JPH08319630A - 鋳鉄製マンホール蓋及びその製造方法 - Google Patents

鋳鉄製マンホール蓋及びその製造方法

Info

Publication number
JPH08319630A
JPH08319630A JP7125262A JP12526295A JPH08319630A JP H08319630 A JPH08319630 A JP H08319630A JP 7125262 A JP7125262 A JP 7125262A JP 12526295 A JP12526295 A JP 12526295A JP H08319630 A JPH08319630 A JP H08319630A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
manhole cover
cast iron
layer
mold
metal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP7125262A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3608842B2 (ja
Inventor
Takao Horie
孝男 堀江
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Okamoto Corp
Original Assignee
Okamoto Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Okamoto Corp filed Critical Okamoto Corp
Priority to JP12526295A priority Critical patent/JP3608842B2/ja
Publication of JPH08319630A publication Critical patent/JPH08319630A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3608842B2 publication Critical patent/JP3608842B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Underground Structures, Protecting, Testing And Restoring Foundations (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐摩耗性に優れた鋳鉄製マンホール蓋と、そ
れを有利に製造し得る手法を提供すること。 【構成】 鋳物砂を用いて造型されてなる鋳型を使用し
て、球状黒鉛鋳鉄溶湯から鋳造されたマンホール蓋にお
いて、該マンホール蓋の表面に、該鋳型より転着され
た、耐摩耗性の良好な金属材料の溶射層12を有し、且
つ該金属溶射層12が球状黒鉛鋳鉄18との混合組織層
16を介して強固に固着せしめられるように構成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、鋳鉄製マンホール蓋及びその製
造方法に係り、特に、路面の開口部を覆蓋するための鋳
鉄製のマンホール蓋において、その上部表面層を、滑り
防止のための耐摩耗性の向上を主たる目的として、表面
改質する技術に関するものである。
【0002】
【背景技術】従来より、アスファルトやコンクリート等
からなる道路表面において、下水道や排水孔、各種埋設
施設等のために形成されている開口部には、一般に、鋳
鉄製のマンホール蓋が設置されている。例えば、下水道
用マンホール用上蓋や電話、電線の地中埋設用マンホー
ル用上蓋等として、歩道、車道を問わず、鋳鉄製マンホ
ール蓋が施設されているのである。
【0003】そして、このようなマンホール蓋にあって
は、道路を通行する人や車両の転落を防止する目的のも
のであるところから、その構造には、安全を考慮して、
堅牢な設計が為されている。従って、この鋳鉄製マンホ
ール蓋には、一般に、小さな路上の橋の如く、道路を通
行する人や車両の安全を守るべく、高強度・靱性を有す
る球状黒鉛鋳鉄品が用いられ、更には長期間の間に、路
面に露呈している上部表面層が摩耗を生じるところか
ら、それによる滑り現象を生じ難くするために、所定の
凹凸状パターンや模様の如き凹凸のデザインを配し、滑
り抵抗を増加するような配慮も為されている。しかも、
マンホール蓋の材質としても、耐摩耗性を考慮して、球
状黒鉛鋳鉄品の中でもレベルの高い、JIS−G550
2のFCD700相当の材質が採用されているのであ
る。
【0004】因みに、図1〜図3には、そのようなマン
ホール蓋の一例が示されている。それらの図において、
円盤形状のマンホール蓋2は、よく知られている如く、
