JPH0841525A - ステンレス鋼溶製時の吸窒防止法 - Google Patents

ステンレス鋼溶製時の吸窒防止法

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JPH0841525A
JPH0841525A JP19901294A JP19901294A JPH0841525A JP H0841525 A JPH0841525 A JP H0841525A JP 19901294 A JP19901294 A JP 19901294A JP 19901294 A JP19901294 A JP 19901294A JP H0841525 A JPH0841525 A JP H0841525A
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浩二 渡邉
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将志 川崎
Yasutami Fukami
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 転炉から取鍋出鋼時の吸窒を防止することに
より低窒素ステンレス鋼を経済的且つ安定して製造す
る。 【構成】 含クロム溶銑を転炉で脱炭精錬したあと該転
炉から取鍋に出鋼するさいに,用いる取鍋の内容積がV
(m3)であるとき,出鋼前から少なくとも出鋼完了までの
間,取鍋内から取鍋外にCO2ガス流が0.13×V(Nm
3/min)以上の流量で間断なく流出するに十分な量のCO
2ガス発生性物質を取鍋内に存在させるか供給し続け
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,ステンレス鋼の溶製の
段階,とりわけ転炉等での脱炭吹錬後の取鍋に出鋼する
段階において大気雰囲気から鋼中に窒素が吸収されるの
を防止する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼中の窒素は材料の強度を向
上させる等の効果がある。一方,Ti添加鋼のように窒
化物形成元素が存在すると溶鋼中で窒化物が生成し,こ
の窒化物が製品の表面欠陥となる。この欠陥を除去する
には表面研削等を行うことが必要となり,また歩留りの
低下を招くので,この場合には鋼中窒素は極力抑えるこ
とが要求される。
【0003】フェライト系ステンレス鋼は耐応力腐食割
れ性に優れているのでその高純度ステンレス鋼の用途が
拡大されてきたが,この場合にも,侵入型元素である窒
素は母材および溶接部の靱性や耐食性を低下させるので
一層の低減化が望まれる。
【0004】とくに近年ではウォーターフロント開発等
により塩害に強い屋根材や外装材として,高Cr系の極
低炭素・窒素ステンレス鋼の需要が高まっており,この
ようなステンレス鋼をより経済的に供給できることが必
要とされている。
【0005】従来より,低窒素ステンレス鋼の製造には
VOD法が有利であると言われている。しかし溶鋼中の
窒素量〔N〕が約0.008%以下の極低窒素ステンレ
ス鋼を製造しようとするとVODでもその精錬負荷は過
大になりがちであった。なぜなら,VODでの脱窒を強
化しようとすれば,減圧下でのCOボイリングを活発に
しなければならず,そのためにVOD前の〔C〕を高く
しなければならないからである。VOD前の〔C〕を高
くすると,VOD装置での脱炭能力はそれほど大きくな
いのでその精錬時間の大幅な延長とならざるを得ない
し,また活発化したCOボイリングにより溶鋼がオーバ
ーフローするといった事故や歩留まり低下の原因ともな
る。
【0006】VODでの脱窒をより有効に行なうべく,
スラグ/メタル界面の反応を活発化するために底吹き攪
拌ガスの流量を多量にしたり,底吹きノズルの取り付け
個数を増やしたり,あるいは最近では多数のCOボイリ
ングの発生核が生成するように特殊ランスを用いて溶鋼
中に酸化物やC粉を吹き込むような技術も開発されてい
るが,これらの方法によっても精錬時間の延長は避けら
れない。
