【発明の詳細な説明】
血餅−溶解タンパク質の部位−特異的放出用医薬組成物
本発明は血餅の部位で特異的な血餅−溶解タンパク質を放出するための医薬組
成物に関する。
急性心筋梗塞は通常、血餅が完全にまたは実質的に1つの冠状動脈を閉鎖する
ことにより起こる。また血餅は血液循環において別の急性または慢性異常に関与
することがよくある。このような症状を治療するために血餅−溶解タンパク質を
使用することが知られている。そのようなタンパク質は血液に存在するプラスミ
ーゲンのプラスミンへの転換を介して(プラスミンは次にフィブリンを分解でき
る)直接的、または間接的に血餅の崩壊を導くことができる。しかし、血餅−溶
解タンパク質を投与すると血餅崩壊も至ること所で起こり、そして血液循環中に
プラスミーゲンの活性化が起こる結果、出血および血栓塞栓合併症が起こること
が欠点である。この全身的な影響を避けるために、血餅−溶解タンパク質は全血
液中ではそれらの作用を発揮できないが、血餅を治療する部位だけで発揮できる
ことが必要である。この特異性を達成するために、血餅−溶解タンパクをカプセ
ル化し、その全体に血餅−探索物質を施すことによる、さまざまな提案が成され
てきた。
国際特許出願公開第90/07924号明細書は、遊離アミノ基を含有する免疫グロブ
リンのような標的分子を、チオール官能基を提供するリポソームとカップリング
させる方法を開示する。このカップリングは二官能性試薬であるスクシンイミジ
ル3-(2-ピリジルジチオ)プロピネートをアミノ基およびチオール基と反応させ
て行われる。リポソームは診断薬を含むことができる。
ポリエチレングリコールまたはポリ乳酸のような親水性ポリマーで修飾したリ
ポソームから成るリポソーム組成物(その中に抗利尿剤、抗凝固剤または抗腫瘍
剤が存在できる)は国際特許出願公開第91/055454号明細書に開示されている。
国際特許出願公開第90/14078号明細書では、血栓症の治療のために注入可能な
調製物が記載され、その調製物はその中心(コアー)の水性媒質中にプラスミノ
ーゲン活性化因子を含有する半透過性または分解性のマイクロカプセル(リポソ
ーム)を含んで成る。この明細書ではリポソームは好ましくは“部位−特異的”
であると述べているが、そのような標的−方向性の放出についての尺度は記載さ
れていない。
欧州特許出願公開第450,479号明細書および同363,712号明細書は、一方では組
織型プラスミノーゲン活性化因子のような血栓分解剤に結合でき、そして他方で
は活性化血小板またはフィブリンに特異的である二特異的モノクローナル抗体を
開示し、この抗体は血餅を抑制するために使用される。
これらの既知医薬品は十分に特異的ではなく、かつ/または血餅の部位に十分
に効果的に供給されないか、あるいはその薬剤が身体に固有のものでないため免
疫原性の可能性がある、という点で不利である。
本発明の目的は血餅を効果的かつ安全に治療できる医薬組成物およびその調製
法を提供することである。
驚くべきことには、プラスミノーゲンに対して活性化因子が高モル比であって
もプラスミノーゲンとプラスミノーゲン活性化因子との自然な相互作用は、次の
ように減少できることが分かった。それは、プラスミノーゲンおよびプラスミノ
ーゲン活性化因子の意図する機能を完全に残
したまま、プラスミノーゲン活性化因子を血餅−溶解タンパク質として、そして
プラスミノーゲンを標的デバイスとして含むように調製した微粒子調製物による
。
したがって本発明は血餅に対して親和性を示す標的デバイス、および血餅−溶
解タンパク質としてプラスミノーゲン活性化因子を有する生分解性のコロイド状
キャリアーを含む医薬組成物であって、その標的デバイスがコロイド状キャリア
ーに結合しているプラスミノーゲンである組成物に関する。
生分解性コロイドキャリアーは特にリポソームである。通常リポソームはリン
脂質および/またはステロール、ならびに糖脂質および他の構成物から作られた
微小胞であり、その小胞は水−含有区分を包含すると理解されている。リン脂質
も部分的または全体的にポリエチレングリコールのような親水性ポリマーで修飾
できる。微小胞は単ラメラまたは多重ラメラ、あるいは別の状態であることがで
きる。キャリアー粒子の直径は臨界的なものではなく、そして一般的には20nm−
10μmの範囲であり、より特別には100nm−1μmの間である。ポリシアノアクリレ
ート、ゼラチンまたはアルブミン ナノパーティクル(nanoparticle)のような
他の生分解性コロイド系も使用できる。
生分解性コロイドキャリアーの性質を変形(特にリポソームの二層構造:例え
ばそれぞれ飽和または不飽和脂肪酸残基を含有する“ゲル”または“流体”状の
二層、あるいは二層中のコレステロールの存在)することにより、特異的な使用
に従う本発明の医薬組成物のヒトまたは動物体内における放出特性およびクリア
ランスを調和できる。例えば急性心筋梗塞には迅速な血餅溶解が必要であり、し
たがって血栓溶解剤の素早
い溶解が必要である。次に短い循環時間で十分である。一方深部静脈の治療には
比較的長い期間の低いレベルの血栓溶解剤の投与が必要である。コロイドキャリ
アーを例えばポリエチレングリコールで修飾することにより、24時間にわたって
単回用量の注入でよい組成物が調製できる。
適当なプラスミノーゲン活性化因子はウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、スト
レプトキナーゼ、スタフィロキナーゼ、ストレプトキナーゼ−プラスミノーゲン
複合体、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA、フィブリノキナーゼ)、吸
血コウモリプラスミノーゲン活性化因子のような動物プラスミノーゲン活性化因
子および同様な活性化因子、ならびにそのようなプラスミノーゲン活性化因子の
キメラの、突然変異の、切断された、および化学的に修飾された類似体である。
好ましくは本発明の組成物は天然に存在するプラスミノーゲン活性化因子、およ
び/またはヒト起源のプラスミノーゲン活性化因子であり、より詳細には天然に
存在するtPAのような血栓崩壊剤である。tPAの利点は生理的な条件下で、すべて
の種類のフィブリンについて高い特異性および高い親和性を有することである。