マンホールの開口部に設置される円環状の受枠4に対し
て嵌合せしめられ得るように構成されており、図1の如
き嵌合状態において、マンホールの覆蓋乃至は閉塞が行
なわれることとなるのである。そして、そのようなマン
ホール蓋2の表面は、図3に拡大して示されているよう
に、滑り防止の観点より、所定の凹凸デザインを与える
凹凸部6とされているのである。なお、それらマンホー
ル蓋2や受枠4は、上述の如く、球状黒鉛鋳鉄品とされ
ている。
【0005】しかしながら、このようなマンホール蓋が
設置されても、10年、20年という長期間における人
や車両の通行は、かかるマンホール蓋の上部表面層を徐
々に損耗させ、その結果、滑り防止のために設けられ
た、高さが5mm程度の凹凸も損耗して、凸部が全く無
くなり、全面が滑面となるケースも見受けられている。
そして、この損耗現象は、マンホール蓋の上部を通行す
る人や車両に転倒やスリップを惹起せしめる原因となっ
ているのであり、特に、雨天時には、二輪車における事
故の報告が多くなされている。
【0006】このため、従来にあっては、マンホール蓋
上面の凹凸の配置を、その意匠的効果に偏り過ぎること
なく、バランスよくレイアウトするとか、マンホール蓋
上面の表面層に耐摩耗性に優れたセラミックスの溶射を
施したコーティング膜を付与した製品も提案されるに至
っているが、後者の耐摩耗性コーティング膜にあって
は、所詮、表面層への塗装と変わらず、大きな衝撃力が
加わったときに剥離が生じ、そして一度剥離が生ずる
と、その剥離部に腐食が発生して、全体剥離と連鎖する
等の問題も内在していることが指摘されている。
【0007】また、溶射膜にあっては、その密着強度と
密度の向上が現在においても検討されているが、それ
は、微視的には、ポーラスな状態であり、防食性に劣る
ものであって、マンホール蓋のように、屋外における過
酷な条件下のもとでの長期間の使用には、問題のあるも
のであった。
【0008】さらに、マンホール蓋の材質として、超高
硬度のベーナイト組織を有するADI(オーステンパー
ダクダイル鋳鉄)材料を選択し、このADI材料にてマ
ンホール蓋を製作して、その表面層の硬度をHB340
以上に高めることにより、耐摩耗性を与えることを目的
とした試みも為されている。而して、このADI材料の
製造には、ベーナイト組織を得るために、合金鉄を添加
する方法と、特殊な熱処理を施す方法等があり、引張強
度の著しい向上と硬度の向上(HB340〜400)が
可能となり、そのような材料からなる製品の耐摩耗性は
改善されるものの、一方では靱性(衝撃値)の低下が認
められ、また仕上げ加工(機械加工)が著しく困難なこ
と、熱処理時の歪みの発生等を考慮すると、その生産性
や経済性において、大きな問題点を内在しているのであ
る。
【0009】このように、マンホール蓋の耐摩耗性の向
上については、種々なる検討が加えられているのではあ
るが、何れも問題のあるものであって、現在までのとこ
ろ、完全な手段は無く、そのため、著しく損耗したマン
ホール蓋に対しては、早期取替えを行なうしか方法は無
く、それによって、保全乃至はメンテナンスが進められ
ているのが実状である。
【0010】
【解決課題】ここにおいて、本発明は、かかる事情を背
景にして為されたものであって、その解決すべき課題と
するところは、球状黒鉛鋳鉄品からなるマンホール蓋に
おいて、その上部表面層の滑り防止を目的として、優れ
た耐摩耗性を付与することにあり、またそれによって、
マンホール蓋上を通行する人や車両の安全を確保するこ
とにある。要するに、本発明は、耐摩耗性に優れた鋳鉄
製マンホール蓋と、それを有利に製造し得る手法を提供
することにある。
【0011】
【解決手段】そして、本発明は、上記の如き課題を解決
するために、鋳物砂を用いて造型されてなる鋳型を使用
して、球状黒鉛鋳鉄溶湯から鋳造されたマンホール蓋に
おいて、該マンホール蓋の表面に、該鋳型より転着され
た、耐摩耗性の良好な金属材料の溶射層を有し、且つ該
金属溶射層が球状黒鉛鋳鉄との混合組織層を介して強固
に固着せしめられていることを特徴とする鋳鉄製マンホ
ール蓋を、その要旨とするものである。
【0012】また、本発明にあっては、そのような特徴
的なマンホール蓋を有利に製造するために、鋳物砂を用
いて造型されてなる鋳型を使用し、その鋳造キャビティ
内に球状黒鉛鋳鉄溶湯を注湯して、冷却凝固せしめるこ
とにより、目的とするマンホール蓋を製造するに際し
て、前記鋳型の鋳造キャビティにおけるマンホール蓋の
表面形成部位に対して、耐摩耗性の良好な金属材料の溶
射層を形成せしめ、その形成された金属溶射層の存在下
において、前記鋳鉄溶湯の注湯操作を実施することによ
り、該金属溶射層の溶湯接触面側部分を注湯溶湯の熱量
にて溶融させて、溶湯金属との混合組織層を形成せし
め、そして冷却凝固させて得られるマンホール蓋の表面
に、該混合組織層を介して、前記金属溶射層を強固に転