【0007】このように,従来のVODによる低窒素ス
テンレス鋼の製造方法では,脱窒の大部分をVODに依
存するために,VODにおける生産性や操業安定性の低
下を招くという問題があった。
【0008】このような問題を解決すべく,同一出願人
に係る特公平3−46527号公報において,VOD工
程以前つまり溶銑を対象とした吹錬の段階から脱窒を促
進し且つ吸窒防止を図ることによって,VODでの精錬
負荷を軽減して能率的に低窒素ステンレス鋼を製造する
方法が提案された。
【0009】特公平3−46527号公報の方法は,底
吹き羽口を有する転炉において含クロム溶銑中の炭素濃
度が4%以上となるように加炭してから酸素吹錬し,酸
素吹錬によって生じるCOガス中に溶存〔N〕をN2
スとして希釈させること,さらには加炭時にCaOとC
aF2 を主剤とするフラックスを装入してArガスで攪
拌する操作を加えることによってVOD以前に積極的に
脱窒を行うことを一つの特徴とし,転炉での吹錬のあと
は脱酸処理を行なうことなく取鍋に出鋼し,そのさい,
取鍋内に炭酸マグネシウム物質を供給することにより,
その分解反応によって生ずる炭酸ガスによるシール作用
で大気雰囲気からの吸窒を防止しながらVOD工程に移
行させる点を第二の特徴とするものであり,この両者に
よってVOD工程での脱窒反応は通常レベルであって
も,最終的には低窒素ステンレス鋼が製造できるという
ものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】特公平3−46527
号公報に提案された転炉吹錬時の脱窒法は加炭による精
錬負荷の増大をもたらすので経済的には負担となる。ま
た脱窒用フラックスを脱窒のためだけに用いることも負
担増となる。したがって,経済的安価にステンレス鋼を
製造しようとする観点から見れば,このような脱窒のた
めだけの操作は回避したいところである。
【0011】また,該公報のように転炉吹錬で積極的に
脱窒操作を行っても,吹錬後の吸窒が完全に行えなけれ
ば脱窒操作はその意味を失ってしまう。
【0012】一方,該公報のように脱窒操作を積極的に
行わずとも,通常の吹錬操作で脱窒が或る程度進行する
ので,吹錬後の吸窒が完全に防止できれば,低窒素ステ
ンレス鋼を経済的に溶製することも可能となる。
【0013】しかし,該公報では取鍋への出鋼時の吸窒
防止を完全に防止するための条件が未解決のままであ
り,このために,例えば出鋼時間の変動により,出鋼前
半は炭酸ガスでシールされていても後半はシールが不十
分で吸窒が起きたり,また必要以上の炭酸マグネシウム
を投入することによる溶鋼温度の低下や過剰のMgOの
生成をもたらすといった問題があった。
【0014】本発明は,このような問題の解決を目的と
したものであり,操業条件が目標鋼種に応じて様々に変
化する含クロム溶銑の転炉吹錬において,該公報のよう
な積極的な脱窒操業を行わない場合でも,吹錬後の吸窒
を経済的に且つ完全に防止することによって,低窒素ス
テンレス鋼をより経済的に溶製することを意図したもの
である。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明によれば,含クロ
ム溶銑を転炉で脱炭精錬したあと該転炉から取鍋に出鋼
するさいに,用いる取鍋の内容積がV(m3)であるとき,
出鋼前から少なくとも出鋼完了までの間,取鍋内から取
鍋外にCO2ガス流が0.13×V(Nm3/min)以上,1.
0×V(Nm3/min)以下の流量で間断なく流出するに十分
な量のCO2ガス発生性物質を取鍋内に存在させるか供
給し続けることを特徴とするステンレス鋼溶製時の吸窒
防止法を提供する。
【0016】本発明の実施にさいし,CO2ガス発生性
物質としては炭酸マグネシウムを主成分とする固体物質
を用いて有利に実施できる。また実際には,取鍋内上部
空間のガスをサンプリングし続け,該サンプリングガス
から該空間のCO2ガス濃度の変化を計測し,この計測
値に基いて,0.13×V(Nm3/min)以上,1.0×V
(Nm3/min)以下のCO2ガス流が維持されるように,取