天然に存在するプラスミノーゲン、特にglu1−プラスミノーゲンおよびglu2−
プラスミノーゲンのようなglu−プラスミノーゲンは、本発明の組成物用の標的
デバイスとして好ましく使用される。lys-プラスミノーゲンおよびmini-プラス
ミノーゲンのようなプラスミノーゲン誘導体も、場合によっては使用できる。可
能な限り、プラスミノーゲンはフィブリンとの反応に適するコンフォーメーショ
ン状態にある。
プラスミノーゲンとキャリアー微粒子とのカップリングは、実質的に第一アミ
ン類のような不純物を含まないプラスミノーゲンが使用された
場合に向上し得る。特に使用するプラスミノーゲン(モルあたり)は、140molよ
り少ない、特に70molより少ない遊離第一アミン(ε-アミノカプロン酸(EACA)
のような)を含有する。より好ましくはプラスミノーゲンはモルあたり20molよ
り少ない、好ましくは13.3molより少ない第一アミンを含有し、カップリング反
応ですべて予想される標準的な達成度は、mlのプラスミノーゲンあたり6.5mg付
近であり、そしてより高濃度のプラスミノーゲンが使用された場合は比例して混
入物が低濃度である必要がある。例えばプラスミノーゲン1molあたり13.3molよ
り多くのEACAを最初に含有するプラスミノーゲン調製物の場合は、必要とされる
低濃度の第一アミン濃度は特殊な精製法(例えば大量の過剰容量を有するカラム
を使用するゲル濾過)により得られる。そのような精製法を使用すると、プラス
ミノーゲンはフィブリンを認識するために好都合な構造で得られることも分かっ
た。
キャリアーの付加量は使用目的に応じて変化できる。リポソームはリン脂質1
μmolあたり少なくとも10-6、そしてより好ましくは少なくとも10-5μmolのプラ
スミノーゲン活性化因子を含有する(1μmolのリン脂質は約750μgに相当する
)。プラスミノーゲン活性化因子は本質的にリン脂質の内側および/または脂質
二重層に位置するが、部分的には外表面にも存在する。
標的デバイスとして作用するプラスミノーゲンは、好ましくはキャリアーの外
表面に化学的に結合している。プラスミノーゲン−キャリアー付加生成物のフィ
ブリンに関する親和定数が、遊離のプラスミノーゲンよりも大きくなるように各
キャリアー微粒子は1つより多くのプラスミノーゲン分子を含有する。このまし
くは各キャリアー粒子は平均で少な
くとも10個のプラスミノーゲン分子を有する。より特別にはキャリアー微粒子あ
たり10-1000個のプラスミノーゲン分子が結合している。1μmolあたりのリン脂
質に対するμmolのプラスミノーゲンで表すと、その付加量は好ましくは1.6×10-5
−1.6×10-3である。
本発明による組成物の生分解性コロイドキャリアーは、他の薬剤、添加剤また
は助剤(別の血栓崩壊剤のような)、あるいはインビボで放出速度を制御する薬
剤またはインビトロでキャリアーの安定性を制御するを薬剤を含有できる。例え
ばリポソームは、様々な浸透圧により血栓崩壊剤を意図する部位で放出すること
を促進するように高等張性であることができる。
本発明の組成物は多様な形態であることができ、それは例えば水性分散物また
は粉末である。凍結−乾燥粉末は特に長期間の保存に適する。アミノ酸または糖
などの凍結防止剤も存在できる。また組成物は水性溶液、塩、安定剤および他の
助剤のような許容できる賦形剤を含有できる。また組成物は非−カプセル化のプ
ラスミノーゲン活性化因子も含有できる。
医薬組成物は様々な病理過程(特に人間の)の治療に使用できる。これらの使
用には、(急性)心筋梗塞、静脈深部血栓症、肺塞栓症および血栓を妨害しない
フィブリンの形成の治療がある。
組成物は静脈中、動脈中、筋肉中、腹腔中、経皮的、皮下的等のそれ自体既知
の投与法で投与できる。使用する量および濃度は当業者によって決定できるが、
部分的には血栓の部位での生物的利用性に基づき、ならびに体重、健康状態およ
び年齢のような身体的パラメーターに基づき定めることができる。
上記の組成物が投与される時、同時に、あるいは前以て非−カプセル化プラス
ミノーゲン活性化因子を混合効果を達成するため、すなわち非−カプセル化活性
化因子の素早い予備的効果(“ボーラス:bolus”)ならびにカプセル化活性化
因子の遅延効果を達成するために使用することも可能である。
tPAの血餅部位での放出は、放出−制御物質の存在にのみ影響されるだけでな
く、血液成分による複合体の不安定化により、キャリアー材料上のプラスミノー
ゲンの分布変化または補体−媒介分解にも影響されうる。
また本発明は血液血餅に親和性を示す標的デバイスを備えた生分解性コロイド
キャリアーを含んで成る組成物の調製方法であって、
a)プラスミノーゲンのフィブリンに対する親和性を維持したまま実質的に第
一アミン類を含まないプラスミノーゲンをコロイドキャリアーに結合させ;そし
て
b)所望により、医薬品または診断薬をコロイドキャリアー中に包含させる、
方法に関する。
特にプラスミノーゲンは上記のように1molのプラスミノーゲンあたり70molよ
り少ない遊離アミンを含んで成る。
このようにして調製された組成物はそのままで使用することができる。しかし
血栓崩壊剤または他の医薬品、あるいは放射性同位体のような診断薬、ガス気泡
および他の検出しうる物質も本法のキャリアーに包含できる。
本発明はまた上記のような血餅の治療のための医薬組成物の調製法に関する。
本発明の方法の好適な変法は、以下の工程を含んで成る:
a)プラスミノーゲンのフィブリンに対する親和性を実質的に維持したままプ
ラスミノーゲンをリポソームに結合させ:そして
b)プラスミノーゲンとプラスミノーゲン活性化因子の相互反応が減少するよ
うな条件下で、プラスミノーゲン活性化因子をリポソーム中に包含させる。
本発明の方法で使用するリポソームは、それ自体既知の方法、例えばF.Szoka
およびD.PapahadjopoulosによりAnn.Rev.Biophys.Bioeng.9.467-508(1980)に記
載された“フィルム”法、“エタノール注入”法(S.BatzriおよびE.D.Korn,Bio chim,Biophys,Acta
298,1015(1973))、または
“エーテル注入”法(D.W.DeamerおよびA.D.Bangham,Biochim.Biophys.Acta.394
