JPH08503407A - 大腿骨と脛骨との形状一致性を備えた膝プロテーゼ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 双顆状大腿骨部品（４１）と、脛骨部品（７２）と、前記大腿骨部品と脛骨部品との間に介在する少なくとも一つの半月部品（４２）とを備え、大腿骨部品が使用中に通常の解剖学的膝蓋骨レバーアームとなる膝蓋骨支持表面（４４）によって分離された一対の顆表面（４６）を有し、顆表面が通常の屈曲の全幅にわたって半月部品の対応する脛骨支持表面（４７）にほぼ一致する形状となっている大腿骨プロテーゼが開示されている。

Description

【発明の詳細な説明】 大腿骨と脛骨との形状一致性を備えた膝プロテーゼ 本発明は、膝交換用プロテーゼ（人工装具）に関する。病気または変形した膝 関節を交換する際は、関節炎またはその他の損傷を受けた関節表面を切除し、人 工金属表面およびプラスチック表面と置換する。現在のデザインは３つの部品、 すなわち自然の膝関節の顆表面を交換し、自然または置換用膝蓋骨を案内するた めの手段を有する大腿骨部品と、切除された脛骨に固定されたほぼ水平の支持プ レートを有する脛骨部品と、脛骨部品に取り付けられ大腿骨部品の顆部分のため の支持表面となるような形状の、通常プラスチック材料から成る半月部品とを有 するプロテーゼが中心となっている。 現在の商業的なデザインでは、使用中に人工関節内で限られた運動の自由が可 能となるように、大腿骨部品と半月部品との間に、ある程度の弛緩性を与えてい る。このことは、屈曲中に水平面における回転のみならず、ある程度の前方およ び後方への相対的運動を含む関節の自然の運動を、ある程度模倣するのに必要で ある。 大腿骨部品の支持表面と脛骨部品の支持表面との間の、ある程度の弛緩性を認 めることの欠点のーつは、これにより支持表面に大きな接触圧力および応力がか かることである。すなわちその理由は、従来は相互支持表面の間 の形状一致性を低くすることによって弛緩性を得ていたからである。 本発明の主たる目的は、大腿骨と脛骨との形状一致性が高く、同時に屈曲中に ある程度の前方−後方運動および回転運動が可能である膝プロテーゼを提供する ことにある。 本発明の一態様によれば、双顆状大腿骨部品と、脛骨部品と、前記大腿骨部品 と脛骨部品との間に介在する半月部品とを備え、大腿骨部品が使用中に通常の解 剖学的膝蓋骨レバーアームとなる膝蓋骨支持表面によって分離された一対の顆表 面を有し、顆表面が通常の屈曲の全幅にわたって半月部品の対応する脛骨支持表 面にほぼ一致する形状となっているプロテーゼが提供される。通常の屈曲の全幅 とは、０゜〜約１２０゜、好ましくは１３０゜または１３５゜を意味する。 添付図面より、本発明の特徴および利点が明らかとなろう。 図１（ａ）、（ｂ）、（ｃ）および（ｄ）は、自然の関節の運動を模倣するプ ロテーゼを提供する上での問題に対する、従来の技術を示す。 図２（ａ）、（ｂ）および（ｃ）は、従来技術で示された間題に対する解決案 を示す。 図３（ａ）、（ｂ）、（ｃ）および（ｄ）は、本発明に係わる一実施例の種々 の略図を示す。 図４（ａ）、４（ｂ）および４（ｃ）は、図３（ａ） から３（ｄ）の実施例の３つの詳細図を示す。 図５は、本発明に係わるプロテーゼの半月部品の斜視図である。 図６は、実線で示された従来の人工膝蓋骨と好ましい形状のプラスチック製膝 蓋骨（破線で示す）の形状を示すサジタル（矢状縫合の）図である。 図７は、半月部品および脛骨ベースプレートを通る側方内側断面図である。 図１を参照すると、図１（ａ）は、自然の膝関節を通る断面を示し、この図よ り大腿骨顆（１）と脛骨（２）との間での適合性が欠如していることが理解でき る。自然の膝では、軟骨から成り、ゴムのような硬さを有する半月板（３）が大 腿骨と脛骨との間の間隙を満たしている。