鍋内に供給するCO2ガス発生性物質の供給量を制御す
る。
【0017】
【作用】転炉での吹錬により含クロム溶銑の脱炭を行な
うと,脱窒も同時に進行する。更に脱炭を進行させるた
めに,減圧下での精錬(例えばVOD法)を実施する場
合,脱炭に伴って脱窒も進行するが脱炭能力は転炉ほど
大きくない。したがって転炉における脱炭反応を最大限
利用し,これによる脱窒反応によりVOD前の段階で低
窒素溶鋼となし,VODでの脱窒反応は通常レベルの脱
窒能力で脱窒すれば,経済的操業で低窒素ステンレス鋼
を製造できる。
【0018】しかし,大気圧下での吹錬を終えた転炉内
溶鋼を大気雰囲気下で取鍋に出鋼するさいに,大気雰囲
気から吸窒すれば前記の狙いは外れることになる。本発
明者らは,転炉からの出鋼時に,如何なる状況でも吸窒
反応を安定して皆無にできる条件を見いだすべく各種の
観点から試験を繰り返したが,出鋼中に取鍋での炭酸ガ
スの発生速度が1分間あたり取鍋容積の0.13倍以上
(好ましくは1.0倍以下)に常に維持されるようにC
2ガス発生性物質を取鍋内に連続または断続的に供給
すれば吸窒を皆無にできることがわかった。
【0019】CO2ガス発生性物質は熱分解でCO2を発
生する炭酸塩を用いればよく,特に炭酸マグネシウムが
好適である。炭酸マグネシウムを用いる場合には,炭酸
マグネシウムを含有する工業材料であればよく,純粋な
炭酸マグネシウムである必要はない。工業用炭酸マグネ
シウムは,MgCO2 ・Mg(OH)2・4H2 Oを主成
分とする。場合によってはドロマイト,石灰石のような
鉱物状の炭酸ガス発生物質と混合した状態で使用するこ
とも可能である。以下,CO2ガス発生性物質として,
かような炭酸マグネシウムを主成分とする物質(炭酸マ
グネシウム物質と呼ぶ)を例として説明する。
【0020】炭酸マグネシウム物質の形態としては,粒
状,塊状,またはフレーク状など,操業に応じて使い分
けられる。すなわち,形状の違いによる分解速度の差を
利用することにより,出鋼前から少なくとも出鋼完了ま
での間,間断なくCO2ガスが発生するように調節する
ことができる。また,分解速度が異なる他の炭酸塩,例
えばCO2発生速度の小さい炭酸カルシウム等を混合さ
せ,その混合量を調節することによってCO2ガスの発
生速度を調節することもできる。
【0021】取鍋への炭酸マグネシウム物質の供給方法
としては,当該物質を裸のままあるいは最小単位に梱包
したものを取鍋上部から連続的に供給する方法,非窒素
含有ガス例えばアルゴンガスをキャリアーガスとして連
続的または断続的に取鍋上部から供給する方法が実際的
である。
【0022】なお,炭酸マグネシウム物質に代えて直接
CO2ガスやAlガスなどの非窒素ガスを取鍋内に供給し
ても或る程度のシールができるが,このようなガスを供
給する場合には,取鍋内で発生する上昇気流のために取
鍋上方からの供給では取鍋内をこのガスで完全に置換す
ることはできない。したがって,取鍋底部に設けた底吹
き用のノズルや羽口から,かようなガスを吹き込むこと
が必要となるが,このような方法では取鍋上部から供給
する方法に比べて設備的に大きな負担となるほか,ガス
吹込によるスプラッシュの増大を招き,製品歩留りの低
下を招く。これに対して,炭酸マグネシウム物質のよう
な固体物質を取鍋上部から供給する方法ではこのような
問題がなく,非常に実用的であると言える。場合によっ
ては,取鍋底部に設けたノズルや羽口からCO2やAlガ
スなどをキャリヤーガスとして粉状の炭酸マグネシウム
物質を吹き込んでもよい。
【0023】いずれにしても,取鍋への出鋼中では溶鋼
流やその周囲の雰囲気は非常に流動的な状態であり,出
鋼された溶鋼をCO2ガスで大気雰囲気とシールするこ
とは極めて困難な状況にある。例えば,転炉炉体と取鍋
の位置関係,溶鋼流束の取鍋内位置関係等の経時変化等
に加え,出鋼流束やその時の取鍋内上昇気流が刻々変化
し,さらには溶鋼成分の違い,溶鋼温度など多くの要因
によって,取鍋内からCO2ガスが発生していても大気
が溶鋼と触れる機会は予測性なく訪れる可能性がある。
【0024】ところが,本発明者らの試験によると,用