着せしめるようにしたことを特徴とする鋳鉄製マンホー
ル蓋の製造方法をも、その要旨とするものである。
【0013】
【具体的構成・作用】このように、本発明にあっては、
球状黒鉛鋳鉄製のマンホール蓋の路面に露呈する上部表
面層に、滑り防止を目的として耐磨耗性を向上せしめる
ために、マンホール蓋を構成する母材となる球状黒鉛鋳
鉄と融合してなる硬質層が形成されるようにしたところ
に、大きな特徴を有しているのである。
【0014】一般に、マンホール蓋は、車両の通行等に
より、著しい負荷を受けるところから、その材質として
は、その剛性を高め且つ高引張力、高靱性を有するもの
でなければならず、そのため、引張力と伸び率のバラン
ス上、伸び率を確保する上限での硬度が得られる球状黒
鉛鋳鉄、例えばFCD700相当のものが用いられるこ
ととなるが、本発明にあっては、そのような材質を用い
て、マンホール蓋が鋳造される際に、鋳型表面に、マン
ホール蓋の耐摩耗性を向上せしめる作用を有する、耐摩
耗性の良好な合金鉄等の金属材料を溶射せしめ、その溶
射された合金鉄等の金属溶射層の接触面側部分を、注湯
される溶湯金属の熱でもって溶融、融合させ、そして冷
却凝固によって、かかる鋳型壁の金属溶射層をマンホー
ル蓋体側へ転着、即ち転移、付着せしめて、一体化させ
るようにしたのである。
【0015】ところで、本発明において、目的とする鋳
鉄製マンホール蓋を鋳造するために使用される、鋳物砂
を用いて造型されてなる鋳型は、生型砂、或いは樹脂を
硬化媒体として用いた自硬性砂等の鋳物砂を用いて、通
常採用されている造型法によって作製された鋳型であっ
て、それは、一般に、上型と下型とから構成され、そし
てその内部に、目的とするマンホール蓋を鋳造するため
の鋳造キャビティを有している。
【0016】例えば、かかる鋳型は、一般的に砂型造型
法にて作られることとなるが、この砂型造型法は、骨材
となるケイ砂(SiO2 )に、ベントナイト、樹脂等の
粘結剤を混練し、造型を行なうと共に、加圧装置等か
ら、しかるべき外部圧力を得て、鋳型は完成される。こ
のベントナイトを主粘結剤とした造型法(生型造型法)
を例に取ると、90%近いSiO2 分を有するケイ砂を
100〜120メッシュに分粒して、そのケイ砂に粘土
分としてベントナイトを8〜10%(活性分)添加し、
更にベントナイトの潤滑性を発揮せしめるために、3.
5〜4%の水分を加えた鋳物砂を用いて造型されること
となるが、そのようにして得られた鋳型の表面を、ミク
ロ的に観察すると、一見、平滑に見える鋳型表面も、微
細な凹凸が出現しているのである。
【0017】そして、このような鋳型における鋳造キャ
ビティのマンホール蓋表面形成部位に対しては、本発明
に従って、所定の金属材料の溶射操作が行なわれること
となるが、その溶射に際して、鋳型面には、音速に近い
スピードで、所定金属材料の溶滴が衝突せしめられるこ
ととなり、そのために鋳型面の強度が低いと、特に、凹
凸のエッヂ部が吹き飛ばされることもあり、それ故に砂
型造型の場合においては、その鋳型硬度を90〜95程
度とすることが望ましいのである。
【0018】また、このようにして得られた鋳型にあっ
ては、その鋳造キャビティにおけるマンホール蓋の表面
形成部位には、目的とするマンホール蓋の表面形状に対
応した凹凸形状が形成されているのである。即ち、マン
ホール蓋の上部表面層は、構造的に滑りを防ぐために、
5mm程度の溝(凹凸)を有する幾何学的模様若しくは
需要者の要求によるデザインが施されることとなるので
あり、そのような表面凹凸構造に対応して、鋳型の鋳造
キャビティ面が形成されるのである。そして、そのよう
な鋳造キャビティの凹凸構造面に対して、本発明に従っ
て、耐摩耗性の良好な金属材料の溶射が施されることと
なるが、そのような凹凸造型された鋳型(鋳造キャビテ
ィ面)への溶射膜の形成は、そのような鋳造キャビティ
面形状が三次元的形状であっても、安定した状況で、必
要な部分への形成が可能となるのである。
【0019】なお、本発明にて採用する金属溶射の技術
は、歴史が古く、従来から所定の金属材料を溶かして霧
吹きのような状態で吹き付け、対象物に所定厚さのポー
ラスな金属層を形成する手法として知られ、メタル・ス
プレーイング(Metal Spraying)やメタライゼーション
(Metallization )とも呼ばれており、現在では、金属
のみならず、セラミックス等も溶射に用いられ、機械部
品等の表面改質に広く使用されているが、本発明におい
ては、一般的に採用される溶射面では密着性や溶射面の
密度に問題が残されている点に着目し、鋳造という金属
加工方法が持つ膨大な熱量を有効活用し、溶射金属膜の
溶湯との接触面側部分を溶湯(母体)金属の熱でもって
溶融せしめて、母体との溶着を図り、以て一般的な溶射
膜に見られる剥離現象を解決し、更には溶射金属膜と母
体金属の融合により、耐摩耗性に優れた混合組織を生成
せしめようとするものであって、そのために、図4に示
