JPH0847736A - 金型シャンク構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 プレス成形品の種類に応じて成形品を上型又
は下型の何れかに残すようにすること。 【構成】 スライド１０と上型１１とを連結したシャン
ク１５の軸方向中心に貫通孔３２が設けられている。こ
の貫通孔３２内には、ノックアウトピン３５が挿通され
ており、このノックアウトピン３５はコイルばね４２に
よってノックアウトバー４４又は成形品の突き出し方向
にばね付勢されている。ノックアウトピン３５が上方に
ばね付勢される構造では、コイルばね４２のばね力でノ
ックアウトバー４４の重量が一定の間支持されて成形品
の上型１１への喰い付きを確保する。この一方、ノック
アウトピン３５が下方にばね付勢される構成では、上型
１１への喰い付きを回避して成形品が下型に残されるよ
うになっている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は金型シャンク構造に係
り、更に詳しくは、プレス成形品の種別に応じた型抜き
態様を安定して確保する金型シャンク構造に関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】従来より、金型をプレス機械に取り付け
るために、スライドと上型との間を連結するシャンクが
採用されている。このシャンクには、中心軸方向に沿っ
て貫通孔が設けられているタイプのものが存在してお
り、総抜型では、前記貫通孔に丸棒を挿通して当該丸棒
の上端をノックアウトバーに当接させ、上型に喰い付い
たプレス成形品を落下させるという技術が知られてい
る。

【０００３】一方、曲げ型あるいは絞り型においては、
総抜型と異なり、プレス成形品を下型に残すことが一般
に要求されている。そのため、上型の内部に適宜なコイ
ルスプリングを介して付勢されたノックアウトピンを設
け、このノックアウトピンで成形品が上型に喰い付くの
を防止するという構成も知られている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、総抜型
では大きなプレス機械を用いて、小さく、かつ、軽量な
成形品を加工すると、前記丸棒の上端より与えられるノ
ックアウトバーの重量が、プレス成形品の上型への喰い
付き力に打ち勝ってしまうため、当該プレス成形品が下
型に残されてしまうという不都合があった。これは、被
加工材の材質がばね用ステンレスやリン青銅あるいは硬
質アルミ等の硬質材であるときに顕著となる。その他の
要因としては、ダイとパンチとのクリアランスが大きい
時、またはプレス成形品の形状が単純な四角や丸形の場
合も下型に残る傾向がある。そして、下型にプレス成形
品が残ると、自動取り出しの妨げになってプレス作業工
数を増大するという不都合を招来する。

【０００５】かかる不都合を解消する対応策としては、
前述したノックアウトバーをプレス成形品に対応させて
軽量なものに交換することも可能であるが、成形品毎の
交換作業が不可避的に要求されて作業性を悪化させるこ
ととなり、必ずしも抜本的な対応策とは云い難い。ま
た、ノックアウトバーをゴムひも等で吊持する手法も考
えられるが、ゴムひもが経時的に変質して切れたりする
場合がある他、テンション調整も容易でなく却って面倒
な作業が必要となる。

【０００６】さらに、前述した曲げ型、絞り型におい
て、コイルスプリングでノックアウトピンを下型側に付
勢する構造にあっては、強力なスプリングを設けるスペ
ースの確保が機械設計上困難であり、また、十分なはね
出しストロークを確保したコイルスプリングを設ける余
裕もなく、プレス成形品が上型に喰い付いてしまう場合
を多く発生するという不都合があった。この場合には、
プレス作業の中断が余儀なくされるのみならず、結果と
して不良品の多発をも招来する。

【０００７】

【発明の目的】本発明は、かかる従来例の不都合に着目
して案出されたものであり、その目的は、プレス成形品
の種別に応じて当該プレス成形品を上型または下型に安
定して残すことができるとともに、成形作業の効率改善
を実現し、かつ既存構造を有効に利用して金型構造の複
雑化をも生ずることのない金型シャンク構造を提供する
ことにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明は、プレス機械のスライドと上型とをシャン
クで連結するとともに、このシャンク又は上型の軸方向
中心に貫通孔を設けて当該貫通孔内にノックアウトピン
を挿通し、このノックアウトピンと前記シャンク側との
間に付勢手段を介在させてノックアウトピンを軸方向に
付勢する、という構成を採っている。

【０００９】前記金型シャンク構造におけるノックアウ
トピンは、当該ノックアウトピンの上端に位置するノッ
クアウトバーに向かって付勢され、この付勢力によって
前記ノックアウトバーの重量が支持可能に設けられ、こ
れによってプレス成形品を上型に安定して喰い付かせる
ことができるようになっている。