いる取鍋の内容積がV(m3)であるとき,出鋼前から少な
くとも出鋼完了までの間,取鍋内から取鍋外にCO2
ス流が0.13×V(Nm3/min)以上の流量で間断なく流
出している状態が維持できれば出鋼中の吸窒はほぼ完全
に防止できることがわかった。ここで,Vは取鍋が空の
ときの容積を表している。したがってCO2ガス流を出
鋼の開始から終了まで同量に維持したとしても,実際に
は出鋼につれて取鍋内容積は減少するので,この減少し
た分だけ,取鍋内の単位容積当たりで換算すればCO2
ガス濃度は高くなることを意味する。
【0025】すなわち,出鋼中の全体を通じて出鋼前の
取鍋容積の0.13倍のCO2ガス発生量を取鍋内で確保
し続ければ,出鋼の状況変化に拘わらず,溶鋼への吸窒
を防止できるのである。
【0026】このCO2ガス発生量は炭酸マグネシウム
物質のCO2 ガス発生効率を100%として予測できる
が,前記のように,分解速度,投入位置,投入時期,投
入方法等の要因により,たとえガス発生量が予測できて
も常に或る一定の流量(流速と言ってもよい)に維持さ
せることは,それなりの工夫が必要である。
【0027】本発明によれば,取鍋内壁上部にガスサン
プリング孔を設けるか,または取鍋内上部にガスサンプ
リングプローブを挿入し,出鋼中の取鍋内上部の気体中
の炭酸ガス濃度または酸素,窒素などの大気成分ガス濃
度を連続分析することによって取鍋内の炭酸ガス存在量
を推定し,これから出鋼中の炭酸マグネシウム物質の供
給速度を制御することができる。そのさい,出鋼の少し
前から炭酸マグネシウム物質を供給し始めると初期の溶
鋼流束がシールされるのでさらによい。
【0028】本発明は,クロムを10%以上含有するも
の,特にクロムを18%以上含有し(C+N)値として
0.035%以下の極低炭素・窒素ステンレス鋼を製造
する場合に好適である。
【0029】本発明を適用する操業例を以下に説明す
る。
【0030】まず,電気炉等において〔Si〕等を調整
したステンレス鋼製造用の含クロム溶銑溶銑を,AO
D,転炉等の脱炭炉において通常の酸素吹錬を行う。す
なわちAr攪拌等を行いながら,酸素吹錬により,吹錬
前の2〜6%の〔C〕をぜ0.1〜0.8%まで粗脱炭処
理を行う。このとき,吹錬前後の〔C〕レベルによる
が,〔N〕は,0.0040〜0.0150となる。次に,このステ
ンレス鋼溶湯を真空処理に供するために,取鍋に出鋼す
る。
【0031】このとき,本発明法を適用して炭酸マグネ
シウム物質を出鋼前および出鋼中の取鍋に供給する。供
給された炭酸マグネシウム物質は,メタルやスラグの顕
熱によって分解し炭酸ガスを発生し,大気から溶鋼を遮
蔽するシール剤として作用するために,溶鋼の吸窒反応
を防止する。この炭酸マグネシウム物質の供給にあたっ
ては,前記のように出鋼前から少なくとも出鋼完了まで
の間,取鍋内から取鍋外にCO2ガス流が0.13×V
(Nm3/min)以上の流量(好ましくは1.0(Nm3/min)以
下の流量)で間断なく流出している状態が維持できるよ
うにしなければならない。これによって,出鋼中の溶鋼
流束自身,さらには滝壺周辺の溶鋼でも大気を巻き込む
ことが防止され,吸窒反応の主要因を排除できる。
【0032】図1は,本発明者らが行った操業結果を示
したものである。図1の操業結果は後記実施例で説明す
るものと実質的に同様の鋼種および精錬条件に依ったも
のである。図1に見られるように,CO2 ガス発生流量
(速度)が0.13V以下では吸窒量が急激に多くなっ
ている。これは,溶鋼流束およびいわゆる滝壺周辺での
シールが不充分であったことによると考えられる。なお
1.0V以上ではシール効果は充分すぎるようになる。
したがって,過剰供給の分だけ炭酸マグネシウム物質が
無駄になりコストアップになるばかりでなく,溶鋼温度
の低下や取鍋内スラグへのMgOの過多混入などのデメ
リットを招く。
【0033】炭酸マグネシウム物質の供給にあたって
は,出鋼前から出鋼完了まで取鍋内上部空間のガスをサ
ンプリングし続け,このサンプリングガスから該空間の
CO2ガス濃度の変化を計測し,この計測値に基いて0.
