培養した。細
胞をゼラチンの入っていない組織培養皿の中で0.5mlでプレート培養した。これ
らの培養物を、0.4−100μg/mlのSP−PG(第一製薬(株)、日本国、東京)、
1.6−400μg/mlのスラミン(FBA PharmacenticalDivision,Mobay Chemical C
orporation,New York,NY)、102−105U/mlのヒト組換インターフェロンα(
3×108U/mg)(ニュージャージーのUniversity of Medicine and Dentistry
のDr.Rashidbaigiの好意により提供)、及び3−100μg/mlのペントサンポリ
スルフェート(Bering Werke,Germany)(Laboratory of Tumor Cell Biology
のDr.Browningより提供)のそれぞれを伴って又は抜きでインキュベートした。
化合物及び培地は、H−UVE細胞については2日毎に、そしてカポジ肉腫細胞及
び繊維芽細胞については3日毎に交換した。6日目の培養にて、細胞をトリプシ
ン処理し、そしてカルター粒子計測器〔P.A.VolberdingらAnn.lntern.Med.
103,335
(1985)〕により計測した。
カポジ肉腫細胞、H−UVE細胞及びヒト繊維芽細胞のインビトロ増殖に対するS
P−PG、IFNα、スラミン及びペントサンポリスルフェートの効果を図1に示す。例2
SP−PG単独、及びテトラヒドロコルチゾンとの組合せによる正常ヒナ胎芽脈管
形成の阻害
SP−PG(O)又はSP−PG+テトラヒドロコルチゾン(0.1ng/卵,0)の直接
活性を調べるため、試験物質を含む食塩水溶液5μlと1%(w/v)のメチル
セルロースの食塩水溶液との混合物を、ノーリンクロスニワトリ受精卵(フナハ
シ農場、日本国、フナハシ)の5日目の漿尿膜(CAM)に加えた。2日後、処理
グループの胎芽脈管形成をコントロールのそれと比べた。50%の胎芽血管新生を
阻害するのに必要な投与量(ID50値)をT/C%を基礎とするプロビット分析に
より計算した。
SP−PG単独、及びテトラヒドロコルチゾンとの組合せによる正常ヒナ胎芽脈管
形成の阻害を図2に示す。例3
SP−PGにより阻害された、ヒナ漿尿膜上のカポシ肉腫細胞により誘発された脈
管形成
受精卵を割り、そして胎芽を10cmの培養皿に移し、そして第一日目に70%の温
度のCO2インキュベーターの中で37℃でインキュベートした。9日目、よく発達
した胚の漿尿膜を脈管形成実験のために選んだ。1×105のKS−3細胞をCAMの上
に載せ、そして新血管形成を次の4日間にわたって観察した。30μlにおけるSP
−PG、ヒドロコルチゾン又はSP−PG+ヒドロコルチゾンを4日間にわたって毎日
病巣の上に落とした。
SP−PGによるヒナ漿尿膜に基づくカポジ肉腫により誘発された脈管形成の阻害
を図3及び4に示す。周辺領域の輪光様脈管形成が、図3に示す通り双眼顕微鏡
で低倍率で観察され、そして図4においてはCAMを4%のパラホルムアルデヒド
で固定し、そしてギムガで染色している。病巣の中心における応答性を組織学的
検査により評価し、そして表1にまとめた。例4
カポジ肉腫細胞により誘発させた脈管浸透応答に対する様々な濃度のSP−PG及
びIFNαの作用
生後8週間の雌バルブ/c nu/nu無胸腺症ヌードマウスがFrederick NIH Can
cer Research Facilityより供給され、そして全ての実験に用いた(体重20g)
。マウスを様々な化合物(コントロールのリン酸バッファー処理;0.5mgのSP−P
G;5mgのSP−PG;及び10,000UのIFNα)により、ピーナッツオイル中の1mgの
テトラヒドロコルチゾン(Sigma)の初期経口投与を伴って又は伴わないで処置
した後、2×105のカポジ肉腫−3細胞を皮下注射した。その結果、後期血管浸
透性が注射の12時間後に観察された。その時点で、100μlの5mg/mlのエバン
スブルー(Sigma)を尾静脈に注射し、そして15分後、細胞外領域へと滲出した
色素を抽出し、そして分光光度計により測定し(図5(a))、更に組織の外観
を写真記録した(図5(b))。カポジ肉腫により誘発された脈管浸透応答に対
する様々な濃度のSP−PG及びIFNαの作用を図5(a)〜5(e)に示す。例5
ヌードマウスにおけるカポジ肉腫様病巣のSP−PG誘発退化
バルブ/c nu/nu無胸腺症マウスをコントロールリン酸バッファー食塩水又
はSP−PGのいづれかにより、ピーナッツオイル(Sigma)
中の1mgのテトラヒドロコルチゾン(Sigma)の経口投与を伴って、又は伴わな
いで処置した。4×106のカポジ肉腫細胞をマウスの背中に皮下移植した。脈管
形成病巣(6日目で観察したパネル)を4%のパラホルムアルデヒドで固定し、
そしてヘマトキシリン−エオシンで染色した(右側のパネル)。その結果を図6
(a)〜6(d)に示す。図6(a)はコントロールリン酸バッファー食塩水で
処置した後のヌードマウスにおけるカポジ肉腫病巣の全体外観を示し、そして図
6(c)はその組織切片を示す。図6(b)はi.v.SP−PG(5mg)と経ロテト
ラヒドロコルチゾン(1mg)とで処置した後のヌードマウスにおけるカポジ肉腫
の全体外観を示し、そして図6(d)はその組織切片を示す。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
A61K 38/00 ABL
ADU
A61K 37/02 ABE
ABL
(72)発明者 中村 修二
アメリカ合衆国,カリフォルニア 91030,
サウス パサデナ,#28,ラモンデール
ドライブ 400
(72)発明者 ガロ,ロバート シー.
アメリカ合衆国,メリーランド 20817,
ベゼスダ,ソーンデン テラス 8513
(72)発明者 長田 恭明
東京都江戸川区北葛西1丁目16番13号 第
一製薬株式会社内
(72)発明者 櫻田 紳策
東京都港区白金台4丁目6番1号
(72)発明者 田中 紀子
東京都江戸川区北葛西1丁目16番13号 第
一製薬株式会社内