,483(1976))あるいは“逆相蒸発小胞”(F.SzokaおよびD.Pap ahadjopoulos、Pr oc.Natl Acad.Sci.USA
,75.4194(1978))により調製できる。このようにして調製
されたリポソームは単ラメラ、または多重ラメラであることができる。他のリポ
ソームまたは分解性コロイドキャリアー類、ならびにそれらの他の調製法も使用
できる。
a)工程で、プラスミノーゲンを好ましくはコロイドキャリアーに共有結合さ
せる。プラスミノーゲンとキャリアーとの結合は、例えばタンパク質に導入され
たチオール基とキャリアー中に存在する活性化された二重結合との反応、または
ペプチドのカップリング様式としてそれ自体既知の別法に基づき起こり得る。
リポソームへの結合がチオール反応による場合には以下のa)の副工程を分化
でき、これは良好な結果を導くことが分かった:
a1)プラスミノーゲンのメルカプト基−含有誘導体(例えばメルカ
プトアシル誘導体)への転換(この段階でタンパク質中のリシン残基のような遊
離のアミノ基は、誘導体へ転換される):このために適当な試薬はスクシンイミ
ジルアセチルチオアセテート(SATA)であり、カップリングおよび脱アセチル化
(ヒドロキシルアミンを使用)後、タンパク質のメルカプトアセチル誘導体を導
く (R.J.S.Duncanら、Anal.Biochem.132,68-73(1983)、およびR.A.Schwendene
rら、Biochim.Biophys.Acta 1026,69-79(1990));ε−アミノカプロン酸のよう
なアミンがほとんど無いプラスミノーゲンを使用する場合、プラスミノーゲン1
分子あたり3-9個のチオール基を導入することが可能であが、一方市販されてい
るglu-プラスミノーゲンを使用するときはわずか0-1.8個のチオール基を導入で
きるにすぎない;
a2)メルカプト基と反応できる固定基が付いたリポソームの調製;この種類
の適当な固定基は例えばマレイミド基であり、そのために適当なマレイミド−ホ
スファチジル化合物をリン脂質成分に包含させることができる;適当なそのよう
な化合物の例は[4-(p-マレイミドフェニル)ブチリル]ホスファチジルエタノ
ールアミン(MPB-PE)である(F.J.Martinら、J.Biol.Chem.257,286-288(1982)
を参照のこと);
a3)プラスミノーゲン誘導体と固定基が付いたリポソームとの反応;上述の
例の場合には、次の反応はチオール化プラスミノーゲンとマレイミド基が付いた
リポソームとの反応である;この反応は適当な緩衝液中で進行する;
a4)リポソームに結合したプラスミノーゲンの非結合プラスミノーゲンから
の分離は、例えば超遠心による。
プラスミノーゲンのリポソームへの他の適当なカップリング方法は、
リポソームを親水性ポリマーで修飾し(国際特許出願公開第91/05545号明細書に
記載されるように)、次にプラスミノーゲンをポリマー鎖の末端にカップリング
させる。親水性ポリマーは例えば2,000−5,000の間の分子量を有するポリエチレ
ングリコールであることができ、例えば末端カルボキシル基を有するポリエチレ
ングリコールおよびジステアリルホスファチジルエタノールアミンおよびカルボ
ジイミドのようなカップリング活性化剤を使用して共有結合によりリポソームと
結合できる。プラスミノーゲンは次にカルボジイミドのようなカップリング活性
化剤を使用して修飾リポソームとカップリングできる。
本発明の方法においてはプラスミノーゲンをコロイドキャリアーに結合させる
別の方法も使用できる。使用可能な方法は、例えばグルタルアルデヒドによるカ
ップリングであり、それは一方がタンパク質(プラスミノーゲン)のヒドロキシ
ル基またはアミノ基であり、もう一方がキャリアーのヒドロキシル基またはアミ
ノ基である(V.P.Torchilinら、Biochem.Biophys.Res.Commun.85,983-990(1978)
に記載されている)。D.L.UrdalおよびS.Hakomoro.によりJ.Biol.Chem.255.1050
9-10516(1980)に記載されているアビジン−ビオチン反応も使用できるが、この
反応ではアビジンがキャリアーに結合し、そしてビオチン化タンパク質に結合で
きる。さらにA.A.Bogdanovら、FEBS Letters 231,381-384(1983)に記載された方
法も使用でき、それによればキャリアー表面のタンパク質は、N-ヒドロキシスル
ホスクシンイミドの存在下でカルボジイミドでの活性化により固定化できる。こ
れら技術の変法およびジスルフィド結合の形成のような他の技法も使用できる。
プラスミノーゲンのカップリングは、できるかぎりプラスミノーゲンのフィブリ
ンへの結合能力が完全に維持
されるように行われなければならない。
チオエーテルの形成によるカップリングの場合には、プラスミノーゲン活性化
因子の結合に対してキャリアー上に残る固定基を保護するためにコロイドキャリ
アーは好ましくはシステインのようなチオールで工程b)の前に処理される。こ
の工程はa4)工程の前または後に行われる。
b)工程において、プラスミノーゲンおよび/またはプラスミノーゲン活性化
因子はプラスミノーゲンのプラスミノーゲン活性化因子による転換が減少するよ
うに、または遮断されるように処理される。換言すれば比較的少量の基質(プラ
スミノーゲン)および比較的大量の酵素(プラスミノーゲン活性化因子)が存在
する所である場合でもプラスミノーゲンが転換されないように、あるいは少量の
みが遊離のプラスミノーゲン活性化因子によりプラスミンに転換されるように処
理される。またこの処理は好ましくは可逆的であるので、プラスミノーゲンはプ
ラスミノーゲン活性化因子により血餅の部位で転換されることができる。プラス
ミノーゲン活性化因子によるプラスミノーゲンの転換は低温および/または低p
H、特に約4(3-5)のpHで減少できることがわかった。例えば塩化亜鉛のよ
うなハロゲン化金属または例えばε−アミノカプロン酸(EACA)またはオルニチ
ンのような5-7個の炭素原子を有するアミノアルカノール酸のような他の薬剤も
この目的のために使用できる。血餅認識に必要であり、そしてカップリング中に
減少するフィブリンに対するプラスミノーゲンの親和性は、組成物の投与後に再