13×V(Nm3/min)以上のCO2ガス流が維持されるよ
うに,取鍋内に供給する炭酸マグネシウム物質の供給量
を制御する。ここで,サンプリングガスからCO2ガス
濃度の変化を計測するには直接CO2ガスの連続分析を
行ってものよいが,より簡便には酸素または窒素の連続
分析を行い,その分析値から周囲雰囲気からの空気の侵
入量を推定し,この推定値からCO2濃度の変化を求め
ることができる。例えば取鍋の上縁から50cm下の取鍋
内壁部からのガスサンプリングによればO2 %が1%以
下の時,充分な吸窒防止効果が得られる。後者の方法に
よれば,取鍋内の上部空間に存在する侵入空気(ひいて
は窒素量)の状況が把握されるので好都合である。
【0034】本発明を実施している間における取鍋上部
空間の炭酸ガス濃度の変化は,現場での操業状況によっ
て一定ではなく,出鋼開始から終了までに要する時間,
転炉炉体と取鍋の位置関係,出鋼時の溶鋼流束の変化,
その時の風速条件による取鍋内上昇気流の変化,溶鋼流
束の取鍋内位置関係,さらには溶鋼成分の違い,溶鋼温
度など,多くの要因によって左右されるので,取鍋内ガ
スの分析は,出鋼直前から出鋼完了まで連続的に行うこ
とが望ましい。
【0035】このようにして本発明によると,転炉から
真空処理用取鍋に出鋼時の吸窒反応が確実に防止され,
転炉の吹止時に低下している〔N〕値が取鍋内でもその
まま維持される。従来の技術水準では取鍋出鋼時の吸窒
防止効果が安定しなかったので,転炉で低〔N〕まで脱
窒されても,真空処理開始時には結局高〔N〕レベルか
らの脱窒反応を予定した操業を必要とし,真空処理の負
荷を増大させていたのであるが,この点が本発明によれ
ば著しく改善され,通常の真空処理の操業条件でも安定
して低〔N〕化が達成されるので,経済的に低窒素ステ
ンレス鋼を製造することができる。
【0036】以下に本発明法を適用した代表的な実施例
を挙げ,本発明の効果を具体的に示す。
【0037】
【実施例】クロムを22%含有するフェライト系ステン
レス鋼製造用の溶銑を電気炉において溶製した。溶銑の
主な成分は以下の範囲内の量を含有するものであった。
C : 2.0〜3.5mass%,Si: 0.1〜0.5ma
ss%,Mn: 0.1〜0.5mass%,Cr:21.1〜
23.0mass%,残部はFeおよび不可避的不純物であ
る。
【0038】表1に各溶銑の〔C〕値と〔N〕値(転炉
脱炭前)を示した。これら溶銑を転炉において底吹き羽
口より少量のArガスを吹き込みながら上吹き酸素吹精
を所定の時間実施して脱炭処理したあと温度を調整し,
内容積が20m3 の取鍋に出鋼した。表1には,各ヒー
トにおける転炉で脱炭終了後出鋼直前の〔N〕を示し
た。いずれのヒートも,転炉吹錬により脱炭と共に脱窒
が進行していることがわかる。
【0039】各ヒートとも転炉から受鋼した取鍋を,酸
素吹精ランスを備えた真空脱ガス装置(VOD装置)内
にセットし,減圧下での脱炭脱ガス処理を行い,吹錬終
了後は成分調整を行ってス低炭素・低窒素ステンレス鋼
を製造した。そのさい,取鍋に受鋼するさいの処理操作
を各ヒートごとに後述のように変えた以外は,実質上同
一の精錬操作に従った。表1には各ヒートのVOD処理
後の〔N〕値を併せて示した。
【0040】
【表1】
【0041】表1において製鋼番号A1〜A10は本発明
法を適用した例, B1〜B7は本発明で規定する条件を外
れる例であり,それぞれ次のようにして取鍋に出鋼し
た。
【0042】製鋼番号A1 〜A2 ではCO2 ガス発生性
物質としてフレーク状の工業用炭酸マグネシウム(炭酸
マグネシウム物質と称する)を,Arガスをキャリアー
ガスとしてパイプの先端から取鍋内の溶湯滝壺付近に出
鋼中に連続的に供給した。炭酸マグネシウム物質の供給
速度はCO2ガスの発生量=0.14V(Nm3/min)が常に
維持されるように調整した。
【0043】製鋼番号A3 はCO2ガス発生量=0.9
V(Nm3/min)が常に維持されるように炭酸マグネシウム
物質を吹込んだ以外はA1 〜A2 と同様にして炭酸マグ
ネシウム物質を供給した。
【0044】製鋼番号A4 〜A5 は取鍋上端から50c
m下方位置にガスサンプリング孔を有した取鍋を使用
し,出鋼前に予めフレーク状の炭酸マグネシウム物質1
00kgを入れ置きしたうえ,出鋼すれば滝壺となるで
あろう付近にガスサンプリングプローブを挿入してその
付近のCO2 濃度を分析し,その付近に十分量の炭酸ガ
スの発生が認められてから出鋼を開始した。そして,出
鋼中は前記のガスサンプリング孔から採取したガス中の
CO2 ガス濃度を分析し続け,CO2ガスの流量が0.2
〜0.5V(Nm3/min)の範囲となるように,粉粒状の炭
酸マグネシウム物質を前記の例と同様にArガスをキャ
リアーガスとして取鍋底部に吹き込んだ。
【0045】製鋼番号A6 〜A8 は,取鍋上部のガスサ
ンプリング孔から出鋼中の取鍋内ガスを連続的に採取し
て質量分析計でN2 濃度を測定しながら,計算されるC
2濃度の増減に応じて,CO2ガスの流量が0.4〜0.