これら半月板は、関節表面と共に移動 し、関節を通って伝えられる負荷を、屈曲度に関わらず、この半月板がない楊合 接触するはずの骨の共通面積よりも広い面積にわたって広げる。 膝プロテーゼの設計者は、一つの基本的なジレンマに直面している。すなわち 、大腿骨プロテーゼは解剖学的形状に近い形状となつていることが好ましいが、 屈曲運動全体にわたってかかる関節の形状一致性を得ることはできない。図１（ ｂ）および図１（ｃ）にはこのことが示されている。図１（ｂ）では、伸長状態 に示されており、この状態では高い形状一致性を得ることは極めて容易である。 しかしながら図１（ｃ）に示されるように屈 曲運動時に形状一致性が失われると、この結果、脛骨部品に大きな接触応力が加 わり、これにより接触表面の摩耗および変形がかなり大きくなる。図１（ｄ）で は、大腿骨のサジタル形状が示されており、この図から、このサジタル形状は末 端の円弧および後方の円弧によって、かなり良好な精度で表示できることが理解 できよう。図示するように後方の半径Ｒ１は末端部の径Ｒ２の約半分である。 図２を参照すると、この図は、大腿骨部品と脛骨部品との間の形状一致性をよ り良好とする上での問題を解決する一つの試みを示している。図２（ａ）に示す ように、大腿骨顆の末端（２１）は、大腿骨部品の末端および後方の曲率半径Ｒ １が一定となるように切り欠かれている。 図２（ｂ）および２（ｃ）に示すように、このようにすることにより、全屈曲角 にわたって大腿骨部品と脛骨部品との間の形状一致性を完全にすることができる 。しかしながら、この解決案では４つの重大な欠点が生じる。まず第１は、２つ の部品の間と、更に部品と骨との境界部にせん断力およびトルク力のすべてが伝 えられることである。第２は、通常の機能を発揮させ、靭帯の張力をバランスさ せるのに必要な運動の自由が得られないことである。第３は、大腿骨の末端前方 部で過度に骨を切除することが必要であることである。第４は、膝蓋骨のレバー アームが屈曲の中間点で短い長さ（２３）に縮小されることである。このことは 正常なレバーアーム（２２） の場合と比較して図２（ｃ）に示されている。 図３（ａ）、３（ｂ）、３（ｃ）および３（ｄ）には、本発明に係わるプロテ ーゼの一実施例が図示されており、そのうち図３（ａ）は大腿骨部品の斜視図で あり、図３（ｂ）は、対応する半月部品の斜視図であり、図３（ｃ）および３（ ｄ）はそれぞれ大腿骨部品と脛骨部品とが相互作用する態様を示す側面（サジタ ル）図と、正面（前方）図である。図３（ａ）および３（ｂ）は、図３（ｄ）と 同じように、分離された大腿骨部品および半月部品を示す。 図３（ａ）を参照すると、大腿骨部品４１は顆４６が膝蓋骨支持表面４４と一 体的に形成された、一体的構造となっていることが理解できよう。大腿骨部品の 顆４６は、半月部品４２の脛骨支持表面４７の半径Ｒ４にほぼ対応する半径Ｒ３ を有している。この半径Ｒ３は、図示するように膝蓋骨支持表面４４に影響する ことなく、顆領域４３内の材料を切り欠くように前方に続いている。半月部品４ ２の中心領域４５は、脛骨表面４７よりも浅く、膝蓋骨表面に対して前方で間隙 を形成すると共に、後方で更なる屈曲時の当接を防止するようになっている。膝 蓋骨支持表面４４は、顆表面の前方４３での切り欠きには影響されないので膝蓋 骨のレバーアームは図２に示される従来の配列の場合のように短くなることはな い。顆部分と半月部品の対応する脛骨表面との間の形状一致性は高いので、大腿 骨部品を通して伝えられる負荷は、 膝蓋骨レバーアームの喪失なしに、半月部品の広い表面にわたって均一に広がる 。大腿骨部品の顆部分の切り欠き領域は、更に切除する必要はない。この理由は 、これらの切り欠き領域はプロテーゼの材料のみ切り欠かれているからである。 ベースプレート７２に摺動運動自在に半月部品４２を取り付けることにより、関 節内での必要な弛緩性が得られてる（図７）。