獲得することができる。
b)工程において、プラスミノーゲン活性化因子はタンパク質の既知カプセル
化法により、コロイドキャリアー中に包含されることができる
(リポソーム中への包含については、C.KirbyおよびG.Gregoriadis,Biotechnolo gy
2,979(1984)またはM.B.Ballyら、Biochim,Biophs.Acta 812,66(1985)を参照
にされたい)。それは本明細書に含まれる物理的カプセル化法である。
tPAはプラスミノーゲン活性化因子の存在下でリポソームの凍結−解凍により
比較的大量に包含できることが分かった。好ましくは凍結−解凍は数回行う。凍
結−解凍前に、リポソームを適当な緩衝液中に溶解し、損失を防ぐために場合に
よってはそこにTween80のような表面−活性剤を加える。緩衝液のpHは約3-8で
あり、好ましくは約4である。カプセル化に使用するために必要な濃度および量
も所望する最終生成物の組成物により決定される。
上記に記載した工程の順番が好ましいが、本発明の血餅−分解組成物は次の方
法を使用して調製することもできる:
c)プラスミノーゲン活性化因子を生分解性コロイドキャリアー中に包含し、
そして
d)プラスミノーゲンのプラスミノーゲン活性化因子との相互反応が減少する
ような条件が必要である場合には、フィブリンに対するプラスミノーゲンの親和
性を実質的に維持したままプラスミノーゲンをコロイドキャリアーに結合させる
。
この方法では、リン脂質または他のキャリアー成分は最初に固定基が提供され
、その後固定基を例えばメルカプト化合物により可逆的に保護することができる
。次にキャリアー粒子が形成され、そしてプラスミノーゲン活性化因子がカプセ
ル化され、その後固定基から保護が除去される。もしプラスミノーゲン活性化因
子がキャリアー中に完全にカプセル
化されるならば、上記の活性化因子との相互反応を低下させることは完全にまた
は部分的に省略できる。プラスミノーゲンを次にカップリング試薬によりキャリ
アー中の固定部位に結合させる。
上記記載のようにして得られた組成物をさらに処理し、適当な使用目的のため
に作成することができる。好ましくは組成物を工程a)の後、工程b)の前また
は後、あるいは工程d)の後に凍結−解凍する。凍結−乾燥は例えばアルギニン
のようなアミノ酸、あるいは例えばラクトースまたはマンニトールのような糖あ
るいは糖アルコールのような凍結防止剤の存在下で行うことができる。この方法
では、使用前に再構成され、使用するまで漏出、分解またはプラスミン形成の危
機にさらされることが無い、安定な生成物が得られる。
本発明は以下の“キット”と呼ばれる組成物の組み合わせに関するものでもあ
る。そのようなキットの1つの態様は、少なくとも1つの上記医薬組成物、およ
び場合によってはさらに組成物の調製および投与手段を含んで成る。さらに、キ
ットは混合投与のために別個のプラスミノーゲン活性化因子を含んで成ることも
できる。
別の態様のキットでは、標的デバイスとしてプラスミノーゲンが結合した生分
解性コロイドキャリアーを含む少なくとも1つの医薬組成物(したがってこれは
カプセル化されたプラスミノーゲン活性化因子が無い)、ならびにプラスミノー
ゲン活性化因子を含有する組成物を含んで成る。プラスミノーゲン活性化因子の
全部または一部が使用前に組成物に包含される。
さらに別の態様ではキットは一方で遊離アミンが低いプラスミノーゲンが結合
した生分解性コロイドキャリアーを含有する組成物を、そして
他方では場合によっては使用前にコロイドキャリアー中に包含されることができ
る医薬品または診断薬を含んで成る。実施例I
glu-プラスミノーゲンの精製
80mgのタンパク質を含有する市販の高濃度のglu-プラスミノーゲン溶液3mlの
部分を、100mlの容量を有し、そしてSephadex G25メディウムが充填された1メ
ーターのカラムで、10mM HEPES緩衝液を使用して精製した。この精製で1molのg
lu-プラスミノーゲンあたり45molのε−アミノカプロン酸を除去した。この精製
段階でチオール−導入SATA反応(下記参照)中にタンパク質の反応性の上昇が示
された:一方未精製試料については1molのglu-プラスミノーゲンあたり1mol付
近のSHが導入され、この数は精製試料に関しては1molのglu-プラスミノーゲン
あたり9molのSHに上昇した。
純粋なEACAを精製したglu-プラスミノーゲン試料に加えると、SATA反応に対す
る反応性が減少し、その減少量は1molのglu-plgあたり14molのEACAで約半分で
あり、そして10および100倍高いEACA濃度でそれぞれ1mol SH/mol、および0.1m
ol SH/molglu-plgに累進的に減少した。プラスミノーゲンのチオール化
10mM HEPES緩衝液(135mMの塩化ナトリウムおよび1mM EDTAを含有)に溶解し
た73μMのglu-プラスミノーゲンを室温で20分間、pH7.5にて584μMのスクシイミ
ジル(アセチルチオ)酢酸(SATA)と一緒に、1:100のDMF:緩衝液の容量比であ
るジメチルホルムアミド(DMF)中でインキュベーションした。混合物をSephade
xG-50カラムで分離した。タンパク質画分を280nmの吸収を測定することにより検
出した。画分を合わせて-20
℃に保存した。タンパク質濃度はWesselおよびLowry((R.K.Scopes、タンパク
質精製;理論と実際(Protein Purification;Principles and Practice)、第二
版、スプリンジャー :Springer(1987)278-283を参照)法を使用して測定した
。
アセチルチオアセチルタンパク質(glu-プラスミノーゲン-ATA)は、新に調製
した0.5Mのヒドロキシルアミン.HCl溶液(25mM EDTAを含有する0.5M HEPES、pH
=7.5)で、容量比が10:1のタンパク質溶液:ヒドロキシルアミン溶液で処理する
ことにより脱アセチル化した。遊離のスルフィドリル基の濃度を次に5,5'-ジチ
オビス(2−ニトロ安息香酸)で、G.L.Ellman、Arch.Biochem.Biophys.82,70-7
7(1959)の方法を使用して測定した。ヒドロキシルアミン溶液自体の吸収により