6V(Nm3/min)となるように,粉粒状の炭酸マグネシウ
ム物質をArガスをキャリアーガスとして取鍋底部に吹
き込んだ。
【0046】製鋼番号A9 〜A10は,工業用ドロマイト
(CaCO3 :54.3%,MgCO3:40.9%)120kg
を取鍋に入れ置きしたうえ,出鋼すれば滝壺となるであ
ろう付近にガスサンプリングプローブを挿入してその付
近のO2濃度を質量分析計で分析し,このO2濃度の変化
から十分量の炭酸ガスの発生が確認されてから出鋼を開
始した。出鋼中はガスサンプリングプローブを取鍋内上
部に移動して連続的にガスを採取し, 質量分析計でO2
濃度を測定しながら,その濃度の増減に応じて, CO2
ガスの流量が0.7〜1.0V(Nm3/min)に常時維持され
るように,フレーク状の炭酸マグネシウム物質を5Kgづ
つArガスで充填密閉したパックを,断続的に滝壺部に
落とし込んだ。
【0047】表1に示すように,これらA1〜A10のも
のはいずれも転炉出鋼前後の〔N〕値は低下することは
あっても上昇することは完全に抑制されており,またV
OD処理後の〔N〕値も61〜74ppmと非常に安定
して低い値が得られた。
【0048】これに対して,次に説明する比較例のB1
〜B7の操作では取鍋出鋼後の〔N〕値が上昇し,VO
D処理後の最終〔N〕値にもバラツキが生じた。
【0049】製造番号B1 とB2 は,転炉からの出鋼時
に炭酸マグネシウム物質を使用しなかった対照例であ
る。この場合には吸窒が生じ,VODでの通常の脱炭吹
錬では脱窒はあまり進行しない。
【0050】B3 とB4 はいずれも炭酸マグネシウム物
質150kgを取鍋内に入れ置きし,出鋼中には炭酸マグ
ネシウム物質を供給しなかった例である。これらの例で
も吸窒が生じており,転炉吹錬時の脱窒効果が相殺され
ている。
【0051】B5 は, CO2の流量が0.11V(Nm3/m
in)となるように,フレーク状の炭酸マグネシウム物質
を4.2kgづつArガスで充填密閉したパックを, 出鋼
中に断続的に滝壺部に落とし込んだものである。この場
合には,CO2ガス発生量が少ないので十分な吸窒防止
効果が得られていない。
【0052】B6 とB7 は100kgの炭酸マグネシウム
物質を入れ置きしたうえ,出鋼中は取鍋上部のガスサン
プリング孔から取鍋内ガスを連続的に採取して質量分析
計でCO2濃度を測定しながら,その濃度の増減に応じ
て,CO2ガスの流量が0.01〜0.12V(Nm3/min)
となるように,フレーク状の炭酸マグネシウム物質をA
rガスをキャリアーガスとして取鍋底部に吹き込んだも
のである。この場合にも,出鋼後半でのCO2ガス発生
量が少ないので十分な吸窒防止効果が得られていない。
【0053】このように炭酸マグネシウム物質を出鋼時
に供給してもB3 〜B7 の操作では最終的には〔N〕は
90〜125ppm前後と,いずれも転炉出鋼前の
〔N〕レベルより高くなっており,炭酸マグネシウムが
効果的に作用していないことは明らかである。その原因
を操業状況から推察すると,B4 では取鍋入れ置きから
出鋼開始までの時間が通常よりも多少長く,出鋼中の後
半で炭酸マグネシウムが完全に分解消失してしまったた
めと考えられ,B5 では出鋼開始直後から吸窒を防止で
きず,また,B6 とB7 では出鋼初期はシール効果があ
るものの,出鋼中の滝壺状況の変化や取鍋内のガス流れ
の変化,個々の炭酸マグネシウム塊の分解速度の違い等
により,後半で取鍋内にエアーシールに必要な炭酸ガス
量が維持できない場面が生じたのであろうと考えられ
る。このような推定は図2のCO2測定結果からも裏付
けられる。
【0054】図2は,製鋼番号A1,B3,B4,B7 で測定
したCO2濃度変化を示したものである。図2に見られ
るように,A1 ではCO2濃度がほぼ95%以上を常に
維持できたが,比較例のものでは大きな濃度変動がみら