される如く、鋳型の鋳造キャビティにおけるマンホール
蓋の表面形成部位を構成する鋳物砂層10上に、耐摩耗
性の良好な所定の金属材料(粉末)が常法に従って溶射
せしめられ、そこに、所定厚さの金属溶射層12が形成
されるのである。
【0020】また、そのような金属溶射層12は、よく
知られている一般的な溶射作業方式に従って形成され得
るものであり、溶射装置としても、既に多くの機種が市
販されているところから、その中から、適宜に選択され
ることとなるが、特に、溶射時に被溶射物(鋳型面)に
対する熱影響の少ないアーク式溶射装置を用いることが
望ましい。尤も、ガス式溶射装置等を用いて溶射を行な
っても、溶射層に対する影響に大差は認められていない
が、騒音や粉塵の飛散等の作業性を考慮する必要があ
る。
【0021】そして、かくの如き溶射手法によって、高
温にて溶かされた金属材料の溶滴が音速に近いスピード
(300〜500M/s)にて噴射され、高い衝突エネ
ルギーをもって、かかる溶滴を鋳物砂にて構成される鋳
型面の微細な隙間へ押し込むこととなるのであり、これ
によって、図5に示される如く、鋳型面に対向した溶射
面には微細な凹凸が生ずるようになり、また、その表面
組織の硬度が高いと、微妙な滑り防止効果を発揮するこ
ととなるのである。しかるに、通常の鋳造法にあって
は、その基本原理は、注湯される溶湯性状が動粘性係数
において低く、表面張力の高いものであるが、比較的動
粘性係数が低い鋳鉄溶湯(0.7×10-2cm2 /s:
動粘度)においても、表面張力は高く(1870dyn
/cm)、そのために、鋳物砂の粒子間に生ずる0.0
5〜0.3mm程度の隙間に入り込むことは、極めて困
難となるのであって、本発明に係る溶射面の如き微細な
凹凸の形成は、全く期待し得ないのである。
【0022】ところで、このような溶射層12を形成す
るために、本発明にあっては、従来から知られているよ
うな耐摩耗性の良好な各種の金属材料が、粉末等の形態
において用いられるものであって、例えばFe、ニッケ
ル、クロム、モリブデン、チタン等の金属の粉末材料が
混合して用いられることとなる。それら金属の単体の融
点は比較的高いものであるが、それらの合金とすること
によって、融点が下がり、注湯される溶湯温度(例えば
1500℃程度)にて充分に溶融せしめられ得て、溶湯
金属との間に、混合組織を形成することが可能となる。
なお、モリブデンは、融点が著しく高いために、完全溶
融は困難であって、混在組織となるが、そのような混在
組織にても、有効な耐摩耗性を発揮し得るものである。
【0023】また、かかる溶射層12を、溶射金属材料
の異なる複数の溶射層にて構成することも可能であり、
その場合にあっては、マンホール蓋表面に露呈せしめら
れることとなる最初の溶射層は、少なくとも、本発明に
従って、耐摩耗性の良好な金属材料を用いて形成される
必要がある。更に、そのような複数の溶射層を積層せし
める場合において、球状黒鉛鋳鉄溶湯に接触せしめられ
る側の溶射層を、かかる溶湯と馴染み易く且つ溶融され
易い、低炭素鋼等の材料を用いて形成すれば、溶湯注湯
時の溶射層12の接触面側部分の溶融性が効果的に向上
せしめられ、以て球状黒鉛鋳鉄溶湯14との間の良好な
混合組織が、有利に形成されることとなる。
【0024】なお、この鋳型表面に形成される溶射層1
2の厚さとしては、マンホール蓋表面に要請される耐摩
耗性の程度や、注湯される球状黒鉛鋳鉄溶湯の熱による
溶融の程度等に応じて、適宜に決定されることとなる
が、一般に、500〜2000μm程度とされることと
なる。溶射操作においては、粒径が数十μm程度の金属
材料粉末や線材が、3000℃近い温度にて瞬間に溶融
され、そしてエアの力により噴出された微細溶滴は、鋳
型面へ吹き付けられて、鋳型の凹凸面上に所定厚さの層
を形成することによって、かかる鋳型の凹凸形状を正確
に包むこととなるのである。
【0025】このようにして、鋳型の鋳造キャビティに
おけるマンホール蓋の表面形成部位の鋳物砂層10の表
面に、所定厚さにおいて、溶射層12が形成された状態
下において、上記の鋳型には、球状黒鉛鋳鉄溶湯14
が、図4の如く注湯せしめられて、マンホール蓋を得る
ための通常の鋳造操作が行なわれることとなるが、その
ような溶湯14の注湯によって、かかる溶湯14からの
熱量が溶射層12の溶湯接触面に作用して当該部分を溶
融せしめ、以てそこに、溶射金属と溶湯金属との混合組
織層16を形成するのである。
【0026】そして、かかる状態下において、注湯され
た球状黒鉛鋳鉄溶湯14を冷却、凝固せしめ、常法に従
って、鋳型の型ばらしを行ない、生成した鋳物を取り出
すことによって、目的とするマンホール蓋が得られるこ
ととなるのであるが、そのようなマンホール蓋の上部表
面層は、図5に拡大して示されている如く、球状黒鉛鋳
鉄溶湯14の凝固によって形成される球状黒鉛鋳鉄基地
18上に、混合組織層16を介して、溶射層12が強固