起こる誤差を避けるために、この測定には誘導体に転換しないタンパク質および
ヒドロキシルアミンの両方を含むブランクを使用した。8:1のSATA:タンパク
質に関しては、市販のglu-プラスミノーゲン、または精製したglu-プラスミノー
ゲンのどちらを使用するかに応じて1molのglu-プラスミノーゲンあたり0.5-9 S
H基を取り込むことが可能であることが分かった。リポソームの調製
タンパク質分子用に固定基が付いたリポソームはホスファチジルコリン、ホス
ファチジルグリセロール、コレステロールおよび[4-(p-マレイミドフェニル)
ブチリル]ホスファチジルエタノールアミン(MPB-PE)を38.5:4:16:0.5-1.5の
モル比で出発物質として使用して、F.SzokaおよびD.Papahadjopoulos,Ann.Rev.B iophys.Bioeng
.9.467-508(1980)の方法に順じて調製した。MPB-PEはF.J.Martin
およびD.papahadjopoulos、J.Bio1.Chem.257(1),286-288(1982)の方法を使用し
て調製した。リポソーム
を孔の大きさが0.6μm(1×)、0.4μm(1×)および0.2μm(3×)であるポリカーボ
ネート膜を通して押し出した。押し出した後の平均直径は(動的光散乱で測定)
、0.24±0.01μmであった。リポソームを10mM HEPES(135mM NaClおよび1mM EDT
Aを含有する)中で調製した。過塩素酸で破壊した後リン脂質の濃度をC.H.Fiske
およびY.Subbarow,J.Biol.Chem.66 375-400(1925)の方法を使用して測定した。
チオール化プラスミノーゲンのリポソームへのカップリング
得られたリポソームにチオアセチル-glu-プラスミノーゲンを種々の量で加え
、そして混合物を30、75または120分間インキュベーションした。リン脂質濃度
はHEPES、pH7.4中で6.7μmol/mlであり、そしてタンパク質濃度は0.5-2.5mg/ml
であった。インキュベーション容量は0.5mlであった。カップリング反応は50μl
のN-エチルマレイミド(HEPES中で8mM)を加えて停止し、そしてリポソームを遊
離のタンパク質から超遠心(4℃で80,000×g、45分間を2回:ベックマン(Bec
kman Instruments))により分離した。遊離のglu-プラスミノーゲン、誘導体の
glu-プラスミノーゲンおよびリポソームのglu-プラスミノーゲン活性を、P.Frib
ergerら、Heamostasis 7,138-145(1978)の方法を使用してストレプトキナーゼで
活性化して測定した。プラスミノーゲン試料を過剰モルのストレプトキナーゼと
インキュベーションし、そして複合体の活性を合成基質S-2251(H-D-Val-Leu-Ly
s-pNA)の転換に基づき測定した(測定は反応生成物pNA(パラニトロアニリド)
の405nmでの吸収により測定した)。SATA誘導体に転換したglu-プラスミノーゲ
ンの活性は未処理のglu-プラスミノーゲンと比較して幾分減少したことが分かっ
た。リポソームに結合したglu-プラスミノーゲンの酵素活性は元の活性の68%(
±6%)まで減
少したことが分かった(すなわちSATA誘導体に転換前)。glu-プラスミノーゲンのフィブリンへの結合の測定
タイターテックプレート(Titertek plates)をフィブリノーゲン層で覆い、
そして次にトロンビンで活性化し、約0.33nmol/cm2の密度でフィブリンモノマー
の層を持つプレートを得た。glu-プラスミノーゲンとプレートの未処理部分との
非−特異的な結合を避けるために、得られたプレートをTween20で処理した。15n
mol/lのglu-プラスミノーゲン試料(血漿中の1%プラスミノーゲン濃度)を室
温で、pH7.4にて一晩インキュベーションした。上澄みを回収して、結合した画
分を緩衝液で3回洗浄した。両画分のプラスミノーゲン濃度を上記のS-2251の転
換で測定した。これで結合したタンパク質の割合を計算できた。リポソームのgl
u-プラスミノーゲンのインキュベーションに使用した濃度は遊離タンパク質の濃
度と同じであった。緩衝液は0.05M Tris-HCl、0.85%NaClおよび0.01重量%のTw
een20を含有した。このTweenの濃度ではリポソームの認識できる分解は起こらな
かった。リポソームにカップリングされたglu-プラスミノーゲンのフィブリン−
結合能力を、遊離のglu-プラスミノーゲンと比較した。全タンパク質に対するフ
ィブリン−結合タンパク質の比をプラスミノーゲンの両方の状態について、15nm
ol/lのglu-プラスミノーゲンの固定低濃度について算出した。リポソーム画分の
タンパク質密度はリン脂質1molあたり50μgであった。フィブリンに結合したリ
ポソームタンパク質の画分は遊離のタンパク質の10倍以上多かった。この効果を
添付の第1図に示す。この図ではプラスノミーゲン−リポソームの付加生成物(
▼)および遊離プラスノミーゲン(▲)の結合をプラスノミーゲン濃度の関数と
して1時間あたりの吸収単位で示す。空のリポソームを
遊離タンパク質に加えたとき、フィブリンとの結合は起こらなかった。実施例II
組織−型プラスノミーゲン活性化因子を含有するリポソームの調製
リポソーム(実施例Iの方法により調製)を0.05% Tween80の存在下または非
存在下で、75、100および150μmol/mlのリン脂質濃度の緩衝液中(10mM Tris,13
5mM NaCl,pH7.5;または0.1Nクエン酸、0.264Mシュクロース、pH4;あるいは0.1
Nクエン酸、0.029Mシュクロース、pH4)に懸濁した。組織−型プラスノミーゲン
活性化因子(tPA)をこの懸濁液に37、92および185μg/ml濃度で加えた。リポソ
ームのカプセル化能力を上げるためにリポソームを次に5回凍結−解凍した。非
カプセル化tPAを45分間、4℃で150,000×gの超遠心により除去した。超遠心の
間、上澄みから非カプセル化tPAの損失を避けるために0.05%のTween80を緩衝液
に含ませた。実施例III
標的デバイスとしてのプラスノミーゲン付加リポソームおよび組織−型プラス ノミーゲン活性化因子を含有するリポソームの調製