れる。
【0055】
【発明の効果】以上説明したように,本発明によれば転
炉吹錬での有利な脱窒効果を維持したまま,減圧下での
吹錬が実施できるので,減圧下での脱窒負荷が小さくな
り,経済的に低窒素ステンレス鋼を製造できる。
【0056】また,出鋼時の取鍋内の炭酸ガス発生状況
を常に把握することによって,炭酸ガス発生性物質の供
給量を必要最小限にしながら吸窒を皆無にできるので,
該物質による溶鋼温度の低下やスラグ発生量の増加を最
小限とすることができ,加えて,各種の要因で状況が変
化しがらな取鍋出鋼操作において,状況が変化しても吸
窒がほぼ完全に防止できるようになり,低窒素ステンレ
ス鋼の製造において経済的にも技術的にも資するところ
がある。なお実施例ではフェライト系ステンレス鋼を挙
げたが,それ以外のステンレス鋼を対象とした場合で
も,同様の効果を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】取鍋内のCO2ガス発生速度と溶鋼中への吸窒
量との関係を示す図である。
【図2】本発明例における取鍋上部のCO2濃度の経時
変化を比較例と対比して示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川崎 将志 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社周南製鋼所内 (72)発明者 深見 泰民 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社周南製鋼所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 含クロム溶銑を転炉で脱炭精錬したあと
    該転炉から取鍋に出鋼するさいに,用いる取鍋の内容積
    がV(m3)であるとき,出鋼前から少なくとも出鋼完了ま
    での間,取鍋内から取鍋外にCO2ガス流が0.13×V
    (Nm3/min)以上の流量で間断なく流出するに十分な量の
    CO2ガス発生性物質を取鍋内に存在させるか供給し続
    けることを特徴とするステンレス鋼溶製時の吸窒防止
    法。
  2. 【請求項2】 CO2ガス発生性物質は炭酸マグネシウ
    ムを主成分とする固体物質である請求項1に記載の吸窒
    防止法。
  3. 【請求項3】 取鍋内から取鍋外に流出するCO2ガス
    流は0.13×V〜1.0×V(Nm3/min)の範囲で間断な
    く流出する請求項1または2に記載の吸窒防止法。
  4. 【請求項4】 取鍋内上部空間のガスをサンプリングし
    続け,該サンプリングガスから該空間のCO2ガス濃度
    の変化を計測し,この計測値に基いて0.13×V(Nm3
    /min)以上のCO2ガス流が維持されるように,取鍋内に
    供給するCO2ガス発生性物質の供給量を制御する請求
    項1,2または3に記載の吸窒防止法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102277467A (zh) * 2010-06-09 2011-12-14 鞍钢股份有限公司 一种转炉出钢过程钢水脱氮的方法
JP2013204086A (ja) * 2012-03-28 2013-10-07 Nisshin Steel Co Ltd ステンレス鋼の製造方法
JP2016166427A (ja) * 2016-06-14 2016-09-15 日新製鋼株式会社 ステンレス鋼の製造方法
CN113234893A (zh) * 2021-04-14 2021-08-10 首钢集团有限公司 一种出钢钢液预精炼的方法

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