に固着せしめられた形態において、かかるマンホール蓋
表面の凹凸形態が現出せしめられている。このように、
5mm程度の深さを有する幾何学的な模様の溝からなる
凹凸形態に加えて、その凹凸形態の表面層が、その摩耗
を防ぐための耐摩耗性の溶射層12にて構成されると共
に、そのような溶射層12が、母材鋳鉄(18)との融
合にて形成される高硬質層たる混合組織層16を介し
て、強固に固着せしめられているところから、そこに、
最も効果的な滑り防止構造が実現されているのである。
【0027】特に、本発明に従う溶射によって形成され
る溶射層12を与える金属材料の材質を高Crからなる
ものとすると、そのような溶射層12の溶融にて供給さ
れるCrによって、球状黒鉛鋳鉄溶湯14との混合組織
層16においては、(Fe,Cr)3 C型の炭化物や
(Fe,Cr)7 3 型の炭化物を晶出し、高硬度の炭
化物が形成されることによって、優れた耐摩耗性を発揮
する特徴がある。
【0028】また、溶射層12が、溶射金属としてN
i、Cr、Mo等を含む材料を用いて形成されている
と、球状黒鉛鋳鉄溶湯14たるFCD700相当の注湯
金属(C:3.8%、Si:1.8%、Mn:0.6
%、Mg:0.04%、Fe:残部)(1480℃)と
の接触による該溶射層12の溶融混合にて、マルテンサ
イトの針状晶がオーステナイト素地に多く現れた球状黒
鉛鋳鉄質の混合組織層16が形成されるのである。
【0029】さらに、この形成される混合組織層16の
混合組織は、溶射層12の形成に用いられた金属材料に
より異なるが、溶射の作業性と経済性を考慮して、溶射
金属材料をFe、Ni及びCrの混合粉粒とし、Niと
Crの比率を8:2としたときに、Hv400〜500
(HB380〜480)程度の硬度を有する混合組織層
16を形成することが出来る。このような混合組織層1
6の硬度は、従来のADI(JIS−G5503−FC
D1200A)材料を凌ぐ表面硬度となるものである。
【0030】
【実施例】以下に、本発明を更に具体的に明らかにする
ために、本発明の実施例を詳細に説明することとする
が、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等
限定的に解釈されるものでないことは、言うまでもない
ところである。
【0031】先ず、鋳鉄製マンホール蓋の一般的な製作
工程においては、砂型鋳型(生型)へ、FCD700相
当の球状黒鉛鋳鉄溶湯が1450〜1500℃の温度に
て注湯されて、完了するが、ここでは、本発明に従うマ
ンホール蓋を得るために、かかる鋳型の鋳造キャビティ
におけるマンホール蓋の表面形成部位たる鋳型面、換言
すれば耐磨耗性を付与するための鋳型の幾何学的模様デ
ザイン部(凹凸部)に対して、二段の金属溶射を行なっ
た。即ち、最初の溶射操作たる第一段階の溶射は、ニッ
ケル、クロムの混合粉末を用いて、ニッケル、クロムの
合金が形成されるように溶射を行ない、そして後の溶射
工程たる第二段階では、Fe(低炭素鋼)の溶射を、溶
融性向上のために行なった。
【0032】なお、溶射装置としては、溶射時に被溶射
物(鋳型面)への熱影響の少ないアーク式溶射装置を用
いた。また、溶射作業は、常法に従って行ない、溶射用
粉体材料を水溶性プラスチックで固めたフレキシコード
(Cr:20、Ni:80)を用いて、溶射面の気孔率
は大きめを狙い、200〜250mm距離から溶射せし
め、1mm程度の厚さの第一次溶射層を生成させ、更に
第二次溶射層は、Fe(低炭素鋼)を0.5mm程度の
厚さに溶射せしめた。更に、溶射温度は、瞬間的には4
000℃近くの温度となり、コンプレッサーエアと共に
噴出される溶滴は、目的とする鋳型面に吹き付けられ
て、所定厚さに付着、塗布せしめられることとなるが、
そのような溶射層の形成される鋳型面の表面凹凸形状を
エアの噴出力で崩すことなく、溶射膜を所定厚さに形成
するために、エア圧力や電流値を微妙に調整した。
【0033】また、溶射面の粗さは、一般的に素地面と
略同等になるが、本発明における溶射面の粗さに対する
意義は、溶湯との融合が容易に進むところに主眼があ
り、このため、上記の第二段階における溶射時には、溶
射距離を離し、溶滴径を大きくして、表面積の大きな粗
さとなるようにした。
【0034】また、生型の造型に関しては、チクソトロ
ピー現象を応用した衝撃波造型機を用いて、砂型造型を
行ない、マンホール蓋の表面形成部位における凹凸部の
硬度は、93程度とされた。
【0035】そして、上記の第一及び第二段階の溶射層
を形成せしめた後、鋳型には、マンホール蓋を鋳造する
ために、球状黒鉛鋳鉄溶湯(FCD700)が注湯され
た。なお、この注湯に際しては、鋳型が3.5〜3.8
%の水分を添加、含有するものであるところから、その
長時間の放置により、溶射層裏面(鋳型対向面)に水滴
が結露し、その水分が溶湯と反応して、ガス欠陥を発生