プラスノミーゲン−含有およびtPA-含有リポソームを実施例IおよびIIに記載
したように調製した。フィブリンが存在しない場合は、tPAによるプラスミノー
ゲンの転換率は低い。さらに低pH(3-5)および/またはEACA(7mMまで)または
金属ハロゲン化物の添加より、転換率の減少が達成される。実施例IV
組織−型プラスノミーゲン活性化因子を含有するリポソームのインビボでの挙 動
tPAを含有するリポソーム(実施例IIのように調製し、tPAは125Iにより標識
されている)を、3兎の健康なウサギ(人工的な血餅を持たない)に注入した。
血液試料を5分毎に採血し、そしてTween80によりリポソームを破壊した後tPA活
性を測定した。結果を第2図に示す。3つの直線(△、○、▽)は3兎のウサギ
に関する。平均的なリポソームtpAの半減値は約140分であり、これは実質的に遊
離tPAよりも長く(ウサギでは約2.5分)、遊離tPAよりも消失が遅いリポソーム
区分中に包含されたtPAを示す。実施例V
PEG-ヘッドグループ(PEG-headgroup)に結合したプラスノミーゲン付加リポ ソーム:ラットにおいて長い循環時間を持つプラスノミーゲン含有リポソーム
PEG-DSPE(ポリエチレングリコール−ジステアリルホスファチジルエタノール
アミン)基に結合したプラスノミーゲンを付加したリポソームは、DSPEをポリオ
キシエチレン−ビス(酢酸)と77単位のポリオキシエチレンとをカップリングさ
せることにより調製し(KungおよびRedemann,Biochim.Biophys.Acta 862,435-43
9(1986)を参照)、カップリング生成物を大豆ホスファチジルコリンおよびコレ
ステロールと、5.4:67.6:27のモル比で混合した(G.Blumeら、Biochim.Biophys.A cta
1149,180-184(1993)も参照)。ラットに静脈注射した後、比較的低いクリ
アラス速度および長い循環時間がこれらプラスノミーゲン-PEG-リポソームに見
られた:注射24時間後、非-PEG-含有リポソームは元の投与量の4%であるのに
比べ、プラスノミーゲン-PEG-リポソームは元の投与量の18.4%が未だ循環して
いた。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1994年9月14日
【補正内容】
明細書
血餅−溶解タンパク質の部位−特異的放出用医薬組成物
本発明は血餅の部位で特異的な血餅−溶解タンパク質を放出するための医薬組
成物に関する。
急性心筋梗塞は通常、血餅が完全にまたは実質的に1つの冠状動脈を閉鎖する
ことにより起こる。また血餅は血液循環において別の急性または慢性異常に関与
することがよくある。このような症状を治療するために血餅−溶解タンパク質を
使用することが知られている。そのようなタンパク質は血液に存在するプラスミ
ーゲンのプラスミンへの転換を介して(プラスミンは次にフィブリンを分解でき
る)直接的、または間接的に血餅の崩壊を導くことができる。しかし、血餅−溶
解タンパク質を投与すると血餅崩壊も至ること所で起こり、そして血液循環中に
プラスミーゲンの活性化が起こる結果、出血および血栓塞栓合併症が起こること
が欠点である。この全身的な影響を避けるために、血餅−溶解タンパク質は全血
液中ではそれらの作用を発揮できないが、血餅を治療する部位だけで発揮できる
ことが必要である。この特異性を達成するために、血餅−溶解タンパクをカプセ
ル化し、そして全体を血餅−探索物質として提供することによる、さまざまな提
案が成されてきた。
国際特許出願公開第90/07924号明細書は、遊離アミノ基を含有する免疫グロブ
リンのような標的分子を、チオール官能基を提供するリポソームとカップリング
させる方法を開示する。このカップリングは二官能性試薬であるスクシンイミジ
ル3-(2-ピリジルジチオ)プロピネートをアミノ基およびチオール基と反応させ
て行われる。リポソームは診断薬を含むことができる。
ポリエチレングリコールまたはポリ乳酸のような親水性ポリマーで修飾したリ
ポソームから成るリポソーム組成物(その中に抗利尿剤、抗凝固剤、tPAまたは
抗腫瘍剤が存在できる)は国際特許出願公開第91/055454号明細書に開示されて
いる。
国際特許出願公開第90/14078号明細書では、血栓症の治療のために注入可能な
調製物が記載され、その調製物はその中心の水性媒質中にプラスミノーゲン活性
化因子を含有する半透過性または分解性のマイクロカプセル(リポソーム)を含
んで成る。この明細書ではリポソームは好ましくは“部位−特異的”であると述
べているが、そのような標的−方向性の放出についての測定は記載されていない
。
損失を防ぐために場合によってはそこにTween80(商標)のような表面−活性剤
を加える。緩衝液のpHは約3-8であり、好ましくは約4である。カプセル化に
使用するために必要な濃度および量も所望する最終生成物の組成物により決定さ
れる。
上記に記載した工程の順番が好ましいが、本発明の血餅−分解組成物は次の方
法を使用して調製することもできる:
c)プラスミノーゲン活性化因子を生分解性コロイドキャリアー中に包含し、
そして
d)プラスミノーゲンのプラスミノーゲン活性化因子との相互反応が減少する
ような条件が必要である場合には、フィブリンに対するプラスミノーゲンの親和
性は実質的に維持したままプラスミノーゲンをコロイドキャリアーに結合させる
。
この方法では、リン脂質または他のキャリアー成分は最初に固定基が提供され
、その後固定基を例えばメルカプト化合物により可逆的に保護することができる
。次にキャリアー粒子が形成され、そしてプラスミノーゲン活性化因子がカプセ
ル化され、その後固定基から保護が除去される。もしプラスミノーゲン活性化因
子がキャリアー中に完全にカプセル化されるならば、上記の活性化因子との相互
反応を低下させることは完全にまたは部分的に省略できる。プラスミノーゲンを
次にカップリング試薬によりキャリアー中の固定部位に結合させる。
上記記載のようにして得られた組成物をさらに処理し、適当な使用目的のため
に作成することができる。好ましくは組成物を工程a)の後、工程b)の前また
は後、あるいは工程d)の後に凍結−解凍する。凍結−乾燥は例えばアルギニン
のようなアミノ酸、あるいは例えばラクトー