このベースプレートは従来の方法 で、例えば支柱７４および位置決めピン７６により切除された脛骨４６に取り付 けられている。材料はワークピースを機械加工することにより除き、大腿骨顆の 切り欠き部品を形成するか、または機械加工を行わない方法、例えば鍛造、成形 または鋳造により、所望の切り欠き形状を形成することができる。 図４（ａ）、４（ｂ）および４（ｃ）は、図３（ａ）〜３（ｄ）に示されたプ ロテーゼの別の詳細図を示す。図４（ａ）に示す前方図では、顆４６の外側およ び内側ノッチ４３が示されている。図４（ａ）で明らかなように、これら顆には 外側−内側平面で湾曲した支持表面５１が形成されており、これら支持表面５１ は膝蓋骨５４のためのトラック５２によって分離されている（図４（ｃ）を参照 のこと）。図６には人工膝蓋骨５４のサジタル形状が点線で示されている。図示 するように、サジタル図において連続した凹形状を有する代わりに平らな内側面 ６１および外側に伸びる表面５５を有し（図４（ｃ））、膝蓋骨溝の側面との形 状一致性を高めている。 かかる形状一致性が高まることにより、接触応力が大幅に低下している。 膝蓋骨溝、すなわちトラック５２は、大腿骨部品上では対称的に位置する必要 はない。むしろ外側５８に向かってずれるか、幅広になっていることが好ましい 。このような膝の形状により、外側にかかる膝蓋骨の力はより大きくなっている 。膝蓋骨のトラックを外側に幅広にするかまたはずらすことにより、トラックの 外側エッジを規定する畝上に、ブラスチックまたは自然の膝蓋骨が、好ましくな い摩耗または炎症の原因となるオーバーハング状態になることを防止している。 トラックを幅広にすることにより、顆と、対応する脛骨支持表面との間の利用可 能な支持面積を小さくするという効果があるので、トラックを内側で幅広にする ことは一般的に好ましいことではない。幸運なことに、自然の膝関節負荷力は内 側よりも外側のほうがかなり小さくなっている。従って、膝蓋骨のトラックを外 側にずらすことはうまい妥協法である。 図４（ｂ）にはプロテーゼのサジタル図が示されている。膝蓋骨が載る表面４ ４は、ノッチ４３の間で後方方向に伸びている。顆の先端はノッチ４３から端部 の上方領域７０まで延びている。図４（ｂ）では、この領域７０からノッチ４３ までの全支持表面上の顆の曲率は、ほぼ均一なサジタル半径Ｒとなっている。し かしながらこの径は、異なるセグメントごとに限られた範囲で変わ り得る。これらセグメントは、図４（ｂ）ではＡ−Ｂ、Ｂ−ＣおよびＣ−Ｄ）と して示されている。例えば図４（ｃ）のＸ−Ｙを通るサジタル平面に対するセグ メントＡ−Ｂの半径は１９ｍｍにでき、対応する径Ｂ−ＣおよびＣ−Ｄのいずれ も外側および内側ノッチ内に約２２ｍｍにでき、そのくぼみはＤと表示されてい る。セグメントＡ−Ｂの径を若干小さく、または少なくとも先端７０に向けて若 干小さくすることにより、最大屈曲時に上方先端７０が半月部品の脛骨表面内に 当接または嵌入する傾向がなくなる。 図３（ａ）〜（ｄ）は、簡潔にするため、長方形に描かれた半月部品４２を示 している。実際には半月部品は平面図で見てほぼ楕円形または腎臓のような形状 となっている。また、図３（ｂ）における半月部品の斜視図は、前方から後方へ の全距離にわたって脛骨支持表面４７が、より浅い中間表面４５から分離してい ることを示唆している点で、若干誤解を生じさせている。前方領域８０において 、脛骨表面４７は直立壁すなわち不連続部８１により、中間領域４５から分離さ れている。しかしながらこれは必ずしも後方領域８２には当てはまらない。後方 領域では中間部分４５は脛骨支持表面にスムーズに合流することが好ましい。こ れにより屈曲中に良好な支持がなされ、このことは図５および７に示されている 。