【００１０】また、前記ノックアウトピンはプレス成形
品を突き出す方向に付勢される構成も採用でき、かかる
構成によってプレス成形品が上型に喰い付くのを回避
し、常にプレス成形品が下型に残されるようになってい
る。

【００１１】なお、前記付勢手段は、好ましくは、一端
がシャンク側の一部に係止されるととともに、他端が前
記ノックアウトピンの一部に係止されたコイルばねによ
り構成されている。

【００１２】

【作用】ノックアウトピンとシャンクとの間に介存され
た付勢手段により、ノックアウトピンは上方または下方
に付勢されることとなる。ここでノックアウトピンをノ
ックアウトバーに向けて付勢した構成では、ノックアウ
トバーの重量がノックアウトピンで一定の間に亘って支
持され、プレス成形品が上型に喰い付いた状態を保持す
る。このプレス成形品はスライドが上死点に達したとき
のノックアウトピンの強制的な押し下げで離型落下す
る。

【００１３】ノックアウトピンがプレス成形品の突き出
し方向に付勢された構成では、前述とは逆の関係に立っ
てプレス成形品は下型に残されることとなる。

【００１４】なお、付勢手段をコイルばねによって構成
した場合には、シャンクの貫通孔を利用した配置を採用
でき、既存構造のスペースを有効に利用して構造の簡易
化が達成される。

【００１５】

【実施例】以下、本発明に係る金型シャンク構造を、添
付図面を参照しながら詳細に説明する。

【００１６】図１には、本発明に係る金型シャンク構造
の第１実施例が示されている。この図において、プレス
機械のスライド１０の下面側には、図示しない下型と相
対配置された上型１１がダイプレート１２を介して連結
されている。スライド１０の中心位置には、当該スライ
ド１０の上下方向に沿って延びる穴１４が穿設されてお
り、この穴１４内にシャンク１５が挿入され、スライド
１０の外面側から挿入される図示しない固定ボルトでシ
ャンク１５がスライド１０に強固に固定されるようにな
っている。

【００１７】前記シャンク１５の下部は若干小径化され
ており、その外周面には雄ねじ１７が形成されている一
方、これが挿入されるダイプレート１２側には雌ねじ１
８が形成され、これらの各ねじ１７，１８の螺合でダイ
プレート１２がスライド１０に固定連結されている。

【００１８】前記上型１１は、ダイプレート１２直下の
バッキングプレート２０と、このバッキングプレート２
０の下面に位置するパンチプレート２１と、当該パンチ
プレート２１の下面側に配置されるとともに、中央部に
エジェクタ２２が配置されたダイ２３とを備えて構成さ
れている。この上型１１は、前記ダイプレート１２の上
面側から挿入される連結ロッド２５によりダイプレート
１２に対して一体的に固定連結されている。

【００１９】前記ダイプレート１２の下面側略中央部に
は、前記スライド１０に形成された穴１４と連なる大径
穴２７が形成されており、この大径穴２７内にはピスト
ンプレート３０が配置されている。このピストンプレー
ト３０には、前記バッキングプレート２０及びパンチプ
レート２１内を貫通する連結ロッド２９の上端が連結さ
れており、当該連結ロッド２９の下端はエジェクタ２２
に連結されている。

【００２０】前記シャンク１５は、その中心軸方向に沿
って貫通孔３２が穿設されており、この貫通孔３２内に
はノックアウトピン３５が遊挿されている。貫通孔３２
は、軸方向略中央部に段部３６を介して上方側が僅かに
大きくなる内径を備えて構成されており、貫通孔３２の
上端側にはキャップ部材３８がねじ連結できるようにな
っている。

【００２１】前記ノックアウトピン３５は、前記キャッ
プ部材３８の近傍位置においてフランジ４０を備えてお
り、このフランジ４０の下面と前記段部３６との間には
付勢手段としてのコイルバネ４２が介装され、これによ
り、ノックアウトピン３５は上方に向けて付勢され、当
該ノックアウトピン３５の上端がノックアウトバー４４
に当接してこれを支持できるようになっている。

【００２２】次に、本実施例の作用を説明する。

【００２３】所定の成形用ブランクをセットした後に、
図１の状態からスライド１０を降下させ、図示しない下
型と共に上型１１を型締めし、ブランクをダイ形状に打
ち抜きすると、エジェクタ２２の下面が図中二点鎖線で
示される位置に上昇し、これに連結されている前述のピ
ストンプレート３０も同二点鎖線で示される位置に上昇
する。この状態では、ピストンプレート３０の上面がノ
ックアウトピン３５の下端面と当接することとなる。