スまたはマンニトールのような糖あるいは糖アルコールのような凍結防止剤の存
在下で行うことができる。この方法では、使用前に再構成され、使用するまで漏
出、分解またはプラスミン形成の危機にさらされることが無い、安定な生成物が
得られる。
本発明は以下の“キット”と呼ばれる組成物の組み合わせに関するものでもあ
る。そのようなキットの1つの態様は、少なくとも1つの上記医薬組成物、およ
び場合によってはさらに組成物の調製および投与手段を含んで成る。さらに、キ
ットは混合投与のために別個のプラスミノーゲン活性化因子を含んで成ることも
できる。
別の態様のキットでは、標的デバイスとしてプラスミノーゲンが結合した生分
解性コロイドキャリアーを含む少なくとも1つの医薬組成物(したがってこれは
カプセル化されたプラスミノーゲン活性化因子が無い)、ならびにプラスミノー
ゲン活性化因子を含有する組成物を含んで成る。プラスミノーゲン活性化因子の
全部または一部が使用前に組成物に包含される。
さらに別の態様ではキットは一方で遊離アミンが低いプラスミノーゲンが結合
した生分解性コロイドキャリアーを含有する組成物を、そして他方では場合によ
っては使用前にコロイドキャリアー中に包含されることができる医薬品または診
断薬を含んで成る。実施例I
glu-プラスミノーゲンの精製
80mgのタンパク質を含有する市販の高濃度のglu-プラスミノーゲン溶液3mlの
部分を、100mlの容量を有し、そしてSephadex G25メディウムが充填された1メ
ーターのカラムて、10mM HEPES緩衝液を使用して精製し
た。この精製で1molのglu-プラスミノーゲンあたり45molのε−アミノカプロン
酸を除去した。この精製段階でチオール−導入SATA反応(下記参照)中にタンパ
ク質の反応性の上昇が示された:一方未精製試料については1molのglu-プラス
ミノーゲンあたり1mol付近のSHが導入され、この数は精製試料に関しては1mol
のglu-プラスミノーゲンあたり9molのSHに上昇した。
純粋なEACAを精製したglu-プラスミノーゲン試料に加えると、SATA反応に対す
る反応性が減少し、その減少量は1molのglu-plgあたり14molのEACAで約半分で
あり、そして10および100倍高いEACA濃度でそれぞれ1mol SH/mol、および0.1mo
l SH/molglu-plgに累進的に減少した。プラスミノーゲンのチオール化
10mM HEPES緩衝液(135mMの塩化ナトリウムおよび1mM EDTAを含有)に溶解し
た73μMのglu-プラスミノーゲンを室温で20分間、pH7.5にて584μMのスクシイミ
ジル(アセチルチオ)酢酸(SATA)と一緒に、1:100のDMF:緩衝液の容量比であ
るジメチルホルムアミド(DMF)中でインキュベーションした。混合物をSephade
x(商標)G-50カラムで分離した。タンパク質画分を280nmの吸収を測定すること
により検出した。画分を合わ
0.5mlであった。カップリング反応は50μlのN-エチルマレイミド(HEPES中で8mM
)を加えて停止し、そしてリポソームを遊離のタンパク質から超遠心(4℃で80
,000xg、45分間を2回:ベックマン(Beckman Instruments))により分離した
。遊離のglu-プラスミノーゲン、誘導体のglu-プラスミノーゲンおよびリポソー
ムのglu-プラスミノーゲン活性を、P.Fribergerら、Heamostasis 7,138-145(197
8)の方法を使用してストレプトキナーゼで活性化して測定した。プラスミノーゲ
ン試料を過剰モルのストレプトキナーゼとインキュベーションし、そして複合体
の活性を合成基質S-2251(H-D-Val-Leu-Lys-pNA)の転換に基づき測定した(測
定は反応生成物pNA(パラニトロアニリド)の405nmでの吸収により測定した)。
SATA誘導体に転換したglu-プラスミノーゲンの活性は未処理のglu-プラスミノー
ゲンと比較して幾分減少したことが分かった。リポソームに結合したglu-プラス
ミノーゲンの酵素活性は元の活性の68%(±6%)まで減少したことが分かった
(すなわちSATA誘導体に転換前)。glu-プラスミノーゲンのフィブリンへの結合の測定
タイターテックプレート(Titertek plates)をフィブリノーゲン層で覆い、
そして次にトロンビンで活性化し、約0.33nmol/cm2の密度でフィブリンモノマー
の層を持つプレートを得た。glu-プラスミノーゲンとプレートの未処理部分との
非−特異的な結合を避けるために、得られたプレートをTween(商標)20で処理
した。15nmol/lのglu-プラスミノーゲン試料(血漿中の1%プラスミノーゲン濃
度)を室温で、pH7.4にて一晩インキュベーションした。上澄みを回収して、結
合した画分を緩衝液で3回洗浄した。両画分のプラスミノーゲン濃度を上記のS-
2251の転換で測定した。これで結合したタンパク質の割合を計算できた。リポソ
ーム
のglu-プラスミノーゲンのインキュベーションに使用した濃度は遊離タンパク質
の濃度と同じであった。緩衝液は0.05M Tris-HCl、0.85%NaClおよび0.01重量%
のTween(商標)20を含有した。このTween(商標)の濃度ではリポソームの認識
できる分解は起こらなかった。リポソームにカップリングされたglu-プラスミノ
ーゲンのフィブリン−結合能力を、遊離のglu-プラスミノーゲンと比較した。全
タンパク質に対するフィブリン−結合タンパク質の比をプラスミノーゲンの両方
の状態について、15nmol/lのglu-プラスミノーゲンの固定低濃度について算出し
た。リポソーム画分のタンパク質密度はリン脂質1molあたり50μgであった。フ
ィブリンに結合したリポソームタンパク質の画分は遊離のタンパク質の10倍以上
多かった。この効果を添付の第1図に示す。この図ではプラスノミーゲン−リポ
ソームの付加生成物(▼)および遊離プラスノミーゲン(▲)の結合をプラスノ
ミーゲン濃度の関数として1時間あたりの吸収単位で示す。空のリポソームを遊
離タンパク質に加えたとき、フィブリンとの結合は起こらなかった。実施例II
組織−型プラスノミーゲン活性化因子を含有するリポソームの調製