図３（ｂ）における点Ｃにほぼ対応し、脛骨表面４７内の最も深い点にあるラ インに沿う半月部品および脛骨ベース プレートの外側−内側断面図となっている図５では、脛骨表面４７は中間領域４ ５にスムーズに合流していることが判る。図５には、大腿骨部品と協働する半月 部品の全体の支持表面の形状が示されている。図５は前方側から見た半月部品の 斜視図であり、膝蓋骨支持表面４４が領域４５に当接することなく、０゜から全 屈曲度まで枢動できるように、前方の脛骨表面４７よりも浅くなっている中間領 域４５を示している。脛骨表面４７は後方に延びているので、この表面は曲率が スムーズな領域に合流し、後方および外側−中間方向への不連続性をなくしてい る。 図７も脛骨ベースブレート７２上に支持された半月部品４２を示す。脛骨ベース プレート７２は切除された脛骨４６に取り付けるための支柱７４（図４（ｃ）を 参照）と、安定化用突起７６とを有している。切除された大腿骨には位置決めペ グ８２および骨セメントにより、大腿骨部品４１が取り付けられている。ベース プレートの平面上で限度内に回転自在になるよう、脛骨ベースプレートに半月部 品が取り付けられている。頚骨ベースプレートと半月部品は、欧州特許出願第92 300878.3（公開第0498586号）に記載の方法で製造することが好ましい。脛骨ベ ースプレートは半月部品の下面におけるスロット８４（図５参照）と係合する直 立ポストまたはレールを有していることが好ましい。 半月部品４２は脛骨部品の前方および後方に移動する と共に、上記のような運動回転自由度を与えるようにガイドされている。脛骨ベ ースプレート上で半月部品をガイドする方法を記載した他の文献としては、米国 特許第4,340,978号および英国特許第2,219,942号がある。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ウォーカー，ピーター ステンリー イギリス国、ミドルセックス エイチエー ６ ２エイチピイ、ムアー パーク、ペン ブローク ロード 13 (72)発明者 インソール，ジョン ネヴィル アメリカ合衆国、ニューヨーク州 10128、 ニューヨーク、イースト エンド アヴェ ニュー 170、ホスピタル フォー スペ シャル サージェリー 【要約の続き】

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １．双顆状大腿骨部品と、脛骨部品と、前記大腿骨部品と脛骨部品との間に介 在する少なくともーつの半月部品とを備え、大腿骨部品が使用中に通常の解剖学 的膝蓋骨レバーアームとなる膝蓋骨支持表面によって分離された一対の顆表面を 有し、顆表面が通常の屈曲の全幅にわたって半月部品の対応する脛骨支持表面に 実質的に一致する形状となっているプロテーゼ。 ２．大腿骨顆表面の前方が膝蓋骨支持表面に影響することなく、前記形状一致 性を高くする形状となっている、請求項１記載のプロテーゼ。 ３．前方−後方に摺動運動できるよう、前記脛骨部品上で半月部品がガイドさ れる、請求項１または２記載のプロテーゼ。 ４．脛骨部品上での半月部品のガイドが、脛骨部品上での半月部品のある程度 の回転運動を可能とするものである、請求項３記載のプロテーゼ。 ５．半月部品が屈曲時に大腿骨部品の膝蓋骨支持表面に対し間隙を形成するよ うな形状となっている、前記請求項のいずれかに記載のプロテーゼ。 ６．膝蓋骨支持表面は膝蓋骨がトラックの外側エッジにオーバーハングするの を防止するように、外側に幅広またはずらされたトラックを有する、前記請求項 のいずれかに記載のプロテーゼ。 ７．半月部品の前方が、前記脛骨支持表面の間で、前記脛骨支持表面よりも浅 くなっている中間表面を形成するような形状となっている、前記請求項のいずれ かに記載のプロテーゼ。 ８．半月部品の後方が、不連続部を生じることなく脛骨表面が中間表面に合流 するような形状となつている、請求項７記載のプロテーゼ。