する恐れがあるために、溶射層の溶射後においては、速
やかに注湯することが望ましい。ここでは、注湯温度は
1480℃程度にて行なわれ、また、鋳込速度は、T=
K√wの標準式(T:鋳込速度、K:係数、w:鋳込重
量)にて行なわれるが、かかるK値を小さくし、速い鋳
込速度を採用することが望ましい結果を与えた。
【0036】また、かかる鋳込操作の終了の後、凝固が
充分に完了し、形成されたマンホール蓋体に歪みが生じ
ないように冷却が為された後、鋳型を解枠して、目的と
するマンホール蓋を取り出した。
【0037】かくして得られたマンホール蓋にあって
は、その表面上層部の断面は、図5に拡大して示される
如き形態を取るものであり、溶射金属(12)とFCD
溶湯にて形成された鋳鉄基地(18)とが、その界面に
て完全に融合し、そこに、混合組織層(16)が形成さ
れたものとなり、第二段階の溶射層(低炭素鋼)の形跡
は少なく、球状黒鉛鋳鉄(18)側に固溶したものと認
められた。また、第一段階の溶射層と鋳鉄層との混合層
も見られ、気孔と思われる部分への溶湯の浸透によっ
て、マンホール蓋の表面層はNi、CrとFCDの固溶
状態となり、強固な一体組織となった。
【0038】さらに、溶射層(12)の裏面側部分と鋳
鉄との混合組織は、溶射金属面がチラー効果を与えてお
り、以て球状黒鉛粒径の微細化と周辺組織へ影響を与
え、セメンタイト組織が微細に発生し、パーライト率を
増加させていることを認めた。そして、硬度測定の結
果、そのような混合組織を含むマンホール蓋の表面層
は、HB400の硬度を示し、充分な耐摩耗性を有する
表面に改質されていることを認めた。
【0039】このように、本発明にあっては、鋳物砂を
用いて造型して得られる鋳型の鋳型面に対する溶射とい
うことを基本にして、そのような溶射によって形成され
た金属溶射層をマンホール蓋の表面に転着せしめると同
時に、該溶射層を、球状黒鉛鋳鉄との混合組織層を介し
て強固に固着せしめたところに、大きな技術的意義を有
するものであって、そのために、溶射される鋳型の強
度、管理レベル、必要とする表面改質層の厚み、更には
溶湯熱量バランス等に考慮を払う必要があるものの、他
の製品、例えば、鋳鉄製グレーチング、ツリーサークル
等、耐摩耗性を必要とする鋳鉄製品への応用は可能であ
り、また、溶射される金属材料の如何によっては、耐食
性の向上も可能であることは、言うまでもないところで
ある。
【0040】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
に従う球状黒鉛鋳鉄製のマンホール蓋にあっては、その
表面が、鋳型面に形成された溶射層の転着にて構成され
ているところから、一般的な鋳造法では得られない、梨
地の如く微細な凹凸を有した表面状態と、かかる溶射層
と球状黒鉛鋳鉄溶湯とが融合した混合組織層から構成さ
れて、優れた耐摩耗性を発揮するのである。
【0041】そして、鋳型面に対応した表面凹凸を有す
る溶射層は、鋳造後に、一般に、鋳物に対して施される
ショットブラスト処理にて、その凸部が抑えられ、剣山
のような鋭利な山は崩されることとなるが、一般的な鋳
造品とは異なる表面粗さが得られ(50〜85S)、歩
行時に適度な摩擦を与え、耐スリップ性の増加が効果的
に図られ得るのである。
【0042】尤も、そのような鋳型面を転写した溶射層
の凹凸形態は、微視的な改善であって、鋳鉄製マンホー
ル蓋における基本的な耐スリップ性の維持は、マンホー
ル蓋表面における幾何学的模様の耐摩耗性改善にあり、
一般に形成される5mm程度の深さを持つ溝(凹凸部)
が、長期間の使用においても、常にシャープエッヂを保
つことにあり、そのような原形を保つ材質に改質したと
ころに、本発明の大きな意義がある。
【0043】さらに、本発明の他の効果とするところ
は、一般的な金属溶射部においては、被溶射部との密着
性に問題があることに加えて、かかる溶射部の密度、そ
して該溶射部がポーラスなるが故に生ずる腐食等の問題
を内在しているのに対して、本発明にあっては、そのよ
うな従来の問題を、溶射層の溶湯に接する裏面を鋳造金
属の溶融熱にて完全に溶融せしめると同時に、溶射層構
成金属と溶湯金属との溶融混合組織を形成せしめて、一
体的な融合層とすることによって、解決したことにあ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】マンホール蓋を受枠に嵌合せしめてなるマンホ
ール蓋装置の一例を示す平面説明図である。
【図2】図1におけるA−A断面説明図である。
【図3】マンホール蓋表面部位の断面の一例を示す拡大
説明図である。
【図4】本発明に従うマンホール蓋の鋳造工程の一例を
示す工程説明図である。
【図5】本発明に従うマンホール蓋の表面部位の断面構
造の一例を示す拡大断面説明図である。
【符号の説明】
10 鋳物砂層 12 溶射層 14 球状黒鉛鋳鉄溶湯 16 混合組織層 18 母材鋳鉄