【００２４】スライド１０を上昇させて型開きすると、
ここでは図示しないプレス成形品はダイ２３側に喰い付
いた状態に保持される。この際、前記ノックアウトピン
３５の上端にはノックアウトバー４４が当接しており、
従ってノックアウトバー４４の重量がノックアウトピン
３５に加えられることとなるが、前述した付勢手段とし
てのコイルバネ４２がノックアウトピン３５を上方へば
ね付勢しているため、当該ノックアウトピン４２が押し
下げられてエジェクタ２２がプレス成形品をダイ２３か
ら突き出すことはない。

【００２５】さらにスライド１０が上昇されて所定の上
死点に達すると、前記ノックアウトバー４４の上昇が規
制されることとなり、この時、規制されたノックアウト
バー４４によるノックアウトピン３５の押し下げ力がコ
イルばね４２の付勢力に打ち勝ってノックアウトピン３
５が押し下げられることとなる。これによる押し下げ量
は前記ピストンプレート３０を介してエジェクタ２２に
伝達され、それまでダイ２３に喰い付いていたプレス成
形品を突き出すこととなる。

【００２６】従って、このような実施例によれば、ノッ
クアウトバー４４の重量がノックアウトピン３５に加え
られても、コイルばね４２がこれを支持するようにノッ
クアウトピン３５を上方へ付勢する構成を採用したか
ら、総抜型のようなプレス成形において要求される上型
への喰い付きを安定して保持することができるという効
果がある。かかる効果によれば、下型にプレス成形品が
残った場合に見られる自動取り出しの妨げも確実に解消
でき、プレス作業工数を増大するという従来の不都合も
有効に解消することが可能となる。

【００２７】しかも、ノックアウトピン３５はシャンク
１５の貫通孔３２に遊挿され、この貫通孔３２内のスペ
ースを利用してコイルばね４２を収容する構成を採用し
たから、既存構造を殆ど有効に利用できる結果、従来の
金型構造を大幅に設計変更することなく実現できてコス
ト的にも負担がない。

【００２８】次に、前記以外の実施例について説明す
る。なお、以下の説明において、第１実施例と同一もし
くは同等の構成部分については同一符号を用いるものと
し、説明を省略もしくは簡略にする。また、図２以下に
おいては、説明の便宜上、前記スライド１０は省略する
ものとする。

【００２９】図２には、本発明に係る金型シャンク構造
の第２の実施例が示されている。この実施例は、ダイプ
レート１２とバッキングプレート２０との間にスペーサ
ブロック５０を設け、このスペーサブロック５０で形成
された内側隙間内におけるピストンプレート３０をノッ
クアウトピン３５で直接吊り下げた点に特徴を有するも
のである。その他の構成、作用は前記第１実施例と略同
様である。

【００３０】このような第２実施例によれば、エジェク
タ２２は無負荷に近くなり、ダイ２３への成形品喰い付
きを一層確実にできるという効果がある。

【００３１】図３には、本発明に係る金型シャンク構造
の第３の実施例が示されている。この実施例は、エジェ
クタ２２をノックアウトピン３５で直接支持する構成と
したところに特徴を有するものであり、上型１１の構造
の簡易化をも図ったものである。この実施例によるその
他の構成、作用も前記各実施例と略同様である。このよ
うな第３実施例によれば、エジェクタ２２の更なる無負
荷状態を維持でき、前記喰い付き精度の安定性を向上さ
せることが期待される。

【００３２】図４には、本発明に係る金型シャンク構造
の第４の実施例が示されている。この実施例は、前記各
実施例と異なり、プレス成形品Ｗを型開きの時に下型に
残すようにしたところに特徴を有するものである。すな
わち、前記ノックアウトピン３５を付勢するコイルばね
４２の一端をシャンク１５側に固定されたキャップ部材
３８に係止させる一方、他端をノックアウトピン３５の
フランジ４０に係止させて当該ノックアウトピン３５が
プレス成形品Ｗの突き出し方向にばね付勢されている。
この実施例におけるプレス成形品Ｗはエジェクトピン５
２によって突き出されるようになっており、これらのエ
ジェクトピン５２は、型締め時に上昇するが、常に下型
に向かってばね付勢された構成となっている。

【００３３】従って、このような実施例によれば、ノッ
クアウトピン３５は下方に向かって付勢されるため、型
開きの際にプレス成形品Ｗの上型１１側への喰い付きを
回避でき、下型に残した状態を確保できるという効果が
ある。かかる効果によれば、プレス成形品Ｗが上型に喰
い付いたときに、これを外す作業のためにプレス作業を
中断させることがなく、かつ、取り外しに伴うプレス成
形品Ｗの損傷を有効に回避でき、プレス成形品の品質を
も良好に確保できるという効果がある。

【００３４】図５には、本発明に係る金型シャンク構造
の第５の実施例が示されている。この実施例は、第４の
実施例の変形的態様であり、付勢手段としてのコイルば
ね４２を二個用いたところに特徴を有するものである。
すなわち、シャンク１５の段部３６上にばね受け駒６１
を配置するとともに、このばね受け駒６１とキャップ部
材３８との間に第１のコイルばね４２Ａが配置されてい
る。そして、ダイ２３の中心部には、貫通孔２３Ａが貫
通されており、この貫通孔２３Ａ内にノックアウトピン
３５が遊挿されている。このノックアウトピン３５の上
端と前記ばね受け駒６１との間には付勢手段としての第
２のコイルばね４２Ｂが介装され、常時はノックアウト
ピン３５がプレス成形品Ｗの突き出し方向に付勢される
ようになっている。

【００３５】このような実施例によれば、コイルばね４
２Ｂのはね出し量を大きく確保でき、深曲げ、深絞り成
形を行う時でも安定してプレス成形品Ｗを下型に残すこ
とができるという効果がある。

【００３６】なお、前記実施例における付勢手段として
は、コイルばねを採用する構成を図示説明したが、本発
明を実施するにあたり、その他の付勢手段を採用するこ
ともできる。例えば、シャンク１５内の貫通穴に流体通
路を連設し、この流体通路にエアあるいは油圧等を吸排
可能とした弁構造を適用すれば、前述と同様の作用、効
果を得ることができる。但し、構造の簡易化とコスト減
を図る上では、前記各実施例の構成を採用することが有
利であろう。

【００３７】また、上型１１の構造は、例示的に示した
ものであり、必要に応じて種々の構造的な設計変更を加
えても何等差し支えない。要するに本発明は、一定の付
勢力を以てノックアウトピン３５を上方又は下方に付勢
することができる構成であれば足りる。

【００３８】

【発明の効果】本発明は、以上のように構成され、か
つ、作用するので、これによると、プレス成形品の種別
に応じて当該プレス成形品を上型または下型に安定して
残すことができるとともに、成形作業の効率改善を実現
し、かつ既存構造を有効に利用して金型構造の複雑化を
も生ずることがない、という従来にない優れた効果を奏
する金型シャンク構造を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る金型シャンク構造の第１実施例を
示す断面図である。

【図２】本発明に係る金型シャンク構造の第２実施例を
示す断面図である。

【図３】本発明に係る金型シャンク構造の第３実施例を
示す断面図である。

【図４】本発明に係る金型シャンク構造の第４実施例を
示す断面図である。

【図５】本発明に係る金型シャンク構造の第５実施例を
示す断面図である。

【符号の説明】

１０ スライド １５ シャンク ２３Ａ 貫通孔 ３２ 貫通孔 ３５ ノックアウトピン ４２ 付勢手段としてのコイルばね ４２Ａ 付勢手段としての第１のコイルばね ４２Ｂ 付勢手段としての第２のコイルばね ４４ ノックアウトバー Ｗ プレス成形品

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 プレス機械のスライドと上型とをシャン
   クで連結するとともに、このシャンク又は上型の軸方向
   中心に貫通孔を設けて当該貫通孔内にノックアウトピン
   を挿通し、このノックアウトピンと前記シャンク側との
   間に付勢手段を介在させてノックアウトピンを軸方向に
   付勢したことを特徴とする金型シャンク構造。
2. 【請求項２】 前記ノックアウトピンは、当該ノックア
   ウトピンの上端に位置するノックアウトバーに向かって
   付勢され、この付勢力によって前記ノックアウトバーの
   重量が支持可能に設けられていることを特徴とする請求
   項１記載の金型シャンク構造。
3. 【請求項３】 前記ノックアウトピンはプレス成形品を
   突き出す方向に付勢されていることを特徴とする請求項
   １記載の金型シャンク構造。
4. 【請求項４】 前記付勢手段は、一端がシャンク側の一
   部に係止され、他端が前記ノックアウトピンの一部に係
   止されたコイルばねであることを特徴とする請求項１な
   いし３の何れかに記載の金型シャンク構造。