リポソーム(実施例Iの方法により調製)を0.05%Tween(商標)80の存在下
または非存在下で、75、100および150μmol/mlのリン脂質濃度の緩衝液中(10mM
Tris,135mM NaCl,pH7.5;または0.1Nクエン酸、0.264Mシュクロース、pH4;あ
るいは0.1Nクエン酸、0.029Mシュクロース、pH4)に懸濁した。組織−型プラス
ノミーゲン活性化因子(tPA)をこの懸濁液に37、92および185μg/ml濃度で加え
た。リポソームのカプセル化能力を上げるためにリポソームを次に5回凍結−解
凍した。非カプセル
化tPAを45分間、4℃で150,000×gの超遠心により除去した。超遠心の間、上澄
みから非カプセル化tPAの損失を避けるために0.05%のTween(商標)80を緩衝液
に含ませた。実施例III
標的デバイスとしてのプラスノミーゲン付加リポソームおよび組織−型プラス ノミーゲン活性化因子を含有するリポソームの調製
プラスノミーゲン−含有およびtPA-含有リポソームを実施例IおよびIIに記載
したように調製した。フィブリンが存在しない場合は、tPAによるプラスミノー
ゲンの転換率は低い。さらに低pH(3-5)および/またはEACA(7mMまで)または
金属ハロゲン化物の添加より、転換率の減少が達成される。実施例IV
組織−型プラスノミーゲン活性化因子を含有するリポソームのインビボでの挙 動
tPAを含有するリポソーム(実施例IIのように調製し、tPAは125Iにより標識
されている)を、3兎の健康なウサギ(人工的な血餅を持たない)に注入した。
血液試料を5分毎に採血し、そしてTween(商標)80によりリポソームを破壊し
た後tPA活性を測定した。結果を第2図に示す。3つの直線(△、○、▽)は3
兎のウサギに関する。平均的なリポソームtpAの半減値は約140分であり、これは
実質的に遊離tPAよりも長く(ウサギでは約2.5分)、遊離tPAよりも消失が遅い
リポソーム区分中に包含されたtPAを示す。実施例V
PEG-ヘッドグループ(PEG-headgroup)に結合したプラスノミーゲン 付加リポソーム:ラットにおいて長い循環時間を持つプラスノミーゲン含有リポ ソーム
PEG-DSPE(ポリエチレングリコール−ジステアリルホスファチジルエタノール
アミン)基に結合したプラスノミーゲンを付加したリポソームは、DSPEをポリオ
キシエチレン−ビス(酢酸)と77単位ポリオキシエチレンとカップリングさせる
ことにより調製し(KungおよびRedeman,Biochim.Biophys.Acta 862,435-439(198
6)を参照)、カップリング生成物を大豆ホスファチジルコリンおよびコレステロ
ールと、5.4:67.6:27の比で混合した(G.Blumeら、Biochim.Biophys.Acta 1149,
180-184(1993)も参照)。ラットに静脈注射した後、比較的低いクリアラス速度
および長い循環時間がこれらプラスノミーゲン-PEG-リポソームに見られた:注
射24時間後、非-PEG-含有リポソームは元の投与量の4%であるのに比べ、プラ
スノミーゲン-PEG-リポソームは元の投与量の18.4%が未だ循環していた。
9.工程a)において、
a1)プラスノミーゲンをメルカプト基−含有誘導体に転換し、
a2)メルカプト基と反応できる固定基を付けた生分解性コロイドキャリアーを
調製し、
a3)プラスノミーゲン誘導体と固定基を付けたコロイドキャリアーとを反応さ
せ、そして
a4)生分解性コロイドキャリアーに結合したプラスノミーゲンを非−結合プラ
スノミーゲンから分離することにより
プラスノミーゲンが結合する請求の範囲第7または8項記載の方法。
10.コロイドキャリアーが工程b)の前にシステインのようなチオールで処理
される請求の範囲第9項記載の方法。
11.工程b)において約3−8のpHが使用される請求の範囲第8ないし10
項のいずれか1項記載の組成物。
12.工程b)でハロゲン化金属および/またはアミノアルカノール酸が使用さ
れる請求の範囲第8ないし11項のいずれか1項記載の組成物。
13.血餅−分解特性を有する組成物の調製方法であって、
c)プラスノミーゲン活性化因子を生分解性コロイドキャリアー中に包含し、
そして
d)プラスノミーゲンのフィブリンに対する親和性を本質的に維持して、場合
によってはプラスノミーゲンとプラスノミーゲン活性化因子との相互反応が減少
するような条件下でプラスノミーゲンをコロイドキャリアーに結合させる、
ことを含んでなる方法。
14.工程b)または工程c)においてそれぞれプラスノミーゲン活性
化因子がコロィドキャリアー中に、プラスノミーゲン活性化因子の存在下で凍結
−解凍することにより包含される請求の範囲第8ないし13項のいずれか1項記
載の方法。
15.工程a)、b)またはd)の後、場合によっては凍結防止剤の存在下で組
成物が凍結−乾燥される請求の範囲第7ないし14項のいずれか1項記載の方法
。
16.生分解性コロイドキャリアーがリポソームである請求の範囲第7ないし1
5項のいずれか1項記載の方法。
17.請求の範囲第1ないし6項記載の少なくとも1つの医薬組成物、およびプ
ラスノミーゲン活性化因子を含む組成物を少なくとも含んで成るキット。
18.少なくとも標的デバイスとして特にプラスノミーゲンが結合した生分解性
コロイドキャリアー、特にリポソームを含む医薬組成物、およびプラスノミーゲ
ン活性化因子を含む組成物を少なくとも含んで成る血餅の治療に適するキット。
19.請求の範囲第7項記載の方法を使用して調製された組成物、および医薬品
または診断薬を含む組成物を少なくとも含んで成るキット。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,BY,
CA,CH,CZ,DE,DK,ES,FI,GB,H
U,JP,KP,KR,KZ,LK,LU,MG,MN
,MW,NL,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,
SD,SE,SK,UA,US,VN
(72)発明者 グロメリン,ダニエル・ジヤン・アン
オランダ・エヌエル―3583ブイピー ユト
レヒト・フレデリクヘンドリクストラート
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