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋳物砂を用いて造型されてなる鋳型を使
    用して、球状黒鉛鋳鉄溶湯から鋳造されたマンホール蓋
    にして、該マンホール蓋の表面に、該鋳型より転着され
    た、耐摩耗性の良好な金属材料の溶射層を有し、且つ該
    金属溶射層が球状黒鉛鋳鉄との混合組織層を介して強固
    に固着せしめられていることを特徴とする鋳鉄製マンホ
    ール蓋。
  2. 【請求項2】 鋳物砂を用いて造型されてなる鋳型を使
    用し、その鋳造キャビティ内に球状黒鉛鋳鉄溶湯を注湯
    して、冷却凝固せしめることにより、目的とするマンホ
    ール蓋を製造するに際して、 前記鋳型の鋳造キャビティにおけるマンホール蓋の表面
    形成部位に対して、耐摩耗性の良好な金属材料の溶射層
    を形成せしめ、その形成された金属溶射層の存在下にお
    いて、前記鋳鉄溶湯の注湯操作を実施することにより、
    該金属溶射層の溶湯接触面側部分を注湯溶湯の熱量にて
    溶融させて、溶湯金属との混合組織層を形成せしめ、そ
    して冷却凝固させて得られるマンホール蓋の表面に、該
    混合組織層を介して、前記金属溶射層を強固に転着せし
    めるようにしたことを特徴とする鋳鉄製マンホール蓋の
    製造方法。
JP12526295A 1995-05-24 1995-05-24 鋳鉄製マンホール蓋及びその製造方法 Expired - Fee Related JP3608842B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12526295A JP3608842B2 (ja) 1995-05-24 1995-05-24 鋳鉄製マンホール蓋及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12526295A JP3608842B2 (ja) 1995-05-24 1995-05-24 鋳鉄製マンホール蓋及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08319630A true JPH08319630A (ja) 1996-12-03
JP3608842B2 JP3608842B2 (ja) 2005-01-12

Family

ID=14905736

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP12526295A Expired - Fee Related JP3608842B2 (ja) 1995-05-24 1995-05-24 鋳鉄製マンホール蓋及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3608842B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009002139A (ja) * 2007-06-22 2009-01-08 Jhy-Cheng Chen マンホールおよびハンドホールの蓋とその製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009002139A (ja) * 2007-06-22 2009-01-08 Jhy-Cheng Chen マンホールおよびハンドホールの蓋とその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP3608842B2 (ja) 2005-01-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN110925338A (zh) 制动盘和用于生产制动盘的方法
JP2852867B2 (ja) 耐摩耗部品の製造方法及びその耐摩耗部品
CN102407286A (zh) 制造制动部件的方法
CN1012670B (zh) 双金属复合浇注球磨机衬板工艺方法
CA2704068C (en) Casted in cemented carbide components
JPH08319630A (ja) 鋳鉄製マンホール蓋及びその製造方法
CN103381477B (zh) 薄工作层复合铸铁轧辊的离心浇注方法
CN100595315C (zh) 耐磨眼镜板和耐磨切割环
KR20120012701A (ko) 수직 또는 수평 원심주조에 의한 중온용 롤 및 그 제조방법
CA2814550C (en) Cover having a wear-resistant surface and method for the production thereof
CN104801366B (zh) 由Mn13和高铬铸铁构成的圆锥破碎机破碎壁及方法
PT1214458E (pt) Metodo para fabricar camadas amorfas macicas nos corpos metalicos perfilados
CN104801369B (zh) 由Mn13和高铬铸铁构成的圆锥破碎机轧臼壁及方法
Joshi Centrifugal casting
CN104801368B (zh) 由高锰钢和高碳铬钢构成的圆锥破碎机轧臼壁及制作方法
KR100447898B1 (ko) 주조제품의표면개질방법
CN206811082U (zh) 消失模铸造破碎壁用冷铁装置
JP4162065B2 (ja) 耐摩耗材の製造方法
CN104801367B (zh) 由高锰钢和高碳铬钢构成的圆锥破碎机破碎壁及制作方法
JPS60255256A (ja) 鋳造方法
CN104801370B (zh) 双组份圆锥破碎机轧臼壁及制作方法
US1014967A (en) Resistant surface.
JPH06238396A (ja) 耐摩耗材の製造方法
JPS586769A (ja) 円筒、円柱状耐摩耗鋳物およびその製造法
JP3828600B2 (ja) 鋳造製品の表面改質方法

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20040901

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20041012

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20041012

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20071022

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081022

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081022

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091022

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees